今日はハロウィン🎃だ。
千秋さんは最近会社へ出勤して仕事をしているから、昼間は家に俺1人。
暇だけど、アマプラで映画を観たり、千秋さんが置いていってくれたゲー厶をしたりして時間を潰している。
今日はネットでハロウィン料理の作り方や材料を調べていた。
必要な材料をメモに書き出す。
いつも昼頃にかかってくる千秋さんの電話で、買い物に行きたいと言ったら困ったような声で止められた。
『…最近、多いんだよ
Subが襲われる被害。
危ないから、家にいて欲しい。
買い物は私が帰ってきたら2人で行こう?』
もしくは部下に言って買ってきてもらってもいいし
そんな千秋さんの言葉に、俺は少しムッとしてしまった。
自分で作る食材は自分の目で選びたいし、千秋さんが帰ってくる前に作って、驚かせたいと思っていたからだ。
確かに最近、Subが襲われるってニュースは多いけど、だからと言って俺が襲われる確率なんて、雷が当たるのと同じくらいじゃないか?
千秋さんは、心配しすぎだと思う。
そんな気持ちでモヤモヤしていたけど、結局何も言えず、曖昧な返事をして電話を切った。
いつもなら、不満ながらにも待てるはずなのに、どうしても今日は、自分で買い物に行きたかった。
きっと、出ないでと言われたのに出たのがバレたら、叱られるだろう。
壁に掛けられた時計に視線を走らせる。
今は2時半。
千秋さんが帰ってくるのは6時過ぎだ。
その時間までには確実に買い物も終わるし、家に着いている。
必要最低限の食材を買って、今日使い切ればバレないかな…
俺は千秋さんが冷蔵庫の中身を把握していないことを祈りながら、出かける準備を始めた。
「……良い天気だな。」
空を見上げると、綺麗な青空が映った。
俺は帽子を被ると、マンションの外へと足を踏み出す。
スーパーまでは徒歩10分程度。
割と大きく、野菜や肉の種類も豊富で、安い為、多くの主婦に人気だ。
カゴを持って店内に入り、まずは野菜から吟味していく。
(かぼちゃは……4分の1くらいでいいか。
人参は…2分の1はないのか…余ったらどうしよう。
野菜スティックでも作るか…
ぉ、しいたけ安い。きゅうりもなかったな…
後は鶏肉と、鶏がらスープの粉末、それから……)
スマホのメモを見ながら買い物をし、終わって店を出た。
家に向かって歩いていると、首筋にチリチリとした視線を感じた。
ここで振り向けば、Subだと言うことが相手に分かってしまう。
知らないふりをして歩いていたが、視線がだんだん近くなってきたのを感じて、思わず逃げるように足を早めた。
あちこち曲がりながら相手の出方を探っていたら、前から2人、黒い服の男が歩いてきた。
どうやらグルらしい。
後ろに視線を走らせると、3人。
(…マジか…)
どうしようもなくて、固まっていると、俺のそばまで来た男の1人が俺の手を掴んだ。
途端に肌が粟立つ。
「っ…触るな。」
出せるだけ低い声を出せば、男は一瞬俺の視線に怯むように手の力を緩めた。
その隙に振り払う。
が、背後から羽交い締めにされて、膝蹴りされる。
「っぅ……」
小さく呻いて膝を折り蹲ると、男達は俺を狭い路地に引きずり込んだ。
男達がニヤニヤと俺を見ている。
「っ離、せ…!」
振り払えないことに焦る。
「大人しくしろよ…怪我したくないだろ」
正面の男が刃物を出して、俺の服を裂こうとしてきた。
手を出してナイフを払い落とす。
手が少し切れたけど、構う余裕はなかった。
「ッチ、抵抗してんじゃねぇよ」
思いっきり腹を殴られ、動きが止まる。
その隙に完全に抑え込まれた。
「ぐっ……さわ、んな…っ!」
男の手が俺の下半身を触る。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い…!!
