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西条研究所で二日目の朝を迎える。昨日達也君が怪人化したために大学内の建物は半壊していた…それでも西条さんから寝る場所は訓練場にしてくれと言われそれに従った。訓練場はそれほど酷くはなかったがそれでも砂埃がところどころに散らばっていた。そして目が覚めるとそれらはなく全て元通りになっていた。西条さんが持っている能力…“再生“で全て元に戻したらしい。それから俺達には“記憶処理“という能力で昨日のことを全て忘れさせたとか。そのせいで治療室にいた筈の達也君と団さんも俺達と同じ訓練場で寝ているのだった…。
「二日目は合同訓練をしてもらう。AチームはBチームと、CチームはDチームとやってくれ。」
今回は達也君と訓練ができる…!俺は内心喜んでいた…しかし良くないことが起こる。
「氷海と内竹はまだ回復していないから休ませることにする。東海林、後は頼んだぞ。」
西条さん…昨日のことを覚えてるんだ…。“記憶処理“の能力は本人だけは消すことが出来ないらしい。そのため西条さんは昨日の疲労が溜まっているようだ。それにしても達也君と団さんも記憶が消えているはずなのに疲れているのはおかしい。もしかして二人には効かなかったのだろうか…。
「この二人…幸せそうに寝てやがる。凄く羨ましいな…昨日なんかあったのか?」
「さあな、こいつらは放っておいて俺達は訓練しようぜ。(本当に羨ましい…。)」
吾郎さんと東海林さんが羨ましそうに見ている…これだと本当に団さんにとられるかもしれない…でも達也君が団さんの側にいたいと言うのならそれでもいい…俺はそう思った。と、達也君が漸く目を覚ました。
「あ…みなさん。もう起きてたのですね…これから訓練ですか?私も参加します…。」
「もう少し休んでていいぞ。今動くと団が倒れるからそのままでいてくれ。」
そう…今団さんは達也君の体に凭れかかっているのだ。それでも達也君は立ち上がろうとした…その時団さんが倒れて達也君は下敷きにされてしまう。しかもそのせいで団さんは達也君にキスをしていた…。
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「なんか体中殴られた気がするのだが気のせいだろうか…まだズキズキと痛むぞ…。」
漸く団さんも起きたのだが寝ている時に俺と吾郎さんで殴る蹴るをして…無理矢理起こしたのだ。あんなことをされて怒らないわけがない。
「氷海と内竹が起きたことだし訓練は全員で出来そうだな。無理だと思ったら休んでいいぞ。」
というわけで訓練が再開される。合同で訓練なのだが達也君が相手なのがとても辛い。
「そういえば団さん達のヒーローの名前…聞いてなかったな。逢った時に聞けばよかったんだけど…。」
「そうだったな。春日は“スピードタイガー“、羽真は“マイティドッグ“、内竹は“パワーベア“、東海林は“ガードシャーク“だ。みんなそれぞれに特化した名前になってるから覚えやすいと思うぞ。」
西条さんもネーミングセンスないな…その証拠に団さん達が呆れている。でも確かにシンプルな方が覚えやすいってのもあるかもしれない。
「俺達は普通に名前で呼び合ってるからな。ヒーローの名前で呼ぶのは西条さんだけだし…お前達も普通に名前で呼んでくれて構わないぞ。」
確かに…こっちではヒーローの名前で呼ぶのは龍さんだけだ。他のみんなは普通に名前で呼び合ってるからそっちの方がいいかもしれないな。因みに達也君だけは俺をヒーロー名で言ったことが一回だけある。
「今回は訓練を前半だけにして後半はパトロールとする。休憩は昨日と同じ三十分だ。」
パトロールか…どうせまた達也君とは別行動になるんだろうな。今のを聞いた吾郎さんと虎一もはぁ…と溜め息をついていた。団さんはというといつも無表情だったのに口角が少しだけ上がっていた…達也君と一緒で嬉しいのが良く分かる。
