「お兄ちゃん、いつまでこたつに入っているの!」
ある年の暮れ、とある家では兄弟でこたつの取り合っていた。両親は除夜の鐘のために外出中とあって、とりわけ独占を狙う戦いは激しい。
「うるせぇな、こういうのは先着順だっての。」
しかし中学生と小学生では力の差が歴然。大人げない兄の勝利が常であった。
「いつもそう言って、出てきたことがないじゃん!」
例年通りの悔し涙を堪える弟。
「おーい、みかん取ってくれ。」
その姿も兄が出たがらない理由の一つである。彼にとっては、いつも成績優秀な弟ばかり贔屓される鬱憤を晴らす絶好の機会なのだ。
「そんなに好きなら、お兄ちゃんがこたつになればいいんだ!」
こんなに子供らしい弟も珍しい。ぷんすかと背中を向けると、そそくさとリビングを出ていってしまった。
「ハハハ、「こたつになれば」ねぇ。なれるもんならなりたいよな、あったかいし。」
あいつも面白いことをいうもんだ。そんなことを呑気に思いつつ、上のみかんを取るために起き上がろうとしたその時。
『年の瀬、行く年~!』
番組のコーナーだろうか、テレビから女子アナウンサーの声が大音量で響き渡った。さっきまで電源は切られていたはずなのに。いつの間に動いたのだろうか。
「まったく、うるさいっつうの。」
ただでさえゲーム機のモニターでしかないのに、年末は似たり寄ったりの特番ばかり。さっさと消して、みかんと一緒に動画を見よう。そう思っていたのだが...。
「あれっ...?」
体が動かない。正確に言えば、こたつの内側からコンクリートで固められたように重くなっている。
「金縛りか?」
それにしては痛みも痺れも感じない。その上いくら力を込めても、中でモゾモゾとした感覚があるだけだ。個体のようで、それでいて液体のような感覚もある。謎の物体の感覚に、彼はこたつの中にも関わらず、ゾワッと冷たいものを感じる。
「クソッ、何だよこれっ...!何がっ...。」
あまりの事態に、さっきまでの威勢も忘れて弟を呼ぼうとする兄。
『今年も一年の締めくくり、気持ちよく来年を迎えましょう!』
しかしスマホの画面には、テレビと全く同じ番組が流れている。
「そ、そんな...。」
画面をタップしても、電源ボタンを押しても、全く反応がない。
「うぐっ!?」
そんなことをしている内にも、やがて謎の物質がこみ上げる感覚が走り...。
ガチッ!
首から下、両腕さえも、彼の体は全く動かなくなってしまった。
『さて、来年の運勢はどうなっていますか?』
そんな状況でも、目の前の番組は続いている。改めて見ると、画面からして異質な番組であった。七色に変化するサイケデリックな背景の中に立つアナウンサーは、確かにスーツの似合うスレンダーな女性ではあるが...。
『今年のような快進撃となるのでしょうか?』
その肌は雪のように白く、髪はピンク色で、呼吸に合わせて蛍光色に光輝いている。その姿は、彼女が全く未知の生命体であることを嫌でも理解させる。
『そうですねぇ、今年は大吉でしたが、来年は...。』
そのアナウンサーの横に立つ、占い師で有ろう女性も異質そのものだ。Gカップはあるであろう爆乳に、折れそうなほど細いウエスト、そして胸と同じくムチムチとしたお尻...。
『小吉ですね。来年は中々に骨が折れそうですよ。』
それを惜しみなく見せつけるピチピチのボディスーツは、髪と同じオレンジ色。こちらもその呼吸に合わせて、蛍光色に輝いていた。
『といいますと?』
ため息をつくように呟いた占い師に対して、アナウンサーはそう問いかける。
『今回の2025α世界線は、非常に多くの人口と高い兵器力を有しています。通常の手段での攻略は容易ではありません。』
『ではどうすればよいのでしょうか?』
『各世界線にはそれぞれのズレを修正しようとする空間の歪み、コンタクトスポットという現象が発生します。我々はそれを利用し、別世界線の一部を同化させる技術を開発いたしました。つまり、2025αの一部を我々の力として取り込むことが出来るのです!』
『なるほど、それは素晴らしい技術ですね!』
『そして2025αのコンタクトスポットは365セクター、あの世界では「イチガツツイタチ」と呼ぶそうですが...それはまさに、今なのです!』
『つまり、これからその瞬間を見せていただけるというわけですね!?』
『その通りでございます!皆さんも歴史的瞬間を目撃して、運勢を大吉に!』
「何だ、これ...。」
その内容は、兄の背筋を凍らせるには十分だった。
「宇宙、人...?」
あまりの異質さに恐怖心が湧き上がるが、動かない体はただ画面を見つめ続けることしか出来ない。しかし、彼には嫌な予感があった。
「宇宙人が攻めて来るのか!?」
この体の異変、そして流れ続ける映像。そして...。
『~世界線の一部を同化させる技術を開発いたしました~』
この言葉の意味するところは...!
