野望編 第四十五話 夜明けのプルル

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  プルルは淫魔の女王といった威厳を持った姿に変化しつつ有った、控えめな性格のプルルにこの様な姿に対する憧れが有ったのかダインには解らないが、多分、プルルはティアスに対しての対抗心が芽生えたのでは無いのかとダインは予測していた。

  ダイン 「予想以上に迫力が有りますね、まぁ愛でる分にはイタチを可愛がればいいだけですけど」

  プルル 「確かにこの翼は可愛く有りませんよね、それにティアス様の翼とは色々と違います」

  ダイン 「利便性を考えたんですよ、確かに生物の構造を踏襲するなら、手を肥大化させて指の間に皮膜を付けた方が進化と呼べそうなんですが、そもそも腕が四本というのは哺乳類としておかしいんですよ、だったら進化の流れを無視して創造物として利便性を求めた方がいいですよね、今のプルルの翼の先の手ならしゃがまなくても地面の物が手に取れるでしょう」

  ティアス 「話は解りますけど、いまいち実感が持てません」

  ティアスの言葉にプルルは少し勝ち誇った表情を浮かべて口を開いた。

  プルル 「実際持たないと実感出来ないと思います、ティアスの翼じゃこういうの無理ですよね」

  プルルは翼の手を使って、背中の翼の付け根を掻いてみる、実際ティアスの翼の指では届かない位置で、単純な行為でダインの考えの正しさを証明して見せてのだ、そして、ティアスの名を言った時に様が消えたのはプルルの遊魔としての自信の現れとも言える。

  ティアス 「ですが、そこは尻尾を使えばいいですよね」

  ダイン 「それを言われればそうなんですが、プルルの翼の真価は戦闘力ですよ、先手を取る為には距離が重要ですから」

  リレッタ 「それなら解りますわ、相手の攻撃が届かなければ被害を受けませんわ」

  ティアス 「それでダイン様に卑劣な攻撃を行ったのですね」

  ダイン 「別に持てる能力で攻撃する事は卑劣では有りませんよ、数多の手段を講じられる方が優れてるだけです、むしろ私は後手に回った自分を恥じてますよ」

  リレッタ 「ダイン様はリッタと戦う前から、飛ぶマギガントとの戦いを考えていたのですわね」

  ダイン 「リエルとの戦いは十分に予想されてましたから、一応まだ隠している奥の手も有るんですよ、まだ見せたく無い手段なので隠してますけど」

  ティアス 「じゃあリレッタ落としたやり方って、即座に思い付いたんですか」

  ダイン 「私自身は飛べませんが、ザガルバで大体感覚が解りましたから、マギガントは飛ぶでは無く浮くという方が正しい様です、浮遊魔術に推力を与えている物で重要なのは浮遊なんですよ、ですから力で引き付けたわけです、飛行ならば大惨事でしょうね」

  リレッタ 「浮くと飛行って違うのですか」

  ダイン 「私は違うと思ってます、現状でも技術的な飛行なら私の魔力でも可能な様ですが、浮遊するのはまだ研究中なんですよ、工房の構造が浮遊前提ですから、浮遊させないと利用出来ないんですよ、わざわざ滑走路も作れませんしね」

  リレッタ 「凄い話しなんでしょうが全く解りませんわ」

  ティアス 「それは仕方有りませんよ、遊魔として基礎知識を授かってるティアスにだって完全に理解しているとは言えませんから」

  プルル 「ティアスはまだマギガントの知識を持ってますからいいですよね、プルルは飛んだ事も無いのに」

  ダインは己の孤立を避ける為に遊魔には基礎知識を与えているのだが、望まずに得られた知識はどう使っていいのかわからないモノなのだろう。

  ダイン 「いいんですよ理解されない事には慣れてます、ですが遊魔である限り私が変な事を言っても嫌われる事は有りませんからね」

  リレッタ 「言葉だけじゃ無くやる事も変ですわ、でもダイン様が行う事は何もかも面白そうに思えますわ」

  ダイン 「それが遊魔に求められる資質なんですよ、リレッタが私にどの様な世界を見せてくれるか楽しみです」

  ティアス 「それは狡いですよ、クガトには秘術とも言われる魔術が有りますよね、ダイン様が欲しがらないわけが有りませんよ、ティアスなんて煌びやかな存在だけです」

  プルル 「ずっと思ってましたけど、ティアスって色々と腹黒いですよね、プルル、遊魔の時はもう遠慮しませんよ」

  眷属遊魔は基本的に対等な存在で有る、今までは明確な主従関係を持つ者が眷属と成った事が無かったので表面化しなかったが、ティアスとプルルが対等な存在となり、プルルがそれを強く意識し始めた様だ、まぁティアス付きのメイドであれば色々と溜め込んでしまうのだろう。