嫌なのに、気持ち悪いのに、鳥肌が立つのに…俺のそこは熱を持つ。
最悪だ。知らない奴に触られてるのに…
「っ…………」
「はは、こいつ泣いてんぞ。
ママが恋しいのかよ(笑)」
男達はゲラゲラと下卑た笑い声を上げる。
「ふ……ぅ……」
泣きたくない…こいつらを喜ばせるなんてごめんだ。
なのに、怖いし辛いし涙が止まらない。
「……お前、Subだろ。
ご主人様は側にいねぇのかよ。」
リーダー格の男が聞いてくるが、俺は顔を背けた。
「はぁ……まぁいい。
ここは狭いな。おい、いつもの場所行くぞ。」
その言葉と同時に、路地の入口に車が止まる。
「オラ、さっさと乗れ!」
無理やり押し込まれて、どこかへ連れて行かれた。
「大人しくしてろよ」
車内でも首筋にナイフ、充満するGlare。
吐きそうだ。
「っぐ、ぅ……」
「顔色悪ぃな、ガキ。
吐いたらしばくぞ」
逆に吐かないやつがいんのかよ…
ぐったりしていたら、“いつもの場所”とやらに着いたらしく、蹴るように車から降ろされた。
そこは海辺の倉庫。
人気のないそこに、不良達が集まっている。
各々色んな所に座っていたが、中央に何人か群がり、騒いでいた。
「オラ!さっさと立てや!」
「使えねぇな!沈めんぞコラ!」
「汚ぇ血垂れ流してんじゃねぇよ」
最初は何をしているか分からなかったが、どうやらそいつらが弄んでいるのはSubの子供のようだった。
血だらけで傷だらけの子供は何度も蹴られ胃の中身を床にぶちまける。
それを更に蹴り飛ばす足。
頭が痛くなってきた…。
俺が買い物した物は床に投げられ、今度は俺が中央に連れて行かれる。
そいつの代わりになんのか…死ぬって…。
ふらつきながら床に倒れ込むと、その音に群がっていた不良達が俺を見た。
「お?新しいやつか」
「助かるわーこいつ弱いし使えんでさ(笑)」
「おめぇどっから攫ってきた」
「いやスーパー出たとこからつけてたら……」
話してる不良を他所に、俺はスマホで時間を見る。
まだ三時過ぎ。でもこの状況、帰してもらえる気がしない。
どうすればいいんだろうな…。
「ぁの、俺…」
「ああ?……お前いい身体してんじゃねぇか」
気持ち悪い。
生暖かい視線が。
伸びてくる手が。
何でこんなことになってんだよ…。
とりあえず、、吐こう。
「っゲボ……」
「うぉ、っ汚ぇな、!」
「てめぇ…しばくっつっただろーが!」
一気に怒声や蹴りが飛んでくる。
ダンゴムシみたいに丸まって耐えていたら、一際強いGlareが俺に突き刺さった。
ヒュ。
喉が鳴る。
「“Come”」
その声に、俺はゆらりと立ち上がった。
不良達も道を開けている。
ここのリーダーか。
歩いていった先に、賢そうな、美青年?がいた。
「クス、君はSランクのSubなのに、従順だね。
他人にも」
その言葉に、千秋さんの顔が浮かぶ。
ごめんなさい、ごめんなさい、千秋さん。
言いつけ破って、勝手に家出て…。
こんな事になるなら家にいればよかった。
今更後悔しても遅いのに……。
じわりと涙が滲んで、拳を握りしめて俯く。
「最近、Subが襲われるニュースを見てるだろ?
なのに、Sub1人で出歩くなんて、危ないよ」
そいつはクスクス笑って、俺を見ている。
他の不良みたいな舐め回すような視線ではないが、確実に俺を動けなくさせる程の、力がある。
そいつはゆっくりと俺の前まで歩いてきた。
そっと俺の顎に触れると、周りの不良達を見回す。
「……解散」
その一言に不良達が散っていく。
その間も、俺は動けなかった。
「倉庫の上が仮住まいみたいになってるんだ。
簡易的な部屋がある。」
そう言いながら、そいつは俺をそこに案内した。
部屋の奥にある椅子に座ると、そいつは笑って名前を名乗った。
「初めまして、僕の名前は葛西時雨(かさいしぐれ)。
ここ一体に広がる不良チーム、“Light Dragon”の総長をやってる。」
君は?と聞かれ、視線を外す。
「……答える義務は無い」
小さくそう返すと、殺気立った左右の男を制して葛西は笑った。
「確かにそうだ笑
まぁいいや。
言いたくないなら無理に聞かないよ」
俺はなんとも言えなくて、そんな葛西を見上げる。
「………家に帰してくれ。」
目を見てそう言うと、葛西は面白いおもちゃを見つけた目をして、もう少し遊びたいんだなんて笑った。
僕の遊びに付き合ってくれたら解放する。
そう言われ、さっさと済ませようと無心で行う。
「っ、ん、ぐ……ぅ、ぐ…」
「っ……いいね、その顔…嫌々やってるのが分かる」
「ぐ、うご……」
「っっ………はぁ、はぁ……気持ちよかったよ」
頭を撫でようと触ってきた手を振り払う。
「クスクス
懐かない猫を相手してるみたいだ」
思わず睨み付けると、葛西は笑って、目を細めた。
強いGlareに身体が重く縛り付けられる。
「っ……や、め…「謝ったらやめてあげる。」
誰が謝るか…!
