草の大陸、トレジャータウンは暴動や異端審問官、時の守護者の攻撃から守り抜く事に成功しており、街の住民の人的損害はゼロであった。負傷者はいたが、死者を防いだ根幹にはヘンデルの優れた指揮能力とカフカ達の情報提供があり、またギルドと保安官事務所、レシラム教騎士団が迅速に動いた事も影響を与えている。
しかし、街の外の村々の被害は甚大であり、いくつかの村は住民が全滅しており、復興の兆しがかけらも見出せずにいる。
牡のルカリオ、オズワルドは『鎌鼬』や『チャームズ』などの名だたるチームと共に復興作業に当たっていた。午前中から近くの漁村跡に向かい、皆殺しにされた住民達の代わりに、廃材を片付け、通りを馬車が行き来できるように整備していた。
住民達の遺体は全て収容されたとはいえ、全滅した漁村は言葉に表せられない不気味さを宿している。
破壊された家屋の陰、崩壊した倉庫の中、燃え残った漁船の残骸から何者かが、こちらを除き見ている。そのような想像を抱いてしまったオズワルドは、頭を左右に振り、自身の想像力を呪った。
夕方前になり、復興作業を終えたオズワルド達はトレジャータウンへと戻り、明日に備えて休みを取ろうとした。
街の中心に繋がる通りには、復興作業中の住民の姿があり、体力のある若い牡を中心に活動している。高齢の者や牝の住民は軽作業に従事し、皆で作業に取り組んでいる。
暴動とは正反対の平和な光景に、オズワルドの顔が僅かに緩む。
少しずつ復興へと歩む光景は、未来の世界では決して見ることができないものである。破壊的な世界とは異なり、まだ建設的な環境にある過去の世界は、ニコルが見つからずに焦燥するオズワルドの心に希望の光を当てる。
ふと、オズワルドの視界に日当たりの良い大樹の根本に腰かける人影が映り込む。
マントとフードを被り、顔がよく見えない牝は簡易テントの中で、ヘンデルから託された赤子のエリスにお乳を与えている。彼女の傍にはマントとフードを被った背の低い牡の姿があり、周囲から簡易テントの中が見えないようにシーツで目張りをしている。
簡易テントの周りにはいくつかの揺籠が置かれており、中には乳飲子の姿がある。その周りにはトレジャータウンで保母を務めているガルーラの姿があり、彼女は慌ただしそうに乳飲子の世話をしている。
その光景を見たオズワルドは微かに首を傾げた。
「…ガルーラさんのところ…赤ちゃんが増えている…?」
オズワルドはぽつりと呟き、その光景を見ている。ガルーラは疲れた表情で乳飲子を寝かしつけ、やがて一息つける状況となる。
彼女はオズワルドの視線に気がつき、苦笑いを浮かべながら呟く。
「…この子達は皆、騎士団が捕縛した奴隷商人から救われた子なのよ…騎士団では赤子を育てられないから…親が見つかるまでの間の世話を依頼されてね」
ガルーラは疲れた表情で話す。費用はレシラム教やギルドが負担するとはいえ、それでも人手不足の状況は変わらない。ガルーラは眠たそうに欠伸を漏らし、視線を簡易テントの中に向ける。
「でも…彼女が来てくれて助かったわ…私1人では…どう頑張っても限界があるわ…」
簡易テントの中から聞こえる子守唄に耳を傾けるガルーラは、安堵の溜息をこぼす。中年のガルーラには複数の乳飲子を世話する体力や気力が不足しており、なによりお乳を与える事が難しい。その点、フードを被った牝はまだ若く、乳飲子にお乳を与えたり、ガルーラのサポートも可能である。
その事を理解したオズワルドは「何かあったら、声をかけてください」とガルーラに言い、コールマン達の後を追う。