  ティアス 「妹に反抗されている気分ですけど、何だか嬉しいですね、ティアスはそういうプルルを何処かで期待していたのかも知れません、リレッタも戻って来てくれたし夢みたいな気分です」

  リレッタ 「変な事言いますわね、王族が庶民と同列にされて喜んでいるなんて」

  ティアス 「それが遊魔って種族なんですよ、遊魔の頂点にはダイン様が君臨していて、それ以外はみんな同列なんですよ、だから誰がダイン様を満足させるかの争いなんです」

  プルル 「はい、ですから地位のティアスより、奉仕のプルルの方が求められてますよね」

  ダイン 「まぁ本格メイドは私の憧れでしたからね、当然エロい事とセットですけど」

  ティアス 「なんかお得な感じですね、職業で構って貰えるって」

  ダイン 「むしろ私が構って貰うんですけどね、まぁ姫騎士もエロ担当なんですけど、堕ちないと言い張る強気なところが基本ですからね」

  プルル 「じゃあ、ティアスは姫騎士失格って事ですね」

  ダイン 「私の世界で一般的なモノから外れただけですよ、誰であれ私に構って甘やかしてくれるのがいいんですよ、いくら威厳を見せようとしても男なんてそんな物だと思います、私見ですけどね」

  ティアス 「そうなのですか、男性って格好付けたがる物だと思ってましたけど」

  ダイン 「いい餌を付けないと釣れないですよね、男もそういう物で本当の自分以上のいい餌に見える様にしてるんですよ、まぁここの魔力という基準じゃ騙せませんけど、お陰で私は大人気だとか」

