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神社の堂内。山の神を祀る鏡の間。甘く、苦い香の焚かれた空間で、私とその他の[[rb:白奉衆 > しらまつり]]は、白布の覆面に覆った頭を深々と下げた。
「これより[[rb:鳴 > な]]り[[rb:子 > こ]]の儀を執り行います」
三年振りになる言葉を発して私は神鏡に下げていた頭を上げ、緊張した様子で儀台の横に立つ黒い柴犬の少年を見つめた。
ともすれば中学生と言われても信じられる幼さを残す顔立ち。だが、その身体はどことなく男らしい骨格にふっくらと付いた筋肉を纏い、優良な健康男児然とした出で立ちをしていた。
褌がよく似合っている。そう思った。清めを終えた身体は艶がかり、濡羽色にも見える黒い毛並みに真白の褌が調和している。その膨らんだ前袋は、心の緊張とは真逆で半ば屹立が始まっているのだろう、布を押し上げているのが人目で分かる。
本来であれば十二分に雄らしさを感じさせるだろう彼が、どことなく頼りなく感じられるのは、その緊張で強張った表情からか、それともその隣に立つ彼のせいか。
若い獣人の隣に立つのは四十を越えた辺りだろう、巌のような身体を持つ竜人。
脂肪がつきにくい竜人らしく、岩を思わせるような剛体。堅く、それでいて柔軟に動くその体。その丸太のような太い手足や、風船を押し固めたように丸く張り出た胸。意外と締まって細い腰と、その細みを感じさせないしなやかな大木を思わせる胴体。歳の影響か薄っすらと丸みを帯びさせる脂肪がむしろ、ハリを見せる。そんな身体を、彼は惜しげもなく、同じく褌一枚のみで晒している。
彼は、傍らの少年が緊張しているのを暫く横目で、じっと眺めていたかと思えば、その手を徐に少年の尻に宛てがっていた。
「……っ」
微かに息を呑む声。手の動きからして、締込みを指でなぞっているのか。ふわりと少年の毛が膨らむのが見えた。それは怒りか驚きか、快楽か。清めの際に敏感になっているだろう窄みに刺激を与えられた少年は、キッと竜人を睨みあげ、自分の尻を叩くようにその手を叩いた。
手を軽く扇いで笑う竜人は、悪びれる様子もなく屈託なく笑う。だが、少年は呆れたとばかりに正面を見据えた。さっきまでの緊張は息を潜めている。
彼らの関係は、同級生の親、息子の友達、という微妙な距離感の関係だ。遠くもなく近くもない縁の鳴り子と鳴親なりやは、妙な拗れが出来ることも少なくはないのだが。どうやら彼らの関係は至って良好なようだ。
私は覆面の下で緩んだ口元を引き締めて、その名を読み上げた。
鳴り子、鳴親、そして儀式を進行する私を含めた白奉衆。この場にいるのはそれだけ。静かな室内に、私の声が吸い込まれていくのを感じる。
「鳴親――[[rb:竜堂 > りゅうどう]]・[[rb:壱月 > いつき]]」
竜人が頭を下げる。十年ほど前も鳴親を努めた事のある彼だ。緊張の色はあっても所作に迷いはない。
「鳴り子――[[rb:黒柴 > くろしば]]・[[rb:和真 > かずま]]」
呼んだ声に、周囲を盗み見た黒柴の獣人が、竜堂の真似をするように頭を下げる。顔を上げた黒柴の肩に、竜堂が安心させるように手を回して頷いていた。
そうして、鳴り子の儀式が始まる。
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儀台ぎだいに正座した二人の前に、それぞれに卓を差し出した。鏡と儀台の間、傍らに横並んだ白奉衆が静かにその様子を見守っている。黒柴の前には、一抱え程もある盃を乗せたもの。竜堂の前には、鈴を取り付けた柔らかい組紐と小さな瓶を乗せたもの。竜堂は、その紐を一瞥して触れはせず、黒柴の盃に視線を向けた。黒柴からの惑うような視線を受けて、私は覆面の中で頷いた。
果たして、上手く伝わったのか。黒柴は、その盃に手を伸ばした。
揺れる液体は、酒を清水で薄め、果実や香草で香りと効能を付けた[[rb:薬水 > やくすい]]。
