广告广告
  
着ぐるみ41-海棲動物の飼育員

  「じゃぁ、中山くん頼んだよ」

  俺は動物と、それもイルカとかアシカとかと触れ合いたくて水族館に転職したのに、前職でカウンセラーをやってたと言う理由だけで、頭の狂った女の相手をさせられる事になった。

  話によると、このミライちゃんの中の人は、元々ちゃんとした人だったと言う。それもそこそこエライ人の孫らしくて、彼女が着ぐるみを着たいと言う話から、それを叶える為に来たそうだ。

  ミライちゃんは、この水族館のマスコットで、手足が長いヒレになっていて、全身がグレーを帯びた薄い水色のラバーで出来ている。

  顔は口の周り以外が全部覆われていて、目はくりくりとした黒い瞳があるばかり。鼻も覆われていて、イルカが人に進化したらこんな感じになるのかなと思わされる感じはある。

  鼻にチューブが通されていて、それが高性能な人工エラに繋がっているので、五分ぐらいの遊泳が可能で、糞便はスリットから流れ出るようになっている。

  スーツは丈夫で衛生的だが、彼女に脱ぎ着させるのが一苦労なので、一ヶ月で着替えさせることにしてる。

  イルカと一緒に"飼育"されていて、彼女は自分はイルカの言葉が分かると思っているらしい。

  一方、精神的には幼児退行が進んでいて、話してみると五歳児と話しているように感じる。

  僕はしゃがんで問いかける。

  「ミライちゃん、今日から担当の中山晄平だよ。よろしくね」

  「コウヘイ? よろしくね!」

  素直でよろしい……

  が、今日がその着替えの日である。

  「ミライちゃん。今日は身体測定だから、奥の部屋に行くよ」

  そう言って、大きめの台車に彼女を乗せて、彼女専用の更衣室へと向かう。

  作業台の上にうつ伏せで寝かせると、「いやだ! いやだ!」と暴れ始める。

  そこで専用の溶剤をぶっかけると、繋ぎ目を塞いでいたフィルムが溶けて裂け目が見えるようになる。

  そこに指をつっこんで、洗浄液を注入しながら糊を引き剥がすと、彼女の背中が見える。

  磯の臭いと、身体を洗わない特有の饐えた臭いが充満する。

  そこまでいくと、彼女は言葉を失い「うぇ」「ぐぇ」とか奇怪な鳴声をして、身体をピクピクさせる。

  顔にマスクを張り付ける糊は、専用の洗浄液で流し、完全に一体化されている着ぐるみスーツを脱がす。

  痙攣しているような彼女の顔は死んだようだが、しかし普通にしていれば美形なんだろうなと言う顔である。

  日々泳いでいるので身体は引き締まっている。胸も大きいし、正気を失っているのが勿体ない。

  伸びた髪をバリカンで刈って、全身を石鹸で洗う。

  そして消毒したところで、新たなスーツを着せる。

  顔に糊を塗り、鼻にチューブを通してピッタリ合わせる。

  繋ぎ目にも糊を塗り閉じてしまい、そしてその上に保護用のフィルムを貼る。

  「ミライちゃん、終わったよ」

  僕が声を掛けると、ゲホゲホと汚い声で咳をして、身体を大袈裟に震わせて、「終わった? 本当に終わった?」と尋ねてくる。

  「終わったよ。よく頑張ったねぇ」

  僕の言葉に彼女は素直に喜んでくれる。

  魚型の栄養食を与える。手はヒレになっているので、僕は"エサ"を千切って口の中に入れてあげる。

  いつもは、イルカの水槽をぐるぐると回っている。

  イルカと一緒に泳ぐのが楽しいらしく、そしてイルカもそれに順応している。

  定期的に陸に上がり、来館者と握手したり写真撮影に応えたりする。

  子供受けがとてもよい。

  その様子は、本当にこういう生物がいるのだろうと思う程、設定に対する揺るぎのない態度が見える。

  偶にセクハラと言うか、胸を揉む輩がいるが、そんなことは意に介さないような、不思議なモノを見るような態度でいる――勿論、そんな奴は事務所に連行するのだけど。

  ミライの姿は身体のラインが出ているし、胸も出ている。一皮剥けば裸という格好だ。それを恥ずかしげもなく世間に曝しているのはよくよく考えれば不憫である。

  だがミライがミライでいる間は、常に楽しそうである。全ての陰りが存在しないように思える。

  彼女が何故こうなったのか、周りの人間が何も語らないところを見ると、それなりの事情があるのだろう。

  僕が彼女に接している間も、彼女はミライのままである。

  ペットが喋れるならこんな風なのだろうなという程の可愛さである。

  考え事をしていれば気を掛けてくれるし、調子が悪いときは心配してくれる。

  そして、彼女自身はいつも全力だ。

  徐々に情が移ってくるのを感じる。

  冬になっても水の中で泳ぐし、ミライのままで館内サービスも欠かさない。でも、震えるところすら見えないのだ。

