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「はあつまんないなあ・・・」
起きて一言目がそれかと自分でも呆れてしまう。
毎日同じことをルーティンのように繰り返す。
当たり前のように朝起きて学校に行って勉強をして、帰ってきたらお風呂に入って、夜ご飯を食べてスマホいじって寝るだけ。
何が楽しいのか自分でもわからない。
「今年で高校も卒業か…」
部屋に飾られたカレンダーを見る。今年で高校を卒業して大学に入る…予定
「将来なりたいもの…」
幼稚園とか小学生ぐらいの時はサッカー選手になりたいとか、消防士になりたいとか、いろいろあった気がするけれど、今は自分がなりたいものがさっぱりわからない。これといって得意なこと、夢中になっていることもない僕には余計にわからないことだった。
そう皆大人になるにつれて知ってしまうんだ。こんなものになれるわけがないと。進学して、そこそこ勉強して、彼女作って、適当に会社決めて入社することができればそれでいいと思う。
「どうせ挑戦しても無駄になるんだから」
ぼそっとそんなことをつぶやいたところでハッとした。
ダメだダメだ完全にネガティブ思考になってる。早く学校行かなきゃ・・・
◆
「おはよう…」
「おはよう!元気ねーじゃん!どうしたの?」
「ちょっと未来、うるさい…」
「ひどっ!来て早々そんなこと言うの!?」
「それはごめん…」
この朝からハイテンションな犬獣人は、東雲未来。小学校からの幼馴染で、誰とでも仲が良くいわゆる陽キャに分類されるような獣人だ。
「今日から新学期なんだからさ〜もうちょっとこうないの?」
「新学期ね〜…」
「お前さ〜いつもつまんなそうな顔してるな〜」
「いつもこんな顔だけど」
「いやいやそうじゃなくて…」
そんな会話をしていると、HRのチャイムが鳴り、周りの皆は席に着いた。
先生の長めの話を聞き終え、さっそく1時限目が始まる。勉強するのは嫌いじゃない。だからといって頭がいいわけでもない。ここの高校を選んだのは家から近かったのもあるが、偏差値もそこそこあったからだ。
教室に聞こえるのはチョークの音と、ペンと紙が擦れる音のみ。
早く終わらして家に帰りたい…家に帰ったからといって特にやることもないけど…
そんなこんなで1日が終わり、帰りのHRの時間になる。
職員室から先生が帰ってきた。手にはなにやらまとまった紙がある。保護者にでも配る学校だより的なやつだろうか。
などと考えていると、先生が口を開く。
「HRを始める前に皆に大事なものを配っておく。進路希望調査だ。これからの人生を決める大事な事だから、しっかり考えて提出するように!特に今年は受験の年、そして高校を卒業する年でもある!いまいち実感が湧かないかもしれないが、もたもたしてるとあっという間に時間が過ぎてしまう。今のうちにしっかり考えておけよ。もちろん白紙で提出はダメだからな!」
出た…この時の僕はすごい顔をしていたと自分でも思う。
去年はなんて書いたっけ…確か適当に書いて提出したような…
なんて考えていると、後ろから声をかけられた。
「なーなーお前ってなりたいものとかあるの?」
「特に…ない」
「だよな〜お前全然そういうの考えてなさそう…」
今シンプルに悪口言ったよね…
「そういう未来は何になりたいの?」
「俺はイラストレーターかな!美術の大学に行きたいなって思ってる」
そういや小さい頃から絵が上手くて、中学生の時も美術部に入ってたっけ。
「へぇ〜頑張れ!」
「それ本当に思ってる?」
「思ってるよ」
ごめん…頑張れって思ったのは本当だけど、心のどこかてそんなのなれっこないって思っちゃった。
自分って本当に最低だ。
◆
HRが終わると、足早に帰路に着く。しかし、その足は行きよりもずっと重い。
「はあ…」
思わずため息が出てしまう。今のところ進学ということしか決まってない。それどころか進学するかどうかもあやふやだ。
「またため息か?」
「うわっ!?」
急に声をかけられ、思わずビクッとしてしまう。
「えっ?未来?今日部活は?」
「今日は先生が急に大事な会議入っちゃって休みになったって担任の先生に聞いて、お前と一緒に帰ろうと思ったらもういなくてそれで追いかけてきたってわけ」
「ごめん…ありがとう!」
「進路のことで悩んでたのか?」
「まあ…うん」
「ゆっくり決めたらいいじゃん?誰も急かす人なんていないんだし」
「そう出来ればいいんだけどね…」
「じゃあ俺こっちだから。また明日!あんまり悩むなよ〜」
「うん…じゃあね!」
◆
「ゆっくりね…」
思わずそうつぶやいてしまった。なりたいものが見つからない。だからといっていつまでもこうやってのほほんと生きてるわけにもいかない。
そう本当は内心焦っている。
もしかしたらクラスメイトの中てちゃんと決まっていないのは自分だけなのかもしれない。
まただ。またこんな考えしか浮かんでこない。
「とりあえず早く家に帰ろう…」
◆
「ただいま…」
そう言ってもおかえりの言葉は帰ってこない。
僕の両親は仕事が忙しく、両親共に帰ってくるのは夜遅く。
そのため1人でご飯を食べるなんて日常茶飯事だ。
「とりあえず冷蔵庫にあるもので何か食べよう、少し早いけど」
今日はもう何か作ろうという気は起こらなかった。
冷蔵庫にあった冷凍食品を手に取り、レンジで温める。パパッと食事と片付けを済ませ、自分の部屋に入る。
つまらなそうに見える僕にも楽しいと思えることがある。
それはSNSにあげられているイラストや小説を見ること。
他の人が書く小説やイラストを見ている時だけは楽しいと思えていた。
ただ、楽しいと思う反面自分にはこんなこと出来ないと劣等感を覚えてしまう時もあったが、それでも見ている楽しさの方が上回っていた。
◆
しばらくして、お風呂を済ました僕は、嫌々ながらも進路希望調査の紙を開く。
「う~ん…考えてもさっぱり分からない…」
未来にも相談しようかと考えたが、所詮決めるのは自分。相手の意見を聞いても考え方がそもそも違うのだから、未来には申し訳ないが、余計に決められなくなりそうだった。
「ダメだ…寝よう」
僕は、紙を裏返し、そのまま寝てしまった。
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