「はぁ、、、はぁ、、、」
夜の街を、人混みに紛れながら走る。
「そこの君!待ちなさい!」
ここで捕まりたくない。
まだ家には帰りたくない。
路地裏に逃げ込んで、なんとか警察を撒こうとしてみる。
でもまだ追ってきてる、、、!
「待ちなさい!
こんな時間にどこに行くつもりだ⁉︎」
路地裏をひたすら逃げていたら、さっきとは少し違う雰囲気に包まれた場所に出た。
場所と言っても、まだ路地裏にいるけれど。
でも、後ろを振り向いても、さっきまで追ってきていた警察は見えないし、声も聞こえない。
「あなたみたいな人間の子供が、こんなところで何してるの?」
ハッとして振り向くと、そこには猫の獣人と呼べそうなお姉さんがいて、非常口の階段に座っていた。
顔は毛で覆われていて、体毛と同じ薄茶色の耳と尻尾が生えている。
マズルは短めで、ピンク色のちっちゃい鼻が先端に付いている。
着ている黒い服はおへそが出ているタイプの半袖。
ジーンズを履いていて、裾は足のほとんどが隠れるぐらい広がっている。
両腕には金色の輪をそれぞれ1、2個着けていて、頭には髪飾りやヘアピン、耳にはピアスがつけてある。
とりあえず警察ではなさそうだけど、こういう人をはっきりと見ることができたのは久しぶりかもしれない。
「、、、そんなに言いたくないなら、別に言わなくてもいいわよ?」
、、、この人なら、信じてくれるかな。
「、、、家出したんだ。
家にいると邪魔だって殴られるし、、、
みんな僕のことをいじめるし、、、
僕の言うことだって信じてくれないし、、、
、、、そんなところから、逃げたかったんだ」
、、、言っちゃった。
返ってくる反応はだいたい決まってる。
大人に相談しなさいとか、先生に話してみなさいとか、そんな意味のわからないことを言うなとか、そんなところ。
誰も共感してくれないし、誰も理解してくれない。
僕はきっと、一生このままー
「ふーん、そうなの。
それで家出して、こんな時間帯にここに来たってわけね」
「、、、責めたりしないの?」
「今のどこに責める要素があったのよ。
あなたは何も悪くないじゃない。
、、、大人ってのは、意外と頼りないものよね。
面倒だからって、悩みを抱えた人間の相手をまともにしないやつもいるんだもの。
口で言うだけ言って、条件を全て揃えても実行しない。
それが人間、
その中でも、性根の腐った奴らのやることよ。
ちなみにアタシはまだ17だから、大人じゃないわよ。
まぁ、そもそも人間でもないけど」
「、、、お姉さんは、誰なの?」
「アタシ?
アタシはこの辺りを根城にしてる、ただの人外よ。
ここで時々、誰かの悩みを聞いてあげてるの」
「名前はなんて言うの?」
「、、、好きに呼んでくれていいわ。
あなたが呼びたいと思う名前で呼んで」
、、、どうしよう。
名前呼べないとちょっとめんどくさいし、、、
「、、、じゃあ、リンカさんって呼んでいい?」
「悪くないわね。
いい響きだわ」
「じゃあ僕の名前をー」
リンカさんが素早く近づいてきて、僕の唇に人差し指を当てた。
急に接近してきたからちょっとドキッとした。
「あなたは私に、、、
いや、私たちに自分の名前を教えちゃいけないわよ。
たとえ偽名を使ったとしても、その名前でこの世界に固定されちゃうの。
いい?
名前を聞かれても答えちゃいけない。
わかった?」
「えっと、、、うん」
「もし見知った人らしき何かがいたとしても、家に帰るまでは名前となり得るものを誰かに教えちゃダメよ」
、、、なんでこんなに念押ししてくるんだろう?