思わず意地でもう一度睨むと、葛西は笑みを消した。
「っぁ、ぅ、ぐ……」
強過ぎるGlareに、堪らず失禁する。
「……ぁーあ、漏らしちゃったね」
クスクス笑う葛西は、俺を弄んでいるようだった。
「っ……ぅ……ひ…」
「泣かないでよ、僕が悪いの?
君が悪いんだよね。」
窘めるような、叱るような口調に、胸が苦しくなる。
Glareを出したまま葛西は俺の前に膝を着いた。
動けない俺の顎を掴み視線を合わせると、スっと目を細める。
何故か分からないが、葛西が目を細めるとその分Glareが強くなる気がした。
「っ、ぁ、……ぅ、……」
声を出すことさえ疲れてしまう中で、葛西がゆっくりと口を開く。
「……ごめんなさいは?」
「っ………」
抵抗を込めて唇を噛み締める。
「ふぅん、随分悪い子なんだね。
子供じみた抵抗ばかりして。
そんなに子供でいたいなら、お似合いなお仕置きをしてあげるよ」
葛西に腕を掴まれ、あっという間に膝の上に腹ばいにさせられる。
「っ、ぐ…やめ、ろ…!
はな、せ!」
じたばたと膝の上で暴れるが、葛西は力が強いのか、振り払うことが出来なかった。
パチン!パン!
「っうぁ…!や、やだっ」
「ダメでしょ?人を睨んじゃ」
パシン!ペチン!
「っやめ、ろって…叩くな、!」
「暴れない」
バチン!パァン!
「ぅっあ…や、っ」
「お仕置きは素直に受けなさいって、言われたことない?」
バチン!パシィン!
「いた、いっやめ、はなして…!」
「だから、もう!
暴れるなってば」
バチィン!パン!バシン!
「うあぁぁっ……ぇ……ひ……」
「クスクス
お尻赤いね
そろそろ、ごめんなさい言う気になった?」
「な、で……お、まえ、なんか、に……」
「まだ意地張るんだ…じゃあ、意地張る余裕がないくらいにお仕置き、しないとね?」
葛西の声に息を呑んだ時。
どこからか、パトカーのサイレンが聞こえてきた。
「チッタイムアウトか
残念、折角見つけたと思ったのになぁ」
葛西は楽しそうに笑うと、俺を膝から下ろした。
何が起こっているのか分からないが、一先ず熱を持ったお尻をしまい、キッと葛西を睨み付ける。
「だからさ、その目がダメだって言ってるんだよ」
驚くほど低い声と共に髪を掴まれ、顔が歪む。
「人を睨むな」
そう言ってるあんたが、今俺を睨んでるじゃないか…
「返事は」
「っ……」
バチン!
押し黙った俺に、葛西は平手打ちをした。
千秋さんはお尻以外を叩くことはしないから、びっくりして頬に手を当てる。
「……はぁ…」
俺の頬に一筋涙が伝ったのを見て、葛西は仕方なさそうに手を離す。
俺は後ずさってドアに飛びついた。
「ねぇ」
扉を開けた所で声を掛けられ、おずおずと振り返る。
「…もう来ないだろうけど、次来たらまた遊んでよ」
「二度と来るかよ…変態…」
ふざけんなと思い、思わず毒を吐いたが、葛西はもう俺にお仕置きをしようとせず、寂しそうにそこにいた。
俺は何も言わずに部屋を出た。
下では警察が俺の買い物袋から財布を見つけ、身元を確認?しているようだった。
恐る恐る降りていって驚く。
「っ、ぇ……」
何で…ここに千秋さんが……
固まった俺に千秋さんは気が付くと、真っ直ぐこっちに歩いてきた。
その顔が凄く怖くて、自然と視線が下がる。
「………貴和」
千秋さんの固い声。
あぁ、叱られる…怒鳴られるかもしれない…だって、言いつけを守らなかった……勝手に買い物して…攫われて……こんな事になって……
ぎゅっと唇を噛み締めた。
直後、きつく抱き締められる。
「………へ……」
気の抜けた声が出て、思わず千秋さんを見上げた。
「………無事で良かった…」
その声が震えていて、胸が苦しくなる。
「っ………ごめ、なさ……ごめんなさぃ……ごめんなさぃぃ……ふ、ううぅ……」
暫くして落ち着き、千秋さんの話を聞くと、もしもの時用に俺のスマホにGPSを付けていて、それがおかしな場所にいたから、知り合いの警官に頼んできてもらったのだという。
GPSの所で驚いたが、知り合いに警官がいて、しかも千秋さんの指示で動くのが凄いと思った。
俺が無事に見つかったので、警察は暫く捜査をすると言って残り、俺と千秋さんは家に帰った。
家に着くと、もう一度確かめるように抱き締められる。
「………良かった………本当に……」
千秋さんの心臓の音が聞こえる。
落ち着く……思わず安心感から眠くなってきていたが、お尻を強く叩かれて眠気が吹っ飛んだ。
「全く、家に、いてって、言ったでしょ!
