005-016
その後の数日は特に変わった事も無く過ぎて行った、ただ耳長との交流は毎日行われており、交流団の全員がユーマの事を理解するのにさほど時間は掛ら無かった、何故なら夜が明ける度に誰かがユーマに対して絶対的な好意を抱く様に変わって行くからだ。
七実の提案を受けた浮遊母艦ユーマ・ティアスも短期間に建造シミュレーションを終わらせて、実機の一部は既に製造が始まっている、船体の建造を担当するククジアの工房も見直しが行われて既に拡張工事が始まっているが、先に送り込まれたクラフト・ゾッフォが圧倒的な作業をこなして後数日で船体の建造自体も開始される予定だ。
そして今日はククジアからティアスを招いて、ユーマの今後を決める会議が行われていた。
メンバーの重要度に比べて、会場が名前が変わっただけの国賓屋敷なのは遊魔達が体裁など一切気にしないからだ、だが、テガス上空には若干形の変わったビグ・ユーマが待機しており、会議の警備を担っている。
真夏 「では、始めさせて貰いますね、お配りした資料にある通り、今回の主な議題は三つで、一つ目が浮遊母艦三番艦の仕様変更について、二つ目がダイン様とティアスの婚儀、三つ目がダイン様の東方大陸訪問についてです」
ティアス 「三つ目は初めて聴きました、東方大陸になんか訪問しても大丈夫なんですか?」
ダイン 「耳長は話が通じる種族なので大丈夫だと思います、一応保険も掛けてますからね」
そう言ってダインが視線を向けた先には、会議への参加を許されているフィセーリアとセジアの姿が有る。
ティアス 「初めて見る娘ですけど、招かれてるという事は寵愛を賜ったという事ですよね?」
ダイン 「セジアは現耳長の指導者の娘です、私を見極める様に言い付けられていた様です」
セジア 「はい、母はまだダイン様の事を完全には信じていませんから」
フィセーリア 「ですが耳長の実働戦力は騎士団が担っていますので、ダイン様に危害が加えられる事は絶対に有りません」
ダイン 「耳長の社会は、軍事と政治が独立して機能している様です、騎士団が全力で安全を保証してくれる以上、大丈夫だと思います、一応セジアを人質としても良いとの回答を貰っています」
ティアス 「何も知らないのは哀れですね、ですが耳長との交渉がそこまで進んでいたなんて」
ダイン 「どうやら耳長は魔鋼のストックをかなり持っている様なんですよ、こちらとしても是非とも手に入れたいですね、浮遊母艦の建造にまだまだ必要ですから」
ティアス 「それですよ、三番艦は本当にコレで行くんですか、ティアスは嫌じゃ有りませんけど、遊魔が露見しないでしょうか?」
真夏 「マナもそれを危惧して、学院生の反応を見て見ましたが、ユーマがやるなら何をしても驚かないと言ってました、むしろ次に期待してましたね」
ダイン 「私が常々言っている事が正しかった様ですね、人の上に立つには夢を与える事が重要だと」
フェカト 「夢ですか、エロだと思いますけど」
七実 「美ですよ、美、芸術なんて高尚な言い方する人もいますけど女体美が最高の美の表現だと思います、そして空飛ぶユーマ・ティアスは遊魔の美を知らしめる最高の広告となる筈です、そしてエロから始まった好感度は必ずや遊魔の存在を明かす上で役に立つ筈です」
ティアス 「ナナの考えはよく解りませんが、ダイン様の了承が有る以上が正しい事なんですよね」
ダイン 「はい、オカズに悪い思い出は有りませんからね」
七実 「その言葉、ナナ以外には解って貰えませんよ」
真夏 「一応意味は解りますけど、そういうモノなんですか?」
ダイン 「別れた女性には悪意を抱くかも知れませんが、触れ合いが無ければ悪意も有りませんよ、ただ追憶に浸るだけですよ」
七実 「少年漫画のエロ描写ですね、大人の男性の心には深く刻まれていると」
ダイン 「そうですね一般作品の不健全という奴です、まぁ見た目ティアスは変な事をしない限りは大丈夫でしょう」
ティアス 「どの程度かは気になりますが大抵の事は大丈夫ですね、これでも民からは慕われてますし」