その間、フードを被った牡はオズワルドの背中を見届け、簡易テントの中に姿を消した。フードを被った牝、いや白いポケモンとギラちゃんの力で再生を果たした牡のライチュウ、ライラは椅子に腰かけ、牝のヒトカゲの赤子、エリスにお乳を与えるフードを被った牝を見た。フードを被った牝、ライラと同じく再生を果たした牝のバシャーモ、リラは穏やかな表情で我が子にお乳を与え、子守唄を口ずさんでいる。
母親の顔でエリスの世話をするリラの姿は非常に美しく、楽しそうにみえる。以前のリラは精神的に追い込まれており、麻薬や覚醒剤をカウフマンから投与され、心と身体がボロボロになっていた。今のリラは健康的な肉体を与えられ、穏やかな心で我が子を世話している。
ライラはリラの姿に目を向け、くすくすと微笑をこぼす。
「すっかり…お母さんの顔になっているね」
ライラに指摘されたリラは恥ずかしそうに笑みをみせ、寝息を立てるエリスを揺籠に寝かせた。その小さな身体にタオルをかけ、自身はライラの隣に腰かける。
薄暗い簡易テント内に沈黙が広がる。
それを破ったのは、リラだった。
「…ようやく、エリスの事をライラに紹介できる日が来たわ」
小声で呟くリラは、視線をエリスの寝ている揺籠へと向ける。穏やかな寝息を立てるエリスの姿に、母親であるリラは目尻を緩める。相棒がみせる母親の顔に、ライラは和かな笑みをみせ、共に揺籠を見つめる。
トレジャータウンに潜伏したライラとリラは、ガルーラの孤児院兼保育所を手伝いつつ、住民達に溶け込もうとしていた。何とか乳飲子達の世話役という立ち位置を得たリラは、生活費を稼ぐべく、日々仕事に励んでいる。その間、ライラは別の街にあるヨマワル銀行へリラの委任状を携帯し向かい、かつてライラとリラが使っていた口座から預金を全額引き出し、生活費を確保する事に成功した。
資金面の問題をクリアした2人は、落ち着く暇をようやく得た。
だが、2人の間に沈黙が再び広がる。
物音が聞こえる。
簡易テントの外から聞こえてくる水音と声に気がついたライラは、テントの隙間から外に目を向ける。そこには暴動を生き延び、復興作業に従事している若い牡と牝の姿があり、彼らは昂った身体と欲求を解消すべく、互いの身体を交わらせている。物陰で四つ這いになる牝の臀部に向かって牡は腰を振り、彼らの声と水音が簡易テントまで届いている。
それに気づいたライラは顔を赤くさせ、身体を硬直させる。
ライラは気がついた。
交わっている牡と牝は彼らだけでなく、物陰のあちこちに牡と牝の姿がある。彼らは互いの存在を認知しているが、それでも牡と牝同士で身体を求め合い、欲望を解き放っている。集団で若い牡と牝が交わり合う光景はライラの脚を竦めさせ、思わずライラは後退りそうになる。
ライラの背中に暖かい物が当たる。
「…そうか、多くの者が死んだから…新たに人口を増やそうとしているのか…」
それはライラの背後に立つリラの胸であり、それに気がついたライラは悲鳴をあげそうになる。だが、リラはライラの口を自身の手のひらで覆い、腰を曲げてライラと視線を合わせる。
ライラの目に、非常に美しいリラの顔が反射する。
リラの目には情熱的な炎が宿っており、リラは僅かに目を細め、ライラに口付けする。突然の相棒の行動にライラは目を丸くさせるが、リラはライラを押し倒し、彼の身体に跨がる。
仰向けになったライラの目に、若く健全な肉体と精神を与えられ、飢えたリラの表情が反射する。リラはライラの唇と頬を舐め、舌なめずりをする。その姿を見たライラは、リラが何をしようとしているかを即座に理解し、どう声をかけるべきか戸惑っている。
他の牡と牝の交尾を見たリラもまた、非常に昂っており、彼女はライラの顔から自身の口を離し、彼を見下ろす。リラは薄ら笑いを浮かべ、ライラの股間を指で触り、挑発的な目で彼を見る。
「…ねぇ、胴長短足童貞野郎…私が卒業させてあげるわ」
