ここはどこなのだろう。ウテナは首を傾げた。
目の前にはどこまでも続く草原。上を見上げれば広い空と照りつける太陽。
一体自分はどうしてここにいるのか。しかも、私だけがいる。ウィルはどこにもいない。見渡しても草原が広がっているだけだ。
「ねぇねぇ。」
ハッとすると、自分の服を引っ張って自分を呼んでいる小さな手が。辿っていくと、
「…?」
そこにいたのは小さな子ども。男の子と女の子だ。5歳くらいだろうか。2人はウテナをじっと見ている。すると、男の子が言った。
「あそぼうよ。」
「え?」
「あそぼうよ!」
女の子も元気に誘ってきた。そのまま2人はウテナの手を取って走り出す。
「ちょ、ちょっと待って!」
言いながらも駆け出すしかない。小さな子の手を振り払うなんて怪我に繋がってしまうからだ。そこでウテナはふと思った。そして驚いた。
「「わ!」」
驚いて止まってしまったウテナと手を繋いでいた子どもたちは逆に引っ張られて後ろ向きに倒れてしまった。
「あ、ごめんなさい!怪我してない!?」
「うん、だいじょうぶ。」
「だいじょうぶー!」
2人とも上体を起こすとニコッと笑った。ウテナも思わず笑い返す。
「どうしたの?」
男の子が聞いたのにまたハッとする。慌ててお腹に手を当てるが、
「え…?」
当てたお腹はへこんでいた。なにもないように。
「どうして…?」
ウテナの頭の中がぐるぐるし始めた。自分は確かに妊娠していたはずだったからだ。ウィルとの子を妊娠して、人間の自分と龍である彼との子は無事に生まれてくるのか。そう心配していたはずだ。しかし、今のお腹には妊娠しているとわからない状態になっていた。
「あ…、ウィル…。」
思わず愛する人の名を呼ぶ。何かあると、いや、なにもなくてもすぐに自分のそばに駆けつけてくれる彼がウテナにとっての安定剤のようだった。しかし、どこを見てもいない。ウテナの中に不安がたくさん溢れてきた。目に涙が溜まってくる。一粒目が落ちそうになったその時。
「だいじょうぶ。」
ウテナの手に重ねるように小さな手がのった。するともうひとつ。
「だいじょうぶー!」
子どもたちがにっこり笑ってウテナを見ていた。初めて会うのに不思議と違和感はない。それどころか、暖かい気持ちが溢れてくるようだった。抱きしめたい。頬にキスをしたい。できることはなんでもやってあげたい。それはまるで、母親のような愛情…。
「あなたたちは…、」
なおも笑っている子たちの周りが光りだす。見ると、自分も光っていた。その光はだんだん強くなっていき、そのまま吸い込まれていくようだ。「待って」と声をかけたかったが、声は出ることなく、全てが光に包めれてしまった。
「…て、…って、」
「ウテナ」
「…って、…まって、」
「ウテナ、ウテナ?」
「ぁ…。」
目を開けると、ウィルがこちらを覗いていた。ベッド近くの灯りがついている。外はまだ暗いようだ。
「どうした、悪い夢でも見たのか?」
ウィルが片手を握ってくれていた。ウテナも握り返す。
「ウィル…。」
ウテナの目の端から涙が一粒流れた。