12/24
クリスマスイブの朝。目を覚ますと眼前ではまだ深君がすやすや寝ていた。
その深君の右手にはしっかりと俺の右手が握られていた。寝顔は少し幼さを感じる愛らしい寝顔だ。
外を見れば雪が降っている。俺は深君から手を離して窓の方に寄って行った。
外を見ればしっかりと積もっていて一面銀世界だ。寒いし温まりたいからココアでも飲もうかな...?
博行「...趣を感じるね。」
この部屋の中に起きている人は俺しかいないのは分かっていたけどなんとなくそう呟いた。
天木「おはよう、西村君。」
博行「おはようございます。」
天木「深君はまだ寝てるのかな?」
博行「まだ寝てます。」
天木「珍しいね、深君がこれだけ寝るだなんて」
博行「まぁ俺が来るまでバス停で待ってたみたいですし...」
天木「なるほどね。ココアでも飲むかい?」
博行「お願いします。」
天木さんがココアを入れてくれるらしいので俺は椅子に座って待機する。
今日はクリスマスイブ。クリスマスパーティでもするのかな...あとは......みんなにも挨拶しに行かなきゃ。昨日できてないし...
天木「はい。」
博行「ありがとうございます。」
俺は天木さんに手渡されたココアを啜る。やっぱり美味しい
何時くらいに出ようかな...今は9時か。まだ余裕はあるな。寒いし...お昼前に出るのでいいかなぁ...そのころには深君も起きてるだろうし。
いつも通りゆった~りと時間を過ごす。新年はなにをしようか、とか来年の抱負とか。
深「ふあぁ...」
深君となにをしようかと考えていたところでバカでかい欠伸をかましながら深君がこっちに向かってきた。
博行「ずいぶんと大きい欠伸だね」
深「僕のことをこんなに疲れさせたのはどこの誰だっけ?」
博行「うっ...」
天木「でも西村君のこと来るまで待つって言ってたのは深君でしょ?」
深「う...だって......少しでも長く一緒に居たいじゃん...」
その深君の文句の垂れ方は天木さんに俺らの関係を話したことがあるような口ぶりで。
多分このときの俺は履修していないアニメの話をされたときのオタクみたいな表情をしていたと思う。
天木「ふふ、西村君が居ない間、たまになぜか拗ねてたもんね」
深「言わないでよ」
......天木さんの口から予想外のひとこと。
聞いての感想だけどかわいいとしか言いようがない。俺が居なくて拗ねるって......そんなの甘やかしたくなるに決まってるじゃん
博行「へぇ?」
深「......」
やっばいやりすぎたかな...深君がこの上ないくらいむっす~ってなってる...けどかわいい。怒ってる深君もかわいい。親バカならぬ彼氏バカ的なもの拗らせてそうだけど事実だもの、仕方ないじゃない。
そんなこんなで深君と挨拶を兼ねてクリスマスパーティの買い出しに来た。深君は俺の横をぴったりくっついて歩いている。その頬はすこし赤く染まっていた。まぁそれが寒いからなのか照れなのか、その両方なのかはわからないけども。
峻「あ!博行さん~!」
博行「お、峻君。元気にしてた?」
峻「はい~元気もりもりです~」
いつも通り元気そうで何より。言わずともその尻尾がちぎれんばかりに振られているので元気なのはよくわかる。
挨拶もほどほどにしてスーパーに向かう。なにを買うかは天木さんにメモをもらってるので問題ない。とは言っても内容は『二人が食べたいもの』なもんだからメモの存在は無いに等しいのだけれど。
深「食べたいもの...博行が選んでいいよ。」
その一言で『二人が食べたいもの』から『俺が食べたいもの』になっちゃった...
博行「そうは言われてもねぇ...」
洸哉「んなのチキン一択だろ」
博行「ぴゃっ!?」
洸哉「んな驚かなくてもいいじゃねぇか...」
後から洸哉がにゅっと顔を出した。心臓飛び出るからやめてね?それ。
洸哉「俺らもバス停で待ってたのによぉ、遅れやがって」
洸哉が不満そうに口を尖がらせて俺に文句をねちねちと言い放つ。
うん、それはほんとに申し訳ない。
博行「ごめんて。こっちもバタバタしてたし...」
洸哉「ちぇ、ならしゃあねぇか。」
『じゃあな』と言って洸哉は分かれて普通に帰っていった。
深「声出るかと思った...」
博行「一応驚いてはいたんだ...」
深「あれで驚かない方がおかしい」
まぁ正論ではあるな......
