彼女は、自身の内側に燻る言いようも無いほどの怒りと、同時に湧き上がる自らの不甲斐無さに心の底から油泥ような悔恨の情が沸き起こってくるのを感じていた。
そして、そのあまりの怒りに我を忘れるかのように、王のおわす玉座の間に騎士団長エルサの姿があったのだった。
頭を垂れ、地面に伏せている状態の彼女だが、まるで獣のような目つきで、じっと玉座の方へと殺気にも似た刺すような敵意を向けている。
一触即発。そんな空気を漂わせながら、しかし国王は玉座の上から微動だにする様子は無かった。
それは偏に、眼下の人物の実力と地位の高さを知っているが故だろう。
彼女がその気であれば、自らの首は瞬時に身体から切り取られ、永遠に意識が寸断されていたからだ。
エルサは、この国の生まれではない。
しかし彼女がこの国の為に尽くしてくれたことに一片も疑いはなく、この日まで騎士団長という肩書を得てきた実績もまた、彼女の働きによるものであった。
「……して、何用か」
静かな声音ではあるが、そこには確かな威厳が備わっており、エルサはそれを感じて思わず身を震わせるものの、決して引き下がる気はなかった。
彼女はゆっくりとした動きで立ち上がると、そのまま鋭い瞳で国王を見据えた。
「私は納得できませぬっ!」
感情に任せ、思わず叫ぶようにそう言ったエルサに対し、それでもまだ玉座上の王は動揺すらしなかった。
彼は小さく息をつくと、ただ静かに言葉を続けた。
「納得出来ぬ、とはなにごとに対することを指しての言葉か?」
あくまで冷静にそう問われたことで、エルサも少しばかり動揺が収まったのか、深呼吸するように何度か咳払いすると再び言葉を返す。
「王子の件についてです!……この国の次期王位後継者であるアーシュライン・オーフィス殿下に対しての処遇に関してに決まっております!」
そこでようやく僅かに王の表情が動くのを見て、エルサはやや優位に立ったような気分になる。
実際、こうして王の前に出てきたことで自分の主張を通すことが出来るのではないかという期待もある反面、もし相手がこちらの主張を聞き入れないようであればそれまでだという不安もあった。
だからエルサは自分がどのような状況にあっても狼煙を上げ続けるしかないのだという事を、既に覚悟の上だったのだ。
「清らかなお身体の殿下の夜伽指南に娼婦をあてがおうというのはあまりにも愚劣すぎまする!どうか、考え直されませんでしょうかっ!?」
その言葉を聞いた瞬間、やはり王は眉一つ動かすことなく反応を示した。
「ふむ……」
そう呟くと王は一瞬だけ沈黙したが、その後で小さな笑みを浮かべるとゆっくりとした口調で言う。
「お主の考えも分からんではない。すなわち、この異議はそちこそが幼い王子の良き相談役であり教育係でもあり護衛でもある故になのだな?」
「仰る通りです」
王に言葉を肯定されながらも、それでもエルサの心には苛立ちにも似た感情が生まれた。
のらりくらりと煙に巻くような王に、彼女は眉間にシワを寄せると忌々しげに吐き捨てた。
「お判りになっていらっしゃるのなら、何故!?」
しかしその言葉に対して、王はどこまでも静かにこう返す。
「だがそれはあくまでお主の主観だ」
王の言葉に、エルサは一瞬怯んだように息をのむと動揺したように瞳を揺らした。
「……それは……どういう……」
それでも尚言い募ろうとするものの、王の目に気圧され言葉を続けられない。
「元は王子の許婚としてこの国に来たにも関わらず、迎えの馬車からドレスを脱ぎ捨て出奔し、あまつさえ城内で荒くれどもに混じって騎士にまでなった経歴を持つお主が、王子に対してどういった考えを持っているのか……私としてはそれが気になってならんのだ」
その、あまりに冷静な物言いに彼女は恥じ入るように目を伏せると押し黙ってしまう。
この、末姫とは言え、仮にも王子の許婚として連れてこられた大国の姫君は、自由奔放に育ち過ぎた余りにその地位を自ら捨て去ろうと従者に自分のドレスを着せて下着姿で馬車から抜け出し、城内から財宝を盗み出してどこへなりとも逃亡しようとしたのは事実。
それ程までに向こう見ずで自分勝手な彼女の前に現れたのは、宝物庫の中で隠れて遊ぶ童子であった。
青い水晶玉のように大きい瞳にくるくると良く動く表情、柔らかな金髪に、今まで自分が接してきたどんな人間とも違う無邪気で純粋な心根を持った少年。
今まで、自分の思い通りにならないことが無かったエルサにとって、この少年アーシュラインという存在は彼女の全てを注ぎ込むに余りある存在であった。
彼こそがこの国の宝であり、私が全てを賭してでも守り通すべき存在。
彼が王になれば、この国はより豊かな国として成長していくことだろう。
それは彼女の偽りなき本心であった。
そう確信したエルサは、身分を隠したまま騎士団の入団試験を一人で受けると見事合格を果たした。
それは彼女の想像を遙かに超えた苛酷な試験であったが、それでも彼女は血反吐を吐きながらも懸命に戦い抜いた。
そして彼女は今となっては騎士団長という身分を得たのだ。
しかし、エルサの苦労も全て王子のために行ったことであり、彼女の目的を果たすためには王子の傍に常にいる必要があった為でもあるのだが……。
つまりは、王子との許婚から逃げ出した姫君が、身分を偽り騎士団に潜り込み、あまつさえ騎士団長という地位にのし上がり再び王子のすぐ傍に並んでいる訳で。
こんな非常識な経緯を辿った姫君など、世界に二人といないであろう。
彼女の正体を知る者は、王と僅かな側近のみであり、王子は無論、騎士団の誰もが彼女の真実を知らぬまま今に至っていた。
王子が彼女に抱いた想いは、周囲から聞いた話と普段の様子を見るに恋慕に近いものであったのは確かなのであろう。しかしそれは異性に対する恋愛感情というよりも、雛鳥が初めて見た者に対して懐くような感情だと王は思っていた。
だからエルサもそれが分かっていつつも、ひたむきなまでにアーシュラインの為を思い行動し続けていたのだ。
そしてそんなところで現れた今回の夜伽指南の話である。
これはこの王国のならわしであり、幼き王子を立派な王に育てるためには必要なことなのはエリサとて分かってはいた。
「仰りたいことは分かります……しかし私はっ!」
必死にそう訴えるエルサの言葉を遮って、国王はただ静かに言い放つ。
「なればこそ、お主の口出しする事ではない」
そうして押し黙るしかなかったエルサに対し、王は更に続ける。
「それとも、そちが王子の前で真の身分をば明かそうというのか?そうであれば余も配慮しよう。だが、よもやそれも出来ぬからとこの期に及んで異議申し立てとは……少々都合が良すぎるのではないかね?」
ぐうの音も出ない程に正論をぶつけられ、エルサはただただ沈黙するしかなかった。
そんなエルサに、王は更に続けて言った。
「あやつは何も知らぬのだ。それゆえ、幼い弟を慈しむように世話をしてくれたそちを、慕うべき姉のように見ている」
その言葉に思わず目頭が熱くなるが、それは決して王子が自分をそのように思っていたという事に感動したからではない。
「アーシュライン殿下には、心から想われる素敵な女性が出来れば良いと思っておりました……それが私の願いだったのです……」
そのエルサの言葉に、国王は暫く沈黙を守った後に小さくため息をつくと静かに答えた。
「知っておるよ」
一瞬何を言われたのか理解出来ず、エリサは思わずぽかんした表情で王を見上げたまま固まってしまう。
そんなエルサの反応を楽しむように、王は淡々と言葉を続けた。
「知っておるよ。そなたがアーシュラインに対し、男女の愛に近いものを抱いているという事をな」
そう言って不敵に微笑む王に、エルサはただただ目を見開く事しかできなかった。
そしてそんなエルサに国王は畳みかけるように続けて言う。
「もし、夜伽の指南をそちが行うというのであればそれもよかろう……ただしその場合は騎士団長を辞して王子に嫁いでもらおう。無論、王子の身辺警護は別の者に行わせる」
無情なまでの言葉を浴びせられたエルサは、拳を強く握り締めると小刻みに震えていた。
ここまで言われてしまっては引き下がるしか他にないのだ。それは分かるのだが、それでも尚納得がいかないという気持ちが無いわけでは無かったのだ。
そんなエルサの胸中をまるで見透かすかのように王は更に言葉を続ける。
「なにも夜伽の指南をクルティザンヌに任せたとて、そちの許婚であるアーシュラインが不幸になるというわけではない……寧ろ、性の教養の乏しいあやつに手ほどきをする者は必要なのだ。立派な王となる為にもな」
エルサはぎりっと奥歯を噛み締めると、半ば叫ぶようにして反論する。
「どこの馬の骨とも分からぬ女にアーシュの純潔を渡せるものですか!」
そしてこれ以上言葉を発しても無駄だと思ったのか、吐き捨てるように「失礼いたします」とだけ告げると足早にその場を後にしたのだった。
そんなエルサとはうって変わって、国王は玉座に座りながら楽しそうにくつくつと笑っていた。
「珍しく動揺しておるようだ……ふふ……」
そんな呟きを漏らしながら、王は僅かに口元に笑みを浮かべたのだった。
◇
その日の晩、エルサは自室に戻ってくるなりすぐさま服を脱ぐと下着姿でベッドへと飛び込んだ。そして枕に顔を埋めるとバタバタと足を暴れさせ、声を殺して叫んだ。
「あぁぁあああもうっ!!なんで私がこんな目にっ!こうなったらアーシュが娼婦なんかとどうにかなる前にっ!」
『連れ出して国から逃げてしまおう』そこまで言いかけて、エルサははたとその動きを止めた。
「でも……もし本当にそうなったら……」
そう言葉にした瞬間に胸の奥底がツキリと痛むのを感じて、エルサは更に強く枕を抱き締めた。
するとその時であった。急にコンコンというノックの音が部屋の中に響き渡ったかと思うと、次いで聞き慣れた声が聞こえてくる。
『エルサ?いるの?』
思わずビクンッと肩を揺らしてしまうものの、扉の向こうに感じる気配は間違いなく彼のものであった。
エルサはバネ仕掛けのように直角に身体を起こすと、先ほどまでの醜態が嘘のように凛とした態度を取り戻し声を発した。
「ど、どういたしました?……殿下」
なるべく平静を装ったつもりだったのだが、若干声が上ずってしまったように感じながらもそう問い返す。
すると扉の向こう側から聞こえて来たのは、やはりアーシュライン本人の声であった。
『すこし話がしたいのだけれど……部屋に入ってもいい?』
その言葉に一瞬返答に詰まってしまうものの、ここで断るわけにもいかないと思った彼女は即座に返事をする。
「も、勿論です。すぐにそちらへ向かいますね……」
そう答えた後でエルサは、寝巻姿のまま扉を開けるべくドアへと駆け寄る。
重い戸を引いてみれば、こっそり自室から抜け出したのであろう。廊下にはローブを羽織った金髪の少年王子が所在無さげに佇んでいた。
「また、お一人でこんなところまで……」
そう問うてみれば、アーシュラインは気まずそうに視線を逸らしながらも小さく頷く。
「……突然押しかけてごめんなさい」
そんな彼の謝罪の言葉にエルサは慌てて首を左右に振った。
「とんでもございません!ささっ、どうぞ中へ」
そう言って部屋の中に招き入れるエリサであったが、この温暖な気候の夜中。
薄らとした下着のみの状態で、異性であるアーシュラインを自室に招き入れてしまっている状況に内心冷や汗をかき始めていた。
しっかりと扉を閉めた後でくるりと振り返って問いかけた。
「それで……如何されたのですか?」
改めて問いかけてみると、幼い王子はそんなことをおくびにも出さずに一目散にベッドに飛び込み、エルサの香りに包まれながら彼女の方に向き直ると、もじもじ
した様子でぽつりぽつりと口を開いた。
「あの……昼間、メイドたちの話を盗み聞きしてしまって……それで……」
そこまで言いかけて、アーシュラインはちらりとエルサを見上げるように視線を送ってくる。
そのあどけない表情に思わず胸が高鳴るのを感じるものの、それを表に出さぬよう努めて冷静な表情を作りつつ首を傾げてみせた。
すると彼はもじもじと手をすり合わせながらも再び口を開いた。
「『王子のおよとぎの相手』が僕より年上の、『手ほどき』をしてくれる人を呼ぶんだって話を……聞いて……」
そこまで言うと彼は何故か口ごもりながらも視線を下に落としてしまう。
そんなアーシュラインの反応にエルサは心臓が口から飛び出るのではないかと思うほど緊張し、思わず呼吸の仕方も忘れてしまっていた。
「へぁッ!?」あまりに突然のことに、思わず素っ頓狂な声を上げてしまうエルサ。
それから慌てて口元を手で覆うと誤魔化すようにコホンと咳払いをする。
(まさかメイド達にまで噂話が及んでいたとは……)
そんなことを考えていると、アーシュラインが今にも泣き出しそうな顔で見つめて来ている。
そして王子はとうとう意を決した様子で、縋るようにこう続けた。
「ねえエルサ……『およとぎ』って何……?手ほどきって何?新しい習い事の先生が来るの?」
最後の方は今にも消え入りそうな声で、まるで捨てられる前の子犬のような表情を浮かべながらそう言われてしまっては、流石のエルサも無視をすることは出来ない。
しかし、どう答えていいものなのか分からず返答に困ってしまった。
「ええと……ですね……」
エルサは心底困り果てたような表情を浮かべながら、なんと答えたものかと考えあぐねているうちに王子は再びおずおずと口を開いた。
「……エルサが教えてくれるんじゃないの……?剣だって、馬術だって……全部エルサに教えてもらったよね?その、『およとぎ』だって……」
そう言う王子の潤んだ瞳はまるで捨てられた子犬のようでもあり、エルサは何か言わねばと口を開いてみるものの思うように言葉が出てこない。
そもそも自分は只でさえ身分を偽ってここにいるのだ。
元は王子の寵姫となるべく年増ながら迎え入れられるところであった自分は、その義務から出奔し、王子にこの身の全てを捧げるべく騎士として奉公し、今に至る。
王子は夜伽どころか、子の作り方すら知らないであろう。
それを『およとぎ』を教えてくれる人などと、一体メイドから聞きかじった話からどい解釈したのかは知らないが、そんな思い違いを……そう思いながらもエルサは言葉に詰まり続けるしかなかった。
しかし、それでもなおアーシュラインの縋るような瞳は変わることなくエルサを見つめている。
「お、殿下は……その……そのようなお相手を私に求めておられるのですか……?」
エルサは恐る恐るそう問いかけてみる。すると彼は暫く黙りこくったのちにゆっくりと首を縦に振った。
「僕……エルサに教わるのがいちばん安心できるんだ……」
そう言ってこてんとベッドに横になり、枕をぎゅっと抱き寄せる王子にエルサは頭を抱えたい気持ちになった。
(いいえ……違います!貴方は間違えていますアーシュライン殿下ッ!!)
