学校イチの不良獣人が色々と襲われる話

  『〇〇廃工場に来い。でなければお前は一生後悔する事になる』

  「はぁ?…ンだよこれ」

  それはある日の放課後のこと。いつものように下駄箱で靴を履こうとしていた不良の獅子獣人は、自分の靴の中にくしゃくしゃになった紙を見つけた。

  汚い字ではあるが、指定された場所は帰り道によく見るので分からないことはない。しかし、この後も用事があるのでそこまで乗り気ではなかったのも事実である。

  それでも喧嘩ばかりしていた彼にとってはこんなことなど普段と何ら変わりないが、一つだけ気になることがあった。

  彼の恋人にして唯一の相手である、隼汰の姿が見えないのだ。学年が違うため時間割にも差がある彼を待つのがいつもの日常なのだが、今日はやけに胸がざわつく。

  「チッ…行くか」

  頭の中に妙な考えが浮かぶも、握り拳を開閉させて深呼吸する。不良蔓延るこの学校で最も強い獅子獣人である百目鬼豪はその怒気を高め、薄汚れた学ランを羽織りながらチャイムの鳴り続ける学校を後にするのだった。

  ───

  辿り着くと、既にそこには大勢の獣人がいた。体格の良い者から小さい者、種族も様々である。

  皆それぞれが金属製のチェーンやネックレスを付けていたり、金や銀の指輪を嵌めている者もいれば、腕や首に竜や骸骨などの刺青を刻み込んでいる者もいた。

  また、彼らは全員制服を着ていなかった。

  不良と言えど、果たし状とは決闘である。学校の看板を背負う闘いでもあるため、互いの制服を纏って戦闘を行うのが暗黙のルールだ。

  だが彼らは違っていた。学校に通っているような世間知らずの青臭さはなく、ある程度の経験を積んできた者達。

  俗に言う悪い大人と呼ばれる、法律で裁かれるような悪事を本気で行うレベルの輩に見えた。

  「お前か?百目鬼ってヤツは」

  集団の中心にいた狼獣人が、体格の時点で負けているはずの不良獣人に向かってナメた声で言葉を放つ。その口調はどこが勝ち誇ったようで、やけに胃がむかむかするような違和感を百目鬼は覚えた。

  「テメェこそ誰だ、俺に何か用か?」

  その一言ともに、鋭い眼光が集団全体を睨みつける。百目鬼も学生と大人の見分けがつかないほど頭は悪くないため、学生ではないだろうと推察していた。

  それでも理由もなしに呼び出すのはよほどの自信か何か策がある奴だと、経験が本能に警告していた。

  生まれつきの強面も相まって、鋭い眼光がその集団に向けられる。それだけで一部の小柄な獣人は少し顔を引き攣らせていたが、隣の大柄な牛獣人が肩を小突いて立て直させた。

  「まァ知らねーわな、俺らのことなんか。んじゃ単刀直入に言うぜ、昨日お前がぶっ倒したヤツらは覚えてるか?」

  「知らねぇ」

  「学校の帰り道にお前がボコボコにした3人組だよ。犬、熊、猪のな」

  そう言われてようやく思い出したのは、昨日隼汰との帰り道に突然カツアゲされ、それを返り討ちにした時のこと。

  心弾むはずだった恋人との帰路を妨害された百目鬼は半分苛立ちながらも、隼汰の前だと心を制してある程度に抑えたはずだ。

  「じゃあ、お前はアイツらの仲間か?」

  「そういうこと」

  まさか本物の大人だったとはと百目鬼は多少驚いたが、逆にあの時ちょっと痛めつけただけで逃げたヤツらは相当なヘタレだったのかとも思った。

  そんな単純な考えを行う百目鬼を前に、狼は続ける。

  「ここら辺で一番強いんだって?でもさあ、だからっつって手ェ出していい人と悪い人がいるんだよ」

  「でも先にやってきたのはそっちだろうが」

  「……分かってねぇなぁクソ坊主。まあいい、どんだけ喧嘩が強くても勝てないものはあるって教えてやるよ」

  苛立ったような仕草を見せて話す狼獣人の後に、狼獣人の後ろから大きな焦茶色の物体が歩いてくる。体格からして横幅だけなら百目鬼よりも大きい彼に抱き抱えられるようにして連れてこられたのは、1人の小柄な人間だった。

  「ッッ隼汰!!!」

  「動くなよ、コイツがどうなっても知らねぇぞ」

  後ろで手を結ばれているのか身動きが取れず、制服のままで口をガムテープで塞がれ、涙目でこちらを見ている。その瞳を見れば、彼の心は恐怖で染まっていると百目鬼は確信してしまった。

  狼狽えて何もできない彼をニヤニヤと見つめながら、狼獣人は隼汰についていたガムテープを外していく。

  開口一番、隼汰は自分の状況も顧みずに大声で言い放った。

  「なんで、なんで来たんですか先輩!?ダメですよ!!警察行かな……っ!!」

  「…テメェ、いい加減にしろ!!!」

  その時、隼汰の首筋にヒヤリとした硬いものが当てられる。鋭く研がれた鋭利なそれは、彼の柔らかな皮膚を切り裂くなど容易に思えるほど長いサバイバルナイフだった。

  予想も何も、最悪の事態が現実と化した百目鬼は動揺を隠せなかった。

  もっと俺が早く迎えに行っていれば、もっと周囲に気を配っていればこんなことにはならなかったはずなのにと、叫びながらも額に汗が滲む。

  刃物を扱う相手だけなら何度も戦ってきたが、人質を取られては何もできない。いくら学生で一番強いとはいえ、ここまで緊迫した状況に陥ったことは初めてだった。

  そもそも人質になるような間柄の人物など持ったことがない百目鬼にとってこの時間は、非常に耐え難いものだったに違いない。

  相手が隼汰ならば、なおさらだった。

  「ギャーギャーうるせぇガキだな。にしてもこんなに弱っちい人間が本当にアイツの舎弟なのかよ?」

  「オイ、ソイツが何したってんだよ!?目的は俺1人だろーが!卑怯だぞテメェ!!」

  「大人はなぁ、みんな卑怯者なんだよ。喧嘩番長だが何だか知らねぇが調子乗ってんじゃねぇぞ」

  飄々とした態度が一変し、その変わりように流石の百目鬼でも息が詰まる。こいつは本気だ、本気で人の命を奪おうとする奴の声だ。

  本能でそう理解し、いつものように拳で解決しようとしていた考えが微かに萎縮し始める。

  そんな彼の思考を読み取ったかのように、狼獣人はナイフを隼汰の首に固定したまま話し始めた。

  「別に俺はお前と喧嘩したいわけじゃない。お前に頼み事があるんだ」

  「は…?何だよそれ…」

  「おあいこって知ってるか?誰かがやったら、やられた方が仕返しをする。それで全部パーになるだろ?」

  「何言ってんだお前……」

  まるで小学生の子供が言い訳をしているかのような弁論に、百目鬼の顔が引き攣ってしまう。

  しかし状況的にこちらが不利なことには変わりないし、無理な抵抗もできそうにない。目の前でナイフの切先を突きつけられている隼汰を見れば、その様相は丸わかりだった。

  「お前が素直に付き合ってくれれば、何事もなく穏便に帰らせてやるよ」

  「……クソが…!」

  選択肢は無い。そう思ってしまわざるを得ない状況だが、百目鬼は何とか隼汰だけでも助け出せる方法を考える。

  しかし今まで全て拳で捻り潰してきた彼にとって作戦を考えることは至難の業で、結局何も考えつかないまま時間だけが過ぎていく。

  「ほらほら早くしろよ。じゃないとお前の大切な舎弟が死んじまうぜ」

  「……せ…せんぱ……!」

  涙目になりながらも、隼汰は百目鬼から目を離さなかった。むしろ彼から目を離してしまえば泣き崩れてしまいそうで、非力な彼は百目鬼に助けを求めることしかできない。

  決死の覚悟で気を逸らすための大声をあげようとも思ったが、自分が置かれている状況はどうあがいても死に直結するため心が竦んでしまう。

  しばらくの間、互いの様子を伺うような沈黙が続く。しかし予想以上の躊躇に痺れを切らした狼獣人は、ナイフを器用に弄びながら小さく呟いた。

  「あーあ、始めからこうなるって分かってたんなら先にやっとけって話だよな」

  彼はゆっくりとナイフを持っていた手を大きく上げる。それが合図だと知らない百目鬼は、その光景に注意力を向けてしまっていた。

  「あァ?何言ってんだテメ………うッ!!?」

  言葉を返そうとした時、彼の大きな体が揺らぐ。隼汰の方からでは何をされたかよく見えないが、不意を突かれたことだけは察した。

  百目鬼は背中に感じた痛みと共に後ろを見ると、眼下には隼汰と同じくらいの身長をした猫獣人。何の感情も持っていないような冷徹な眼差しを向けながら、ひらりと空気のように軽くその場から離れる。

  「くそっ、何しやがる!!待てこのやろ………んぐッ!?」

  追いかけようとした次の瞬間、視界がぐらつき、足に力が入らなくなった。体の中に重たい水を思い切り流し込まれたような違和感に襲われ、耐えきれず膝をついてしまう。

  この時点で既に異常事態であることを察した隼汰は必死に叫ぶも、それは無駄に終わった。

  「ハァ、ハァッ、ハァッ…なっ、何だこれっ…苦し……!」

  「俺らも若いからさぁ、いっぱい遊んだりすんの。で、今打ったのはそれをもっと楽しむためのお薬ってところかな?」

  明らかにその様子はおかしかった。既に視線は定まらず、顔が少しずつ紅潮しつつある。

  痙攣が止まらず、悪寒と発熱が同時に襲い来る。万年健康で病気になったこともない彼にとってその感覚は、とにかく気持ち悪いに尽きただろう。

  それは遠巻きで見えていた隼汰にでさえも、分かってしまうものだった。

  「効果が特段に強いらしくてな?可愛コチャンたちに使う前に頭イカれちまったら困るし、丁度いいからお前で試してみようと思っただけなんだよ、なぁ!!」

  「───が…ッ!!」

  ケタケタと笑いながら百目鬼の周りを歩く狼獣人は、いきなり彼の大きな脇腹を蹴り上げる。体格差で言えば確実に百目鬼の方が格上に違いないが、今の彼には抵抗する力すら入っていないようだった。

  そのまま何度も躊躇うことなく痛めつける狼獣人に恐怖しながらも、目を逸らす事ができなかった。先輩を心配する気持ちに、どうしても視線が向かってしまうのだ。

  しかしそんな彼に追い打ちをかけるように、事態は更に悪い方向へと傾いてしまう。

  「オメーら、いいぞ」

  「せ、先輩っ!!起きて!!起きてください!!」

  「丑尾、そいつどこかに縛り付けて見張っておけ。どうせ何もできねぇだろうが、一応な」

  「へい」

  隼汰もまた、大柄な牛獣人に何もできないまま、近くにあった柱に両手を縛り付けられてしまう。適当に縛られたため足だけは自由だったが、「少しでも俺の足を蹴りやがったら殺す」と本気で脅された彼は、恐怖のあまり声が出なかった。

