明けましておめでとう!

  「…貴和、明けましておめでとう。」

  朝目が覚めると、千秋さんが隣にいた。

  多分俺が千秋さんの部屋で寝ちゃったんだけど、それでも普通に一緒に寝てくれた千秋さんの優しさが嬉しかった。

  今日から少しの間バイトも無いし、千秋さんも仕事を休みにしているから、お正月は二人でゆっくり過ごせそうだ。

  「…おめでと、ございます…」

  寝惚けつつもそう返せば、軽い微笑みとキスが降ってきた。

  「…朝はおしるこ?それともお雑煮?」

  そう聞きながらも朝に弱い俺に合わせてくれる千秋さんが、本当に好きだ。

  だって、優しすぎるから。

  俺の為に、そこまでしてくれたパートナーは、過去にいなかった。

  いつも自分の欲を満たす為だけに俺を利用して、After careもろくにしないで放置して、ボロボロになっていく自分を止められなくて…。

  怖かった。

  自分が自分じゃなくなっていきそうなのが。

  だけど、Subに理解のない社会では、声なんて上げれなくて…。

  そんな世界から、平等な世界に引き上げてくれたのが千秋さんだった。

  今では感謝してもしきれない。

  これからも、一緒にいよう。

  来年も再来年もね。

  「…んぅ……」

  「フフ、可愛い。」

  俺の頭を撫でる千秋さんの手がくすぐったい。

  広い窓から差し込む陽の光は、俺の目覚めを静かに促す。

  「……ふわぁ〜」

  そろそろ起きるか。

  あんまりゴロゴロしていると、千秋さんが退屈してしまう。

  「無理しなくてもいいよ、一日は長いんだから。

  朝が弱いのは知ってるし、ゆっくりいこうね。」

  あぁ、本当に。

  どこまで貴方は優しいんだ…。

  「…ありがとう、ございます…」

  千秋さんの優しさに朝から泣きそうになっていると、千秋さんが身体を起こし、“Kneel”の姿勢になった俺の首にCollarを付けてくれた。

  幸せ過ぎて溶けそう…。

  貴方の見せるその優しさに、俺はまるでバターみたいに、とろけてしまいそうになるんだ。

  これからも、貴方に、貴方だけに甘やかされていてもいいのかな…。

  『いただきます。』

  結局朝はお雑煮にした。

  細く斜めに切ったネギと、花形のニンジン、薄めの白だし…。

  料理が得意な千秋さんらしい、綺麗に整ったお雑煮だった。

  お餅をゆっくり咀嚼しつつ、窓に視線を移す。

  外は晴天だった。

  だが、元旦と言うだけあるのか、まだまだ冷え込みは厳しい。

  寒さに小さく震えると、千秋さんがストーブを付けてくれた。

  Domの尽くしたい精神はここでも大活躍らしく、着替えからご飯の準備片付け、何から何までしてくれるから、なんだか申し訳なくなるのだが、以前それを伝えた時、千秋さんに笑ってこう言われてしまった。

  「私は貴和のお世話がしたいだけだよ。」

  恐らくDomにとってこの身の回りの世話は当然の事なのだろう。

  なら慣れるしかないと、それから諦めているが、実際かなり助かっている。

  立場が弱く中々自分から意見を言えないSubは、どうしても察して欲しいと言う雰囲気が出てしまう。

  世の中ではそれをうざいと見なす人が多いのだが、Domは察することを得意とし、すぐに動いてくれるのでこちらとしてはとても助かる。

  「…晴れてるね。」

  「そうですね。いい天気。」

  外を二人で眺めながら食べるお雑煮は、とても美味しい。

  去年は千秋さんが仕事だった為、一人で年を越し、翌日もお昼まで千秋さんが帰ってこなかった。

  だから少し寂しかったのだが、今年はいてくれる。

  それが嬉しくて、一緒にいれるなら何でもいいなと思ってしまう俺だった。

  「この後はどうする?」

  千秋さんの言葉に、俺は顎に手を添えて考える。

  「…久々の休みだし、ゆっくりテレビでも観ませんか?」

  そう言うと、千秋さんは優しく微笑んだ。

  千秋さんは前々からお正月用にいくつか俺に観せたいDVDを買っていたらしく、お菓子と共に出てくると、二人でこたつに収まった。

  「やっぱりこたつは温かくていいよね♪」

  ご機嫌な千秋さんに俺も嬉しくなる。

  「はい!」

  千秋さんが買ってきたのは、『タイタニック』と、『50回目のファーストキス』、『私の頭の中の消しゴム』、『ワイスピ』シリーズ、『マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと』、『シンドラーのリスト』、『星守る犬』だった。

  「じゃぁ、どれから観ていく?」

  「ぅーん……」

  表紙が重そうなのがあるんだよなぁ(苦笑)

  ワイスピシリーズは、ポール・ウォーカーさんが亡くなってる作品も入ってるし…。

  でもあれ終わり美しいんだよな。

  音楽も好きだし。

  何よりスーパーカーが沢山出てくるから、ワイスピは好きだ。

  ていうか、流石大手企業の次期社長だよなぁ。

  ワイスピ全部揃ってるし、ここにあるDVD全部新品…。

  「…ワイスピから、観たいです。」

  「いいねぇ!じゃあ、一から観ていこうか。」

  「はい!」

  今日一日じゃ見切れなかったけど、SKY MISSIONまでは見終えた。

  やっぱり車はかっこいいし、キャラ的にはハンかドムが好きだな。

  冷静沈着なのがいい。

  車的には…そうだなぁ。

  ドムの乗ってるチャレンジャーかな。

  かっこいいし音もいい。

  「千秋さんはどのキャラが好きですか?」

  隣を仰ぐと、千秋さんは瞳に哀しげな光を浮かべてテレビを見つめた。

  そこにはブライアンとその家族が映っていて…。

  「…ブライアンかなぁ。もういないけれど、ミアやジャックを大切にして、守ろうとする気持ちがこっちに伝わってくる。幸せそうな家族だよ。」

  「…確かに。」

  ミッションが成功して、ブライアンがミアにキスをする所なんかは、あぁ、ミアは愛されてるんだなって感じた。

  「…車は何か気に入ったものありました?」

  「…んー、GT-Rかな。低音がカッコイイ。」

  「分かります!」

  暫くワイスピのキャラや車の話で盛り上がり、お互いに推しが決まった。

  また明日も観ようねと話して、目を合わせて微笑み合っていたら、不意に千秋さんが言った。

  「…私も、いつかブライアンのように、貴和を愛することが出来るといいな。」

  その言葉に、俺は目を瞬かせた。

  だって、今既に十分すぎるくらいの愛をもらっているのだ。

  これ以上注がれたら溶けてしまう。

  「…これからも、よろしくお願いします。千秋さん。」

  きっと、もういいなんて言ったら、悲しむだろうから。

  ありがたく受け取っておきます。

  これからも、ずっと一緒に居てください。

  俺と同じ時を過ごして、同じことで笑ってください。

  今年も、沢山思い出を作りましょうね、千秋さん。

  「愛してるよ、貴和。」

  「愛してます。千秋さん。」

  「…貴和、」

  「?はい」

  「勿論冬休みの課題は終わってるよね?」

  「……💦」

  「こら?ちょっとお話しようか?」

  「ごめんなさいぃ💦」

  明けまして、おめでとう。

  END