昔、学校の図書館で読んだ図鑑でとあるものと出会った。
その本には日本の絶滅危惧種が載っている本だった。まだ、残っているものや既に絶滅したものまで全てが掲載されている本だ。その中の一つに、目を奪われる。そこにいた動物の名は、「ニホンオオカミ」。
「 脊椎動物亜門哺乳類綱ネコ目(食肉目)イヌ科イヌ属に属する。絶滅種。体長95 - 114センチメートル、尾長約30センチメートル、肩高約55センチメートル、体重推定15キログラムが定説。」
と、されていてそこには、古い写真とイメージ絵が載っている。僕はそれを見た時思った。
なんて美しい動物なのだろう、と。そこから、ニホンオオカミに関して様々な文献を読みあさり大学生になる頃には、こう思うようになった。
「自分もニホンオオカミになりたい。」
でも、絶滅した種だ。ニホンオオカミなんて、日本にはもう存在していないのだ。ましてや、ニホンオオカミになるなんて無理な話だ。
でも、僕はなりたかった。人間ではなく、ニホンオオカミとして生まれるべき存在なのだと、本気でそう思っていた。とにかく、日本全国の森を探しまくった。生息地とされる九州だけではなく、日本全国を隅々まで探した。
まぁはっきり言って見つかるわけもないし、そもそも大学生なのでお金にも限りがある。
この種の研究なんて絶滅したので、今ではほとんどされてない。
いつしか時が流れ、就職を考えなければならなくなってしまった。大好きなニホンオオカミを探すことが出来なくなってしまう。
だが、僕はこの時思いもよらない出会いをする。
それは、とある企業の説明会に参加していた時だ。大して興味のない企業の話を右から左に受け流しながら聞いていると、とあるひとりの青年をみかける。
その青年は、ぽっちゃりとした体型(悪くいえば結構なデブ)なのだがどこか他の人とは違う雰囲気を感じた。
そう、言うなれば、人間じゃない感じがしたのだ。正直それがどういうことなのかは自分でも分からないが僕は、その企業の説明が終わると急いでその場を離れた。
さっきの彼を探す。すると、エントランスにある柱に寄りかかってなにやらスマホを操作していた。その見事に出たお腹をテーブル代わりにして操作していた。
新著もそれなりに高いので若干の威圧感がありながらもどこか優しさもある感じだ。
「プロのデブだ....(?)。いやいや、そんなことはどうでもいい。」
訳の分からない感想だが、彼に話しかけてみたくなった。今までに出会ったことの無いタイプ。
そして、僕はその人に話しかける。
「あ、あの.....!」
彼は、僕の方に顔を向ける。太って丸い顔だが、痩せれば結構なイケメンだなと思った。だが、やはり近くに来ればその雰囲気は他の人とは明らかに違う。
オーラというか、なんというか....。とにかく、ぼくはこの人と話してみたくなった。本能と言うべきなのかもしれないが。
「....なんでしょうか?」
彼は少し怪訝な顔をして聞いてきた。優しい声だ。見た目通りって感じだ。いきなり知らない人が話しかけてきてら、多少の警戒はする。
けど、この人のはそんな生易しいものでは無い。
声は温和だが、その言葉には近づくなという意思が込められている。
それと合わさる彼の雰囲気。まるで、一匹狼のようだ。
「あの、○○大学の者だけどこの会社、君も受けるの?」
「....まぁ、そうですね。受けようかなって。」
「実は、僕の大学の人誰一人居なくて寂しいなぁって思ってたらなんか見た事あるなーってと思って近づいて話しかけたら全然人違いだったんですけど....その、せっかくだから仲良くなりませんか?」
僕は自分で何を言ってるのかさっぱりわからなかった。しかも早口で。引かれたかも...なんて思っていると、少し笑った。
あ、笑うと少し可愛い...。
「そうですか、僕も実はひとりで寂しかったとこでした。
というか、同い年だし敬語じゃなくても良くない?」
「あ、そうだね。つい、敬語で喋っちゃった。」
最初はお互い、就職というつまらないことに愚痴を言ったりしていたがなんだかんだ気が合うところもありすっかり仲良くなってしまった。
しかも彼は僕と同じく、日本の絶滅危惧種について興味があるのだと言う。そのことでさらにより仲良くなりすっかり親友という立場に。