  ティアス 「そうなんですよ、だからティアスもアピールしてたんですよ、でも注意すべきは味方でしたね」

  プルル 「ティアスがプルルを認めてくれたのは素直に嬉しいです、ティアスってプルルの事を愛玩動物的に思ってましたよね」

  ティアス 「そこまで傲慢じゃ有りませんよ、やっぱり可愛い妹ですよね、でも姉離れして油断出来ない好敵手になっちゃいました」

  ダイン 「プルルはティアスに対する対抗心が特に目立ってますよね、仲は良さそうに見えたのに」

  想定外のプルルの変化にダインも戸惑っている、やはり手順を踏襲しなかった事にはリスクが付き纏うのかも知れない。

  そして、ダインも全ての堕液を吐き出して、それを取り込んだプルルの身体は貫禄を増している、そう、見た目だけなら魔王と行っても通じてしまうだろう。

  勢いを失った肉槍をプルルから引き抜くと天を仰ぐ様に反り勃っていた肉槍がだらりと垂れてしまう。

  ティアス 「プルルも十分に満足しましたよね、ティアスとリレッタはまだお預けですけど」

  ダイン 「残念ですがそうなります、飛行マギガントが使えなくなれば処女で無い事がバレてしまいますからね、なかなか悩ましい問題です」

  ティアス 「ダイン様の世界の様に、普通でも飛ぶ移動手段が有ればいいんですが」

  ダイン 「飛行機ならば、魔導を使って製造が可能なんですよ、ですが、さっきも言った様に滑走路が必要ですから、なんとか浮遊させる方法を考えないと」

  リレッタ 「リッタには普通の事でしたけど、難しい事なのですわね」

  ダイン 「この世界で積み重ねられた魔導技術は優秀ですよ、まぁ使い手に魔力を要求するので誰にもというわけには行きませんが」

  プルル 「プルルは無理でした、でも今ならプルルにも魔導具が使えますよね」

  ティアス 「十分過ぎる魔力が有りますね、軽く七万は超えていてティアスよりも多いですよ」

  プルル 「プルルがティアス以上の魔力を持つ日が来るなんて」

  ダイン 「ザキトスの魔力プールを組み込んでみましたから、ですが今のプルルは言う程淫魔では無いんですよね、淫魔とはもっとエロいモノですから」

  ティアス 「つまりプルルはダイン様の想定から外れてしまっているという事ですね」

  ダイン 「ティアスもそうなるかも知れません、処女のまま遊魔にしたのはティアスも同じですから、もしかすると遊魔以上になってしまったのかも」

  プルル 「ダイン様への忠誠と愛情は全く変わっていません、ティアスに関しては大分考え方が変わりましたけど」

  ダイン 「眷属同士の上下は有りませんから仕方ないですが、そこまで変わるのも想定外です」

  プルル 「今は自分の力を実感しちゃってますから、この魔力が有れば卑屈に生きる事なんて有りませんし」

  ダイン 「かなり色々溜め込んでいたみたいですね、人間の評価が明確に現れるのも問題が有るという事ですか、無能が幅を利かすよりは良いとは思いましたが」

  ティアス 「ティアスも驚いてます、正直まだ慣れないところも有りますけど、器の大きさって遊魔に求められるモノですから」

  ダイン 「ティアスが気にしてないのならば私は別に何も言いませんが、遊魔同士の不和はいけませんよ」

  リレッタ 「嘘でもそういう方針って羨ましいです、リッタ乳魔の中で浮いちゃってますから」

  ダイン 「ルーフィンの考えは解りませんが、私也の意志は伝えてみます、誰もが幸せになれる方が良いに決まってますからね」

  プルル 「そういえば、そろそろ二人は自分の部屋に戻った方が良いと思います、辺りが明るくなれば見張に見つかっちゃいますよ」

  ティアス 「そうですね、王都の見張り番は仕事熱心ですから暗い内に戻りましょう、ティアスは別に構いませんがバレると大事なんですよね」

  ダイン 「そうですね、今でも注目され過ぎてますから、影に潜むのが私流なんですよ」

  リレッタ 「全く潜めてませんけど、むしろダイン様が周囲を陽光の様に照らし出しておりますわ」

  ダイン 「まぁ、私が照らせばその分眷属達に影が出来ます、何も私自らが動く事は有りませんしね、テガスでは上手くやってくれたみたいですし」

  ティアス 「はい、これなら数日王都に滞在しても大丈夫ですよね」

  ダイン 「流石にそれは勘弁願いたいですね、眷属達が多い方が安心出来るんですよ」

  その後、ティアスとリレッタは暗い内に自分達の部屋へと戻って、ダインとプルルの二人だけになった、プルルは遊魔から人の姿に戻ってダインと添い寝しているが、ピッタリとダインに寄り添って与えられた幸福な時間を満喫している。

  プルル 「この先、今みたいにダイン様を独占出来る時間なんて有るんでしょうか?」

  ダイン 「遊魔は不老ですから、幾らでも訪れると思います、まぁ王都滞在が長引けばプルルの役割も増えますが、今日にはテガスに戻れるでしょう」

  プルル 「どうでしょう、幾らティアスがダイン様優先になったとしても、今後ティアスが王位に着く事がもっともダイン様の為ですから、その為には何かしてるかも知れませんよ」

  ダイン 「確かに遊魔の思考ならば、後の私に有益だと判断したのなら、今の私を蔑ろにするかも知れませんね、それはそれで忠誠の現れでは有りますが」

  プルル 「今の内にしっかりとアピールしとかないとテガスの眷属達に遅れを取りますからね、只でさえティアスは王都に残る様に言われてますから」

  ダイン 「ですが、今のティアスとは同じ床に入るわけには行きませんから」

  プルル 「そうなんですよ、今のままならティアスが頑張ればプルルが得するんですよね、だからダイン様も気を付けて下さいね」

  ダイン 「ティアスが新しい娘を私に送る可能性が有るという事ですか?」

  プルル 「はい、ティアスを支援する見返りとしては十分な報酬ですから、誰の子供という事よりも魔力の強い子供というのが重要なので」

  ダイン 「それはそれでティアス也に考えた人選になると思いますが」

  プルル 「それが怖いんですよ、ティアスのお友達って知的な女性が多いですから、賢くないとティアスと話が合わないんですよ」

  ダイン 「つまり、私好みというわけですね」

  プルル 「不安を口にしてるのに更に不安にさせないで下さい」

  ダインはお詫びにプルルの頭を撫でてやりながらその温もりを堪能している、起床迄はまだ大分ゆっくりと寝ていられそうなので、今はプルルを労ってやろうとダインは考えていた。

  おまけ

  ククジア王宮 アーグルきっての巨大建造物である、白い外観の美しい建物であるが意図して白く作りあげたわけでは無く、建材として使用した王都の運河を作る時に生じた土で作った煉瓦が白かった為である、また、この煉瓦は魔道炉を使って焼き上げられた物で有り、強度と耐久性がとても高い。

  ククジア王宮は三百年に渡って増築されているが、三百年前に使われた煉瓦と真新しい煉瓦の区別がつかないぐらい優れた建材である。

  また、王宮は何度か火災の被害に遭っているが、燃えるのは内装部分だけで建物を構成する煉瓦部分は煤が付くぐらいで拭くと元通りの姿を取り戻す。

  この様に長年に渡って余り計画性の無い増築を繰り返した王宮の構造は曖昧で、上階王族の部屋から下の階の来賓室まだ容易に移動出来たりもする、もっともククジア王族の中でその様な事を行ったのはティアスぐらいで王族も自分達の居住区画に危険性がある事を未だ認識していない。