そんな言葉を必死に飲み込んだものの、その様子に不安になったのかアーシュラインがうるうると瞳を潤ませながらエルサの袖を掴んで来た。
「ねえエルサ?けっきょく『およとぎ』って何なの?何を教えてくれるの?」
その彼の純真な瞳に見つめられ、エルサは逃げ場を無くしてしまった。
しかしだからといって王子に嘘を教えるわけにもいかず、かといって全て本当の事を教えてしまうわけにもいかなかった。
(そんな事になったら私の首が飛んでしまいますッ!!)
内心でそんな事を叫びながらも、エルサはどこか諦めた様子で深いため息をついた。
(仕方あるまい……ここはやはり私よりも適任者にお願いしていただくほかないな……)
そう考えた末、意を決して王子の方へ向き直ると、いつもの頼り甲斐のある姉のような口調と声色でこう告げた。
「殿下、御夜伽……それはお世継ぎをお作りするための大切な行為でございます。この私では殿下のお力添えになることは叶いません」
その言葉にアーシュラインは瞳を見開き、明らかに動揺したような表情を浮かべた。
「え……?それってつまり……」
そう言うと王子はきょとんとした表情でエリサを見つめてくる。
どうやら言っている意味があまり理解できていないようで、不思議そうに首を傾げている様子にエルサは思わず笑いそうになるのを堪えながら続けた。
「ご安心ください。もちろん私よりも適任者がおりますので、その方に教えてもらうようにいたしましょう。王も……私もその所存でございます」
そう言ってエルサは恭しく頭を垂れると、未だ首を傾げてはいる王子を抱き締めた。
恐らく騎士として、姉として、王子の身を守り続けるのであれば今生最後の抱擁になるだろう。
そんな思いを胸に、エルサはぎゅっと力強くアーシュラインを抱き締めるとその柔らかな金糸の髪を胸に埋めた。
(エルサ……あったかい)
不意にそんなことを思いながらも王子はその身を彼女に預けたのだった。
アーシュラインがぎゅっとしがみついておりエルサを見上げながらふるふると首を横に振っていた。
「僕は、それでもエルサがいい……」
そんな幼い王子の言葉にエルサは思わず胸が苦しくなりながらも、頭を優しく撫でながら何とか言葉を絞り出した。
「殿下……その、私では駄目なのです」
しかし尚もアーシュラインは首を振りながらぐずり続けたものの、やがて疲れたのか小さくあくびをすると眠そうに瞼を擦った。
「ごめん……すこしだけ寝るね……」
そう言って瞳を閉じたアーシュラインに、エルサは漸く安堵の息を漏らした。
(ああ……良かった……)
幼い王子の柔らかい頬を突いてみればむずがるように身をよじる姿が、なんとも可愛らしいと感じると同時に心の底から安堵するエルサであった。
それからしばらくの間アーシュラインの寝顔を見つめていたエルサだったが、いつの間にか彼女もうとうととし始めてしまい王子を抱いたまま深い眠りに落ちていた。
◇
『夜伽の手ほどきの相手はエルサ以外認めない。それまでは如何なる方法でも部屋には近づけさせない』
それは、アーシュライン殿下の『籠城』であった。
エルサがそのような話を聞いたのは、あの晩からそう時間も経っていない時だった。
メイドたちの噂話から、よもやこのような事態にまで発展するなど夢にも思っていなかったエルサは、困惑を隠せないまま国王に呼ばれた。
「すまないなエルサ……どうやらメイド達から『例の話』をアーシュラインが聞いていたようでな」
そう言って謝罪の言葉を口にする国王の様子に、エルサは一瞬にして事情を察した。
なんともまあ、嬉しそうとも困ったとも言い難い表情を浮かべながら言う王に、エルサは躊躇いがちに口を開いた。
「陛下、王子には私の方から辞退の申し出を今一度……」
しかし王は険しい表情を浮かながら首を横に振り、エルサの言葉を遮る。
「あやつは、頑として首を縦には振らんのだ。お前の力が必要なのだと頑なに訴え続けるばかり……私としてはお前の気持ちを尊重してやりたいところなのだが……」
その国王の言葉に、エルサは思わず胸が締め付けられるようであった。
そんな様子のエルサを見てか、王は微笑みを浮かると静かに言葉を続けた。
「その間は他の習い事も一切せぬと駄々をこねられてしまってな……王国きっての誉れ高き騎士の、お主以外の適任者はおらぬのだ……エルサよ……」
忙しい御身の王子は他のあらゆる学問の師事すら受けられぬというのは、エルサにとっても断腸の思いであった。
しかしまさかこんな形で『夜伽の手ほどき』を求められることになろうとは露とも思わず、エルサはただ呆然としてしまっていたのだった。
そんな彼女に王は続ける。
「他の教育係の者達からも、『エルサがやらぬのであれば我こそは』と名乗り出た者達が何人もおる。余としてはそちらの方が頭が痛いのだ」
その国王の言葉にエリサは思わず愕然としてしまった。
『他の』習い事を教える国たってのエリートが、王子の『お相手』になりたがっているという現実に、思わず頭を抱えたくなった。
しかもエルサの知らぬ間柄ではない彼女らに、一癖も二癖も何かしらクセのある者ばかりなのだから。
「それとだな……」
しかしそこで王の表情が明らかに曇る様子にエルサは不思議そうに首を傾げると、王は小間使に何かを持ってくるように促した。
暫くしてから、小間使が持ってきたのは封書のようで、エルサに手渡してくる。
「これは?」
受け取ったその封筒の中身を見ながら問えば、国王はどこか言いづらそうに答えた。
「今朝、早馬で送られてきたものでな……お主宛てだ」
王は珍しく頭を抱えながらこう続ける。
「余が夜伽の指南役で任命したクルティザンヌからだ。街からどうやって城内の噂を仕入れたかは知らんが……」
詰まるところは、仕事をふいにされたその娼婦が手紙で抗議してきたということだろうか。
上等な紙から漂う甘い香りに辟易しながら、封筒の中の便箋を開いて読み進めていく。
美しい文字ではあったが、どこか棘のある文章に辟易とした気持ちで読み進めていく。
そして手紙の最後の一文を目にしたところで、エルサは凍りついたように動きを止めた。
「なんと!……それはつまり……私に」
そんなエルサの動揺した様子に王も思わず眉を顰める。
「どうしたエルサよ……」
王の訝しむような声にハッと我に帰ると、慌てて手紙を封筒の中へと戻すと震えそうになる手を必死に抑えながら王の下へと届けた。
「……陛下、しばし城を留守にしても宜しいでしょうか」
エリサの言葉に、王はハッとした表情を浮かべるも今度はどこか諦めたような表情で微笑んだ。
「……くれぐれも頼むぞ」
エルサは恭しく頭を下げながらこう答えた。
「どうか御心配なされぬよう……この命に変えましても必ずや務めを果たして見せましょう」
そんな、命を賭すなど大げさなものではなく単に一晩城の外に出るだけのことなのだが、しかしこの時のエリサは本当に己の全てを懸けてでもこの女に負けまいと躍起になっていたのだ。
◇
エルサは城下町に出かける事はあっても、色街の方に足を運ぶのは初めてであった。
治安が悪いと言う訳ではなく、どちらかといえば王国でも屈指の『高級』な部類に入る界隈であり、彼女のように場違いな者が足を踏み入れればたちまち浮足立ってしまうような場所でもあった。
そんな中に、大して着飾る事もない己が足を踏み入れて良いものなのかと思案していたが、今更引き返す事などできぬことは分かっていた。
「ようこそいらっしゃいました」
そう言って深々と頭を下げた彼女の所作は気品に満ち溢れており、その美貌と相まってまさしく別世界の人間であるかのようだった。
クルティザンヌの名に恥じぬ……いや、それ以上の美女だとエルサは思わず感嘆の息を漏らす。
娼館という場所はてっきり男たちが色めき立つような場所であり、艶めかしい女が手練手管を用いて男を翻弄する。
そのような場所を想像していたエルサだったのだが、いざ訪れたそこは娼館というよりはどこか高級なサロンを思わせるかのような作りで、いかがわしい雰囲気など微塵も感じさせなかった。
寧ろお洒落な喫茶店だと紹介されても疑わぬほどの煌びやかさを放っており、そのあまりの隔絶された空間に思わずめまいを起こしそうになるほどだ。
「如何でしょう……軽くお食事でもしながらお話をしませんか?」
そう言いながら小間使いに指示を出すその姿もまた、立ち居振る舞いがあまりに優雅でつい見惚れてしまいそうになる。
褐色の肌に濃い金色めいた長い髪を纏め上げ、碧の瞳はまるで宝玉を思わせるかのような深い輝きを放っている。
明らかにこの国でも、近くの国でも見かけぬ人相。
細身であるのにも関わらずその身体には女性らしさに満ちており、立ち居振る舞いの一つ一つに気品と色気さえ感じるようであった。
「何をぼーっとしているのです?」
そんなエルサの心の中を見透かしたように女が言う。
その言葉にハッと我に返ったエリサは慌てて頭を下げた。
「あ……す、すまない」
その様子を見て女はくすりと笑うと小さく首を傾げながら口を開いた。
「無理もございません。ご婦人の方で利用される方も中にはいらっしゃいますが……基本的に殿方が足繁く足を運ぶ場所ですから」
そう言いながら苦笑を浮かべる彼女に釣られるように、エリサもまた苦笑を浮かると頭を掻きながら続ける。
「その……正直おどろいてはいる。なんというか……娼館と聞いていたからもっと……」
その先の言葉を濁すように苦笑いを浮かべるエリサに、女は優しい笑みを浮かべたまま頷くと小さく呟いた。
「ふふ、よくあるお話ですよ」
そう言ってどこか遠くを見るように窓の外へと視線を向ける彼女にエリサもつられて窓の外を見た。
遠く見える町並みに目を細めるその横顔を見ながら、彼女はふと思ったことを口にしてしまう。
「其方はどこから来たのだ?この国の出身でない事は見れば分かるが……」
その質問に女は別段気を悪くした訳ではなく、ゆっくりと視線をエリサに戻した後改めて口を開いた。
「遠いところから参ったものです……あなたと同じく……」
彼女の口元に薄っすらと浮かぶ笑みが、自分の素性を見抜かれているであろう事を何となく理解する。
そしてお互いに牽制し合うかのように、目を合わせた二人はどちらからともなくクスリと笑いあった。
「マノンでございます……今宵はよろしくお願い致します」
そう言って深く頭を下げた彼女に釣られるように、エルサも慌てて頭を下げた。
「エルサだ……よろしく頼む」
こうして二人の女の戦いの火蓋が切って落とされたのであった。
◇
マノンと名乗った娼婦はエリサから少し離れた席に腰掛けると、傍を通りかかった小間使いを呼びつけグラスにワインを注ぐように命じた。
そんな仕草の一つ一つを見ても美しく優雅なもので、王族と言っても差支えないほどの気品を感じさせた。
その圧倒的なまでの美しさと、浮世離れした雰囲気に完全に飲まれてしまっていたエルサはマノンがグラスを差し出したところで漸くハッと我に返り慌てて頭を下げた。
「失礼した……その、あまりこういう場所に慣れてなくてな……」
そんなエルサの様子にマノンはクスクスと笑うと口を開いた。
「とても騎士様とは思えないお言葉ですね」
そう言われても仕方のないことだと思いながらエリサは再び頭を下げる。
「手紙の内容にも驚かされた……まさか其方が直々に私と会って話したいとは……」
