002-010
テガス魔動力学院の国賓用屋敷はアーキアにとって驚くべき場所だった、大きさ、内装、調度品のいずれもがアーキア達に割り当てられた宿舎とは別次元の環境で、これだけいい所に住めるなら、寝返りも有りかと考えさせる場所だ。
アーキア 「ダインさん達はこんな凄い所に住んでいるんだ、アキ達とはぜんぜん違うよね」
ダイン 「それを私に言われても困りますよ、ここはフェカトが用意してくれましたから」
フェカト 「はい、家の未来を握る方々ですからね、先に良い思いをさせて、負ければ落とされると言った方が効果的なんですよ、口で説明するより体感する方が早いですから」
アーキア 「アキもポロルグに召喚されれば良かったかも、フェカトさん凄く話が解ってるじゃん」
フェカト 「ポロルグがお願いする側ですからね、せめてポロルグ家の人間と同格ぐらいの待遇を用意しないと頑張って貰えませんよ」
アーキア 「クガトとぜんぜん違うよね、この前なんか食後に果物欲しかったら闘技場で稼げって言ったんだよ、戦闘経験も積めて得だからって」
フェカト 「それは一理有りますけど、情報漏れるんじゃ無いですか」
アーキア 「むしろ勇者の力を思い知らせれば敵も減るって」
フェカト 「まぁ確かにポロルグは配下で対抗するの諦めて、勇者召喚行いましたから」
ダイン 「それは目論見外れてますね」
フェカト 「はい、今頃大慌てですね」
ダイン 「それより立話はこれぐらいにして、席に付きましょう、メイドはこの呼び鈴ですね」
フェカト 「はい、鳴らして呼び付けて下さい、お茶の指示を出しますので」
愛耶 「愛耶も行きますね、ここのメイドじゃお菓子は解らないでしょうから、先ずプリンですよね」
ダイン 「はい、あと愛耶特性のシュークリームも出して下さい、アーキアを甘味中毒にさせて上げましょう」
愛耶 「アレ出しちゃうんですか、ダイン様の為に作ったのに」
ダイン 「気持ちは嬉しいですが、今のアーキアは敵ではなく同じ境遇の仲間ですよ、出せる物は分け合いましょう、シュークリームならおみあげにも出来ませんか?」
愛耶 「ドライアイスが有りませんから、でも、大きな氷使えば冷えたまま運べるかも知れませんね、フリーザーバックに入れれば防水出来ますし」
ダイン 「なら試してみて下さい、自分だけ美味しい物を食べてしまうとアーキアも肩身が狭くなるでしょう」
ダインの心遣いにアーキアも感謝していた、怒られるのは仕方ないかもしれないが、リエルに喜んで貰いたいし、おみあげで許してくれるしれないという下心もある。
そして、運ばれて来たお茶と生菓子に一同は幸福な時間を過ごしていたが、食べ終わってしまうと、いよいよお互いの世界に付いて語る時間になる。
時間の関係上、この世界やファービのルヴァルテについては次に機会が有ればという事で、先ずアーキアが話始める。
そして語られたアーキアの居た世界はコンピュータの普及していない、昭和の日本の様な世界で、怪しげな魔術を試していたクラスメイトのテントに興味本意で覗き込むとテントごとこの世界に召喚されたらしい。
アーキア 「小さなテレビみたいなコンピュータというので、何でも出来る世界なの、魔術は無かったんだよね?」
七実 「話聴く限り、文明の進歩と魔術って反比例してますよね、魔術の高い世界ほど文明が進んで無い感じです」
ダイン 「そうとも言えませんよ、私達の世界にはロボット兵器なんて無かったじゃ無いですか、一概に私達が進んでいるとも言えませんよ、まぁ便利でしたが」
愛耶 「はい、スマホで誰とでも連絡取れましたからね、でも、あれは通信インフラが整っているから出来るわけで、この世界の通信魔術は知っている人同士で繋がれるんですよね」
フェカト 「はい、原理は違いますけどやってる事は似てます、でも、人間同士だと音声だけなんですよ」
ダイン 「まぁ、何処の世界もバランス的に似た様な物なのかも知れませんね、この世界に魔術が有ったから、私とフェカトは意思疎通出来ましたから、魔術が無ければ会話を理解する事から初めてますね」
フェカト 「そうなんですよ、アーキアさんにもこの世界の魔術が掛かってるから話が通じてますけど、実は話してる言葉は違うんですよね」
