山の主であるヒグマに攫われた青年が、次代の仔を産むツガイの雌になる

  ※微スカ注意。

  ※オス熊×青年→メス熊TFTGです。

  ※AIのべりすとのアシストあり。

  ※一人称です。

  [newpage]

  「ふう、いい景色だな」

  久しぶりのハイキングは、とても爽快だった。

  新年度が始まりからずっと忙しかった仕事がようやく一段落つき、ようやくとれた休みを利用して、僕は自宅から車で三時間ほど行ったところにある、とある山にやってきていた。

  (口コミ通り、静かでいい感じだ)

  あまり有名な観光用の山というわけではないけれど、そのおかげか騒がしい旅行客も少なく、澄んだ初夏の空気を思い切り楽しむことができる。

  山道は木々に囲まれた涼しい空気で満ち、木々の間から差し込む太陽の光もキラキラ輝いて、どこか神秘的とさえ思えるほどだった。

  鳥のさえずりや風の音に癒されながらゆっくりと歩いていると、自然と鼻歌が口からこぼれた。

  ……このときはまさか、これから自分の身に起こることなんて全く想像もしていなかった。

  それは、山の中腹に差し掛かったところだった。

  (ん?)

  突然、背後からガサゴソと何かが草を掻き分ける音がした。

  振り返ると、そこにいたのは大きな熊だった。

  (うおっ!?)

  僕は、驚いて身じろぎした。

  熊よけの鈴は当然付けていたのに、熊は恐れる様子もなく、近づいて来る。

  刺激しちゃいけない。僕はゆっくりと目を合わせたまま後ずさりしようとした。

  しかし、熊は突然足を強く踏み込むと、こちらへ向かって突進してきた。

  「うわぁっ!!」

  逃げる間もなかった。

  一瞬で距離を詰めてきた熊は、目の前で大きく伸び上がると、僕に向かって鋭い爪のついた前脚を振り上げた。僕は、反射的に避けようとしたけど、とても間に合わない。

  熊の前脚が僕の体をなぎ払う。その刹那、鋭い爪で服と皮膚が切り裂かれる痛みを感じた。

  地面に叩きつけられ、そのまま二転三転と地面を転がった。それから一瞬遅れて、全身に痛みが走る。

  (つぅ……っ!!)

  体中に擦り傷や切り傷を負いながら転がる僕に対して、熊はなおも襲いかかってきた。

  (くそっ!)

  必死に起き上がろうともがいたが、熊の方が早い。熊は僕の上にのしかかると、そのまま前脚で押さえつけて身動きを封じてきた。

  「や、やめろぉ!」

  僕は恐怖に顔を引きつらせながらも、なんとか逃げ出そうと必死に身をよじった。

  しかし、熊の力は強く、まるでビクともしない。

  のしかかってくる熊の身体は重く、胸を押さえつけられた僕は、次第に息ができなくなっていった。

  (ああ、僕は…死ぬのか……)

  薄れゆく意識の中で、僕は死を覚悟した。

  ほんの数分前まで、楽しいハイキングだったのに、こんなことで命を落としてしまうなんて。

  そのまま僕の視界は真っ暗になり、意識が遠のいていくのを感じた。

  「……はっ!」

  目が覚めると、そこは薄暗い穴の中だった。

  「僕、生きてるのか……痛っ……!」

  立ち上がろうとして、全身に激痛が走った。見れば、全身は擦り傷や切り傷だらけだ。あたりを見回すと、僕の荷物が散乱していた。ずいぶんひどくやられたらしい。

  おまけに、ツンと鼻を突く獣の臭いが充満していた。

  (ま、まさか……!)

  どうやら僕は気を失っている間に熊の巣穴まで運ばれてしまったようだ。

  本来熊は肉を口にすることはあまりないはずだけど、ここに僕を連れてきたのは、おそらく獲物としてだ。熊は執着が強い生き物。きっと、誰にも取られずに巣穴でゆっくり食べるために運んできたに違いない。

  「早く、逃げなきゃ……!」

  僕は慌てて巣穴から飛び出そうとした。

  だが、その瞬間。巣穴の外から、バキバキという足音とともに、巨大な獣が飛び込んできた。

  「グォォォォ!」

  現れたのはあの熊だった。

  熊は僕を見つけると、大きく咆哮して威嚇した。

  「ひっ!」

  恐怖で動けない僕の身体に、熊が迫る。

  そして、その大きな口をあけて、僕の首筋へと顔を近づける。

  (食われる……っ!)

  僕は覚悟を決めて目を閉じた。

  しかし、次の瞬間感じたのは鋭い痛みではなく、ざらついた舌で舐められるような感触だった。

  (え?)

  恐る恐る目を開けると、そこには大きな熊の顔があった。

  どうやら熊は僕を食べようというわけではなく、ただ単に舐めているだけらしい。

  (うっ……!)

  首筋にかかる臭い息、ざらついた舌の感触が気持ち悪い。

  僕は必死に熊を振り払おうとしたが、力が入らない。

  熊はそんな僕を意に介さず、僕の首筋を執拗に舐め続けた。

  やがて、熊は僕のすでにボロボロになった衣服に牙を突き立てると、それをビリッという音とともに引き裂いた。

  「やっ、やめっ……!」

  僕は、恐怖と恥ずかしさに顔を真っ赤にしながら、抵抗したが、熊は容赦なく僕の体を露わにしてしまった。

  そしてそのまま、全身を舐め回してくる。傷口に熊の唾液が染みて、ヒリヒリとした痛みが走る。

  「ぐあっ、ああっ!」

  必死に身を捩ったが、熊の力が強く逃れられない。

  そのまま全身をくまなく舐められた後、ようやく解放された時には、僕の全身は熊の唾液でベトベトになっていた。

  「ううっ……」

  臭い。気持ち悪い。痛い。僕は涙目になって、その屈辱に耐えていた。

  すると、熊は何かを咥えて、僕の方に投げてよこした。それは、直径2cmほどの、赤く熟した木の実だった。

  「これを、食べろっていうのか?」

  一体どういうつもりなんだ。

  これがおとぎ話の世界なら、熊は本当は僕を食べるつもりじゃなくて、遊んでいただけで、木の実はそのお礼……なんて思うところだけど、そんなわけない。きっとこの木の実だって、何か恐ろしい罠に決まっている……!

  僕は木の実に触れようともしなかった。

  すると、熊は不満そうに唸り声を上げ、木の実を口で咥え直すと、僕の口へ向かって運んできた。

  「や、やめろぉっ!」

  僕は必死で拒んだが、熊の力は強く、無理矢理口に押し付けられてしまう。

  「むぐっ……ううっ……!」

  口の中に木の実の汁が広がり、その酸味と甘みでむせ返りそうになる。

  僕は口を固く結んだまま、首を左右に振った。しかし熊は、それでも僕を食べようとせずに、木の実を僕の口に押し付け続けた。

  (この熊、何がしたいんだ……!?)

  そんなことを考えていると、突然熊は、僕の顎を前脚で抑えつけると、口を無理矢理こじ開けてきた。そして、咥えた木の実を鼻先ごと僕の口の中へ押し込んできた。

  「んぐぅっ、むぐぅっ!」

  喉の奥にまで入り込んでくる異物に、僕は涙目になって抵抗する。しかし、熊の力は強く、全く身動きが取れなかった。そして、ついに木の実が完全に喉を通過すると、熊は満足そうに鼻を鳴らして、ようやく僕を解放した。

  「げほっ、ごほっ……うぅっ……」

  僕は咳き込みながらも必死に息を吸っていた。

  まるで熊とディープキスをさせられたような、そんな感覚だった。口の中は、木の実の汁と熊の唾液まみれだった。熊の体毛も何本か歯に挟まって、鼻を突くような臭いを漂わせていた。

  「うっ、おえぇぇ……!」

  僕は堪らずその場に嘔吐した。

  それでもまだ苦味や生臭さは口の中から消えなかった。

  (な、なんなんだよこいつ……!)

  あまりの気持ち悪さに、僕は涙目になっていた。だけど、そんな僕に構うことなく、熊は再び僕の上に覆い被さってきた。

  「ひっ、ひぃっ!」

  僕は恐怖に震える声で叫んだ。

  熊は今度は僕の首筋を舐め始めた。それは、さっきよりも執拗で、ネットリとしたものに変化していた。

  (こいつ、今度こそ僕を食べようとしているのか?)

  その考えに至った瞬間、全身が凍りつくような悪寒が走った。

  「やめろ、やめてくれぇっ!」

  僕は必死で叫んだ。しかし、熊はそんなことお構いなしに、執拗に僕の首筋を舐め続けた。

  助けを呼びたいが、ここは森の中。しかも、深い茂みの穴の中だ。まず間違いなく声は届かないだろう。そして何より、この状況で声を出しても熊を刺激するだけだ。今は、耐え続けるしかないんだ……そんな諦めの感情とともに、僕の意識は再び闇の中へと落ちていった。

  再び意識が戻ると、朝になっていた。僕は全裸の状態で熊の巣穴の中に横たわっていた。

  衣服はもう粉々にちぎれて、とても身につけられる状態じゃない。

  (さ、寒い)

  初夏とはいえ、山の中は肌寒かった。裸の僕は思わず身を震わせる。

  幸い、熊は僕が気を失っている間にどこかへ去ったらしく、この場にはいないようだ。

  (とにかく早くここを出て山を降りないと)

  僕は近くに転がっていた荷物の中から、スマホを探そうとした。GPSをつかえばどの山道が一番近いかもきっと分かる。救助の要請をするにも、まずはスマホを取り戻さないと。

  しかし、荷物の中をいくら探しても見つからない。

  「くそっ、どこにあるんだ」

  僕が焦っていると、外から熊の足音がした。

  (まずい)

  僕は慌てて物陰に隠れた。

  熊は口に何かを咥えていた。多分、また木の実か何かだろう。

  僕が元の場所にいないことに気づいた熊は、驚いたように辺りをキョロキョロ見回して、鼻をひくつかせている。どうやら匂いを辿ろうとしているらしかった。

  僕は自分の腕に鼻を押し当ててみた。

  昨日全身を舐め回されたせいで、熊の唾液の臭いが染み付いたみたいだった。

  気分が悪いけど、これなら匂いでバレることはないかもしれない。僕は熊が去るまで、じっと息を潜めることにした。

  (……行ったか?)