そこからは深君と談笑しつつ鼻腔を劈く北風を体全体で感じながら目的のスーパーに到着した。店内に入った瞬間暖かすぎて感動した。
博行「あったけぇ...」
深「効きすぎなくらいだけどね、これ」
博行「まぁたしかに」
限りなく夏に近い春といっても過言ではないくらい暖かい。というか暑い。一枚脱ぐか...
博行「で、なに買う?」
深「さっき博行が選んでいいっていっただろう?博行が選んだものならなんでもいい、これが僕が出した結論だよ。」
博行「とはいってもねぇ...」
これぞクリスマス!って感じの食べ物なんてチキンくらいしか...あ、サーモンもいいな。ローストビーフも...
深「普通にぽんぽん放り込んでるじゃないか」
博行「いや...意外と見つかるから...」
深「...あ、ケーキ...」
ふと深君がケーキを見ながらつぶやいたので『ケーキこれでいい?』と聞いた。
深「...うん。」
なんやかんや深君も食べたいものがあったらしいのでそれも放り込みながら着々と買い物を終わらせた。
深「...想像以上に買っちゃった」
博行「まぁいいじゃん。どうせ結構な人数呼ぶんだし」
深「...?」
そういったら不思議そうな顔を下深君に見つめられた。
う~ん...
博行「...二人きりが良かった?」
こう問うと深君がぴくっとなったのでどうやら図星らしい。そうならそうと言えばいいのに...肝心なとこで黙ってるね、この子。
博行「も~それならそうと言ってくれればいいのに~」
深「むぅ...」
顔を赤くして少し顔をそむける深君。それがとても可愛らしくて抱きしめたくなる...けどそれ以前に俺の両手には買い物袋が2つずつ。
これほど買い物袋に恨みを抱いたことはない。
天木「おかえり。買い物デートはお気に召したかな?」
買い物デートて。ええ、満足しましたよとてもね!!!
ていうかやっぱ俺と深君の関係筒抜けだよなこれ...まぁいいけど。いずれバレるんだし。
とりあえず要冷蔵、冷凍のものはささっとしまい込んだ。
深「疲れた...」
博行「だね。 そういえばケーキだけど深君が作るんじゃないんだね。」
深「う...うん、ちょっと大変だから...」
なんか目泳いでる気がするけどまぁ気のせいかな。
どんな理由だろうと気にしない。深君のことだしね。
ていうかこっちも1個隠してることあるから人のこと言えないし。
天木「とりあえずお昼にしようか。」
深「うん。」
博行「は~い」
今日のお昼はグラタンらしい。
...ん?お昼からグラタン?晩御飯なイメージなんだけど...まぁいいか、晩御飯は既に買ってるわけだしね。
博行「おいひ...」
深「天木が作ってるからね。美味しいのはとうぜアチっ」
博行「冷まさないから...」
深「博行が大丈夫なら食べれるかなって...」
博行「なんで判断基準俺なのさ」
天木「それくらい好きなんだろうね。」
深「天木」
天木「でも事実でしょ?」
深「う...」
どうやら図星。わかりやすいにも程ってもんがあるでしょう。す~ぐにボロ出すんだから。クーデレの極みでしょ深君
深君の特徴的なあほ毛が波打ってる...ような気がした。
博行「やっぱ天木さんの料理は美味しいですね」
天木「ふふ、ありがとう。あと、気が早いかもしれないけど『お義兄さん』って呼んでくれてもいいんだよ。」
博行「んぐっ...」
深「ちょっと...」
深君も顔を赤らめている。黒猫と言うか赤猫な頻度で顔を赤くしてるような気がする。
なんやかんやでお昼を食べ終わったので暇だから、と庭の掃除を深君としている。この辺って枯葉が多いからねぇ...
