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【149】ワ、ワイは悪くないっ!みんな可愛いが悪いんやっ!

  「こうしてはおれませんっ!」と拳を握り、すいっ!と立ち上がった[[rb:美人さん > お姉さま]]の椅子を自然に引いて補佐するメイドさんに驚嘆を覚えつつ、軽く現実逃避に走る。

  「魔女さま!先ずは1日5個としてひと月分を購入したく存じます!」

  「え~っとぉ・・ハイ。ダイジョウブデス。多分」

  え。1日で5個?

  5人とかで食べるんだよね?美人さん1人で5個じゃないよね?

  疑問を解消する時を与える事なく、美人さんは満面の笑みで「ありがとう存じます!」と続けた。

  「専用の冷やし保管庫を最速で用意致しますので!用意出来ましたら直ぐに納品をお願い出来ますでしょうか?!」

  「え~っとぉ・・一度に全部は無理・・かなぁ?10個ずつくらいなら、なんとか?」

  独り暮らしなもんで、冷凍庫のキャパなんてそんなもんです。

  しっかしまぁ圧と勢いがスゴイ。そんなにお口に合いましたか?

  「くっ!左様ですか・・では通常の取引と合わせて10個ずつでお願いいたします!」

  「分かりました。では、そのように用意します」

  「何卒お願い致しますわ!」

  ニッコニコで喜んでいるところへタイミングよくメイドさんが契約書と筆記用具を持ってきたので、椅子に座り直した美人さんは早速とばかりに謎用紙へ線を引いた。

  「ではこちらが控えとなりますわ」と契約書の写しを受け取ったところで、待機していたメイドさんが「奥様、少々よろしいでしょうか?」と控えめに声を掛けてくる。

  「ジゼル、何かありまして?」

  「こちらの容器なのですが・・」

  と、差し出したのは〇ッツ様の空きカップ。

  洗われたらしく、汚れひとつないぴかぴかな容器・・それがどしたん?

  「恐らく、「紙」で作られているのではないかと・・」

  「「紙」ですって?!これが?!」

  カップを受け取り、手の中でしげしげと眺めて「確かに軽く、柔いですわね・・」とかなんとか、ぶつぶつ口の中で呟く美人さん。

  なーんか「重大発見!」てな感じの様子に、つい「紙がどうかしましたか?」と声を掛けた。

  と、突然がばっと顔を上げ、結構な声量で「魔女さまっ!!」と目をギラつかせる美人さん。

  その勢いに驚いて「うぇっへいっ!?」と変な声で答えてしまう。

  「もしやそちらで「紙」は民の間で普通に使われているモノなのですか?!」

  「えーと?「紙」、ですよね?あの、文字を書く為に使う・・」

  美人さんの只ならぬ様子に『勘違いか?』と不安になって問うも、「その「紙」ですわっ!」とのお返事に、戸惑いつつも頷き答えた。

  「えぇ。こちらで「紙」は幅広く様々な物に使われています。書き綴る用紙の他、簡易的な食器や工芸品、包装、装飾品、寝具、お金・・探せばもっと色々な物が作られているかと」

  「・・そ、それらは本当にこちらで言う「紙」と同一の物なのでしょうか?」

  「そんなにも色々と作られているのですか?お金・・通貨も?」と若干引いた感じで問う美人さん。

  しかし、こちらが何か言う前に頭を軽く振って「いえ、詮なき事を申しました」と動揺を抑え、モニター越しに目を合わせる。

  「失礼致しました。少々・・いえ、とても驚いてしまいまして・・こちらでは「紙」は他国からの輸入に頼っているものですから・・残念ながら製造方法は秘匿されておりますので、自国で生産することも叶わず、とても高価な品となっているのですわ」

  「なる、ほど・・」

  おぉぅ・・これまたなんとテンプレな・・

  んじゃ紙を綴った本なんかは超高価な代物になるの、か?