そう言うエルサにマノンはコクリと小さく頷きながら答えた。
「私なりの誠意だと思って頂ければと」
そんなマノンの言葉に、エリサは思わず小首を傾げた。
「どういう事だ?」
そんなエリサの疑問に対して、マノンは静かに語り始める。
「貴人の御子息の筆下ろし……などと言いいますと下卑たように聞こえるかもしれませんが、それも仕事の一環……生理的な生殖目的のまぐわいだけではない愛し合い方がある事をお教えしたいのです」
そう言ってニコリと微笑むと、ワインの入ったグラスをエリサの方へと差し出す。
その行為にエルサは目を丸くし、思わずポカンと口を開いたまま固まってしまった。
そんな様子の彼女にマノンは苦笑する。
「貴女のように美しく気高い女性との夜伽を王子が求められるかもしれない……そういうお話なのでしょう?」
そこまでお見通しであるのであれば隠す事もないと、エリサは素直に頷いた。
「そうだ……私としてもほとほと困り果てていてな……。その為の指南役として呼ばれる筈だった貴君と会うのも悪くはない、そう思ってな」
その言葉を聞いてマノンは再び小さく笑うと首を横に振った。
「指南役などと大仰なものではございませんよ……」
そんな彼女の答えに、エルサは不思議そうに首を傾げる。
「なら一体どういうつもりで……」
そこまで言いかけてエルサはハッと我に返ると慌てて頭を下げた。
「す、すまない……詮索するつもりは無かったのだ」
そうして謝る彼女に対しマノンは静かに微笑むと軽く首を振りながら答える。
「いいえ……どうかお気になさらず」
そんな穏やかな彼女の雰囲気に、エルサは心底ホッと胸を撫でおろした。
その胸中にあったのは、気高く美しいマノンに対する信頼感であった。
騎士として多くの者と剣を交えてきたエルサは、その人間を見極める目には自信があったのだ。
少なくともこの娼婦に敵意はない……それだけはハッキリと分かった。
そんなエルサの様子を見て、マノンは静かにこう切り出した。
「先ほども申しましたように……私のような賤しい女に、高貴な御子息の筆下ろしを頼めればと陛下よりお声が掛かりました」
その言葉にエルサは自らを恥ずように頬を染めた。
「本来……女として光栄な事なのでしょうが、私も娼婦としての誇りもございます……お断り申し上げたのですが、それでは無下にした私が咎められてしまうと」
そんなエルサを励ますかのように、マノンは落ち着いた口調で話を続ける。
「ですから私の代わりにその役割を請け負ってくださる方がいるのであれば、ご足労頂く必要は無いと考えていたところ、『噂』を小耳に挟みまして」
そこまで言ってからマノンは小さく息を吐くと静かに目を伏せた。
「それで私なのか……」
そんなエルサの呟きにマノンはほんの少し困ったように眉尻を下げるもすぐにニコリと微笑む。
「どうぞご内密にお願い致します……そして貴女にも勿論見返りをお約束致しますわ」
その言葉に対してエリサは暫く思案する様子を見せるも、すぐに意を決したように顔を上げるとこう言った。
「分かった……貴君の依頼引き受けよう」
「エルサ様……」
そんな彼女の答えに、マノンは目を丸くし驚きの表情を浮かべるもすぐに微笑んだ。
「ありがとうございます」
そんな二人のやり取りを傍で聞いていた小間使いの少女が、ワインの入ったグラスを一つ用意すると恭しく頭を下げ静かに去って行く。
マノンの細長い指がエルサの顎をくいと持ち上げる。
その動きに合わせてエルサも僅かに顔を上げる。
そしてお互いの視線が絡み合うと、エルサは喉を鳴らした。
そんな彼女の緊張をほぐすように、マノンは小さく微笑むとこう囁いた。
「私に全てお任せ下さい。エルサ様が万事王子に手ほどきが出来るよう、ご指導させて頂きますわ」
まるで甘い毒のような言葉を耳元で囁かれ、エルサの背筋にゾクリと寒気が走った。
そして次の瞬間にはエルサは自らの意思で首を縦に振っていたのだった。
◇
マノンに言われるがままにサロンの奥、エルサの想像に違わぬ淫靡な空気を纏う寝室へと案内された彼女は、どこか落ち着かない様子で辺りをキョロキョロと見回していた。
そのような彼女の仕草が可笑しかったのか、マノンはクスリと笑みを漏らすと徐に口を開いた。
「別に取って食べようというわけではありませんから……そんなに緊張なさらないで下さい」
その言葉に慌てて居住まいを正すエルサの様子にマノンは思わずクスクスと笑った。
その屈託のない笑顔を見ていると、相手が娼婦であるということを忘れてしまいそうになる。
そんな表情を向けられるのは初めてだったのか、まるで処女のような反応を示すエルサにマノンは口元に指を当てるとこう言った。
「そのように初心な反応をされると、私まで恥ずかしくなってしまいます」
そう言われてしまった事に益々顔を赤くするエルサに対し、マノンは部屋の奥にある天蓋付きのベッドへと腰掛けると隣をポンポンと叩いて見せた。
「どうぞこちらに……まずは騎士様の事をもっと教えて下さいませ……」
そんな彼女の仕草に、一瞬の戸惑いを見せた後すぐにベッドへ歩み寄ったエルサは、言われるがままにベッドに腰を下ろすとゆっくりと口を開いた。
「私なんかのことを聞いてもつまらんだろう?」
どこか自嘲気味に呟く彼女の言葉にマノンは小さく首を横に振って見せる。
「そんなことはありませんわ……まだお会いしたばかりですが、わたくし貴女に興味があります」
そんなストレートな物言いに思わず赤面するエルサを他所に、マノンは再びニコリと微笑む。
「そ、そうか?えっと……何から話せばいいか……」
そう呟きながらもエルサは少しずつ落ち着きを取り戻すと、自分の事や王子との関係、そして今回の依頼内容に至るまで丁寧に語って聞かせた。
◇
「なるほど……つまりエルサ様は王子への忠義と御自身の騎士としての矜持を守る為に……」
一通りの話を聞き終えたマノンは小さく頷くとそう呟いた。
そんなマノンに、エルサはおずおずと問い返す。
「そ、それで……その……」
どこか言い難そうにモジモジとするエルサに対し、マノンは柔らかな微笑みを浮かべると彼女の隣へと移動した。
「お教えしますわ……わたくしに全てお任せ下さい」
そう言われて思わず息を呑むエルサの隣へ静かに移動すると、マノンはそっと彼女に体を寄せるようにベッドの上へと倒れ込んだ。
それに合わせてギシリとベッドが軋む音が鳴り、その音にエルサはゴクリと唾を飲み込む。
そんな彼女の緊張をほぐすように、マノンはゆっくりと耳元に唇を寄せると囁いた。
「男性とは無論、女性との同衾も経験が無いのですね?」
そう問われ、エルサは頬を赤らめると恥ずかしそうに視線を逸らしながらこう答えた。
「恥ずかしながら……私は騎士として鍛錬に明け暮れていた身ゆえ……」
エルサの言葉を聞いたマノンは小さく微笑むと、彼女に身を寄せた。
「それでは僭越ながら私が教えて差し上げますわ」
そんな彼女の行為に動揺する事なく、エルサは改めて真剣な表情を作ると首を垂れる。
「……よろしくお願いしたいところなのだが……湯浴みはしなくていいのだろうか? せめて身を清めてからの方が……」
そんな彼女の問い掛けに、マノンは小さく首を振ると静かに答えた。
「いいえ……その必要はありませんわ」
「……?」
彼女の言っている意味が分からず首を傾げるエルサを他所に、マノンはそっと手を伸ばすとその頬に優しく触れた。
細くしなやかな指が頬を撫でる感触に思わずビクッと反応してしまうも、すぐに平静を取り戻しじっと彼女にされるがままになる。
そんな彼女の献身に応えるように、マノンはクスリと微笑むと顔を寄せた。
「大丈夫……まずは私がリードして差し上げますわ」
そう言うとマノンはエルサの唇に自らの唇を重ね合わせた。
柔らかい唇が重なり合う感触に、エルサは思わず目を見開くもすぐに瞼を閉じるとその身をゆだねた。
そんな彼女の態度に満足気に笑みを浮かべると、マノンはゆっくりと舌を差し入れる。
お互いの唾液を絡めあうようにねっとりとした動きでエルサの口内を舐り始めるマノンの舌に、彼女は思わず甘い吐息を漏らす。
「ん……ふぅ……」
そんなエルサの反応を楽しむかのように、マノンはより大胆に彼女の舌に自らの舌を絡めていく。
まるで別の生き物のように蠢くマノンの舌の感触に翻弄されながらも、彼女はなんとかそれに応えようと自らも舌を差し出し絡め合わせた。
その行為に応えるように、マノンはますます激しく動き回り互いの唾液を交換し合うように口内を貪り続けた。
(すごいな……これがクルティザンヌの手練手管というものなのか……)
息継ぎの為に一旦唇を離し、再び重ね合う……その間も絶え間なく続けられる濃厚な口付けに、エルサは脳が蕩けてしまいそうな感覚に陥っていた。
それは騎士として剣を交える時に感じる高揚感と似ており、それでいてそれ以上に甘く淫靡な快感だった。
そんな甘いひと時を過ごした後、ようやく解放されたエルサは大きく息を吐くと惚けた表情でマノンを見つめる。
「どうでしたか?初めての口づけは……」
そんな問いかけにエルサは爆発してしまいそうなほど真っ赤な顔でこう答えた。
「素晴らしい……接吻とはこんなにも気持ちが良いものだったのか……」
そんなエルサの反応に気を良くしたのか、マノンは微笑みを浮かべると更に続けた。
「それではもっと深く口付けてみましょうか?」
その提案にエルサは一瞬躊躇するも、すぐに小さく頷くと自ら唇を差し出した。
そんな従順な態度を見せる彼女にますます気を良くしたマノンは、彼女の耳元へ顔を寄せると囁いた。
「では僭越ながら……でも、ご心配なさらぬよう。王子との接吻はもっと濃厚で情熱的ですよ」
その言葉にエルサは僅かに頬を赤らめながらも、意を決したように小さく頷く。
そんな彼女の仕草に満足げな笑みを浮かべるとマノンは再び口付けを交わす。
今度は最初からお互いの舌を絡ませ合い濃厚な口付けへと移行した。
口内で激しく蠢く舌の動きに翻弄されつつも、懸命に応えようと自らも舌を絡め合わせるエルサの姿にマノンはますます愛おしさを募らせていった。
(なんと可愛らしいお方でしょう……)
聞くに及べば、女だてらで僅か数年にして騎士団長になった傑物だと噂されていたが、いざこうして接してみるととてもそうは思えない程初心で可愛らしかった。
(それにこの体……)
舌の動きに合わせて形を変える柔らかな唇の感触を楽しみながら、マノンはエルサの体に手を伸ばした。
厚手の衣服の上からでも分かる豊満な胸へと手を這わせると、突然与えられた刺激にエルサは小さく悲鳴を上げた。
「ひゃっ!?」
そんな彼女の反応を楽しみつつ、マノンは胸を優しく揉みほぐすようにして愛撫していく。
「腕や腹筋、大腿まで甲冑のような筋肉に覆われていると言うのにここだけは柔らかく……まるでパン生地のような感触です」
「や、止めてくれ……なんだかくすぐったいんだ……」
耳元で囁きながらクスクスと笑うマノンに、エルサは恥ずかしそうに身を捩らせながら言った。
そんなエルサの反応を楽しむように、マノンは執拗に胸を愛撫し続ける。
下から持ち上げるように持ち上げたり揺らすように揉んでみたりと様々な刺激を与え続けるうちに、段々とエルサの反応に変化が現れ始めた。
(ふふ……そろそろかしら?)