  しばらく経ってから、恐る恐る物陰から出ると、既に熊の姿は無かった。

  なんとか見つからずに済んだらしい。ほっと息をつくと同時に、空腹を感じた。昨日は木の実を食べただけで、一日食事を摂っていないのだ。

  ふと視線を落とすと、昨日の赤い木の実が落ちていた。おそらく、さっき熊が持ってきたものだろう。

  「う……これ」

  つい手を伸ばしそうになったが、やはり抵抗感がある。食べられないものではないことは昨日経験済みだが、できれば遠慮したいところだ。

  そこへヒュウと風が吹き込んで、衣服を失った身体を再び寒さが襲った。体温が下がっている。おまけに空腹。背に腹は代えられないかもしれない。僕は、意を決してその木の実を口に含んだ。

  「うぅ……」

  口の中に広がる酸味と甘み、そして生臭さ……それは昨日、嫌というほど味わわされた味だった。熊との最悪なディープキスを思い出し、吐き気が襲ってくるが、それを必死に飲み込み、胃へと流し込む。

  やがて全てを食べ終えた後、下腹部にじんわりとした温かさが広がるのを感じた。体温はこれで維持できそうだが、まるでお腹の中に何かがいるかのような――そう思った瞬間、急に激しい便意が襲ってきた。

  (ぐっ、くぅっ……!)

  あまりの腹痛にその場でしゃがみ込む。

  とても我慢できそうにないが、この場で漏らしてしまうのは嫌だった。

  どこか、隅の方に……。そう思い、僕は這いつくばりながら、どうにか熊の巣穴の奥の方に辿り着き、そこで便意を解消させることにした。

  しかし僕がお腹の中のものを出し始めたその時、再び熊の気配が近づいてくるのを感じた。

  (う、嘘だろ)

  間が悪いとはこのことだった。もう身を隠すこともできない。幸い、熊相手に排泄を見られたところで気にすることではないかもしれないが、とても逃げ出せる状況ではなくなってしまう。

  結局、あえなく僕は巣穴の隅で踏ん張っているところを熊に見つけられてしまったのだった。

  「あっ、やめっ……」

  熊は僕を見るなり、大股で歩み寄ってきた。僕は必死に制止の言葉をかけるが、当然聞く耳を持ってくれるはずもなかった。そしてそのまま、僕の排便行為を品定めするかのようにジロジロと見つめてくる。

  まるで終わるのを待っているかのようだった。

  「ど、どういうつもりなんだよ」

  これが終わったら、僕は一体なにをされるんだろう。何をされても、今の僕には抵抗することができない。

  やがてすべてを出し終えた僕は、そのままの格好で身動きできず、恐怖に身をすくませていていた。

  熊の方はというと、待ってましたと言わんばかりにさらに僕へと接近してくる。

  そして、ひょいと軽く僕の身体を引き寄せると、髪の毛を咥えて巣穴の真ん中の方へ引きずっていった。

  「あっつ、いたたたっ」

  そして、僕の身体を地面に這いつくばらせると、僕の尻の方へと顔を近づけてきた。「な、なにを……」

  僕が困惑していると、熊はそのまま僕の尻へと鼻を近づけると、すんすんと匂いを嗅ぎ始めた。

  気色悪い、やめてくれ。怖くて声が出なかったが、心のなかでそう思った、次の瞬間だった。

  「うあっ……!?」

  突然、肛門のあたりに濡れた感触が広がった。どうやら舐められているらしい。僕は嫌悪感を顕にして、身体をよじった。

  しかし、恐ろしいほどの力に身体を押さえつけられ、身動きが取れない。

  やがてひとしきり舐めて満足したのか、熊は僕の尻から口を離した。

  僕は息を荒らげて息を整える。

  もう嫌だ、帰りたい、どうしてこんなことに。そんな気持ちで胸が張り裂けそうになって、涙が頬を伝う。

  そんな僕を見て、熊は何を思ったのか、今度はそのまま、僕の背中にのしかかるように前脚を置いて、押さえ込むように体重をかけてきた。

  「ぐえっ、うぐぅっ!」

  この上何をするつもりだ。

  息苦しさに身悶えしていると、お尻になにか、硬いものが当たっているのに気づいた。それが何なのか、理解したくないのに、なぜか分かってしまった。

  「えっ、嘘、おいっ、やめろよ!」

  熊は僕の叫びを無視して、その肉棒を押しつけてきた。

  「うっ、ぐぇぇっ!」

  肛門に異物をねじ込まれ、痛みと苦しさに僕の口から悲鳴が漏れる。それでも熊は容赦なく肉棒を押し込んでくる。

  「うぐっ、あぁぁっっ!!」

  もう限界だった。これ以上入るわけがない。僕は絶叫のような声を上げたが、熊は無慈悲にも肉棒を押し込み続ける。

  あまりにも太くて長いそれは、僕の肛門を引き裂いて、強引に入り込んできた。

  「痛いっ、ぬ、抜いてっ、おねが、あぁっ!」

  僕は懇願するように叫んだが、熊は動きを止めなかった。むしろ、さらに深く、奥へと突き入れようとしているようだった。

  そしてついに、一番太い部分が僕の中に入り込むと、今度は一気に引き抜かれた。

  「うぐっ!?ああぁぁっ!!」

  内臓を引きずり出されるかのような感覚に、意識が飛びそうになるほどの痛みが全身を襲う。それでもなお、熊は容赦しなかった。再び肉棒が僕の中に侵入する。

  「あっ、うっ、あぁっ!」

  熊は激しく腰を動かし始めた。その動きに合わせて、肉棒が何度も出し入れされ、そのたびに激痛が走る。

  (こんなのっ、無理!無理だよぉっ!!)

  あまりにも痛くて、僕は涙を流しながら叫んでいた。しかし、それでもなお、熊の動きは止まらなかった。それどころかどんどん速くなっていく。

  「ぐっ、うぁっ、ああぁぁっっ!!」

  もう何がなんだか分からないくらいに頭が混乱して、意識を失いそうになる寸前、熊の肉棒が脈打ち、熱い液体が流し込まれたのがわかった。

  「あ、あぁ、あぁぁ……っ!!」

  [newpage]

  次に目が覚めると、僕は熊に抱きかかえられていた。

  「う、うぅっ」

  全身が痛い。特に、お尻の辺りが焼けるように痛かった。恐らく、あの後何度も犯されたのだろう。僕の中で、絶望感がこみ上げてくる。

  (なんで、どうしてこんな目に遭わなきゃいけないんだ……)

  考えても詮無いことだが、考えずにはいられなかった。

  これから自分はどうなるのだろう。

  僕をここへ連れてきてからの振る舞いを見るに、どうやら熊は僕を食べるつもりはないらしい。でも、そのかわりに、熊は僕を慰みものにしようと考えていたようだ。

  これなら、食べられていたほうがマシかもしれない。

  少なくとも、尊厳は保ったまま死ねただろう。

  「はぁ、はぁっ」

  僕は息も絶え絶えになりながら、なんとか熊の腕から抜け出した。もう限界だった。これ以上ここにいたら、本当に取り返しのつかないことになってしまう。

  (逃げないと)

  もう逃げるしかなかった。見つかれば、今度こそ命はないかもしれない。それでも、この場に留まるよりはずっとマシだと信じたかった。

  僕はよろめきながらも立ち上がり、歩き始めることにした。しかし、数歩歩いたところでバランスを崩し、その場に倒れ込んでしまう。

  「う、うぅっ」

  (ダメだ、動けない)

  痛みと疲労感がどっと押し寄せてきて、身体が言う事を聞かない。それでも、僕は必死になって立ち上がろうとした。こんなところで諦めたくない。死ぬのは怖い。でも、なによりも、あんな奴に屈服して、その慰みものになるのはもっと嫌だった。「ぐ、うぅっ!」

  渾身の力を振り絞って、なんとか立ち上がろうとする。しかし、震える膝は言うことを聞かず、そのまま尻餅をついてしまう。

  「はぁっ、はぁ……」

  (なんで、なんで動かないんだよぉ!)

  僕は自分の身体を叱咤したが、それでも動く気配はない。そして、僕が絶望に打ちひしがれていると、突然背後から足音がした。熊だ。そう思った瞬間、身体が硬直する。逃げようとしても身体が言う事を聞いてくれない。

  (ああ、もう、だめだ)

  どのみち、この衰弱した身体では巣穴から這い出したところで、山を無事に降りることなんてできないんだ。それなら僕はもう、死んだも同然。

  もう、どうにでもしてくれ。そう思い、半ば投げやりになっていると、熊はいとも容易く僕を捕まえると、そのまま再び巣穴の奥へと引きずっていった。

  また僕を痛めつける気か。

  諦めた気分でいた僕は、身体が弱っていたこともあり、抵抗する気さえ起きなかった。

  しかし熊は、妙に優しい仕草で僕を寝かせると、痛みと寒さで震えている僕を外気から守るように包み込んできた。

  (ううっ)

  相変わらず、糞や血などの臭いが混じった獣臭に、つい顔をしかめてしまう。でも、熊の毛は柔らかく、とても暖かかった。まるで、僕の身体を労わるように、僕を抱き締めてくれているみたいだった。

  そんな熊の行動に、僕は戸惑いを隠せなかった。

  (どうして、僕を……)

  理由は分からないけど、なんだか胸が切なくなった。さっきまでさんざん酷いことをされていたのに、急に優しくされて、どうすればいいのか分からなくなった。

  熊はそんな僕の気持ちなどお構いなしに、僕を抱き締めたまま眠りについてしまったようだった。そして逃げる気力も体力も残っていなかった僕も、そのまま目を閉じたのだった。

  次の日、僕は全身を這い回る不愉快な感覚で目を覚ました。

  (か、かゆい……!)

  身体中が、猛烈なかゆみに襲われていた。

  これまでしてきたことを思えば、不思議でもなんでもない。丸二日間、僕は裸の状態で野生の熊の巣穴に放り込まれ、舐められたり抱かれたり、尻を犯されたりしたのだから。どんな虫やバイキンが身体に付いたか、わかったもんじゃない。

  見れば、身体中の至るところに、茶色い塩をまぶしたような小さな点々が出来ていた。ダニか何かに刺されたのだろうか。

  (気持ち悪い)

  全身を襲う掻痒感に耐えながら、僕は身体を丸めた。しかし、それだけでは到底この不快感から逃れることなどできないだろう。何か、対処法はないのか?そう思ったその時、熊がのしかかってきた。そして、またいつものように舐め回してきた。

  「う、うわぁっ!」

  身体中を這い回るざらついた感触に、僕は堪らず悲鳴を上げた。しかし、熊はお構いなしで僕の身体を舐め続ける。

  そのうちに、あることに気づいた。

  熊に舐められたところのかゆみが、ますます強くなるのだ。

  「や、やめっ……やめろぉっ!」

  僕は叫びながら必死に抵抗した。しかし、その声は弱々しかった。僕の力では、熊を押し返すことも出来ない。そのままなすすべもなく舐められ続けるしかなかった。

  (うっ、くぅっ!)