  不良の学生では決して出せない、本物の悪意。変な真似もできないようにすぐ隣で立っている牛獣人にただ怯えながら、百目鬼が殴られ蹴られる光景を見ていることしかできなかった。

  「ぐぉっ…う゛ッ、ぐっ、くそ…がっ…!」

  多勢に無勢、薬の効きが早いのか段々と抵抗しようとしていた獅子獣人の手は震え出し、かろうじて防ごうと形作っていた腕の盾も意味を成さなくなっている。

  依然として数の暴力は圧倒的で、あの百目鬼がなすすべもなく一方的に攻撃されてしまっていた。集団での痛めつけは数分の間徹底的に続き、少しずつ弱ってきたのを確認すると今度は数人の仲間が百目鬼の四肢を必死に固定する。

  抵抗しようにも隼汰という人質を取られ、さらに思うように力の入らない百目鬼は血を滲ませなら歯軋りをするしかできない。

  そんな不良をニヤニヤと見下しながら、狼獣人は何の躊躇いもなく持っていたサバイバルナイフでビリビリと中心に沿って制服を破いていった。

  「!!??おっ、オイ!?何してんだ!やめろクソ野郎が!!」

  段々と露わになっていく獅子の肉体には大量の汗が吹き出しており、喧嘩だけで鍛え上げれてきた腹筋にはてらてらとした湿気の反射が見える。

  千切れた学校のワイシャツはべっとりと水を吸っては土埃を大量に付着させており、ぐちゃぐちゃになったそれはもはやボロ雑巾と呼んでもいいほどであった。

  「はい、ご開帳〜っと」

  そのまま下着もろとも破られ、百目鬼は隼汰以外の誰にも見せたことない自身の逸物を、見ず知らずの大人たちの前で呆気なく晒してしまった。

  強すぎるが故に誰からも近寄られることのなかったはずの彼が、抵抗すらできずに恥部を強制的に露出させられたのだ。薬を打たれたとはいえ、これほどまで尊厳を踏み躙られたことは彼にとって初めてだっただろう。

  「……ッ…!!」

  力を込めている歯茎から血が滲んでしまいそうなほど鈍い音を軋ませながら、百目鬼は渾身の殺気を込めて狼を睨みつけていた。

  それでも薬の効果で急激に血の巡りが良くなった肉竿はピクピクと何度か小さく脈打ち、既に透明な液体は亀頭周りを存分に濡らしていた。

  周りから恐れられるほど険悪で無慈悲に強い獣人がどんなに怒りや憎しみに瞳を燃やしていようと、他人の前で肉棒を勃起させていては何も説得力がない。

  初めに見た時のような威圧的な不良の雰囲気は、もはや完全に消えていた。それが可愛らしく思えてしまうほどの痴態に、周囲の視線が彼の股間へと集中してしまう。

  あまりの事態に火を吹き出しそうなほど顔を真っ赤にする百目鬼を見ながら、狼獣人は楽しそうに呟く。

  「気分はどうだ?暑いか、寒いか、気持ち悪いか、それとも体ん中がウズウズしてたまんねぇか?」

  「フーッ、フーッ、くそ…がぁ……!!」

  「おーおー良い目するねぇ。さすがは一番強いと噂されるだけあるな」

  ギロリと大人相手にも物怖じしない百目鬼は、息を荒げながらも必死に狼獣人を見据えていた。薬を打たれて力が抜けていなければ、今頃その大きな牙を首筋に突き立てていたことだろう。

  「けどな、大人を相手にするとどうなるか…お前は分かってねーんだよ」

  だが目の前の狼が言う通り、今この状況においてはそれも不可能である。本気を出せばコイツらなど簡単に蹴散らせるのにと[[rb:憤 > いきどお]]る心とは反対に、体の自由を奪われている事実に悔しさでいっぱいだった。

  しかし焦りに満ちた百目鬼の感情は、股間に感じた小さな衝撃によってぶつりと切断された。

  「──あ゛ッ!!!?」

  「体は正直だよな。こんなに我慢汁垂れ流しときながら見苦しい威勢張ってんじゃねぇぞ」

  「ぐ……!はぁ、んあぁっ……!」

  彼の靴は、百目鬼の股間へと伸びていた。ツンツンと玉袋を覆う毛皮を小突くように足が動き、それに合わせて彼の体が反応する。

  「ぐう、ああっ、くそッ…やめっ、やめろッッ!!」

  「こんなにデケェちんぽおっ勃てておきながらやめろなんて言うのか?なぁ、おい、百の目を持つ鬼さんよぉ」

  ビンビンに怒張していた百目鬼の大きな竿を掴み、容赦なく激しく擦り続ける狼獣人。その乱雑さには、試すだけなら誰でも問わないと言うような感情が垣間見えた。

  手のひらに流れる大量の先走りなど気にもせず、ぐっちょぐっちょと上下運動を行っていく。

  「出しちまってもいいんだぜ?これはそういう薬だからな、我慢する方が体に毒ってやつだよ」

  そう言うや否やギュッと握る手に力を込め、包皮を擦り付ける強さを一段と高めて一気に扱きあげる。無慈悲なほど速度を上げたストロークは、いとも容易く百目鬼の持つ快感の閾値を強制的に超えさせた。

  「待てクソ野郎…!!やめろって言っ…!あ、あっ、出っ……ん゛はぁあぁ゛ああ゛!!!」

  結果、射精欲求が尋常ではないほど早まっていた彼は、その刺激に耐えることなどできずに果ててしまった。

  人間のそれよりも二回り近くある太い腰がビクンと跳ね、肉竿の根元が小刻みに揺れる。咆哮にも似た絶叫が空虚な廃工場にこだまし、それに伴って勃起した彼の肉棒からはビュルビュルと止まることなく大量の白濁が放出されていく。

  粘液は放物線を描くように地面へと落ち、ぼたぼたと白い斑点を煤けた地面に浮かび上がらせる。

  数分間存分に噴射した後も下に垂れた肉棒からはトロトロと漏れ出し続け、白濁の水溜りと化した真下を見れば、その快感の大きさを嫌でも分かってしまうほどだった。

  大人の前で大射精をしてしまった不良獣人は必死に顔を下に向け、浅い呼吸を繰り返している。

  喧嘩番長として、隼汰を守るべきものとして、見るも無惨な姿を晒してしまった。もしこれが噂として広まれば、彼が持つ不良としての格は一瞬で地へと落ちるに違いない。

  百の眼を持つ鬼と呼ばれた負けなしの不良獅子獣人が野外で射精を行うという、不良と呼ばれるには程遠い下劣な行為をしてしまった瞬間だった。

  「……はは、オイオイ!こんな野郎まで敏感にさせちまうとは、少しこの薬を侮ってたぜ。お前もそう思ってんだろ?最強の不良クンよぉ!!」

  「がはぁッ!!あ゛っ、やめろっ、またソコ触るんじゃね……ぐは!!」

  なんとも楽しそうに、狼獣人は百目鬼の鳩尾にフォームの崩れたパンチをお見舞いする。力こそ強くないが、的確に急所を突かれた彼は込み上げる胃液を押さえ込むのに必死だった。

  それでも油断すれば勃起したチンポを握られ、快感に負け力が抜ければ肉体に鋭い痛みが走る。何度も何度も殴られ、射精し、また殴られる。

  繰り返される快楽と痛みの連鎖に感覚が狂い始めていた百目鬼だが、絶対に隼汰を助けるまでは何がなんでも負けてやるものかと意地を張っていた。

  しかし、自然と淫乱に出来上がってしまった体に媚薬にも近い薬を投与されたとなれば、彼の弱点を底上げしたも同然だった。

  「アニキ、コイツ乳首も立たせてますよ」

  「おう、たっぷり可愛がってやれ。こうなったらとことん楽しむしかねぇだろうがよ」

  「なっ!?やっ、おい、やめろッッ!!そこは!そこだけはッッ!!」

  怒号だけは一丁前に出せる百目鬼であったが、もはや周りの大人たちは誰1人として彼を脅威とみなしていなかった。

  それ以上に薬の効果に目を妖しく光らせ、これからどうしてやろうかと思索を張り巡らせる表情だ。

  「……あ゛っ!!?」

  力の入らない彼を羽交い締めにしていた熊獣人は湿った百目鬼の乳輪を指の腹で優しく撫でる。たったそれだけで感度の高まった百目鬼は、大きく口を開けて激しく反応してしまった。

  「かっ……くそ…!やっ…やめ、ろ…ォ…!!」

  抵抗できないのをいいことに、熊獣人は両手で乳首をつまんではコリコリと転がして弄んでいく。体格からは想像できない指の使いこなしに百目鬼の顔はどんどん火照っていき、感じていますと大々的に示してしまっていた。

  それに加えて肉棒の扱きが再開すれば、言いようのない快感に全身を激しく震わせてしまう。何度も使い込まれてきた性感帯を同時に責め立てられる悦楽の沼に、百目鬼の心がズブズブと嵌っていく。

  「あ……くぅ♡はぁっ…ん……♡」

  いつしか口は緩み、だらりと舌を垂らすようになっていた。頬の赤みは目元にまで広がり、その瞳はどこを見ているのか分からない。

  おそらく完全にスイッチが入りかけている状態だ。隼汰しか知らない不良獣人の秘密の姿が、とうとう第三者に知られてしまう寸前だった。

  

  「も、もういいでしょうっ!!十分効果は確認できたんじゃないですか!!?」

  その焦燥感は隼汰の身体中を巡り、恐怖をも克服させた。だからこそ彼は結ばれた縄に手首が食い込むことも忘れ、情けなく体を揺さぶりながら集団に訴えかける。

  「あぁ?ウルセーんだよガキが。黙って見てろ」

  「──っっ…!」

  興の削がれた獣たちに一斉に見られた隼汰は、その眼差しに串刺しにされる。

  人間よりも鋭く、学生よりも年を重ねた彼らの視線は、不良の蔓延る彼の学校に初登校した時よりも恐ろしかった。気を抜けば熱くなりそうになる瞼に力を込め、震える声を絞り出す。