乳首を指先で軽く弾くとエルサは一際大きな声を上げ体を仰け反らせた。
「ひゃん!ど、どこを触って……」
抗議の声を上げるエルサを無視しつつ、マノンはその胸の先端を口に含むと優しく吸い上げた。
その瞬間、今まで感じたことのない感覚にエルサは驚き目を見開いた。
そんな反応を楽しむかのようにマノンは執拗に乳首を舐り続ける。
片方を指で摘まんだまま、もう片方を舌で転がすようにして舐めるその刺激にたまらず声を上げるエルサだったが、マノンは構わずに更に責め立てる。
「や、止めて……くれ……そこはダメだ……」
エルサの言葉を無視しながら、マノンはその胸の先端を甘噛みすると同時にもう一方の手をスカートの中へと潜り込ませた。
そして太ももを撫で回すようにしてから股の間に手を入れるとショーツの上から割れ目をなぞるように指を這わせる。
既に湿っているそこを指先で擦るように撫で上げると、その度にエルサの口から甘い声が漏れ出た。
そんな反応を楽しむかのように何度も同じ行為を繰り返すマノンに、ついに耐えきれなくなったエルサは懇願するように口を開いた。
「お、お願いだ……これ以上されるとおかしくなりそうなんだ……」
そんな彼女の懇願に対し、マノンは微笑を浮かべると胸から口を離し言った。
「それは大変ですわ……王子との御夜伽の際にはもっと凄いことになってしまいますのよ?」
そう言いながら今度は直接秘所を弄り始めるマノンに、またしてもエルサの口から喘ぎ声が漏れる。
「ほら……下着の上からでも分かるぐらいに蜜が溢れてきています」
耳元で囁くように言いながら、マノンは割れ目をなぞる様にして刺激を与え続けた。
そんな行為にエルサは堪らず声を上げる。
「あぁっ!やめっ……」
だがそんな言葉とは裏腹に彼女の体は正直に反応を示しており、秘所からは次々と蜜が溢れ出してくる。
(凄いですわね……未通女とは思えませんわ……)
その事実に驚きつつも、マノンは更に手の動きを速めていく。
グチュッと湿った音を立てて抜き差しされる指が与える刺激に、エルサの口からはもはや意味のない言葉しか出てこない。
そんな彼女の耳元で再びマノンが囁いた。
「我慢なさらないで下さい……身を委ねて楽になってしまえばいいんです」
その言葉と共に敏感な部分を強く押し込まれた瞬間、今まで感じたことのない快感に襲われエルサは背中を大きく仰け反らせた。その瞬間、目の前が真っ白になり頭の中で何かが弾けたような衝撃が走る。
それと同時に秘所から大量の潮を吹き出すと同時にエルサは意識を失ってしまった。
◇
「あぁ……素晴らしいですわ……」
ぐったりと力なく横たわるエルサの頬を撫でながら、マノンは恍惚とした表情で呟いた。
(まさかこれほどまでとは思いませんでしたわ……)
そんな感想を抱きつつ、マノンは自分の指に付着した彼女の愛液を舌で舐めとっていく。
(これだけ感度が良いとなると、興奮のあまり夜伽の途中で気をやってしまわないか心配ですわ……)
そんなことを考えながらエルサの額に軽く口付けを落とすと、マノンは次の準備に取り掛かる為ベッドから降りた。
(さぁ……わたくしも準備をしないといけませんわね)
そう呟きながらマノンは部屋に備え付けられた浴室へと足を運んだ。
◇
「……う」
ふと、エルサが意識を取り戻すとそこは見知らぬベッドの上だった。
「……ここは……?」
見慣れない景色に戸惑いつつも辺りを見回すと、そこは豪華な装飾が施された部屋だった。
そんな室内の様子に呆気に取られていると、ガチャリとドアの開く音がしそちらへ視線を向けた。
そこには淫靡そのものと言った装いの女が立っていた。
宝石で飾り付けられた僅かな胸や秘所を隠すだけの下着姿のマノンは、エルサの姿を確認すると嬉しそうに微笑む。
「あら……気が付かれましたか?」
そう言って近づいてきた彼女はエルサの隣に腰掛けるとそっと唇を重ね合わせた。
突然の事に驚きつつも、エルサは素直にそれを受け入れる。
しばらくお互いの唾液を交換し合い唇を離すと、マノンはうっとりとした表情でエルサを見つめ言った。
「とっても素敵な夢を見られましたでしょう?初めてで気を失ってしまうだなんて……♪」
その言葉を聞いた瞬間、エルサは思い出した。
(そうだ……私は彼女に口づけをされてから記憶がない)
その事実に驚きつつも、同時に自分がどのような醜態を晒してしまったのか想像するだけで顔から火が出る程恥ずかしかった。
そんなエルサの心情を察したかのようにマノンはクスリと微笑むと言葉を続ける。
「うふふ……そんなに恥ずかしがることなどないのですよ?むしろ可愛いぐらいですわ」
彼女の扇情的な装いにエルサは無意識のうちにゴクリと唾を飲み込んでいた。
そんなエルサの反応を楽しむかのように彼女は言葉を続ける。
「そう、何も肉体的な接触ばかりが営みとい訳では有りませんわ。こうして御相手の心を昂らせることも大事なのですよ?」
そう言ってマノンは自らの豊満で長い乳房の先端についたタッセル飾りを揺らしながら、ベッドの上で身体をくねらせる。
その動きに合わせて揺れる胸を目で追うエルサに、彼女は妖艶な笑みを浮かべながら言った。
「ふふっ……私の身体に興味津々のようですね?でも、踊り子には触れないのが通例ですが、騎士団長様には特別にお触りを許可しますわ♪」
そう言うとマノンは腰をくねらせ、エルサに向けて股を開いた。
その扇情的な姿にエルサは息をするのも忘れ魅入ってしまう。
そんなエルサの反応を楽しむようにマノンは更に言葉を続ける。
「ほら……私のアソコはもうこんなにも濡れてしまっているんですのよ?触ってみれば分かりますわ……」
そう言って自らの秘所を広げると、そこから愛液が流れ出し太腿を伝っていく様を見せ付けた。
その瞬間、今まで感じたことのないような情欲が湧き上がってくるのをエルサは感じていた。そんなエルサの葛藤を見抜いたかのようにマノンは妖艶な笑みを浮かべると、今度は立ち上がってゆっくりと近づいて来る。
そしてそのままエルサの上に覆い被さると耳元で囁いた。
「さぁ……飾りを脱がして、わたくしを獣欲に忠実な女にしてくださいませ……」
その言葉に抗うことが出来ず、エルサは震える手で彼女の下着を外していく。
露わになったそこは既に濡れそぼっており、むせ返るような牝の香りが漂っていた。
この熟れた果実を貪りたいという欲望に駆られたエルサは、ゆっくりとそこに手を伸ばしていく。
指先が触れた瞬間、マノンは小さく体を震わせるが抵抗する様子はない。そのまま割れ目をなぞるように撫でると彼女の口から甘い吐息が漏れた。
(あぁ……なんて淫らな光景なのだろう……)
目の前で繰り広げられる淫靡な光景に、エルサは思わず息を飲む。
そんなエルサの反応を楽しむかのように、マノンはゆっくりと腰をくねらせた。
その動きに合わせて揺れる胸がなんとも淫らで、その乳房の動きを先端の飾りが美しく飾り立てる。
そんな光景にエルサの理性は限界を迎えつつあった。
そんな彼女の反応を楽しむようにマノンはさらに激しく腰を振る。その動きに合わせるように彼女の胸も大きく揺れ動き、まるで踊っているかのような錯覚を覚えた。
(あぁ……駄目だ……これ以上はもう我慢できない……!)
そう思った瞬間、エルサは飾りを引き抜くとマノンの豊満な胸にしゃぶりついていた。その瞬間、今までとは比べものにならない程の甘美な味が口いっぱいに広がる。
夢中になって吸い続けていると、次第にマノンの呼吸が荒くなっていくのが分かった。どうやら彼女も感じているらしい。
そのことに気をよくしたエルサは乳首に歯を立てるとそのまま強く嚙んだ。その瞬間、今までで一番大きな声を上げると同時にマノンの身体が大きく仰け反ったかと思うとビクビクっと痙攣する。
(なんだ……今の感覚は……?)
初めて味わう感覚に戸惑いながらも、エルサはその快感に酔いしれていた。
そんなエルサの反応を楽しむかのように彼女は妖艶な笑みを浮かべながら言った。
「女性の悦ばせ方は既にご存知のようですね?さぁ、もっともっとわたくしを愛して下さいませ……」
その言葉に答えるようにエルサは次の行動に移った。
マノンの胸から口を離すと今度は彼女の首筋に舌を這わせる。
「あっ……そこは感じ過ぎてしまいますわ……」
そう言いながらも嫌がる素振りはなくむしろ喜んでいるように見えた為、そのまま鎖骨や肩などに吸い付き赤い痕を残していく。
その度にマノンの口からは小さく喘ぎ声が漏れるが、それでも彼女はどこか嬉しそうだった。
(あぁ……王子にこんな危険な女人を近づけさせる訳にはいかない……だが、このままこの女を抱いてしまえば私は……?)
そんな考えがエルサの頭を過るが、すぐに振り払うと目の前の女体に没頭することにした。
やがて二人の行為はエスカレートしていき、いつの間にかエルサの手はマノンの秘所へと伸びていた。
「あぁっ……そこは駄目ですっ……!」
突然の強い刺激に驚いたのか、マノンは抗議の声を上げるが無視して指を動かし続ける。すると次第に彼女の口から熱い吐息が漏れ始めた。
「うぁ……だ、ダメですっ!そこは本当に弱いんですのぉっ!!」
その言葉を無視してエルサは更に激しく責め立てると、マノンの口から悲鳴にも似た声が上がる。
(そろそろ限界か……?)
