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元親分の虎おっちゃんが行き倒れていたお話

  コロコロコロ……リーリーリー……

  コオロギのきれいな鳴き声が、どこからともなく響いてくる、過ごしやすい秋の夕暮れ時。

  今日は土曜日で大学が休みなので、ちょっと散歩がてら、スーパーへと買い物に行ってきた僕は、ぎっしりと中身の詰まった買い物袋を手に、川べりの田舎道を歩いていた。

  見渡す限りの草っ原とまばらな民家の灯り。そして鼠色と橙色が連なる夕焼け空を眺めて帰れるこの道が、僕は好きだった。

  「ぐうぅっ……」

  「えっ?」

  そんな風に景色を楽しみながら、呑気にトコトコと歩いていた時。

  ふと近くから、やたらと野太い呻き声のような音が聞こえてきた。

  滅多に人とすれ違う事すらない道端で、突如として聞こえてきた正体不明の声?に(もしかしてお化け!?)と背筋が凍りつきそうになる。

  けれど、さいわいお日様はまだ沈まずに、ぼんやりとした暁色のまま山間に浮かんでいたので、大の大の怖がりな僕ではあったけれど、かろうじて叫び声をあげて逃げ出さずには済んだ。

  すごく恐くはあったけれど、勇気を出してキョロキョロと辺りを見回してみると、なんと丈の高い草藪の中に、とてつもなく大きな虎獣人のひとが、ばったりと倒れているのが見えた。

  「だ、大丈夫ですか!?」

  慌てて駆け寄ってしゃがみ込むと、そのお相撲さんみたいに分厚い体を、ユサユサと力いっぱいに揺さぶってみる。

  すると、それまで力なく垂れていた縞々の太い尻尾が、ピクリッと持ち上がった。

  良かった……生きてるみたい

  そのことに、ひとまずホッと胸を撫で下ろしたものの、ともかく自分一人ではどうにもならないと思い直して、急いで助けを呼ぼうと立ち上がる。

  ガシッ!!

  「うわっ!?」

  するとそんな僕の足を、熊手のように大きな手がいきなり掴んできた。

  しかも、それは物凄い力で……相手は行き倒れになっている人だというのに、ピクリとも足を動かせない。

  「めっ……」

  「め、め……?」

  「め、めしっ……メシをくれぇ」

  「あっ!ご、ご飯ですね?す、すぐにっ……!!」

  弱々しいながらも野太い声に急かされて、手に持っていたスーパーの袋を急いで漁ると、夜ご飯にと買っておいたお弁当を取り出す。

  その途端、虎の人はその匂いを嗅ぎつけたのか、ギリギリと万力みたいに僕の足を握っていた手を放したかと思うと、ガバァッと勢いよく巨体を起き上がらせて、獲物を狩る肉食獣のような勢いで、僕からお弁当をひったくってきた。

  「ひっ……!!」

  そんな虎さんの鬼気迫る姿に、たまらず腰を抜かしてしまい、ペタリと後ろに尻もちをついて、声にもならない悲鳴を上げてしまう。

  そんな僕をよそに、虎さんは荒々しく包装を引き剥がすと、箸も使わずにガツガツと、素手でお弁当をむさぼり出したのだった。

  ***

  「がははっ!!いやぁ生き返ったわぁ!あんちゃん、ほんまにおおきになぁ!!」

  「い、いえ……」

  さっきまで行き倒れていたのが嘘のように、どっかりと地ベタに胡座をかいて、ガハガハと元気よく笑う虎さん。

  そんなご機嫌な虎さんのことを、僕を身を縮こまらせて正座をしながら、こそこそと上目遣いで窺っていた。

  やっぱり、極道のひと……だよね。

  ダルマさんみたいなおっかない顔……その野太い眉の上や、太い牙を覗かせた大きな口の近くには、まるで切り付けられたような大きな傷跡が残っている。

  しかもそれは顔だけじゃなく、鈍色の縞模様の着物から覗く分厚い胸元や、丸太のように太い腕にもあって……どうみても、カタギの人じゃない。

  どうしよう……なんか理由をつけて、早く逃げた方がいいのかな……でも……

  「んっ、どないした?ワシの顔になんかついとるか?」

  「えっ!?い、いえっ、何もついてないです!」

  「ほうか?ほれやったらええんやけど……なんせワシ、もう五日も風呂に入っとらんのでな。泥でもついとるんかと思うたわ!がははっ!!」

  「えぇっ!?」

  五日もお風呂に入ってないって……どうしてだろう?

  そう言われてみれば、着てるくたびれた着物も、やけに汚れているし……なにより虎さんから、なんとも言えない匂いがプンプンと漂ってきている。

  獣臭いし、汗臭いし、草臭いし……あえて表現するなら、濡れた狸みたいな匂い?……虎さんだけど。

  「実はムショから出てきたばっかでなぁ。当てにしとった身内のもんが、知らん間に越して居らんよなっとったさかい。しゃあないから、ここをねぐらにしとったんよ」

  「えぇっ!?ム、ムショって……け、刑務所のことですか?」

  「がははっ!!当たり前やろうが!ほかに何があんねん?」

  「そ、そうですよね……」

  やっぱりカタギの人じゃなかった……

  自分が刑務所から出てきたことを、こともなげに言ってのける虎さんの豪胆振りに、圧倒されて気圧されてしまう。

  「ほういや命の恩人やっちゅうんに、あんちゃんには、まだ名前も名乗ってへんかったな。

  ワシの名は、大寅 武次郎(おおとら たけじろう)!かの泣く子も黙る『大寅組』の大親分っ!!……やった男や」

  「えぇっ!?……えっ?だった??」

  まさかの極道の親分さんだったことに、思わずひっくり返りそうになったけれど、その後に続いた歯切れの悪い言葉に、つい聞き返してしまった。

  すると、それまでふんぞり返っていた親分さんが一転、とても決まりが悪そうに目を伏せると、躊躇いがちに大きな口を小さく開いた。

  「あんな、ほんまに恥ずかしい話なんやけど……実はかわいがっとった子分たちから、こっぴどく裏切られてしもうてな。ほれでワシはムショ送りになって……もう大寅組の親分じゃ、あらへんのや」

  「そ、そうだったんですか……」

  「っと、すまんすまん!けったいな話を聞かしてしもうたな。ほんで、あんちゃんはなんていうんや?」

  「あっ、すみません!えっと、僕は木下 佑月(きのした ゆづき)といいます」

  急に自分の方に振られて、慌てて自己紹介をした。

  すると、それを聞いた大寅さんは、なにやら怪訝そうに野太い眉を寄せた。

  「佑月?なんや、おなごみたいな名前やなぁ」

  「は、はい……よく言われます」

  半ばコンプレックスに感じている事をズバリと言われてしまい、恥ずかしいやらなんやらで、ちょっとへこんでしまう。

  そんな僕をよそに、大寅さんは太い腕を組みながら、ちょっと考え込んだかと思うと、はたと名案を思い付いたような顔になって、大きな口を開けた。

  「おし!ほんじゃあんちゃんのコト、ユヅって呼ばせてもらうで!」

  「えっ!?ユ、ユヅ……ですか?」

  「ほや!ユヅもワシんこと、好きに呼んでええで?気さくに大ちゃんやら、武ちゃんて呼んでもええし……な、なんならやけど『親分』って、呼んでもええんやで?」

  「そ、そうですか……じ、じゃあ、親分さんって呼ばせてもらいますね」

  「ほ、ほうかほうか!がははっ!!親分て呼ばれんの、ほんま久しぶりやわ!」

  大寅さん、もとい親分さんは、僕の言葉にパァッと花が咲いたように顔を綻ばせた。

  やっぱり、もう親分ではなくなったとは言っても、親分と呼ばれるのが嬉しいみたい。

  とてつもなくおっかない風貌なのに、嬉しさを隠さずに屈託なく笑うその姿は、まるで無邪気な子供みたいで……自分よりずっと年上の人なのに、ついついかわいいって思ってしまう。

