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十二獣国記(6)

  第5章 異変と暴走

  前回強制で魔法を使い意識を失った僕はミズキさんの店の奥にある寝室にいた。僕が倒れたあとミズキさんがここまで運んできてくれたようだ。今は治療中なのだがギンジさんに診てもらっていた。というのも竜人が棲む劉国は医療が発達していて…温泉や医療施設があるそうだ。因みに劉国は北の方角にあって…しかも孤島。行ける機会があったら訪れたいところだ。

  「本当だったら劉国に連れて行って治療したいところだが…お前ら3人は嫌だろう?」

  「当たり前だ。達也を渡すわけないし…だがそうも言ってられないな。劉王、なんとかならないか?」

  「そうだな…回復薬が一番手っ取り早いが…。」

  「まずは材料だな。狗王、回復薬は何で作っているんだ?」

  「薬草とアオキノコです。回復薬はBランクくらいなら作ることが可能です。この2つは主に森の周辺に生息していますので入らなくても大丈夫です。」

  「わかった。じゃあ早速採りに行くとしよう。俺とアオバが行きますので待っててくれ。」

  「俺達はどうする?」

  「それなら宍国に行こう。大図書館に魔法薬の書があったはずだ。回復薬の他にもいいのがあると思うからいってみる価値はあるぞ。」

  「そうだな。カムイ、任せていいか?」

  「はい。わかりました…。」

  カムイさんとギンジさんを残してみんな行ってしまった。少し心細い気もするけど僕のためにしてくれているのが嬉しかった。

  「ギンジさん…。」

  「やっと目覚めたか。当分は動けないからな。安静にしてくれよ。カムイ、達也君に何か食べさせてやってくれ。お粥くらいしかないけどな…少しでもなにか食べてくれ。私は君が心配で動きたくないのだ。」

  そう言うと思っていた。ギンジさんも僕のこと好きだとわかっているからね。僕が素直に頷くとギンジさんは少し微笑んだ。一方シロン達は…

  「ヴァン、これなんかどうだ?」

  「"ティンクルベリー"か。だがこれは滅多に見つからないアイテムだ。ありそうなのは浬国か狗国だろうな。」

  「俺も見つけたぞ。」

  「合成して作る薬か…。だがこれもまた滅多に見つからないアイテムを使うみたいだな。しかも記憶がなくなると書いてあるぞ。俺達の記憶が消えるのは嫌だから却下する。他にないのか?」

  「お前な…文句言うな。達也を早く治したいんだ。」

  「分かってるが完璧にしたいんだ。」

  「魔力を分け与えるのはどうだろうか。」

  「それもいいけど分け与えた奴が底をつくぞ。達也の魔力はSSSランクだぞ?」

  「そういえば…結局この2つが候補か…。仕方ない。一度戻るとしよう。」

  シロン達が宍国に行っている頃アオバさんとミズキさんが戻ってきた。肩を落としているようだけど…。

  「お、狗王と狼王。戻ってきたか。どうだった?」

  「それがですね…両方とも見つからなかったんです…。」

  「薬草とアオキノコは森の周辺に生えていた筈だ。なのになぜないのかはわからない。もしかしたら他の奴らが採って行ったかそこにいる魔物に食われたかもしれない。期待させて悪かったな。」

  「そうか…。それは残念だ。」

  話していると漸くシロン達も戻ってきた。3人はなんだか嬉しそうな表情だった。

  「やはり戻ってきていたのか。俺達はこの2つを見つけたぞ。」

  「ティンクルベリーか…確か劉国にあった気がする。もう一つは"龍の髭"と"ローヤルゼリー"で作る薬か。龍の髭も劉国に生えていた筈だ。ローヤルゼリーは多分浬国で採れると聞いている。」

  「両方とも行ったことがないところだな。ティンクルベリーと龍の髭は劉王に任せるからローヤルゼリーは俺達で採ってくるぞ。」

  そう言うとシロン達は部屋から出ていった。少し寂しい気もするけど我慢しよう。

  「では我らも行くとしよう。」

  「それなら私達も行きましょうか。どうせ暇ですし…ミズキも行くでしょう?」

  「もちろんだ!だがこのメンバーを移動させるのは無理だな。執事の奴を呼ばないのか?」

  「劉国の執事は何かと忙しいんだ…呼ぼうと思っても呼べないのだ。」

  ギンジさんがそう言った瞬間僕に異変が起きる。身体が勝手に動き出し口が勝手に開く。

  「このメンバーを劉国へ…。」

  「達也!?どうしたんだ!?」

  「私の推測ですが…多分魔力の多大消費によって暴走したと思われます。以前この状態になった者がいまして…その時はすぐに回復薬で魔力を回復させました。しかし今はそうもいかないですね…。」

