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花のさいたけものの話
とある森の中には、体に花のさいた
けものがすんでいるらしい
そして、そのけものにさいた花には、
どんな傷や病も癒す力があるという…
とある男が、森の中を彷徨っていた
男は追い詰められた様子で、
その森の中を彷徨っていた
男には1人娘がいた
妻を早くに亡くし
ただ1人だけ残された娘
その娘が病に倒れた
医者に娘を診てもらったが、
娘の病は医者に治せるものじゃなかった
娘は余命宣告をうけた
男は諦められなかった
たった1人だけのこった家族
ひとつだけのこったたからもの
そのひとつだけのこったたからものを、
男は諦められなかった
そんな時だった
男はとある話をきいた
とある森に、とあるけものがすんでいると
そのけものには花がさいており、
その花にはどんな傷も病も
なおすことができると
男は藁にもすがる思いでその話に
飛びついた
そして男はけもののすむ森へと
足をふみこんだのだった
男は森を彷徨いつづけた
しかし、見つけられなかった
そのけものはとても臆病だと聞いた
臆病で警戒心が強いから、
絶対に姿は見せないし、
見つかってもすぐに逃げてしまうと
そのけものの花を目当てに森に行き、
それ以来二度と森から帰って来ない
者もいるという話もあった
遭難して帰れなくなったのか、
それとも、その話が本当は嘘で、
けものが人をてにかけるような
おそろしいけだものだったのか
真相は定かではないが、
男にはそんなのどうでも良かった
男はそんなことよりも、
娘の病を治す事の方が大事だったから
…森にふみこんでどれくらい
たったのだろうか
男はけものにであえなかった
男はけものを捕まえるために
どんな事でもするつもりだった
それがけものにつたわったから、
けものは姿をみせないんだろうか
それとも、そんなけものなんて、
そもそも存在しないのだろうか
男はたった1つの希望の光が
消えかけるのを感じた
「頼むよ…出てきてくれ!!
娘が死んじまうんだよ!!」
男は心の底から叫んだ
森中に響くほど大きな声で
その時だった
甘く優しい香りがした
男の追い詰められた心を
優しく癒すような香りが
男ははっと前をみた
…男の目の前にけものがいた
淡黄蘗色の毛色をした、
体に水色の花をさかせたけものが
頭に狼のような耳があり、
両手と下半身を毛皮で
覆われている以外は、
人の子と似ている姿のけものが
体にさいた水色の花から、
優しくあまい香りがした
瞳は前髪で隠れていたが、
男はけものが自分をじっと
みつめているのがわかった
男は、けものに手をのばした
その手の中に水色の花がおかれた
男は驚いてけものをみつめた
けものは優しい笑みを浮かべると、
男にそっと囁いた
「むすめさんのびょうきを
なおしてあげて」
そういうと、けものは踵をかえし、
男の前から去っていった
男の手に優しいかおりのする
花をのこして
我にかえった男は急いで
森の外へ出て、そして家でまつ
娘の元へ戻った
娘の病気は完治した
余命宣告された事が嘘のように、
娘はたちまち元気になった
けものの話は本当だった
男はけものに深く感謝した
そして、その日からけものの森に
ときおり足をはこんでは、
菓子や玩具などをもっていき、
元気になった男の娘も、
けものの森に遊びに行き、
共に遊ぶようになったという
おしまい
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