  ドキドキ……ドキドキ……

  見るからにおっかない顔立ちなのに、ニカッと笑うと目元が優しくて、どこか愛嬌たっぷりな顔も……横にも縦にも僕の倍以上はありそうな、山みたいに大っきな体も……やっぱりすごく格好良い。

  元極道の人と関わったりしちゃ危ないって、早くここを離れなきゃって、頭ではちゃんと分かってるのに……この人ともっと話したい、もっと一緒にいたいって、心が理性に蓋をして引き留めてしまう。

  「よしよし!ほんじゃあユヅは、今日からワシの子分やな!」

  「へっ?」

  親分さんの唐突な言葉に、思わず素っ頓狂な声が出てしまった。

  そんな僕を尻目に、親分さんはご機嫌に言葉を続ける。

  「ワシを親分と慕うもんは、皆んなワシのかわええ大事な子分や!

  ユヅはなかなか見どころはあるけんど、体はヒョロヒョロで生っちろいし、尻もまだまだ青っちろそうや。

  ほやから親分のワシが、ばっちし面倒を見て、お前さんをいっぱしの男にしたる!

  どんと大船に乗ったつもりで居りぃや!」

  「は、はい!」

  親分さんの気迫あふれる口振りと力強い所作に、僕は生まれつき気が小さいのもあってか、すっかりその迫力と勢いに呑まれてしまう。

  そんなコクコクと頷く僕を見やると、親分さんが『しめた!』と言わんばかりに、その悪人面をにんまりと綻ばせた。

  「ほんでやな。ユヅの面倒を見るんやったら、やっぱし一緒に居るんが、いっちゃんええと思うんやけど……お前さん、ひとりもんか?」

  「……えっ?」

  僕はこの時、自分の気の弱さと男好きの性分を、これ以上ないぐらいに悔やんだのでした。

  ***

  「おおっ!なかなかええトコに住んどるやないか!」

  部屋の電気をつけた途端、親分さんが大仰な声振りでそう言った。

  そして、物色するみたいにキョロキョロと室内を見回し出す。

  「そ、そうですか?ありがとうございます……」

  そんな親分さんにおずおずと返事をしながら、さっき食い散らされてしまったお弁当の容器やらを、台所のゴミ袋の中に捨てる。

  あれから……親分さんの圧に負けてしまった僕は、その口車に乗せられるままに、自分が住んでいるアパートに連れてきてしまった。

  どうしよう……もしかして、本当にここに一緒に住むつもりなんだろうか。

  僕は両親が仕送りしてくれているおかげで、さっき親分さんが言った通り、学生の身にしてはいい部屋に住めているから、自分の他に同居人がもう一人増えても、なんとかなりそうではあるんだけど……

  でも、獣人用の大きな食器とか用意してないし……それに布団だって一つしかない。

  やっぱり……子分の僕が親分さんに布団を譲って、畳で寝ることになるのかな?

  「はぁ……」

  「なんや、辛気臭い顔しよって?」

  「い、いえ……なんでもないで、すっ!?」

  思わずついた大きなため息に、後ろから親分さんに声を掛けられる。

  それでクルッと振り返った瞬間、信じられない光景を目の当たりにして、思わず声を裏返らしてしまった。

  なんと親分さんが着物を脱いで、もろ肌どころか褌一丁の裸になっていたのだ。

  すごい……!!

  ゴワゴワと固そうな毛に覆われた、山のように大きな分厚い体。

  たわわに膨らんだ胸には、ぶっくりと大きな乳首がついている。

  デンとせり出した大きなお腹にも、これまた大きなデベソがデンとついていて、その下から生い茂る黒い毛が、ヨレヨレの赤い褌の中にまで続いている。

  それでも覆いきれない鬱蒼とした股毛が、褌の外にモサッとはみ出してしまっていて……それだけで親分さんの溢れんばかりの精力と男としての凄さが、まざまざと伝わってくる。

  そのせいか、それまで着物に覆い隠されていた、体のあちこちにある大きな傷跡も、まるで男の勲章みたいに思えてきて……なんだか無性に格好良く見えてきてしまう。

  「……ゴクリッ」

  ひとの裸なんて、エッチなビデオの中でしか見た事なかった僕は、その男らしい体にすっかり目をくぎ付けにされてしまい、たまらず大きな唾を飲み込んでしまった。

  「なんや?鳩が豆鉄砲を食ったような顔しよって」

  「あっ!す、すいません……って、そうじゃなくてっ!な、なんで着物を脱いでるんですか!?」

  「いやな、こないな汚いなりで居るんは、さすがにユヅに悪いかと思うてん。ほやから、ちぃと台所を借りて、体と着物を洗わしてもらおと思うたんよ」

  「だ、台所なんて使わなくても、うちにはちゃんとお風呂も洗濯機もありますから大丈夫です!」

  平然ととんでもない事を言い出した親分さんに、慌てふためきながらも言葉を返す。

  するとその途端に、それまで飄々としていた親分さんが、急にずいっと身を乗り出してきた。

  「なんやて!?お前さんちには、風呂がついとるんかいな?」

  「は、はい。さっき出掛ける前にタイマーしといたので、もうお湯にも入れると思いますよ」

  「たいまぁ??……なんやよう分からんけど、入れる風呂があるんやったら、ユヅも早う言わんかい!」

  「す、すいません……」

  物言いに若干の理不尽を感じつつも、またもや親分さんの迫力と勢いに負けて、流されるままペコリと頭を下げてしまう。

  そんな僕を尻目に、親分さんは子供みたいに喜びをあらわにして、ニコニコと嬉しそうに笑みを溢している。

  「むふふっ、久方ぶりにのんびり風呂に浸かれそうやわぁ……!よしゃっ、ほんじゃ早速入るさかい!ユヅもぽけーっとしとらんと、ちゃちゃっと支度しぃ!」

  「えぇっ!?ぼ、僕も一緒に……ですか?」

  「当たり前やろうがっ!子分が親分の背中を流さんでどうすんねん!」

  「で、でも……」

  「でももへちまもあらへん!ほれっ!早う早うっ!!」

  「は、はいっ!!」

  そうして僕は、風呂と聞いて目の色を変えた親分さんにせっつかれるまま、大急ぎで着替えやタオルを用意すると、そわそわ浮き立つ親分さんを連れ立って、そそくさとお風呂場へ向かったのでした。

  ***

  「がははっ!まさか風呂にありつけるとは思うてへんかったわ!」

  「よ、良かったですね……」

  二人でいるには手狭な脱衣所に入ると、親分さんは上機嫌に笑いながら、汚れた着物を脱衣籠に放り込んだ。

  そんな親分さんに相槌を打ちながら、僕は必死に平静を装うけれど、間近に見える縞々の大きな体と、むせ返るほどに漂ってくる汗と獣くささが入り混じった匂いに、聞こえてしまうんじゃないかってぐらい、胸がドキドキしてしまう。

  そうして、うるさいくらいに鳴り響く胸の音を聞いていると、ついに親分さんが赤い褌へと手を伸ばした。

  そしてゴツゴツと太い指を器用に動かして、前垂れの下に隠れていた結び目を、慣れた手つきで解いていく。

  ゴクンッ……

  その姿を固唾を飲んで見つめていると、ついに結び目が解けて、ヨレヨレの褌がハラリと脱げ落ちていった。

  そうして、ついに目の前で露わになった親分さんのちんちんに、僕はたちまちに目をくぎ付けにされてしまった。

  すごいっ……!!