  「だ…黙りません!!あなたたちが復讐したいのは分かりましたけど、だからといってやりすぎるのは違うんじゃないですか!?」

  「……おい、これ以上無駄口叩いたらブチ殺すぞ」

  見張りの牛獣人なんか怖くない。先輩が鼻先まで迫ってきた時の方がもっと怖いし、なんならここにいる全員は「悪い大人」なのだ。

  その人たちを糾弾して何が悪い。

  ここで竦めば……彼が、百目鬼自身が自分を認めてくれたことに対して裏切る行為になる。恥晒しでもなんでもいい、とにかく先輩のためにも時間を稼ぐしか自分にはできない。

  込み上げる自分への怒りに身を任せながら、弱々しい人間は叫び続けた。

  「あなたさっき、おあいこって言いましたよね!?これはもうおあいこなんかじゃな──あがっ!?」

  その時だった。太く大きな指が隼汰の顎を掴み、首筋が千切れんばかりに引っ張られる。

  早く逃げろ、このままじゃお前は死ぬぞと生存本能が急激に悲鳴を上げた。

  「いい気になってんじゃねぇぞ……雑魚のくせに口挟んでいいと思ってんのか」

  矢のように降り注ぐその視線は、隼汰が今まで経験したことのない感情を含んでいた。他人を傷つけることになんの躊躇も後悔も持たない、悪そのもの。

  そのまま大きな手で口を塞がれ、次第に呼吸ができなくなっていく。ギリギリと締め付ける力は百目鬼よりも強く、顎の骨が砕けてしまうのではと怖くなる。

  しかし隼汰にとってその力は初めてではなかった。何故なら他の獣人もまた、同じような力を持っているからだ。

  その光景を、日々登校するたびに目の当たりにしてきた。

  運良く隼汰は、百目鬼のおかげでその脅威を向けられることがなかっただけなのだ。

  けれど、だからといって引き下がることはしなかった。今更向けられなかった力の差を見せつけられても、もはや逃げも隠れもできないのだから。

  ならば、残された道は一つ。

  立ち向かうしかない。たとえそれが無駄に終わろうと、何もしない訳にはいかないのだ。

  隼汰は最後の抵抗として残っていた力を振り絞り、牛獣人の手に思い切り噛みついた。

  「ッ!!?」

  予想だにしなかった人間の抵抗に、牛獣人は思わず手を離す。人間の皮膚よりも硬く、毛皮もある彼に対しては大した痛みなど与えられていないかもしれない。

  しかし、それでも反撃はした。抵抗の意を示せただけでも十分だと、隼汰は震える視界で牛獣人を見据える。

  「……弱々しい人間風情が、不良に気に入られたからっていい気になるなよ」

  「──がっ…!」

  瞬間、隼汰の無防備な鳩尾に衝撃が走る。何が起こったのかも分からないまま彼の体の力は抜け、重力に負けるように地面へと倒れ込んでいく。

  逆流してくる胃液を口から漏らす感覚を味わいながら、視界は一瞬にして暗転した。

  何も見えない、何も感じない。

  自分は死ぬのだろうか。先輩ももう、ダメかもしれない。

  薄れゆく意識が辛うじて巡らせた思考も、もはやなんの役にも立ちそうにない。

  結局何も考えられないまま、彼の意識は深く落ちてしまうのだった。

  [newpage]

  「───♡──ッ♡♡───♡♡ッッ♡」

  「………う……」

  「──あ♡あ゛ぅ♡♡あぁっ♡♡イグ♡イっちまう♡くそっ♡♡お前らなんかにっ♡負けッ♡♡ん゛はぁあぁあッ♡♡♡」

  聞こえてきたのは、誰かが激しく乱れる声だった。濁った喘ぎ声が、意識を覚醒へと導いていく。

  まだ死んではいなかった。しかしそれは束の間の安堵で、声の正体を知っていた僕はすぐにその方へと目を向ける。

  その瞬間、息が止まった。喉に何か詰まったように、息をしたくてもできなかった。

  「ッぐ♡はぅっ♡♡あ♡がぁっ♡♡♡」

  「オラっ、オラッ!!もっとケツ突き出せや!」

  「…そ…そんな………!」

  そこには、制服を全て剥ぎ取られて裸になり、傷だらけの肉体に汗を滴らせながら四つん這いになっている先輩の姿があった。

  その後ろには先輩と同じ体格をした熊獣人が立ち、何度も腰を尻に向かって叩きつける。太った彼の腰が前へと突き出す度に、先輩は背中をのけ反らせて射精していた。

  大きな口には狼獣人の肉棒を咥えさせられ、まるでオナホのように使われている。顔中を汗か涙か精液かで分からない液体で濡らし、蕩けた目をしながら何度も前後させられ続けていた。

  僕が気絶している間に何度も殴られたのか、口元や目尻に痛々しい血が滲んでいる。それに片目の瞼は漫画みたいに青ざめて丸く腫れ上がり、もはや見えているのかどうかさえも怪しい状態だった。

  そんな激しく乱れる先輩の体を取り囲むように、他の獣人が先輩の乳首を2人がかりで分担して弄っていた。他にも別の1人が先輩のチンポを擦り、また別の1人は玉袋を揉んで刺激を与えている。

  その様子を見ながら屹立している各々の逸物を晒し、頬を赤らめて笑いながらじゅこじゅこと扱きまくっている残った数人の獣人。

  誰がどう見ても、ただの乱交パーティーの様子にしか見えなかった。

  これが獣人の裏の顔なのだろうかと錯覚してしまうほどに。

  前後を犯されながら同時多発的にほとんどの性感帯を触られておいて、あの先輩が耐えられるはずがない。僕にはそれが分かっていたからこそ、この状況が絶望的にしか思えなかった。

  もう、僕たちは助からないんだと。

  あの百目鬼先輩が。あんなに強くてカッコよくて、どこまでも頼りになっていった先輩が…こんなにもいきなり無様で淫らな姿に陥ってしまうなんて信じられない。信じたくなかった。

  でも、現実は目の前で無情に広がっている。時間は止まらず、ただ延々と先輩が犯される光景が繰り広げられているだけだ。

  「まさかこんなに効果があったとはなぁ?さっきまであんなに反抗してたのに今じゃ可愛く喘いじまってんじゃねぇか。ほら、またイクぞっ!」

  「ん♡♡んん゛ッ♡♡♡んんん♡♡んむぅ゛うう゛♡♡♡」

  後ろとほぼ変わりないほど肉棒を奥深くまで突き刺し、先輩の喉が無理やり押し拡げられていくのが見えた。同時に後ろでも子種を流し込まれたのか、大きな体を急激にくねらせる。

  その姿はまさしく、メスそのもの。僕だけにしか見せてくれない、不良として生きてきた先輩唯一の弱い側面だった。

  「はっはっは!!俺のザーメンこんな美味そうに飲んでくれるヤツなんてそうそう出会えねぇぞ!なあ、お前本当は素質あるんじゃねぇの?」

  「がっ♡ごぼっ♡♡♡」

  「コッチも高校生だと思えんほどの名器ですよアニキ。コイツ、相当の好きモンなんじゃねぇっすか」

  半分興奮気味に腰を振る狼獣人とは対照的に、熊獣人はじっくり穴を広げるように動かしていた。僕が寝ている時間がどれほどかは知らないが、あの様子だと既に何度も尻穴を使われてしまったのだろう。

  人間の僕でも分かるほどに、この空間には雄獣人ならではの臭いと精液の刺激臭が充満していた。

  ばちゅん、ばちゅんと懐かしくもいやらしい音が僕の耳を刺激する。それは普段なら興奮するはずの音なのに、今だけは絶望の音色となって僕の感情を蝕んでいく。

  全く遠慮のない打ちつけが、先輩を容赦なく責め立てる。

  普段なら愛くるしいはずの先輩の淫らな光景なのに、見ていられなかった。

  このままじゃ先輩が、おかしくなってしまう。

  もしも学校に通えなくなったら、一緒に登校できなくなってしまったら…全部僕のせいだ。

  嫌だ、そんなの。僕だってもう、いつまでも守られる立場じゃダメだ。

  敵わないとしても、無謀だとしても、先輩と同じように立ち向かわなきゃいけない。

  「やめ、ろおおぉおお!!」

  気づけば僕は、獣みたいな絶叫を上げながら突っ込んでいた。突然起こった事態に狼狽える大人たちに目もくれず、ただ真っ直ぐに。

  後になって気づいたことだが、奴らは気絶した僕の非力さを甘く見過ぎていたため、束縛を解いていたらしかった。そのおかげでこうして意表を突くことができたというわけだ。

  「テメェ、いつ起きてやがった!?止まれ!!」

  僕だと気づいた数人の大人たちが行手を阻む。当然だ、この状況で道を開けてくれるなんて思ってもいない。

  獣人に勝てる力も素早さも持っていない僕がこんな集団相手に真っ向から立ち向かったって、一瞬で潰されて終わりだ。

  ならば、頭を使うしかない。

  僕は向かってくる人たちに向け、予め手に握ってあった砂を投げつけた。廃工場といえど意外と残っているものだ、活用する以外ないだろう。

  作戦は効果的だったらしく、思いっきり砂粒を喰らってよろめいている数人の間をすり抜け、目の前に映った僕と同じ体格の獣人へと向かって肩をグッと掴む。

  「ううっ、あああぁああっ!!」

  そして少しの申し訳なさと共に、彼の体を思い切り振り回しながら放り投げた。もちろん彼の体が宙に浮くことはないが、さらに襲いかかってきていた別の獣人たちを足止めすることは成功した。

  ここまでくればもう、あとは僕次第だ。

  目の前で止まっている性行為の現場に駆け込もうと足を動かすしかない。俯く先輩の元へ、少しでも先輩の近くへ行けば、何かが………

  「──っあぐっ!?」

  しかし、それは叶わなかった。正直言えば予想していたことなのだけど、こんなにも早く追いつかれるとは。

  背中に走る衝撃と共に地面へと押し付けられた僕は、なんとか首を回して上の方を見る。するとそこには、僕の見張りだった牛獣人が冷淡な眼差しで僕を見つめていた。

  「……くそ…!」

  物音と声で状況を察したらしい狼獣人が、目の前へと迫ってくる。浮かべている表情は牛よりも威圧的ではないが、その裏に隠された別の恐ろしさを感じてしまう。

  「お前、起きてたのか?」

  「先輩を…離してください……!」

  僕はその声が怖くなる前に、素早く返答した。きっと相手のペースになるだろうからと、言いたいことをはっきりと言うしかなかった。

  それでも、この男の表情が変わることはなく。

  「それは無理なお願いだな。せっかく楽しんでる最中なのに止めるワケねぇだろ?」

  彼は僕を、道端に捨てられたゴミを見るような目で睨みつける。先輩と話すようになってからほとんど頭を下げられたことが多かったからか、こんなにも獣人の視線が怖いものだったのかと改めて思う。

  僕のことを全く気にかけていないという様子に、人間と獣人の圧倒的な壁を感じざるを得なかった。

  「お前、コイツの舎弟なんかじゃねぇだろ。あまりにも弱すぎるっていうか、そもそもこんな不良が人間を受け入れるなんて考えられねぇしな」

  「…!」

  その言葉に、何も言い返せない。文字通り僕たちの関係は舎弟なんかでもなんでもなく、ただの恋人。

  僕はケンカなんか一度もしたことないし、ケンカをするための力も何もない。そんな僕を百目鬼先輩が認めたなんて話、信じる方が無理だろう。

  「あ、そうか、パシリかってことか?それなら合点がいくな」

  「あ゛ぅっ♡♡♡」

  そう話しながら、狼獣人は先輩のケツに肉棒を突っ込む。熊獣人はひと行為終えて萎えかけた肉棒を垂らしながら腕組みをしており、僕に対して何の警戒心も持たずに突っ立っていた。

  言い返せない僕は牛獣人に押さえつけられながら、先輩が犯される光景を目の当たりにしてしまう。鼻に香った先輩の匂いに安心しかけるも、別の雄と精液の刺激臭ですぐに現実に引き戻された。