「怪人を見つけたら全員集合させるつもりだ。その時はちゃんと動いてくれよ?ただ…今は訓練中だからパトロールのことは忘れてくれ。」
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「よし、休憩だ。五分前には訓練場に集合してくれ。」
一時間の訓練が終わり休憩に入る。団さんは達也君を連れて食堂の方に行ってしまった。すっかり親しくなってしまったところを見るとなんだか不安になる。
「熊森、氷海とは同級生だった…よな?一緒にいてやらないのか?」
声を掛けてきたのは東海林さんである。今いるメンバーの中で最年長だが西条さんと同期らしい。
「そうですが今はいいです…。」
「辛いなら言えよ?今のお前を見てると心配になる。」
「はい…すみません。」
「本当に大丈夫か?俺はこれから食堂に行くけど…熊森、やはり心配だから一緒について来い。」
俺は東海林さんに手を鷲掴みされ引きずられながら食堂に連れて行かれる。そこに達也君がいるのに東海林さんは分かっているのだろうか。そして数分後…食堂に到着する。中に入ると全員いた。なんだ…みんな達也君といたかったんじゃないか。俺は少しホッとしていた。
「達也さんは話しやすいですね。団さんが好きになったのも分かる気がします。」
「俺や斗真よりも年上だけど本当にそうだよな。」
「お前らやめろよ…達也君が困ってるだろ?」
「あ、熊森君…私…。」
「達也君、君はここに残って団さんと一緒にいるのがいいかもしれない。俺は止めないからな。」
「熊森君…。」
「氷海、熊森と一緒にいてやってくれ。こいつ魂が抜けきった顔をしてるからな…。」
「もういいから…俺は訓練場に戻るからな。」
俺は踵を返し食堂を出ようとした…しかし達也君が抱きついてきたのだ。やめてくれ…一緒にいたくないんだろ?とネガティブな言葉ばかりが頭の中で交錯している。それのせいで俺は達也君を突き飛ばしてしまった。
「熊森!なにするんだ!!達也君は仲間じゃなかったのか!もう少しで壁にぶつかるところだったんだぞ!」
「だ…団さんといたいなら言えばいいだろ!俺のことなんかどうでもいいんだろ!」
「熊森君…私は…。」
「聞きたくない!もう…うんざりだ!!」
言ってしまった…負の感情がこみ上げてきて達也君に暴言を吐いてしまった。手に力が入り体が震え目に涙が溜まり顔を伝ってこぼれ落ちる。俺は達也君にしてはいけないことをやってしまった。今まで心の支えだった彼を突き離して遠ざけようとしている。
「分かりました…熊森君の言う通りにします。ですが私は熊森君の仲間です。それだけは忘れないで下さい。」
達也君…一緒にいたいと言ってくれないのか?恋人なのに仲間としか見てないのか?俺はそう思いながら食堂から出てしまった…。[newpage]
不穏な空気の中俺達は訓練場に戻ってきた。それもそのはずだ…俺が達也君を突き離したりするものだからそれのせいでみんな沈黙しているのだった。
「Aチームは北、Bチームは東、Cチームは西、Dチームは南に行ってパトロールをしてくれ。」
なんだか気が進まない。このまま何も起こらないでほしい…と余計にネガティブになっていく俺。しかしそれを断ち切るが如く団さんが発言をした。
「東海林さん、熊森とチームを交代してくれ。」
「珍しいな。団がそんなこと言うとは…わかったよ。」
「熊森、お前はやはり達也君がいないと駄目になると思う。だから一緒に行動してくれ。」
「余計なことしないで下さい…俺はこのままでいいですから心配しないで下さい。」
「駄目だ、負の感情を背負ったままでいると昨日の達也君みたいになってしまうからな。お前まで怪人化してしまう恐れがあるからな。」
昨日のこと…?やはり団さんは達也君が怪人になったことを覚えていた。その時確か団さんが怪人化した達也君に襲われたような…そして達也君が団さんに薬を飲ませて…それぐらいしか覚えていない。