そんなことを考えているうちにマノンの身体が小刻みに震え始めると同時に絶頂を迎えたようだった。
その瞬間、彼女の秘所から大量の愛液が流れ出しシーツに大きな染みを作る。それと同時にエルサもまた絶頂を迎えていた。
2人はしばらくの間余韻に浸っていたが、やがてエルサの方から口を開いた。
「ふう……これで良かったのだろうか?」
その言葉にマノンはゆっくりと起き上がると笑みを浮かべたまま答えた。
「えぇ、とても心満たされましたわ……」
(駄目だ……王子を守る為とはいえこんなにも情事に溺れてはいけないというのに……)
そう思いながらも体は言うことを聞かずに再びマノンを押し倒すと今度は片方の胸飾りを口に含んで吸い上げる。その度に彼女は甘い吐息を漏らしながら身悶えた。
そんな様子を見つめながら、エルサは心の中で葛藤していた。
(王子を誘惑する危険な女など、私さえ居れば十分だ……)
そんな考えが頭に浮かぶがすぐに振り払うと彼女の秘所に手を伸ばす。するとそこは既に洪水のように濡れており、エルサの指を容易く受け入れた。そのまま中をかき回すように動かすとマノンの口から嬌声が上がる。
「ああっ!そ、そんな乱暴にされたらぁっ!」
その言葉とは裏腹にマノンの表情は悦びに満ち溢れていた。その証拠に彼女の膣壁はぎゅうぎゅうと指を締め付け、まるで離さないと言わんばかりに吸い付いてくる。
そんな反応を楽しむかのようにエルサはさらに激しく指を動かし続けた。するとそれに呼応するかのようにマノンの口から漏れる声も大きくなっていく。
「あっ!そこは駄目ですのっ!!それ以上されたらおかしくなってしまいますわっ!!」
その言葉を聞き流しながらエルサは執拗に弱点を攻め続ける。それによって限界を迎えたのか、今までで一番大きな声を上げると同時に全身を大きく仰け反らせたかと思うとビクビクッと痙攣し果ててまった。それと同時に秘所からは大量の愛液が流れ出し、シーツに大きな染みを作った。
しかし、満足出来ぬはエルサの陰核であった。何度も絶頂を迎えたマノンの痴態を見せつけられた影響により、エルサの秘所は痛いほどに勃起していた。
それを見たマノンは妖艶な笑みを浮かべるとゆっくりと立ち上がり、自らの秘所を広げてみせる。そこも既に洪水のように濡れており愛液が滴っていた。
「さぁ……どうぞこちらへ来てくださいませ……」
その言葉に導かれるようにエルサは彼女に近づくとその脚を持ち上げ、自らの女性器と彼女の女性器を擦り合わせた。
その瞬間、エルサは今まで感じたことのない快感に襲われ思わず声を上げてしまう。一方のマノンも未知の快楽に戸惑っているようだったが、すぐにその表情には笑みが浮かんだ。
「あら……これは想像以上に素晴らしいものですわねっ♡」
そう言いながらも彼女は腰を動かし続けている。その刺激によってエルサの絶頂への欲求が高まっていった。それを察したかのようにマノンは挑発的な笑みを浮かべるとこう囁いた。
「ふふっ……互いの陰核がちゅうちゅうと吸い付いて、まるでキスをしているような快感でしょう?」
その言葉にエルサは素直に答えることが出来なかった。それほどまでに今感じている快楽は凄まじく、気を抜けばすぐにでも果ててしまいそうだったからだ。
そんな彼女の心情を察したかのようにマノンはさらに言葉を続ける。
「さぁ……そろそろ限界なのでは御座いませんか?遠慮せずともよろしいのですよ?」
そう言われた瞬間、エルサの理性は完全に吹き飛んだ。そして次の瞬間には絶頂を迎えていた。それと同時に今まで我慢していたものが一気に解き放たれ、凄まじいまでの量の潮を噴き出していた。
「ああっ!イクッ……イキますっ!!」
エルサが果てると同時にマノンもまた絶頂を迎えたようで、大きく仰け反りながら全身を痙攣させる。その姿からは普段の妖艶な雰囲気は一切感じられず、まるで獣のような声を上げ続けていた。しかしそれでもなお彼女は動きを止めず、むしろ激しさを増したかのようにさえ思えた。
やがてエルサの絶頂も終わりを迎えると二人はその場に倒れ込み荒い呼吸を繰り返していた。エルサは自分の上に乗っているマノンの秘所から愛液と潮が混じったものが流れ落ちてくる感触に身体を震わせる。
(あぁ……なんて淫靡な光景なのだろう……)
そんなことを考えているうちに、自然と手は彼女の胸飾りへと伸びていた。既に固く勃起したその先端を摘み上げるとマノンの口から甘い吐息が漏れる。
宝石の反射はマノンの胸の飾りをより淫猥に見せ付けた。
「ん……お気に召しましたか?もしよろしければ……」
マノンが耳元で囁く淫猥で素晴らしい提案に、エルサは迷わず了承した。
◇
自室でのいたいけな籠城を続ける幼い王子に報せが行ったのはそれからしばらくのことだった。
エルサは一向に顔を見せず、よもや自分に愛想を尽かしたのかと不安に駆られていたところに、ようやく彼女から手紙が届いた。
手紙からは得も言われぬ馨しい薫りが漂っており、手紙の内容を想像するだけで胸が高鳴った。
姉のように慕い心から愛しているエルサからの手紙。普段の彼女を思えば何故直接会いに行ってはならないのか疑問に思う。
だが、手紙にはこう書かれていたのだ。
『敬愛する殿下。
わたくしがこのような手段を執らざるを得なくなったことをお許しください。
殿下からのご厚意に報いるべく、エルサは今夜、殿下をお待ちしております。
どうかおひとりでお越し下さい。
くれぐれも、口外せぬようにお願い致します』
◇
(何故エルサは直接会いに来てくれないの……?)
そう思いつつも、期待感には勝てず王子はひとり自室から抜け出し目的地へ向かうことにした。夜の空気は冷たく張り詰めており肌寒さを感じたが、それ以上に心臓が高鳴るのを感じる。
一度も訪れた事のない城下の通りを抜け、どんどんと暗い灯りのない場所へ向かっている自分に不安を覚えつつも歩みを止めなかった。
ようやくエルサが待っているという宿へ辿り着いた時、王子は安堵のため息をついた。だがすぐに思い直すと恐る恐る中へ入っていく。
出迎えた女将と思しき女性に案内されるまま通されたのは二階の奥の部屋だった。
香だろうか、部屋の中からは官能的な香りが漂っており王子の心臓は高鳴り続ける。
夜伽など何のことかも知らなかった少年王子だが、愛する女性に会えるという期待感に胸を膨らませながら扉を叩く。すると部屋の中から女の声が聞こえ、彼は扉を開け部屋に入った。
その瞬間、鼻についた甘い香りはより強くなると同時に彼の鼻孔をくすぐった。そして目の前に広がった光景に思わず息を飲む。
そこには2人の女人の姿があった。顔の下半分ヴェールで隠した殆ど裸とも言えるような衣服を纏った美女と、同じく寝台に腰掛けた妖艶な雰囲気を醸し出す絶世の美女だ。
ヴェールで顔を覆ってこそいるが、瞳や髪の色、長身に逞しい筋肉、豊満な胸を有したその女性こそ、アーシュラインの心より慕うエルサその人でまごう筈も無いのに、そのいつもとは違った姿を目の当たりにした王子の股間は勝手に反応してしまっていた。
「アーシュ……!?」
エルサも予想だにしていなかった光景に思わず声を上げる。そんな彼女に対して王子は耳まで真っ赤にしながらも弁明するように口を開く。
「ち、違う!これは……」
そう言って視線を逸らすが、その言葉とは裏腹に彼のペニスはムクムクと大きくなっていく。恐らく生まれて初めて異性と言う、刺激的すぎるその姿に反応してしまったのだろう。
そんな様子を目にしたマノンは薄く微笑むとゆっくりと立ち上がり王子に近づいた。
「あら……殿下も殿方で御座いますもの……わたくし達の体を見て興奮するのは致し方ないことですわ……。殿下、お初に
お目にかかります。わたくし、エルサ様の指南役にして本日付き添いのマノンと申します……」
そう言いながら彼女は王子の頰に手を伸ばし優しく撫でると耳元で囁いた。
「さぁ……こちらにいらしてくださいませ……」
その言葉を聞いた瞬間、王子はふらふらとした足取りで歩き出した。やがてベッドのエルサと向かい合うように立つと彼女から漂う匂いが王子の思考を鈍らせていく。
「エルサなんだよね……?何故どうして僕に会いに来てくれなかったの……?」
縋るような眼差しを向ける王子に対してエルサは罪悪感で押し潰されそうになる。
(あぁ……私の愛すべきアーシュ、こんな私を見て幻滅しないだろうか……?)