勝手に、出掛けて、悪い子だ!」
区切られた分叩かれて、思わずお尻が逃げる。
「やっあぁ、!
ごめ、なさっ…ひ……痛いぃ泣」
抱き上げられて靴を脱がされると、そのままリビングのソファーに座った千秋さんの膝に腹ばいにされた。
「勝手に外出て、攫われて、どれだけ心配したと思ってる!」
「うぁぁんごめんなさいぃっ」
裸のお尻に手加減のない平手が落とされて、わんわんと泣きじゃくる。
「ごめんなさい、ごめんなさいっっ」
千秋さんは暫く手加減なしの平手を落とし続けた。
「……ひっく、……うぇぇ……」
「何が悪かったか言いなさい」
少し泣き疲れてきた頃に、ようやく手が止まる。
でもお尻に添えられたままで、まだ終わらないんだと感じた。
「ふ、うぇぇ……も……じないぃ……」
パチン!
「当たり前。聞いたことに答えなさい」
「ぁぁん……ふぇ、ひっく……か、てに……でかけ、て……うぇ……しんぱ、かけ、て、……ぇ、ひっく…」
バチン!パァン!バシン!
「うぁぁん…!いだいぃ、っくうぇぇ……!」
「それから?」
「ひっ…ふうぇぇ……あどは……ぇっく……わ、わがんな……」
軽くパニックになりながらそう言うと、またきつい平手が落とされた。
バチン!バシン!パァン!
「うぁぁぁ……やぁぁっうぇぇ……えぇぇん……」
「バレなきゃいいやって思ったでしょ。
結局いつも通りに買い物したみたいだけど、今日使いそうなのは最低限の量だもんね?
私が帰ってくるまでに帰ってきて、急いで作ればバレないって思ったんじゃないの?」
「っふぇぇ…だっで…えっ……おれ、じぶんでぇ……えらびだがったのぉ……うぇぇ…それ、で…ひっく…つくっで…まっでだがった……よろこんで、ほしくで……っうぇぇ…」
上手く喋れないながらに伝えると、千秋さんは少しため息をついた。
「……貴和は優しい。
分かってるよ。
いつも私のこと思って作ってくれてることも、お手伝いしてくれたりしてることも、ちゃんと分かってる。
その気持ちも凄い嬉しいよ。
だけど、」
そこで怖い声に変わる。
「バレなきゃいい、その気持ちは持たないで。
持ってしまうのもそう考えてしまうのも分かるけど、ダメ。
それでもし今日あったことに私が気付かないままだったら?
貴和は黙っておくんじゃない?」
千秋さんの言葉に頷く。
「私は貴和が傷付いたことを知らないまま生活なんてしたくない
危険な目にあったんじゃないの?
嫌なことされたんじゃないの?」
その言葉に、思い出す。
伸びてくる手、浴びせられた怒声とGlare、そして ──
『ごめんなさいは?』
与えられた屈辱…。
「っふ、うぅ……」
泣き出した俺に、千秋さんは何も言わなかった。
そっと背中をさすってくれる。
「……お願い。
貴和、リスクがあることしないで…
言うことは聞いて。お願い…」
千秋さんの切なそうな声に、必死に頷く。
「ごめ、なさ……ひっく、心配かけて……ごめんなさいっ」
「心配もそうだし、バレなきゃいいって隠そうとしたこと。
本当に、悪い子」
千秋さんの言葉にまた涙が溢れる。
ふわりと手がお尻から離れて、俺はきつく目をつぶる。
バチン!パァン!バシン!パァン!バシン!