ダイン 「紙と書く物は有りますか、折角ですからお互いの文字を披露してみましょう」
そうして、紙と筆が用意された結果、お互いの理解はさらに深まる事になる、絵で描けばより詳しく相手に伝わるのだ。
フェカト 「七実さんって絵が上手いですね、アーキアさんの説明では解り難い物が七実さんの絵なら解ります」
七実 「コツはアーキアが思い出した事を言ってるだけって理解する事です、全体像じゃ無く覚えてる細部を順次言っているので、表情とか反応でなんと無く解るんですよ」
ダイン 「ですが、何処の世界にも似た様な生き物は居るんですね、私達の世界に実際のドラゴンは居ませんでしたが、想像図に近いドラゴンが他の三世界に居たとは」
フェカト 「アーグルの人間が伝えたんじゃ無いですかね、異世界への扉開いて消失する例も有るそうですし」
ダイン 「引き寄せる事が出来るなら行く事も可能でしょうから」
ファービ 「むしろルヴァルテの人間は一方通行でダイン様の世界に逃げてましたけど、魔王は眷属以外には厳しい絶対支配者でしたから」
フェカト 「そういう世界もあるんですね、大きな魔力求めてそういうの召喚しちゃったら大変ですね」
実はフェカトも自分達がそれをやってしまった事を十分に理解しているが、上手く魔王の眷属側になったフェカトとしては、同じ様な事は起こす訳には行かないのだ。
アーキア 「魔王かぁ、もしそういうのが出て来たらアキ達が始末しなきゃいけないんだよね、でも、ダインさんが呼ばれちゃった以上、クガトはまた召喚するんじゃないかな」
アーキアの推測はダインも危惧するところだ、もしダインと同質の魔王が召喚されてしまえば、折角目を付けたアーキアが先に堕とされてしまう可能性もある。
ダイン思考 『アーキアをこのまま堕としてしまうべきでしょうか、でも、もし、リエルという勇者にマギガントで攻めて来られたら、力を解放した私でも勝つ事は難しいでしょうね、ですが、常に最悪を想定するなら、アーキアは手元に残して他の勇者二人を釣る餌にした方がよさそうです、話に通じる者ならいきなりマギガントも無いでしょうし』
ダイン 「なるほど、より強い者を求めると危険性も増しますね、私達もいざという時に備えた方が良いかも知れません、次に召喚自体を止める方法は有るんですか?」
フェカト 「一番早いのは召喚出来る人間を排除する事ですよね、でも、クガトが誰を使ったのかは解りませんし、ポロルグでも術者は隠してますよ、まぁ術式自体はクガトから入手しモノなんですけどね」
ダイン 「私達は全員船室にいたので、召喚の瞬間は見てないですからね」
アーキア 「そうなのアキは見たよ、七実より小さな子がアタシ達が召喚された魔法陣の前に居たから、かなりの魔力を帯びていたから間違いないよ」
ダイン 「つまりアーキアはクガトの召喚者を知っているんですね」
アーキア 「そうなるかな」
フェカト 「七実さんより小さい女の子ですか、思い浮かぶ者は居ませんね、でも、次の召喚を止めるには有益な情報です、現状ポロルグはダインさん達の次は予定していませんが、レボト・クガトは多分やるでしょうね」
アーキア 「そうなの?」
フェカト 「正式な選定戦まで後半年、ポロルグはギリギリのタイミングで今になりましたが、マギガントに慣れる事や数の確保などを考えると半年ぐらいの期間は必要だと思います、もっとも真夏さんを見ればダインさん達は直ぐにでもマギガントを使えそうですけど」
ダイン 「アーキアは直ぐにマギガントを動かせたんですか?」
真夏の事例を知るダインは興味本意で尋ねてみた、魔力の値とマギガントの関係はよく把握しておきたいのだ。
アーキア 「早いって言われたけど十日は掛かったかな、リィはもっと早かったけど、でも人型の乗り物なんて初めてだったし、空飛ぶんだよ」
ダイン 「アーキアの世界には飛行機が無かったんですか?」
アーキア 「ヒコーキって何、魔術で飛ぶ人はいたけど」
ダイン 「なるほど、飛行機械と飛行魔術も両立しない様ですね」
フェカト 「それは解りませんけど最大の問題は選定戦です、過去には選定戦の妨害が行われた例も有りますので、ポロルグとしてはクガトの再召喚は防ぎたいです、我々が権力を手中にしたいのも有りますが、やはり召喚のリスクが高すぎますね」