「頂戴します」
神鏡に一礼し、黒柴はその盃を両手で支え持つ。竜堂が隣で見つめる中、彼はゆっくりと盃に口を触れて、その薬水を飲み下していった。
コクコク、と喉を鳴らす音が静かな室内に響いている。締めた雨戸からは、夜の虫の声だけ。盃をゆっくりと傾けていくその水音に、否応なく喉が乾くような感覚に苛まれるも、しかし、静粛を保ちそれを見守っていた。
「……は、ぁ」
一息に盃を空にした黒柴が、息を吐いた。熱ぼった息だ。その液体がどういったものか、事前に説明は受けている。緊張を解し、身体に熱を保たせ、感覚を鋭敏にして、鳴親を受け入れやすくする薬。効能が出るまで少し時間がかかりはするが、それを飲んだという事自体が、旺盛な年頃である黒柴に興奮を齎しているのだろう。
「ん、……ぁ」
もどかしげに腰を揺らす。正座の足、その間で褌が窮屈そうに張り詰めていた。
ぎゅく、と誰から喉を鳴らす。もしかしたらそれは私の喉だったかも知れない。褌越しに怒張する滾りを見られるという羞恥を隠しきれずにいるのか。黒柴は視線を落として、褌の前袋に浮き出た丸みを帯びた先端をただ見つめている。
「……クロくん」
「ぁ、……ぅ」
竜堂が優しげに黒柴に語りかけた。その指が黒柴の視線を集めていたその先端を撫でるように弄ぶ。そして、残りの指でその固さを計るようにして握りしめた。指の下で褌の表面がじわりと濡れるのが見える。黒柴には触れられる嫌悪感は見えない、ただ与えられる
快感を素直に受け入れている。恥ずかしがりながらも嬉しがる声が、その牙の間から漏れ出ていた。
「うん、そろそろいいか」
心なしか、焦れた声色で竜堂は、その白い帳を押し上げる若芽を撫でた。
「クロくん、立ちな」
「あ、……はい」
膝の上で拳を握りしめていた黒柴は、その声に浅い夢から覚めたような反応を見せて頷いた。緩慢に立ち上がる黒柴は、戸惑いながらも褌を解いていく。僅かに湿った締め込みを緩ませていく衣擦れが鳴り、緩んだその隙間から蒸れた雄の香が立ち上がるのが見える気すらした。
布を突き上げていた内側。そこと天井を見上げるように反り返った黒柴の屹立の先端を繋ぐように糸が伸び、切れる動きが光に反射して脳に残る。半ば程皮を被ったままの、若い獣熱。脈を打つ度に揺れるそれは、張りのある皮に包まれ、顔を覗かせる先端の果実は青さを示すように薄紅色を残している。溢れる蜜に灯りを照り返すそれを、黒柴は鏡に映すように隠さず見せつけていた。
幾度見ても、恥じらいを堪えながら衆人のいる中で己の恥部を曝け出す若者に、背徳的な感情を催してしまう。神事とはいえ、かつては己も同じ場所に立っていた、その感覚が蘇って劣情が蟠る。
顔を隠す覆面はその為だろうかと思いながら、私は同じ思いを抱えているのだろう他の白奉衆と共に成り行きを見守る。
「……っ」
「付けるぞ」
竜堂が、卓に乗せていた組紐を手に、優しく脈打つ若竿に触れた。抑え込んだ声が声にならない声になって、黒柴の喉をひくつかせる。些細な刺激、恐らく彼が――彼の本能が求めている刺激には程遠いだろうその刺激にすら、彼の身体は敏感に反応を示している。ひくりと動きかけた手を、自分の意思で握りしめる。恐らく、今にも擦り上げたい衝動を抑えているのだろう。
竜堂は、天を突くような屹立を押し下げながら、その根本に組紐を結びつけていく。二、三と巻き、痛みがないように結びを作る。雄茎の根本を締め付ける組紐は、それとは別に輪を作る結び方をされて、その輪に通された鈴が、涼やかにチリンと音を鳴らした。
脈打つ度に音が鳴ることはないが、黒柴が身じろぎをすれば、静かな空間で注目を集めるようにその音が鳴り響く。
「あ、……ぅっ」
「そろそろ良いな、クロくん」
ちりちりん、と少し大きな音が響く。竜堂の手が黒柴の[[rb:尻臀 > しりたぶ]]を撫でていた。大きな手はその柔い肉を掴むようにして、押し広げた谷間の奥、窄みに指を這わせる。ほんの少し、その指を頭を、孔の中へと潜り込ませる竜堂は情欲を抑え込んだ低い声を上ずらせる。
