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「んで、やっぱ全問正解ってか・・アイツの頭はどうなってんだ?」
「さて?驚きの結果ではありますが、私からは何とも」
筆記試験終了後、実技試験を全て終えた職員2人は訓練場に残り、後片付けをしながら雑談に興じていた。
「実技の方はどうだったんです?彼の実力は如何ほどで?」
「あぁ?あの時言った通りだぜ。能力的には3等級でも問題ねぇよ」
「へぇ。凄いですね。でも、いつもなら「調子に乗らないように」と[[rb:負かす > 転がす]]まで試験を止めないのに、今日はどうしたんです?らしくもない」
「ん?あぁ、あん時はなぁ―・・」
〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇
「惜しかったですね」
登録試験を終え、青年は面布と共に他の受験者の列から離れた最後尾を位置取り、石造りの通路をゆっくりと歩いていた。
「先程の試験か?私としては勝てたかどうか自信は無いな。流石は元2等級」
「アド様は十分に動けていましたし、魔力を使っての陽動もお見事でした」
「そうか・・だが、彼の攻撃は予想以上に早く、重かった。咄嗟の時に避けるしか手が無いのは今後の課題だな」
「それならば魔力操作の向上に更に力を入れてみては?無意識下での魔力制御による肉体強化と魔法は上級者の必須能力です」
「やはりそれが一番無難か・・先ほどの試験の終了間際、私が模擬剣に纏わせた水で隙を窺っていた事、彼も気付いていたようだしな」
〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇
「模擬剣の下に隠された彼の水操魔法に気付いたと」
「おう。ギリギリな。咄嗟に魔力で覆って鈍らせてみたが、込められた魔力量が半端なくてよ。ありゃ完全に無効化するのは今の俺にゃ厳しいぜ」
「また無茶をしましたね。魔力の方は大丈夫ですか?」
「いや、実はかなりキチぃ・・だからあのまま終わらせたんだ。その後に魔力使う事にならなくて助かったぜ・・俺もう帰っても良いか?」
「・・魔力回復薬を融通してあげますので終業までそれで持たせてください」
「ひでぇな。同僚にはもうちょい優しくしてくれても精霊は文句言わねぇと思うぜ?」
「だから[[rb:魔力回復薬 > 優しさ]]はあげますよ。さ、行きましょう」
「へいへい」
〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇
「アド様の策に気付いた試験官は魔力で水の操作を阻害。そのまま試験終了を告げた・・適切な対応です」
「あぁ、2等級ともなれば、な。だがしかし、あの時は少しばかり動きを鈍らせただけで、完全に沈黙させなかったのは何故か・・現役を引退している事と何か関係あるのかもしれんな」
「その推測は概ね正しいかと。視た感じ、魔力が必要以上に放出されていました。あれでは戦闘で使用する度に魔力枯渇に陥るでしょうし、[[rb:迷宮 > ダンジョン]]では余計な魔物を引き寄せてしまいます。原因は不明ですが、恐らく魔力制御が儘ならない状態なのでは?」
「成程。それなら納得だ」
そう言って、視線を前に向けたまま頷く青年に面布はふと気になり訊ねた。
「アド様。あの者が現役だったなら、如何です?勝てますか?」
〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇
「俺が現役ならあの新人との勝敗はどうなったかって?そりゃあ―・・」
「今の私が現役の彼とか・・それは―・・」
「俺が勝つさ」
「負けるだろうな」
「ま、「もしも」話はあんま趣味じゃねぇけどよ。アイツはまだ若ぇ。やる気がありゃ更に伸びるだろうぜ。そしたら全盛期の俺でも手に負えなくなる、そんな予感がするな・・ってのが現時点での率直な感想だな」
「だが、私はまだ魔力を正常に扱えるようになって日も浅い。今よりももっと、ずっと強くなってみせるさ・・いずれは十全だった頃の彼も追い越せるくらいにな。そのくらい出来なくては、大切なモノは守れまい」