  どれくらい時間がたっただろうか。

  ようやく解放された頃には、僕の身体はすっかり熊の唾液にまみれ、身体中がべとべとになっていた。そして、例の痒みはますます酷くなっていた。

  「はぁ、はぁっ、くそっ!もうやめろって!」

  僕は自分の身体を守るように、巣穴の岩陰に蹲った。全身をくまなく這い回る痒みに、身悶えすることしかできない。

  そこへ、巣穴の主である熊がまた近づいてきた。いつものように、木の実を口で投げてよこす。食事の時間だ。僕は、痛みを訴える全身を引きずりながら、なんとか木の実まで辿り着くと、口の中に放り込んだ。舌の上を転がる、ほんのりとした甘味が心地よい。味わっている間は少しだけ、身体に広がる痒みを忘れることができる。

  今日の食事は昨日までより量が増えたようだった。とはいえ、空腹を完全に満たすにはまだとても足りない。数分もしないうちに、与えられた分を全て平らげてしまった僕は、次に別の衝動が湧いてきた。

  (の…喉が乾いた…水がほしい)

  さすがの熊も水を運んでくることはできない。どこかに水はないものかと、僕は周りを見回した。しかし、熊の巣穴の中には、木の実以外のものは見当たらなかった。

  (どうしよう、このままだと干からびてしまう)

  僕は必死に思考を巡らせた。巣穴の外に出たところで、熊がいるんじゃ、結局逃げることはできそうにない。だからといって、このまま喉の渇きに苦しんでいるわけにもいかないのだ。

  (ん?)

  その時突然僕の耳に、何か水の流れる音のようなものが聞こえてきた。

  音はどうやら、巣穴の外の、少し離れた崖の下から聞こえてくるらしい。

  川があるのか。僕はほんの少し希望を持った。

  山の奇麗な川の水なら、なんとか飲めるかもしれない。それに、この酷いかゆみを鎮めるためにも、冷たい川で身体を洗いたかった。

  それにしても、昨日までは全く気付かなかった。あまりの出来事に、そんな余裕もなかったのかもしれない。

  (ここから、出るしかない)

  だけど目の前には、食事を終えた僕をじっと見つめている熊がいる。こんな状態で、外に出られるだろうか。

  「な、なあ……僕、この下にある川に、行きたいんだけど……」

  言葉なんて通じるはずもない。ただ、仕草と態度で雰囲気だけでも伝わるかもしれない。バカバカしいかもしれないけど、僕は一か八か、熊にお願いしてみた。

  僕を食べる気がないどころか、餌付けまでしようとしている熊なら、わかってくれるかもしれない。そんな、淡い期待を抱きながら。

  すると、熊はのそのそと巣穴を出ていくと、僕をじっと見つめたあと、そのまま歩き出した。

  (ついてこいってこと、かな?)

  僕は、少しずつ歩く速度を上げながら、なんとか熊の後を追った。いつの間にか回復していたのか、未だ本調子とはいかないまでも、昨日より随分動ける体になっている。

  しかし、それでも体力は落ちている。いくらも歩かないうちに限界が訪れ、やがて僕は立ち止まってしまった。

  「はぁ、はぁっ」

  荒い息を吐きながら、なんとか呼吸を整えようとするが、頭がくらくらしてくる。

  (少し休まなきゃ)

  その場でうずくまる僕の姿を見た熊は、僕の身体にドンと軽く体当たりをして背中に乗せると、そのまま歩き出した。

  「は、運んでくれるのか…」

  ふいに見せる妙な優しさに戸惑いながら、僕は熊の背中に身体を預けるしかなかった。

  熊の背中から落ちないよう必死にしがみついていると、いつのまにか川のすぐ近くにまで来ていたらしい。水が流れる音と共に、川の匂いが漂ってきたかと思うと、そのまま地面に下ろされた。

  「あっ、ありがとう」

  当然ながら、熊は僕のお礼に答える素振りもなく、お手本を見せるかのように川に口を付けて、ごくごくと水を飲み始めた。乾ききっていた僕も、その横で水を手で掬い、口に運んだ。冷たい水が、喉を潤していく。思わず笑みがこぼれてしまうくらい、今の僕にとっては最高のご馳走だった。

  「ぷはぁ!生き返った!」

  そう言って僕は川の水を一気に飲み干すと、満足そうに息を吐いた。

  このまま、身体も洗おう。裸のまま風に晒されてここまで来たせいで、身体は冷え切っている。水に入るのは危険な気もしたけれど、痒くてたまらない身体を少しでも華麗にしたくて、僕はゆっくりと川に入った。

  「つめたっ!」

  水は、やっぱり冷たかった。全身に鳥肌が立つのを感じながら、それでもなんとか我慢して、全身を水で洗う。特に、胸やお尻周りを中心に重点的に洗った。熊に舐められたところを、忘れずに洗っていく。

  「うわ、ぬるぬるする……」

  こうして自分の身体を触る度に、あの熊の事を思い出してしまい、嫌悪感に襲われる。無理矢理挿入されたせいで裂けた尻の傷口は、冷たい水が沁みる。

  それでも、痒みをなんとかしたくて、僕は我慢して洗い続けた。すると、徐々に痛みは治まっていき、いつの間にか痒さもすっかり消えていた。

  (よかった、これで綺麗になった)

  全身を綺麗にし終えた頃には、もう日が傾きかけていた。

  そろそろ、帰らなきゃ。

  そう思って川から上がったとたん、全身を寒気が襲った。当たり前だ。川に浸かってびしょ濡れになった身体は、実際の気温よりもずっと寒さを感じる。初夏の山は十分低体温症になりうる危険な場所だ。

  「グルル……」

  すると、震える僕を見ていた熊が、一唸りして、そのまま僕の身体をまた来たときのように背中に乗せた。

  (あ……温かい)

  熊の毛皮はゴワゴワして、お世辞にも心地よい肌触りではなかったけれど、伝わってくる体温が、僕の体を温めてくれた。

  「あ、ありがとう」

  そう、熊に礼を言うと、熊はまた、のそのそと歩き出した。そのまま巣穴に戻るのかと思ったら、熊は途中であちこちに寄り道して、木の実や山菜のような葉っぱを集めて行った。僕はその背中で収穫を両手に抱えながら、一緒に巣穴へと戻ることになった。

  (……あれ、そう言えば僕、さっき「そろそろ帰らなきゃ」って……)

  熊の巣穴は、本来僕が帰るべき場所じゃない。少し優しくされたからって、何を考えていたんだ。

  十分な体力を取り戻したら、やっぱり山を降りよう。それまでは、熊の機嫌を損ねないようにする。そう、それだけのことだ。

  一度は諦めた命だったけれど、身体を清められたおかげか、少しだけ前向きな気持ちになれたようだった。

  巣穴に戻ると、熊は集めた山菜や木の実を、僕の目の前に積み上げた。まるで、「食べろ」とでも言うように。

  僕が戸惑っていると、熊は一匹でむしゃむしゃと食べ始めた。

  「ま、待ってよ」

  慌てて僕も、手近な山菜を口に入れてみる。食べたこともないただの葉っぱにしか見えないけど、熊が食べて平気なら、死にはしないだろう。そう思って口に入れた瞬間、苦みが口内に広がるが、それでもゆっくりと噛んでいると、次第に甘みのようなものを感じ始めた。

  「おいしい!」

  思わず声を上げると、熊は満足げに喉を鳴らした。

  それからしばらくの間、僕と熊は黙々と、目の前の木の実や山菜を食べ続けた。これまでの空腹の反動か、いくらでも食べられると思うくらいの食欲だった。

  やがて、熊の方は満足したのか、食料に手を付けなくなった。だけど僕の方はまだ、物足りない気がする。

  そこで、残った木の実に手を伸ばそうとした。すると突然、熊が唸り声を上げた。

  「わ、分かったよ、分かったって!」

  慌てて僕は手を引っこめた。すると熊は、僕の方に歩み寄ってきて、ドンと押し倒してきた。

  (や、やっぱりか)

  なんとなくわかっていたが、優しい熊のままでは終わってくれないらしい。僕は、心の中で覚悟を決めた。

  そして、熊は僕にのしかかってきたかと思うと、自身の身体を僕の身体にこすりつけてきた。

  (せっかく綺麗にしたのにな)

  相変わらず獣臭い熊の身体に、僕は嘆息する。

  でも、今日は一緒に水浴びをしたせいか、いつもより不快感は少ない。昨日まで感じていた吐き気は湧いてこなかった。

  やがて熊の股間のあたりから、なにか硬いものが伸びてくるのが分かった。

  むわりと饐えた臭いが立ち上る。さすがにこっちの臭いには慣れない。

  顔をしかめていると、熊は僕の頭を前脚で軽く叩くと、身体の向きを変えさせていた。僕の頭が、ちょうど熊の股の間に入るように。そして、熊は精一杯身体を丸めて、僕の尻のあたりに顔を埋める姿勢になった。

  何をさせようとしているのか、わからないほど間抜けな僕じゃなかった。

  「もしかして、舐めろ、ってこと?」

  恐る恐る尋ねてみると、熊はその通りだとでも言うように一声鳴いた。

  (冗談じゃない!)