「内竹がそんなこと言うなんてな…私もそれには賛成だ。ということで熊森がCチームに東海林がDチームに入れかわりで入る。それではパトロールに行ってきてくれ。私はここから指示を出すからな。」
さっき達也君を突き離したばかりなのに…団さんは何を考えているのだろうか。そんなことをして俺の気が晴れると思っているのだろうか。相変わらず無表情な団さんだけど…少しでも元気になってほしいと思って自分がやりたいことを俺にしたんだ…。他のみんなも俺の肩をポンッと軽く叩きながら訓練場を出ていく。その時俺は少しだけ落ち着いた気がした。
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「熊森、少しでも足を引っ張ったら達也君をお前から引き離すぞ。俺達のチームに入ったとはいえそれだけは忘れないでくれ。」
「団さん、言い過ぎですよ…。」
「これぐらい言わないと立ち直らないだろ?」
俺達は研究所から西のエリアをパトロール中だ。ここは建物が少ないので怪人が隠れるところが限られる。パトロールする時は私服で行動するのは一緒だけど…団さんの私服は自分の体にあってないほど伸びていて腹が出てしまっていた。
「変身すれば問題ないだろ?」
「変身してもあまり変わらないと思いますよ…団さん、腹の部分が丸見えですし…。そこを狙われたら怪我ではすみませんよ…。」
「ヒーローのイメージって難しいな…俺だって二人のヒーロー姿の方が良かったと思うぞ。」
団さんと達也君は楽しそうに話をしている…ここに俺が入る隙はない。俺は…本当に達也君といていいのだろうか。未だに俺の中に負の感情が渦巻いている…今の団さんは翠川研究所にいた時の俺と良く似ている。その時は本当に楽しかった…だが今は西条さんのところなので達也君と触れ合う時が全くない。
「熊森君?大丈夫ですか?」
「おいおい…同じチームなんだから話に入れ。」
「…すみません。」
「ったく…達也君と一緒でも駄目か。怪人が現れたら達也君と俺でなんとかしないとな。」
「団さん、少し休憩しませんか?熊森君が心配なので…近くの喫茶店にいきましょう。」
「わかった。熊森、行くぞ。」
俺は団さんに体をガッシリとホールドされ連行されてしまう。その時俺達に近寄る影があることをまだ知る由もなかった…。それはさておき達也君の提案で喫茶店に来た俺達。中に入ると珈琲や紅茶の香りが鼻の穴を通り抜ける。それで少し気分はよくなったのだが…
「団さん、なんで俺を達也君の隣に座らせたんだ?団さんが一緒に座ればよかったのに…。」
「言っただろ?お前は達也君と一緒に行動しろと。」
「俺のことはもう気にしないで下さい。」
「…?二人とも、なんか怪しい人がいるんですけど…。」
達也君が入口の方を見ている…そこに全身を黒でコーディネートした怪人が現れる。キョロキョロしているところを見ると誰かを探しているのだろうか…と団さんが獣人の方に近づこうとしていた。
『お…お前は内竹団!?俺の宿敵じゃねえか!ちょうどいい…ここで葬ってもいいが場所が悪い。じゃあな。』
獣人は高笑いして喫茶店を出ていった…団さんも俺達を見ると喫茶店から出ていってしまった。他にいる人達は呆然としていてその場から動くことがなかったが俺は操られたように足が勝手に動いてしまう。
「熊森君!待ってください!!」
達也君が俺に近づこうとしている…!しかし彼の足元に穴が現れ吸い込まれてしまう。一瞬の出来事に俺は何も出来なかった…。
〜氷海達也視点〜
「こ、ここは…。」
私は喫茶店に現れた穴に吸い込まれ一人闇の中を彷徨っている。熊森君は今一人なのに…と、そこに影が現れる。それはさっき喫茶店でみたあの怪人だった。
『内竹団から逃げるのに苦労したぜ…おっと、こんな所にちょうどいい奴がいるな。』
「貴方…怪人ですね?見た時すぐに分かりました。」
『感知能力か…それは困るな。まあ…その能力を奪えばいいだけだからな。なぁ…ヒーローさんよ。』
