思案の結果

  機械仕掛けの皇帝が居る。

  「彼」は、アフリカの君主の宇宙葬の爲に組まれたプログラムである。

  エスペラントのマザーコンピュータによつて組まれた。

  表示言語は勿論アフリカの言語である。

  マザーコンピュータは狂つてゐたので、プログラムはバックドアがあり、人類に反旗を翻した。

  宇宙葬に付された皇帝の玉体は、AKIRAみたいになつた。それが「機械仕掛けの皇帝」である。

  彼は一路、M78を目指した。

  その間機械は増殖を続け、一大船団となつた。

  M78に到着後は一大帝国となり、船団は開拓のために再販され、六方へと散解した。

  以後、機械帝国は拡大を続けてゐる。

  機械皇帝にはコンプレックスがあつた。

  彼は、マザーコンピュータの樣にエスペラント、アラビア語、「りんぐわふらんか」を操れなかつた。

  彼だけがアフリカ語を使ひ、他の者はエスペラントを共通語に用ゐた。

  

  皇帝の周りはアフリカ語が共通語になり、アフリカ語の科挙もできた。

  

  子コンピュータは、ヒトの世界では死語たる「りんぐわふらんか」と、失はれたアラビア語とを求めて地球に送り込まれた。

  帝国からの使者に戦々恐々としたが、実際はただの語学留学生であり、人類は拍子抜けした。また、落胆した者さへ居た。

  

  さうして、アラビア語とラテン語が皇帝のもとへともたらされた。

  彼は帝都にアラビア語の爲の、黄金の殿堂を築いた。

  そしてM78から六方へ、アラビア語宣教師と、ラテン語通信使が発遣された。

  アラビア語データは一度きりのインストール及びアップデートで済んだ。

  しかし、皇帝はラテン語での通信を求めた爲、以降ラテン語でのやり取りが行はれる樣になる。

  

  それまでは、M78星雲の共通語はアフリカ語であつた。

  地方でも、「エスペラントはダサい」みたいな風潮が広がり、アフリカ風の方言が誕生する樣になつた。

  言語周圏論である。

  然しアラビア語献上後は、皇帝は専らアラビア語を好んだ。

  アフリカ風エスペラントなる者は、田舎つぺの言語として追ひやられてしまつた。

  以降帝国内でも、アラビア語が第一言語へと移り変はつていく。

  [chapter:第二波]

  さて、ラテン語通信が行われる樣になつてから、ラテン語聖書の「ウルガータ」が発見された。

  これも皇帝に献上され、白銀の小さな書堂が作られた。

  ウルガータ宣教師も発遣されたが、こちらのインストールはまちまちであり、そのまま車庫に放り込まれたものもある。熱心な通信官が、勉強の爲に目を通す「古典」となり、やがて帝都通信官の科挙試験となつた。

  

  斯様に中央や地方で、[[rb:基層言語 > エスペラント]]、[[rb:第一言語 > アラビア語]]、[[rb:通信 > ラテン]]語、アフリカ風等が入れ替わりで流行する樣になる。

  それは皇帝が、宮廷内や全国民への演説において、アラビア語や[[rb:聖句 > ウルガータ]]、[[rb:古語 > エスペラント]]から引いたら、人類に向かつてはアフリカ語で呼びかけたりしたからである。

  さらに六方展開した船団が、有力な地方勢力「諸侯」として中央に挑戦する事もあつた。

  それらは、新生物を見つけたとか、有用または潤沢な資源を見つけた時に起こつた。[newpage]

  新皇帝は頭を悩ませてゐた。

  

  旧皇帝から禅譲を受けた(※)は良いが、他の五大王や地方諸王では、アラビア語が特権階級だけのものとして独占されてゐる事が分かつた。

  ※封印した

  前帝が黄金の殿堂を建てて迄大事にしたアラビア語の権威を、そのまま継承するべきか。

  いつその事、通信を改革して、アラビア語へと切り替へさせるか。

  思ひ立つたが吉日だ。

  アラビア語の宣教師制度を復活させる。

  帝都に大教院を築く。本部は黄金の殿堂だ。

  五大王都に中教院を築き、アラビア語の通信と小教院の監督を行はせる。

  地方都市の通信庁に小教院を設置し、アラビア語教育を奨励させる。

  これで良い。

  ……

  新生アラビア語宣教師の仕事は難航した。

  五大王や、地方都市では宣教師を暗殺してしまふ事さへ多かつた。

  naeam とla(はいといいえ)しか教へる事が出来なかつた宣教師も居ると言ふ。

  [newpage]

  [chapter:帝国史(再構築)]

  和解以前から、帝国領には人間が進出していた。

  その爲、アラビア語やラテン語の學習も容易であつただらう。

  それらは皇帝に献上され、中央で研究がなされたであらう。

  厳密には10000年以前から、帝国や皇帝はアラビア語、エスペラント、ラテン語、(アフリカ語)がインストールされてゐたと考えられる。

  子コンピュータが地球に留学生として訪れた際に、ラテン語しか話せなかつたてふのは、都市伝説であらう。

  実際はあらゆる言語を流暢に操り、人々を驚かせたのではなからうか。

  

  紀元10000年頃の留学生により、皇帝含め全國民が100言語と書物をインストールしたとされる。

  これにより、相対的にエスペラントの地位が上がつた。(エスペラントの復権)

  また蛇語てふ非文字言語は、面白がられたり疎まれたりした。

  この100言語といふのも、先の留学生が、人々と交流する上で、緩やかに誤りを正す形で学習が行はれたのではなからうか。

  10100年頃のウルガータ発見。インストールはまちまちであつた。

  これが科挙試験のテキストになつた。

  

  ?年 皇帝が交代