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十二獣国記(3)

  第2章 第2の国―隈国

  朝になった。2日目の始まりだ。

  「…よし。隈国に行くぞ。」

  「シロン…お前が仕切るな。達也がまだ起きてないぞ?それに荷物があるから歩くのは不味くないか?」

  「ちゃんと考えてるさ。宿の前に馬車を待たせている。時間が惜しい。達也は俺が背負って行くからな。」

  シロンはそそくさと僕を背負うと一目散に部屋から出た。2人はため息を吐きながら材料のはいった袋を持ちあとを追うのだった。宿から出ると本当に馬車があった。運転はシロンがするみたい。僕はもちろんクロロさん達と一緒に座った。

  「隈国につくまでにここのことを話すとするか。まずは国についてだな。」

  クロロさんは懐から紙を取り出すとテーブルに拡げる。それは宿でも見たポスターである。

  「中心に5つの島がありそれを4つの海と8つの国で囲われている。北から袁、浬、猜、琅、狗、彪、隈、宍。その外に樢、麒、午、劉の4つの国がある。」

  「隈国と猜国は山に囲まれたところにある。そして宍国と浬国は港にでて船で行くことになるんだ。」

  「なるほど…。」

  「国によって盛んなものが違うんだ。彪は炭鉱、隈は工業、宍国は産業みたいにな。」

  2人の説明はとても詳しくてわかりやすい。ますます自分の世界に帰りたくなくなってしまった。

  「真ん中の島はなんですか?」

  「そこは俺達王様が天勅を受ける時に行くところだ。因みに移動魔法しかいけないぞ。移動魔法は執事のエキスパートでな。しかもAランクだぞ?王より上って酷いと思わないか?」

  「お前ら楽しそうでいいよな…。」

  シロンのことすっかり忘れていた。話に入れなくて拗ねているようだ。あんたは子供ですか…。[newpage]

  「見えて来たぞ。あれが隈国だ。」

  熊族の国―隈国。工業が盛んなのだが材料は彪国か猜国しか採れない。そのため輸入がほとんどだそうだ。しかし今は双方共鉱山を開口していないので自分で採りに行くか休業するしかないそうだ。隈国では1人一つ工房が与えられるとか。街の中に入ったがどこの工房も休業の貼り紙が貼ってあった。やはり鉱山が開口してないのが原因なのかな…。

  「ここが俺の工房だ。武器を作ったら皇宮に戻るつもりだったんだが…彪も猜も鉱山を開口してないから他の工房でも困ってるんだ。今やってるのは俺のところだけだな。この話は終わりにして早速武器を作るとしよう。ここは窯や溶鉱炉はないが代わりに魔法陣がある。本当は2人一組でやるんだが1人前になると1人でもできるようになる。」

  熊獣人は錬金術で武器などを作ってるんだ…。でも1日一回しかできないらしい。というのも1日で魔力を使い果たすので1日置きにしかできないとか。

  「じゃあ…早速始めるぞ。発動している時は魔法陣から離れててくれ。錬金術は結構危険だからな。」

  クロロさんは材料を陣の中心におくと手をかざす。発動と同時に材料は形を変えあっという間に剣へと姿を変えた。クロロさんはというとその場で倒れていた…。

  「おお…これは凄い。流石熊族だな。しかし俺達の武器は明日にお預けだな。」

  「済まない…ん?達也…やってみたいのか?」

  僕が魔法陣を見ているのをクロロさんは気づいていた。僕が頷くとクロロさんおぼつかない足取りで歩き材料を陣の中心に置いた。自分でやってもよかったのだがクロロさんが顔を横に振るので素直に従った。

  「…よし。いいぞ。始めてくれ。」

  クロロさんがやったように陣に手をかざす。発動時魔力を取られていく感覚を覚えた。

  「お!これもいいな!」

  「達也…大丈夫か?なんともないか?」

  「はい。大丈夫です。」

  (さっきの鉱山のことといい…今のことといい…達也の魔力は俺達より遥かにある。このことを他の奴らに知られたら危険な目に遭うだろうな…。)

