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はじめての援助交際

  秋色アジサイって、普通のアジサイがヤニで汚れたみたいな色してるよね?

  なんて誰に聞かせるでもない自問をそんなこと考えるのは肺が汚れたお前だけだと自答しながら吸うタバコは味がしないし、フィルターがやたら湿ってふやけている感じがする。

  震える指でタバコを挟み、自分を責める。

  なんで今日に限ってオプションじゃなくてきっついアメスピなんか買ったんだろう?

  どうして金がないのにタバコを買ったんだろう?

  答えは簡単。自分の体臭を染め上げるため。ついでに安くて長く吸えるやつなら罪悪感が湧かないし言い訳がきくから。

  いやいや悠長に言ってる場合じゃない。今私にできるのは祈祷の[[rb:護摩 > ごま]](アメスピ)を[[rb:焚 > た]]いて[[rb:言霊 > ことだま]]の力で望ましい結果を呼ぶだけよ。

  大丈夫大丈夫。バレないバレない。彼は気づかない。私は木。置物。[[rb:路傍 > ろぼう]]の石。気体。私のキャンパスライフはこんなとこじゃあ終わらない___!

  なうで私が私だと気づいて欲しくない男トップに指名されているのは、灰皿スタンドを隔ててPeaceを吸いながら考え事でもしてるのか、まっすぐ宙を見つめるバチクソイケメンの黒髪アフガンハウンド、[[rb:金城 > かなしろ]]くん。

  背が高くてやや面長の顔に、ウェーブパーマを当てて横に流したヘアスタイルとと丸眼鏡。毎日同じ服を着ているから服がないのかと思いきや同じものを何着も持っていて、それを日替わりで着ているらしくすれ違うと柔軟剤の香りがする夏はジャケットオフ、冬はロングコートの金城くん。

  指が細くて手が大きくて少し血管が浮いてて爪も指の毛とかも綺麗に手入れされててベースと同じくらい女性とのセッションも指技も舌技も上手らしい金城くん。

  もちろんモテるけど特定のつがいは作らずに寝るだけの関係を作りまくりたまに頬が[[rb:腫 > は]]れ上がったまま大学に来る金城くん。

  そんな金城くんと同じ学部の私ですけど必要最低限の言葉しか交わしたことがないので、私はかっこいいなぁ、顔がいいなぁなんて思いながらいつも遠巻きに見ていただけだったんですよ。

  その金城くん(21)に私(21)はつい先日、東京のラブホテルにでばったり遭遇。当時着てた高校の制服姿で知らないおじさん(グリズリー。おそらく30代)の顔面をバッグでフルスイングするところを見られてしまいました。多分。

  _____

  ユキです。ポメラニアンで身長はちっちゃめ。普通の女子大生やってます。横浜の大学で都市化学を専攻してます。

  月並みな話ですけど、援助交際しようと思いまして。

  理由と過程を説明するとサークル内で告白され、付き合って半年の彼氏(甘え上手のアメショーでした。)とまだセックスをすませていなかったことに何となく危機感を覚えて、意を決して誘ってみたんですけど彼はその場で君を抱くことはできないと平身低頭。

  「ごめん、実は俺には海を越えた先、[[rb:河南省 > かなんしょう]]に結婚を約束したダルメシアンの女の子がいるんだ。」

  と衝撃のカミングアウトをされ、混乱を抑え努めて冷静に

  ”じゃあどうして私と付き合ったの?”と聞くと彼は信念を秘めた真っ直ぐな曇りなき瞳を浮かべ、

  「彼女と約束したんだ…海を隔てた俺たちが真実の愛を証明するためにはまぐわずの誓いを立て、同じイヌの異性と交際してみて肉欲に負けず卒業までに手を出すことがなければ、その時真実の愛を証明したとして結婚の契りを交わそうと…」

  大層な理由を何も悪びれることなく並べ奉りやがりましたので、私の部屋に置いてるコイツの私物は服と箸とあとなんだったかな?と頭の中で選別しながら

  “じゃあ、愛の証明のために私が必要ってだけということは、付き合えるなら誰でも良くて私のことは別に好きじゃなかったってこと?”と聞くと

  「君はとてもいい子でポメラニアンにしては気性も激しくないしなんの文句もなかったんだけど、チビで胸が大きいだろ。正直に言うと、僕は身長と足が細長くて胸も慎ましサイズでチャイナドレスな旧態依然的中華美少女じゃないと興奮できないんだ」

  

  「…その人とはいつから付き合いがあったの?」

  「付き合いといっても会ったことは無いけど、君と付き合う1週間くらい前かな?チャットルームサイトで。」

  30分後。

  破局を告げると同時にママから引越し祝いに貰ったティファールで満足するまでボコボコに殴りつけた後部屋から引きずり出してゴミ回収所に放り投げ、「[[rb:再見 > ツァイツェン]]」と満足げに呻くチャイナフェチの麻婆野郎に唾を吐きかけ空を見上げると、そこにはまぁるいお月様。