  「しっかし、こんなヤツをも堕としちまうとはなー。本番は少なめにするか?」

  「あ゛♡うっ♡ひぐっ♡♡ん゛♡おッ♡♡」

  狼が腰を動かすたびに先輩の濁った喘ぎ声が響く。僕は牛獣人に抵抗しようと息を荒げて力を込めるが、石みたいにびくとも動かない彼の手は逆に僕の体を圧迫する。

  先輩を助けたいのに助けられない悔しさに、涙が溢れそうになる。それはどうしても埋めることのできない人間と獣人の差だからってことぐらい分かってるけど、だからといって諦めたくもない。

  「あの百目鬼だ、持ってる駒は何百人とかなんだろうな。その1人ってコトだろ?なぁどうなんだ、百目鬼よぉっ!!」

  「ん゛ひぁぁッッ♡♡♡」

  でも、目の前にある現実は残酷だった。

  質問したと同時に勢いよく腰を突き出し、先輩の尻の中へと精液を流し込む。対する先輩の体は人形のように前へと傾き、逞しい肉竿から無様にも気持ち良さそうに射精していた。

  四つん這いになっているのも苦しそうなほど息は浅く、もはや意識もほとんどないのだろう。先輩が纏っていたいつでも身を預けたくなるような安心感や雄らしさは、もうどこにもなかった。

  「けどまぁ殴られた3人もたっぷり楽しませてもらったし、あとはお前がちゃんと謝ればそろそろ終わらせてやってもいいがなっ」

  「お゛ふッッッ♡♡♡」

  狼獣人が突き出した肉棒を一気にずぼっと引き抜き、先輩がまた情けなく喘ぐ。もはや尻穴を擦られるだけで絶頂してしまうほど感度が高まってしまったことを、地面へと垂れる白濁が表していた。

  嫌でも見えてしまう先輩の尻穴はヒクヒクと蠢き、その度に僕が気絶しているうちに流し込まれたであろう精液が溢れ出している。

  自分の身の危険を感じていながらも、この光景を見て股間に血が集まってしまう僕は、なんて最低な存在なんだろうか。もういっそ、このまま死んでしまえばいいとさえ思った。

  もしも奇跡が起きてこの状況を切り開くことができたとしても、先輩の悪い噂が広まってしまう可能性は拭いきれない。

  社会的にも身体的にも、この先には絶望しか残っていなかった。こんなの、僕は謝っても許されないだろう。

  僕と付き合っていたからこうなった。僕が弱かったからこうなってしまった。

  やっぱり僕は、先輩なんかと付き合っていい分際じゃなかったんだ。あの時、先輩の告白を受け入れてしまったことが間違いだったのだ。

  自分の息を止めるかのように、頭の中がマイナス思考で染まっていく。いっそ僕が彼らの奴隷になれば、先輩だけでも解放されるかもしれない。

  そんな自暴自棄な考えが頭をよぎった時、快感と薬の作用で動けなくなっていた先輩の体が微かに動いた。

  「先輩…?先輩っ!!起きて!!起きてください、お願いですから!!」

  僕の言葉が聞こえたのか先輩の耳がぴくりと動く。希望と罪悪感が入り混じった僕の感情が爆発しそうになるが、先輩の様子はさほど変わっていなかった。

  「はぁ♡はぁっ♡ふーっ♡あ、謝る、だと…っ!」

  「そうだ。そのまま頭下げて「すみませんでした、もう二度としません」って謝れば許してやるよ」

  僕の存在を無視するように、狼獣人は先輩に向けて吐き捨てる。そんな先輩もまだ息が荒く、言葉を発していられる時点で限界のようだった。

  「先にやったのは…オマエらの方だろうが…!なのにこんなことしやがって…大人として恥ずかしくねぇのかよ……ッ!」

  「まだ口聞けるほど耐えてるのは素直に認めてやるが、自分の置かれた状況をよく考えて言えよな」

  その瞬間、彼は弱っていた先輩にトドメを刺すように顔面を思いっきり蹴り上げた。正気を取り戻し始めていた先輩の顔は一瞬のうちに見えなくなり、崩れ落ちるようにドサリと地面に倒れ込んでしまう。

  他人が他人を傷つける光景をここまで間近に見たことのなかった僕は、息すら忘れてしまっていた。続け様に先輩は体の節々を蹴られ、激しい痛みに耐えるように背中を丸める。

  こんなの、普通のケンカでもやることじゃない。

  ただの弱い者いじめと同じだ。

  僕が近くにいるせいで激しく抵抗できないのを利用され、先輩は先ほどの熊獣人に体を持ち上げられて無防備な前面を晒してしまう。

  それはまるでプロレスの試合のような固定のされ方。しかしこれは、観客を沸き立たせるための興行なんかでは全くなかった。

  本気で相手を痛めつける目的の、人としてあり得ない行為。そのまま狼は、力任せに先輩の腹を殴り始める。

  「がぁ…!!はぐッッ、う゛ッ!!……っく、お゛ッッ…!!」

  「お前が謝るまで続けるからな。死ぬんじゃねぇぞ」

  「はぁ、はぁっ、クソが…!テメェらマジでふざけ……あ゛ひゃぃッッ♡♡♡」

  歯を食いしばる先輩をよそに、熊は羽交締めを片腕で保ったまま先輩の乳首を逆の手で執拗に弄り始める。図体のくせに手先が器用なのが変に気分が悪いが、先輩の喘ぎ声が気持ちいいと示していた。

  手を伸ばせばきっかけの一つでも作れそうな距離なのに、僕は何一つ出来やしない。

  人間という非力な自分の体を呪っても、無力感で押し潰されるだけだった。

  「ほら、言えよッ!!俺は他人に殴られて射精しちまうエロガキだって!!なぁ!?百目鬼よォ!!」

  「あ゛ッ♡♡がふっ♡ぐっ……あう゛ぅッ♡♡♡」

  殴られるたびに先輩は口から涎を吹き出し、溺れたように苦しんでいた。激しい痛みを感じているにも関わらず屹立してしまっていた肉棒は激しく揺れ、乳首を摘んでいた手がその部分へと伸びる。

  激しく扱いてはいないが、確実に刺激は与えているのだろう。揉み込むようないやらしい手つきは簡単に先輩を堕とし、殴打の衝撃と共に濁った声が漏れていく。

  「は♡んぅ♡♡あがっ♡♡クソっ♡クソ野郎がッ♡♡」

  「いくら口で逆らったってチンポビンビンにしてちゃ意味ないって言ったよなぁ!?さっさと諦めて謝れってんだよ!!ほら、ほらッ!!」

  「お゛♡ぎっ♡♡あ゛ぐッ゛♡♡♡ひ♡♡ん゛ああぁ゛゛♡♡♡」

  鳩尾に狼獣人の拳がめり込むたび、先輩は堪えきれないというようにビュッビュッと射精を繰り返してしまっている。それだけではなく、急所以外のどこを殴られても同じような反応を示していた。

  とうとう痛みすらも快感になってしまったのだろうか。もう、取り返しのつかない所まで来てしまったのか。

  僕は目に涙を浮かべながら、ごめんなさい、ごめんなさいと先輩に何度も謝り続ける。僕がこれ以上声を上げても、きっと届かないのだろうが。

  「言え早く!!雑魚チンポで射精しながら「すみませんでした」って言えば全部許してやるからよ!!」

  それだけは言わないでください。そんなこと言う先輩なんて見たくないんです。

  なんて大声で言えたらどんなに良かっただろうか。でも、僕にはできなかった。

  自分の弱さで自分の首を絞めるように、呼吸ができなくなっていく。

  「す♡すっ…♡すみまっ♡すみませ…♡♡すみませんでしっ…たあ゛ぁあッッ♡♡♡」

  耐えきれなかった先輩は、その言葉を最後まで言うことなく果ててしまった。処刑人のように固定されて直立した体、その股間部分から立ち上がった先輩の肉棒から大量の白濁が放出されていく。

  高まった性欲のおかげで製造され続けていた獅子の精液が、煤けた色をした地面に降り注ぐ。完膚なきまでに、先輩の持つ不良としての尊厳にヒビが入った瞬間。

  そう、思わざるを得なかった。

  「そうそうよく言えました!でもまだ誠意ってモンが足りねぇなぁ、こりゃもう一回だなっ!!」

  「───ッッあ゛゛ッ!!!?♡♡♡」

  男根を引き抜いていたはずの狼獣人が、謝った直後のタイミングで再び先輩の濡れ切った穴めがけて一気に突き刺す。その衝撃で先輩の背中がビクンと震え、また勢いよく射精した。

  「かっ♡♡ひぁ゛ぁ♡♡あんっ♡ぐがッッ♡♡♡」

  もはや先輩の尻は、オモチャのように弄ばれていた。大人だからこそ適当に見える、乱雑で粗暴なセックス。

  先輩が一言謝ったところで、コイツが許すはずなどない。だからこそ僕は、先輩に言って欲しくなかったのに。

  もともと性欲の強かった先輩だから、こうなってしまったらもう止められないのだろう。そう考えた途端、僕が今まで必死になって抵抗していたことも馬鹿馬鹿しくなって、力が抜けていく。

  きっと叫ぶ必要もない。この人たちが満足するまで先輩は種壺として使われてしまうのだろうか。

  このまま全て終わったとしても、先輩は自我を保っていられるのだろうか。

  そんな先輩の心配ばかりしていた僕自身にも危険が迫っていたことを、突然感じた衝撃によって気付かされる。天地がひっくり返ったかと思えば、目の前には僕を押さえつけていた牛獣人に見下ろされていた。

  その瞳は微かに充血し、息は荒く、湧き上がる感情を押さえつけようとしている表情をしていた。

  その瞬間、僕は全てを悟った。抗いようのない性の欲望に飲まれた獣に、喰い殺されるのだと。

  彼は僕の顔を股でしっかりと挟み、徐に中央のチャックを開けていく。彼の体重によって肺が押し潰され、空気を欲しがった僕は小さな鼻呼吸を繰り返すしかできなかった。

  「クソ、あんなの見てたら滾っちまうに決まってんだろうが…」

  布の隙間から、どぎつい雄の匂いが漏れ出していく。先輩よりもひどく濃くて重たい、悪く言えば汚らしい匂いだった。

  嫌だ、嗅ぎたくない。先輩の逞しい雄の香りしか記憶していない僕の脳に、他の雄の匂いで上書きしようとしないでくれと懇願する。

  「咥えろよ…人間でもそれくらいは出来るだろ…」

  「……んん…ふ、ぐ…っ……!」

  そう思っても、抵抗すらできない僕は牛獣人の大きな巨根を顔に押し付けられてしまう。既に半勃ち状態で先走りも出ており、にちゃにちゃと頬の上で塗りたくられる嫌悪感に吐き気がした。

  しかし僕は、その肉棒を手で払い退けるなんてことはできやしないのだ。

  あまりにも無力な自分に絶望し、ぎゅっと目を瞑り、瞼の裏に溜まる涙を溢さないように耐えるしかなかった。せめて少しでも抵抗してやると、苦し紛れで投げやりな感情に身を任せながら。