見れば、竜堂の褌は、今にもその布を破り裂いて中身が零れ出そうなほどに膨らんでいた。剛直。正しく彼の身体にふさわしい獰猛な肉槍が、濡れた褌に浮かんでいる。スリットの分泌液と先走り。それらが混ざって濡れた褌は、肉棒に張り付いてその輪郭を、この室内の誰しもに知らしめる。
「……ぁ、う、っ……ん」
竜堂の手を握り、黒柴が頷いて答えた。薬水が効いてきているのだろう。彼の目に私達の姿など映っていないかのように、竜堂の屹立する雄を見つめている。
竜堂が卓に残っていた瓶を傾ける。トロリと粘土の高い精油が溢れて、その太い指に絡みつく。花の香りが僅かに湿った空気の中に融けていく。
その濡れた指が、黒柴の秘孔の入り口をぐりぐりと探るようにして精油を馴染ませていく。
「……さ、クロくん。鏡に鳴り子をよく見せるんだ」
「あ、う……っ、ぁ」
同時に褌からはみ出すように露出させた陰茎を精油ごと扱き上げる。竜人のスリットの中に隠されていたその太い肉柱。音をわざと響かせるように擦れるそれは、黒柴のそれとは一回り、二回りは大きい。だが、黒柴は怖気づくことなく、むしろ、ごくりと喉を鳴らしてさえみせた。
赤黒い、年季を感じさせる性器。それ自体が大木の枝のような強靭さを見せる屹立。台に寝そべるようにした竜堂に聳えるそれに、黒柴はぐきゅ、と強張った音を喉で鳴らして、ゆっくりと跨った。
濡れぼそる窄み。若く、丸い尻が、その凶悪さすら感じさせる杭の先端に触れた。
「……ぁ、ぐ」
先端が飲み込まれていく。杭がその雄孔を押し広げていく。
痛むような声を上げる黒柴は、それでも、腰を落としていくのを止めない。薬水の効能で痛みは和らぎ、快感を得やすくなっている。
彼を今苛めているのは、痛覚ではなく、体の芯を撃ち抜くような快感の雷鐘だろう。
「ぁ、あ、いいぞ……っ、そのまま」
「ぐう……ん、ぁ……あ、ッ」
雄二人のくぐもった声が重なる。囁くような声は、まるで力んでしまえばそのまま野獣のように快感を貪ってしまうという恐怖か。自らを騙すように、しかし確実に恭悦を求める艶めいた息が昂りを示している。
「……ッぁあ!! んぐっ、あ……ッ!」
ぷ、くじゅッ。そんな音がして、まるで足を滑らせるように黒柴の臀部が竜堂の腰を打った。組紐がなければ、ともすればその瞬間に種を吐き出してしまっていたかも知れない。ビグン、ビグン、と跳ねる黒柴の熱鉄が、その時彼を襲った稲妻の強さを知らしめる。
「……動、けるか?」
「っ、い、ぁ……ッ、……ぅ」
竜堂の声に、両足を踏ん張り身体を持ち上げようとするも、しかし、黒柴の尻の下から竜堂の滾りが見えることはなかった。まるで皮がくっついて離れないとでもいうようだ。
「こし……が、足が震え、て……っ」
黒柴は渇きを訴えるように、口から舌をだらしなく垂らしていた。上手く舌が回らないのだろう、発音の甘い声で黒柴が答える。
そうか、と竜堂は告げると、ゆっくりと上体をもたげる。そして、黒柴の膝の下に腕をあてがう。その瞬間、誰しもが彼のしようとしていることに気づいた。
そして、その残酷さをも、理解した。
「あ、ッ……やっ、待……っ!」
筋肉が隆起する。その瞬間、竜堂の全身は軋み上がるようにうねり、身体を無理矢理に立ち上げる。
そうして膝立ちになった竜堂は、黒柴の身体を貫いたままに抱えあげていた。どれほどの、衝撃があるのだろう。
「ぃ゛あ……ッ! おぐ……にっ」
体が宙に浮いて自由を失った体に容赦なく竜堂の雄杭が突き刺さる。竜堂は腰を揺らし、腕で黒柴を支えながらも、強引にも見えるように黒柴の尻を犯していく。バチュッ、ヌチ、ヌバン。湿った音が連続し、その度に鈴が揺れては雄犬の嬌声が響く。
まるで強姦を受ける犬のようではあるが、しかし、その雄茎は歓喜に震えるように涙を零し、そして、自らを犯す者の名前を嬌声に織り交ぜる。
「ぁ、あ゛ッ……! んぐ、ぁ……い、づき……ざ、ぁッ」