リラはライラを見下ろし、彼の股間を指先で刺激する。初めての牝を目の当たりにしたライラの股間は即座に反応し、汗臭い一物が顔を出す。それを見たライラはくすくすと笑い、ライラの一物を指先で弾く。
「これは…可愛いわね」
明らかに余裕な態度でリードしてくるリラを見上げて、ライラは恥ずかしさのあまりに言葉を失う。そんなライラを見下ろし、リラは愛おしそうにライラの一物を撫で、自身の膣に押し当てる。
初めて触れる牝の部分にライラは顔を真っ赤にさせ、身体の緊張を高める。そんな彼の心情を見抜いているリラは、ゆっくと腰を動かし、ライラの一物と自身の膣を擦り合わせる。
リラの膣から漏れ出す性液がライラの一物に垂れ、摩擦を潤滑にさせる。
「あ、あぁ…」
その感触にライラは小さな声を漏らし、リラは加虐心を含む笑みで彼を見つめる。白い空間で互いの心を吐露した2人は、ようやく本音で触れ合える距離にいる。
心理的に、物理的に距離を詰めた2人は、若い牡と牝という事もあり、互いの身体を求める年頃でもある。
眼下で嬌声をあげるライラを見つめ、リラは笑みを浮かべる。
(あぁ…オズボーンとは違う…)
かつてオズボーンに抱かれた時は嫌悪感しかなかった。いくら金と権力があったとしても、好きでもない牡に抱かれて喜ぶ牝は少ない。リラも例に漏れず、オズボーンとの性行為は拷問に近かった。
だが、金も権力もないライラとの性行為は心地良く、愛情すら感じている。自身のテクニックで弄られるライラを見つめ、リラは嬉しそうな笑みを浮かべる。
やがて、絶頂を迎えたライラの一物から精液が放たれ、リラの股間を汚す。
「あっ…」
初めて牝により絶頂を迎えたライラは、恥ずかしそうに顔を手で隠す。だが、リラは悪戯っ子のように笑い、ライラの手を強引に握る。
「…可愛い」
ライラの頬に口付けし、リラは呟く。彼女の言動を受け、ライラは苦笑いをこぼし、身体を起こそうとする。
だが、リラはそれを許さない。
リラはライラの胸を手で押し、彼をそのまま横にさせた。リラの動きにライラは目を丸くさせるが、彼が反応する前にリラはライラの一物を掴み、そのまま自身の膣に挿し込む。
「あっ…」
突然の相棒の動きに反応しきれず、ライラは声を漏らす。リラはお構いなしにライラの一物を咥え、そのままゆっくりと腰を動かす。
「あ、あぁっ…」
初めて牝を覚え、ライラは目を見開く。
リラは相棒の乱れる姿を見つめ、口角を上げながら腰を動かす。ライラの一物はオズボーンに比べ、遥かに小さい物である。だが、それでもリラは感じており、オズボーンに抱かれた時との違いを如実に感じる。
簡易テント内に牡と牝の声が微かに広がり、水音と肉を打つ湿った音が聞こえる。
揺籠で眠るエリスを起こさぬ様に、外にいるガルーラに気づかれぬ様にライラとリラは交り、離れていた時間を埋めるかの様に互いの身体を求め続ける。
やがて、絶頂を迎えたライラは大きく身体を反らせ、その瞬間を見逃さなかったリラはライラの一物を自身の最奥へと挿し込む。
「はぁっ…」
初めて牝の中で絶頂を迎えたライラは目を見開き、驚きの表情を浮かべる。対するリラは何度もオズボーンに抱かれた経験があるため、ある程度の余裕のある表情でライラを見つめる。
ライラの一物はリラの中で精液を全て解き放ち、リラはその感触に満足そうな表情をみせる。そのままリラは腰を前後に動かし、ライラの一物から残りの精液を全て搾り出そうとする。リラの膣内の蠢く様な感触にライラは大きく息を吐き出し、そのまま身体の力を抜く。
そんなライラを見下ろしたリラは腰を曲げて、ライラの顔に自身の顔を近づける。
「卒業おめでとう…胴長短足野郎…」
ライラの耳元でリラは囁く。