「嫌だぁぁぁぁ!!!!!」
彼は恐怖に怯え、何とか抜け出そうと必死に力を込める。
モゾッ、モゾモゾッ。
「ヒィッ!?」
その甲斐もなく、突然足元から何かが這いずるような感触が走る。
ゾッ...!
ズゾゾ!!
ゾゾゾゾ!!!
硬い石がやわらかくなり、ヌメヌメとした液体の感触が次第に大きくなり...とうとう全身を蝕むように蠢き始めた。 まるで自身を飲み込み、消化しようとするスライムのように。
「うわぁ!!!」
身体を引き摺られる感覚に、パニック状態になる兄。脱出しようと必死にもがくが、
「ひゃっ!?ちょっ、やめっ...」
それどころかモゾモゾと触れられるむず痒さ、ヒンヤリとしたに力が抜け、変な声を出してしまう。
「やめろっ、くそっ、いやだっ...!」
やがて 完全に力を失った彼の体は。
「あぁ...。」
力ない言葉を残して、こたつの中に飲み込まれてしまう。
ニュルン。
『そろそろ、変化が始まりますよ、皆さん注目!』
残されたのは流れ続けるテレビと、不気味なほどに静まり返ったコタツだけだった...。
[newpage]「ここはどこだ...?」
気が付いた時には、男は全てが闇に包まれた世界にいた。いくら見回しても、光の一筋も見当たらない。 しかもスライムのような物体がモゾモゾと蠢き続け、体中を包まれて力が入らない。まるで宙に浮いているようだ。
「だれか!助けてくれ!」
必死に呼びかけるが、返答はない。代わりに空間に響いたのは。
『コレヨリ、ドウカヲカイシイタシマス』
という無機質な、女性の声だけだった。そして次の瞬間。
パァン!
スライムに体が引っ張られたかと思うと、シャツやパンツ、靴下まで全ての衣服がビリビリに破られ、丸裸にされてしまった。
「うわっ、何だ!?」
反射的に体を隠そうとするが、
ヌチュッ。
腕はスライムの動きに制止させられ、思うように動かせない。
「ううぅ...。」
恥ずかしさで、思わず顔を赤めたその時。
「ひゃっ!?」
突然スライムの動きが活発になり、頭、肩、腰...次々とマッサージするように、体中を揉み始めた。
「いやっ、やめっ...。」
思わず女の子のような声を出してしまう彼。
「うぅん!」
最初はくすぐったいような反応だったのが、
「あっ...ふあぁ...」
次第にそのトーンがやわらかく、艶やかになっていき...。
「あぁ~ん♡」
やがてハッキリと嬌声に変わった。それもそのはず、スライムは彼の胸を、股を、脇を...体中の敏感な所を、的確に、そして優しく撫でるのだ。それは一つの快楽の波となって、彼の体を責め立てる。
「いやん♡あぁ...俺の声、どうなって...?」
その中でも、彼はハッキリと自分の異変に気が付いていた。
「うふぅん...♡」
スライムに触れたその喉は、
「あぁん♡」
どんどんと高くなり、
「ふぁああぁ~ん♡」
アイドルも羨むようなソプラノボイスに変化していく。
「いやん、だめぇ♡」
その恥ずかしがる声に合わせるように、股は大根のように白く細くなった太ももをすり合わせ、自然と触れ合う、モジモジとした内股へと変わっていく。生き物とは思えないほどに白く美しく、それでいてしっとりモチモチした肌の感触が、心を大きく惑わせる。
「うぅう...♡」
何とか自分を保とうと、甘い声を抑える彼の頭にムズムズとした感触が走る。思わず頭を抑えると...。
スルスルスル...!