  まるで狸の置物みたいな大きくて立派な玉袋。

  それは僕のより一回りも二回りも大きそうで、ずっしりと重そうな中身でブクブク膨らんでいる。

  それに比べて、肝心の竿の方はずんぐりと太短くて、立派というよりもどこか可愛らしい感じがした。

  かろうじて垂れ下がっている先っぽは、厚い皮が半分ぐらい剝けていて、ふやっと柔らかそうな亀頭が、ちょこんと顔を出している。

  そんな太竿の根元は、たっぷりついたお腹の肉と、こんもり生い茂る股毛に、半ば埋もれてしまっていて、そのせいか余計に短く見えてしまう。

  親分さんは山みたいに体が大きいし、性格も豪快でとても男らしいから、きっとちんちんも大きくて立派なんだろうと、勝手に思い込んでしまっていた。

  そのせいか、ちんまりと可愛らしい太竿と、ぶっくり大きな玉袋のちくはぐさに、ちょっと面食らってしまった。

  「なんや?ユヅ、まだ脱いどらんかったんか」

  「えっ!?」

  そんな事を思っていた所に、ふいに野太い声が掛けられて、驚きのあまり心臓が飛び出そうになった。

  慌てて顔を上げてみると、なんと親分さんが野太い眉をしかめて、僕のことを不思議そうに見つめていた。

  「あ、あのっ、そのっ……!!」

  動転のあまり頭が回らなくて、なんとか返事をしようとしながらも、目はついつい、親分さんのちんちんの方へチラチラと向いてしまう。

  すると、そんな僕を訝しんでいた親分さんが、急に何か思いついたみたいにハッとしたかと思うと、まるでいたずらっ子のような顔で、にたりと笑った。

  「なんや?これが気になるんかいな?」

  親分さんはニタニタ笑いながらそう言うと、なんと自分のちんちんを摘まんで、これ見よがしにぷるぷると振り出した。

  「えっ!?あっ、す、すいませんっ!!」

  そんな親分さんの思いもよらない行動に、ますます気が動転してしまう。

  あたふた慌てふためきながらも、ぷらぷらと揺れ動くずんぐりちんちんから、どうしても目が離せない。

  「がははっ!別に謝らんでもええ。ユヅぐらいの年頃やったら、大人のもんがどないか気になって、しゃあないやろうからな!」

  「は、はい……すごい、大人のって感じがします」

  「がはははっ!!ほうかほうか!」

  大きさはともかく、形や佇まいは、まさに大人のちんちんといった感じだったので、素直に感じたことを伝えた。

  すると、そんな僕の言葉に気を良くしたのか、親分さんは大口を開けてガハガハと笑い、とても嬉しそうにしている。

  「どや!なかなかきんまいなもんやろう?ちぃとばかし寸詰まりなんが玉にキズやが、ワシの自慢のちんぽこや。昔は毎晩こいつを使うて、若いおなごをアンアン泣かせとったんやで!」

  「えぇっ!?……さ、さすがですね」

  えっへん!と大きく胸を張って、自慢げに豪語する親分さん。

  だけど僕は、なんだかそれを素直に信じることは出来なかった。

  それは親分さんのちんちんが、あんまり大きくないってのもあったのだけれど、なにより厚い皮から顔を出している亀頭が、くすんだ桃色をしていたからだ。

  まだ女の人はもちろん、男の人ともえっちをした事のない僕だったけれど、えっちなビデオや本を見たり読んだりした知識から、たくさんえっちしている人の亀頭は真っ黒だって、生半可ではあるけど知っていた。

  本当にこのちんちんで、女の人をいっぱい泣かせてたのかな……?

  もしかして、若い頃はもっと大きかったとか……?

  だけど、そうだとしても亀頭がやっぱり黒くないし……うーん……

  うんうん考え込みながら、身を乗り出して親分さんのちんちんを、ジロジロと覗き込む。

  すると、そんな僕の検めるような視線に耐えかねたのか、さっきまで堂々としていた親分さんが、突然さっと大きな手でちんちんを覆った。

  「ほ、ほれっ、もう十分見たやろうが。ワシは先に行っとるさかい、ユヅもぼさっとしとらんと、早う脱いで来るんやで!」

  厳つい顔をほんのり赤く染めながら、ばつが悪そうに親分さんはそう言うと、こちらに大きな背中をクルリと向けてしまった。

  「あっ……す、すいません!」

  ドスドスドス……

  しまった……いくら向こうから見せつけてきたとはいえ、あまりにもジロジロと見過ぎちゃった。

  そそくさとお風呂場へと入っていく親分さんの後ろ姿を見送りながら、そんな自分の不躾さを反省しつつも……

  さっきの親分さん……すごい、かわいかった。

  豪快で男気いっぱいの親分さんが、はたと垣間見せたシャイで照れ屋な一面に……ついつい、また心を惹かれてしまうのでした。

  ***

  あれから、親分さんの裸にすっかり膨らんでしまったちんちんを萎めようと、あれこれ懸命に頑張ったものの……結局小さくする事はできなかった。

  それでも、あんまり待たせて親分さんを怒らせてしまっても大変なので、もう背に腹は代えられないと大急ぎで裸になると、僕は覚悟を決めて、親分さんが待つお風呂場の戸を開いた。

  ─ガラッ

  チャプ……ジャブッ……ザパーン……

  しっかりと手拭いで股間を隠しながらお風呂場に入ると、風呂床に直接どっかりとあぐらをかいている、親分さんの大きな後ろ姿が見えた。

  ちょうど洗面器を使って、豪快にザパーンっとお湯を体にかけていたところだったのだけど、音で僕が来たのに気付いたのか、白い模様のある丸っこい耳がピクリと動いた。

  「おっ、やっと来よったな。ユヅ、遅いで!」

  「す、すみません!」

  厳めしい顔をちろっと振り向かせた親分さんに、お腹にもお風呂場にも響き渡る野太い声を掛けられると、それだけで小心者の僕は、びくっと身が縮んでしまう。

  そんな僕をよそに、親分さんは鼻歌まじりにザパァンザパァンと掛け湯を続けて、その大きな体をどんどん濡れそぼらせていった。

  ドキドキ……ドキドキ……

  びっしょりとお湯に濡れて、より一層にくっきりと浮かび上がった親分さんの体に、僕の胸はますます高鳴っていく。

  どっしりと貫禄のある体は、首回りだけでも僕の太股よりも広くて、分厚い肩は太い筋肉でゴツゴツと盛り上がっている。

  いくつか傷跡の目立つ大きな背中も、たっぷりとついた柔らかそうな肉の下に、みっちりと固い筋肉が詰まっているのが、ひとめ見ただけでありありと伝わってきて……本当に格好良い。