場の盛り上がる雰囲気に、真夏だけは何処か納得していない表情だが、実際のところそれ程追加の資金を必要とする事でも無いので実行に異論はない、もし、ダインや七実が想定している効果が得られたのならば、遊魔が得る利益は少なくは無いだろう。
真夏 「反対は無さそうなので次に移りましょう、ですがユーマ・ティアスのお披露目を婚儀で行えば大きな話題と成りますよね」
ティアス 「つまり、ユーマ・ティアスが完成しないとダイン様との婚儀は出来ないという事ですか?」
ダイン 「確かに民に忘れられない衝撃を与えるには、ユーマ・ティアスのお披露目をした方が良さそうですね、スカイベアーとビグ・ユーマは好評だったと聞き及んでいますが」
フェカト 「どちらも斜め上でしたからね、巨大な浮遊母艦に浮かぶ巨人、これに対抗する衝撃を考えるなら空飛ぶティアスぐらいがちょうどいいのかも・・・」
真夏 「そう言われると、この方向性が正しく思えて来ます、こんな馬鹿をやるのは遊魔ぐらいでしょうから」
七実 「馬鹿は酷いですけど、皆んな楽しんでくれますよね」
フェカト 「歴史に残る婚儀になるのは間違い無いでしょう、王同士の婚儀とはいえ新婦の巨大像作って空を飛ばすなんて馬鹿は初めてですからね」
真夏 「日本でもそんなの有りませんよ、全くナナの頭は変ですよね、許すダイン様もどうかしてますけど」
ダイン 「いや、元々は遊魔の美意識を社会に認知させ、魔族への嫌悪を美しさで塗り潰すのが目的です、そこで一番効果的かつ必要な物を両立させただけで」
ティアス 「確かに動かない像よりも、飛び回る像の方が多くの民に披露出来ますね」
ダイン 「確かにナナの発想は素晴らしいと思います、興味は有っても見に行くには中々難しい物ですからね、それが飛んで来てくれるなら誰もが容易く見る事が出来ます」
ティアス 「ティアスをモデルに選んだ事も素晴らしいですね、ククジアでは誰もが知る美女ですから、その美女がダイン様に磨かれた姿をただで見る事が出来るなんて」
フェカト 「確かにティアスが一番宣伝効果が有ると思いますけど、美しさでは他の娘も劣ってませんから」
セジア 「何だか凄い所に来てしまいました、人の力で巨像を飛ばす話をしてるなんて」
フィセーリア 「遊魔ってこういうモノですよ、選定戦では浮遊母艦出してきたり、それが巨大なマギガントに変わるんですよ、今の話の巨像も大きなマギガントなんですよね」
七実 「残念ながらそこまでは無理なんですよ、完璧な姿と可動を両立する事はとても難しい事なんです、始めから可動ありきのデザインを立体化しないと無理でしょうね」
ダイン 「昔のデザインのメカニックを立体化するにしてもアレンジされますからね、そもそも設定に無理が有ったりしますし」
真夏 「また二人で変な世界に行かないで下さい、ユーマ・ティアスは非可動の浮遊母艦でいいんですよね、そしてダイン様の東方行きもユーマ・ティアスが完成した後ですよね、人類圏に動かせる浮遊母艦が二隻は必要ですから」
ダイン 「空いているテガス新工房で一隻建造出来ませんかね?」
真夏 「現状の魔鋼の保有量では厳しいです、半分ぐらいなら有るんですが・・・」
七実 「なら、素材に木を使うのはどうですか、輸送用の浮遊母艦なら船体が木でも十分だと思います」
ダイン 「底が抜けなければ使えるかも知れませんね、確かに用途を限定した廉価版でも絶大な効果が有るでしょうね」
真夏 「正直、マギガントを運ぶ前提が無ければもっと輸送力も上がります、試算して描いた図面が有りますので、後で参考にして下さい」
ダイン 「既に図面が有るんですか、堅実なマナの性格が現れてますね」
フェカト 「確かに最近の浮遊母艦での輸送はマギガント以外の方が多いですから、スカイベアーやビグ・ユーマは無駄が多いと思います」
ダイン 「確かにその通りですね、マギガントの空中投下能力など輸送艦には無駄ですからね、そのまま着陸して荷下ろしすべきですよね」
真夏 「なら、次のテガスでの建造艦は別仕様で製作しましょう」
フェカト 「いや、材料に木材を使用するならククージアで作った方が良いと思います、木材加工はククージアの方が上ですから」
ダイン 「そういう物なのですか?」