まるでそれをあざ笑うかのように、髪の毛が手を押しのけて、グングンと伸びていく。
「うわっ!?」
それは顔を覆うだけでは止まらず、肩、腰、更に更に伸びていき...膝の間接に触れるほどのロングヘアーにまで成長する。
ブゥン...♡
視界を覆う真っ赤な存在が、鼓動のたびに蛍光色に光る。そう、あのニュースの女性のように...!?
「まさか...んぁあっ♡はぁんっ♡」
慌てて髪をかき分けようとして、その一本一本に入る性感帯に喘いでしまう。それでも何とか視界を開き、体の視線を下ろすと、
「いやっ、そんな...俺の...ヤダ、アタシの体が...あんっ♡」
そこにあったのは、既に見慣れた自分の体ではなかった。
Mカップはあるだろうか、白磁のような肌に広がる、規格外の大きさの魔乳。
その下で、ギュッと抱きしめれば折れそうなほど、ほっそりと絞り込まれたウエスト。
まるでガゼルのように軽やかに、それでいてプルンと震えるヒップからのラインが美しい下半身。
「そんな...こんなの...。」
ルビーのように紅い瞳で見つめる体は、まさに地球のものとは思えないほど、人形のように美しい女性の肉体美だった。
「こんなの...♡」
そんな体をまじまじと見つめると、人ではなくなってしまった絶望と同時に、甘美な感覚が体中を包み込む。
「こんなの、俺の...アタシの体じゃないみたい♡」
美しい体に歓喜するアタシと、それを否定する心...二つの感情が頭を支配するが、もはや陥落は目の前であった。そしてトドメをさすように...。
「あぁっ、そんなっ♡」
最後に残っていた股間の...彼の「男」が小さくなっていく。
「やめてぇぇぇぇ!!!」
もはや彼には、それが消えていく「俺」の叫びか、それとも未知の快楽に興奮する「アタシ」の喘ぎなのかさえわからない。
シュルシュルシュル...。
まるで溶けていくように小さくなる「男」を手の平に僅かに感じて...。
「ああぁぁぁん♡」
その直後にはスッキリとした、女性の「溝」からの快楽を感じるだけだった。
「だめっ、このままじゃアタシ、本当に変えられちゃうぅぅ♡」
もう体だけではない。「彼」としての心の残滓さえ、「彼女」からは自然に女性の言葉が出て来る。
『2025αヲセイアツセヨ。2025αヲセイアツセヨ。』
その残滓すらも削り取るように、彼女の頭の中はいつまでも「マザー」からの命令が発せられるのだった。
[newpage]「お兄ちゃん、どうしたの?何か大きな音がしたけど...。」
兄に起こった異変に気が付かないまま、二階の部屋から弟が降りて来たのは数秒後のことだった。
「あれ?」
しかし、もぬけの殻のリビングにはコタツがあるだけ。
『そろそろ、宣戦布告の準備をしましょうか。』
そしてテレビからはSF映画のような二人組の、怪しげ中継が流れていた。
「まったく、全部つけっぱなしじゃん!ホントにこういう所ズボラなんだから...。」
それでも暖かいコタツにすぐ入れるのはありがたい。弟は早速入ろうとして...。
「ひっ...!?」
その布団をめくった瞬間、そこにあったのは考え得る限り最も恐ろしいもの光景だった。コタツの中を満たしている、スライムのような半透明の物質。そしてその中には。
『時は来た...。』
『この世界線も、我々の手に...。』
『あぁ、マザー様ぁ…♡』
複数人の女性の声と共に、いくつもの目がこちらを見つめていた。そして...。
ゴーン!
除夜の鐘が鳴ると同時に、全ては始まった。
『Happy New Year!2025αの皆さん!これより我々は宣戦を布告します。素晴らしい未来のために、みなさんも我々と同化しましょう♡』
テレビのアナウンサーがそう宣言すると。
『よしっ、付いてこい!』 蛇の瞳を持つ者。
『あら良い世界じゃない。』 犬の耳を持つ者。
『これからが楽しみだわ…♡』 馬の髪を持つ者。
実に様々な姿をした白い肌の美女戦士たちが飛び出して来た。
パァリン!ガシャン!!ドドドド!!!