  「クロロさん?どうしたんですか?」

  「いや…まだ作りたいなら作っていいぞ。」

  クロロさんの様子がおかしい。僕は続けて自分のと2人の武器を錬成した。本当だったらクロロさんみたいに倒れるかと思ったがそうでもなかった。

  「宍国に行くのは明日だな。クロロがこれだから…そういえば宿をとってなかったな…。」

  「それならここの奥に空部屋がある。工房で倒れたときのために作ったんだ。今の時間宿は閉まってるからここで寝泊まりしてくれ。」

  というわけでここに泊まることになったのだが2人一組の個室になっているようだ。それでシロンとクロロさんが僕と寝たいと火花を散らしていた。それをジオンさんが止めたのだが結局おさまることはなかった…。

  「お前らな…少しは達也のことを考えろ。達也、誰と寝るか決めてくれ。」

  僕は即決でクロロさんを選んだ。理由は彼の体調が気になっていたからである。シロンも納得したのかジオンさんと部屋に入っていった。ここのベッドは獣人に合わせているので大きかった。クロロさんがそれなりに大きかったので…もう少し身長がほしかったな…。寝ている時何を思ったのかクロロさんをモフモフしていて…それに気づいた彼に抱かれながら寝てしまった…。[newpage]

  次の朝…クロロさんの工房の空部屋で一晩過ごした僕達。起きたときにはクロロさんの姿はなかった。まさかと思い工房に行くと本当にいた。

  「達也か…早いな。」

  「はい。クロロさんはもう大丈夫ですか?」

  「一晩寝たらすっかりな。シロンとジオンを起こしてきてくれないか?」

  「もう既におきてるぞ…。今日は宍国に行くんだったよな?俺…船は苦手なんだ。」

  「そうか。それより達也、渡したいものがある。」

  渡されたのはなんと指輪!?シロンは何を思ったのか僕をクロロさんから遠ざけた。

  「これは魔法のは指輪だ。達也は魔力が高いから何かに役立つと思って作ったんだ。」

  「俺はてっきり婚約指輪かと思ったぞ…。」

  「(実はそうだったりするが言わないでおこう。)仕切り直して…達也、うけとってくれ。」

  とても精巧に作られている。指輪などの装飾品はそんなに魔力を使わないのだろう。取りあえずポケットにしまっておいた。

  「ありがとうございます。大事にしますね。」

  「さて…今日は宍国にいくんだったな。さっきも言ったように船でしか行く手段がない。取りあえず港に行くとしよう。」

  隈国の北にある港にやってきた。そこは武器などを販売している店が多々並んでいるようだ。船でしか来れないし武器などはここでしか買えないので各国から様々な種族の獣人が訪れる…ここは天下の台所のようだ。僕は相変わらず獣人にバレないように虎耳の付いたカチューシャをつけてないと散策もできないし…でもシロンに抱かれながら散策するのも悪くない。

  「熊獣人が作った物は全てここで売られるんだが…材料が入って来ないから品数が少ないな。シロン、なんとかならないか?」

  「そうだな…そういえば今日各国の王様が来ると聞いてるぞ。集会を開くとかで…。」

  「!?達也はどうするんだ?置いていく訳にはいかないだろ?1人にするとまた襲われるぞ…。」

  「そうは言ってもな…俺達には執事がついている。見つかったら追い出されるかも知れないがやれるだけのことはやってみるか。」

  僕のことを心配してくれるのは嬉しいけど内心は婚約したいと思っているのだろう。僕はというと3人以外の国王を見てみたいと思っていた。しかし3人ともう逢えないかもしれないので嫌だな…。

  「さて…その船に到着したぞ。どうするんだ?」

  何も思いつかないまま時がすぎる。3人が考え込んでいると虎獣人が目の前にいた。紳士的な服装なので多分執事だろう。それに気付いた3人は咄嗟に僕を隠したがバレてしまいカチューシャを奪われてしまった。

  「ぼ…坊ちゃま!?ひ…人族ではありませぬか!もう恋人を見つけられたのですか!?私は感激ですぞ!!…取り乱しました。私はシロン様の執事であるリュードと申します。以後お見知り置きを…。」

  「お前な…つけてきただろ…なんか殺気を感じたんだが…お前だったんだな。」

  「すみませぬ。丁度お姿を見かけましたのでコッソリと。それよりこの方はどうされるのですか?会議が終わるまで私めがお預りしますが…。」

  「信用できない。それより早くカチューシャを返してくれ!他の奴らに狙われるだろ!!」

  執事さんはその場から全速力で立ち去った。それをシロンは追いかけて行ってしまった。その間に紳士的な服を来た熊獣人が現れる。クロロさんよりもひと回り大きく体格がいい。それから威圧感が凄かったが僕を見た途端ニッコリと笑顔になった。