  あんな不快なものを舐められるものか。反射的にそう思った僕は、咄嗟に顔を背けた。すると、逆に熊のほうが先に、僕の尻に舌を這わせてきた。

  「ひゃっ、やめっ、むぐっ」

  ぬるぬるとした感触に、思わず声が裏返る。その瞬間開いてしまった口に、熊の股間から伸びるものが、無理矢理ねじ込まれた。

  「む、ぐ、お、お」

  (い、痛い、苦しい)

  喉の奥まで差し込まれたそれに、僕はえずきそうになる。しかし、上から組み敷いてくる熊に強制シックスナインの体勢にされていて、逃げることも、口を閉じることもできない。

  いっそ歯を立ててやろうかとも思ったけれど、熊のものが大きすぎて顎が外れそうになる。おまけに、口が塞がれているせいで鼻からしか息ができず、おかげでむせ返るような雄の臭いを盛大に吸い込んでしまった。

  (臭い、臭い、気持ち悪い、苦しい、苦しい、苦しい、気持ち悪い、助けて)

  猛烈な吐き気に襲われるが、吐くことさえ許されない。えずいてもえづいても、喉の奥を抉られるだけだ。苦しくて苦しくてたまらないのに、熊は一向に腰を動かし始める気配もない。ただ僕に一物を咥えさせながら、僕の尻をビチャビチャと舐めてくる。

  熊が尻を舐めるたびに、僕の身体もビクビクと痙攣する。もはや快楽なんて感じる余地もない。僕はただ、ひたすらに苦しいだけだった。

  (はやく、早く終わってくれ)

  やがて、突然熊が動き出した。喉の奥でビクビクと脈打ち始めたかと思うと、そのまま大量の液体を僕の口の中に吐き出し始めた。その量は尋常ではない。まるで、おしっこをされているようだった。

  (お、溺れる、死ぬ、死んじゃう)

  溺れそうなほど大量の液体を吐き出すことも出来ず、僕はただ胃に流し込むしかなかった。それでもなお、熊の射精は止まらない。僕は涙目になりながら、必死でそれを受け止めた。

  ようやく熊の射精が終わったとき、僕の意識は朦朧としていた。

  熊が、身体を起こす。

  「げ、げほっ、ごほ、うぇっ」

  口いっぱいに吐き出された精液を吐き出すように咳き込むと、白い粘液がびちゃりと地面に吐き散らされた。それでも全部吐き出すことは出来ず、胃の中に熊の精液が溜まり続けていた。

  吐き出してしまいたい。でも、吐き出したらまた何かされるかもしれない。そう思って我慢していると、熊はまるで僕を気遣うように、頭を優しく撫でてきた。

  「う、うう、ぐすっ」

  今まで僕を痛めつけていた熊が、突然優しくなると、もう、僕には訳が分からなかった。様々な感情が混ざり合い、気付けば僕は嗚咽を漏していた。

  やがて、熊は僕の身体を抱き寄せると、ゆっくりと、うつ伏せに寝かせた。

  「えっ、まさか、まだ、やるの?」

  熊は、何も答えなかった。ただ、無言のまま、僕の上にのしかかってきただけだった。だがその股間を見ると、再び硬く反り返ったものが、そこにはあった。

  「ちょ、ちょっと待ってよ!もう限界だって!」

  慌てて逃げようとするが、熊の方が圧倒的に早い。あっという間に組み伏せられてしまった。そしてそのまま、僕の尻に股間を押し付けてくると、一気に挿入してきた。「ぐあああっ」

  昨日、さんざん犯されたおかげで、僕の尻はすでに熊のものを容易く受け入れるようになってしまっていた。不思議と、裂けたはずのところは傷が塞がっていて、血は出てこない。だけど、だからと言って痛みが消えるわけじゃない。

  「やめて!痛い、痛いって!お願いだから!」

  必死に叫ぶが、熊は一向に動きを止めようとしない。むしろ、どんどん動きが激しくなるばかりだ。

  「ひいっ、いぎぃっ!」

  そうしていると、僕の身体に異変が起き始めた。最初は痛みしか感じなかったそれが、やがて、じわじわとした快感に変わり始めたのだ。

  (な、なんで?どうして、こんな、痛いだけのはずなのに)

  意味が分からず、混乱する。その間も、熊は動きを止めようとはしない。むしろ、僕が快感を感じ始めたことに気が付いたのか、よりいっそう激しく腰を打ちつけてくる。

  「ひっ、あっ、あんっ」

  (どうして、なんで、こんなに、気持ちいいんだ……)

  痛みと快感が混ざり合い、頭が真っ白になるような感覚に襲われる。いつの間にか、痛みは殆ど感じなくなっていた。それどころか、もっとして欲しいという欲求すら湧き上がってくる始末だ。

  (ああ、きっと、僕はもうおかしくなってしまったんだ)

  訳が分からないまま、ただ、熊に犯され続けた。

  [newpage]

  気が付くと、朝になっていた。

  まだ、頭がボーっとする。昨日の夜ことが、よく思い出せない。ただ、熊に犯されて、何度も絶頂を迎えたことだけは覚えている。

  ツン、といつもの熊の匂いが鼻をついた。

  僕の身体を包み込むように、熊が、僕にのしかかって寝ていた。温かいのは助かるけれど、昨晩の行為も含めて、また身体が汚れてしまったなと思う。

  (せっかく昨日、洗ったのにな)

  そういえば、あの痒みがまた再発しているようだった。

  ポリポリと掻こうとして自分の腕に手をやったところで、そこで僕は違和感に気づいた。

  (あれ?)

  ざわ、と何か薄い絨毯に触れているような感触を覚えて、腕に目をやった。

  (なんだ…これ…?)

  そこには、茶色く太い毛がみっしりと生えていた。慌てて身体の色んなところを触ってみると、どうやら毛は顔を除いた全身に生え広がっているようだった。まだ長さは短く、生え始めといった感じだったけれど、明らかに普通の体毛とは違う。まるで動物の、それも熊の毛のような……。

  (まさか、この熊の毛が、僕に生えてきたのか!?)

  全身に鳥肌が立った。あまりにも非現実的な現象に、吐き気を催す。

  「グルル、グォ」

  ちょうどそこへ、熊が目を覚ましたようだった。

  熊は僕の身体を見ると、嬉しそうに喉を鳴らし、まるで毛繕いをするみたいに舌を伸ばしてきた。

  「ひっ、や、やめて、あっ」

  ざらついた舌に舐められた瞬間、全身が甘く疼き始めた。まるで全身の神経が剥き出しになってしまったみたいに敏感になり、少しの刺激でも耐え難い快感として受け取ってしまう。昨日までは、ただ気持ちが悪いだけだったのに。

  やがて、僕は悲鳴を上げながら絶頂をむかえた。

  「う、うう……」

  痒みと快感のはざまで身を震わせる僕を慰めるように、熊はぺろりと僕の鼻先を舐めてきた。生臭い唾液の臭いが直で突き刺さってくる。

  (ああ……)

  でも、僕はもうその匂いに顔をしかめることはなかった。それどころか、身体の奥でなにかがキュンとなるような、妙な感覚がする。

  (もっと、もっと、来て……)

  無意識のうちに、僕は舌を出し、おかえしするみたいに熊の顔をそっと舐めた。

  「グル、グゥ」

  熊は、僕のその行動に興奮したのか、僕を仰向けにさせると、僕の口元に、自身の股間を押し付けてきた。

  そして、再び僕の唇を、股間の、あの一物を、舐めろと言わんばかりに押しつけてくる。

  「う、うん」

  一瞬ためらったものの、僕はそのグロテスクな肉棒に舌を這わす。口の中に青臭さと苦さ、そして強烈な獣臭が広がったけれど、昨日までの嫌悪感はもうなかった。だって、その臭いはもう、僕自身の身体からも、漂っていたのだから。

  「んっ、んんっ、じゅるっ」

  僕は、夢中でそれをしゃぶっていた。まるでこれが美味しいものであるかのように、一心不乱になって舐め続けた。やがて熊のものが徐々に硬くなってきたかと思うと、昨日と同じように熱い粘液を吐き出した。

  ごくっと喉を鳴らして飲み込むと、身体の内側からポカポカしてくる。お腹のあたりが、キュウっと締め付けられるような感覚があった。

  (ああ、美味し……!)

  どう考えても美味とは言えないはずの精液なのに、すっかりおかしくなった僕の頭は、それを甘い蜜のように感じていた。

  すっかり飲み干すと、熊はまるで僕を褒めてくれるみたいに優しく頬を舐めてくれた。

  「ふふ、優しいんだね、本当に」

  この日を境に、僕は熊の行為を拒絶することはなくなっていった。

  それから毎日、僕は熊に犯される日々を送った。

  僕が逃げる気を失くした事に気づいた熊は、明るい時間は僕を残して餌探しに出かけるようになった。その間僕は巣穴でひとり眠って過ごし、夜は熊が集めてきた食料に舌鼓をうち、それから熊が満足するまで、熊に身体を捧げた。

  そうしているうちに僕の身体の変化は進んでいった。全身の体毛は日に日に濃くなり、痒みも激しくなっていった。だけど、それを気にしている余裕は、もうなかった。

  だって、その何倍もの快楽を、熊は与えてくれるのだから。

  「ふぅっ、ふっ、ああっ、んうううっ!」

  僕が身体を仰け反らせながら絶頂を迎えると同時に、僕の中に大量の熱い液体が流し込まれる。腹の中を満たされるような感覚に、僕は身を震わせた。

  (ああ、なんて幸せなんだろう)

  思わずそう思ってしまうほど、今の僕には安らぎと満足感があった。まるで、恋人に愛されているかのような感覚に近い。

  はじめ、この熊は僕を食べる代わりに性のはけ口にするつもりなのかと思っていた。けれどだんだん、そうではなく、熊は僕を恋人にするつもりで攫ったんじゃないかという考えが、頭から離れなくなった。

  なぜなら熊は、行為こそ激しくて辛い部分もあるけれど、その前後にはいつも僕を気遣うように優しく扱ってくれるからだ。

  「でも、僕は人間で、しかも男なんだけどなあ」

  熊でもなければ、メスでもない。そんな僕を恋人にしようだなんて、熊の方も何を間違えたのか、随分おかしなことを考えたもんだ。だけど、いまとなってはそんなところも愛おしく思える。

  「おっちょこちょいなんだね」

  熊の頭を撫でて、そっと顔を擦り付ける。すると、熊もお返しとばかりに僕の身体を舐めてくる。ざらついた舌で全身を舐められると、また身体が疼いてきて、僕はついつい求めてしまうのだった。

  「ねえ、もっと僕を気持ちよくさせてよ」

  僕がそう言うと、熊は嬉しそうに尻尾を振りながら覆い被さってきた。そして、今度はゆっくりと行為を始めると、徐々にそのスピードを速めていき、最後には激しく腰を打ち付けてきた。

  「んっ!ああっ!」

  まるで獣の交尾のような、激しく容赦のない行為に、僕はただただ嬌声を上げ続けるしかなかった。

  [newpage]

  それから数日後、いつものように熊と交わっているときのことだった。

  這いつくばって思い切り後ろから突かれながら、垂れてきた前髪をよけようと額に手をやると、手のひらにザワリとした感触が伝わってきた。

  (え?)

