悪酔い

  「あーあーあーー!!やってらンねえよこんな仕事ォ!」

  街明かりが行き交う人々を照らすトライヨラで、アンジェは人目を気にせず叫ぶ。

  「オルはいねェし、模擬戦相手は弱くてつまんねぇし、酒すら飲めねェ!!」

  アンジェはトライヨラ側からの依頼で、連日衛兵たちに戦闘術を教えているのであった。

  「初日で酔っ払ってたくらいで文句言いやがって…クソがッ!」

  いつもの猫被りが嘘のように喚き散らすアンジェ。

  「チッ。さっさと教え切って、こんなところおさらばしてやる!」

  そう言いながらアンジェは客室の扉をバァン!と乱暴に開ける。

  「娼夫でも呼んでやろ……う……か……?」

  「んにゃ…?やっろ帰ってきらぁ…!」

  そこには、家で帰りを持っているはずの人がいた。そのそばには、ジュースと間違えたのか酒瓶が転がっている。

  「お…オル!?なんでいるんだよ!というかオレの酒飲んだろ!」

  「おいひかったよぉ…?これはおれい〜」

  ひょこひょこと歩いてくるオル。

  「お、おいまだ準備が…!」

  押し倒されると思い身構えると、ぽふりという音ともに顔が押し付けられていた。

  「んへへー、ごしごしー」

  その後もオルは全身に匂いをつけんとゴシゴシと擦り付ける。

  「おいオル、どうしたんだよ!」

  その声に応えるようにオルはアンジェに口付けする。

  「ここがまだだったねぇ〜、んふふ。」

  アンジェは目をまん丸にしたあと、オルに囁く。

  「おい、オル。お前酔ってねえだろ。」

  「はにゃ?」

  「全ッ然、酒の味も匂いもしねぇぞ。」

  その言葉を聞いたオルはへにゃりと尻尾を垂らす。

  「あーあ、バレちゃった。もう少しやりたかったのにな〜。」

  「いいじゃねえか、そのまま好きなだけやれば。」

  「う〜ん…それはなんかちがうんだよねぇ〜」

  「そういうもんなのか…?いや…別に…そのフリを辞めて欲しいとは……言ってねえけどよ」

  と顔を赤らめるアンジェ。

  「えへへー、じゃあ遠慮なく〜。」

  ぐわしとアンジェを包み込むオル。すんでのところで、ストップをかけるアンジェ。

  「待った。せめて風呂に入れさせてくれ。疲れてねえわけではねえからさ。」

  「わかった〜。じゃ、僕も入っちゃおうかな〜!」

  「風呂場狭いから気をつけろよ?」

  「久しぶりに一緒だあ〜!」

  「…って、聞いちゃいねえ。」

  翌日、2人分の匂いがする教官に気付がなかったものはいなかった。

  しかし、そのことについて聞いてもまともに答えてはくれなかったという。