  濡れてもなお、丸みと太さを残す縞々の尻尾の根元に、そろそろと目を向けていくと、これまたどっしりとしたお尻の割れ目までもが、迫るように目に飛び込んできて……

  「ユヅ、どないした?ほないなとこに、ポケーっと突っ立ちよって」

  「あっ!い、いえっ、なんでもないです」

  「ほうか?なんや、えらいカタなっとるみたいやけど」

  「えっ!?」

  その言葉に、自分のちんちんが大きくなっているのを勘づかれてしまったんじゃないかと、あわあわ狼狽えてしまう。

  だけど、とうの親分さんは気を悪くした素振りも見せずに、そんな僕を見てガハガハと笑い出した。

  「がははっ!ほない畏まらんでもええ!ワシはお前さんの親分やさかいな、ほんまもんのお父ちゃんみたいに思うてええんやで!」

  「えぇっ!?……は、はい」

  親分さんは振り向いたまま、その厳つい顔をにまっと優しく綻ばせると、石鹸で泡塗れになった手拭いを、ほれっと差し出してくれた。

  親分さんから、いきなり父親だと思えだなんて言われて、正直びっくりしちゃったけど……ひとまずちんちんの事はバレてないみたいだから、本当に良かった。

  ホッと胸を撫で下ろしつつ、手渡された手拭いを受け取ると、もう一方の手で股間を隠しながら、おっかなびっくり、傷跡のある広い背中を洗い始めた。

  ゴシゴシ……ゴシゴシ……

  手拭い越しに触れる親分さんの背中は、見たまんまの通りに逞しくて、ゴム毬みたいな弾力が手のひらへと伝わってくる。

  その巨体を覆う縞模様の毛は、ゴワゴワと固くて太くて、針金のような強さを感じるけれど、歳のせいか色艶はくすんでしまっていて、そのせいかひどくくたびれても見えた。

  そんな年輪を重ねた毛皮をゴシゴシと擦り上げていると、あの濡れた狸のような親分さんの匂いが、石鹸の香りと混じって、もわもわと湯気と一緒に僕の鼻をくすぐってくる。

  親分さんが言ってた『お父ちゃん』って……こんな感じなのかな?

  自分のじゃない、ひとの背中を初めて流しながら……ふとそんな事を思った。

  僕のお父さんは、なんていうか……あんまり良いお父さんでは、なかったように思う。

  よその女の人と浮気したり、ギャンブルをして家にお金を入れないとか、そういう酷い事をする人ではないのだけど、いつも自分の趣味や仕事に夢中で、僕とお母さんの方には、ほとんど興味がないみたいだった。

  一緒に遊んでもらったり、どこかに連れて行ってもらったりした記憶もほとんどないし……お風呂も小さい頃は、お母さんとだけ入ってたように思う。

  こうして大学に行かせてもらえて、仕送りまでしてもらえているのだから、感謝こそすれど不満に思うだなんて、とんでもないって分かっているけど……やっぱり、こんな風に背中を流したりして、自分と一緒に過ごしてくれるお父さんが、ずっと欲しかった。

  もしかして、僕……ファザコンなのかな?

  年上が好き、体の大きな人が好きってのは分かってたけど、そういう事は考えたことがなかった。

  もし親分さんみたいな人が、僕の恋人に……お父ちゃんになってくれたら。

  でも、親分さんは女の人が好きな普通の人だし……そんなのありえないよね。

  「ユヅ、力が入っとらんで!もっとしゃんとゴシゴシしぃ!」

  そんな風に思いを巡らせていた時。

  突然、親分さんがこちらにクルッと振り返って、ピシャリと檄を飛ばしてきた。

  「あっ、す、すいませんっ!」

  つい考えことに夢中になって、肝心の洗う手が疎かになってしまっていたみたいだ。

  慌てて謝ると、大急ぎで手をゴシゴシと動かして、大きな背中を一生懸命に擦る。

  「なんや?お前さん、股隠して洗っとったんかいな」

  「えっ?」

  親分さんが漏らした言葉に、図星を突かれたように動揺が走る。

  見ると親分さんは訝しげな面持ちで、僕が手拭いで覆い隠している股間を、ジッと見つめていた。

  すると、おもむろに「よっこらせっ」と重たげな腰を上げて、こちらに向き直ったかと思うと、その太い両腕を胸の前にがっしりと組んで、どっしりとあぐらをかいて座った。

  そんな、まるでこれからお説教を始めると言わんばかりの、迫力ある親分さんの居住まいに、ますますオロオロと狼狽えてしまう。

  「あ、あの……その…….」

  「ユヅ、ほんなんじゃ、ちゃんと背中を流せへんやろうが。お前さんも、曲がりなりにも男なんやったら、女々しく前を隠したりせぇへんで、男らしゅう堂々とせなあかんで!」

  「す、すいません……」

  『男らしくない』と子供の頃から抱えていたコンプレックスを、ズバリと指摘されてしまい、たまらずシュンっと項垂れてしまう。

  すると、そんな僕を見やった親分さんは、ふいに厳めしい顔を崩すと、またあのいたずらっ子のような顔で、にへらっと笑った。

  「にししっ!ほないに必死こいて隠しとるちんぽこが、どないなもんか見たろ!」

  「えっ?わ、わっ!?」

  突然、反応する間もなく、いきなり太い腕がぐわっと伸びてきたかと思うと、僕の股間を隠してる手拭いを、バッとひったくられてしまった。

  それだけでなく、大慌てで股座を隠そうとする両手までもが、熊手のような手でガシッと引っ掴まれてしまう。

  そうして無慈悲に露わにさせられた股座を、親分さんが身を乗り出して覗き込んでくる。

  「どらどらっ……」

  「あっ!み、見ないで下さぃっ!!」

  「んんっ? がっはっは!!なんやお前さん、ピンピンになっとるやないか!」

  ガハガハ豪快に笑う親分さんの言葉に、顔が瞬く間にカァッと熱くなる。

  普段、ひとに裸を見られる事すら滅多にないのに、ずっとひた隠しにしてきた皮被りのちんちんを……しかもピンピンに膨らんだところを、鼻先がくっつきそうなぐらいの近くから、ばっちり見られてしまった。

  本当なら、ちんちんが大きくなっている事の言い訳をしなくちゃいけないのに、本当に恥ずかしくて恥ずかしくて……僕はただ、顔を真っ赤にして俯くことしか出来なかった。

  「うぅっ……」

  「元気やなぁ!やっぱし若いってええわぁ。皮被りの先っぽが、ヘソにくっつきそうやで!」

  「あっ!」

  親分さんはしげしげ眺めながらそう言うと、恥ずかしげもなく天を向くちんちんの先っぽを、節くれ立った指先でツンツンと突っついた。

  すると、途端にビリッと痺れるような快感が迸って、ちんちんどころか体までもが、ビクンっと跳ね上がってしまう。

  「んぅっ!」

  「がははっ!ユヅ、お前さん童貞やな?ちょいと触られたぐらいで、こないに嬉し涙こぼしよってからに」

  「そ、それは……」

  ズバリ言い当てられてショックを受ける僕を尻目に、楽しげな親分さんはまた手を伸ばすと、とろりと先走りを溢れ出させるちんちんの先っぽを、太い指先でクニっと摘み上げた。