  月光が目に染みてしまった私はわんわん泣きながらつっかけのまま街へ走り出しました。そこから先の記憶はありません。

  気がつくと朝になっていて、酒の匂いがするぐちゃぐちゃの自室で寝ていた私が大事に握っていたのは

  __♡♡____♡♡____♡♡____♡♡_

  ユキちゃん初入店ありがとう̳^. ̫ .^ ̳♡⃛

  今日はたくさん失恋話しちゃったね。‪ෆ‪.*・゚

  辛いことあったらいつでも話聞いてあげるから。

  俺が今日からユキの味方。またいつでも来てね!

  ホストクラブ YOTA OTO|《与太音》 [[rb:楚亜羅 > そあら]](≡^.^≡)

  __♡♡____♡♡____♡♡____♡♡_

  

  

  とメッセージが裏書された写真付き名刺と、

  

  ¥210,000〆と書かれた青伝票。

  絶叫を上げながらまたもやつっかけで繁華街に向かう途中、バイトで貯めたほぼ全財産21万円を引き出して店に向かい、

  「俺と獲ろうぜ楚亜羅!この街のトップ!」

  「小っせぇよ[[rb:烈駆叉 > れくさす]]!獲るなら、日本だろ!」

  ビッグになることを夢みて田舎から単身飛び出してきたもの同士のような背景でもあるのか、友情を深めんと肩を組みながら朝日に向かって歩く野心ある若ネコホスト2人。

  黒スーツにウルフカットでまっちろ化粧顔とかいう女をハメる(二重の意味で)ために生まれてきたような夜の[[rb:美男子倶楽部大権現 > びだんしくらぶだいごんげん]]である[[rb:女衒 > せげん]]予備軍サイベリアンこと楚亜羅君の顔面に青伝票と封筒を叩きつけ、泣きながら朝を迎え眠り始めたネオン街をまた走ったのです。

  朝からはしゃぎすぎたせいで21万円分のアルコールをトイレに吐き出しながら考えを巡らせます。

  家賃。水道光熱費。食費。携帯料金。美容代。

  今日は26日。給料日からわずか1日で貯金をほとんど使い果たし全財産は1万円弱。

  早急に7万ほど用意する必要のある私は稼ぎがデカく、コトが早く、なにより即金であることから援助交際という結論にたどり着いたわけです。

  善は急げとSNSで捨て垢を作り、現役16歳。白色ポメ。ホ別5。制服で行きます。下着販売対応できますと呼びかけた所130件のアプローチがかかり中でも“制服を生セラしてくれたらプラス3”出すという人がいました。神かと。

  横浜から遠く離れた知り合いもいないであろう東京は池袋北口にて約束を取り付け第1段階はクリア。

  そして実家に帰って「学祭で使う」と適当に理由をつけ制服を持ち出し、ロリっぽいメイクを施し、トイレで着替えてパーカーを羽織り、電車に飛び乗ったのです。

  まぁよく考えれば親に借りる、友達に借りる、バ先から前借りする。等々いくらでも安全にお金を借りれる方法はあったのです。

  が、一晩中アナーキーな行いに手を染めた私に冷静な判断ができるはずもなく東横線の中で窓に映る制服のスカートにこんな別れですまないけど、生きるために許しておくれと乞うことしかできません。

  あれ?勝手な理屈で酷い別れ方をする奴どっかで既視感が…気のせいかな?

  ____

  初めて来る池袋の北口は噂通り治安の悪そうなところで、出口だけで職質が2人ほど行われているおっそろしい場所でした。

  まぁ、私も21歳のくせして横浜の高校の制服で歩いてるから十分不審者か。やんなるね。

  DMでやり取りした人からは

  「駅をぬけて近くにあるドトールで合流しましょう。」

  と指示があったので店に入ろうとしたその時、

  「そあらちゃんですか?」

  待ち伏せしていたのか、迷わず私に声をかけてきたのは酒で肝臓がやられているのかあまり顔色のよろしくない中でやけに歯が真っ白なのが若干アンバランスな私より数段大きいグリズリーのおじさんでした。

  …この体格差で[[rb:挿入 > はい]]るかな?