  春になり、夏が近づくとイルカは繁殖期を迎える。

  ここのイルカは一夫一婦制ではないので、割と乱交に近い状態である。そして、それは実はミライも同じで、彼女が雄のイルカに抱きついて泳いでいる姿が度々目撃される。

  流石に引いてしまう。

  ここでやはり彼女は狂っているのだなと再確認してしまった。

  彼女にその事を尋ねると、「すっごく気持ちいいよ!」と言うのだから、まぁそうなのだろう。

  秋が近づいて来た頃、彼女が寂しそうにしているのを目撃した。

  「赤ちゃんできなかったよ……」

  本気でイルカと子作りしたかったのだなと分かった。

  その時は、もう狂気以上の畏れを感じた。

  「私、コウヘイとなら赤ちゃんできる? 人間の赤ちゃんつくれる?」

  二人きりの部屋でせがまれてしまった。

  眼球は黒いスモークの素材で作られているので、彼女の表情は窺い知れない。だが、しかし、本気の何かを感じてしまった。

  そして、その時、僕は、ミライを一人の狂った女ではなく、一匹の可愛い飼育動物として見る事が出来た。

  とは言え、この一件、黙っておく訳にはいかない。

  上司にその話をすると、上の方で会議をすると言う話になった。

  僕は完全に蚊帳の外である。

  流石に解任だろうなと思った。次は女の子に飼育して貰った方がいい。

  僕はもう、そうなったものだと思い込んで、残りの日々を、なるべく思い出を作ろうと、沢山話をして、沢山遊んだ。

  そして、夜が近付くと、交尾を迫られるのだ。

  飼育動物は飼育動物として、一つの愛おしさがある。

  それは黙っておいた方がいい感情である。

  遂に上に諮った件の答えが出た。

  SEXをしろと言う事だそうだ。

  子供が出来たら、人間に戻る決意をするのではないか? と言う事だそうだ。

  何もかもが狂っていた。

  流石に監視はしないそうだ。緊張で射精できなかったら困るからと。

  そんな話をされても、相手は動物である。もう、動物としか見えなくなったミライである。

  何処から調達したのか、バイアグラを用意された。

  もう、これはやるしかないのである。

  全裸になって彼女の部屋に向かう。

  「コウヘイ!」

  彼女は身振り手振りを交えて、悦びを表現していた。

  僕は気分を上げる為に、彼女の胸や作り物のスリットをいじっていく。

  そうすると、彼女は実際感じているかのように反応してくれる。

  「コウヘイ、来て!」

  薬でビンビンになっているちんこを彼女の前側のスリットに挿入する。

  奥の方が暖かい……感触的に「先っぽだけ」が入った状態になった。

  彼女は「奥まで来たよ!」と喜んでいる。

  それから二人で一生懸命腰を振った。

  「来て! コウヘイ来て! 人間の赤ちゃん作りたい! 私、人間になれるかもしれない!」

  「そうだ、人間になるんだ! ミライ! 人間になろう!」

  そうして中に思いっきり出した。

  一回では足りないとばかりに、そのあと何度も中出しした。

  セックスはこなれてくるけど、情熱は失わなかった。

  人間以外とのセックスがこんなに凄いモノとは思わなかった。

  その後も、毎日セックスを重ねた。

  もう、バイアグラはいらない。彼女を彼女として抱ける。

  だが、秋が過ぎ二度目の冬が来て、春が来ても彼女は妊娠しない。

  苛ついた上層部は僕の精子を検査に出したが問題はなかった。

  浅いのが原因じゃないかと言われる。

  じゃぁ、脱がした状態でセックスしろよとなる。

  みんな狂っていた。

  僕は、彼女の着替えの工程が嫌いだ。見るからに嫌がっているし、人間の姿になると虚ろと言うか、完全に死んだようになっている。

  それを犯せと言うのだから罪悪感が半端ない。

  だが、再び薬の力に頼ってやるしかないのだ。彼女の為なのだ。そう、自分も狂っている。

  全裸の彼女は綺麗で、引き締まっていて、完全な美形である。ただ、目は死んでいるし、触ってもびくともしない。

  「ミライ……いくよ」

  声を掛けるが反応はない。

  挿入すると、「うぅ……」と不快を込めたような声が出る。

  激しくピストンするが反応はない。中出しした瞬間だけ、眼球が上ずった。

  そんなことも繰り返す事になった。

  夏の繁殖期は、当然イルカともセックスを重ねる。

  ミライはただの性欲に狂った生き物でしかなくなった……それは俺もか。

  「赤ちゃんができないよ……」

  悲しむ彼女に寄り添う。

  「いつか人間に戻ったら! 同士の交尾が出来るのかな?」

  ミライの言葉にはっとした。

广告广告