「それが守れるなら、一緒に夜の街を楽しみましょ!」
リンカさんに連れられて路地裏から出ると、街の様子は一変していた。
どこを見ても人間じゃない人だらけで、ただの人間の僕の存在が異常なようにまで思える。
「とりあえず何か食べましょう。
あっ、ヨモツヘグイとかは大丈夫よ。
知ってるかどうかわからないけど、この世界の食べ物食べてもちゃんと元の世界に帰れるわ。
名前さえ固定されなければね」
「、、、リンカさん、名前が固定されるってどういうこと?」
「、、、説明が難しいんだけど、
今、あなたの名前は人間の世界に固定されてるの。
でも誰かが、、、もちろん私もだけど、あなたの名前を知った上で呼ぶと、あなたの名前がこっちの世界に移っちゃうのよ。
そうなると体が徐々に私たちみたいな人外に変わっていくの。
一応あなたには家族がいるんだし、帰らなきゃダメよ」
「でも、家に帰りたくない、、、」
「、、、分かったわ。
じゃあこうしましょう。
もし今日帰って明日酷い目に遭って、もう耐えられないってなったら、荷物をまとめて今日私と会った場所まで来るのよ。
そしたら、あなたの名前、、、あなたが呼ばれたい名前を教えて。
私があなたの名前を呼べば、あなたは「こっち側」の存在になって、嫌な思いをすることも減ると思うわ。
頭の端っこに留めておいて」
「、、、はい」
「じゃあ、今度こそ何か食べに行きましょ」
リンカさんに手を繋がれて、人混みの中を進んでいく。
リンカさんに連れられて入ったお店の看板に書かれていた文字は、僕には読めなかった。
いい匂いがお店の中に充満していて、いろんな人がビールっぽいものを飲んでいる。
「いらっしゃい!
ん?リンカじゃないか!
その人間はどうしたんだ?」
「ちょっと保護したのよ。
なんでも親とかに虐められてたらしいわ」
「それは気の毒だな、、、
とりあえず席に座りな。
気持ちが沈んでる時は、何かを食べて少しでも元気になるのがいいぞ」
カウンター席に座ると、リンカさんがメニューを見せてくれた。
、、、この文字読めない。
それに、貼ってある料理の写真はどれも知らない見た目をしている。
「あなたにはこっちを見せたほうが良さそうね」
リンカさんがページをめくると、見覚えのある料理の写真が貼ってあった。
ラーメンやステーキ、カレーと、おいしそうな写真がたくさん貼ってある。
「今日はアタシの奢りだよ。
好きなの頼みな」
「、、、じゃあ、これで」
僕はラーメンを指差した。
「じゃ、アタシも同じもの食べようかな。
おっちゃん、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎二つ!」
「あいよ!」
リンカさんが注文の時に言った言葉は、僕には理解できなかった。
注文したものが来るまで、ちょっとリンカさんと話す。
「そういえば、リンカさんの名前ってリンカだったんだね」
「半分正解だけど半分間違いよ。
名前が固定されるって話はしたでしょ?