  頬にも触ってみると、同じような感触があった。鏡がないので、顔は見えなくても、自分に起こった変化を、僕は肌で感じ取っていた。

  (まるで獣の毛みたいな触り心地だ……)

  そうだ、それはまさしく獣の毛のような感触だった。そして同時に、最近僕の全身に無数の剛毛が生えてきていたことを思い出した。

  「ちょ、ちょっと待って!」

  慌てて熊にそう言うと、熊はまるで僕の言葉を理解したかのように動きを止めてくれた。

  急いで熊の下から這い出して、全身を改めて触りながら確かめてみる。

  (う、嘘でしょ)

  なんと、僕の身体はいつの間にか、手のひらと足の裏以外、肌が見えないほど濃く密集した茶色い毛に覆われていた。おまけに、ずっと巣穴で食べるか寝るか、ヤるかしかしていなかったせいか、ずんぐりとした丸みのある体型になってきている。まるで、熊のように。

  「グルルゥ」

  混乱している僕の隣で、熊が、僕の顔を舐めた。まるで、愛しいものを見るような目だ。

  「……気に入って、くれてるの?」

  恐る恐るそう尋ねると、熊は嬉しそうに、僕にすり寄ってきた。

  「そっか、嬉しいな」

  僕は、熊を抱きしめた。毛の中に顔をうずめると、熊の匂いが、鼻の奥深くまで届いた。

  そして、その時かすかに、声が聞こえたような気がした。

  『いいぞ、いいぞ、もっと、オレ好みのカラダになっておくれ』

  僕は目をパチクリさせた。

  ……もしかして、熊が喋った?

  そんな馬鹿な、そんなこと、あるはずがない。

  でも、僕の耳には確かに聞こえていた。『オレ好みのカラダになっておくれ』と。

  結局、その日はそれ以上声が聞こえてくることはなかった。

  翌日から、僕も食料を探しに巣穴を出ることになった。

  熊が餌探しの手本を示すように、鼻を鳴らしてあたりの匂いを嗅いでみせる。僕も真似をして、鼻をひくつかせてみる。

  すると、何やら甘い匂いを感じた。

  「あっ、この匂いは」

  熊にそう言うと、熊は良くやったと言うように僕の尻をぺろりと舐めた。

  「ふふ、くすぐったいよ」

  僕は笑いながら、熊と一緒に、その匂いのする方へと駆けていった。

  全身が毛皮で覆われたおかげか、冷たい風が幾度か吹き付けたけれど、ちっとも寒さを感じなかった。むしろ、風が当たるたびに毛が逆立って、それがとても心地よかった。

  三十分ほど行ったところで、ようやく僕たちは匂いのもとにたどり着いた。

  大きな木の洞の中から、蜂の羽音と甘い匂いが伝わってくる。ミツバチの巣だ。

  こんな遠くの蜂蜜の匂いを嗅ぎ取れるようになっていたなんて、僕は正直、自分の鼻に驚いていた。これも熊との暮らしが、僕をどんどん変化させているからなのだろうか。

  熊は、すぐに木に向かって爪を立て、蜂の巣をほじくり出しにかかった。

  とたんに大量のハチがワラワラと飛び出してくる。

  「グル、グオォ」

  熊は、巣を守ろうと襲ってくるハチたちを気にする様子もなく手慣れた様子で、次々と巣をほじくり出しては、僕の方に投げて寄越した。

  それをキャッチすると、ハチが僕の方にもよってくる。

  「うわあっ!!」

  僕は、思わずその場にうずくまった。背中にハチが群がってくるのがわかる。

  刺される、と思ったけれど、一向に痛みがやってこない。

  (あれ?)

  恐る恐る見てみると、ハチたちはどうやら僕の身体に針を突き立てようとしているようだったけれど、僕の全身を覆う硬い毛と分厚い皮に阻まれて、なかなか、針が通らないようだった。

  「グオオッ、グルルル」

  熊が、ハチたちに怒りの声を上げると、蜂たちは慌てたように散って行った。

  こうして僕たちは、ハチミツたっぷりの巣を手に入れることに成功したのだった。

  その日はそれから巣穴に戻らず、移動を続けた。熊の縄張りは大分広いようで、次の寝床らしき場所にたどり着いたのは、日も暮れかけたころだった。

  「グル、グオォ」

  熊は寝床に腰を据えると、まずはその場で糞をし始めた。漂ってくる匂いで、僕にもその意図が伝わってくる。ここは俺の場所だと言っているんだ。

  ひとしきり糞をし終わると、熊は僕の方をじっと見つめた。まるで次はお前の番だと言っているかのようだった。

  「い……いいの?僕の匂いなんか、つけちゃって」

  僕が恐る恐るそう言うと、熊は嬉しそうに尻尾を振った。どうやら、構わないということらしい。

  「わかったよ、じゃあ遠慮なく」

  僕は熊の隣に座ると、同じようにして糞を始めた。僕にとって、初めての縄張り宣言だ。熊は、僕の肩を優しく抱き寄せ、それから僕の頰に、自らの頰をすりつけてきた。

  「グルルルル」

  まるで、良くやったというように褒めてくれているかのようだった。なんだか嬉しくなって、僕は思わず、熊の腕に自分の腕を絡めた。

  「グ、グルゥ!?」

  突然、そんなことをされた熊は、びっくりしたように僕を見た。それがまた可愛らしくて、僕はつい笑ってしまった。

  「あはは、ごめん、ちょっと甘えたくなったんだ」

  そう言って、今度は自分から熊の腕にしがみつくと、また頰をすり寄せた。

  熊は驚いた様子だったが、やがて僕の体に顔をうずめるように甘えると、お返しとばかりに僕の背中をぺろぺろと舐めてきた。くすぐったいけど気持ちいい。僕もそれを真似して、熊の鼻先を舐めた。

  「グ、グルゥ、グルルッ」

  すると、熊は興奮したように鼻を鳴らすと、今度は僕の首筋に噛みついてきた。

  痛い、と反射的に身体がこわばったけれど、すぐに思ったほどじゃなかったことに気づき、ほっと胸をなでおろす。どうやら厚くなった皮膚が、ハチのときと同じように身を守ってくれたらしい。

  (これなら、思いっきり愛してもらえるのかな)

  そう思うと、僕は熊に身体を委ねた。

  「グル、グゥ、グルルルッ」

  熊は僕の身体を舐めながら、僕の身体に自らの剛毛を押し付けて、僕よりも自分の方が上だと、匂いをつけ始めた。

  (嬉しいっ……!)

  僕の中に、本能的な感情が芽生えてくる。強いオスに愛され、マーキングされる。それは熊のメスにとって、この上ない喜び。

  (あれ?)

  そこで違和感に気づいた。僕は熊でもなければメスでもないはず。それなのに、まるで獣じみたことを考えて……?

  そういえば、と思って僕は自分の股間に手を伸ばした。熊に攫われてからというもの、何度も絶頂を迎えていながら、ここを使ったことは一度もなかった。

  僕は、自身がオスであることを思い出そうと、自分の股間をまさぐった。

  (え……どこ、行った?)

  いくら探しても見つからない。毛皮に埋もれて、あるいは熊のように体内に引っ込んでしまっているだけかとおもったけれど、どれほど指を伸ばしてもそれらしきものに手が当たらないのだ。

  (な、なんで、どうしてっ)

  ひどく混乱した。すっかり毛深くなって、今や顔にまでみっしりと毛が生えて獣のような有り様になってしまったとはいえ、自分がオスであることには変わりないと思っていたのだ。それが、どうして、こんなことに。

  自分の身体のどこを探しても、オスの証しを見つけることができない。絶望で、涙がこぼれそうになった。

  そんなときだった、熊が僕の胸を舐り始めたのだ。

  「ひっ……!」

  そこで僕は思い出した。前に一度、熊が発したような気がした、あの言葉を。

  『オレの好みのカラダになっておくれ』

  「まさか……」

  僕の想像を肯定するかのように、熊はさらに僕の胸を前足で押すように揉んできた。そうして僕の顔に何度も舌を這わせてくる。まるで、『お前の身体をもっとオレ好みに作り替えてやる』とでも言っているかのように。

  (嫌だ、嫌だよっ…!)

  僕は泣いた。自分がもう、オスとしてではなく、完全にメスとして扱われていることを思い知らされたからだ。

  (僕はメスなんかじゃないっ、オスだっ、オスのはずだ、メスになんかなりたくない、なりたくなぃいっ)

  泣きながら必死に熊に懇願するけれど、熊は構わず僕の身体を蹂躙していく。

  涙の訳は、抵抗できない悔しさだけじゃなかった。心の何処かで、自分が本能に飲み込まれつつあることも理解していたからだった。

  もっと、もっと自分をいじめて欲しい。強いオスとして、あたしを[[rb:番 > ツガイ]]にして欲しい。そんな、メスの本能が、僕を苛み始めていた。

  (だめ、だめだ、絶対に、メスになっちゃだめ、僕はっ、あたしはっ)

  最後の理性で必死に自分を奮い立たせるけれど、熊は僕の胸から手を離したかと思うと、今度は僕の股の間に手を伸ばしてきた。

  「だ、だめっ!」

  あわてて足を閉じて抵抗しようとするけれど、熊はそれを許さなかった。強引に足を開かせられて、そのまま、そこを舐めてきたのだ。

  「ああっ!やめ、やめて、やだ、そこだけはっ」

  するとその時、また声が聞こえてきた。

  「諦めろ。オマエはもう、オレと一緒に旅に出た時点で、オレの[[rb:番 > ツガイ]]になったんだ。さっき、糞のマーキングもしただろう。あれでオマエは、正式にオレのメスになったんだ」

  「う、嘘、そんなの、信じ、ない」

  僕は泣きながら首を振った。けれど、熊はお構いなしに、僕のあそこを舐め続けた。そこはオスではあり得ない、精を受けるために存在する、メスの器官への入口。

  「ああ、あ、ある…あるぅ……」

  「そうだ、オマエはメスだからな」

  もはやハッキリと熊の声が聞き取れる。僕は、自分が完全にメスになってしまったことを認めざるを得なかった。

  「う、う、あ、あっ」

  「ふふ、可愛いなぁ、いいメスになったな」

  熊の舌の動きに合わせて、僕の口から女の子みたいな声がもれる。恥ずかしくて死にそうだ。でも、僕自身はどんどん興奮していくのがわかった。身体の奥がきゅんきゅんして、子宮が熱くなって、あそこから蜜を垂らすのがわかる。

  (ああ、だめ、こんな、こんなことで感じちゃだめなのに)