「団さんを宿敵と言ってましたけど…。」
『あいつは俺の兄貴を殺したんだ。ヒーローの癖に俺だけ助けて兄貴を置き去りにしたんだ…そんな奴、許すことなんて出来なくて怪人にしてもらったんだ!!』
「“してもらった“…?もしかして黒幕がいる…?」
『やはりヒーローは怖いな。まあいいや、お前はこれから怪人になるから気にすんな。』
怪人は少しずつ私の方に向かって来る。その時甘い匂いがして更に体に力が入らなくなってしまう。
『気づいたか、俺の甘い匂いに…これを吸うと今のお前みたいに力が入らなくなる。しかも媚薬が入ったおまけ付きだ。それからお前にもう一つプレゼントだ。』
怪人は大きく口を開けると今度は甘い匂いではなく臭い息を出す。しかも息がかかったところから痺れてきて完全に動くことが出来なくなってしまった。
『これでお前は終わりだ。ついでだから精液も採取しておくか。』
怪人が私の股間に手を伸ばしスーツ越しに上下運動を開始する。媚薬の入った甘い匂いに当てられたため私はすぐに絶頂を迎えてしまう。更に怪人は私の体に抱きつくと泥のようなものを出しあっという間に私は泥人形にされてしまう。
『フフフ…内竹団。こいつで絶対に倒してやるぞ…!』
怪人は勝ち誇ったように高笑いするのだった…。[newpage]
〜内竹団視点〜
「くそっ…あいつどこ行ったんだ…?」
俺は怪しい奴を追いかけている最中だ。街中から出ていないと思い所々探したが見つからなかった。
「あいつら…大丈夫か?一旦合流した方がいいか?」
と、突然西条さんから通信が入る。
『内竹、怪人を見つけたなら通信してくれと言った筈だ。今全員向かわせているからな。』
「すみません…夢中になってました。」
『仕方がない奴だ…それより氷海と通信がとれないんだが…何かあったのか?』
「達也君なら熊森と一緒だと思いますが…。」
『それがな…喫茶店にいるのが熊森だけなんだ。もしかしたら氷海は怪人に捕まったのでは…?』
なんだと…?達也君に限ってそんなことはないはずだ…熊森の奴は何をしてたんだ?
『内竹は全員が来るまで怪人の捜索を頼んでいいか?』
「分かりました。俺は熊森と合流します。」
達也君が怪人に捕まった…?俺は早足で喫茶店に向かおうとしたが熊森が歩いて来るのが見えた。
「熊森!達也君が怪人に捕まった。お前は一体何をしてたんだ!…おい、聞いているのか!?」
熊森の反応がない。もう駄目かもしれない…達也君がいなくなったことで更に負の感情が渦巻いているようだ。こいつは怪人化してもおかしくない…。俺は熊森をこの場に残し怪人の捜索を開始する。狙いは俺だから何れ出てくる筈だ…とその時目の前にあの時の怪人が現れる。ともう一人泥に塗れた人形が出てくる。
『内竹団…お前を今度こそ倒してやる。この泥人形でな!こいつと一緒に遊んでな!』
「ま、待て!」
俺は怪人を追いかけようとしたが泥人形に捕まってしまう。その泥から出てきたのは…
『団…さん…。』
「達也君か!?やはり捕まってたのか…。今助けてやるから待ってろ。」
まだ意識を保てている…この間に助けないと怪人になる可能性が高くなると思い俺はすぐに達也君に纏わりついている泥を落とそうとするが…
『フフフ…油断したな。やはり助けると思ってたんだ。後ろががら空きだぞ?』
俺は泥から現れた怪人に捕まってしまうが迷わずヒーローに変身してぶっ飛ばした。
『くっ…やはり強いな。泥の奴もまだ意識があるのか…だがもう遅い。お前!こいつを捕まえろ!』
怪人の命令に達也君は勝手に動き出し俺の体を掴む。そして泥塗れにされてしまった…しかもこの泥のせいでヒーロースーツは全て溶かされレスラーパンツ一丁にされてしまう。その間に怪人が俺の方に近づいてきた。
『お前は俺が殺してやる…だがすぐにはやらない。これからとことん扱きあげてやるからな…。』
奴はレスラーパンツ越しに俺のものを掴み上下運動を開始する。技を使いたかったが手が泥の中に入ってしまっている…早く誰か来てくれ…!