私の場合、誰かに「名前」を呼んでもらって、その名前が気に入れば私の名前として固定されるのよ。
まぁ、私だけの特殊な例だけどね。
他の[[rb:人外 > ひと]]たちはみんな固有の名前があるけど、アタシはあなたと出会ったあの場所、、、
こっちの世界と人間の世界の繋ぎ目に入り浸ってるせいであやふやなのよ」
「、、、繋ぎ目?」
「そう。
あなたと会ったあの場所よ。
あそこはいつもはただの路地裏の道だけど、特定の順番で路地を通り抜けることでこっちの世界に繋がるのよ。
私は一応その繋ぎ目の管理者なの。
ちなみに私なら、手順を踏まなくても繋ぎ目を開くこともできるわ。
あなたは偶然にも、その順路に従って進んで、この世界に迷い込んだみたいね」
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎お待ち!」
リンカさんと話していたら、ラーメンらしきものが運ばれてきた。
「早速いただきましょ」
ラーメンを食べ終わって、お店から出た。
見たことない具材が入っててちょっと不安だったけど、普通においしいラーメンだった。
「どこか行きたい場所はある?」
「、、、リンカさんが決めて。
僕そういうところに行ったことないから、、、」
「じゃあ次の目的地はゲームセンターね。
その様子じゃ、行ったことないのよね?」
「お父さんもお母さんも僕にお小遣いをくれないから、何もできないんだ、、、」
「あなたって反抗したりしないの?」
「したら殴られるし、、、」
「、、、これ家に帰しても大丈夫かしら」
ゲームセンターだけで独立している、あまり見かけないタイプのゲームセンターに着いた。
ショッピングモールの中にあるのは買い物に付き合わされた時によく見ていたけど、こういうのは初めて見る。
「とりあえずメダルは用意しておきましょう」
リンカさんがカップのようなものを取って、機械にお金を入れ始めた。
すると下から銀色のメダルがたくさん落ちてきた。
リンカさんがメダルの入ったカップを手に取る。
「何か興味を惹かれたものがあったら教えてね。
さ、遊びましょ!」
メダルゲームで遊びつつ、2人でゲームセンターを歩き回っていると、ショーケースのようなものの中に景品が置かれているエリアに入った。
上にはクレーンがあって、端っこには穴が空いている。
「これはクレーンゲームよ。
やってみる?」
「でもこれ中に入ってるものがもらえるんだよね?
欲しいものがー」
あるものが僕の目に留まる。
「ありゃ、あれアタシが腕につけてるのと同じやつじゃん。
これそこそこ高かったんだけどな〜
あれが欲しいの?」
「うん」
「じゃあチャレンジしてみなよ」
リンカさんからお金をもらって、クレーンゲームに挑む。
最初の3回はうまく掴めなかった。
ちょっと位置がずれていたり、うまく掴んでくれなかったりと難しい。
4回目にして、ようやく箱を掴んだ。
けど、、、
「あっ、、、」
箱が落ちて、さらに遠い位置に行ってしまった。
その後もうまくいかず、残り一回になってしまった。
「ねぇ、もしよければアタシがやろうか?
アタシこういうのは得意なのよ」
「、、、じゃあ、お願い」
このまま続けても、僕じゃ多分取れない。
「お姉さんに任せなさい!」
リンカさんは、アームを奥の方まで動かすと、レバーをガチャガチャしてアームを激しく振り回し始めた。
「何してるの⁉︎」
「いいから見てな〜」
アームが後ろの景品が飾られている部分にある突っ張り棒に引っかかった。
「よし、このままいけば、、、」
アームが突っ張り棒を引っ張って、突っ張り棒は外れてしまった。
飾られていた景品が下に落ちる。
いくつかの箱は同じ箱の上に重なって、穴の近くに積み上がっている。
「この位置なら、簡単に取れそうね」
「、、、これ大丈夫なの?」
「大丈夫よ。
ここに書いてあるし」
リンカさんが指差した壁には、「5プレイ以上で無法化!」と書かれていた。
「そんなのアリ、、、?」
「書いてあるんだからアリなのよ」
リンカさんが残った時間でアームを素早く動かして、一箱取ってくれた。
「はい。
あなたにあげるわ」
リンカさんに腕輪の入った箱をもらった。
早速箱の中から腕輪を出して、一つつけてみた。
キラキラしてて、そこまで重いわけじゃない。
「この腕輪結構丈夫で、細いリングとは思えない強度をしてるのよね〜」
「あー楽しかった!」
ゲームセンターを一通り遊び尽くして外に出た。
「、、、あら?
もう時間がないみたいね」
「どういうこと?」
「もう朝なのよ。
言ったでしょ?