その言葉の意味を理解しているライラは恥ずかしそうに顔を手で覆い、「うん…」とだけ呟く。
やがて、ライラは手の間からリラの顔を見つめ、オドオドした口調で話す。
「…凄く、気持ち良かったよ…」
初めての感想を述べるライラの顔を、リラは見つめる。そして「まだしたい?」と挑戦的な口調でリラはライラに尋ねる。
ライラはゆっくりと大きく頷く。
それを見たリラは辺りを見渡し、ガルーラが簡易テント内の出来事に気がついていない事を確認した。そのままリラは跨っていたライラの胴体から降り、地面に横になり、ライラから見える様に股を開く。
ライラの視界に、白く汚れたリラの膣が丸見えになる。
リラは少し恥ずかしそうに苦笑したが、ライラの顔を見つめて、はっきりとした口調で話す。
「私の心と身体は全てライラのものだよ」
その言葉を聞き、ライラは戸惑いの表情を浮かべる。だが、眼前のリラを見つめ、彼は覚悟を決めた様に頷く。
ライラはリラの身体に覆い被さり、再びリラの膣に自身の一物を挿入する。
(あぁ…)
懸命に腰を振るライラの姿を見下ろし、リラは嬉しそうに目を細める。
(ようやく繋がった…)
ライラの身体を抱き締め、リラは愛しさと嬉しさで胸が満たされる。ライラの体温、呼吸、声を全身で感じるリラは、ライラの顔を自身の胸に押し当てながら、脳裏に過去の光景を描く。
それは、おだやか村の学校での光景、交尾についての授業であった。当時のリラはアチャモ、ライラはピカチュウであり、初めて聞く話にライラは顔を真っ赤にさせ、同級生の牡達に揶揄われていた。そんなライラを見て、リラも楽しそうに笑っていた。
(まさか…ライラと交尾する未来とはね…)
当時は想像すらできなかった未来を迎え、リラは苦笑いをこぼす。だが、嫌悪感は微塵もなかった。リラはライラを愛おしそうに抱きしめ、彼の放つ精液を無抵抗のまま、受け入れる。
心から愛している者と繋がることができたリラの表情は、至極おだやかなものであった。
簡易テント内に2人の声と水音が響く。
*
トレジャータウン復興の総指揮を取る牡のプクリン、ヘンデルは市内の大通りの整備や各エリアでの避難所の確保、街の中央に医療拠点を設けられた事に、安堵の溜息をこぼす。交通インフラや医療インフラがある程度確保できれば、残りの建物の修理や物資の確保なども容易になり、復興が段違いに加速できるからである。また、ギルド連盟と保安官事務所とも協議し、しばらくの間の街の警備と治安維持は探検隊と保安官に依頼する事となった。
本来ならば、レシラム教騎士団に助力を依頼したいところではあるが、住民の中にはレシラム教の暴徒により家族や友人知人を殺害された者、家を破壊された者、財産を奪われた者がいるため、彼らに配慮し、レシラム教騎士団は街の周囲の警備を依頼した。
現状、ヘンデルの配慮もあり、トレジャータウンで目立った騒動やトラブルは起きていない。
ヘンデルは高台にあるギルドから街の様子を見渡し、肩の力を少し抜いた。
「あとは…奴隷商人と暴徒に攫われた者達の救出、か…」
かつて、キザキの森での暴動では、初期の救助活動の遅れやトリアージを行わなかった事により医療資源の浪費があり、奴隷商人に攫われた村民の救出が遅れる事態となった。
しかし、今回の暴動ではトレジャータウンの機能は付近の村々に比べて維持されており、救助拠点としても機能している。またレシラム教騎士団や探検隊の活躍もあり、ある程度の治安も維持している。
奴隷商人に攫われた子供や若い牝を救出するために、既に複数の探検家や騎士団の部隊が動いている。
彼らからの情報を待つしかないヘンデルは、溜息をこぼし、夕焼け空を見上げる。
「…みんなが仲良く暮らせれば良いけど…そうはいかないよね」