  「どうするんだよ…。」

  「回復薬を飲ませない限り駄目ですね。と言っている間にどこかに移動しましたよ。」

  「ここは我の国…劉国ではないか。」

  そう…今僕達は劉国にいる。一度も行ったことのない場所なのにどうしてこれたのかわからない。

  「劉国にこれたのなら話が早い。ティンクルベリーと龍の髭を探しに行こうぜ。」

  「そうですね。劉王、頼みました。」

  「2つとも龍の山に生えている。ここからだと飛んだ方が速そうだな…我に乗るといい。」

  ギンジさんはそう言うと獣化した。彼が獣化すると人化の時よりとてつもなく大きい。今いるメンバーでも十分に乗れるのだが…龍族の体はツルツルでゴツゴツとした体型なので時々滑ってしまう。そのため誰かを乗せる時には鞍が必要不可欠なのだそうだ。

  「戻ったら温泉で疲れを癒やすとしよう。達也君も疲れているだろうからな。」

  「劉国の温泉ですか…いいですね。私、一度行きたいと思っていたのです。執事の方に頼んでも断られてしまって…どうせ執事だけで来てるんじゃありませんか?」

  「我の執事が言っていた。確かに他の国の執事が来ていたと言っていたぞ。」

  「許せません。後で殺しておきましょう…。」

  「…じゃあ行くとしよう。」

  劉国の最北端にある龍の山に到着した。確かに飛んでいかないと危ないところだがそれだけレアなアイテムが採取できるようだ。今僕達は龍の髭とティンクルベリーを探しに龍の山の頂上に来ていた。

  「2つとも山の頂上にしかないから他の奴らも困ってるんだ。しかも足の踏み場のないところに生えるから採取するのに苦労するのだ…。」

  「そうなんですか。丁度その2つを見つけましたのでお願いします。」

  ギンジさんは深く溜息をつきながら魔法を使う。ギンジさんが使う土の魔法は他のよりも特に魔力を消費するそうで…すぐに枯渇するとか。そのため力を借りるお供が必要不可欠なのだそうだ。今はそのお供がいないけどどうするのだろうか。

  「私達では駄目ですね。すぐに枯渇しそうですし…達也さんの力を借りてはどうでしょうか?暴走は覚悟でですけどそうもいってられませんね。」

  アオバさんは僕の右手をギンジさんの肩に触れさせる。するとギンジさんの魔力が上がり…龍の髭とティンクルベリーが引き寄せられた。

  「使っていても枯渇しなかったぞ…それだけ達也君の魔力が凄いと言うことだな。さて…まずはティンクルベリーだな。食べると魔力は回復するが効果で睡眠状態になってしまう。治すなら睡眠薬がいいのだが達也のように魔力が暴走していると症状が悪化する恐れがあるから注意してくれ。次に龍の髭だ。漢方薬に使うのだがこれも魔力を回復してくれる。摂取しても状態異常にならないから大丈夫だ。」

  「ではティンクルベリーは食べさせますね。魔力の暴走はしてほしくはないですし…。」

  「では戻るとしよう。」

  ギンジさんの薦めで温泉に来た僕達。ここに来る獣人の大半は魔力を回復するためだそうだ。状態異常も治るそうだが魔力が暴走していると駄目と言うことで僕の体調はよくならなかった。因みにティンクルベリーの効果で睡眠状態になっていたけどそれは治ったようだ。

  「ふう…気持ちいいですね。劉国に来てよかったです。達也さんのおかげですね。」

  「機嫌が直ったようだな。この後はどうするんだ?」

  「彼らに合流したいですね。龍の髭を渡したいですし…それに逢ったついでに回復薬の素材も探したいです。」

  「それなら浬国だな。今ローヤルゼリーを探している最中だろう。我が連れて行ってやるからな。」

  「私は執事ではないですけど…良かったんですか?」

  「カムイ、お前は特別だ。達也君をつきっきりで看病してくれたからな。」

  「ありがとうございます。」

  「ところで劉王、達也さんを抱くの止めてください。」

  「あいつらがいないからいいではないか。それにもう我は達也君を気にいっているぞ。」

  「劉王!俺にも達也をだかせてくれよ〜。」

  「はいはい、貴方は駄目ですよ。」

  「このメンバーを浬国へ…。」

  「まずい!このままだと全裸で移動することになるぞ!早く服を持て!!」[newpage]