深「多い...多すぎる...」
博行「ゴミ袋足りるかなこれ」
天木「足りなかったら纏めておくだけでいいよ。」
深「わかった。」
そもそもとして深君の家の敷地って広いんだよね。だから尚更木は多いし枯葉も多いしで大変なんだよね。これをひとりでこなす天木さんのすごさがよくわかる。
二時間経ってようやく片付いた。もちろんゴミ袋は足りなかったので飛ばないように纏めておいた。あとは天木さんがやってくれるらしいので時間もちょうどいいから深君が『ティータイムにしようか。』と俺を誘った。
深「はい。」
博行「ありがと。」
深君が差し出した紅茶を受け取って一口飲む。
うん、熱い。けど美味しい。
深「...あちっ」
博行「だから俺で判断するのやめなって」
深「あぅ...」
深君、もう2回舌火傷してるよ?今日だけで。
まぁそれが可愛いからいいんだけども。
それからしばらく深君が紅茶を飲む姿をによによしながら眺めていた。その深君もまた俺が紅茶を飲む姿を眺めていた。
...なんだ?この深淵を覗くとき深淵もまたこちらを覗いているのだ的ななにか...
深「...ふぅ......」
俺と違って深君は優雅に飲んでいる。そう、俺は優雅な飲み方なんてこれっぽっちも知らない。強いて言えばアニメの令嬢の飲み方くらいしか知らない。
深君の尻尾を見ると楽し気にゆらゆら揺れている。
隣に座ってる深君に少し体を寄せて密着させる。そしたら明らかすぎるくらいに深君がぴくっと跳ねた。
博行「ふふ、動揺してるね~」
深「...別に、してない。」
博行「そっか。でも明らかに体硬直してるよ?夏休みあれだけのことシておいてこんなので緊張しちゃうんだ?」
深「...夏休みにシたから緊張するんだってば」
博行「誘ってるわけじゃないんだけども」
深「わかってる」
博行「...シたいの?」
ためしにR-18指定ついちゃいそうな質問をしてみる。返答によっちゃR-18だよね。
深「...えと......その...ぅ...」
今まで以上の赤面をかましながら返答に困る深君。
ちなみに俺は深君がいいならぜひともヤっちゃいたい変態の極みみたいな思考である。
そんなことを考えているとティーカップを机に置いて深君がこっちを向く。その顔は緊張と羞恥心に苛まれているような顔だった。
深「...ん......その...うん...ひ、ひろゆきがいいなら...」
あら~R-18確定かな~?
あと涙浮かべてまで言わなくてもよかったのに...これ傍から見たら俺が深君泣かせちゃったみたいじゃん...
博行「ん。」
新たな誤解を招いたとしてもこっちのがマシなのでそれっぽく誤魔化すためにキスをする。
...なんで俺ってこんなロマンチックのカケラも無いキスしかできないんだ...ちょっと悲しいよ俺。
深君はそのままなにもせずに俺を受け入れている。
俺はそのまま深君を押し倒した。もちろんこの場で致すわけではない。だってリビングだもん。プライバシーのカケラもないじゃん。
深「んぅ...」
博行「もぉ...泣かれかけてびっくりしたんだからね?」
深「だって...すぐに返答できる質問じゃなかったじゃん」
博行「それはごめんて。あと返答がちょっと予想外だったかな。」
深「そうは言ったって...博行なら好きにしていいって言ったの僕だし...」
博行「...それもそうだね。」
深君がいつも通りの表情になって俺のことを抱きしめた。それに俺も抱き返す。
深「......あったかい」
博行「だね。」
しばらくそのまま抱き合っていた。まぁ俺の下半身が耐えられるはずもなく。
深「...まったく...君ってやつは......」
博行「深君だってそうじゃん」
深「う...」
博行「ふふ、ベッド行こうか。さすがにここじゃまずいしね。」
深「...うん。」
そんなこんなで深君とベッドに来た。まだ座ってる段階だけどもね。
深「...」
博行「...いい?」
深「...うん。」
深君から了承を得たところで深君をベッドに押し倒した。
深君の顔はもちろん赤くなってる。俺もだから人のこと言えないけどね。
深「ん...」
博行「ふふ、深君、顔赤いよ?」
深「...博行もでしょ...?」
博行「まぁそうだね。でも2回目なんだから無理もないんじゃない?」
深「ん、そうだね。」
そのあとシたことは言うまでもなくあ~んなことやこ~んなことである。せめてR-15に抑えないと、ね?