フェカト 「ククージアは運河流通の中心で造船も盛んなんです、ですから優秀な船大工も多数存在しています、それにティアス像はユーマの方が隠蔽出来ますよね」
ダイン 「確かに円形の工房の上を更に増築すれば、隠蔽は可能ですね」
真夏 「屋根ですか、もう煉瓦は積めませんよ」
ダイン 「布で囲えば良いんじゃ無いですか、上から見られる事も多分無いでしょうし、いや、秘密基地の計画を前倒しして浮遊母艦ドックを急ぎましょうか、それなら絶対にバレないでしょう」
七実 「良いですよね秘密基地、今はまだマギガントサイズしか入れませんけど、拡張楽しそうです」
フェカト 「流石にこれ以上の計画変更は容認出来ませんね、三番艦のユーマ・ティアスをテガスで作る迄は認めますけど、住宅の建築で忙しいテガスの大工を引き抜かれては困りますから」
ダイン 「なら、普及型浮遊母艦の建造をククジアに任せましょう」
真夏 「元からその予定でしたよね、ナナが変な事言い出して予定が変えられただけで」
ダイン 「予定が未定なのはいつもの事ですよ、それに真面目な三番艦を作るよりも絶対こっちの方が面白いです、材料の増加はそれ程多く無くて、必要なのはナナの努力ですしね」
ナナ 「ナナの企画を採用してくれたダイン様の為に全力を尽くします、より多くの男共にティアスのスカートの中を覗いて貰わなくては」
ティアス 「巨大ティアス像だけですからね、本物のティアスのスカートの中を見ていい男はダイン様だけです」
ダイン 「当然ですね、遊魔の女体は全てこのダインの物です、下々の者達に施すのは巨像で十分です」
真夏 「ですが、ユーマ・ティアスの完成って、本当にナナの働きに掛かってますよね、目を通して資料を見る限り浮遊母艦部分は配置が変化するぐらいですし」
七実 「量産仕様をベースに設計しましたから、マナの図面は良く出来てましたから楽でしたよ」
フェカト 「それで、完成予定はどの程度になるのでしょう、ダイン様とティアスの婚儀は人類圏の一大イベントになりますから、しっかり準備しないと」
七実 「三ヶ月です、絶対に三ヶ月で仕上げて見せます」
ダイン 「早すぎませんか、私の見立てでは半年は掛かりそうですが」
七実 「ダイン様の東方行きを遅らせる訳には行きませんから、当然マナの方も出来ますよね?」
真夏 「そんな事言っていいんですか、こちらはククージアの船大工の実力が解りませんので未定ですが、それ以外なら三ヶ月ですね」
フィセーリア 「三ヶ月なら、次の交流団も使えそうですね、魔龍の戦力も安定させられると思います」
ダイン 「なら、各自やるべき事に邁進しましょう、遊魔の勢力を確実なモノとして、このアーグルに完全に根付くのです」
七実 「ダイン様の力で今のところ上手く行ってますからね、でも、調子が良い時に限って予期せぬ落とし穴が有りますよね」
真夏 「ナナは変なフラグ立てないで下さい、遊魔の勢力拡大が進んでいるのは認知されていないからです、未だ人類には魔族への恐怖が根付いてますからね」
ダイン 「出る杭は打たれるが人の本質ですからね、遊魔は既に人では無いですが人の社会を利用する以上はどうしても目立ってしまいます」
フェカト 「仕方有りませんよね、思考自体が変わってますからちょっとした事でも目立ってしまうんですよ、それに遊魔社会に居ると物凄く充実してて生きていて楽しいですから」
フェカトの言葉はダインにとってとても嬉しい物である、ダインは自身の事は勿論、眷属にも楽しく生きて欲しいのだ、その為に持てる力を使って遊魔の地位を絶対的にする事を目論んでいる。
だが、ダインの性格上その方法は緻密な計算に基づいて行われるよりも、行き当たりばったりな思い付きが多く、遊魔達もそれを十分に楽しんでいるのだ。
おまけ
マギガントスペック クフィカール
運動力 20
機動力 20
腕力 14
耐久力 9
搭載力 16
運用力 5
対応力 12
耳長が運用するマギガント、五百年以上前から生産されているが、その出自などは伝えられていない。
人類圏マギガントの元となった機体だが、人類技術では製造する事が不可能な機体で有る。