そんなことを考えているうちにエルサはアーシュの衣服を優しく脱がし始めた。
「ま、待ってエルサ!何を……!?」
焦るアーシュをよそにエルサは手を止めず、やがて生まれたままの姿のアーシュを目の当たりにすると彼女は頰を赤らめた。
生まれて初めて大きくなってしまったのだろう屹立したペニスは、ピクピクと震えエルサを誘惑しているかのようだ。
「殿下……♡お可愛いこと……」
エルサは顔を赤くしながらも屹立したアーシュのものを優しく撫で回し、もう一方の手で自らの秘所を弄り始めた。それを見た王子はますます頰を赤らめ目を逸らすように俯いたが、マノンに耳元で囁かれた一言によって再び顔を上げることになる。
「わたくし達に気を遣って下さらなくても良いのですよ……殿下のお好きな様にしてくださって構いませんわ……」
その甘い囁きに抗うことは出来ず、王子はゆっくりと手を伸ばすとエルサの胸を揉み始めた。
「あんっ……」
その感触は今までのどんな乳房よりも柔らかく、それでいて弾力があり心地よかった。そのまま手を動かし続けていると先端が徐々に硬くなっていくのが分かった。どうやら感じているらしいことが分かり、王子はさらに夢中になって愛撫を続ける。
「ふふ……殿下ったらまるで赤子のようですわね……♡」
そんなエルサの言葉も耳に入らず一心不乱に胸の谷間に顔を埋めるとエルサは優しく頭を撫でてくれた。
それだけでもう王子の心は満たされていくと言うのに、更なる刺激をマノンが耳打ちする。
「エルサ様、殿下に『おしゃぶり』をして差し上げては?」
それを聞いた瞬間、王子の心臓は大きく跳ねた。それがなんなのか皆目検討も付かなかったが、恐らくとてもいやらしくて恥ずかしい事だろうという事だけは理解出来た。
しかし、その想像以上である事は次の瞬間に起こる。
「ふふ……殿下は本当にお可愛いです……♡では……失礼致します……」
エルサはアーシュの目の前に跪くとヴェールの下の唇でペニスを包み込んだ。その温かさと柔らかさは想像以上であり、思わず王子の口から声が漏れる。
「はぁっ……」
それだけでも信じられない程の快感だったのだが、それだけではなかった。エルサはゆっくりと頭を動かし始め、時折強く吸い付いてくるのだ。その度に強い快楽が襲いかかり身体が跳ねるのを止める事が出来なかった。
するとマノンが再び耳打ちをする。
「殿下……お上手ですよ……♡わたくしにもアーシュライン殿下のお可愛いお姿……見せてくださいませ」
その囁きは麻薬のようにアーシュの思考力を鈍らせていった。柔い吸い付くようなマノンの乳房が彼の背に密着し、アーシュの背筋にゾクゾクとした感覚が駆け巡る。
「あぁ……すごい……こんなに気持ちいいなんて……」
初めて体験する感覚に戸惑いながらもその快楽に逆らうことは出来ず、むしろもっとして欲しいという欲求が彼の中で膨れ上がるばかりだった。そんな様子を見ていたエルサはより一層奉仕に励む。
「んっ……ちゅっ♡じゅるっ♡」
淫らな水音が部屋中に響き渡り耳から犯されているような感覚に陥る。
ヴェールの下のエルサの唇は激しいストロークを繰り返し、王子の精を吸い出そうとしているかのようだ。
そんな快楽に抗う術などあるはずも無く、全身を震わせて逃げようにも前後を二人に挟まれ身動きが取れない。やがて限界を迎えたアーシュは絶頂を迎えようとしていた。
「はぁ……はぁ……!も、もう駄目……なんか出ちゃう……!」
その声を聞いた瞬間、エルサのストロークはさらに激しさを増した。まるで最後の一滴までも搾り取ろうとしているかのようだ。そしてついにその瞬間が訪れた時、エルサはその先端を唇で包み込み強く吸い上げた。その瞬間、王子は耐えきれずエルサの口の中に勢いよく精を放ち始めた。
「あぁっ!で、出るっ!!あっ……!!」
勢い良く吐き出された精は一滴も零すことなく全てエルサの口の中に注がれていった。その間、彼女は少しも離れる事なくアーシュのものを口に含んだまま決して離そうとしない。それどころか最後まで出させようとしているのか舌で刺激を与え続けてくるのだ。
やがて長い放出が終わるとエルサはゆっくりと頭を上げていった。それと同時に口の中から解放されたペニスはまだ萎えず大きく反り返ったままだ。
精通の余韻に浸りながらも、初めて体験する快楽に惚ける王子に対しエルサは優しく語りかけた。
「殿下……これが『お射精』です……ご立派ですよ……♡」
ヴェールを外し、口の中の精をアーシュに見せつけると、彼女はそれをまるでご馳走と言わんばかりに飲み込んだ。その姿を見せつけられた王子は言いようのない興奮を覚えてしまう。
「ふふふ……初めてのお射精は如何でしたか?」
アーシュは少し息を荒げながらも素直に答えることにした。
「すごく気持ちよかった……腰がふわふわしちゃうような……」
あまりの快楽に腰がくだけて立ち上がれないらしく、力なくその場に座り込んでしまう。そんな彼を見てマノンは微笑みを浮かべながら声をかける。
「殿下……少しお休みになられますか?その間、余興をご覧くださいませ。エルサ様、よろしいですか?」
マノンの言葉にエルサは頷いた。
「あ、あぁ……良いぞ。殿下もお気に召すか分からんが……」
そう言いつつエルサは傍にある薄絹を手に取り、両腕で自らの胸を強調させるように持ちあげてみせた。
「さ、殿下……こちらをご覧ください……」
その声に惹かれるように王子の視線は自然と彼女の胸へと吸い寄せられてしまう。
乳房の先端に付いたタッセル飾りはエルサが身を動かすだけで大きく揺れ動き、煌びやかな宝石の輝きも相まって非常に美しい。
「これは……本当に綺麗……」
エルサは嬉しそうに微笑むと、薄絹で乳頭付近を覆い王子の視線から隠した。すると彼女はゆっくりと上体を動かし始め、自らの胸を両腕で上下に動かし始めると同時に段々と激しくなっていく。
その動きに合わせるようにタッセル飾りはゆらゆらと揺れ動き、アーシュの心を惑わす。
そしてある瞬間を境にその動きに変化が生じた。それまではゆったりとした動作だったものが徐々に早くなっていっていき、その動きに合わせて胸も激しく揺れる。
「はぁ……はぁ……殿下ぁ……♡」
エルサの頰は紅潮しており吐息にも熱がこもっているのが分かる。まるで娼婦のような艶やかな表情を見せる彼女に、王子の興奮はさらに高まっていった。
(うぅ……また僕のお股がムズムズしてきた……)
モジモジと内股を擦り合わせるアーシュを見て、マノンはニッコリと笑うと言った。
「ふふ……殿下の心乱れる可憐なお姿を見て、エルサ様も興奮してしまわれたようですわ。わたくしの母国に伝わる殿方を挑発する為の踊りなのですが……お気に召したようですね♡」
アーシュはこくりと首を縦に振った。そんな彼に対してマノンは耳打ちする。
「宜しければ……エルサ様のお胸に触れてみてくださいませ」
その言葉に導かれるように王子は手を伸ばすと、薄絹越しにエルサの胸に触れた。その瞬間、今まで感じたことのない柔らかい感触が伝わってくる。そしてそれと同時に彼女の口から甘い吐息が漏れた。
「あぁっ……!」
思わず手を引っ込めそうになってしまうほどエルサの乳房は柔らかく弾力があり、それでいてしっとりと吸い付くような触り心地である。
鍛錬の後の湯浴みや同じベッドで温まった時のそれとは全く異なる感触に戸惑いつつも、王子の好奇心と欲求を抑えることは出来なかった。
今度は両手で彼女の胸を揉むように触ってみる。するとエルサの口からさらに熱い吐息が漏れた。
「あぁっ……殿下ぁ♡」
その声に反応するようにアーシュは夢中になって胸を弄り続けた。胸飾りの付いた乳頭だけは触れないように気を付けて、大きな乳房全体をゆっくりと揉みしだく。
その度にエルサは甘い声を上げ、それがますますアーシュを昂らせる結果となった。次第に下半身が熱くなり頭がボーッとしてくる。
「殿下……お上手ですよ……」
そんな様子を見ていたマノンは王子の背後に回ると、後ろから抱きしめるように体を密着させてきた。それによって柔らかいものが背中に当たり、それだけでも気持ちいいのに今度は耳元で囁かれる。
「いかがです?わたくし達の体……素敵でしょう?」
その問いにアーシュは小さく首を縦に振った。するとマノンは嬉しそうな声を上げると続けて囁きかけてくる。
「ではもっと堪能してくださいませ♡」
そう言うと彼女は両の指でエルサのタッセルを摘み少し下に引っ張って見せた。それによって胸の先端を覆っていた飾りが外れれ、ピンク色の乳首が露わになる。
「さぁ……どうぞ、殿下……遠慮なさらずに……」
促されるままアーシュはエルサの乳頭を口に含むと吸い上げた。その瞬間、エルサの口から大きな声が漏れ出す。
「あぁん♡」
そんな様子を見ていたマノンはクスクス笑いながらさらに追い打ちをかけるかのように耳元で囁いた。
「どうですか?エルサ様のお胸は」
その問いかけに対し王子は無言のまま一心不乱にエルサの乳首を吸い続けた。その間にもエルサの口からは嬌声が上がり続けている。
やがてマノンが王子の耳に舌を入れてきた。ぬるりとした感触が耳の中を這いずり回り、時折甘噛みをされる度に体がビクッと震えてしまう。同時に股間では今まで以上の疼きが込み上げてきた。
そんな様子を察してか、マノンは妖艶な笑みを浮かべると王子の前に跪いた。そして自らの胸を持ち上げるようにして見せつけてくると囁くように言った。
「殿下は女人の乳房には慣れられたご様子ですので……今度はわたくしの乳房を味わってくださいませ……」
エルサの張りのある艶やかで大きな胸とは対照的に、マノンの胸は柔らかで長く垂れている。
そのツンとした乳輪と先端の乳首は少し上向きに勃ち上がっており、王子の理性を焼き切るには十分過ぎる刺激を与えてきた。
「ふふ……生来のものでもありますが、踊りで乳の腱が伸びてだらしないふしだらな形になってしまいますの♡でも……このような使い方であれば、ご満足頂けるのではないかしら?」
そう言ってマノンは自らの胸を下から持ち上げるようにして見せた。すると彼女の豊満な乳房がまるでプディングのように揺れ動き、その柔らかさを主張してくる。それらにマノンが口からとろとろとした唾液を谷間に垂らすと、胸全体がテカテカとした光沢を放ち、その光景は王子の心を鷲掴みにした。
褐色の肌に乗る唾液のコントラストに王子の目は釘付けになり、もはや完全に理性を失ってしまったのか鼻息を荒くしながら荒い呼吸を繰り返す。
再び天を向いてそそり勃つ王子のモノを見つめ、マノンは嬉しそうに微笑むと言った。
「あら……ふふ♡殿下……それではお望み通りこのふしだらな胸でご奉仕させて頂きますね」
両の乳房を左右に割るとマノンは胸の谷間で王子のペニスを挟み込んだ。その瞬間、あまりの快感に意識が飛びそうになる。
彼女の乳房はあまりにも柔らかく、それでいて張りがあった。そのせいか男根に吸い付くような感触を与えてきたのだ。さらには唾液と先走り汁が混ざり合いヌルヌルとした潤滑油となって滑りを良くしているため、それだけでも十分な快楽なのに、それに加えて先端が敏感になっている部分を舐め上げるように刺激してくるのである。
アーシュは思わず喘ぎ声を漏らしてしまいそうになるが、それを必死に我慢し続けた。するとそれを察したらしいマノンが囁くように語りかけてきた。
「殿下……声を出しても大丈夫ですよ?ここにはわたくし達しかおりませんから」
そう言いながら彼女は豊満な乳房を上下に動かし始める。すると先ほどまでとは比べものにならない快感に襲われてしまい、思わずアーシュの口からは嬌声が漏れた。
その声に気を良くしたのか、マノンはさらにペースを上げてゆく。その激しい動きに合わせて胸は大きく揺れ動き、谷間からは淫らな水音が聞こえ始めた。その音に煽られるように王子の興奮はどんどん高まってゆく。
「ふふ……殿下もすっかり虜になってしまわれたようですね♡もっと気持ちのいいことを致しましょうか」
そう言うとマノンは再びアーシュの前に跪くと、今度は自らの舌を大きく出して見せた。そしてそのままゆっくりと顔を近付けていく。
そして彼女の舌がアーシュの亀頭に触れた瞬間、電撃のような快感が全身を駆け巡った。あまりの衝撃に意識が飛びかけるが、そんなことはお構いなしとばかりに彼女はさらに激しく責め立てる。
「じゅるっ♡ちゅぱっ♡」
卑猥な音を立てながら、マノンは亀頭からカリ首、そして裏筋に至るまで丹念に舐め上げてくる。その絶妙な舌遣いによって王子は再び絶頂を迎えようとしていた。