  そしてあろうことか、それをそのまま、グイッと下に引き下ろそうとする。

  「あっ!だ、だめっ……いたっ!」

  「へっ? なんや、お前さん……もしかして、ちんぽこ剥けへんのか?」

  その言葉に、ただでさえ熱くなっていた顔が、焼けつきそうなほどに熱くなる。

  親分さんの言う通り……僕のちんちんは、皮が剥けない。

  すっぽりと先っぽまで被った皮の入り口が、とても狭くって……そのせいか小さい頃から、一度も亀頭を出せたことがなかった。

  全身が燃えるような恥ずかしさに、言葉を返すことも出来ずにいると、そんな僕の無言を肯定と受け取ったのか、親分さんはうんうんと頷いて、太い指先をやんわりと動かした。

  「むぅっ……やっぱしほうか。いちおう亀さんの頭は、ちびっと見えるんやけど……先っちょが狭っこすぎて、ちぃとも剥けへんのやな」

  「んぅっ……!!ひっ、あぁっ……!!」

  さっきとは打って変わって真面目な面持ちになった親分さんが、鼻先をくっつけんばかりに顔を近づけると、まるで検査をするみたいに、僕のちんちんをグニグニと弄くり回してきた。

  ゴツゴツと節くれ立った太い指で、ちんちんの皮を引っ張ったり下ろされたりすると、ちりちりビリビリした痛みと気持ちよさがない混ぜになったような感覚が、波のように押し寄せてきて……堪えられずに、はしたない声を漏らしてしまう。

  どうしようなく切なくて、恥ずかしくて、なにより情けなくて……気付けば、目から大粒の涙が溢れ出ていた。

  「ぐすっ……うぅっ」

  「どわっ!?な、なんや?なんで泣いてるんや!?」

  「ぐすっ……ご、ごめんなさい……なんだか僕、自分がすごい情けなくって……」

  突然泣き出してしまった僕に、目を白黒させてびっくり仰天する親分さん。

  それがなんだが申し訳なくって、慌ててゴシゴシと目を擦りながら、精一杯に言葉を返した。

  「……ほうか」

  それを聞いた親分さんは、一言だけそう呟くと、その大きな口をつぐんだ。

  その表情は、さっきみたいに真面目だけど、どこか神妙な面持ちで、なんだか何かを考え込んでいるようにも見える。

  そんな急に黙り込んだ親分さんに、自分がなにか良くない事を言ってしまったのではないかと、不安になってしまう。

  こわごわと親分さんの様子を窺っていると、ふいに親分さんが真剣な面持ちで顔を上げた。

  「あんな……これは誰にも言わんようにしてきた事なんやけど……実はワシも、昔はほうやったんよ」

  「えっ!? お、親分さんも、ちんちんが剥けなかったんですか?」

  思わず口にした僕の言葉に、親分さんは男くさい顔をポッと赤らめて、恥ずかしそうに言葉を続けた。

  「……ほや。ワシのは見ての通り、あんまし大きゅうないやろう?ほんなんやから、子供の頃はもっと小っちょうてなぁ……そのうえ剥けへんのやさかい、とても人に見せられるもんやあらへんかった」

  「そ、そうだったんですか……」

  「ほやけど……16ぐらいの頃、やったやろうか?ずっと家を空けっとた親父が、ふらっと帰ってきたんよ。ワシの親父は流れの極道でな、あちこちの組を渡り歩いては、用心棒まがいの事をやって稼いでたんや。ほないな親父が、10年振りぐらいに帰ってきて早々、風呂に入るからワシに背中を流せっちゅうてな……ほんでワシ、ほん時に剥いて貰うたんや」

  「えっ!?お、お父さんに剥いてもらったんですか?」

  「ほ、ほや。『ほないなちんぽこしとったら、床で女に笑われてまうど!』って言われてしもうてな……えらい恥ずかしかったけど、おかげでひとに見しても恥ずかしないもんになれたさかい。ずっとうちに居らんかった親父が初めて……ほんで最後にしてくれた、父親らしゅうことやったなぁ」

  「えっ? 最後って……もしかして、親分さんのお父さん……」

  「うん。あれから何年もせんうちに、どっかの組同士の抗争に巻き込まれて……あっけなく死んでもうたわ」

  「そ、そんな……」

  「まぁ……ほんなこんなで、長々と昔話をしてもうたんやけど……ほんで詰まるところ、何を言いたいかっちゅうとな……ワシが同じように、お前さんのちんぽこを剥いたろうかってことや」

  「えぇっ!?」

  思いもかけない、親分さんのとんでもない申し出に、つい大きな声が出てしまった。

  そんなびっくりする僕に、親分さんは一瞬怯みながらも、真剣な面持ちで言葉を続けた。

  「さっきも言うたけど、親分っちゅうのはお父ちゃんみたいなもんで……いわばお前さんは、ワシの息子みたいなもんなんや。今日会うたばかりの男に、こないなコト言われたない思うかもしれへんけど……ほんでもワシは、こないなワシの子分になってくれたお前さんに、ちっとでもお父ちゃんらしゅう事をしてやりたいって思うんや! ……やっぱし、極道崩れのワシみたいなおっちゃんなんかじゃ、あかんやろか?」

  そう捲し立てるように、力強く言い募った親分さんだったけれど、最後の言葉だけは尻すぼんで、蚊が鳴くみたいに弱々しかった。

  しかもその表情は、ひどく寂しげで……まるで縋り付くような眼差しで、僕のことをジッと見つめている。

  あんなに男らしくて頼り甲斐があって、歳も体も僕の二回り以上もありそうな親分さんが、ふいとまろび見せたいじらしい姿に……苦しいぐらいに、胸がキュンと締め付けられる。

  「そ、そんな事ないですっ!!僕っ、親分さんに……お、お父ちゃんに、してもらいたい……です」

  堪らずに大きな声を上げてしまった僕を、親分さんは驚いたように口を開けて、ポカンと見ている。

  し、しまった……つい、お父ちゃんなんて呼んじゃった……!!