100人以上だろうか、どう見てもコタツの中に入りきらないほどの女戦士たちは次から次へとガラスを割り、壁を破り、家を荒して襲撃を始める。
「うわあぁぁ!!!」
弟は腰を抜かしながらも、何とか逃げようとするも...。
ガチッ。
『あららぁ?アタシが逃がすと思った?』
その足はコタツから伸びて来たスライムに止められた。
「嫌だッ、僕はアンタなんて知らないっ!」
何とか引き剥がそうと、暴れながら叫んだその時。
「ひどい、自分のお兄ちゃんに向かって...。」
明らかに自分に対して返答がやってくる。
「お兄ちゃん?」
「でもいいわ、すぐにわかるはずだから...♡」
そしてコタツの机が盛り上がり、山のように膨らみ始めた。
「なっ、なに、何なの!?」
黄色い布の山は天井にぶつかりそうな程に盛り上がると、その頂点からモゾモゾとサナギを破るように蠢き始める。そして...
ビリィ!
「…ぷはぁ。ああ気持ちいい♡同化するって何て気持ちいの...♡♡♡」
布団を突き破って出てきたのはお姉さん、といった年齢の女性だった。肌は色白で髪は布団と同じような色の金髪。学校にいたら男子全員が一目ぼれするような美人だが...。
「うわぁ!」
その身長は2メートルをゆうに超え、机の板はつば広帽子に、コタツの布団はお姫様のように優雅な、ワンピース型のドレスへと変化している。耳はエルフのように、または妖怪のように尖った三角形。
ブゥン、ブウゥン...。
そして髪は、同じぐらい黄色い瞳は、呼吸に連動して蛍光色に光り、僅かなハム音を響かせる。
「あっ、あっ...!!!」
美しいながらもあまりに「化け物」としか言いようのないその姿。色合いこそ違えど、学校で噂になっている「八尺様」を思い起こさせる女性に、
「た、食べないでください!!!」
弟は泣きながら懇願する。足はガクガクと震え、スライムの触手を振り払う気力すら残っていない。
「いやだなぁ、こんなかわいい子を殺すわけがないでしょう?」
しかし、怪物から帰って来た言葉は予想とは全く違う優しい声。
「それに...。」
そのまま触手に引っ張られ、向かい合って立たされると、
「あなたにはやってもらうべきことがあるもの...。」
女性はフフフと美しい、しかし異質な笑みを浮かべた。
「あ、あなたは八尺様じゃないの?じゃあ一体…?」
そこまで言った時、弟の脳裏には突然嫌な想像が走った。
少しつりあがった目尻、
その右下にあるホクロ、
高くて形のよい鼻...。
姿や顔つきは大きく変わってしまっているが、そこには確かに面影があったからだ。
「お、お兄ちゃん、なの...?」
まさかと思いつつ震えが残る声で尋ねると、彼女は恍惚とした表情を崩さずに、しかし淡々と語り始めた。
「そう。でも今は1984γ世界線と同期した「我々」のメインポータルの88号。この2025α世界線を征服するという、偉大な役目を担っているの...それはあなたも...♡」
88号は大きな体をこちらに倒し、まじまじと顔をみつめる。
「でもまだ足りない...素晴らしい世界に、あなたを同期させてあげる...♡♡♡」
その言葉に、弟の顔は真っ青になる。本当に目の前の女性が兄なのだとしたら、自分の運命もまた...!
「いや...いやだ...!嫌だ!!!」
恐怖に怯え暴れても、それは目の前の兄と同じ。
「アタシも元々はそうだったわ...でも、本当に素晴らしいことなの...♡♡♡」
そしてその兄自身が、弟を終わらせるべく、
ぐちゅり♡
触手を耳に、口に、穴という穴にねじ込んだ。
「んんっ!?」
その瞬間、弟はまるで操られたかのように動きを止める。
「うふぅん...んんん~~~♡♡♡」
そしてくぐもった甘い声を発すると、その身体は一瞬で変わってしまった。
ムチムチムチ♡
88号には負けるものの、それでもFカップまで膨らみ、むせかえるような甘い匂いを発する胸。
ムチムチムチ♡♡
その身体は戦士としての力強い筋肉をたたえながら、ハリのある尻など、脂肪の柔らかさも絶妙に持ち合わせる。男と女の魅力を両立した魅惑的の身体はグングン成長し、180センチはあるであろう巨体へと「進化」していく。
キュッ♡♡♡
最後に股間の「男」が「溝」に変わると。
ブゥン...!