  「私はセバスチャンと申します。クロロ様、この方は私がお預かりしますがよろしいですか?」

  「で、でも…。」

  「心配するな。達也、これをつけてくれ。」

  クロロさんは熊耳のついているカチューシャを持っていた。どうやら工房に居たときに作ったらしい。仕方なくつけるとやはり彼に抱きつかれるのだった…。

  「クロロ様、こんな愛らしい人族を見つけられたのですね…私は感無量です。それより部屋まで案内しますゆえついてきてください。」

  シロンは結局無視されて僕はクロロさんの部屋にはいることになった…。[newpage]

  ―クロロさんの部屋―

  「そうですか…話はわかりました。話によるとお三方はこの方から離れたくないと。それで…会議の時に一緒に連れていきたいと。それはどうかと…。」

  「セバス頼む。なんとかならないか?」

  「クロロ様の婚約者になる者ですものね…気持ちはわかります。わかりました。お任せください。」

  どうしても僕は誰かと婚約しないといけないらしい。ここにシロンがいたら確実に火花が散っていただろう。

  「では…セバス。達也を頼んだぞ。」

  会議には執事も同席するらしい。因みに僕はクロロさんの執事として参加する。熊耳のカチューシャを付けクロロさんに抱かれながら会議室へと向かった。その間に他の国の王様に逢うかと思ったがそうでもなく…何も起こらず会議室に到着した。会議室に入るとシロンとジオンさんと目があった。その他9人の王様と11人の執事が勢揃いで…とても緊張感が漂っていた。

  「みなさん揃いましたので会議を始めましょう。議題は"各国の今後について"です。」

  ハスキー種の犬獣人が司会を務めて会議が始まった。12の国王が揃うと威圧が凄い。僕が見た印象は…犬と狼がイケメン、龍と犀がワイルド、麒麟と猿はクール、狸はキュートだ。因みにシロン、クロロさん、ジオンさんはカッコいいという印象である。鳥と馬に関しては特に何も印象がなかった。というよりもこの2人はみたくもなかったのである。

  「まずは俺からいこう。猜国では"剣と盾を装備"していれば大会に出場できると各国に通達した。しかしそれはなしになってしまったんだ。実はな…猜国で暴れ回ったやつがでてきてな…それで賞品である『龍の宝玉』をブッ壊しやがったんだ…。楽しみにしてた奴も居ただろうが済まない。」

  今の話にシロンとクロロさんはガクッとしていた。相当やりたかったんだな…僕もそうだけど。

  「そうですか…それは残念ですね。他に意見のあるものはいますか?」

  「虎王シロン、意見を言わせてもらう。虎国は鉱山を開口したいと思っている。工業を営んでいる隈国の手助けをするために材料を提供するためだ。もちろん他の種族の入国も自由だ。」

  お〜!と各王から歓声があがる。僕も凄いと思い声を上げていた。そのせいでクロロさん、ジオンさん、それに龍王が嫌な目で睨んでいた…。

  「…なんだか場が悪いので一旦解散しましょうか。皆さん休憩してきてください。」

  会議が中断となりクロロさんの部屋に戻ってきた。クロロさんだけでなくシロンも一緒である。なんだか雰囲気が怪しいけど…。

  「二人ともおやめなさい。この方の恋人候補なのでしょう?さもなくば貴方がたから遠ざけますぞ。」

  「こいつが意見の後に達也を見てウインクするからだ。それは俺でもおこるぞ。」

  「クロロ、それなら達也を喜ばせる意見でもあるのか?どうせないんだろ?」

  そう言われクロロさんはシロンを連れて部屋を出ていった。なんだか嫌な予感がすると思いついていくと会議室にはいっていってしまった。

  「みんないるな。熊王クロロ、意見を述べる。隈国は彪国からくる材料を一切拒否しもう一方の猜国から輸入することにする。更に彪国の奴らは隈国に出入りを禁止し一切関わりを持たない。」