「ぁっひ……ごめ、なざ………いだいぃ…あぁ"っ
うぁぁ"……ごめんなざい……」
痛くて、怖くて、泣きじゃくる。
何度も何度も謝る。
もう、勝手に出掛けない…
言いつけは守る…
隠そうとしない……
ごめんなさい、ごめんなさい…悪い子で、ごめんなさい…っっ。
「あぁ……っふ……うぇぇ……」
泣き叫ぶ気力もなくなって、ただひくひくとしゃくり上げていたら、そっと抱き上げられた。
「おしまい。
痛いのも、怖いのもおしまい。
よく頑張ったね、いい子、いい子。」
許してもらえた、もう終わった。
その安心感から、俺はまた声を上げて泣いてしまった。
「っうぇ"ぇ…ごえ、なざぃ……
も、しな、からぁっひっ……」
「…うん。
しないね、いい子」
「ううぅ…グズ……」
「……貴和、」
「ん…ひっく、な、に……、?」
「………怖くなかった?」
千秋さんの柔らかい声に、俺はまた涙を零す。
「ひく……こわ、か……怖かったぁ……」
「うん、怖かったね、嫌だったね。
いい子、いい子、大丈夫。
そばにいるよ、離れない。
落ち着くまで、こうしてようね」
千秋さんの優しさに、俺は救われていた。
「っごめ、なさ……ちあきさ、ん……ごめ、んなさ…ぃっ」
「フフ、貴和……」
泣きながら謝る俺に、千秋さんは愛おしそうにキスをした。
一緒にお風呂に入って、嫌なこと全部忘れちゃおー!ってことで映画を見る準備をしていたら、千秋さんが不思議そうに俺に聞いた。
「そう言えば、貴和、その……お漏らし…しちゃった、?」
おずおずと聞かれて、その意味を理解して……顔が熱くなった。
同時に、ぽろりと涙が頬を滑る。
「っ……」
「そっか、しちゃったか。
おいで、貴和。」
困ったように笑って、千秋さんが腕を広げる。
でも…俺は怖くなって、動けなかった。
2度目の粗相。
呆れられると思った…。
お仕置きされたら、何もしなくても痛いお尻は、どうなってしまうのだろうと思った…。
「っぅ……」
「……貴和…怒らないよ
何か、あったんでしょ?」
千秋さんは泣いている俺に切なそうに微笑む。
「ふ、ひっく…ごめ、なさぃ……」
「貴和、私は叱りたいんじゃないんだ。
ただ、ちょっと濡れてたから(苦笑)
後……お尻、叩く前に、もう既に赤かったんだけど…
何か無理矢理された、?」
「ぅ、ぇと……」
説明しずらい……なんて言えばいいの…。
「まぁ、強くは聞かないから。
今涼介…ぁ、さっき話した知り合いの警官の人ね、涼介が色々調べてくれてるから、そのうち分かるかな。」
千秋さんはそう言いながら俯いた俺の前に来て、俺を抱き締めた。
ビクリと肩が跳ねる。
「……辛いって、言っていいんだよ」
千秋さんの暖かい声。
温もり、優しさ…。
俺はそれらに、応えられているだろうか。
釣り合えるほどの何かを…俺は持っているのかな……。
「…ちあ、き…さん……」
「うん、なぁに、貴和。」
「おれ……ぉ、れ……」
言おうとして、苦しくなる。
“俺は貴方に、相応しいですか?”
有り得ないかもしれないけど…相応しくないと言われたら…俺は…辛くてどうしようもなくなってしまうかもしれない……。
そんな不安、背負ったって仕方ないよな…。
分かってるけど考えてしまうんだ…。
だから、かき消すように…
「あい、してま、す……」
「……私も、愛してるよ、貴和。」
千秋さんは、今の一瞬の沈黙で、俺が何を言おうとしたか気付いたかもしれない…。
でも聞かないでくれる……
ねぇ…貴方はどこまで優しいの…?
「映画、観ようか」
そう言って笑った千秋さんに、俺は黙って抱きついた。
映画を見ている間に、胸の苦しさはどこかへいってしまった。
ただ今は、空に願う。
この幸せが、ずっとずっと、続きますように。
END