  「はは、じゃあ2人で仲良く楽しいコトするかぁ。人間くんよぉ」

  「……う……んんっ…!」

  でも、僕の口がこじ開けられるのは時間の問題だった。いくら開けないと思っても、無理やり手で広げられてしまえばそれで終わりなのだから。

  先輩、ごめんなさい。本当にごめんなさい。

  心の中で何度も謝りながら、こんな状況でも見えない先輩に助けを乞う自分に嫌気が差す。先輩は身も心もボロボロなのに、僕を助ける気力すら残っていないはずなのに。

  僕はこの後自分の身に起こることへの恐怖を感じながら、案の定口をこじ開けられてしまう。すぐそこまで迫っている牛獣人の男根の熱気を察しながら、滑った物体の感触を唇に感じた。

  「──────かっ」

  しかしその感覚は、一瞬で消え失せた。

  声なのか物音なのか分からない音が聞こえた瞬間、僕の体が一気に軽くなる。次いで何かが勢いよく転がるような衝撃が隣の地面から響き、瞬く間に遠ざかっていった。

  いきなり解放された衝撃からパニックになりかけていた僕だが、あまりの出来事にフル回転した脳が目を開けろと指示を出す。

  「……………え、えっ…?」

  一瞬にして広がった視界に、僕は目を疑った。あの大柄な牛獣人がいないのだ。

  さっきまで僕に跨って逸物を晒していたはずなのに、まるで初めからそこにいなかったかのように消えていた。

  代わりに僕の視界の端にいたのは、全裸の獅子獣人。僕がそれを先輩だと判断するのに、かなりの時間を費やしてしまった。

  だってその体中は傷だらけで、顔には青ざめた痕が残っているし、血と精液の滲んだ毛皮が彼を包んでいたのだ。

  それは僕が知っている先輩の姿じゃなかった。

  誰もが竦んでしまうような険しい顔面と喧嘩強さを持っていながら、どこまでも優しいはずの先輩だとは到底思えなかったのだ。

  その原因は、体中から溢れ出している悍ましい気迫のせいだった。

  「テメェ、らァ……フザけんじゃねぇ…ぞォ…!!」

  「せ…先輩…?」

  なぜか、先輩の体が一回り大きくなっているように感じた。まるで物語の中に出てくる魔物みたいに、前傾姿勢になりながら喉奥を鳴らして低く唸る。

  ギリギリと奥歯の軋む音が痛いほど聞こえ、剥き出しになった鮮血を滲ませる歯茎が生々しい。全身の毛皮が少しずつ逆立っていくのをこんなにも間近で見た僕の背筋には、ひどい寒気が走った。

  「……っぐ、がふっ…!」

  声のした方を見れば、さっきまで先輩のことをさんざん犯していた狼が横たわっていた。それも、僕が襲われかけていた牛獣人を下敷きにして。

  彼は気絶しているようにも見えるが、軽く咳をしたことによって意識があることは分かった。

  「お前…どうして急に動けるようになって…!」

  体同士でぶつかり合った衝撃か、狼獣人は苦しそうにしていた。

  そしてこの状況から、僕が助かることができたのはあの狼獣人が投げ飛ばされたからだと推測できた。けどそんな芸当が出来るのは、この場ではおそらく1人しかいない。

  そんな奇跡はもう起きないと諦めていたはずの願いが、現実になったのだ。先輩はあの途方もない快感に抗い、僕を助けてくれたんだ。

  だけど今の僕にとって、何故か不思議と怖いという感情の方が勝っていた。

  今の先輩の構えが、喧嘩をするためのものではなかったからだ。この時点で僕は異常事態であることを感じ取るも、時すでに遅く。

  「ま、待ってくださいせんぱ……うわ!!?」

  慌てて駆けつけようとした瞬間、激しい突風に体が吹き飛ばされそうになる。必死に踏ん張ってもあまりの強さに少しだけ足が浮いた。

  咄嗟に閉じた目を開けると、そこにはもう先輩の姿はなくて。

  「やっ───」

  動けずにいた狼獣人の方向へと一気に駆け出していたらしく、そのすぐ後に何かが殴られるような音がこだました。聞いたことのない凄まじい力の衝撃音に、その場にいた全員の息が止まる。

  僕は何も見えなかったが、誰が何をされたのかは分かったような気がしていた。ただ、あまりにもその出来事が早すぎるとは思ったが。

  そのまま先輩は何かを掴み、くるりと体を半回転させる。丸太のような腕に持ち上げられていたのは、あの狼だった。

  「は……嘘だろ…」

  「アイツ…なんで立ってんだ…!?」

  僕を囲んでいた大人の獣人たちが、次々に驚愕の言葉を漏らす。それは例外なく僕も同じで、後ろから漂う底知れない感情の塊に生命本能が悲鳴をあげていた。

  呼吸すら忘れて棒のように立ち竦んでいたその時、突如として叫び声がした。

  「お、おいお前らっ!!ボサっとしてねぇでやるんだよ!!」

  「はっ!?そうだテメェっ、アニキのこと離しやがれ!!」

  その言葉と同時に、立ち止まっていた獣人たちが一斉に先輩へと襲いかかる。僕が同じ立場だったらすぐに人間である僕を人質に取っただろうけど、彼らにはそんな余裕もなかったようだった。

  きっと、激昂した先輩に対する脅威の度合いが桁違いに違っていたからだろう。いくら不良といえど、獣人の大人に囲まれてしまえば勝つことなんてできないかもしれない。

  

  でも、一緒に過ごしてきた僕だからこそ分かる。

  今の先輩が負ける気配なんて、微塵もなかった。むしろ今から立ち向かっていく大人たちの方が心配になってしまうほどだ。

  この数だ、どんなに強いと言われてもどこかで綻びが出る。そこを叩けばすぐに崩れ落ちるだろう。

  その糸口を軽々しく狙っていた大人たちの作戦は、1人の不良の雄叫びと共に儚くも一瞬にして散った。

  大きな声を上げることもなく、[[rb:歪 > いびつ]]に捻れたうめき音が響き渡る。ある人は頬を殴られ、ある人は腹を蹴り上げられ、反撃の隙も与えられないまま場外へと吹き飛ばされていく。

  こんなところで先輩の本気を見ることになってしまった僕は、その強さたる所以を垣間見ていた。

  四方八方を塞がれ、自分の体は全裸で何も覆うものはない。にも関わらず先輩は、襲いかかる数々の暴力に反応しながら反撃していたのだ。

  意味が分からなかった。ゲームでよく見る危険察知の能力でも持っているかのように、真後ろからの攻撃さえもギリギリで身を翻して躱していた。

  普通に考えて、後ろが見えているわけもない。まるで先輩の中にある防衛本能が異常に発達していると推察することしかできないほど、その光景は常識から外れていた。

  「…………先輩……」

  これが、百の目を持つ鬼の正体。あの異名は、強すぎるが故に妄想で付けられた名前ではなかった。

  再び鼓膜が破れるような咆哮を放った先輩は、最後の攻撃とでも言うかのようにある獣人の尻尾を掴んでは振り回し、ほとんどの大人たちを巻き込んでは薙ぎ倒していく。

  それはまるで凄まじい風速を纏った台風のようで、近づくことすらできそうにない。文字通り人が振り回されるという桁違いな光景を目の当たりにしていた僕は、一歩も動けなかった。

  いつの間にか、先輩へ殴りかかっていた獣人たちのほとんどが地面に突っ伏している光景が広がっていた。あんなに元気だった大人たちが、体の節々を押さえながら痛みを堪えているのだ。

  通っている高校内での喧嘩ならば、僕でもすっかり慣れているはずだった。

  でもこれは、完全に違う世界だ。経験も浅すぎる僕たちが踏み入れてはいけない領域に来てしまったような気がして、少しだけ胃が痛くなった。

  そんな渦中の中心にいたであろう狼獣人は、今も先輩の手によって鷲掴みにされたままだ。

  今になって思えば、あの人を武器として振り回していたのだろうか。腕にいくつも痣を作り、先輩と同じように口元に血を滲ませている。

  高そうな服やアクセサリー、そして手入れされていたであろう毛皮は無惨にもボロ雑巾のように千切れて汚れ、さっきまでの余裕はどこにもなかった。

  完全な形勢逆転だ。

  でも、初めて怒りの臨界点を超えてしまった先輩がここで終わることはなかった。

  「オ゛ラッ、この、クソ野郎がッッ!!!まだッ、くたばってんじゃ、ねぇぞゴラ゛ァ゛ぁッ!!!」

  ぐったりとした様子の狼獣人が、地面に叩きつけられて先輩の鉄槌を喰らっていた。

  初め僕は、わざと止めに入らなかった。先輩や僕をこんな目に遭わせた報いだと、先輩の肩を持つ気持ちで見ていたのもあったのかもしれない。

  その感情に嘘はなかったと思う。

  「ふざっけんな!!隼汰はなァッ、パシリでも、何でもねぇんだよッッ!!!!!」

  「せっ、先輩………!」

  けど、少しずつ僕の心は焦っていた。今の先輩はおそらく、我を忘れている。

  先輩も薬で弱らせられたとはいえ、今の状態はもう普通に戻っていると言ってもおかしくない。薬さえなければ狼獣人と先輩との差は歴然だろうし、もはやこうなってしまってはどちらが大人と学生か区別がつかないまである。