完全に漂白された長髪が、呼吸と共に緑に光り始めた。
「...こんなものかしら♡」
時間にして30秒にも満たない、まさに一瞬の出来事。
「あぁ、我々の科学力が恐ろしい♡」
僅かに残った「兄」の残滓がそういわせるのか、それでいてマザーの科学力をたたえるように、88号は目の前の「美少女」を愛おしく見つめる。
「さぁ、目覚めなさい!」
そして静かに触手を離すと、
「...あぁ...気持ちいい...これがマザー様の...♡♡♡」
美少女は蛇のように切れた目を開き、首まで届く長い舌でなめずる。その恍惚とした表情は、純真な本来の「弟」からは考えられないものだった。
「しっかりと同化できているようね。答えなさい、あなたは何者?」
そして88号がそう質問すると、
「はいっ!私は1984γ生命体戦闘型の1個体です。2025α世界線征服のため、現地の生命体『ヒト』を同化し、制作されました。」
まるでスイッチを切り替えたかのように、淡々とそう告げる。これもまた、本来の「弟」ではありえないことだ。
「アタシと、あなたの関係は?」
しかし、それは「我々」にとっては当たり前の事。
「メインポータル88号は私と2025αとを接続する存在です。」
いまの「弟」にとってはマザーが全てであり、それ以外の存在は「敵」か「同胞」に過ぎない。
「完璧ね、流石アタシが同期した子...♡」
それは「兄」も同じ。彼女の感じる愛おしさは、自分の増やした全ての「同胞」に共通する慈愛以上のものは存在しない。
「では征服に参ります。全てはマザー様のために♡」
美少女は兄弟...いや同胞にそう告げ、任務に向かうために家を出る。そこに戻ることは二度とないだろう。
「あぁ...気持ちいい...♡全てはマザー様のために♡♡♡」
ポータルもまた美少女への興味を失ったように、ドレスの下から新たな戦闘兵をスポーンし続けるのであった。
[newpage]「うわあああ!!!」
「逃げろ!!!」
「何だ、あの放送は!?」
その頃、外の世界もまた、地獄絵図となっていた。
『大人しく同化すれば、手荒なことはしませんよ♡』
夜空には超巨大プロジェクターが宣戦布告放送を映し、
『へぇ、お前、戦闘兵として良い素質あるじゃないか。』
空が割れた亀裂からは戦闘兵が次々と投下され、
「子どもだけは!子どもは「我々」のもの...♡』
「誰か助けて!!!あっ、マザー様ぁ...♡』
人々は次々と同化していく。
「ど、どうしましょうあなた!?」
除夜の鐘を聞きに来ていたとある夫妻も、それに巻き込まれていた。
「と、とにかく帰ろう!あいつらがあぶないっ...!?」
それでも、何とか家を目指していた夫だったが、
ベチャッ。
「んぐっ!?」
空から降って来たスライム状の物体に飲み込まれ、
『マザー様、あぁマザー様ぁ...♡』
その数秒後には、全身に虎の毛が生えたオレンジ髪の戦闘兵に変わっていた。
「嫌、イヤァァァ!!!」
それを見て錯乱し、逃げ惑うしかない女性。
ドスン!
「キャア!?」
前を見ずに激突した戦闘兵が振り返ると、
『これはこれは、失礼なヒトだ。』
それは蛇の目とした持つ、白髪の美少女であった。
『そんなヒトには、我々に同化してもらおうか。』
淡々と告げながら迫って来るその姿に、
「あっ、あぁっ...。」
女性は足をガクガクと震わせ、しかし何故か悲しい気持ちに包まれていた。
『発射。』
もしかしたら「母」は気づいていたのかもしれない。
バシュン!!!
目の前のスライム銃を撃つ美少女の顔に、自分の「子ども」の面影が残っていたことを。
「んんん!!!」
しかしそんな事実に、最早微塵も価値はない。何故なら...。
『我々は、マザー様のために♡』
彼女は牛のように大きな胸にビキニ状の毛が生やした、一体の美女戦闘兵でしかないのだから。
ゴーン、ゴーン...!!!
周囲の異変にも関わらず、除夜の鐘は鳴り続ける。
ゴーン、ゴーン...!!!
いや、それもまた異変と言うべきか。
『あぁ...鐘を鳴らすの、気持ちいぃ...♡』
それは金属の体で出来た大きな胸を打ち付ける、メインポータル108号なのだから。
ゴーン、ゴーン...!!!
鐘が鳴る度、空は割れ、戦闘兵が降下する。
ゴーン、ゴーン...!!!
その音色は終焉か、祝福か...もはや誰にもわからない。
ゴーン、ゴーン...!!!
ゴーン、ゴーン...!!
ゴーン、ゴーン...!
『『『今年も、良い1年でありますように♡♡♡』』』