一度家に帰って、もう一度ここに来るのか考えて来なさい。
とりあえず、あの路地裏に戻りましょ」
一番最初の路地裏に戻ってきた。
「ちょうどいいし、あなたのその腕輪を私の腕輪と紐づけておくわね」
「どういうこと?」
「ちょっと腕輪を貸してくれる?」
腕輪を差し出すと、リンカさんは自分の腕につけている腕輪を一つ外して、二つの腕輪を赤い糸で結んだ。
「片方掴んで」
「あっうん」
糸で結ばれた腕輪のうちの一つを掴む。
もう片方はリンカさんが掴んだ。
リンカさんが何かを小さな声で唱え始めると、糸が少し透明になった。
腕輪を返してもらったら、腕輪には途中で完全に透明になっている糸がついていた。
糸はリンカさんの方に伸びていて、透明な部分は触っても何も感触がない。
「明日の夜にこの路地裏に入ったら、引っ張られている方向に進むのよ。
そうすれば、糸を辿ってここまで来れるから」
「でも糸が見えるからそれを見ればいいんじゃない?」
「、、、あなた、そういうのが「視える」の?」
「見えるけど、、、
それがどうかしたの?」
「、、、だから、アタシを見てもそこまで驚いてなかったのね、、、」
リンカさんが何か呟いたけど、僕には聞き取れなかった。
「リンカさん?」
「なんでもないわ。
じゃあ、この路地裏に来たら、糸の見える方向に進むのよ。
アタシも一応引っ張るから。
それじゃあ、また会いましょ」
眩い光が僕の視界を包んで、僕は思わず目を腕で覆い隠した。
気がついたら、僕はあの路地裏から出ていた。
手首には、ちゃんと腕輪がつけられていた。
「、、、ただいま」
「創也!どこに行ってたの⁉︎
家出なんかして!
あなたは本当におかしい子ね!」
お母さんが叫ぶ。
「気は済んだのか?」
お父さんが出てきた。
「、、、」
何も言いたくない。
「全く、、、
お前はどうしてこんなにも出来損ないなのだろうな。
とにかく、学校に行く準備をしなさい。
何か盗んできたりはしていないよな?」
咄嗟に腕輪をつけている右腕を後ろに隠した。
「何かあるのか?
見せなさい」
お父さんに腕を掴まれ、引っ張られた。
「、、、何もないじゃないか。
怪しい動きをするんじゃない。
ほら、早く学校に行く準備をするんだ」
、、、もしかして、この腕輪が見えてない?
学校はいつも通りだった。
「あの子、なんか放課後に誰かと話してるらしいよ?」
「でもそこには誰もいないんでしょ?」
「あいつ頭おかしいよな」
「なんか見えるって叫んでたけど、ただの嘘だろ?」
「注目されたいんだろ。
痛いやつだよな」
陰口は聞こえてくるけど、気にしなければいい。
いちいち気にしていると「寄ってきちゃう」から。
校内にも、校外にも、「半透明な人達」がいて、その姿は僕しか見えないみたい。
人に近い姿形をしていることが多いけど、大体人間とは少し違っている。
この前屋上で会ったのは、狐の面をした人だった。
面白おかしい話をしてくれて、ちょっと楽しかったな、、、
学校から帰る途中で、おいしそうな匂いがした。
匂いのした方を見てみると、肉屋さんがコロッケを揚げていた。
昨日リンカさんから、
「これ、私からのお小遣いね。
ちょっとはお金持ってないと危ないし」
と言われてちょっとお金をもらったので、お金はある。
「いらっしゃい!
小さいお客さんだね。
お使いかい?」
「、、、いえ、コロッケを一つお願いします」
お金を渡す。
「任せな!」
店のおばさんがショーケースの中からコロッケを一つ取り出して、紙で包んで渡してくれた。
「さっき揚げたばかりで熱いから、気をつけるんだよ!
毎度あり!」
これで、今日ご飯を抜かれても多分大丈夫。
、、、そういえば、こんなことをしたのは初めてだ。
リンカさんの影響かも、、、?
公園でゴミを捨てて、家に帰ってきた。
「創也、お帰りなさい」
「テストはどうだったんだ?」
94点のテストをお父さんに渡した。
すると、お父さんの顔が一気に険しくなる。
「どうして満点じゃないんだ⁉︎
満点をとれとあれだけ言っただろう!