  そういや[[rb:青年 > アド君]]が[[rb:親友 > アキ]]に見せてくれてた本の装丁、めっちゃゴツかったな・・

  はーん。どうりで。

  色々な事に得心が行って、内心で頷いていると美人さんが期待半分、恐れ半分といった感じで問うて来た。

  「あの。もしや魔女さまは「紙」の製造方法もご存じだったり・・」

  「あ。普通にしますね」

  「ま、誠に作り方を知っていらっしゃる・・と?」

  「ですね。こっちでは学校の授業なんかで作る過程を体験して、紙について学ぶ事も普通にありますし」

  牛乳パックをミキサーにかけて、取り出した繊維でハガキとか作ってみたりね。

  ありゃ楽しかったけど、地味に大変だった思い出・・

  遠い記憶を懐かしんでいる間に、呆然と目を丸くしていた美人さんも正気を取り戻したようで目に光が戻って来た。

  「それは、またとんでもないお話ですわね・・」

  「私の住む国ではかなり昔から作られてましたから。確か、現存する物で1300年前、だったかな?」

  「せっ!?」

  扇を広げる事も忘れた様子で、はくはくと口を動かす美人さん。

  その驚きようが面白くて、つい悪戯心から追加情報を口にした。

  「こちらでは紙製品は本当に日常生活に密着しておりまして、紙に触れない日は皆無といっても過言ではありません」

  「例えば・・」と勿体ぶって言葉を止めると、美人さんは興味津々な様子で身を乗り出して繰り返す。

  「た、例えば?」

  「・・そうですね・・まず、鼻をかんだり物を拭いたりと様々な用途に使う「ティッシュ」排泄時のふき取りに使う「トイレットペーパー」食器や食品の水気取りに使うことの多い「キッチンペーパー」書き取り等に使う「メモ」や「ノート」社会の出来事等を記載して広く伝達する定期刊行物「新聞」言わずと知れた読み物「本」こちらでの通貨の一種「紙幣」・・とまぁこのように、普段の生活を振り返るだけで様々な品に思い当たります」

  「は、へ・・?」

  案の定、怒涛の如く流し込まれた情報量に目を回した感じで呆ける美人さん・・・

  うん。可愛いねっ!

  うへへっ!そうそうこれが見たかったのだよ!まさにギャップ萌え!

  普段キリッとしてるお人形さんみたいな美女が、目と口を真ん丸にしてるのホント萌えるわぁ~

  ん?行動がいじめっ子のそれ?それが何か?

  ギリ許される範囲を見極めてやってるつもりですよ?

  え、ええやんけ!可愛いは心の栄養なんだよ!

  一定量供給受けないとオタクは干乾びて死んじゃうんだからねっ!

  心の中で( -`д-´)キリッ!と最低なキメ顔をしたところで、漸く放心状態から回復した美人さんが扇で口元を隠して咳払い。

  「・・大変失礼致しました」

  「いえいえ(色々堪能させて頂いたので)大丈夫ですよ」

  「醜態を晒してしまいましたわ・・どうかお忘れくださいませ」

  ちょこっと頬を染めて目を伏せる美人さん。

  ヤッター!萌えの追加供給あざーっすっ!

  内心ほっこりによによしながら「分かりました」と心にもない返事をすると、モニター越しでもこちらの心情を察したらしく、少し拗ねた様子で言う美人さん・・

  「・・・意地悪ですわ」

  そうして開いた扇の向こう側で頬を膨らませているであろう美人さんへ、やや間を開けて答える。

  「にっこり」

  「?!っ!」

  途端、眉を少し怒った角度にして「もぅっ!魔女さまっ?!」と抗議する美人さん。

  「はい。すみません。もうしません」

  「それならば・・よろしいですけど・・」

  少々憮然とした様子で疑わし気に眉根を寄せる美人さんを『可愛いなぁ』と思う反面、『次は許してもらえない、かも?』と不安が首をもたげる。

  うっ、昔のヤらかしたトラウマがっ!

  まだまだ付き合いが浅いのに距離感間違えて引かれた記憶がっ!

  コミュ障オタクがやりがちな失敗あるあるを思い出し、精神が羞恥で焼かれた事で自主的大反省会が強制開催。

  猛省猛省。

  さらっと流してくれたもんだから、調子に乗りましたスンマセン。

  今後はウザ絡みしないよう気を付けます!

  脳内反省会で五体投地謝罪を繰り広げている間に美人さんは気持ちを切り替えたようで、軽く咳払いをした後、改まって言った。

  うん。やはりできる女性は違うねっ!流石であるっ!

  「それでは・・お願いばかりで恐縮ではございますが、是非とも「紙」の製法をご教授頂けませんでしょうか・・魔女さま?」

  続く「対価は弾ませて頂きますので」の言葉にこちらも居住まいを正し、「少し時間を下さい」と一言断って思考の海に沈む。

  対価・・対価ねぇ・・

  う~ん。こっちの商品を売るのでさえ、えっらい罪悪感だったのは記憶に新しい。

  今はもう開き直っちゃったけどねっ!

  とは言え、ですよ。

  紙漉の技術を、私が他国(この場合異世界だけど)にお金と引き換えに教えて良いものか・・

  今は誰でも知り得る情報とはいえ、それでお金を得るってのはかなり心理的負担なんよなぁ・・

  ではどうするか・・

  お金以外の対価となると・・食事関係?魔法関係?あちらの特殊技術?

  ・・そこでピン!ときた。これならいい感じにwin-winで取引できるのでは?!

  「クリスさん・・1つお聞きしたいのですが」

  「はい。何なりと、魔女さま」

  「先程も使われていた魔法の筆記用具・・もしかして文字だけでなく、絵も描けたりしますか?」

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