  「弱いものイジメしてんのはっ、テメェのほうだろうが!!ケンカで勝てねぇからって薬使うなんて、どこまで卑怯なんだテメェはよお゛ぉ゛ッッ!!」

  先輩の声が、僕の耳を打ちつける。卑怯者。彼は僕を攫って先輩を襲った、犯罪者にも近しい人だ。

  ……でも違う、今はそんなことを考えている場合じゃない。このままだと先輩が、取り返しのつかないことをしてしまう気がした。

  僕がやらなきゃ。

  僕しか今の先輩を止めることができないんだと、何度も心に言い聞かせる。

  それでも始めて見た先輩の暴虐ぶりに、全身が震え上がってしまっていたのもまた確かだった。

  告白されてからずっと一緒にいて、何度も体を交えて、先輩の全部を知ったつもりでいたのに。

  まだ僕は、先輩の本当の姿を知らなかったのだ。先輩の奥底に眠る獣人としての本能をこの目にしてしまったことで、本物の「恐怖」を知ったような気がした。

  だとしても、ここで何もできないのは絶対に嫌だ。

  先輩が僕を選んでくれたように、僕も先輩に選ばれた人間として意地くらい見せなきゃ顔が立たない。これくらいできないようじゃ、僕は先輩と付き合う資格なんてないんだ。

  「オレを本気で怒らせたのはテメェが初めてだよ…その理由くらい分かるよなぁ!!あ゛ぁ゛!!?」

  先輩の喉から、聞いたこともない声が滝のように流れ出ている。僕に向けられた言葉じゃないのに、聞いているだけで膝から力が抜けてしまいそうなほど強い語気だった。

  そんな恐怖の中でも自分を鼓舞し、一歩ずつ踏み出した足に力を込める。足の動きを早め、周りのことなど気にもせずに殴り続ける獅子獣人のもとへと向かっていく。

  近づくにつれて耳を塞ぎたくなるような怒号が大きくなるも、ぎゅっと目を瞑って振り切る。

  「オレの大切なヒトに手ェ出したことっ、死ぬまで後悔させてやるからなァァッ!!」

  先輩が、握りしめた拳を振り上げた。

  それを見た僕はすぐさま先輩の隣まで駆け寄り、まだ震える手のひらで毛皮の生えた肩を掴んで、ありったけの力を込めて叫んだ。

  「百目鬼先輩っ!!!!!」

  叫んでから数秒。辺りの音が消えたように感じた僕は、恐る恐る瞼を開けていく。

  そこには、何かに気が付いたかのように僕を見る先輩の姿と、その拳を受け止める屈強な腕が微かに見える。その手を目でゆっくりと追うと…持ち主はあの牛獣人だった。

  間一髪というのだろうか、彼のおかげで先輩の最後の一発は失敗に終わってくれたらしい。

  「……もう、やめてください…!これ以上やったら、死んじゃいます……!」

  胸の中に広がる安堵をこぼしていくように、僕の口から震えた声が発せられる。力なく掴んだ先輩の肩は傷だらけで、それでも硬く強張っていた。

  「でもよ!コイツは何もしてねぇお前を…」

  「いいんですもう!!僕だってこの通り何ともないんですから…!」

  強く、今までにないくらい強く先輩の肩を握り締める。すぐ下で寝転がっている狼獣人は浅い呼吸を繰り返しているが、僕はそれを直視することができなかった。

  視界の端に映る赤黒い斑点に涙と震えを堪えながら、精一杯の力を込めて先輩の分厚い皮膚に指を食い込ませていく。

  「先輩が犯罪者になっちゃうんですよ……やめてくださいよそんなの…!」

  「………」

  そう言ってやっと、掴んでいた先輩の肩から力が抜けるような感覚があった。先輩もその言葉でようやく理解したのか、俯くような視線で僕に教えてくれる。

  そして大きなため息をつくと、意識を回復させた牛獣人に向かって唸るように話しかけた。

  「チッ……隼汰の心の広さに感謝しろ。今日は半殺しで許してやる」

  「……ふざけるな、と言いたいところだが、噂は本当だったって訳か」

  「何…?」

  牛獣人は軽く笑いながらそう呟くと、先輩の拳を手のひらで包みながら立ち上がる。振り払おうとするもできないらしかった先輩はそのまま腕を持ち上げられ、正面で対峙するような形になった。

  まさかまだ終わっていないのか…!?

  しかしそんな僕の考えを嘲笑うかのように、牛獣人は根負けしたような顔を見せながら呟いた。

  「俺の仲間たちをたった1人でやっちまったのはお前が始めてだったんでな。驚きのあまり関心しちまっただけさ」

  「はぁ…?何言ってんだよテメェ…」

  「今更って思うかもしれねぇが、もうお前らを襲ったりしねぇよ。悪ぃことしたな」

  ………いや、流石にそれは僕も言ってる意味が分からなかった。

  それでも彼は、諦めたように掴んでいた先輩の手をぱっと離す。それはつまり、これ以上の闘いっは望まないという意思表示でもあった。

  それを察した先輩も警戒は解いたらしいが、疑心暗鬼になる状況には変わりない。

  「素直に認めてやるって言ってんだよ。少しは人の言うことも聞けよって」

  「な、何が目的なんですか…?」

  「別に何も。お前にここまでやられるとは思ってなかっただけだ。こんなんじゃ反撃もクソもねぇからな」

  僕の質問もひらりと躱すように牛獣人は受け流し、やられてしまった獣人たちを指差しながら返答した。

  悪くいえばことに飽きたような言い草だけど、これは素直に受け取ってもいいものなのだろうか。それとも罠で、まだ何か隠し持っているものがあるのか。

  気持ち的には後者の方が強かったが、態度からして本当に諦めていそうな感じがしてならなかったのも確かだ。

  「てめぇ…された側の気持ちも考えねぇでこんなこと…!」

  「だから言ってるだろ、すまなかったって」

  「せ、先輩!たぶん、この人の言ってることは本当だと思います。だからここは素直に帰ってもらった方が…」

  僕の言葉にハッとした先輩は、モヤモヤした表情を浮かべながらも口をつぐんでくれた。牛獣人が僕達の本当の関係を知ることはないと思うが、できることなら早くここから去って欲しかった。

  その意図を察したように、牛獣人は地面で気を失っている狼獣人を軽々と持ち上げ、僕達のそばを通り過ぎていく。

  「オイお前らぁ!!いつまでノビてやがる、帰るぞ!!!」

  「…!」

  初めて聞いた牛獣人の大きな声は、先輩がよく喧嘩の時に上げる雄叫びと同じ…いやそれ以上の声量だった。ビリビリと鼓膜の奥まで響くような重厚感に、僕は思わず息を呑んでしまう。

  それを聞いた大人の獣人たちは、痛む体に鞭を打って立ち上がっていく。それでも年上だからか先輩に対して恐怖している様子はなく、むしろ悔しさに歯を食いしばっているように見えた。

  やっぱり先輩は強すぎる。ここまでの人数相手にこんなことできるなんて…もはや学生の域を超えているとさえ思ってしまう。

  けれど僕は今、もしかしたらあの牛獣人こそが相手にしなくてよかった人なのかもしれないと少しだけ安心していた。

  そう思ってしまわざるを得ないほど、思い返せばこの人の体格や力は凄まじかったように思う。もちろん、ブツの大きさも合わせて。

  「じゃあな百目鬼。どうしてその人間を気にかけるのか正直まだ分からねぇが…その強さだけは誇っていいぜ」

  「うるせぇ…!とっとと早く帰りやがれ」

  牛獣人は、先輩に対して全く怖がる素振りを見せることなく振り返って言っている。やっぱりこの人、何か違うと思ったが、問いかける機会は既に失っていた。

  それよりも先輩は体を前に乗り出し、ぐるるると喉を鳴らしながら小さく吠える。

  「次また隼汰に何かしてみろ、今度は絶対に容赦しねぇからな……!!」

  「分かってるよ。ったく、よっぽどそいつのことが好きなんだなお前は」

  「…はっ…はぁ!??ななな、何言ってんだテメェ!?ブッ殺すぞ!!!」

  取り乱した先輩を宥めるのに僕は必死だったが、その様子を他の人が誰1人として気にかけていなかったのが不幸中の幸いだったかもしれなかった。

  僕はこれが最後の会話だと思いながら、牛獣人に話しかける。

  「あ、あの!今日のことは忘れてくれると助かります。そうすれば僕達も、何も言わないので」

  「それはありがたいが、俺らみたいな奴らにそう易々と頼み事はするもんじゃねぇぜ?」

  「いや…あなたなら聞いてもらえると僕は思って言ってるんです。お願いできますか…?」

  あの人の前で毅然とした態度を維持するのは、これ以上ないくらい大変だった。だけどこれくらいしか、非力な僕にできることはないんだと心を奮わせて背筋を伸ばす。

  やがて牛獣人は小さく笑って返した。

  「いいだろう。良い舎弟じゃねぇか、なぁ百目鬼」

  「いいから早く帰れってんだよ!これ以上何か喋ったらブン殴るぞ!!」

  まだ口数の減らない牛獣人は、先輩のことを明らかに下に見ているようにも見えて。そりゃ大人だからということもあるかもしれないけど、あまりにも余裕に満ち溢れていたように思えてしまって。

  そんな彼は、最後にこう言い残して廃工場を去っていった。

  「あの時のお前、例えるなら不良というよりは化け物みたいだったな」

  そして残されたのは、固まった精液と汗を纏った全裸の不良の獅子獣人と、制服を砂埃で汚した普通の人間。

  こうして、僕と先輩を巻き込んだ事件は、全部が嘘だったかのように幕を閉じたのだった。

  [newpage]

  「……先輩っ!!!」

  誰もいなくなって静寂が訪れると、太陽は既に沈んでいたことに気がつく。だけどそう思ったのはほんの一瞬で、ようやく自由に慣れた僕はすぐに、ぐちゃぐちゃになった毛皮の獅子獣人に抱きついた。

  本人は汚いからやめろとか言って離そうとするが、緊張から解き放たれた体が聞き入れることはなかった。本物の死の恐怖を経験してしまった僕の心は、とっくに限界を超えていたから。

  「怖、かった……こわかっだでずぅ………う゛わああぁ゛ん!!!!」

  「オイ、隼汰…!は、離れろって…」

  ぼろぼろと涙が溢れてきて止まらない。

  先輩の大きな手が僕の肩を押し出そうとするが、その力はどことなく震えていて。いつも僕に危なくないようにしてくれているのだと分かっているけど、今だけは少し違っていた。

  なぜか、僕を遠ざけようとする仕草だった。

  「おっ、オレのこと、怖かったんだろ…?怒り狂ったバケモノみたいに…見えただろ?」

  「………えっ、な、何言ってるんですか…?」

  「だ、だからその…こんなオレのこと嫌いになっちまっただろって。あの時は自分でも抑えきれなくて、もし隼汰が止めてくれなかったら…オレは本当に人を殺しちまってたかもしれな──んぐ!?」

  見上げると先輩の顔は、今まで見たことがないくらいの悲しい表情をしていた。隠したかった一面を知られてしまった先輩の、苦味を潰したような顔は僕でも初めてだった。

  だけどそれがどこまでも的外れというか、考えていることが鈍感というか。そんな先輩がなんとも愛おしくて、口を塞がずにはいられなかった。

  「う…んむ、んんんっ……!」

  僕は先輩の大きな口の中で舌を絡めながら、その大きな体を抱き寄せるように両腕を回していく。全部を収めることはできないけれど、それでもできる限り先輩を感じていたかった。

  胸の中から込み上げる安堵と、今になって膨れ上がってきた不安が入り混じる。それを先輩の体内に全部吸い取ってもらいたいくらいに、必死に貪っては唾液を流し込む。

  「…ぐ、ぷは………」

  口端にかかる銀色の橋がゆっくりと落ちると、先輩は赤らめた顔を見せつつも嬉しそうにしている。たった少しの時間しか離れていなかったのに、どうしてこんなに久しぶりに感じてしまうのだろうか。