今日はご飯抜きで勉強だ!」
、、、その言葉を聞いた瞬間、僕は靴を履いたまま自分の部屋に走り始めた。
「創也!待ちなさい!」
ドアを閉めて、開かないようにタンスを倒す。
ドアを叩く音とお父さんの怒鳴り声が響く。
「創也!開けなさい!
今ならまだ許してやるぞ!」
、、、頭の中で、バキッという音がした。
外出用のリュックに、私物を詰めていく。
と言っても、僕の私物はほとんどない。
まだ2人が普通だった頃に買ってもらったゲーム機、
ほとんどお金の入っていない財布、
かなり前に買った小説。
、、、このくらいかな。
そのまま、昨日と同じルートで家からの脱出を試みる。
、、、⁉︎
窓が開かない⁉︎
ドアが蹴破られて、お父さんが入ってきた。
「逃がさないぞ、、、!」
もうこうなったらやるしかない!
腕輪をメリケンサックみたいに装備して、窓を叩き割る。
そのまま窓から飛び降り、あの路地裏に向かう。
「創也!待ちなさい!」
人混みの隙間を縫うように移動しても、お父さんは人をかき分けながら進んでくる。
僕を見失うこともないみたいだ。
金の腕輪に結ばれている糸を辿って、もう一度あの路地裏に入った。
少しずつ、何かに引っ張られる感覚が強くなっていく。
突然引っ張られる感覚がなくなったと思ったら、周囲の雰囲気が昨日見たものと同じになっていて、目の前にリンカさんがいた。
あの時結んでいた赤い糸を、腕輪に巻きながら手繰り寄せている。
「!
よかった。
無事にここまで来れたのね」
リンカさんは僕に気づくと、安心したような表情を浮かべた。
「荷物をまとめてきてるってことは、「[[rb:人外 > こっち]]の世界」で生きるのよね?」
「うん。
あそこにいても、僕は幸せになれないだろうから」
「、、、分かったわ。
じゃあ、あなたの名前を教えてくれる?」
「いいよ。
僕の名前はー」
店の扉が開き、リンカと子供が入ってきた。
「いらっしゃい!
リンカ、今日はちっちゃい子も一緒か?」
「この子を人間の親から引き取ることにしたの。
で、その時に名前を教えてもらったんだけど、まだこの世界に適応してる途中みたいなの。
この子の名前はダイキよ」
ダイキがフードを外すと、頭の上にリンカそっくりな耳が生えていた。
よく見ると、後ろには細い尻尾が見えている。
「今日は何にする?
ダイキが俺たちの仲間になった記念で、大盛りサービスするぞ!」
「、、、じゃあ、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎をお願いします」
「あたしも同じものお願い!」
「あいよ!任せな!」
<終わり>[newpage]
ダイキ
厳しすぎる親の元に生まれ、様々な制限や虐待を受けてきた12歳の人間の少年。
身長は142くらいで、前髪が長い。
人外の存在を認識でき、普段の生活でも自分だけ干渉されるので、異常者という扱いを受けていた。
リンカの弟になってからは、毎日楽しそうに過ごしている。
ちなみにTF先はリンカの影響を受けた。
本名は創也。
固定された名前を漢字で書くと大輝。
実は人外の存在が好き。
リンカ
人間の世界と人外の世界の繋ぎ目を管理している17歳の猫獣人のお姉さん。
身長は158くらいで、何がとは言わないが大きい。
繋ぎ目の管理者で、ほぼ常にあの路地裏にいるが、見た目を偽って人間の世界に遊びに行ったりもする。
ダイキが弟になって、母性が芽生え始めている。
ちなみにリンカの両親は普通にいて、別に繋ぎ目の管理者だったわけではない。
管理者として繋ぎ目にいる影響で、今まで固定された名前はなかったが、ダイキにつけてもらったリンカという名前を気に入り、リンカと名乗り始めた。
固定された名前を漢字で書くと凛華。
実は人間と一緒に夜の街を楽しんだ(健全)のは今回で4回目。[newpage]
「創也!どこに行ったんだ!」
創也が逃げ込んだはずの路地裏で周囲を見回す。
だが、創也の姿はどこにも見当たらない。
、、、?