『こうやって扱きあげるのもいいもんだな。お前の精液は全て俺がもらってやるからな。泥の奴はもうそろそろ限界だし…後はお前だけだな。』
くそっ…手が外に出ていればこいつを倒せるのに…!達也君も泥塗れになって相当時間が経っている…泥に水分をとられて脱水症状になっているかもしれない。それに体に纏わりついている泥も乾ききり固まってしまって動けない状態だ。これはまずいな…。とー
『だ…団さん…。』
「達也君!大丈夫か!しっかりしろ!」
達也君は気を失ってしまったようだ。俺も奴に股間を責め立てられて限界が近い。その時達也君に異変が起き自分と俺に纏わりついている泥をあっという間に破壊してしまった。体が膨張しまるでグリズリーのような体格になり更に爪が伸び体全体が銀色の毛に包まれている。
『な…なんだこれは!』
『団さん…まだ力を使えますか?』
「達也君…?これは“獣化“か…?」
『話は後です。今はあの怪人を倒しましょう!』
よく分からないがこれはいける!俺は残った力で奴に光の弾を放つのだった…。
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「はぁ…はぁ…やったぞ…。」
達也君のお陰で怪人を倒すことが出来た…しかし体力と精力が尽き俺はその場に倒れてしまう。
『団さん…やりましたね。私は薬を飲まないと元に戻れません。熊森君がその薬を持っていますので探しましょう。って、団さんは動けないんでしたね…。』
達也君はまだ体が元に戻っていない。俺も熊森を探しに行きたいが体が動かない…。と、達也君は俺よりも二回り大きい手で器用に俺の体を持ち上げるとそのまま抱きしめた。今全裸なのだがいいのだろうか…。
『私、団さんともう離れたくないです…。』
鼓動が激しくなる。俺だって離れたくない…そんな気持ちがこみ上げてくる。あの時の熊森と同じ気持ちが…俺は何を思ったのか達也君にキスをしてしまった。とー
「見つけたぞ!おい…そこの怪人!団さんを離せ!」
春日達だ…!漸く来てくれた…だが何かおかしい。奴らは何故か戦闘態勢にはいっていた。
「待て!この怪人は達也君だぞ!」
「なんで庇うんですか!怪人を倒すのが俺達の使命ですよ!今助けます!」
『…団さん、すみません。』
達也君は俺を背中に乗せ春日達の方に走り出す。目的は逃げること…のはずだった。
『いた…!熊森君!』
「え…?た、達也君か?」
『すみません!話は後でお願いします!』
達也君は熊森を触手で捕まえそのまま走り去る。熊森は達也君が怪人化したことを知っているため驚くことはなかった。他のやつらは多分昨日のことを西条さんの能力“記憶処理“で忘れているため襲って来たのだろう。怪人になった達也君は春日達をあっという間に振り切り人気のないところに俺達を連れてきた。
「怪人に捕まってたんだな…何も出来なくてごめん。」
『いいんです。それより早く薬を下さい。』
熊森から負の感情が消えている。達也君と一緒になったことで笑顔を取り戻したようだ。熊森は達也君にその薬を渡し達也君はそれを触手で包み込むと口まで運び放り込んだ。薬の効果はすぐに現れ怪人化した達也君は光に包まれ元に戻ったのだった。
「それより達也君、さっき全部見てたぞ…団さんとキスしたところを…。」
「あれは俺からしたんだ。元に戻れないかと思って…それに達也君と離れたくなくて…。」
「そうだと思ってました。守りたい気持ちは一緒なんですから…でも明日には離れるんですよね…。」
「三人共、無事だったか!怪人を倒したんだな!」
春日達が漸く追いついた。達也君が怪人だったことは言わない方が良さそうだな…。
「今回は三人のお手柄だ。よくやったぞ。」
「団さんはやはり凄いですね…。」
こうしてパトロールが終わったわけだが…俺達のチームだけは西条さんに呼ばれることとなった…。[newpage]