  それでも清潔感のある小綺麗な格好をしていて、クマの割にはスレンダーです。それなりに稼いでそうだし汚い金払いの悪そうなオッサンとかじゃなかったのが救いか。

  「それじゃ、行こっか。それともコーヒー飲む?」

  「いいえ♡今日はよろしくお願いします♡」

  1、2時間だけ頑張れユキちゃん。いや、今のアタイは若き蕾を売るメスビッチのソアラちゃん。8万円はすぐそこよ。

  クマのおじさんにすぐ近くの[[rb:蓮花 > ロータス]]という名前の綺麗なホテルに連れられ、海模様のなんだかかわいい部屋を選んでもらいエレベーターで2階に上がるその途中。

  「ねね、そあらちゃん。今ここでパーカー脱いで制服になってもらってもいいかな。」

  まさかの部屋目前にして待ちきれなくなったのかおじさんが鼻の穴をふくらませながらとんでもない変態的要求。

  「え?部屋じゃ、ダメですか?」

  「クマにはね、君たちワンちゃんよりも優れた嗅覚があるんだよね。おじさんね、そのパーカーに封じ込められた若いJKが溜め込んだ皮膚呼吸と老廃物と蒸れた体臭の混ざった命そのものと呼べる香りをこのエレベーターという狭い密閉空間で直に感じたいのさ。」

  身なりを見た感じなんかまともそうだと思ったけどやっぱりダメだ!

  「さあ解き放ってくれ!そあらちゃんの持つ、そあらちゃんだけの根源の[[rb:匂 > スメル]]いを!」

  もーいや!JK買うやつにまともなのいないし軒並みキモイ!

  じゃあアタイ、そあらはどうするの?尊厳を取るか?8万を取るか?そんなの金に決まってる!

  パーカーを脱ぎ捨てると同時におじさんの表情は桜の香りを嗅ぎ、まるで雪解けと春の訪れを味わったかのように綻び、クソ狭いエレベーターの中に春の陽気の茶の湯の席が如く心地よさを見ていた。

  この間わずか2秒。そして続くコンマ1秒の動きでおじさんは更なる“かほり“を求めて私のお腹に鼻を近づけたその時____

  「部屋綺麗で面白かったよねー。」

  「でもフロント態度わりぃわ。次は無いかな。」

  2階に到着して扉の開いたエレベーターの前で待っていたのは相変わらず同じ服を着た黒髪のアフガンハウンド、金城くん。

  その隣にいたのはスタイルの良くて足の長い白毛に青いインナーの入った、私とは比べるまでもなく美人でおそらくは私と金城くんよりも年上のボルゾイの女性でした。

  ところでクマほどではありませんが私たちイヌも、嗅覚はとても鋭いです。

  鋭いが故に強い香水をふったりすると嫌がられる傾向にあるので、多くのイヌは何も付けず体臭そのままでいる人が多く、たまーに洒落っ気を出してバニラエッセンスを少しだけつけたりはします。

  (金城くんはたまにそうしてます。)

  何もつけないということはつまりそのイヌ本来の香りが強く出るということでもあり、それによる個体識別もまた容易になるのです。

  同じ学部で、たとえ声を交わしただけでも1度嗅いだ香りなんて私がJKの服を着ようがロリメイクをしてようが___

  

  背の高い彼が下に視線を向けるより前に“ん?”という顔を浮かべ始めます。

  やばい、人生が、終わる、見られては、いけない、

  なんとか逸らすには? 私の顔より下に頭を持ってきているグリズリーの顔、 クマの弱点は、眉間!

  

  瞬間、私は見よう見まねのスウェイバックをしてからグリズリーのおじさんの顔にパーカーを投げて被せ、視界を封じる。

  私たちイヌは投げられたものに否応なく反応する!

  エレベーター前の2人が本能に従い投げられたパーカーに目を向け、おじさんは光を失い、3人の視界に私が消えた瞬間、オーバースロースタイルでグリズリーの眉間にスクールバッグを叩きつける!

  顔を押さえながらぎゃん!と叫ぶグリズリーに完全に意識が向いた金城くんとボルゾイお姉さんの脇を通り抜け、初めて入るホテルながら野生の勘でルートを嗅ぎ分け、非常階段口に駆け込んだ。

  そのままホテルを飛び出し、制服姿で駅まで疾走する。

  嗚呼、グリズリーのおじさん、ごめんなさい。

  21なのに16歳だと嘘をつき、お金をまだ貰ってなかったとはいえ頭をフルスイングして逃げ出した私を許してください。

  あなたは女子高生を買うキモイ大人ではありますがおそらく金を払うつもりはあった最低限の売春モラルを所持していたであろう私よりも立派な大人です。

  なんでこうなっちゃったんだろうなぁ!?私が悪いんだけど! でも私が悪いのかなぁ!?

  

  お金もない!バレたかもしれない!かかったのは交通費だけ!どーすんの私!?

  もう昨日から何回目かも分からないまま遠吠えを上げ、駅に駆け込む私。

  それでも東京の人たちはちっとも私の事なんて気にしないんだなぁ!

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