何か半透明のものが見える気がする。
いや、非科学的だ。
そんなことはありえない。
だが、そこには創也の姿があった。
「創也!」
創也の腕を掴もうとすると、掴めずにすり抜けた。
「は?」
これはホログラムか何かなのか?
だが、それらしい投影機は見当たらない。
創也を改めて見てみると、隣に猫のような特徴を持った女がいることに気づいた。
追っている時は何もなかったはずの創也の腕には、その女がつけている腕輪と同じものがついていた。
「お前、うちの創也に何をした!」
聞こえていないらしく、返事はない。
女が創也に手を差し出した。
すると、創也はその手を取り、どこかに歩き始めた。
「創也!待て!」
創也を追うと、目の前に壁が現れた。
女は、まるでそこに何もないかのように壁の中に入っていく。
創也も、手を引かれてそのまま入っていく。
「創也!」
壁に入ろうとしたが、そこには何の変哲もない壁があるだけだった。
入れなどしない。
そんな非科学的な事象は存在しない。
だが、創也が私を撒いたことも事実であり、逃げ切られたことも事実だった。[newpage]
「ダイキは律儀だねぇ。
わざわざ前の家に挨拶に行くなんて」
「もう完全にリンカさんと同じ獣人になってるし、今追いかけられても逃げ切れるしね」
ダイキという名前で向こうの世界に固定されてから、1週間が経った。
僕の体は完全にリンカさんと同じ猫獣人の体になっていて、もう違和感はない。
「、、、ここだ」
「じゃ早速」
リンカさんがチャイムを押し、ドアの前に立つ。
「はーい、、、」
お母さんが出てきた。
「こんにちは。
挨拶に来ました〜」
「挨拶?」
「この度創也くん、、、
いや、ダイキくんをうちで引き取ることになりまして」
「創也⁉︎
あなた創也を知っているの⁉︎」
「知ってるも何も、、、」
「ここにいるよ」
リンカさんの後ろから顔を出す。
「、、、創也、、、なの?」
「そうだよ、お母さん」
お母さんが膝から崩れ落ちて、僕に縋りつこうとしてくる。
「ごめんね創也、、、
お母さんたちが悪かったわ。
だから、お願い、、、
戻ってきて、、、
姿が変わってても、お母さんたち気にしないわ。
お母さんのお願い、聞いてくれるわよね、、、?」
後ろからお父さんも出てきた。
「!
お前、創也を連れ去ったあの女だな!
創也をどこへやった!」
「僕ならここにいるよ」
お父さんは声を発したのが僕ではないと信じたがっているようで、周囲を見回している。
「こんなことはありえない、、、!
創也がこんなものになるはずがない!」
「僕はここだよ」
「違う!
お前は創也じゃない!」
狼狽える2人を見ながら、リンカさんが口を開いた。
「母親の方はこの姿でも愛そうとしてるのに、父親の方は姿が変わった程度で違うって思うのね」
「それじゃ、さっきのお母さんの発言も嘘になっちゃうね」
「!
創也、、、?」
2人に背を向けて、リンカさんを呼ぶ。
「帰ろう、リンカさん。
ここにもう用はないし」
「それもそうね。
じゃ、お邪魔しました〜」
、、、殺気を感じる。
この体になってから、いろんなものを感じ取れるようになったからかな。
「逃がさないぞ、、、!」
お父さんは玄関に飾ってあった花瓶を手に取ると、リンカさんに向かって投げた。
リンカさんは当たり前のように花瓶を掴み、地面に置いた。
今度はお父さんが殴りかかろうとしてくる。
リンカさんは攻撃を交わすと、そのまま腕を掴んで、庭の池に投げ飛ばした。
「早くいきましょ。
ここにいたら面倒だし」
「さようなら、2人とも」
「「創也!」」
2人の叫び声を尻目に、僕とリンカさんはその場を後にした。