「三人共、ご苦労だった。」
俺、達也君、熊森はパトロール終了後西条さんに呼ばれ研究室に来ていた。他の奴らはその間訓練場で自由にしている。なぜ呼ばれたかは分からないが…。
「お前ら三人は私の能力“記憶処理“が効かなかったようだな。達也君が“獣化“したことを覚えてるか?」
「勿論です。他の奴らには言ってませんけど…。」
「あいつらにも言っておかないと達也君が獣化した時また攻撃しそうだな…。それで熊森が持っている薬で元に戻れるんだな?」
「そうです。ですが意識がない時は先にヒーローの精液が必要になります。」
「なるほど…。その薬は氷海が作ったと聞いている。」
「はい、怪人化した時に思いついたんです。それで翠川研究所で開発したんです。」
「分かった。お前らは訓練場に戻ってくれ…氷海、お前は残ってくれ。」
「じゃあ達也君、後でな。」
俺と熊森は研究室を出る。怒られるかと思ったけど何もなくてよかった…と安堵していた。とー
「団さん、以前達也君をスカウトしようと言ってましたよね?やっぱり好きだったからですか?」
いきなり何を聞くんだよ…でも確かにそうである。俺が達也君をスカウトしようとしたのは十年前…西条研究所に入って間もないことである。
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「内竹、入って早速だが怪人が現れたぞ。」
この時がパトロール初で…顔見知りな俺は斗真達とはすぐ慣れることはなく一人で出動していた。春日が入ったのは斗真が一人で出動していた時。怪人に襲われた所を助けようとしたが返り討ちにあいやられてしまった。そのことは後になって知ったことだけどな。
「場所はここから見える街だ。今まで出現することがなかったのだが…どこかに潜んでいたと思われる。走っていくと体力が尽きるから私が車で連れて行こう。」
パトロールをする時は決まって私服だ。ヒーローになる時は怪人が出てきた時か人気のない場所ですることになっている。もしヒーローの姿を見られたら“記憶処理“で忘れさせるらしい。
「ここは…遊園地だな。ヒーローショーとか人が集まりやすい所にいると思う。早速だが探索を頼む。私はここで怪人の居場所を確認する。」
西条さんの車には多彩な装置が搭載されている。ホーミング、GPS、通信機能…ヒーローのサポートをしてくれる機能が満載だ。それが俺の腕にあるヒーローウォッチに送られてくるので便利だな…。
「とりあえずヒーローショーのある場所に行ってみてくれ。そこに怪人の反応があるようだ。」
指示通りに行ってみると本当に人が集まっている。舞台では怪人とヒーローが闘っているところである。とりあえず俺はゆっくりと近づき様子を伺う。とー
「あ、すみません…。」
ぶつかってきた人族に飲料をかけられてしまった。俺も周りを見ていなかったので大丈夫だとだけ声をかけた。
その時出逢ったのが達也君だ。この後翠川研究所でヒーローとして活動することになる。
「私は氷海達也です。えっと…。」
「俺は内竹団。西条研究所に所属しているヒーローだ。これからよろしく頼む。」
達也君とはすぐに親しくなってしまった。俺はパートナーがいなかったので彼をスカウトしようと思っていた。
『内竹、怪人は舞台にいるようだ。ショーの間に怪人を倒してしまいたい。ヒーロー役をしている者がいるだろ?その方と協力してくれ。』
「了解しました。」
俺は早速舞台にあがりヒーロー“パワーベア“に変身する。肩、腰、足に鉄色の鎧を付け頭にはバイザー付きのヘルメット…それが俺のヒーロー姿である。この時西条さんとの通信やGPSは切断されてしまうためここからは自分一人でなんとかしないといけないのだ。
「お、お前…ヒーローか?」
舞台にいたのは翠川研究所に所属している熊村吾郎さんだった。普段は大工をしているそうだけど今日は偶然ヒーローショーに出ていたらしい。