  「クロロ…本気か?俺を遠ざけるのか?それなら俺も言わせてもらうが…鉱山の開口はなしにする。それから他の種族の入国も禁止し材料も提供することはしない。」

  「シロン…それなら僕も彪国には入れないですね。クロロさんかジオンさんのところでお世話になってどちらかの恋人になりますがいいんですか?」

  「なんだと!?俺は…達也を恋人にするために連れてきたんだ!こいつらに渡してたまるか!それが叶わないなら今言ったことを取り消さない。」

  「そう…ですか。シロン、貴方とはここまでですね。撤回するまでは彼に近づくこともしません。虎耳のカチューシャはもういらないですね。」

  「俺は国よりも達也のことで頭がいっぱいなんだ。恋人にしたいのも諦めていない。頼む、俺を置いてかないでくれ…。」

  「シロン…お前頑固だったんだな。それよりさっき言ったことはどうするんだ?達也も入国できないんだぞ?」

  「…クロロ、暫くの間頼んだ。」

  「話は済みましたか?私達の紹介がまだだったのでしておきます。私は狗国の王アオバと申します。隣にいるのは琅国の王ミズキ。それから…猜国の王グレン、浬国の王ライム、袁国の王レイン、劉国の王ギンジ、午国の王アイラ、麒国の王ヴァイ、樢国の王ルリです。次に執事の紹介ですが…また今度にしましょうか。」

  これだけいると覚えるのが大変だ。僕に興味を持ってくれるのはいいけど3人が嫉妬してるよ?狼王と龍王なんか抱きつこうとしてるし…。

  「会議も終わったしこれからどうするんだ?それなら琅国に来てくれよ。琅国は飲食店を営んでいる。そこでお前に特別に料理を振舞ってやるぞ。」

  「なんでそうなるんだ!これから宍国に行くところだったんだ。邪魔するな!」

  「なるほど…それなら俺達もついていこうぜ。」

  「来るな!さっさと自分の国に帰れ!」

  『お話中すみません!上空に妖魔が現れました!早くしないと沈没してしまいます!』

  放送が終わる前にみんなは甲板に向かっていった。僕はというとクロロさんにお姫さま抱っこされていた。甲板にでると数えきれない程の鳥のような魔物が飛んでいた。しかもものすごく大きかった…。

  「あれは胡鳥じゃないか!?国が荒れた時にしか出現しないやつがなんで…。と、とにかく退治するぞ!」

  12人の王様達は魔法を使った。シロンに教えてもらっていたけどみんなの使う魔法の属性がそれぞれ違うため何が効いてるのか全くわからない。僕も何かできないかと持っていた指輪を使ってみた。胡鳥に向けた途端呪文を唱えてないのに消えてしまった。

  「達也!?指輪を使ったのか!?何をしたんだ?」

  自分でもわかっていない。強制で発動する魔法とかあるのだろうか…でもこれならみんなを助けられる!そう思ったとき胡鳥が一斉に襲ってきたのだ!その瞬間指輪が光りだし目を開けていられないほどの光が僕達を包み込む。そして僕は意識を失った…。[newpage]

  目が覚めた時には胡鳥の姿はなく嵐の前の静けさだった。僕は大量に魔力を消費したため身体を起こすぐらいしか出来なかった。

  「達也、大丈夫か?お前のおかげでみんな助かったんだ。俺達のために…ありがとな。ここではなんだから部屋まで行こう。」

  僕はシロンにお姫様抱っこされてシロンの部屋へと運ばれた。もちろん12人の王様達も一緒である。因みに執事さんたちは先に移動魔法で帰っているのだった…。

  「回復薬があればよかったんですが丁度切らしてまして…すみません。」

  「狗国の奴らは合成に長けてるからな。素材があったら作らせてたんだけどな。」

  「もうすぐ宍国だな。着いたらまずは大図書館に行こう。呪文を知りたいだろ?せっかく指輪を持っているんだからな。」

  「俺達はどうしたらいいんだ?執事達はみんな帰ったからな…移動魔法さえ覚えていればよかったんだけどな…。今朝も言ったがお前達が良ければついていきたいんだか…駄目か?」

  「仕方ないな…分かったよ。」

  というわけで僕を含めて13人で行くことになった。宍国に着くまでは各部屋で待機することになったのだがシロンが船に弱いのを思い出し彼の部屋に入った。もちろんクロロさんとジオンさんも一緒である。しかし各部屋にベッドは1つしかないためシロンに使ってもらって僕達は床で寝ることにした。[newpage]

  十二の王の魔法の属性です。

  シロン→光属性

  クロロ→闇属性

  ジオン→炎属性

  アオバ→水属性

  ミズキ→氷属性

  グレン→木属性

  ライム→風属性

  レイン→雷属性

  ギンジ→土属性

  アイラ→無属性

  ヴァイ→聖属性

  ルリ→全属性

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