ヘンデルは小声で呟き、空を流れる白い雲を見る。夜が近づきつつあるため、少し肌寒い風がヘンデルに吹き付ける。
足音が聞こえる。
ヘンデルが視線を動かし、音が聞こえてきた方向を見る。街に繋がる階段を登ってきたのは、レシラム教騎士団の遊撃隊副隊長を務める牡のコジョンド、モローである。モローはヘンデルの姿を見て、深くお辞儀をした。彼は高台へと移動し、ヘンデルの傍まで歩み寄り、共にトレジャータウンを見下ろす光景に目を向ける。
「綺麗ですね…」
焼け跡から燻る黒い煙があちこち上がっているが、それでもモローは呟いた。腰から下げた彼の剣には僅かな血の跡があり、戦闘を終えたばかりである事を伺い知れる。
ヘンデルはモローの呟きに対して黙って首肯した。
「うん、僕の自慢の街だよ…」
ヘンデルの目には、僅かな疲れと悲しみの色が滲み出ている。その事を察したモローは黙って首肯し、手にした瓶をヘンデルに差し出す。
それに目を向けたヘンデルは疑問の目をモローに向けるが、モローは淡々とした口調で応える。
「セカイイチを使った林檎酒です」
ヘンデルの大好物である林檎、セカイイチを使った林檎酒は非常に高価であり、手に入りにくい代物である。その事を知っているヘンデルは視線をモローに向けるが、彼は黙ったまま頷き、ヘンデルに瓶を差し出す。
ヘンデルはそれを受け取り、封を開けた。
辺りにセカイイチの放つ芳醇な香りが広がり、それを嗅いだヘンデルは目元を緩め、瓶に口をつける。口内にセカイイチの味と香りが広がり、濃いアルコールが喉を焼く。胃の奥まで広がる風味を楽しみつつ、ヘンデルは視線をモローに向ける。
任務中のモローは酒の代わりにジュースの瓶を持ち、ヘンデルの持つ瓶と軽く触れさせる。
辺りに甲高い音が微かに響き、モローも瓶に口をつける。
その風味を楽しむモローは、視線をヘンデルに向け、口を開く。
「率直にお話しします。各地で捕らえた捕虜から集めた情報によると…敵の本拠地は霧の大陸、ノエタウンのレシラム教教会です」
モローの話を聞いたヘンデルは、小さく頷く。
元時の守護者であるフランツからある程度の情報を仕入れているヘンデルは、モローの情報に首肯し応え、林檎酒に口をつける。口内に広がる熱と風味が疲れたヘンデルに癒しを与える。
ヘンデルは林檎酒の瓶から口を離し、モローの言葉に応える。
「こちらでも大凡の状況は把握しているよ。連中は絶滅寸前のディアルガ教徒の残党…ディアルガの秘宝の力を使い、レシラム教とゼクロム教に復讐しようとしているらしいね」
ヘンデルの話を聞き、モローは頷く。少し乾いた口を動かし、モローは話を続ける。
「ノエタウンの教会内にいるディアルガ教徒の数は多くなく…おそらくレシラム教騎士団のみでも対応可能ですが…」
そこまで話したモローの口調は弱くなり、彼は溜息をこぼす。その先を理解しているヘンデルもまた、溜息をこぼし、小さな声で呟く。
「…暴動の影響で動かせる部隊が少ない…それに人質と新兵器の存在だね」
モローは頷く。
「我々の得た情報によると、先の暴動では各地で多数の若い牝や子供が奴隷商人に誘拐され、闇市場に流されたようです。その中の一部が時の守護者達に捕まり、捕虜になっている可能性があります」
「…もしかすると、ニコル達も時の守護者が誘拐したかもしれないね」
ヘンデルは小声で呟く。
続けてモローは口を開き、説明していく。
「…水の大陸、風の大陸、草の大陸の騎士団はディアルガ教徒の攻撃や暴動の鎮圧のため、多くの死傷者を出しました。現状、各地の大都市の治安維持が手一杯で…ノエタウンまで出兵させるのは難しいでしょう」
「でも…ノエタウンにも騎士団の駐屯地があったよね…そこの部隊は?」