  どうしよう……言い出したのは親分さんとはいえ、やっぱり変に思われちゃうよね……

  お父ちゃんみたいなものって言ってたし……それなのに、本当にそう呼んじゃうなんて……

  僕……ほんと、ダメだなぁ。

  自分のあまりのダメさ加減と、おかしな事を口走ってしまった居た堪れなさに……また涙が込み上げてきてしまいそうになる。

  そんな今にも涙が溢れ出そうという時……それまでポカンとしていた親分さんが、突然あたふたと勢いよく立ち上がった。

  「あ、あい分かったっ!!ワシに……お、お父ちゃんに任しときぃ!!」

  温かく大きな手でガシッと両肩を掴んで、真っ直ぐに僕のことを見つめると、親分さんは辿々しくも力強い声で、そう言ってくれた。

  赤く染まった厳つい顔は、とても照れくさそうだったけれど、どこか嬉しそうでもあった。

  また初めて見る親分さんの姿に、いまにも泣きそうだったのも忘れてコクコクと頷くと、親分さんはとても嬉しそうにニコッと笑った。

  その笑顔は、男くさいのに子供みたいに無邪気で……僕よりずっと年上の人なのに、なんだか愛おしくて堪らなくなってしまう。

  そんな愛くるしい笑顔に、ポーッと心を奪われていると、ひょいっと体が軽々と持ち上げられる。

  そうして気がつけば、どっかりと腰を下ろした親分さんの胡座に乗せられて、すっぽりと背中から抱き込まれていた。

  それはいわゆる抱っこで……そんなふうに親分さんから抱いてもらえた嬉しさと、もう19にもなる自分が、小さな子供みたいに抱かれている気恥ずかしさが、ごちゃ混ぜになって胸いっぱいに込み上がる。

  それにお尻には、フニフニと柔らかい感触も当たっていて……それが親分さんのちんちんだと分かると、燃えるように体がカァッと熱くなって、心臓もバクバクとうるさいくらいに鳴り響き出して……ピッタリと触れ合わされた肌を通じて、親分さんにも伝わってしまうんじゃないかと、不安でたまらなくなってしまう。

  そんな時、ふいに大きな手が、僕の頭にポンッと乗せられた。

  思わず体をビクッと震わせてしまうと、頭の上から、とても優しい声が聞こえてきた。

  「だんない。なんも心配せんでええでな」

  「は、はい……」

  親分さんがポンポンと頭を撫でながら、労わるように声を掛けてくれる。

  もしかしたら、知らず知らずのうちに、体が震えてしまっていたのかもしれない。

  親分さん……強引でがさつだし、悪たれの乱暴者って感じはするけれど……本当はすごい、優しい人なのかもしれない。

  大きな手のひらから伝わってくる温かさに、こわばり悴んでいた気持ちが、じんわりと解されていく。

  ホッと気が抜けて、大きな体に身を預けるようにもたれかかると、今度はポンポンとお腹を撫でられた。

  「よしゃよしゃ、ええ子や。ほんじゃあ、始めるでな」

  親分さんはそう言うと、傍にあった石鹸を手に取って、ゴシゴシと泡立て始めた。

  すると、あっという間に親分さんの大きな手が、スポンジみたいに泡だらけになる。

  そうして、おもむろに僕の股座に腕を伸ばすと、ピンピンに張り詰めた皮被りのちんちんを、太い指先でちょいっと摘んだ。

  「んぅっ!!」

  途端に、ビリッと甘い快感が迸って、たまらずに体がビクンっと跳ね上がってしまう。

  「す、すまんっ!痛かったか?」

  「い、いえっ……!だ、大丈夫です……!!」

  「ほ、ほうか?痛ないんやったらええんやけど……」

  大きな上擦り声を上げてしまった僕のことを覗き込んで、親分さんがとても心配そうに声を掛けてくれる。

  だけど、僕は顔を上げる事が出来なくて、俯いたまま返事をするのが精一杯だった。

  親分さんは親切心からしてくれてるのに、それなのに僕ときたら、あんなはしたない声を出してしまって……本当に恥ずかしい。

  「ほんじゃあ気を取り直して、もっぺんやってくでな。痛なったりしたら、ちゃんと言うんやぞ?」

  「は、はいっ!」

  親分さんは仕切り直しとばかりに、そろそろと腕を伸ばすと、そっと僕のちんちんを摘んだ。

  途端にまた快感がビリリと駆け巡るけれど、さっきみたいにならないように、グッと歯を食いしばって、頑張って堪える。

  そんな僕に親分さんは「よしよし」と優しい声を掛けてくれると、そのあわあわな手のひらで、僕のちんちんをやんわりと包んでいった。

  「ええか? まずはこうやって、ようさん泡をまぶしてな……ほんで、揉んでやりながら温っためて、ちんぽこの皮を伸ばしていくんや」

  「んっ……あっ、あっ……」

  親分さんは、大きな手のひらでちんちんをすっぽり包み込むと、根本から先っぽまでを撫でるようにさすって、全体に泡を纏わせていった。

  そして窄まった先っぽの口からも、たっぷりの泡をトロトロと流し込んで、クニクニと馴染ませるように揉みしだいていく。

  それは痛いどころか、たまらなく気持ちよくって……必死に堪えても、恥ずかしい声が漏れ出てしまう。

  「無理に剥こうとすんのは、絶対にあかんさかい。狭っこい口が広うなるように、やさしゅうやさしゅうとや……どやユヅ、だんないか?」

  「は、はいっ……だ、だいじょっ……んぅっ……だ、だいじょぶ、ですぅ……!!」

  「ほかほかっ!ほんなら良かったわぁ……なんべんも言うけど、もし痛なったら我慢せんと言うんやで?」

  「は、はいっ…… ひぅっ……!!」

  優しい声を掛けてくれながら、親分さんは大きな手を忙しなく動かし続ける。

  まるでオナニーをする時みたいに、上から下へとちんちんの皮を擦り上げたかと思うと、今度は先っぽの窄まりに親指を掛けて、ずりずりとめくったりもする。

  その度に雷に打たれたみたいな快感が、ビリビリと脳天からつま先にまで駆け巡って、僕の体はビクビクと魚みたいに跳ね上がってしまう。

  「あっ、あっ、あっ……ひぁっ」

  あまり気持ち良さに、もう声を抑えることも出来なくって……恥ずかしげもなく、あられもない声を盛大に漏らしてしまう。

  もう気持ち良がってるのを隠せない有様なのに……親分さんは、僕を咎めたり揶揄ったりしなかった。

  それどころか、空いてる方の手でポンポンと、なだめるように優しくお腹を撫でながら「よしよし……ええ子や」と、壊れ物を扱うような手つきで、皮被りのちんちんを触ってくれている。

  それが、すごく嬉しくって、気持ちよくって……なんでか切なくて……悲しくもないのに、涙がじわっと溢れ出てしまう。

  「あっ、きもちいっ……ひっ、ひぁっ……あぁっ……!!」

  気持ちよくて気持ちよくて……もう声を上げて泣きだした、その時だった。

  ふいに僕のお尻を突き上げるように、熱くて固いものが膨れ上がった。

  それは僕のお尻の割れ目に挟まりながら、釣り上げられた魚みたいに、ビクビクと脈打って暴れている。

  いつの間にか頭の上からも、フスゥッ……フスゥッと、まるでふいごを吹くような荒い息遣いが聞こえていた。

  「あ、あかんっ……ユヅの泣く声聞いとったら、ワシっ……ぐぅっ、辛抱堪らん……か、堪忍やっ!!」

  「ひゃっ!?」

  突然、ぐわっと体が持ち上げられたかと思うと、グルンと視界が回転し出す。

  そうして次に気が付いた時には、いつの間にか僕の体は、風呂床の上にペタリと寝かせられていた。

  そんな僕に上から覆い被さる親分さんの顔は、真っ赤に火照っていて、泣く子も黙る三白目をぎらつかせながら、分厚い舌をだらりと垂れ下がらせて、こちらを見下ろしている。

  それは、まさに獲物を前にした獣そのもので……こみ上がる恐怖心に、ふるふると体が震えてしまう。

  「だ、だんないっ……なんも恐がらんでええ。ワシは、お前さんのお父ちゃんやさかい……大切な息子を、傷もんなんかにせぇへん」

  僕の体の震えに気付いたのか、親分さんはフゥフゥと鼻息を荒げながらも、優しく声を掛けてくれる。

  それに黙ったままコクコク頷くと、ぎらぎらと獣欲に溢れていた瞳が、ほんの少し和らいだ気がした。

  「ほんまはオメコにぶち込みたいトコやけど……新鉢のお前さんに、ほれはあかんでな。ほやから、ちと素股さしてもらうさかい……えらい重たいかもしれんけど、辛抱してな」

  そう言って、親分さんは僕の両足を広げると、オムツを替えるみたいに大股びらきにさせた。

  それから腰を入れると、僕のちんちんの上に自分のちんちんを、でんと乗っけた

  す、すごいっ……!!