しかしあと少しというところで動きを止められてしまう。何事かと思って彼女の顔を見ると悪戯っぽい笑みを浮かべているのが見えた。どうやら彼女がわざと寸止めしてきたようだ。アーシュがもどかしさに腰を動かそうとすると再び口を離して囁くように囁いてきた。
「エルサ様が見ていらっしゃるのに、はしたないですよ?殿下♡」
その言葉を聞いた瞬間、羞恥心が込み上げてきて顔が真っ赤になるのを感じた。そしてそれと同時にゾクゾクとしたものが背筋を走る感覚を覚えた。
目の前のエルサの事など忘れて、目下のマノンの乳房に夢中でされるがままになっていた事実に今更ながら気付いたからだ。
恐る恐る顔を上げれば、顔を真っ赤に染め上げ、目元に涙まで浮かべたエルサと視線が合う。その目は責めるような眼差しを向けており、それが余計にアーシュの心を責め立てた。
「その御年で女人を泣かせるなんて……いけませんね、殿下♡」
マノンはそう言うと再びアーシュのモノを乳房でグニグニと包み込んだ。それだけでも気持ちいいのに、さらに彼女は胸を上下させ始めたのだ。柔らかく弾力のある褐色の塊が王子のモノを擦り上げる度にゾクゾクとした快感に襲われる。
しかしそのもどかしい感触と、刺すようなエルサの視線で快楽の絶頂に登り詰めることはできず、アーシュは悶々とした気持ちを抱えながらもひたすら耐え続けるしかなかった。
「殿下……お苦しいですか?今にも果ててしまいそうなのにそれを許してくれないエルサ様にもどかしさを感じているのですか?」
そんな王子の気持ちを見透かしたようにマノンが言うと、その言葉に応えるようにエルサが小さく首肯した。
それを見てマノンは小さく微笑むと更に責めを強めていく。
二つの膨らみに挟まれながら激しく扱かれ続けるペニスは、マノンの唾液と先走り汁によってヌラヌラとした光沢を放ちながらも激しい動きに翻弄されてビクビクと震えている。
「そろそろ殿下も限界のご様子ですね♡……エルサ様、殿下もこのままお預けを喰らうと拷問も同じですよ♪」
マノンがそう囁くように言うと、エルサはハッと我に返った様子で首を横に振る。
そんな様子にマノンは嬉しそうに微笑むとアーシュの耳元で囁いた。
「エルサ様が可哀想ですものね……わたくしとしてはどちらでもよろしいのですが……殿下はどうされますか?」
選択を迫られて王子は躊躇してしまう。そんな様子を見て取ったマノンは優しく微笑むと言った。
「わたくしの胸で果てるのがお望みであれば、そうおっしゃってくださいませ」
悪魔のような誘惑に、アーシュの理性は最早崩壊寸前だった。いや、もうとっくに限界を迎えているだろう。
だがそれでも最後の一線を越えられないでいるのはエルサの存在があったからだ。
彼女が見ている前でこれ以上情けない姿を晒せないという思いと、彼女に対する申し訳なさが王子を踏み止まらせていた。しかしそれも長くは続かないだろうと自分でも分かっている。だからこそ早く楽になりたいという気持ちもあったのだが……
そんな葛藤を見透かしたようにマノンは言う。
「殿下……もしわたくしを選んで頂けるのでしたら……最後の瞬間まで気持ち良くして差し上げますよ?」
マノンはそう言うと胸を左右に揺らし始める。その動きに合わせて王子のモノがグニグニと形を変えていった。
「さぁ……どうされますか?殿下♡」
その言葉についに理性が焼き切れてしまったらしい。
アーシュは荒い呼吸で肩を上下させながらその言葉に後押しされるように小さく首を縦に振った。それを見たマノンは嬉しそうな表情を浮かべると、今までで一番強くペニスを挟み込んできた。その瞬間、下半身から脳髄まで一気に痺れるような快感が走り抜ける。
人生で経験したことの無い強烈な刺激にアーシュは目を見開き、全身を大きく震わせた。またあの匂い立つ白い液体が自分の肉棒から溢れようと乳房の中でびくんと跳ねたその時だった。
自分の唇を貪るように奪われる。
目を瞑る事すら忘れ、唇を重ねてくるエルサの顔の造形を視界に捉える。
自分を見つめる瞳が、待ち焦がれているかのように爛々と輝いて見えた。
そしてエルサの舌が口内に侵入して来ると共に唾液を流し込まれる。
それは形容しがたい程に甘美で、陶酔した感覚を覚えてしまう程の中毒性があった。
それと同時に自分の肉棒に絡みついていたマノンの乳房がギュッと締め付けてきたのだ。
その同時の刺激に耐えられるはずもなく、王子は勢いよく白濁液を放出した。その瞬間、凄まじいまでの快楽と多幸感に包まれる。
エルサの瞳は、まるで王子を逃がさないとでも言うかのように強く見据えていた。
そしてその瞳を見つめているだけで、また自分のモノが大きくなっていくのがわかる。
互いの口に糸を引くように唾液の橋がかかる様すら扇情的に見えてしまう程だ。
すると今度はエルサの方から唇を重ねて来た。先程の貪るような口付けではなく、ゆっくりと味わうようなキスである。それを何度も何度も繰り返すうちに段々と理性が溶けて行くような気がした。
そんな二人の様子を見てマノンがクスリと笑うと、そっと自らの頬に手を当て囁いた。
「ふふ……やはりわたくしの目に狂いはなかったようですね♡さぁ……余興はここまで。エルサ様、後はあなた様のお好きなようになさいませ」
その言葉を聞いてエルサはゆっくりと王子の薄い胸板に舌を這わせる。舌先が触れる度にゾクゾクとした感覚が走り、自然と息が荒くなるのを感じた。その様子を見ながらエルサは満足げに微笑むと今度は胸元へと唇を近づけてきた。
自分の小さな乳首へ熱い吐息がかかり、それだけで感じてしまう程敏感になっているようだ。
そんな反応を楽しみながらエルサは王子の右胸に吸い付いた。その瞬間、まるで電流が流れたかのような衝撃が走る。その快感に驚いていると今度は左胸の乳首を指で摘まれてしまった。
二つの異なる刺激を同時に受けてアーシュの口から甘い声が漏れる。それを聞いたエルサは嬉しそうに目を細めるとより強く責め立ててきた。
片方ずつ交互に口に含み舌先で転がしたり甘噛みをしたりしてくるエルサの動きが激しさを増すにつれて、次第に頭がボーッとしてくるような感覚に陥る。
それだけで肉棒は強く跳ねて先走り汁が溢れ出していた。
そしてそんな様子を楽しむかのようにマノンが囁く。
「殿下も大変御喜びのようですね……それではそろそろ『本番』に参りましょうか♪」
そう言って彼女はエルサの腰布をゆっくりと外していく。するとそこから現れたのは、熱気を纏ったエルサの割れ目であった。
そこは既に愛液によって濡れており、雄を誘うかのように妖しく光を放っているように見える。
その淫靡な光景に見惚れていると、いつの間にか彼女の指がアーシュのモノを包み込んでいた。
「まずはこうしてご手淫から始めましょうね……」
そう言ってマノンはゆっくりと上下に手を動かし始めた。その動きに合わせて快感が駆け上がってくると同時に先端からは透明な液体が溢れ出し、それが潤滑油となって更に動きが加速していく。時折亀頭に指を這わせたり裏筋を撫で上げたりしてくるので堪ったものではない。
しかしこれはあくまで前戯に過ぎない事をアーシュは理解していた。本番はまだこれからなのだ。
エルサの方を見ると、彼女もまた興奮した面持ちで自らの秘所に指を入れていた。その姿はとても官能的で美しくもあるのだが、同時に淫猥でもあった。そんな彼女を見つめていると自然と息が荒くなってしまう。
あの、豪快で男勝りなエルサが目の前で自分を慰めているのだと思うと何とも言えない背徳感が押し寄せてくるのを感じた。それと同時に自分のモノもエルサに見てほしいという欲求に駆られる。
そんな気持ちを知ってか知らずかマノンの手の動きが激しさを増した気がした。そしてそれに合わせてアーシュの限界も近づいてくるのがわかる。
「殿下……射精してしまいそうですか?駄目ですよ、我慢なさらないと♡」
そう言って彼女はさらに激しく責め立ててくる。その動きに合わせて腰を動かしなんとか耐えようとするも無駄な努力でしかなかった。
「ふふ……我慢しなくていいんですよ?ほら、早く楽になってしまいましょう♡」
その言葉と同時に彼女は手の動きを早めてくる。もはや限界だった。だがそれでも最後の一線だけは越えないように必死に耐える事しかできない。それが分かっているからこそ彼女も責めの手を緩めないのだろう。
もう無理だと思ったその瞬間、彼女の手が離れたかと思うとベッドにへたり込んでしまう。
すると今度はエルサが目の前に現れた。そして次の瞬間には王子のモノが熱く滑った何かに包まれる感覚を覚える。驚いて下を見れば、そこにはエルサの割れ目がぴったりとへばりついていた。そしてそこからは信じられない程の快楽が流れ込んでくるような感覚に襲われる。
エルサの筋肉と柔い女の脂肪の合わさった絶妙な美しさを持った肉体にのしかかられ、身動きが取れなくなってしまっていた。
アーシュは『本番』という言葉の意味を理解すると同時に、自分が今どういう状況に置かれているのかを理解していた。
捕食者の巣に入り込んだ哀れな獲物になった自らの末路は、捕食されるしかないのだということを。
エルサのアーシュを溶かしてしまうかのような柔肉が、ゆっくりと王子のモノを呑み込んで行く。
熱くぬめりけのある肉壁に締め付けられて快感を覚えずにはいられなかった。しかもそれだけではない。まるで別の生き物のように蠢く無数の襞が敏感な部分を刺激してくるのだ。その強烈な刺激に耐え切れず思わず腰を浮かせてしまうのだが、それは同時に自らエルサの中へと入り込んでいくような形になってしまっていた。
「うふふ……エルサ様のほとの中は大変心地良いでしょう?熱くてわたくしの小指一本でも引き抜けない程の締め付けだというのに、中はこんなにも蕩けていて柔らかいのですから♡一度味わえばもう抜け出せなくなってしまいますよ?」
耳元でマノンが囁くように言ってくるが、それを聞いていられるほどの余裕は既になかった。既にエルサの中にすっぽりと収まってしまった肉棒は押す事も引く事も出来ずに、ただじっとしているしかない。その状態でも彼女の中は絶え間なく蠕動しており、アーシュのモノから搾り取ろうとする動きを見せていた。
エルサの中はまるで別の生き物のように蠢き続け、常に異なる刺激を与え続けてくるのだ。
「あぁんっ♡」
アーシュは女子のような可愛らしい悲鳴を上げて身悶えた。
「あらあら……可愛い声が出ましたね?まるでどちらが男か女かわからないような悲鳴です」
クスクスと笑うマノンに羞恥心を煽られながらも、それすら気にならない程の快楽に襲われ続けていた。
まるでエルサが自分自身に溶け込んでくるかのような錯覚に陥る程だ。このまま溶けて一つになってしまうのではないかと思う程の心地良さだった。
「殿下ぁっ……すごいですぅ……わたくしの中が殿下の形になっていきます……」
そう言いながらもエルサは更に激しく腰を打ち付けてくる。その度に豊満な胸が上下に揺れて王子の視線を釘付けにしていた。そんな彼女の動きに合わせて大きな引き締まった尻肉が潰れる様子もまた美しく、見ているだけで興奮してしまう程だ。
だがそれ以上に凄いのは、それ程の快楽を得ているはずのエルサが全く疲れた様子を見せないどころか余裕すら感じさせる表情を見せている事だ。
若くして騎士団長を務めているだけはあるという事だろうか。その鍛え上げられた肉体は伊達ではないという事だろう。
割れた腹筋の下辺りに、くっきりと浮き出た子宮の形がわかる程にエルサの胎内は狭く、そんな肉の筒に自分のモノを納めているという事実だけで頭がどうにかなりそうだった。
それだけでも信じられない程の快楽に襲われているというのに、さらに彼女は動き始めた。まるで搾り取るかのように収縮を繰り返す彼女の身体の中は、気を抜くと一瞬で果ててしまいそうな程に気持ちが良い。エルサの体温が直接伝わってくるようで、それすらも興奮材料にしかならなかった。
そんな状態の王子に更なる追い討ちをかけるようにマノンの手が伸びてきたかと思うと乳首を摘まれてしまう。
「うぅっ♡ま、マノンぅ♡」
「殿下はここがお好きなのですね?さっきからずっとビンビンに勃起させていて……ふふ、可愛いです♡」
そう言いながら彼女は指先で転がすようにして弄ってくる。その刺激に合わせて王子のモノもビクンッと跳ねてエルサの中をえぐってしまった。その度に凄まじいまでの快感に襲われてしまい、もはや理性など保っていられない程の快感に気が狂いそうになる程であった。
2回の発射によりアーシュの思考力は著しく低下し、今や自分が何をしているのかも理解出来ていなかった。