...自分と深君しか居ないのに誰に語りかけてんだ?俺...
深「...まだ慣れない...」
博行「慣れるもんでもないと思うけどね。」
深「...まぁそっか...博行が激しすぎるのも原因だと思うけどね?」
博行「自制効かなくなるから仕方ないじゃん。」
深「なんか...もっとこう...博行と長めに楽しみたい...?からその...善処してほしい」
赤面しながら目を逸らしてそう呟く深君。
うん、善処する。たくさん善処する。
深「すぅ...」
諸々の後処理をしたのち、深君が服も着ずにベッドで布団を被って寝てしまった。さすがにこの時期じゃ布団被ってても風邪引いちゃうよ?だから起きて。
深「ん...」
博行「ほら、さすがに服着て。今日着てたのは洗濯しちゃったし俺の部屋着適当に貸すから。」
深「...わかった」
深君が寝ぼけ眼で俺が手渡した部屋着をいそいそと着始めた。ちょっとサイズ大きかったかな...?まぁオーバーでも可愛いからそれでいいか。
...にしても着る人が変わるだけでこうも印象が変わるもんなんだな...
深「ひろゆきもねよ...? 多少生活リズム狂ってもなおせるだろうし...ね?」
袖が長くて出せてない手で俺の袖をつかんで猫なで声である種のお誘いをする深君。
断れないじゃん。
断れるわけないじゃん。
博行「ん、いーよ。」
深君に誘導されるがまま布団にインした。同時に深君との距離がゼロに等しくなった。
深「晩御飯のときに起きようね。」
博行「寝過ごしそう...」
深「なら天木に起こしてもらえばいいさ。」
博行「まぁそうだね...じゃあおやすみ。」
深「うん。おやすみ。」
しばらく俺は寝ずに深君の頭を撫でていた。撫でる度に深君の顔が安心感に包まれてるのか少し赤くなってるのが可愛い。ついでに喉もごろごろなっちゃってる。かわいいねかわいいね。
俺も一応仮眠取ろうかな...寝ずに過ごして後から深君に文句言われても弁解できないし。
天木「あらら、寝ちゃったか」
博行「どうしました?」
天木「いや、大したことじゃないから後でいいよ。」
博行「...?わかりました」
返事するとささっと天木さんが出て行った。掃除の後始末の手伝いだったのかな?なら後からでも...俺忘れそうだなぁ...
俺はそのまま深君を抱きかかえて眠った。
深「ひ...ゆきぃ.....いかないで...」
そんな深君の寝言で俺は目を覚ました。なんか声が潤んでるような...と思って深君の顔を覗くとまさかの号泣なう。びっくりした。号泣ってほどでもないか...
深「ぁぁ......ぅぅ...やだぁ...」
そんな幼さを感じる泣き方をしている深君。情報少なすぎて推測しようにもできないけど多分俺がどっかに行くんだろうか...夏の終わりに帰るときにも深君泣きそうになってたっけ...たぶんそのときのかな?
博行「...」
俺はそっと深君を抱きしめた。冬休みだからそう長くは居れないけどその分深君と一緒に居てあげよう、と誓った。
深「ん...? あ...?」
博行「おはよ。」
深「ん...おは、よ...」
泣き腫らした目を擦りながら深君が返事をした。んで擦る手をどけて無防備になったところでキスをした。安心させるのはこれが一番手っ取り早いでしょ。
深「ん......」
博行「ふふ、深の泣き顔見るのも2回目だね。」
深「む...泣きたくて泣いてるわけじゃない。」
博行「でしょうね。」
深「...」
博行「...そろそろ離して?ゴミ袋運びにくいから。」
深「嫌だと言ったら?」
博行「無理に離せとまでは言わないけど...」
今の深君はまるで親と手を繋ぎたがる子供みたいな感じだ。そんな深君が何度も言うけど愛おしい。好きなだけ繋いでなさい。
博行「とりあえずこれでラストだね。」
深「ん。片付いたね。」
博行「...クリスマスパーティはもう明日でいいかな...」
天木「構わないよ。晩御飯はまた明日作ればいいし。とりあえず今日作ったやつでも食べて。」
博行「はい。」
そんなこんなで24日も無事終わった。