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満月の夜君を照らすそれを食べたいと願った

  9月も半分が過ぎ、半袖では寒くさえ感じる季節になった。

  つい最近まで鳴いていた筈の、蝉の影はどこにも見当たらない。

  少しずつ夜が来るのが早くなり男は家で眠りについていた。

  けして月を見ないように……

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  小さな町の外れにある白い一軒家には、男が住んでいる。

  だがその家には表札どころか窓も無いのだ。

  近くに住む人々は誰も寄り付こうとはしない。近づけば、死んでしまうと噂されているからだ。

  そんな家に住んでいる1人の男は今、カートにトマトを入れている。

  どこから見ても人間としか見えないが、夜になると一変し狼と化する。

  その為、昼間は人間として生きているが夜は人を襲ってしまう恐怖心から外に出ることはおろか、家には窓も作らないようにしている。

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  そんなある日の事、偶然入ったパスタ店で1人の女性と出会った。

  一目惚れだった。

  恋と言うものは1種の麻酔のように、男の中の恐怖心を消し去ってしまった。

  「僕と付き合って貰えませんか。一目惚れなんて言葉で、説明するのも変なんですけど貴方じゃないと駄目なんです!」

  彼女は、一瞬時が止まったかのように僕を見つめた。

  その時間が僕を現実へと戻した。

  「すいません……」

  それだけ言うと僕は店を出た。

  恐らくもう恋はしないだろうと、不確かな感情だけを抱えて。

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  その時、彼女はいきなりの事に思考が停止していたが我に返った時には既に走り出していた。

  人の流れに逆らい息を切らせて走る。

  太陽が沈みだしもうすぐ夜が来る。

  5分程走った時追いつく事が出来た。

  「ハァハァ……すいません!」

  男は後ろを振り返る。

  「さっきの返事なんですけど……よろしくお願いします」

  再び恋の歯車が回り始めるのと同時に、心の奥底から理由の分からない悲しみが出てくるのが分かった。

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