ただひたすらに目の前の快楽を貪る事しか頭になく、本能のままに腰を動かしていたのだ。
そんなアーシュを見てエルサは嬉しそうに微笑むと、腰を揺すり始めた。
まるで足りない、まだ足りないと言うかのように何度も何度も繰り返し奥を打ち付けてくる。その度にエルサの膣内がまるで別の生き物のようにうねり、アーシュのモノを刺激するのだ。
そのあまりの心地良さに一瞬意識を失いかけたが、すぐに次の刺激によって覚醒させられる事となる。エルサが上下に激しく動き始めたからだ。それによって膣内が激しく擦られる形となり更なる快感を与えてきたのである。
まるでエルサとの剣の打ち込み稽古のように激しく責められ続ける。
王子への愛情故に厳しい鍛錬を課していたエルサは、その愛の鞭が身体に染み付く程に激しい打ち込み稽古をしていたのだ。
王子とて幾度もそれを受けてきたからこそ分かるのだが、この激しさは決して優しさ故のものでは無いという事を……つまりこれは本気なのだという事を思い知らされる事となった。
そんな凄まじいまでの快感に晒され続けているというのに未だに果てる様子の無いアーシュを見てマノンは感心するように言った。
「ふふっ……流石でございますね殿下♡普通の男性ならば既に何度も達して小水を垂れ流しておられる頃合いでございますのに……本当に素晴らしい精神力です♡」
そう言う彼女の表情は恍惚としていた。どうやら彼女にとっても今の光景は興奮材料となっているらしい。
そんな2人の様子にエルサは満足そうに微笑むと、今度はアーシュの身体を抱き寄せて自らの胸を吸わせた。そして彼の頭を抱きしめるようにして髪を撫でてやる。それはまるで子をあやす母のようだった。
「アーシュ、もっとわたくしの中に来てくれっ♡」
甘く囁くような声色でそう告げると、エルサはアーシュの口に乳首を含ませるようにして口付けをする。それに応えるようにして王子もまた夢中で吸い付いた。その間もエルサの激しい腰振りは止まらない。
奥から降りて来た彼女の子宮口が、亀頭の先端を柔らかく包み込むようにして吸い付いてくる。
その新たな刺激に思わず身震いすると、エルサは嬉しそうな表情を浮かべて再び動き始めた。
ゆっくりと引き抜いてから勢いよく突き入れるという動作を繰り返し、何度も何度も繰り返し行うのだ。その度に子宮口が鈴口に吸い付き子種を求めてくるかのような動きを見せる。その動きに合わせて王子の肉棒もまたビクビクと震えるのだった。
エルサも限界が近いのだろう。息遣いが荒くなり表情も蕩けたものへと変わっている。その様子を目の当たりにして興奮を覚えたのかアーシュのモノが更に大きくなっていった。
「アーシュっ、むかし稽古をする度にあ、あまりにっ♡お前がな、泣き出すものだから、私から一本取れたら『なんでも言う事を聞いてやる』と言ってからは一生懸命にあ、挑んで来てなっ♡それがっ♡可愛くて仕方なくてな……うっ♡」
懐かしそうに過去の思い出を語るエルサ。その間にも彼女の動きは激しさを増していき、パンッ!パァンッ!!という激しい音と共に肉同士がぶつかり合う音が響き渡る。その音に合わせて二人の身体が上下に跳ねていた。そしてそれと同時に彼女の口から漏れ出る甘い吐息が王子の耳元を刺激する。それだけでも気持ちが良くなってしまう程だった。
「ふーっ♡ふーっ♡どんな願いを胸に……この厳しい修練に耐えていたのだろうと想像すればするほどっ♡愛おしいのだ♡」
そう言ってエルサはより一層激しく腰を振り始めた。その動きに合わせて大きな胸が激しく揺れる様子がアーシュの視界に入る。それを見た王子は無意識に手を伸ばして揉みしだいてしまった。すると彼女の口から甘い声が上がると共に膣内がきゅっと締まったのがわかった。
「ああっ、愛しいアーシュぅ♡わ、私の胸を揉んだり吸ったりするなぁ!そなたは本当にいけない子だな……私を姉のように慕っているくせにっ!♡あぁん♡」
そう言いながらもエルサはアーシュの頭を撫でてくれる。そんな彼女に甘えてもっともっとと強請るように強く抱きしめると、エルサもまたそれに応えるように王子の身体を強く抱きしめ返した。そして再び唇を奪われると共に舌が入ってくる。それを夢中で受け止めながら自らも舌を絡めていった。唾液を交換しあい、互いの口内を犯し合うような激しい口付けを交わす二人。その間もお互いの性器を擦り合わせる動きが止まる事はない。
やがて限界に達したのか、エルサは身体を震わせながら叫んだ。
「も、もう駄目だぁ♡わた、私のおまんこがイってしまうぅっ!♡私が負けてしまうぅっ!♡」
その言葉と同時に膣内が激しく痙攣し、子種を求めて亀頭に吸い付いてきたかと思うと熱い飛沫が大量に噴き出してきた。それと同時に凄まじいまでの締め付けに襲われてしまい、アーシュもまたエルサの中に大量の精液を放出してしまったのである。
「あぁっ♡出てるぅ……私の子宮に直接注がれてるぅっ♡♡アーシュの子種がこんなにも沢山……孕んでしまうかもしれん……」
王子の精液を受け止める度にビクビクと身体を震わせながら嬉しそうに呟くエルサ。その表情は恍惚としており、口の端からは一筋のよだれが垂れていた。その姿はあまりにも淫靡であり、普段の彼女とは全く別人のように思えてしまう程だ。
「ふぅ……ふふっ♡私の負けだな♡なんでもいう事を聞いてやろう……お前は何をして欲しい?」
蕩けきった表情で微笑みながら言うエルサに対して、アーシュは恥ずかしそうにしながらも何かを言おうとするが中々言葉が出てこないようだ。
きっと自分でも原動力としていた望みを伝えるのが恥ずかしいのだろう。だが、その望みは彼にしか叶えられないものだ。それを理解しているからこそ、意を決して口を開いた。
「エルサに……お願いがあるんだ」
「ふむ?何でも良いぞ♡アーシュの望みならば全て叶えてやる♡」
自信ありげに微笑むエルサに対して、アーシュは意を決して告げる。
「妃に……僕の妃になって欲しいんだ」
その言葉を聞いた瞬間、エルサの目が大きく見開かれた。しかしそれも束の間の事であり、すぐに嬉しそうな表情を浮かべると愛おしそうに王子の顔中に口付けを落とし始めるのだった。
その様子はまるで恋人同士がするような愛情表現にも見えた。
(あぁ……なんだぁ……♡本当は誰よりも甘えたがりな泣き虫がこれ程の勇気と意地をみせたのか……)
内心では感極まりながらも、表面では平静を保つようにしてアーシュに頬ずりをした。その姿は姉が弟の成長を喜ぶかのようだった。
「あぁ、当たり前だ♡そなたの傍を離れたりはしないさ……んむっ♡」
その言葉に安心したのか、アーシュは嬉しそうに微笑むとエルサを抱きしめた。それに応えるように彼女もまた王子を強く抱き締め返す。しばらくの間そうしていたが、やがてどちらからともなく離れると再び唇を重ね合った。それは誓いの口付けのようでもあった……。
そう言って微笑むエルサの表情はとても幸せそうだった。そんな彼女の表情を見て安心したのか、王子もまた満面の笑みで返すと甘えるようにして抱きついてくるのだった。
そんな二人を部屋の扉の外から盗み見ていたマノンは思わず笑みをこぼしてしまった。
(ふふっ……まるで幼い子供ですわね)
他者の愛を紡ぎ合い、それを結び合う事でまた新しい愛が芽生える。
そうして育まれる愛の連鎖こそ人が生きる上で何よりも尊ぶべきものなのだ。そんな純粋な愛情を見ていれば自然と笑みが溢れてしまうのも仕方の無いことだろう。
そんな無上の愛を見るのがこのクルティザンヌの楽しみの一つであるのだが、その相手が最愛の主とくれば喜びもひとしおだった。
そうしてしばらく二人の様子を見ていると、エルサがゆっくりと起き上がるのが見えた。どうやらこれで終わりというわけではないらしい。
マノンはエルサに気付かれぬよう静かにその場を後にしたのだった……。
◇
「なっなに!?私はまだ殿下のお子を身籠もっていないだと?それは一体どういうことだ!!」
エルサの狼狽と怒りに満ちた声が響く。
その声を聞きながらもマノンはいつもの笑みを浮かべながら紅茶を淹れていた。
すっかりこのクルティザンヌは城にまで住み着くようになってしまっており、豪奢な部屋の一室を自室として使うようになっていた。
「どういう事も何も……殿下は幼く精通したての御身ですので♪子種はまだ本来の機能を果たしていないのです」
「そ、そんな馬鹿な話があるか!!あれ程までに毎日のように……あっ」
そこまで言いかけてから、自分が何を口走ってしまったのか気付いたようで一気に顔を真っ赤に染め上げると俯いてしまう。そんな様子を見てマノンは楽しげに笑うのであった。
「人間も動物の仲間ですゆえ、我々に似た姿形のサルの一種も同様、幼い頃は母や姉と交尾の真似事をして学ぶそうですが、それでは孕まないとの事です♪」
「うっ……しかし、ならばどうすれば良いのだ……?それでは私はその猿と同じでまるで母か姉猿と同じではないか!」
その言葉にマノンは小さく笑みを浮かべるとカップを差し出してくる。それを受け取りながらエルサは訝しげな表情を浮かべるが、差し出された紅茶の味が気に入ったのか嬉しそうに目を細めた。それを見て微笑むと彼女は質問に答えてやる事にした。
「別に、暫くすれば通常の営みでも子は成せますゆえ……焦らずとも良いかと。それに……」
そこで一旦言葉を切ると、マノンはエルサに近付き耳打ちするかのように囁いた。
その言葉に驚きの表情を浮かべるエルサだったが、次の瞬間には決意に満ちた表情を浮かべていた。どうやら覚悟を決めたようである。
その様子を見て満足したのか、マノンは再び微笑むとカップを受け取っておかわりを注いでやるのだった。
◇
玉座の間からの帰り途、エルサは不機嫌そうに顔を顰めていた。
(くそぅ……マノンめ!結局あの娼婦に誑かされて全ての物事が都合の良いように進んでいるではないか!)
心の中で悪態を吐きながら、それでも歩みを止める事は無かった。
エルサは結局、騎士団長の任を解かれる事も、本来の身分を明かし、王子との許婚を公表する事も無く、廷臣のままで居た。
王はセレナからの事の一部始終を聞くとにんまりと笑みをたたえると、こう言ったのだ。
「王子との夜伽の指南をマノンに任せる故、お前は引き続き騎士団長を勤めよ」と。呆然とした様子を見せるエルサに対し、王は続けてこう言った。
「此度の事はすべてマノンの手筈通りに事を運んだまでの事よ。滅んだ国とはいえ元はと言えば王族の血を継ぐ者、まぐわいこそせなんだがマノンもお主と同様、妃になってもおかしくは無い立場ぞ」
そこまで言うと王は豪快に笑ってみせた。
要するにマノンの思う通りになったという事なのだが、その事を告げられた瞬間のエルサの表情はまさに鬼の形相であったとか。
「し、しかしだな、王子たっての願いとあってはお主をかの国の姫君としてでなく、騎士団長エルサを将来の妃として扱う事とする。それを不満に思うな」
王はそう告げると、エルサの肩に手を置いた。
彼女は何かを言いかけたが、その言葉は発せられる事なく飲み込まれてしまう。それを了承と取った王は満足げな表情を浮かべて頷くのだった。
そうして現在に至るわけなのだが、マノンの言う通り王子との子供は結局出来ずじまいであった。
『王宮にこうして置いておかれる身と無事なりましたので、エルサ様とも殿下とも末永くお傍でお世話させて頂きます』
マノンの言葉を思い出して歯噛みをするエルサ。
そんな彼女の脳裏に浮かぶのは王子の笑顔、そして彼との情交である。
(うぐぐっ!よもやこの私がそのような事を思い浮かべて興奮してしまうなど!!)
顔を真っ赤にして悶える彼女だったが、その表情にはどこか嬉々とした感情が混じっているように見えた。
(……仕方ないではないか……!私は本当に殿下が大好きだったのだから……!!)
そう心の中で呟くもやはり、納得できないものは出来なかったようだ。
その為か、思わず口から洩れたのは深い溜め息であった。
これからは王子との剣の稽古の度にこちらが一本とっても言う事を聞かせてやると心の中で誓うのであった。
──こうしてコルティジャーナ(廷臣)として王子に仕える傍ら、王子の恋人として身も心も捧げる事になるエルサ。
そんなさなか、王宮に入り込んだ得体の知れぬクルティザンヌにざわめき立つ影が幾つか。
その彼女達もまたエルサと同じ道を歩むのだろうか、それともマノンのようにおもしろがって傍観に徹するのか、それはまた別の話である。
二人の恋路はまだまだ前途多難なようだった……。