  僕がいくら必死に自分に言い聞かせても、熊に可愛がられているという事実は変わらない。僕の身体は、もうすっかり、メスとして発情してしまっているのだ。

  「グルルル」

  しばらくして熊は満足そうに喉を鳴らすと、僕を見下ろすようにして言った。

  「まずはヒトだったオマエのために、ヒトのやり方を真似してやった。どうだ、気持ち良かったか」

  「ひ、ヒトだったって……」

  その言葉に、僕はまた絶望的な気持ちになった。やっぱりもう、僕はヒトじゃなくなっているんだ……。

  どうして今まででなんとも思わなかったんだろう。見れば僕の身体はもはやほとんど獣のそれだ。硬い毛皮、分厚い皮膚。そういえば嗅覚だって、人間離れしていた。正気に返ってみると、こんな恐ろしいことになっていたなんて。

  「か、帰して……僕を、もとに戻して」

  聞き入れてもらえるとは思えなかったけれど、熊に懇願してみた。

  すると熊は、挑発するように笑った。

  「ハハハ、戻りたいか。ヒトのオスに?」

  「う、うん!戻りたい!」

  「それなら、オレはこれからオマエをオレたち熊のやり方で抱かせてもらう。オマエがはもうヒトじゃないが、まだ本物の熊でもない。本気でヒトに戻りたいなら、最後まで心で抵抗してみせろ。できるものならな」

  僕はすぐに頷いた。

  「わ、わかった」

  「よし、もし一度でも熊になりたいだとか、オレの子を孕みたいなどと考えれば、もうオマエは二度とヒトには戻れなくなるぞ」

  「わかった」

  僕は力強くもう一度頷く。すると、熊は満足そうに笑った。

  「いい子だ」

  その笑顔が、今は恐ろしい。

  「それじゃあ、はじめるぞ」

  そう言って、熊は僕をうつ伏せにさせると、後ろから僕の股の臭いを嗅いできた。

  「ひゃうっ」

  「うん、いい匂いだ。まだまだ弱いが、熊のメスらしいフェロモンも出始めているぞ」

  熊はわざとらしくそう言って、僕の心を折ろうとしているようだった。でも、そんなことには絶対負けない。絶対に、ヒトに戻ってやるんだ。

  「グルッ、グオォ」

  熊はそれから勢いよく僕にのしかかると、なんの予告もなく僕の出来たばかりのアソコに、その剛直を突き入れてきた。

  「ああっ、痛っ……は、初めて、なのに」

  「そんなもの、熊の世界では関係ない」

  熊の、太く、熱い、熱いモノが、僕の中に入ってくる。

  「ああっ、おっきい、すごぃ、あ、あああっ」

  「ふふ、そうだろう、オレのモノは、立派だろう」

  熊が、得意げに笑って、腰を振り始める。最初は、まだ、ゆっくり。

  「ああっ、やっ、んんっ、んっ」

  「どうだ、気持ちいいか」

  「そんな、ことないっ!気持ち、よくなんか、ないっ!」

  嘘だった。凄く、気持ちいい。だけど、それを認めてしまったら、僕の心は完全に屈服してしまうだろう。

  「ふふ、強情だな。だが、いつまで耐えられるかな?」

  熊はそう言うと、激しく腰を打ち付けてきた。パンッ、パンッと大きな音を立てて、僕のお尻と熊のお腹がぶつかる。

  「ああっ、やだっ、激しっ、んんうっ」

  「どうだ、もう降参したくなってきたんじゃないか?」

  熊が嘲笑うように言う。けど僕は首を横に振るだけで精一杯。

  「くそっ、強情、だな、ならっ」

  熊はさらにペースを速めて僕を責め立てる。そのたび、僕の口からは甘い声が漏れる。

  「ああっ、んうっ、はあっ、やっ」

  そして、ついにその時が来た。熊がひときわ深く突き入れてきて、そして僕の一番奥で熱いものが弾けるのがわかった。同時に、僕は絶頂を迎えていた。身体が痙攣し、頭の中が真っ白になるような快感に襲われる。けれど熊はお構いなしに、その後も何度も、容赦なく僕の中に射精し続けた。

  「はあっ、ああっ、んうっ、だめっ、もう、やめてぇっ!」

  絶頂の余韻に浸る暇もなく、熊は僕の子宮にたっぷりと精液を注いでくる。僕はあまりの量に苦しくなって逃れようとするけど、熊はその巨体で僕を押さえつけてそれを許さない。それどころか、さらに激しく腰を動かして、射精しながら何度も何度も僕に打ち付けてきた。

  「ああんっ、もう無理っ、壊れちゃうぅっ」

  それから、いったいどれだけ時間がたっただろう。

  やっと熊の射精が終わると、僕のお腹はぽっこりと膨らんでしまっていた。

  「はあ、はあ、もう、許して、お願い」

  息も絶え絶えに懇願すると、熊はようやく僕のアソコから、自分のモノを抜いた。

  「どうだ、オマエの身体に、熊のやり方は染みたか」

  「う、うぅ、最、低」

  僕は弱々しく毒づいた。

  しかし、熊は満足そうに微笑むと、僕に仰向けになるように言った。仕方なく従うと、熊は僕のお腹をさすりながら、今度は優しく僕を抱きしめてキスをした。

  「ん、んん…」

  どうして、そんなに優しくするの。

  また、涙が出そうになってしまう。

  「ふふ、どうした、気持ちよくなかったか」

  熊のからかうような問いに、僕はつい正直に首を横に振ってしまった。

  熊はまた嬉しそうに笑った。そして、僕のお腹を優しくさすりながら、言った。

  「そうだな、オマエはちゃんと、熊のやり方で気持ちよくなれたんだ」

  その言葉に、ゾッとする。

  「さあ、これでもヒトに戻りたいのか?」

  僕は、すぐさま答えた。

  「ぼ、僕は、熊じゃ、ない」

  「そうか、まあ、気長にやろうじゃないか」

  熊は僕の抵抗にも上機嫌を崩さずに僕を抱き寄せる。そして、また僕の首筋を舐めて、キスマークをつけた。

  疲れ果てていた僕は、そのまま意識を手放してしまった。

  [newpage]

  次の日も、熊は僕を縄張り一帯へと連れ回した。道中いくつかの目立つ木に、背中をこすりつけろと指示され、わけもわからず言われるがままに従うと、すぐに行動の意味が分かった。

  (ここは、僕の場所だ。僕と、この熊の……!)

  そんな気持ちが、メラメラと湧いてきたのだった。

  これは、ヒトの考えじゃない! 熊の本能……!

  そう思うと、憂鬱な気分になった。

  「どうだ、自分の匂いをつける、マーキングのやり方は覚えたか」

  熊が、僕の後ろでニヤつきながら言った。僕は悔しさと恥ずかしさに、唇を嚙みしめながら、黙って頷いた。

  (だけど、絶対に屈しない。ヒトに、戻るんだ!)

  そう心の中で誓うも、その後もことあるごとに熊の本能に飲み込まれかけてしまった。熊も熊で、僕がヒトの理性を完全に取り戻さないように毎晩も僕を抱き潰し、たっぷりお腹の中に精液を注いできたのだった。

  そして、大移動を始めてから一週間ほどが過ぎた頃のことだった。

  「うう、もう、歩けない……」

  その日はどうしたことか、出発して一時間も経たないうちに身体が疲れ切って、僕はその場にへたり込んでしまった。

  すると、熊はニヤニヤしながら言った。

  「歩けないか」

  「う、うん」

  「なら、手をついてみたらどうだ?」

  「手を、つく?」

  わけがわからず、それでも言われるまま地面に手をついた。

  (あ、ああ……!)

  その瞬間、僕は理解してしまった。

  僕が歩けなくなったのは、体力がなくなったからじゃない。二本足で立つことが、難しくなっていたからだった。

  いつのまにか、僕の身体はずいぶん大きく膨らんでいた。足は太く短くなり、腰骨は横に広がり、背骨は曲がって猫背になり、肩幅は反対に縮んで前傾姿勢しか取れないようになっていた。首は太くめり込むような格好になっている。見れば、手の形も変形して、指は短くなってうまく動かせなくなり、ずんぐりした丸い形になってしまっている。手のひらには黒くて硬い、分厚い肉球が出来ていた。そして、極めつけには長い、鋭い鉤爪が生えていた。慌てて確かめると、足も同じようになっている。もはや手足と言うより、前足と後ろ足といった方がいいような形だった。

  いつのまに、こんなに変わってしまったんだろう。

  「四本足で歩くのが、楽だろう」

  熊の満足げな声が聞こえる。僕は、悔しくて、情けなくて、泣きながら何度も首を横に振った。

  「くそ、こんな、嫌だっ」

  僕は必死になって立ち上がろうとするけれど、一歩でも歩こうとすると、バランスが崩れて前のめりに転んでしまう。

  「あ、ああ、」

  僕は情けなさに涙が出てきた。熊は、そんな僕を見て、楽しそうに笑った。

  「ふふ、ほら、転んでしまったじゃないか」

  そう言って、熊はさっきから僕の視界に入り込んでいた筒状のなにかに、ツンと鼻をぶつけてきた。

  「いたっ」

  鼻を押しつぶされたような感覚が、顔面に走った。

  (え……?)

  その感覚に、考えたくもない想像が働く。

  熊は驚いた表情の僕を相変わらずニヤついた様子で見つめている。

  (そんな、まさか)

  僕は恐る恐る、その筒状のなにかに自分の手の爪をちょんと当ててみる。

  (やっぱり、そうなのか)

  それは間違いなく、マズルとなって伸びた僕の鼻だった。

  「う、うそ、だ、こんなの」

  僕は絶望的な気分になった。もはや、僕の肉体は、どこからどう見ても、ヒトではない。

  「さあ、もういいだろう。行くぞ。ついてこい」

  熊は、僕の心情など微塵も感じ取ることなく、嬉々として言った。

  スタスタと四本足で行ってしまう熊の後ろ姿を、僕は必死に、二本足で追いかけようとした。けれどやっぱり、何度やってもうまく歩けない。どんなに頑張っても、精々二、三歩歩いただけで前のめりに倒れてしまう。

  「お、置いて行かないで!」

  慌てて叫ぶと、熊はすぐに立ち止まり、首だけをこっちに向けてニタリと笑った。

  「無理をせず、オマエが一番歩きやすい方法で歩けばよいだろう?」

  それは、四本足で歩けということだ。それは、ヒトであることを捨てるのと同じ。嫌だ。嫌だ。嫌だ……!