だが、就職を決められない僕にある日息抜きをしようとドライブに誘われた。それは、とある県の山中だ。そこは、彼の家族が所有する土地で、一般の人は入ることが出来ないようになっているらしい。
まさかそんな場所があるとは、知らなかった。そこで、僕らは山の中で生態観察をすることになった。好きなものとやる生態観察は楽しくて仕方ない。
その日の夜。彼はついてきて欲しいとそれだけを言い、ある場所に向かっていく。そこは、洞穴だ。その前につくと、まるで何かを決意するかのような顔になった。その顔はさっきまで見せていた優しい顔ではない。
「僕らって、ニホンオオカミの事がすごく好きじゃない?」
「お、おう。」
何か、覚悟を決めた顔だ。そして、僕らを月が照らした時にそれは起きた。
彼の体が突然、大きくなり始めた。僕より2倍は大きくなる。すると、体のあちこちから人間のけでは無いそう、獣毛が生えてきていた。銀と青を混ぜたような淡い色の獣毛が生え揃え。手と足の爪が伸び、人間はない間違いなく動物の爪だ。
顔が前に延びマズルを形成する。目の色がブルーになり凛々しさを感じる。彼の太った体は、変化すると徐々に引き締まり、ガッシリとした体つきに。
それは、まさに「狼男」と言われる都市伝説に近い姿だ。
「お前には、どうしてもこの姿を見せないといけないと思ってて....。
その、オレはニホンオオカミの血と人間の血を受け継いでいる子孫なんだ。」
衝撃のカミングアウトだった。まさか、この世に狼男が存在するなんて...。暫く、口をあんぐりと空け放心してしまった。
そして、その衝撃から何とか立ち上がり慌てて聞いた。
「え、そ、それって僕にみせていいものなの?」
「....本来なら、この姿は親族と家族のみにしか見せちゃいけないんだ。
でも、ニホンオオカミについて熱く語る君を見ていたらなんだか嘘をついてるみたいで....。
お前なら、信じられると思って....。」
「そ、そうなんだ....。」
僕はその真実と同時にうずうずしてしまう。そしてたまらずこう聞いた。
「あ、あの...モフモフしていい?」
何言ってんの僕。何男友達にそんなこと聞いて、恥ずかし....。
「いいよ。」
いいのかーい!なんてツッコミを入れつつ、ゆっくりと近づきそしてそのもふもふに飛び込む。その柔らかい獣毛に思わず蕩けた顔を晒してしまう。
「そんなに、気持ちいいのか?」
「うん~....さいこ~う....。」
「あのさ、オレの家系では見込みのあるやつは引き込めって言われてるんだ。
その、もし良かったら....オ、オレらの仲間になら」
「なる!!!」
食い気味で答える。その反応に少し驚きながらも苦笑しながらも「お前ならそう答えると思ってた。」と言われた。まさか、昔からの夢がこんな形で叶うとは思いもよらなかった。
そして、僕はニホンオオカミになるべく彼の血と彼の精液を体に取り込んだ。
彼と同じようにマズルが伸びその口からは鋭い牙生え揃い、体が2周りほど大きくなる。
耳も頭の上に移動し、三角形の形に変わる。お尻からは、尻尾が生えて身体中に体毛が生え揃っていく。銀色で月の光でキラキラとか輝いている。
満月に吠える。こんなに、身体中から力や高揚感が湧いてくる。
オレはものの数分でアイツと同じように変身した。その後、狼男、狼、人間となる方法を教えてもらいそして2人で森の動物を保護する会社に仲良く入社。
そして、2人で仲良く一緒に暮らしている。つまり、友達から恋人になった。
まさか付き合うことになるとは思ってもみなかった。そして僕はすっかり彼と同じような体型になってしまった。と言うかならざるを得なかったけど。
変身時は、この筋肉が引き締まった狼男らしい体になるが、人間に戻るとすっかり太った体になる。
どうやら、オレらは変身する時莫大なエネルギーを消費するため、必然的に太らないといけならしい。確かに痩せてた頃は変身すると疲れやすかった。
だからすっかり会社ではデブデブコンビとしてすっかりお馴染みなっている。ただ、こんなに太っても生活習慣病などを気にする事はない。医者から不思議がられるぐらいだ。
狼男は病気にはかからないらしい。
最近では、普通の獣状態で山中を2人で思いっきり駆け回るのが好きだ。狼男状態よりは素早く動けるし、何より自然をより感じやすくなるからだ。
子供の頃からの夢。そんなのが偶然こんな出会いをもたらし、幸せな生活を送れるとは思ってもみなかった。