  ビンビンに生え上がった親分さんのちんちんは、タケノコみたいにずんぐり野太くて、くっついたところから焼けつくような熱と、ブニブニした弾力が伝わってきた。

  あのちょこんと可愛らしかった頃の面影も、もうすっかりと消え失せていて、今ではしっかりと皮が捲れた、大人の男の形へと姿を変えている。

  それに比べて、僕のちんちんは長さこそあれど、先細りの姿形は子供そのもので……親分さんの立派なものと重ね合わされると、自分の男としての未熟さを、まざまざと痛感させられてしまう。

  なんだか無性に恥ずかしくて、情けなくて……今すぐ隠れたい、隠したいって気持ちで、いっぱいになってしまった。

  「おぼこい顔を、ほないに赤うしよって……あかんっ、ユヅかわええっ!!」

  親分さんはもう堪えられんとばかりに、ガバッと勢いよく覆い被さると、その巨体をゆさゆさと揺さぶって、荒々しく腰を振り始めた。

  「ひゃっ……んっ、あっ……あぁっ……!!」

  親分さんが股座を打ちつけるたびに、泡まみれの僕のちんちんが、ゴム毬みたいに弾力のある大きなお腹と、ごんぶとのタケノコちんちんに挟まれて、もみくちゃにされてしまう。

  「おぅふっ……気持ちええっ……!!柔っこくて、すべすべで……ユヅの体、めちゃんこ具合ええわぁ……!!」

  親分さんが感嘆の声を漏らすと、ただでさえ荒々しかった腰の動きは、いっそう激しくなっていった。

  ギュッギュと押しつぶさんばかりに、毛むくじゃらの体で無防備なちんちんを揉まれて、上へ下へとズリズリと擦り上げられる。

  それが堪らなく気持ち良くて……恥ずかしい声だけでなく、涙まで溢れて出てしまう。

  「んっ……やっ、あっ……うぅっ……ひぁっ……!!」

  「ユ、ユヅ、泣いたらあかんっ……! ほないな声で泣かれると、ワシっ、お前さんを食うてしまいとうなる……!!」

  そう言うが早いか、親分さんは僕の体を抱き上げると、大きな口をぐわっと開いた。

  そして分厚い舌を出すと、ベロベロと僕の顔を舐め出した。

  「ひぃっ……ひぁっ……やっ、あっ……」

  「かわええっ……ほんまにかわええでぇ、ユヅっ……!!」

  親分さんは熱に浮かされたように、カプカプ甘噛みを交えながら、僕の顔中をベロンベロンと舐り回していく。

  赤ん坊をも飲み込めそうな大口と太い牙に、本当に食べられてしまうんじゃないかと恐くって、ジタバタともがくけれど、親分さんの凄まじい怪力の前では、僕なんか手も足も出せない。

  恐くて恐くって……ふるふる体が震えて、ちんちんもキュウッと縮み上がっているのに……なんでかそのゾクゾクが、堪らなく気持ち良かった。

  「むはぁっ……たまらんわぁ……!!ほやユヅ……お前さん、ワシのもんにならへんかっ……?お父ちゃん、ユヅが欲しゅうてしゃあないさかいっ……!!」

  「ふへっ!?えっ、あっ……」

  そんな時、全身を赤々と上気させた親分さんが、突然思いもよらない事を言い出した。

  びっくりして面食らっていると、親分さんが痺れを切らしたように詰め寄ってくる。

  「えっ、あっ、じゃ分からへんで……!!ど、どうなんや……!?」

  「え、えっと……その……」

  「やっぱし……ワシなんかじゃ、あかんか?」

  まごまごと狼狽える僕のことを、親分さんがジッと見つめてくる。

  その顔は、強張ってはいるものの、そこはかとなく寂しげで……うつろぐ瞳は、まるで迷子の子供のようだった。

  そんな目で見つめられると、心がキュウっと締め付けられて……居ても立っても居られなくなってしまう。

  「そ、そんな事ないですっ!!ぼ、ぼく、親分さん……じゃなくて、その……お、お父ちゃんのものになりたい、ですっ……!!」

  そんな親分さんのいじらしい姿に、もう堪らなくなって……すごく恥ずかしかったけれど、自分の正直な気持ちを一生懸命に伝えた。

  「ほ、ほうかほうかっ! よしゃよしゃ……こんでもう、ユヅはワシだけのもんや……! 誰にも渡さへんで……!!」

  親分さん……お父ちゃんはそう言うと、僕の体を力一杯にギュウっと抱き込んだ。

  それが嬉しく堪らなくて……僕も目一杯に腕を伸ばして、お父ちゃんの大きな体に抱きつく。

  あったかい大きな体に包まれながら、ふくよかな胸元に顔を寄せて、もっともっとと頬擦りまでしてしまう。

  「かわええなぁ……お父ちゃんに甘えとるんか。よしよし……ほんじゃあお父ちゃんが、こっちも可愛いがったるからな」

  その言葉とともに、お父ちゃんの大きな体が、ゆさゆさと揺れ始めたかと思うと、その揺する動きは瞬く間に、腰を突き入れる動きへと変わっていった。

  「んぅっ……ひあっ、あっ……あうっ……!!」

  僕の体を揺れ動かしながら、お父ちゃんは何度も力強く腰を振って、ごんぶとの虎ちんちんで、僕の皮被りちんちんを、ズリズリと擦り上げていく。

  その腰使いはとても荒々しいのに、どこか優しさも感じさせるもので……そこから与えられる快感の波に、僕はただただ翻弄させられてしまう。

  「どやっ、ユヅ気持ちええか?」

  「は、はひっ……ひぁっ……き、きもちいっ……!!」

  「ほかほかっ! ええ子や……お父ちゃん、ユヅに気持ちええコト、ぎょうさん教えたるさかい! ほやから……ワシから、離れんでってな」

  「ふへっ……あっ、んぁっ……ひうっ……!!」

  お父ちゃんが尻すぼみにこぼした弱々しい言葉は、僕の意識へ届く前に、うなるような快感の奔流へと飲み込まれていった。

  お父ちゃんの分厚い逞しい胸に、赤ちゃんみたいに顔を埋めながら、必死にしがみつく僕を、お父ちゃんは熟練の手管で、あれよあれよと責め立てよがらせていく。

  ろくに自分で弄ったこともない乳首を、節くれ立った太指でクリクリこねられたと思ったら、今度は触れるか触れないかの塩梅で、コショコショと先っちょを毛先で擽られる。

  それだけで女の子みたいな声を上げてしまうと、すかさずお尻の谷間にゴツゴツした手を伸ばされて、小さな穴を指の腹でスリスリとなぞられて……もしかしたら、あの野太いちんちんをお尻に入れられちゃうんじゃないかって、ものすごく恐くなってしまう。

