「うっ……くっ……」
ダンジョンの中、全裸になって自分を慰める犬獣人が一人。
彼は罠に囚われてしまい、ここで絶頂を繰り返している。
「うっ、ううっ……出る…!」
ビュルッ……
彼の掌の肉球に包まれた肉棒から、白濁液が勢いよく飛び出す。だが、それは目の前にある容器を満たすには程遠い量であった。
悪趣味な罠だ――。彼はそう思った。この部屋の罠はシンプルなもので、全裸にされて閉じ込められたあとに部屋に用意された容器を全て自身の精液や愛液といった、劣情を具現化したもので満たさなければならないという制約が課されるのだ。 それなのに、部屋にはその感情を呼び起こすものが何も無い。最悪だ。
「クソッ……なんでこんな目に…ん?」
プシューッ……という音と共に、部屋が煙で満たされていく。
本能的に危機感を覚えたのか、彼は煙を避けるようにして部屋の隅へと移動するが、それも無駄なことに変わりはなく、やがて部屋全体が煙につつまれた。
匂いは何も感じないが、少し体が重い――。早く抜け出そうと思い肉棒に手をかけると、柔らかいはずの肉球の感覚とは正反対のものが伝わってきた。
その違和感の正体を見ようと、掌を見つめた彼は目を見開き、狼狽え始める。
「な、なんだよこれ…!」
掌は灰色に変色していた。その灰色は、彼の体を侵食するかのように、全体に広がっていき、自由を奪っていく……。
「あ、足が…!動けない…」
ピキッ……
彼の耳はその小さな音を逃さなかった。足元でも同じ変化が起こっているのだろうかと思案をめぐらせる。それと同時に、体の奥底から湧き上がる感情が大きくなり、肉棒も完全に勃起したまま、彼の心臓の鼓動と同期するようにピクピクと震えていた。
「これしかないか…」
逸る思考を捨てて、彼はケモノへと化してこの状況を打開することにした。
「あっ…ぐぁ……」
喘ぎ声が部屋中に響き渡る。彼の体はほぼ全て硬い灰色に覆われており、残すところは肉棒とそれを握り、欲望を満たす腕、そして顔だけだった。
「イク……!」
ドピュッビュルルルッ……
ピキピキッ…
白濁液が飛び散ると同時に、肉棒も灰色に包まれてしまう。容器は満たされる気配もなく、彼はほぼ石像同然の姿をしていた。
石になった棒を握りしめ、絶頂を求めて必死に何度も上下に擦る。
「ガァッ…アアッ」
もはや喘ぎ声ではない唸り声を上げながら、彼は次の絶頂を迎えようとしていた。
助からないとわかっていても、これで条件を達成すれば、体も元に戻って脱出出来る。そんな僅かな希望に縋りつくくらいしか出来ないのだ。
「アッ……!」
強烈なものが来る。直感がそう告げた。それもそのはず、石になった肉棒はこれまでの比にはならないほどの快楽を彼に与えていた。
それは石になった体の中で反響し、そこで生まれた微かな衝撃が跳弾のように反射してもう一度股間へと戻り、大量に蓄積されたものが発散されることを意味していた。
「グアアアッアアアアアアアアア………」
ドプッビュルッ………
ビキビキビキビキッカチカチカチ………
大量の白濁液が容器に向かって飛び散り、空白を全て埋めていった。
ガタン、と大きな音が響いたあと、部屋の扉が開く。それと同時に、煙はその空間へと吸い込まれるように流れていき、視界がクリアになる。
彼は動く気配を見せない。それもそのはず。爽やかな表情を浮かべながら石の棒を握りしめたまま動かない彼の体は完全に石へと変化し、この場所から動くことは二度とかなわないのだ。この先にあるお宝を手に入れることも、家に帰ることも出来ない。ただの石像と化した者は、その場で佇むことしか出来ないのだ。
「うえ……なんだこれ」
ダンジョンの中。全裸になった狐獣人が、訝しげな顔で石像を見つめていた。
自らを慰める獣人の石像――それが、かつてこの部屋で見えない敵と闘った者だと言うことを、彼は知る由もない。
「ちぇー。なんだって装備剥がされないといけないのさ。せっかくお金貯めて買ったのにな〜」
不満を零しながら部屋を歩いて回る彼は、一際目を引く石像を見てなお、この部屋の脱出条件を真に受けていなかった。あまりにもバカバカしい条件だったからだ。
だがそれも、煙が部屋に流れ込んできた事で本当だと後悔することになる。彼の場合は、石像が条件を達成するお助けアイテムだということにも気づき、容器を満たそうと励むものの、結局は失敗に終わるのだ。
ピキピキ………
乾いた音が響き、全裸の獣人の石像が2つになった。
彼らはもう、元に戻ることは無いだろう。石像と化した冒険者たちは、この部屋の脱出をサポートするアイテムとして、数を増やしていく。