ヘンデルに尋ねられたモローは首を左右に振る。彼は悲しそうな顔で俯き、呟いた。
「…捕虜の情報が正しければ…駐屯地の騎士達は既に殺害されています。電信機も奪われ、情報が隠匿されていました」
「…武装した騎士を殺せる兵器、か…」
ヘンデルは小声で呟き、各街やギルドから電信機で送られてきた情報を思い出す。マスケット銃や塩素を使った毒ガス兵器、一部では爆薬も使用されたという情報がある。
油断している状況で、未知の兵器で襲われたらならば、武装した騎士でも無事で済むとは言えない。
事前にカフカ達から情報を得たからこそ、ヘンデル達は無事で済んだのであった。その事を改めて理解したヘンデルは生唾を飲み込み、それを誤魔化すかのように林檎酒を飲む。
ヘンデルの喉が熱くなる。
それを胃の奥に流し込み、ヘンデルは視線をモローに向ける。
「…つまり、レシラム教の騎士団は大部隊を動かせない…加えて敵の兵器や事情に通じた者による潜入工作…そして人質の救出が必要なんだね?」
モローの意図を理解しているヘンデルは尋ねる。モローはヘンデルの問いに頷き返し、ジュースの瓶に口をつける。
「今後、トレジャータウンの警護や治安維持は探検隊に依頼し、騎士団本体は別の都市の警護に回されます。加えて言えば、ゼクロム教の自警団がノエタウンの教会を攻撃するのは…外聞が良くないです」
モローの話を聞いたヘンデルは、自身の知る顔ぶれを脳内に映し出す。探検隊や騎士に劣らぬ戦闘力を持ち、かつ時の守護者達の事情に長けた者、その条件を満たす者は既に決まっており、ヘンデルはモローを見て、口を開く。
「まかせて、最適な人物を紹介するよ」
ヘンデルの返事を聞き、モローは安心したように息を吐き出す。彼はヘンデルに向かってお辞儀をし、「よろしくお願いします」と応えた。
「…リラが死亡し、フルトは逮捕された…残りのカウフマンとヴィレムは…おそらくノエタウンの教会にいると思われます」
モローは小声で呟き、ヘンデルに視線を向ける。それを聞いたヘンデルは頷き、「まかせてね」と言った。彼らは手に持つ瓶で乾杯し、それを飲んだ。
2人は気がついていなかった。
高台にいる2人の下、崖の途中に潜む人影に。
それは簡易テントの中で事に及び、そして身なりを整えたリラであった。エリスや他の乳飲子達をライラに託し、自身は気分転換と情報収集のためにトレジャータウンの裏道や街外れを回っていた。その途中、高台に向かうモローの姿を見つけ、彼を追跡したリラは奇しくもヘンデルとモローの会話を盗み聞きする事ができた。
これが、民間人や並の探検隊ならば、ヘンデルやモローに気づかれた可能性が高い。だが、リラは凄腕の元調査団員であり、幾つもの修羅場や戦いを経験した過去を持つ。そんな彼女にかかれば、彼らに気取られぬように話を聞くことなど、造作もないことである。
崖下で話を聞いていたリラは、モローの言葉を思い出した。
「カウフマンが…ノエタウンにいる…」
かつて、自身に麻薬と覚醒剤を大量に投与し、判断力を奪い、虐殺の駒として利用してきたカウフマンの所在を知ったリラは、自身の幸運に感謝しつつ、視線を霧の大陸の方へと向けた。
海は穏やかで、水平線は夕陽で赤く染まっていた。
*
微かに揺れた。
牝のゾロアーク、ニコルが揺れに気づき、目をゆっくりと開く。室内にはヴィレムの姿はなく、部屋の中に設置された寝台に横になっているニコルは、ゆっくりと身体を起こす。
ニコルの下半身は白いシーツに覆われており、ニコルの股間からは白い液体が伝わり落ちる。
ヴィレムに抱かれたい回数は、既に数えきれない。
