久しぶりの…

  「あなたに愛されているから、僕は強くなれるんです。」

  雪の言葉に嬉しくなったネロは、その日の夜ずっと尻尾を振っていた。雪は黒い毛がブンブンと揺れている様子が、ぼやけている視界でも見えていて、思わず微笑んでいた。

  「今日はもう寝よっか。」

  「はい。」

  ネロに言われて、雪はうなづいた。

  「家の戸締まりの確認と、伊織と彩葉の世話をしてくるから、雪はここでゆっくりしていてくれ。」

  「はい…。いいのですか?ネロ様も疲れているでしょう?」

  「いいんだよ。大事な番が元気がないと、αである私も元気がなくなってしまうよ。」

  「そう…なのですか?」

  「そうだよ。特に番の不調はその甘い香りでわかるよ。」

  ネロはそう言って、噛み跡のある雪のうなじに鼻を近づけた。雪はΩの本能でゾクリとしてしまう。

  「はしたないと思われる…。」

  そう思った雪はギュッと目を瞑る。そして、恥ずかしいと思いながら股を隠した。ネロと番になってからは、男性Ωとしての本能が強くなっている。下半身が濡れていく感覚がしていた。

  「ゆ、雪…香りが強くなった?」

  「え…え…?!」

  雪はバレてしまったと思い、顔を上げて真っ赤に頬を染めた。

  「ど、どうしたんだい?」

  「あ…あ…ね、ネロ様が…う、うなじに…」

  雪は言いながら下半身をギュッと隠す。その動きにネロはやっと気がついて、バッと音を立てて後ずさりをした。

  「す、すまない!その…香りを嗅ぐ癖は犬の獣人では…け、健康チェックとか…挨拶とか…その…日常的なもので…」

  「し、知っております。その…僕が勝手に意識してしまって…す、すいません!」

  「い、いいや!雪は悪くないよ。」

  二人してお互いに謝ることを繰り返した。ムズムズとした甘酸っぱい雰囲気が漂い、余計に恥ずかしくなる。ネロが先に口を開いた。

  「ご、ごめんね、雪。その…じゃあ、ゆっくりしててね。子供たちの様子を見てくるよ。」

  「は、は、はい。」

  雪がうなづくと、ネロはゆっくりと部屋を出た。

  雪はネロがいなくなった部屋を見てジッとしていた。数分経っても、顔の熱が冷めない。心臓はドキドキとしている。体の熱はさらに酷くなっているようにすら感じる。

  「欲求不満…というやつなのかな…」

  一人で呟いた。部屋に残る番の、獣臭でもありαのフェロモンでもある香りに、下半身は疼いてしまう。

  「ど…どうしてしまったんだろう…僕は…」

  そう言いながらも、心の奥底ではわかっていた。

  「あのαが欲しい…」

  Ωの本能がそう言っていた。

  雪は忘れていた。子供が腹の中にいるときにはもちろん、Ωのヒートは来ない。子供を産んでしばらくも来ない。しかし、雪のヒートは元々不定期に来る。

  翌朝、ネロは雪よりも早く目を覚ました。ネロは起きてすぐに驚いた。

  「雪が…私よりも遅い…。」

  雪は眠りが浅い方らしく、妊娠中もとても早く起きたり、逆に遅すぎて目が覚めずにネロを心配させたりした。

  「ゆ、雪?」

  今は腹に子供もいないのに、どうしてか起きない。ネロは心配になって鼻を近づけた。

  「香りは…いつもよりフェロモンが強いくらいかな?」

  そう呟いてすぐに、ネロは欲情し始める自分に気がついてしまう。

  「いけないいけない。」

  ネロは首を横に振り、欲を振り払った。そして雪を起こさないようにゆっくりとベッドを出ると、音を立てないようにドアを閉めた。

  パタンというほんの小さな音に、雪は目を覚ます。先程まで近くにあった番の香りがしなくなったことも、目を覚ましたきっかけだ。

  Ωの本能でαの香りがしないことに、どうしようもない寂しさと不安感が襲ってくる。

  「ね、ネロ様…?ネロ様…」

  雪は無意識に番の名前を呼んでいた。ボロボロと涙があふれる。そして番がそばにいないにも関わらず、下半身がぐっしょりと濡れていく。尻からも男性特有の場所からも、水分が出てしまう。

  「なんで…?ネロ様…」

  自分の体の異変に恐怖が湧いてしまう。体が熱くてたまらない。

  「ネロ様…!ネロ様…!」

  名前を呼んで、ネロを探したい。しかし、足がガクガクと揺れて震えて立てない。ゾクゾクと震えが全身を巡っていて、怠さがある。風邪のようなその症状はヒートだった。

  そのことに気が付かず、雪はベッドのシーツをベッドから剥いで、ギュッと抱きしめた。ネロの香りを嗅いだが、それでも足りない。

  「ネロ様…!ネロ様、ネロ様!」

  雪は出したことのないほど大きな声を出して名前を呼んだ。泣きじゃくった声で呼び、狂ったように言葉にならない声も出した。

  ネロは雪の聞いたことのない声に驚いて、慌てて部屋に戻る。

  「雪?!」

  バンッとドアを開けると、雪が大泣きしていた。ネロは慣れない料理をしようとしていて、エプロンの着け方がわからずに、体に巻き付いた状態だった。しかし、そんなこともどうでも良くなるほど、甘いΩの香りがした。

  「ゆ…雪…もしかして…」

  「ね、ネロさまぁ…」

  雪は必死にネロに腕を伸ばす。ネロのことを掴みたくてたまらず、拭うことも忘れた涙で顔を濡らしていた。ネロは慌てて雪の手を取る。

  「ご、ごめんね…!離れてしまって!」

  「さ、寂しくて…僕…」

  「うん、そうだよね。発情期が来てしまったんだね。」

  ネロは雪を抱きしめた。雪の鼻にはネロの香りが強く届く。そのαの香りにやっと落ち着いた。しかし、さらに下半身は疼き始める。

  「ね、ネロさまぁ…僕、僕…おかしいんです…。」

  「大丈夫、おかしくないよ。君は今、発情期が来ているんだ。」

  「発情期…」

  「妊娠中は来ないから忘れてしまったんだろう。そりゃあ久しぶりだと怖いし、驚くよね…。私はαだから…君の香りに欲情することはよくあるけど…今日はとても強いと思っていたら…。」

  ネロは微笑みながらそう言っているが、雪はネロの息遣いが荒いことに気がついていた。ネロも発情しているのだ。

  「ね、ネロ…さ…ま…」

  「ん?」

  「だ、抱いてください。」

  雪は恥ずかしさとヒートの辛さに泣きながら言った。ネロはその言葉に、我慢していた欲が爆発するように雪を押し倒した。

  「ご、ごめん…雪…私も久しぶりだから…我慢が…」

  「我慢しないでください。」

  雪がそう言うと、ネロは雪の服を破り貪るように下半身を触った。雪の尻にネロの指が入りこむと、シーツは雪の体液で濡れていく。その体液はネロの欲を受け入れるために大量にあふれる。

  雪の尻の中がネロの体液でいっぱいになるまで、行為は続いた。