この日、青年が披露した筆記試験の高速解答と実技試験での飛び抜けた戦闘技術は、暫くの間王都支部の冒険者の間で話題となったのだった。
〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇
時は昼過ぎ。
冒険者組合王都支部の然程広くない一室にて数人が集まり、話し合いを始めようとしていた。
国の研究組織である「魔術院」から、護衛騎士付きの研究職員が2名テーブルに着き、支部長と共に並んで座っている。
冒険者組合の職員数名は壁に沿って立ち、冒険者2名はその向かいの壁際に立っていた。
そして、それらから離れた位置に青年と面布も静かに立っている。
「全員揃いましたね。では、これより隣国パーガルディア皇国への遺跡調査の護衛依頼について、打ち合わせ兼顔合わせを行います」
朝、地下訓練場にて試験監督を務めていた猫耳の男性職員が進行役として紹介を始めた。
「今回、冒険者組合王都支部に国から研究職員の護衛依頼がありました。こちらのお2人が遺跡調査の責任者とその補佐の方です」
そう言って、席に座る白を基調とした上等な服に身を包んだ眼鏡の男性をピシリと揃えた指先で示した。
会話の流れを受け、眼鏡の貴族男性は腕を組んだそのままの状態で口を開く。
「魔術院・・遺跡調査、主任「ケイオニクス・ストークス」」
そう名乗ったきり、無言で目を閉じる眼鏡の男性。
「他に言うことは無い」といった態度に困惑の空気が流れるが、その隣に座っている小太りの男がそんな雰囲気を打ち払うように大声で言った。
「こちらに居られるは魔術院にてとある魔術とその陣を調査、解析している研究室の主任にしてストークス公爵家の次男であらせられる「ケイオニクス・ストークス」閣下であるっ!貴様らのような知性の欠片もない愚物がご尊顔を拝せる事を深く感謝しつつ全身全霊をもって閣下に尽くすが良い!」
ふんっ!と鼻息荒く言い切った男は最後に「我はストークス閣下の補佐を任されているベラルドルダ侯爵家次男、ヒンヒ・ベラルドルダである!」と名乗ると満足気に頷き、背後の護衛騎士に汗の滲む顔や首を拭かれるに任せて静かになる。
「・・魔術院は隣国にある遺跡調査に赴く為、道中の護衛を依頼されました。内容を検討した結果、2つのパーティーに打診、引き受けて頂きました。そのパーティーの代表をそれぞれご紹介します」
空気を読んだ職員が軽く咳払いをして補足を入れた後、冒険者側の紹介に入った。
男女で並び立つ冒険者の内、女性の方に視線を向けパーティー名を呼ぶ。
「女性のみでパーティーを組んでおられる「不屈の砦」より、パーティーリーダーのミリアーナさんです。今回、護衛対象に女性の方もおられるとの事で打診しました」
女性冒険者は一歩前に出ると「「不屈の砦」のミリアーナだ」と名乗りを上げた。
胸の下でぐっと腕を組んだ立ち姿はどっしりとして貫禄があり、服の上からでも鍛えられた肉体を持っている事が窺える。
「今紹介された通り、うちは女だけだ。パーティーとしての等級は3。メンバーの等級も殆どが3だが、護衛依頼を中心に活動してるからね。経験は豊富さ。今度の仕事も上手い事やり遂げて見せるよ」
言うだけ言った女性冒険者が元の位置に下がると、職員は男性冒険者へと視線を向けて同じように紹介した。
「主に3等級をメンバーに受け入れ、後進育成に力を入れてらおられる「栄光への導き手」より、パーティーリーダーのバーグさんです」
一歩前へ出て「「栄光への導き手」リーダーのバーグだ」と名乗った男性冒険者に視線が集まる。
その頭部で、縞模様の丸っこい耳がぴぴっと動いた。
「俺らのとこは性別も種族も雑多だが、常に10名程のメンバーを抱えている。紹介されたとおり、3等級の能力向上に力を入れた活動が中心だ。今回は貴族の護衛を経験するために依頼を受けた。「何事も経験無くば成長は出来ない」がうちの信条でね。パーティー等級は3だが、俺ともう1名は2等級だ。何があってもフォローはするから安心して任せてくれ」
そう言って、男性冒険者は黄色と黒の縞模様の尾を振り、元の位置に戻のだった。
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