数時間前にもヴィレムはニコルの胎内に熱く濃い精液を何度も放ち、ニコルに性的絶頂を与えていた。またヴィレムはニコルに自慰を命じたが、ニコルは嫌がる事もなく、ヴィレムに向かって股間を開き、自身を慰めていた。
その光景を思い出したニコルは、自身の下腹部を優しく撫でる。
大きな胸と括れた腰が目立つニコルであったが、今の彼女の下腹部は膨らみを帯びており、腰回りが微かに膨よかになっている。医師であり、科学者であるニコルは、ヴィレムの行動と自身が受けた行い、そして経過した日数から、その意味を理解していた。
最後に迎えた生理の日、そして下腹部の膨らみから、ニコルは微かな自嘲を浮かべる。
「…2ヶ月か」
ニコルは口角を微かに持ち上げ、呟いた。ニコルの口の端には白い汚れが付着しており、それを腕で拭うニコルはゆっくりと身体を動かす。膣、そして尻の穴から伝い落ちるヴィレムの精液がニコルの太腿を汚し、ニコルは指でそれに触れた。
ぼんやりとした表情のニコルはそれを舐め、寝台の上を寝転がる。
ニコルの口内に広がる臭いと味は、ヴィレムにより何度も調教された事もあり、既に身体が覚えきっている。数時間前に自身を抱いたヴィレムの姿を脳裏に描き、ニコルは寝台の上で横になる。
何度も抱かれ、調教された事もあり、ニコルはヴィレムに対する親近感や愛情に近い物を有しており、無意識に彼の存在を探している。ニコルは室内を見渡し、異変に気がついた。
部屋の光景が監禁部屋とは異なり、また暖炉が設置されていない事にニコルは気がついた。
ヴィレムの性技により、何度も絶頂を迎え、失神している間に別の部屋に運ばれたニコルは、現在地や日時を把握できずにいる。彼女は震える身体を動かし、寝台から降りた。
子鹿のように震える脚で室内を歩き、扉に手をかける。
扉には内側から鍵が掛けられており、開く事ができない。その事を実感したニコルは再び自嘲し、近くにある椅子に腰掛ける。
ニコルの視界に、自身の下腹部が映り込む。微かに膨らみ、張りを帯びた下腹部は、ニコルがヴィレムの子を孕んでいる事を意味している。当初は、その事実を知り、泣き、激しい自殺衝動に駆られたものである。
「…」
だが、今のニコルは自身の胎内に宿る命の存在を意識し、その考えを無くしている。加えてヴィレムに与えられる性的快楽と優しい言葉が傷つけられたニコルの心を癒し、彼に対する依存心を生み出している。
それが意味する事を理解しているニコルは、溜息を吐き出し、下腹部を撫で続ける。ニコルの目は疲れ切っており、それでもニコルの手は優しく動く。
ニコルの脳裏に、かつて人間だった頃の記憶が再生される。
×××が改竄した実験データを元に作られた新薬が実際に使われた際、ニコルはその場に立ち会っていた。その際、子供や幼児、高齢者、様々な老若男女に体重や年齢に応じた量の新薬が投与された。
本来のデータの数値で作られた新薬ならば、患者達の体内の感染源に対して薬が作用し、治療に繋がるはずであった。しかし、×××により改竄されたデータを元に作った薬は、患者達の体内で大量の血栓を生成したり、アレルギー反応を引き起こしたりした。
ショックで痙攣する者や脳血栓により意識を失い、息を引き取る者、心臓や肺が血栓で詰まり、死亡する者など、結果は多岐に渡った。
もっとも、ほぼ全ての患者が死亡し、ニコルは呆然とその光景を見ていた。
(…あぁ)
数多くの命を奪ってしまったニコルは、自身の胎内に宿る新たな命を奪うという選択肢を選べずにいた。痙攣し息を引き取った子供や幼児の姿が脳裏に映し出され、ニコルは目を伏せた。
なにより、ニコルは我が子の事を愛している。
過失で大勢の命を奪ったとはいえ、ニコルはシリアルキラーや殺人狂ではない、普通の人格の持ち主である。そんな彼女がヴィレムの子とはいえ、胎内の命を奪うという選択を選べるはずがなかった。