  でも、どうしても、二本足では歩けない。

  散々悩んだ挙げ句、僕はもう一度、そっと前足になってしまった手を地面についた。

  (ああ……)

  悲しいほどに、しっくりくる。人の体で四つん這いになったときとは明らかに違う。これこそが、普通に立つ姿勢だと感じるような、そんな感覚。

  最初の一、二歩は不慣れでつまずきかけるも、その後はすぐに体が馴染んでいった。

  「上手じゃないか。どうだ、走ってみるか。二本足で走るよりも、ずっと速く走れるぞ」

  熊はそう言って、僕の返事を待たずに駆け出した。慌てて僕も追いかける。

  四足歩行で走るのは、熊の言うとおり、二本足よりもずっと速く、走るというよりも、風のように駆け抜ける、と言った方が相応しい。

  「楽しいだろう」

  熊は余裕綽々で走りながら、時々こっちを振り返って笑った。

  「う、うぅ……」

  自然と息が荒くなり、声が漏れる。それは、自分の口から出ているはずなのに、どこか遠いところから聞こえるような不思議な音だった。

  もはや、人の体ではどうやったって届かない距離を軽々と走り回る僕を見て、熊はまた楽しそうに笑った。

  「ははは、オマエは筋が良いな」

  それからも僕たちは、歩きながら進みつつ、時折止まって小休止をはさみながら、縄張りの移動を続けたのだった。

  それから、更に一週間ほどが過ぎ、季節がすっかり真夏へと変わった頃、やっと、僕たちは最初の巣穴に戻ってきた。

  「こ、ここは……」

  見慣れた山、見慣れた川、懐かしい森の匂い。どれもこれもが懐かしかった。しかし、その一方で、僕の体はもう、以前の僕ではないことがはっきりとわかる。四足歩行で歩き続けるうちに、すっかり前足と後ろ足になじんでいた僕は、二本の足で歩くという発想もなくなってきていたからだ。ここにいた頃は、どこへ行くにも二本足で歩き回っていたのに。

  「どうだ、懐かしいだろう」

  熊は、自分が育て上げたメスを自慢するように、嬉しそうに言った。

  僕は少しムッとして言い返した。

  「そんなことより、早く、してよ。マーキング」

  そうだ。僕たちは縄張り一帯にマーキングをして回る旅に出ていたんだ。最後に、出発点のここにしっかりとマーキングしなくちゃ、終われない。

  順番は、主人であるオスから。僕はその次だ。

  「ああ、分かっている」

  熊はそう言うと、巣穴の入口に座り込んで、溜め込んだ糞を、そこに勢いよくひり出した。

  (凄い、こんなにいっぱい)

  思わず、見とれてしまう。そして、それが終わった熊は、次に僕の方を見て、鼻で笑った。

  「ほら、次はオマエの番だ」

  そう言われて、ハッとする。いけない、見惚れてる場合じゃない。

  僕も急いでその場で四つん這いになると、勢いをつけてお尻を上げた。すると、そこからブボボッと太い音がして、まるで火山が噴火したような勢いで大量の糞が噴き出した。地面に落ちると土煙が舞い、辺り一面に糞の匂いが充満した。

  「おお、よく出たじゃないか」

  熊が満足げに言う。僕も、褒められた嬉しさから思わず顔がほころんでしまう。

  「ねえ、始める前に、川へ行かない?」

  どうせこのあと、また僕を抱くつもりなんだ。その前に、水浴びをしておきたかった。

  「ん、水浴びか、そうだな」

  熊も僕の意見に賛成してくれる。僕たちは、川へ向かって歩き出した。

  [newpage]

  もうすこしで川だ、と思ったところで熊が突然足を止めた。

  「どうしたの?」

  「オマエ、匂いを嗅いでみろ」

  鋭い表情でそう言う熊に従って、あたりの匂いを嗅いでみる。

  すぐに熊が立ち止まったわけが分かった。

  「人間の、匂い……!」

  川のある方角に、人間がいる。

  それも、一人じゃない。二人、三人、いや、もっといる!

  「ま、まずいよ、見つかったら大変なことになる!」

  僕は慌てて、熊の懐に潜り込むようにして、身体を隠した。しかし、熊はニヤッと笑って言った。

  「ふふ、落ち着け。恐れることはない」

  「どうして?こんなにたくさんの人間の匂いだよ?」

  「人間は、こちらから手を出さなければ襲っては来ないものだ。オマエも人間だったのなら、それくらいわかっていないのか?」

  「そ、それは、でも」

  確かに、熊の言うとおりかもしれない。だけど、万が一のことを考えると、どうしても不安が拭えなかった。すると、熊はまた、僕を見て笑った。

  「そんなに怖いのなら、そこでじっとしていろ」

  そう言って、僕に背中を向けるようにして歩き出してしまった。

  「えっ、ちょっと待ってよ」

  僕は、慌ててその背中を追いかけた。河原へ出ると、やっぱり遠くの方に人間たちの姿が見えた。

  話し声が聞こえる。

  「見つかりませんね」

  「そっちもか」

  「携帯が見つかったのは、このあたりでしたか」

  「うーん、ここで事故にあったんだとすると、遺体はこの間の雨でもっと川下の方に流されている可能性があるな」

  「この先は滝ですが……」

  すると僕のそばに熊が寄ってきて、そっと囁いた。

  「オマエを探しているようだな」

  「う、うん」

  できることなら、僕はここにいると言って駆け出したい。でも、こんな姿になってしまった僕を、誰が元の人間だった僕だと認識してくれるだろう。

  そこへ、また人間の声が聞こえてきた。

  「うわ、!あそこ、熊が」

  「ああ、[[rb:番 > ツガイ]]だ。いま繁殖期だから」

  「でも珍しいな、オスのほうがあんな甲斐甲斐しく寄り添うなんて。あんなの普通ありえねえぞ」

  「人間の夫婦みたいだな」

  久しく聞いていなかった人間たちの話し声を聞いていると、無性に泣きたくなってくる。だけど、もはや最近は汗すらも出なくなってしまったこの身体は、悲しみの涙を流すようにはできていなかった。

  「おい、撤退するぞ。あんま見るな、いらん刺激したら危ねえ」

  一人のベテランぽい人間の一言で、みんな後退りしていく。

  その姿を見ていると、やっぱり僕はもう、あそこには戻れないんだという、確信めいたものを感じた。

  「ほら、さっさと浴びて、帰るぞ」

  熊はもう、巣穴に帰ってからのことが楽しみで仕方ないらしく、急かすように僕を促した。

  「ちょっと、待って」

  僕はそう言うと、退却していく人間たちの方に呼びかけた。

  「さようなら!」

  僕はもう、戻れない。それはよく分かった。それなら、どうしても最後に、ヒトとしてお別れが言いたかった。

  「さようなら!」

  もう一度、今度は懸命に二本足で立って、手を振ってみせた。

  「おい、なんか吠えてるぞ」

  「やっぱメスは気が立ってんだな」

  ……その言葉に、僕は眼の前が暗くなるような、深い絶望感を覚えた。

  僕は人間の言葉を喋ったつもりでいたのに、人間たちには盛ったメスの吠え声にしか聞こえなかったらしい。

  「……当たり前だろ。オマエ、オレと話ができるようになったんだぞ。もうオマエの頭と喉は、熊の言葉を使うようになってるんだ。それともオレがヒトの言葉を喋るようになったとでも思っていたのか?」

  なんとなく分かってはいた。

  でも、それをはっきりと、熊に指摘されると、どうしようもなく寂しい。

  「ほら、そんな顔するな。いいから水浴びを済ませろ」

  すっかり意気消沈した僕は言われた通り水浴びを済ませ、ブルブルと水気を飛ばす。そういえば、これもすっかり上手くなってしまった。こんなの、まさに動物の仕草じゃないか。さっきから、色んなことが僕はもうヒトではなく、熊のメスになっているんだということをまざまざと見せつけてくるようで、切ない気持ちにさせられる。

  それから毛干しをしようと熊と並んで石場に仰向けになると、腰のあたりに何か違和感があった。

  (もしかして)

  もうなんとなくわかっていた。

  身を捩って確かめると、そこには毛が丸く生え揃った肉の塊が、おしりの上にちょこんと生えていた。

  とうとう、尻尾が生えてしまったのだ。

  「ふふ、良いじゃないか、これで、立派なメス熊だ」

  熊が鼻を擦り寄せてくる。僕はいつの間にか頭の上に移動していた耳を動かして、その鼻先にそっとキスを返した。

  「どうだ、まだヒトに戻る心は残っているか?」

  熊が、鋭い眼差しで、でもどこか優しげな口調で、僕に問いかける。

  戻りたくないか、と言われれば、戻りたい気持ちはまだ完全に消えてはいない。

  でもそれ以上に、僕にはもう熊としての生活と本能が拭いきれないほど染み付いてしまっている。

  新しい土地へ行けば匂いを嗅いで、他の熊のマーキング具合を確かめずにはいられないし、自分たちの縄張りには、自分の体臭と糞を撒き散らしておかないと不安な気持ちになってしまう。人間だった頃は、そんな不潔なことと嫌悪感を抱いていたはずなのに。

  そして、さっきの様子を見ていても、僕はもう、いくら望んでもとても人間たちから受け入れてもらうことなどできない有り様になってしまっている。当たり前といえば当たり前だ。いつの間にか僕は髪の毛も抜け落ちて、二足歩行のできない体になり、挙句の果ては人間の言葉も喋れなくなってしまったのだから。

  それなら、もう、熊のメスとして生きていった方が幸せなのかもしれない。

  ……いや、本当はずっとそう思っていたのだ。ずっと、熊に、メスになりたかった。本能が、そう言ってたもの。無理矢理人間のふりして、自分の気持ちを、騙し続けてたんだ。

  でももう、そんなことをする必要もない。やっと尻尾も生えて、僕は完全に熊の体になれた。あとは、このまま、熊として、メス熊として、生きていけばいいんだ。

  そう思ったら、急に気分が楽になった。そうだ、最初から、素直になればよかったんだ。僕は、熊として生きることを望んでいたんだから。

  「さあ、どうする」

  熊が、改めて僕に尋ねる。

  僕は、熊の大きな鼻面に、そっとキスをした。

  「なる。僕、熊になる。ううん、もう熊だもん。あなたの[[rb:番 > ツガイ]]の、メスの熊」

  もう、迷いはない。

  僕が、そうしたいんだ。

  「そうか、わかった」

  熊は満足そうに、僕の顔の、すぐ横の地面にゴロンと寝転がった。僕も、そのお腹の上に頭をそっと乗せてみる。

  「毛干しがすんだら、帰ろう。そこからは、お楽しみだ」

  そう言って、熊はニヤリと笑った。

  「ねえ、あなたの名前、教えて」

  帰り道、僕は熊に尋ねた。

  「オレの?」

  「うん、そう。教えて、くれる?」

  僕はもうヒトじゃなくて熊になった。熊が相手を熊と呼ぶなんておかしな話だし、それに、夫となる相手の名は、ちゃんと呼びたい。

  「そうだな、オレは、シキだ」

  「シキ……かっこいい名前。ちょっと神様みたい」

  するとシキは、驚いたような顔をした。

  「オマエ…鋭いな」

  「え、何が?」

  僕は首を傾げる。シキは真面目な顔で、遠くの空を見つめた。

  「まあ、神というほどのものじゃないが、一応それに近いようなものをやらせてもらってはいる」

  「……そうなんだ」

  驚きはなかった。だって、広い縄張りを巡る中で、他の熊や動物たちに遭遇することが何度があったけれど、誰も彼も、シキを見るなりみんな大人しくなったから。

  あのとき僕はまだ熊になりかけだったのだから、よそ者として襲われても不思議じゃなかったのに、誰からも危害を加えられることもなかった。それはきっとシキがこの山の主のような強い熊だからなんだと思っていたけど、神様なんだと思えば、より納得できる。