唾液を散らしながら、黒柴が身を捩ってよがり狂う。快楽に翻弄される若者の色気に中てられて、今にも誰かを抱き倒したくなるような衝動を、鳴り響く鈴の音に抑え込んで私達は神聖な性交を見つめていた。
グ、チュッ……、バチュッ。と粘液が泡立つ音が弾ける。
「ぐ、ぉ……ッ、ァ、は、……っやべえ、止まんねえな……ッ」
いくら種族的に強靭な肉体を持ち、日頃鍛えられているとはいえ、無理な体勢で、人一人を抱えて腰を打ち付けるなど並大抵の疲労ではないだろう。だというのに竜堂が穿つ勢いは衰えない。力を抜けば、黒柴の身体が重力に囚われ、その剛直を根本まで咥え込む。そうすれば痙攣するように黒柴の身体が震えて、その喉からは歓喜の声が漏れ溢れていく。
黒柴は、膝を抱えられるという、幼子に小便をさせるような格好をさせられている。腰を前方に押し出すような姿だ。故にその若い漲りは、竜堂をおろか、私達白奉衆にもはっきりと見えていた。
今にも限界を迎えてしまいそうな程膨らみきった熱茎は、地面に打ち込んだ杭のように身体の動きに釣られて揺れる。大げさに揺れるのではなく、強く握った剣を振るうように見るからに堅く伸び上がり、先端からは耐えす先走りの糸を床に撒き散らしている。
「いつ、き……ッ、さん」
「まだ……だっ」
名を呼ぶ声に、竜堂は動きを緩める。そして止めたままに互いの脈動を重なりを感じるように、黒柴の手が竜堂の手を撫でる。
「でも、ぁ、……っ、ぅ」
今にも組紐を外して吐精を果たしたい。そう希うような声に、竜堂は首を振る。
「次、俺が……っ一番、奥に入った時……にだ」
「ぁ、ぅ……っ」
激しい動きが再開される。ろれつの回らない舌の代わりに、鈴の結び付けられた組紐を手に沿わせた。
鳴り子の儀式は、その精を山神に奉納して完了となる。
私は空の盃を手に、鏡からの視線を遮らぬようにしながら、黒柴の漲りの前へと移っていく。
濃い雄の香りが覆面を貫いて私の脳を狂わせるようだ。
屈強な肉体に犯される若い雄。苦痛ではなく快楽をもってそれを受け入れる、その蜜肉を出入りする泡立つ精油に塗れた鳴親の剛直。限界にまで張り詰めた雄犬の性器が目の前で揺れている。構えた。足元に先走りの描く線が幾重にものたうっているのに足を取られぬよう、慎重に。
白装束の下。昂ぶった己を抑えつけながら、私はその時を待つ。
そして、その時の訪れは、そのすぐあとだった。
「いいか? 一気に、奥まで、ヤるぞ」
「……ぁ、あッ、いく……っ、イク……ぅっ!」
一度、先端近くまで抜かれた肉槍が、気遣うようにゆっくりと、それでも十分な荒々しさを伴って深々と突き刺さるのを見た。
直後、黒柴は半ば無意識のようにその組紐の結び目を解いていた。鈴が揺れる。力の抜けた指から組紐が落ちていく。その先端が床に触れるよりも早く。
ぐぷ――。
僅かに開いた鈴口。その隙間に白色が迫り、瞬く間に滴を作り上げる。差し出した盃を狙うように、黒柴は男根を親指で抑える。
次の瞬間。勢いよく吐き出された白濁が盃の底を跳ねた。跳ねる音と、雄根の中を迸る音が聞こえるような力強い射精が、二、三と脈を打ち、新たな鳴り子――成人の誕生を告げていた。
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誰もが滞りなく儀式を済ませていく。
後は、この子種を酒に混ぜ、山に注ぐだけ。昂ぶる欲情を抑えて、私と他の白奉衆は廊を急くように歩く。
この儀式を終えるまで、これを発散することは許されない。濡れた布も慣れたものではあるが、この衝動というのは慣れだけで無視できるものでは到底ありえない。
耳を澄ませば、背後から興奮した雄の喘ぎが聞こえるような気がした。
鳴き子と鳴親は残りの行程には関わらない。彼らは既に精を納めている。あの堂に二人を残してきている。そうなれば、彼らがどうするのかは分かりきっている。
あの香が焚かれた場所で、互いの色情を知る二人。ましてや鳴親は、まだ果ててはいなかったのだから。
それを思い。私はまた、沸き立つ情欲を呑み込むのだった。