ニコルは両手で頭を抱え、俯いていた。
扉の鍵を開ける音が聞こえ、直後に扉が開いた。
室内に入ってきたヴィレムは椅子に座るニコルの姿を見下ろし、にやりと笑った。彼は扉に鍵をかけ、カバンをテーブルの上に置き、椅子に座るニコルの前に立つ。
ヴィレムは股間に剃り立つ性器をニコルの顔の前に突き出し、「咥えろ」と命じる。
ヴィレムの命令にニコルは黙って従い、口を大きく開き、ヴィレムの性器を咥える。ニコルの口内にヴィレムの巨大な性器が侵入し、牡と尿の臭いが広がるが、ニコルは抵抗する意志をみせず、黙ったまま舌を動かす。ニコルの舌がヴィレムの性器の先端に絡み付き、尿道から垂れる尿を舐め上げる。ニコルの左手はヴィレムの腰を掴み、ニコルは彼の性器にしゃぶりつく。
(あぁ、ちくしょう…)
ニコルの右手は自身の膣を触っており、ヴィレムの性器を舐めながら自慰に浸っている。ニコルの右手の指先が開発された膣に入り込み、ニコルの手は勝手に自身を慰めている。
調教され、性的快楽を教えられたニコルはヴィレムの言葉に逆らう事ができず、彼と自分自身に快楽を与え続ける。ヴィレムに逆らえられないニコルは上眼で彼を睨みつけるが、ヴィレムは愉快そうに笑い、ニコルの口内を堪能する。
「あー、出るわ」
ヴィレムが呟いた直後、彼の性器から精液が放たれ、ニコルの口内に広がる。ニコルは音を立てながらヴィレムの性器を吸い、尿道に残された最後の一滴まで精液を吸い出そうとする。
ゴクリ、と音を鳴らし、ニコルはヴィレムの精液を飲み込む。
その姿を見下ろしたヴィレムは下品な笑みを浮かべ、「股を開け」とニコルに命ずる。ニコルは黙ったまま、背もたれに体重をかけ、ヴィレムに向かって股を開く。恥ずかしそうに俯きながらも、命令に素直に従うニコルを見下ろし、ヴィレムはニヤリと笑う。
彼の性器は再び剃り立ち、ヴィレムはニコルに覆い被さり、彼女の膣に挿入する。ニコルの性器を咥えている間に膣は濡れており、ヴィレムの性器をスムースに受け入れる。胎内に広がる圧迫感と快感にニコルは嬌声をあげ、ヴィレムに抱きつく。
自身の性器に夢中になるニコルを見下ろし、ヴィレムは口角を歪め、腰を振り続ける。
「…あぁ、可愛いヤツめ…」
ヴィレムは小さな声で呟き、腰の動きのペースを変える。それに合わせてニコルの喘ぎ声も変わり、彼女は下半身から広がる快感に耐えようとする。
だが、ニコルの身体はヴィレムから与えられる快感を覚えており、彼女は目を見開き、悲鳴をあげる。
数秒後、ニコルの視界は明滅を繰り返し、彼女は絶頂を迎えた。ニコルの胎内は激しく痙攣し、ヴィレムの性器を強く締め付ける。その快感によりヴィレムは低い唸り声をあげ、ニコルの最奥で精液を放つ。
その感覚がニコルの全身を包み、彼女は身体を痙攣させながら床に崩れ落ちる。その姿を見下ろしたヴィレムは下品な笑みを浮かべ、床に倒れ込むニコルの尻を強引に掴み、尻の肉を左右に開く。
ヴィレムの視界にニコルの肛門が映る。
彼はニコルの肛門に唾を垂らし、そのまま性器を挿し込む。
「あ、あぁ…」
尻を掘られ、ニコルは嬌声をあげる。
部屋の隅には姿見があり、そこには獣のように四つ這いになり、尻を掘られ感じるニコルの姿が映る。それを見たニコルは羞恥心のあまり、顔を床につける。
「…可愛い牝め」
恥ずかしがるニコルを見たヴィレムは、ニヤリと笑う。
ヴィレムはそのまま腰を動かし続け、ニコルの直腸に精液を放つ。恥ずかしそうに喘ぐニコルの姿を見下ろしたヴィレムは、ニヤリと笑い、彼女の耳元で囁いた。
直後、ニコルは驚きの表情を浮かべ、肩越しにヴィレムを見上げた。
ヴィレムは狂気に満ちた笑みを見せている。