  それほどまでに、先輩との距離が離されてしまったような気がしていた。

  「ぼっ、僕が先輩のことを嫌いになんてなる訳ないじゃないですかぁ!!何言ってるんですかこのバカ先輩!!」

  「……隼汰…」

  「僕が怖かったのは、先輩の頭がおかしくなっちゃうんじゃないかってことです!!あんな怪しい薬打たれて、もし取り返しのつかないことになってたらどうしようって……!」

  僕が攫われてしまったから、先輩に迷惑をかけてしまった。もし本当に先輩に何か起こってしまったら、僕はどう責任を取ればいいのか分からなくなって怖かった。

  嗚咽しながらそう叫ぶ僕を、先輩はゆっくりと優しく抱きしめてくれて。喧嘩でも力加減を知らないはずの彼が、僕の肩をガラスを触るようにそっと撫でていく。

  「周りの人が先輩のことをバケモノだって言っても、僕はずっと先輩を好きでいます!!バケモノの先輩でも好きですから!!」

  「わ、分かったよ!そんな大声で言うな!恥ずかしいんだよ……」

  先輩は恥じらいながらそう返すが、僕にとってはそれだけで嬉しかった。僕の謝罪も、後悔も、全部を受け止めてくれたから。

  結局全部先輩の拳で解決してしまったことに変わりはないし、僕も何か先輩の力になれたとは思っていない。

  それでも先輩は学校にいる時と何ら変わりなく、次からはもっと注意深く守らなきゃなと言ってくれた。

  先輩のその頼もしい言葉と、薬による後遺症が残らなくてよかったと安心してしまった僕は、しばらく先輩の腕の中で泣き続けたのだった。

  ───

  「泣き止んだかよ、隼汰」

  「は、はい……」

  「もう気にすんな。オレだってそこまで弱くねぇんだぞ」

  熱の籠る先輩の体から香る雄の匂いに、心が落ち着いてくる。何というか僕は、先輩から滲み出ているそんな香りが心の鎮静剤のようになっていた。

  傷跡の残る先輩の胸板に思わず顔を埋めると、頭上で甘い声が聞こえる。

  「……な、なぁ、隼汰…」

  「あっ…そうですね、先輩がどうやって帰るか考えないといけないですね」

  「いや…!その、違くて……」

  「えっ、まだどこか具合でも悪いんですか……ん゛っ!?」

  僕が悪い想像をし始めるよりも先に、今度は先輩の方からキスをされる。それは僕に何もさせないような一方的な蹂躙で、驚いてしまった僕はなすすべもなく唾液を受け入れるしかなかった。

  予想よりもすぐに口は離れた後、先輩は桃色の鼻をぴくぴくさせながら言った。

  「い、今ここでヤってくれねぇか……」

  「……えっ!?な、何言ってるんですか!?」

  「別に誰も見てねぇって。それにその…腹ん中にアイツらのが残ってるっていうのがどうしてもイヤなんだよ」

  ……どこで覚えたんだよそんな言葉。

  そうツッコミたくなってしまうほどに、先輩が頭の中で考えたものだとは思えなかった。だって今まで、理由もなく僕のことを好きだとしか言ってこなかった人なのに。

  理解に時間をかけてしまっているせいで言い返せない僕を、伺うような眼差しで見つめてくる。思わず吸い込んだ空気には、先輩の体から滲み出した淫臭が混じっていた。

  薬の効果は切れたはずじゃないのか…?という僕の理由探しに付き合っている暇など、今の先輩にはなかったらしく。

  その目を見るだけで、本気なのだと理解させられてしまう。先輩からこうも真面目に頼まれるのも珍しく、夜だし誰も寄りつかないこの場所ならと、結局僕は了承してしまうのだった。

  「でも僕、手が汚れちゃってて。どこかで洗ってこなきゃ…」

  「その必要はねぇよ」

  「え?何言っ…てええええ!!?」

  どうしてこんなに絶叫したかというと、いきなり先輩が僕の手のひらをパクリと咥えてしまったからだ。そりゃ食べることなんてないとは分かっているけど、それでもびっくりはするものだ。

  驚く僕をよそに、先輩は僕の右手を丹念に舐めていく。手首から爪の先まで、特に指の間は念入りに舌先でなぞられてしまう。

  「ちょ、ちょっ…せんぱ、なにしっ……あひぇ…!」

  ざらざらした獅子の舌が程よい刺激を与え、僕の手は簡単に先輩の口の中で転がされていた。振り返ればこんなふうに先輩から口以外の体の部位を舐められたのは初めてで、いつもとは違う感触に変な声が出てしまう。

  べろべろくちゅくちゅと数分間たっぷり舐め回した先輩はゆっくりと僕の手を引き抜き、口内に溜まった唾液を地面に向かって吐き捨てた。

  「これでキレイになったろ」

  「そ、そういう問題じゃ…!」

  「でもヨダレですることだってあるだろ。それでもダメか…?」

  「う……わ、分かりましたよ…」

  右手を濡らされた僕の承諾を得ると、先輩はゆっくり四つん這いになっていく。それはあの大人たちに命令されている訳でもない、僕1人のためだけに。

  こうなってしまっては、僕だって抵抗は難しくなる。ここが自分たちの家ではなくて、見つかったらおしまいの状況であることに変わりはない。

  だけどもう、それすらも僕たちを止めることはできないような、一種の無敵感にも似た感情。それを纏った僕は先輩の大きな背中に覆い被さり、唾液に塗れた右手を尻たぶの隙間に滑り込ませた。

  「……んっ♡」

  「わ、先輩のお尻、もうこんなに…」

  思わずそんな言葉が漏れてしまうほど、ソコは準備万端だった。時間が空いたとはいえ使われたおかげか、先輩の蟻の門渡りはふっくらとして触り心地が良い。

  外側には硬く鍛え上げられた肉体や数々の傷跡を纏っているのに、内側はこんなにも女々しい肉付きをしているなんて。本当に先輩は罪な人だとつくづく思ってしまう。

  「っぐ♡はぅ♡……んん゛っ♡♡」

  優しくほぐすように周辺を揉んでみれば、分厚い肉体の向こう側から濁り声が聞こえてくる。僕だってさっき一部始終を見てしまった内の1人であり、あんなにも淫らな姿を見せられてしまっては我慢するのも無理があるというものだ。

  僕はそのまま、何の合図もなく先輩の内部へと指を入り込ませた。ずにゅりといとも容易く飲み込んだその穴の感触に、心の制御装置が狂っていく。

  先輩もまた、先の性交のせいで指ぐらいならすっぽり入るようになっていたらしい。2本目もすんなり受け入れてしまえば、一段と肛門の強張りが緩んでいった。

  「んっ♡隼汰っ♡♡頼むっ…♡中にあるの全部…取ってくれっ♡♡」

  先輩の艶やかな声が、僕の肌を撫でる。その願いを叶えるべく、僕は挿れたままの指をゆっくりと折り曲げて引っ掻いた。

  「ん゛ん゛うッッ♡♡♡」

  それだけで、先輩の背中がビクンと可愛らしく跳ねた。僕のこの小さな手で、先輩を感じさせることができている証拠だ。

  それはいつものようにセックスをする時に感じるものなのに、何故だか今は別の感情が湧き上がっていた。

  薬の効果がまだ残っている、もしくは消えないかもしれないという強烈な不安だ。

  それを先輩に直接聞いても違うと言うだろう。でもその気持ちを拭いたくても拭えなくて、早く忘れたいと必死に指を動かすしかできなかった。

  「ああ゛ぁあ゛!!?♡♡♡ま゛っ♡♡いきなりそんなっ♡はげしくやる…な゛あぁあ♡♡」

  ぐちゅぐちゅと愛液に塗れた獅子獣人の穴をほじくる度に乱れた声が振り撒かれ、トロトロと中に残っていた白濁がどんどん漏れ出ていく。

  なんとも淫猥なその光景に息を呑んでしまうけど、これらは全部先輩を痛ぶりつけたあの獣人たちのだと思うと、僕も不思議と全部を掻き出してしまいたくて堪らなかった。

  「先輩、一つ聞きますけど、本当にもう薬は抜けたんですか…?」

  「な♡なんだよ急に♡抜けたんじゃねぇのか♡もう体もどこもおかしくねぇしっ♡」

  「じゃ、じゃあ…今こんなにも先輩がエロく見えるのは、どうしてですか…?」

  その時、きゅうっと先輩の尻穴が窄まる。ケンカじゃ負けなしのくせに、ちょっと核心を聞いてみただけでこうなるのがなんとも先輩らしいというか。

  自分でも答えなんて分かっているのに、聞かずにはいられなかった。

  「そっ…そんなの、お前が好きだからに決まってんだろ♡♡こんなところで言わすなよバカぁっ♡♡」

  「〜〜〜〜っ……!!」

  ああ、やっぱり先輩は大丈夫だ。考えすぎた僕の方がバカだった。

  そんなに恥ずかしがりながらも馬鹿正直に想いをぶつけてくれる人なんて、きっと先輩しかいないだろう。細長い尻尾をぶんぶん振り回しながら答えてくれるその姿は、僕の理性を奪うには十分すぎるほどのもので。

  じゅぽっと音を立てて先輩の穴から指を引き抜くと、反射的に閉じた肉の門から白濁がとろりと押し出される。ついさっき自分の身に起きた恐怖など忘れ去っていた僕は、その光景を見ながら痛いほど怒張していた自身の男根を外界に曝け出した。

  「僕だって、先輩が思ってるよりもずっと先輩のことが大好きです…!」

  止まらない先走りを亀頭に広げ、先輩のデカい尻たぶの間に擦り付ける。にっちゃにっちゃと音だけで絶頂してしまいそうな興奮が、僕と先輩の体に迸っているのが分かる。

  鍛え抜かれた獅子獣人の腰に手を当てて固定し、再び緩み始めているその穴に向かってぴとっと鈴口を押し当てれば、あとはもう力なんて必要ない。

  僕はゆっくりと、完全にフル勃起した男根を先輩のナカへと押し込んだ。ずぶぶぶ…となんの抵抗もなく飲み込んでいくその穴は、完璧なまでに素晴らしい感触を誇っていた。

  「あ♡あっ♡あぁっ…♡はあ゛あ゛ぁ♡♡♡」

  大人の獣人よりも小さいし、長くもない。前立腺を押し潰せるほどのテクニックを持っているほどの経験者な訳でもないけど、先輩はこれ以上ないくらいに悦んでいた。

  密着した腰の向こう側で、何か液体のようなものがちょろちょろと流れている気がしたからだ。おおかた見当のついていた僕はゆっくり腰の外側から先輩の股間へと手を伸ばし、ガチガチに硬く張り詰めた先輩の逸物に触れる。

  そしてその先端に指を這わすと、生暖かい水が滴っていたことが分かった。

  「あ、漏らしちゃったんですか…?えへへ、嬉しいです」

  「ち…♡ちっ♡ちがっ♡♡ンなトコロ触んな隼汰っ♡きたねーんだぞ♡♡」

  「先輩に汚いところなんて1つもありません。漏らしたって誰も見てないんですから、大丈夫ですよ」

  その言葉に反応して尻穴がビクビクと痙攣したのをきっかけに、僕は腰をゆっくりと振り始める。僕のことを助けてくれた、そして先輩自身が無事だったことに、今になって嬉しがっている体が突き動かされていく。

  下腹部に生えた陰毛が先輩のケツ肉に埋まる度に、小さな心地よい破裂音が響き渡った。

  「お゛っ♡♡ふぅっ♡はあぁぁっ♡♡しゅんたのちんぽっ♡♡やっぱきもぢい゛♡♡♡」

  「っ…!もう、そんな事言われたら……!」

  「ああ゛〜〜〜ッ♡♡おぐ♡♡ごりごりされてるっ♡んはあぁぁ♡♡♡」

  硬くなった自身の男根を腸壁に擦り付け、ぐりぐりと全体を掻き回すように押し込んでいく。何度も味わったであろうはずなのに、先輩の雄膣は初めてまぐわったかのように締め付けが強く、離そうとしない。