  「じゃあ、僕を[[rb:番 > ツガイ]]にしたのも、シキが神様だから?」

  人間のオスだった僕を[[rb:番 > ツガイ]]にしようだなんて、普通の熊は考えるはずない。そう思って、僕は尋ねた。

  「ああ。今年は三十年に一度の儀式の年だったんだ。その年初めて出会った人間を[[rb:番 > ツガイ]]にし、子を産ませる。その子が次の主になる。この山は、ずっとそうして続いてきたんだ」

  「へえ、知らなかった」

  僕は、自分がとんでもないところにやってきてしまったんだということを改めて思い知った。

  でもそうなると、僕が選ばれたのは単なる運で、他の誰でも良かったのか。そう考えた瞬間、何かモヤモヤしたものが、胸に込み上げてきた。

  「どうした」

  シキが、僕の顔を覗き込んでくる。僕は思わず、顔を背けた。するとシキは、すぐにそのわけを理解したようで、ニヤリと笑った。

  「安心しろ。ひと目見たときから、オマエのことを、オレのものにしたいと思っていた。儀式を抜きにしてもな」

  「…ほんとに?僕、オスだったのに?」

  「関係ない。そんなものはオレの力でどうとでもなる。オマエはとにかく、会った時からオレを酔わせる良い匂いを漂わせていたんだ。オレはオマエが最高の[[rb:番 > ツガイ]]になると確信していた」

  「……ふふ、そっか」

  僕は、心の底から安心した。自分が選ばれたのは、ちゃんと意味のあることだったんだって。

  「それで、オマエの名前は?」

  「僕?」

  「そうだ。[[rb:番 > ツガイ]]のメスの名前は、覚えておかなくてはならないからな」

  その言葉に、胸がドキドキする。

  「僕は…」

  そう言って、名を名乗ろうとした。

  (あれ……?)

  だけど、いくら考えても思い出せなかった。僕、なんて名前だったっけ。どんな文字を書くんだっけ。

  僕が、かつて人間だったことは覚えてる。ちゃんと名前もあったはず。でも、それがなんなのか、ちっとも覚えていない。

  「ごめん……思い出せない」

  僕は、正直に答えた。シキは、一瞬驚いたような顔をしたけど、すぐにまたニヤリと笑った。

  「そうか、じゃあ、新しい名前をつけよう」

  「新しい、名前?」

  「ああ。考えてみれば、オマエはもう人間じゃない。人間だった頃の名前を名乗るのも変だろう?」

  確かにそうだ。メス熊の僕が、人間のオスとして与えられた名前を名乗るなんて、おかしいもの。

  「そう、だね。じゃあ、シキが新しい名前をつけてくれる?」

  僕は、じっとシキを見つめた。すると彼は、優しく笑って言った。

  「そうだな。オマエの名前は……メイだ」

  その名前は、まるで僕のために用意されていたかのようにピッタリだった。思わず胸がドキドキとしてくるのがわかる。

  「メイ……」

  僕は、その名前を、小さく繰り返した。なんだかそれが、とても誇らしいように感じた。

  「どうだ?気に入ったか?」

  シキが僕の顔を覗き込むようにして言う。

  「うん!」

  僕は明るく答えた。これから一生付き合っていく大切な名前だもの。気に入らなくちゃ困るでしょ?

  「そうか、それは良かった」

  シキも、とても嬉しそうに笑った。

  巣穴に帰り着いて、僕たちはいつものように、夜通し、体を貪り合った。

  「ああっ!あんっ!あぁんっ!」

  背後から激しく突き入れられる度に、口からはメスの喘ぎ声が漏れる。それに合わせるように、僕の体はキュンキュンと疼いた。

  (ああ、交尾って、気持ちいい……!)

  僕はもう完全に熊になって、山の主であるシキのものになったんだという安心感もあって、いつも以上に感じてしまっていた。

  「どうだ、気持ち良いか?」

  シキが尋ねる。その声を聞くだけでまた体が熱くなるような気がした。僕の中に挿入っている彼のものが一回り大きくなった気がしたけれど、そんなことは気にもせず、僕は素直に答える。

  「うん、すごく、良い」

  すると、シキはまたニヤリと笑った。

  「そうか、それなら、もっと良くしてやるからな」

  そう言って、今度は腰をぐりぐりと押し付けるような動きに変わる。さらに奥まで入り込んでくる感覚に、僕は思わず声を上げた。

  (やぁっ!だめぇ!それ以上は入んないよぉ……!)

  そんな僕の反応を楽しむかのように、彼は何度も何度もそこを責め立てる。そしてついに、グポッという音がしそうな勢いで一番奥まで貫くと、そこで大量の精を解き放った。

  ドプッドプッ、ビュルルルーー!

  熱い粘液がお腹の中に流れ込んでくる感覚に、僕は絶頂の叫び声を上げる。

  (ううぅ……あぁああーっ!!)

  「グルル……グォオオー!!!」

  実際に喉から出たのはヒトの声ではなく、一匹のメス熊の咆哮だったけれど。

  シキは、そんな僕を、愛おしそうに見つめる。

  「良い声だ。オレの[[rb:番 > ツガイ]]に相応しい、可愛い声だな」

  そう言って、僕の首筋に鼻を擦り付けてきた。

  (ああ、嬉しい……)

  僕は、嬉しくてたまらなくなって、シキの鼻に自分のそれを擦りつけ返した。すると、彼は優しく笑って言った。

  「いい子だ、メイ」

  そう言いながら、僕の中で再び硬さを取り戻し始めた彼自身を激しく前後させる。

  「あんっ、名前、あたしのっ、名前…!」

  愛しいシキに、あたしの名前を呼んでもらえる。それだけで快楽が増幅されて、頭が蕩けそうになった。

  「ああ、メイ、オレの、メイ! もっと、声を聞かせてくれ。オマエの美しい声を!」

  そう言って、彼はさらに激しく打ち付けてきた。

  (は、いっ、シキ、好き、大好きぃっ!)

  「グォ、グルル、ギャン、ガォオオ!!」

  あたしも、もっともっと、彼に喜んでもらいたい。だから、精一杯大きな声で、彼に応える。

  「グルル、グォオオーーッ!ギィイィイッ!!」

  人間だった頃の記憶は、もう、すっかり消えてなくなっていた。でも、そんなことはもうどうでも良かった。あたしは、シキのものになりたい。

  「グルル、グルゥオォオッ!グォッ、ギィイイッ!ガァオオオッ!!」

  あたしは何度も吠えた。あたしたち獣だけに伝わる声で、愛の言葉を。

  「グルル、グォオッ、グォオオッ!」

  それに応えるように、シキの動きも激しくなる。あたしは、自分の中のメスを全開にして、それを彼にぶつけ続けた。そして、ついにその瞬間が訪れる。

  「グルルゥッ!ガァッ、グ、グルルルウゥオォオオオッ!!!」

  彼と、あたし。二匹の熊の咆哮が、月夜の山に響き渡る。そして、あたしたちは同時に果てた。

  ドクンドクン、という彼の鼓動に合わせるように、あたしのお腹の中に再び熱いものが注ぎ込まれた。

  「グォオ、グル、グルル、グルッ、グゥウウッ!」

  あたしは、全身を痙攣させてそれを受け止める。そして、最後の一滴まで搾り取るように、キュウッと締め付けた。

  「あぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

  (あぁ、嬉しい……)

  お腹の中に感じる温もりに幸せを感じながら、荒い息を吐く。シキは、そんなあたしを優しく抱きしめてくれた。

  [newpage]

  それから半年後、あたしは巣穴の中で冬眠しながら、オスの子熊を出産した。あたしたちの身体はこんなに大きいのに、生まれてきた子供はほんの手のひらに乗るようなサイズで、とっても可愛いかった。

  眠くて起き上がれないでいるあたしのおなかの上で、子熊は元気にもぞもぞと動いていた。

  「メイ、よくやった」

  そう言って、シキは優しく鼻先を舐めてくれる。それが嬉しくて、あたしは思わずクゥンと甘えた声で鳴いた。

  巣ごもり中の巣穴の中は、シキとあたしの匂いでいっぱいだった。そこに新しい、我が仔の匂いが加わった。それは、とても幸せな感覚だった。

  子熊は、やがてご飯のありかを見つけたようで、あたしのおっぱいに這い寄ると、元気に吸い付いてきた。

  「ふふっ、かわいい」

  あたしは、自分の乳首を必死に吸っている我が仔の背中を、優しく撫でた。すると、もっともっととせがむように、さらに強く吸い付いてきた。

  「あっ、ちょっと、もう、そんなに強く吸っちゃだめだよ?」

  そう言いながらも、あたしは幸せな気分に浸っていた。

  (ああ、あたし、お母さんになったんだなぁ……)

  人間の時の記憶はもうほとんど残っていないのが、ほんの少し寂しいけれど、シキに出会って、[[rb:番 > ツガイ]]にしてもらって、こうして新しい命を授かって、本当に良かったと思う。

  「オレとメイの仔だ。きっと強く、賢い熊に育つだろう」

  シキは、あたしの隣で、愛おしそうな目で我が子を見つめていた。そんな横顔を見ていると、あたしも幸せな気持ちになってくる。

  「うん、そうだね」

  そうして、あたしたちは三匹揃って、まどろみの中に浸っていった。

  冬眠が明けたら、この仔に色んなことを教えてあげなくちゃ。シキの息子として山の主を受け継ぐに相応しい、立派なオスに、育ててあげなくちゃ。

  そんなことを考えながら、あたしはゆっくりと目を閉じた。