インターミッション

  歴史的インターミッション

  イチがラプダンジーの塔を攻略して3日後、イチは自身の宿としているルーナハイムという女性専用アパートで彼女にしては寝すぎて昼頃に目を覚ました。

  それと言うのも珍しく昨晩、飲めもしない酒を飲み酷く酔っ払ったからだった。

  「う"ぅ~~~~~~~」

  頭痛がしている。

  しばし毛布にくるまり、右へ左へ身体をよじった。

  首筋から後頭部にかけてズキズキとする嫌な疼痛にイチはア~だのウ~だの唸りながら耐える。

  しかし彼女がこのような状態になってしまったのもある意味仕方のないことかもしれない。

  結局ラプダンジーの塔を攻略したはいいが、冒険者ギルド某支部の対応は冷徹なものであった。

  なんと報酬は払われないとの事であった。

  と、言うのもあくまで少女の救出を目的としていたのであり、救出すべき少女が見つからないのであれば報酬は発生しないという理屈である。

  この某支部の対応にイチは勿論講義に抗議したが、事実として依頼を受諾した際に署名した契約書には少女の救出、あるいは遺体に相当するものの回収をもって依頼達成とする旨の文章になっていた。

  救出すべき少女にあたるラプダンジー少女はイチが撃退してしまったのである。

  ____あの時、ラプダンジー師に攻略の証明でも貰えばよかった!

  もっとも契約書がそういう内容になっている以上、ラプダンジー師から事情の証人になってもらったところで報酬は出なかったと考えるべきであろう。

  不幸中の幸いはダンジョン攻略に際して消費した弾薬や消耗品は保証されるという事だったので、イチは水増しした請求書を作ったがそれも公衆浴場の入浴料とやけ酒した飲食代に消えてしまった。

  ____最悪の気分だ。

  イチはできることならば今日は夕方まで毛布にくるまっていたかったが、飼っているダンジョンネズミが餌を求めて籠をかじり始めたので仕方なく起きた。

  下着姿である。

  イチの部屋は窓がひとつあり、簡素な寝台と粗末な筆記机に多少の棚、クローゼット、あとは乱雑に冒険道具がしまわれた木箱くらいしかない。

  というのもルーナハイムは今でいうシェアハウスで、各入居者の部屋は狭く最低限の物しか置けない。

  風呂、トイレは共用である。

  イチは餌を求めるダンジョンネズミにヒマワリの種と葉野菜の切れ端、木の実などを粉末にして練り固めた特性の餌を与えた。

  イチはダンジョンネズミを6匹飼っている。

  名前はヘッケル、ジャッケル、ピッケル、バッケル、マイケル、ハインケルでそれぞれ雌3匹、雄3匹である。

  一緒の籠にするとすぐに繁殖してしまうので雄と雌は別の籠に入れ、冒険の必要がある場合雄のほうを一匹つれていく。

  冒険の際に不幸にもお亡くなりになった個体が出た時に改めて交尾させ、過剰な子供は仲間の冒険者にただで譲ったり売ったりしていた。

  ____わたしも冒険者なんかじゃなくてダンジョンネズミだったら…………いや、ダンジョンネズミの人生は流石に経験したくないな。しかしネズミに対しても人生と言っていいのだろうか……

  ダンジョンネズミのトイレを掃除しながらそんな世迷った事を考えていると部屋のドアがドンドンドンドンと騒がしく叩かれた。

  ____…………シーナだな。

  シーナと呼ばれる少女はイチと同じ冒険者でスウィートバウムで一番やかましい少女として多少有名である。

  イチは頭を抑えて踏み机の上の水差しから一杯水を飲むといまだドンドンドンドン叩かれている扉に向かい、げんなりした顔で戸を開けた。

  「シーナ、頼むからノックは一回に____」

  「イチさんイチさん大変です! 事件です! 下着です! 下着がなくなりました! 私たちの下着がなくなっているんです! 下着泥棒です!」

  イチ達の冒険は続く………。

  次回『スウィートバウム連続下着泥棒事件』