  けれどそれは、僕も同じだった。先輩がいないという事実がこんなにも怖かったなんて、思いもしなかったのだから。

  先輩に依存していた自分の弱さが裏目に出た今日の事件だが、そのおかげで余計に先輩から離れたくないという気持ちが強くなった。

  どんどん募っていく恋慕の気持ちに伴って、目の前にいる僕の大切な人が危ない目に遭っていたことを嫌と言うほど思い出してしまう。胸の中で増幅した想いの行き場所はなく、先輩の体を抱き締めることでしか紛らわすことができなかった。

  「本当に、本当に先輩が死んじゃうんじゃないかって怖くて…!こんな弱い僕を、ボロボロになってまで助けてくれて……!」

  「オレも、そばにいてやれなくてゴメンな♡でもお前が無事で、ホントはめちゃくちゃ嬉しくてっ♡」

  押し留めていた気持ちが溢れて止まらない。あの時感じた正直な思いが遅れてやってきたせいか、抑えたくてもできなかった。

  気持ちいいことをしている最中にも関わらず、僕の目には微かに涙が滲んでしまう。

  「分かってます、分かってますよぉ…!!」

  助けてもらった分際のくせに、先輩の口から言われるのがなぜかすごく恥ずかしくて。思いっきり背中を抱きしめて顔を毛皮の中に埋め、ばちゅんと下腹部を強く打ちつける。

  もはや安心だとか歓喜だとかそういった感情は無く、ただ先輩と繋がっていたいという衝動に駆られていた。先輩の喘ぐ声が、いつも通りの日常にも取ってこれたんだという確かな心の支えになり始めている。

  僕は股間に伸ばしていた手をするすると上へ移動させ、大きく膨らんだ2つの胸板を触った。なんだか不思議ともちもちしていて普段より柔らかいような気がして、やっぱりまだ薬は抜け切っていないのかと妙に勘繰ってしまう。

  「はぅっ!!?♡♡♡ひっ…♡にゃあ゛ぁあ♡♡」

  しかしその思考は、指先が触れた肉の突起に一際甘い声を漏らしてしまった先輩によって遮られた。汗でじっとりと濡れた先輩の乳輪は撫で心地が良くて、摘まなくても十分なほどだった。

  まあ実際、身長の差がかなりある僕は腕を思いっきり伸ばさないと背中側からは触ることができないし、正直言って大きな胸筋を揉みしだくだけでも精一杯だ。

  「お♡おいっ♡♡やりすぎだっ♡そんな揉むなって♡♡メスじゃねぇんだか♡♡らあぁ゛ん♡♡♡」

  「じゃ、一旦出しますか?でも流石に外ですし、1回で終わりにしようと思ってるんですが…」

  「えッ♡♡♡ま、待てっ♡あとちょっと♡ちょっとだけ続けてくれ♡♡」

  「……はい!分かりましたっ」

  そのまま僕は先輩の後ろから抱きつきながら、あえてスピードを緩めて出し入れを再開する。激しくしなくても、じっくりと僕そのものを感じて欲しかったから。

  暖かく火照った先輩の腸壁が男根の表皮を撫でる度に、途方もない快感が押し寄せる。ねっとりとまとわりつく愛液は、もはや薬を使われていた時よりも量が多かったように思えた。

  僕はすっかりほぐれきったその穴から生み出される音に興奮しっぱなしで、そろそろ自分にも限界が近いことを悟ってもいた。それとは別に、快感以外の何かが僕の射精欲求を急激に高めている。

  なんだろう、これ。先輩が好きだって気持ちに変わりはないのに、どんどん息が詰まっていく。

  緊迫した状況から抜け出せたはずが、さらに呼吸が乱れてしまう。なんで、どうして、こんなにも苦しいんだろうか。

  いきなり起きた事態に怖くなってしまった僕は、思わず先輩の体をギュッと抱き締める。もう、この人の元から離れたくないと体で表すように、腕に力が込もっていく。

  たまたま目の前にあった擦り傷から滲む血に、僕自身の血液が沸騰したような激情が脳髄を駆け巡る。気がつけば、唾液をたっぷりと含ませた舌でそこを愛撫していた。

  「んぁあ゛ああぁ゛!!?♡♡♡ま゛っ♡そこ舐めんな゛っ♡きたねぇっていうか♡♡沁みるからぁ゛ッッ♡♡♡」

  「そんなこと言って、ホントは興奮してる、くせにっ…!」

  先輩の血液を僕の体内へと取り込むように舌を動かす。ぴりりとした塩気が味蕾を刺激し、性器でなく別の方法を通して直接的に先輩を責めている感覚でさらに昂っていく。

  でもこれは全部、先輩が好きだからしてしまうんだ。そんな僕の想いに呼応するように、先輩の体もビクビクと震え、無意識に尻尾を僕の腰に回してくれていた。

  「せ、先輩……もう僕から離れないでください…!ずっとずっと、僕の隣にいてください…っ!」

  「……そんなの、あったりめぇだろ♡♡♡今日はオレも油断しちまってたからよぉ♡次からはぜってぇ離れねぇからなっ♡♡」

  その宣言と同時に、僕の男根を咥えていた穴がきゅうぅと締まった。柔らかくて熱い肉の壁に全てを掌握された僕は、もうこれ以上耐えきれないと押し出されるように声が出てしまう。

  「先輩、イきますっ…!!もう、出していいですか……!?」

  「おういいぜ♡♡はやくブチまけろっ♡♡♡アイツらに汚された分までっ♡お前のザーメンでいっぱいにしてくれぇっ♡♡♡」

  「くぁっ、イぐ…!!先輩…い゛ぐッッ!!!」

  先輩の尻穴、その奥深くまで思いっきり突き刺したその瞬間。僕の頭は白く弾け飛び、腰の内側からとめどない濁流が溢れ出していった。

  「あ……♡♡あぅぅ…♡♡きてる♡♡しゅんたのザーメン♡おぐまできて♡♡あづいぃっ♡♡♡」

  どくどくと流し込んでいく僕の子種を、先輩の大きな尻穴が蠕動しながら味わっているのが分かる。小刻みに揺れる獣の体と、濡れた毛皮に沈み込んでいく僕の前面。

  鼻腔を突き刺すのは雄獣人の逞しく香ばしい汗の匂いや濃厚な精液の刺激臭。そして先輩の体から立ち昇る湯気が、毛穴の奥まで浸透していくような気がした。

  腰の隙間を縫って静かに股座へと手を伸ばしてみると、先走りか精液か、はたまた尿なのか分からない液体でびちゃびちゃになった獅子獣人のチンポに触れた。

  相変わらずの太さに何度も撫で回したくなるが、その持ち主を支えている腕が震えていたのを知っていた僕はすぐに自分の男根を抜き、大きな図体に身を預けるのだった。

  「はぁ〜……っ、先輩、大丈夫ですか…?」

  「あ、ああっ♡大丈夫だ♡けどやっぱりお前のじゃねぇと気持ちよくなれねぇな…♡」

  そう言った先輩は絶頂したばかりだというのに立ち上がり、僕をキツく抱き寄せて唇を奪う。分厚い舌が歯の隙間をこじ開け、甘くとろける獣の蜜が僕の口いっぱいに広がっていく。

  太陽も身を隠し、すっかり暗くなった工場の中を、濃密なキスの音が満たしていった。

  傷だらけなのに、身も心もボロボロだったのに。

  本当に、先輩は強い人だなぁ……

  「ん…♡……ぷは…♡」

  「そ、そろそろ帰りましょうか。続きは帰ってからでもできますし…」

  「……お、おう」

  僕の後頭部を掴んで自分から顔を寄せてきたくせに、我に帰るとすぐ照れくさそうにそっぽを向く行動が先輩らしくて、ようやく心の底から安心できたような気がして。

  「あ、でも、先輩の服…なんとか、しなく…ちゃ………」

  「おお、おいっ!?隼汰!!?」

  長い時間恐怖に晒されて心の容量をとうの昔に超えてしまっていた僕は、先輩に向かって倒れ込むように気を失ってしまった。

  まだ全部終わってない。これから帰るための方法や、先輩の傷の手当てもしなきゃいけないのに、体から力が抜けていく。

  「……怖かったもんな。本当によく頑張ってくれたぜ、隼汰…」

  意識が途切れる最後の瞬間に聞いたのは、今まで聞いたことのないぐらい穏やかで優しい、先輩の声だった。

  ─────

  「……っていう夢を見たんですよね」

  「すげーなそれ。壮大すぎんだろ」

  「えっちょっと!!反応薄すぎじゃないですか!?そのおかげで人生初の夢精しちゃったし、色々と大変だったんですよ!?」

  小鳥の囀りが耳に心地よい登校日の朝、僕は先輩の隣を歩きながら今朝見た夢の内容を話し終えたばかりだった。まあ、確かに言われてみれば夢にしては鮮明だった気もするけど…

  でも夢と現実はリンクするとかよく言うし、きっともう二度と見られないんだろうなと思う。

  「でもあの時の先輩…すごくカッコよかったんです。まさに最強って感じで。あ、今もカッコいいですけどね?」

  「………そうかよ、ありがとな」

  「…え、今なんて言いました?」

  揶揄うつもりで言ったのに、正直に受け止めてお礼まで言った先輩がやけに面白かった僕は、何度もその真意を確かめようとした。

  だけど先輩の様子はそれ以降変わることはなく、その大きな手で頭を鷲掴みにされて制止されてしまった。

  「うるせーよ!それより隼汰、お前もその夢で気付いたんならちょっとは自分を鍛えてみやがれってんだ!!」

  「じゃ、じゃあ先輩が教えてくださいよぉっ!他の人だと怖くてムリですってば!」

  昼と夜じゃ立場が逆転する僕たちの関係は、今日も変わらず続く。学校に行けば先輩は最強の不良として君臨し、僕はなるべく普通の学生として振る舞おうと奮闘するのだろう。

  「ていうか先輩、その傷いつできたんですか?」

  ケンカ三昧で絶えず新しい傷を作ってくる先輩の手当てをするのは僕の役目で、毎日欠かさず見ているはずだったのに、何故か見覚えのない頬の傷跡が見えた。

  その問いかけに先輩は顔を赤くして少し驚き、何か考える仕草をしてから答える。

  「……なんでもいいだろ、早く行くぞ」

  それよりお前はまず体を強くしろと、その獅子獣人は僕の頭を上から指でツンツンと押してきた。体格でイジってくるのは慣れっこだけど、今日はなんというか…恥ずかしそうに見える。

  ……いや、きっと僕の思い過ごしだろう。

  考えすぎてもいけないと思った僕は先輩の元へと駆け寄り、その大きな手を握る。傷だらけの指は少し震えながらも、ぎゅっと強く握り返してくれたのだった。