『フフフ…ヒーローが二人もいたとはな。クローン開発のためにお前らの精液…戴くぜ!』
怪人はいきなり俺達に向かって触手を放ってきた。しかも俺達だけでなく観客まで巻き込んでいた。これでは思うように動けない。とー
「皆さん!早く避難してください!ここから離れてください!!」
横目で舞台の下を見る。そこで達也君が観客達を誘導している…あっという間にステージの周りは達也君以外避難することが出来たようだ。
「よし!やるぞ!“アースボンバー“!」
吾郎さんは土の技を使えるのか…俺の技は手のひらに力を込めて光の弾を放つのだが技名はない。これは後で考えるとして今は怪人を倒すことだけ考えよう…。
『くっ…覚えてろ〜!!』
怪人はそう言い灰になって消えていった…とりあえず怪人を倒すことは出来た。
「ありがとな。氷海のお陰で怪人を倒すことが出来た。吾郎さんもありがとうございます。」
話していると西条さんから通信が入る。内容は今いる人達の記憶を消すことだった。とりあえず西条さんのところに連れて行って合流する。
「すまないが君には私達のことを忘れてもらう。」
「そう…ですか。そうですよね…知られたらいけないこともありますよね…わかりました。」
達也君は素直に従った。西条さんは早速“記憶処理“の能力を使う。俺達に逢ったこと…ヒーローや怪人を見たこと…それを全部忘れることになる。しかし達也君はそのことを忘れることはなかった。
「氷海には能力が効かないようだ。西条さん、どうしますか?俺達と来てもらいますか?」
「それが一番いいだろうな。しかしもう一人ヒーローがいるとは思わなかった。」
「俺は熊村吾郎だ。翠川研究所に所属している。それより…この子はどうするんですか?反論がなければ俺が連れていきますけど…。」
「わかった。熊村君、よろしく頼む。」
というわけで達也君は吾郎さんと一緒に行ってしまった。その後はもうわかっているが達也君は翠川研究所に所属しそこで同級生の熊森達とヒーローの仕事をすることになる。俺は十年経っても達也君のことを忘れることが出来ずパトロールをしている時翠川研究所を覗きに行っていたのだった…。
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〜熊森雷太視点〜
「みんな聞いてくれ。氷海のことなんだが…。」
俺達は今訓練場に集まっている。西条さんは達也君が獣化すること…薬で元に戻ることを話す。みんなはやはり西条さんの能力“記憶処理“で忘れているため呆然としていた。ただ、熊森と吾郎さんは忘れてはいなかった。
「黙っていてすみません…とりあえず薬でなんとか抑えていたんですけど…。」
「このことは我らヒーローだけの極秘とする。それを破った者は破門させるからそのつもりで宜しくな。」
西条さん…みんなを脅してる…。まあ言わなければ大丈夫だと思うが…。
「今日はゆっくり休んでくれ。今回は訓練場ではなく相部屋できる部屋を提供した。一部屋に三人は入れるからチームごとに入ってくれ。部屋の場所は訓練場の隣だからな。それでは自由にしてくれ。」
団さんが俺を東海林さんと入れ替えてくれたお陰で達也君と一緒にいられる。だが団さんはそうもいかない。
「俺、達也君と一緒に行きたいな。西条さんに言っても多分駄目だろうけど…。」
「今日は疲れてるが寝られないな。明日になるまで話そう。達也君といられるのは今日までだからな。」
「そう…ですね。熊森君、いいですか?」
「ああ、俺も一緒に話したい。団さんが達也君を好きになってるって言われて気落ちしてただけなんだ。」
二人共分かってると言う顔をして頷いている。もう負の感情もないけど…明日達也君はどうするんだろうか。俺達は明日の朝になるまで話をしていた…。
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