  結局僕の魔力の暴走で浬国に来てしまった。カムイさんはずっと黙ったままだけど…。

  「折角来たのですから浬王に逢っていきましょうか。皇宮は広場の中央にあるようですよ。」

  「狗王…それに琅王か?」

  偶然だけどシロン達とばったり居合わせたようだ。彼らも皇宮を目指していたらしい。

  「そうだ、彪王にこれを渡しておきます。」

  「!!龍の髭か?どうして…。」

  アオバさんは3人に経緯を話すと早急に皇宮に走って行った。僕達はついていっても仕方ないと思い彼らが来るまで待つことにした。その数分後…

  「執事に聞いたんだが浬王は外出中だそうだ。なんでも"サンハニー"というアイテムを採りに妖の森に行っているそうだ。それから…"ローヤルゼリー"もそこにあるそうだから探しがてら採りに行こうぜ。」

  シロンはそう言うと一足先にいってしまった。他のメンバーは呆れ返りながら後を追った。

  「ここがその妖の森だな。ここにいるクイーンビーがローヤルゼリーを守っているらしい。闘いになるかもしれないから覚悟して行くぞ。」

  シロンを先頭に森の中に入る。僕はというとミズキさんに担がれていた。

  「妖の森は一方通行なんだな…迷うことはなさそうだ。しかし…どこまで行けば広い所に出るんだ?」

  「ライムさんに以前聞きましたけど…風の吹く方に行けばいいと言ってましたよ。」

  「じゃあ脇道を行かないといけないな…風はそっちの方から吹いているからな。」

  みんなが見ている方には生い茂る草がある。そこをかき分けて進むことになるようだ。そしてどれくらいかかっただろうか…漸く広い所に出てきた。そこはどこか神秘的で心が和む。中心には大木があって…所々に穴が空いている。そこにシロン達は恐れも知らず大木の中に入る。中は空洞で…天井には蜂の巣があり壁には蜘蛛の巣だらけでなんだかダンジョンみたいな所だった。とー

  「あっ!みんな来たんだね!」

  そこにいたのは浬王のライムさんだ。シロン達がクイーンビーのことを話すと少々不安気だったがいる場所を知っているそうなので案内してもらうことにした。

  「僕の探している"サンハニー"も奴が守ってるんだ。特大の蜂の巣が奴のいる目印だからすぐにわかるよ。」

  ライムさんがそう言っていると目の前にそれが現れる。いかにもいそうな感じがするが気配がないようだ。

  「…いないならチャンスだな。奴が来ない内にさっさと採取しようぜ。」

  シロンが蜂の巣に近づいたその時奴が現れる。クロロさん達はすぐに戦闘態勢に入り魔法を使う。

  「やはりジオンの炎属性の魔法が効いているようだ。相手は虫だからな…。」

  「しかしこれだけ大きいと倒すのも難しい。その間に魔法が枯渇しそうだ。」

  ジオンさんがそう言っているとアオバさんは僕の右手を彼の肩に乗せた。すると魔力が上がり威力も増した。そしてクイーンビーはあとかたもなく消え去った。シロン達は目的のものを採取し妖の森をあとにし…今はライムさんの提案で皇宮に来ていた。

  「後は達也を治すだけだな。」

  「これによるとランクAの魔力でないと作れないみたいですね…。私達みんなBランクですよ?」

  「私、Aランクなんですけど…。」

  と言ったのはカムイさんだった。彼は執事ではないけど相当な修行を得てきたのだろう。早速彼に調合のために魔法を使ってもらう。その時もアオバさんは僕の右手を彼の肩に乗せていた。みんな本当に枯渇するほど魔力が少ないんだな…。

  「本当に枯渇しないですね…それだけ達也さんの魔力は豊富だということですね。」

  あっという間に調合薬が完成する。それをシロンが手に取り僕に飲ませた。こうして僕の魔力の暴走はすっかりおさまったのだった。

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