  だけど、お父ちゃんはそれ以上の事はしないでくれて……あやすように、僕のお腹をよしよしと撫でてくれると、どっしりした腰を巧みに動かして、僕の皮被りちんちんをいっぱい気持ち良くしてくれた。

  お父ちゃんの大きな体に抱かれながら、あちこち触られて、撫でられて、擽られて……体も心も、みんなみんな気持ち良くって……もう恥ずかしさも忘れて善がり泣いていると、あの感覚が急激に押し寄せてきた。

  「あっ……お父ちゃっ……で、出ちゃうっ……出ちゃうよぉっ……!!」

  「ほ、ほうかっ……! よしゃよしゃ、お父ちゃんも一緒に出すさかいっ……うぐっ……え、遠慮せんで、思いっきし出しぃ!!」

  「う、うんっ……!! んっ! あっ、あっ……あぁっ!!」

  ピュッ!!ピュッ!ピュッ!

  「んぁっ……!! ワシんに、ユヅの熱いもんがっ……たまらんっ……!! んぐぅっ、うがぁっっ!!!!」

  ドビュッ!!!!ドビュッ!!ドビュッ!!ビュッ!!ビュッ!!

  お父ちゃんがケダモノみたいな咆哮を上げたかと思うと、ものすごい勢いでドビュッ!!ドビュッ!!と、ごんぶとちんちんから白いのを吐き出した。

  それでも腰の動きは止まらなくて、ピュッピュッと出して敏感になった僕のちんちんを、ヌルヌルの先っちょでグシグシと責め立て続けてくる。

  途端に頭がおかしくなりそうな気持ち良さとくすぐったさに襲われて……やめて、やめて!って泣いて頼むけど、それでもお父ちゃんは止めてくれない。

  長い間の鬱憤を晴らすかのように、ただただ自分の快楽を求めて、乱暴に腰を振り続けるその姿は、まさにケダモノそのもので……さっきまでの優しいお父ちゃんの面影は、どこにもなかった。

  気持ち良くて、くすぐったくて……またちんちんから、ピュッピュッと出してしまうけど、それが白いのなのか、おしっこなのかも、僕にはもう分からなかった。

  これまで経験した事がない暴力的な快感と苦痛の連続に、頭の中が真っ白になって……いつしか僕は、気を失ってしまっていた。

  ***

  カチャカチャ……ゴトゴト……ガタガタ……

  「んっ……?」

  心地の良い眠りの世界にいた僕は、なにやら硬いもの同士がぶつかり合うような物音に、パチリと目を覚ました。

  まだ頭はぼんやりしていたけれど、その乾いた軽い音に『なんだろう? 』と不思議に思って、むくりと起き上がってみる。

  すると、そんな寝起きの僕の鼻に、とても美味しそう匂いが、ふわぁっと漂ってきた。

  それは、一人暮らしを始めてからは疎遠になっていた匂いで……その食欲をそそる懐かしい香りに、堪らずにお腹がグゥッと鳴り出してしまう。

  「どわっ!? ユ、ユヅ、目ぇ覚ましたかっ!?」

  突如聞こえてきた野太い声に、ハッと顔を向けると、お父ちゃんが泡を食ったような顔で、ドタバタとこちらに駆け寄ってくるのが見えた。

  そのあまりの慌てように、びっくりして声も出せずにいると、どすっとお父ちゃんがしゃがみ込んで、そんな僕のことを、ギュウっと力一杯に抱き締めた。

  「すまん……ワシ、あんましにも気持ちようて……つい我を忘れてしもうた……ほんまに堪忍なぁ」

  「そ、そんなっ、お父ちゃんが謝ることなんて、なんにも……ぼ、僕だって、すごい気持ち良かったですし……」

  「ほ、ほうかっ! ほんなら良かったでぇ……ユヅ、ほんまにおおきになぁ!」

  僕の言葉を聞いてホッとしたのか、お父ちゃんは僕の両肩に手を置くと、にっこりと嬉しそうに笑顔を見せてくれた。

  その泣く子も黙る強面をクシャクシャにした、子供のように屈託のない笑顔に……僕もつられて、一緒に笑顔になってしまう。

  「ほや!ユヅ、なんも食うてへんから、お腹空いとるやろ?ワシ、ユヅのために朝飯作っといたで!」

  「えぇっ!?お、お父ちゃんが?」

  びっくりしながら、ちゃぶ台の方を見てみると、そこにはホカホカと湯気を上げるご飯とお味噌汁が、二人分並べられていた。

  「ほやで!ほれっ、はよ食べよ食べよ!」

  ペンペンと僕のお尻を軽く叩くお父ちゃんに促されるまま、そそくさと布団から出ると、畳の上のちゃぶ台の前に、いそいそと腰を下ろした。

  ちゃぶ台におかれた茶碗には、山盛りのご飯が盛られていて、お椀の方には具沢山のお味噌汁が、たっぷりとよそわれている。

  「……飯炊きはすんのは、云十年振りやったさかい。あんまし上手う作れへんかったけど、堪忍してな」

  向かいにどっかりと腰を下ろしたお父ちゃんは、ちょっと気恥ずかしそうに、桜色の鼻をポリポリと掻きながら、そう言った。

  「そ、そんなっ、すごく美味しそうです!」

  「ほ、ほうか! ほんでな、えらい腹空かしとる所に悪いんやけど……食う前に、ちとやりたい事があるんよ」

  「えっ?やりたいこと?」

  「ほ、ほや……ユヅ、ワシとおんなじように、味噌汁を持ってくれるか?」

  「は、はい」

  どこか緊張した様子のお父ちゃんは、そう言うとお味噌汁の入ったお椀を両手に持って、大きな顔の前に掲げた。

  それを見て、僕もこぼさないように気をつけながら、見よう見まねで顔の前に掲げてみる。

  すると、お父ちゃんが神妙な面持ちで、その大きな口を開いた。

  「ユヅ、これはな……ワシとお前さんの親子の盃や」

  「えっ!?」

  「ほんまは酒でやるもんやさかい……味噌汁の盃なんてけったいなもん、聞いたこともあらへん。

  ほれに昨日今日会うたばかりの……しかもカタギのお前さんに、こないな事すんのも……ほんまにけったいやと思う。

  ほやけど、これが今のワシのいっぱいで……大寅 武次郎の、丸裸の思いや。

  ユヅ……どうか、受けてくれんか?」

  

  「……は、はい! ふ、ふつつか者ですが……こちらこそ、どうぞよろしくお願いします……!!」

  ヒシヒシと伝わってくるお父ちゃんの真摯な気持ちに、無知な僕なりに一生懸命に答えると、神妙な面持ちだったお父ちゃんの顔が、花が開いたようにふわっと綻んだ。

  そして盃を軽く上げると、大きな口元に持っていって、ズズッと飲み込んでいく。

  それを見て、自分も慌てて真似をすると、同じように飲み込んでいった。

  初めて飲んだお父ちゃんのお味噌汁は、ちょっとしょっぱかったけど……忘れられないぐらい、美味しかった。

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