アーキア 「それはアキも同じ、レボト・クガトは選定戦に勝てば元の世界に返すって言ったから従ってるけど、別の誰かが召喚されたら約束守ってくれるか不安だし」
フェカト 「そんな事言ってるんですか、フェカトの知る限り、こちらから異世界行った確証は有りませんよ」
アーキア 「それってレボト・クガトが嘘言ってるって事だよね」
フェカト 「クガトにフェカトが知らない魔術が有るのかも知れませんけど、ダインさん達を厚遇してるのはせめてもの罪滅ぼしの意味も有りますから」
アーキア 「アキ達はやっぱり騙されてるのかな」
フェカト 「どうでしょう、アーキアさんから見てフェカトは敵ですから都合良く騙そうとしてるだけかも知れませんよ」
アーキア 「アキも馬鹿じゃ無いよ、信じて良い人は何となく解るよ、そしてフェカトさんはレボト・クガトより信じられる人間だよ、質問にちゃんと答えてくれるから、レボトははぐらかすからね」
ダイン 「で、アーキアはどうします、クガトに戻って私達と戦うか、ここに留まって歓迎されるか」
アーキア 「微妙に自分達が有利になる様に、選択肢盛らないでよ、確かにお菓子とか食べさせてくれるんだろうけど」
フェカト 「歓待は嘘じゃ有りませんよ、出来ればクガトに召喚された三人の勇者はポロルグで保護したいです、レボト・クガトの息の掛かった王の即位は国の為に成りませんから、レボトの野望を阻止する為ならばフェカトは卑怯な事だってします」
ダイン 「悪に勝つには自分も悪になる必要が有りますからね、正当な手段だけで悪には勝てないんですよ」
アーキア 「二人共怖いよ、でもレボト見るとなんでこんな人が上に居るんだろうってなるよ」
ダイン 「社会システムがそう作られているんですよ、自浄するのは不可能ですから切り捨てるしか無いでしょうね、そしてアーキアには力が有って、間違った方向に使われない事を願いますよ」
アーキア 「アキにダインさんの味方になれって事だよね」
ダイン 「私もまだフェカトさんを見極めている段階ですからお互いを理解する時間は多い方が良いと思います、そして、アーキアがレボト・クガトを疑っているなら一緒に見極めてもいいんじゃ無いですか、取り敢えず今日は私達の中の一番の料理上手である愛耶が夕食を作ってくれますから、食べてから決めてもいいでしょう」
アーキア 「異世界の料理かぁ、それぐらい全然問題無いよね、どうせひとっ飛びだし」
フェカト 「相手を焦らすのも駆け引きですよ、ポロルグで歓待されたと言えばクガトでの待遇も良くなるかも知れませんし」
アーキア 「そうか、別に今決めなくてもいいんだよね」
ダイン 「はい、何より自分の目で見極める事が大事ですよ、そしてこれはかなり重大な決断だと思います」
アーキアがどちらを決断するかは解らないが、ダインはアーキアが今晩泊まる事を決断した時点で勝利を確信している、予想外に二日連続で堕淫愛奴を増やす事になるが、アーキアは手放してしまうと後悔してしまう人材である事をダインは確信しているのだ。
おまけ
クガトの三勇者 半年前にクガトが召喚した勇者達、リエル、アーキア、ルーフィンの三人でアーグル人類と比べて高い魔力を持っている、特にリエルの七万は記録に有る人間の中でももっとも高いもので、その人間も異世界人だと言われている、そしてその人間こそアーグルで魔王と成った人間でも有り、三人を召喚した魔術は魔王が残したものだとも言われている。
三人が同時に召喚されたと言っても、ルーフィンと他の二人は仲が良くない様で三人が揃う事は稀である、リエルとアーキアは連れ立って姿を見せる事もあるが、ルーフィンは基本クガトの城に引き籠もっており、魔王の残した書物を読み耽っているらしい。
リエルとアーキアは仲の良過ぎる友人関係で、召喚元の世界では恋人同士と噂されていたのだが、実際はアーキアのスキンシップが過剰なだけであった、だが、アーグルでの生活でお互いの中はより親密になっており、親友と家族を合わせた間柄になっている。
三人はそれぞれクガトの保有する高性能マギガントであるフーティアを与えられているが、無理矢理フーティアを徴収されたクガトの娘から怨まれている、実はダイン達を召喚した召喚魔術はその娘からポロルグにもたらされたものでもある。