野望編 第二十三話 異世界甘味の魅力

  002-023

  アーキア、ニア、ポーカの三名がマギガントに乗り込むと、闘技場で起動しているリエル他訓練学生の機体とも接続されて、コクピットの通信盤に全員の姿が映る。

  久しぶりにアーキアも顔を見たリエルは少し張りついた表情が緩んで、一先ず安心出来た様だ。

  リエル 「アキ酷いですよ、勝手にリィ置いてっちゃうなんて」

  アーキア 「悪かったよ、でも、リィ誘うと色々面倒だからさ、何せアキと違って色々注目されてるから、リィに注目が向いてるからアキも楽に来れて助かったよ」

  リエル 「リィはずっと心配してたのに、こちらで楽しくしてる様で怒っちゃいます」

  アーキア 「まぁ正直言ってクガトよりこっちの方がいいよね、皆んな楽しい人ばかりだし、リィもこっち来ない、みんな歓迎してくれると思うよ」

  リエル 「どうですかね、そっちにポーカさん居るじゃ無いですか、リィかなり酷い事しちゃいましたよ」

  ポーカ 「そこは正直言うと完全には吹っ切れてませんけど、リエルさんの立場考えるとしょうがなかったと思います、友人が人質みたいなものですから、でも、アーキアは既にこちら側なので良いんじゃ無いですか、もう一人のルーフィンとは余り仲が良いとは聞いてますよ」

  リエル 「クガトには一応こちらで面倒見てくれた恩義は有りますので裏切れませんよ、確かにルーフィンとの仲は良いとは言えませんが、一人残す訳にも行きませんし」

  アーキア 「アキは向こうに戻るの嫌だからね、ご飯美味しくないし、それにクガトが自分の都合で呼び出したのにリィが恩感じる事無いよ、それにさこういう事はちゃんと対面で話すべきだよ、リィはアキが信じられないの?」

  リエル 「アキを疑う筈なんてないよ、でも、他の人は無理かな」

  ポーカ 「なら、リエルとアーキア以外はマギガントから降りましょうか、チルとテディアは訓練中申し訳ありませんが降りて下さい、また別の機会を用意しますので」

  テディア 「いえ、お気になさらないで下さい、リエル様に手ほどきも受けましたのでむしろとっても有意義な時間でした」

  アーキア 「なんかリィって変わらないよね、面倒見良過ぎるよ」

  リエル 「だから、リィの居ないアキが心配だったんですよ、ちゃんと歯を磨いてますか、ご飯は好き嫌いせずに食べてますか?」

  バツが悪そうに口をつぐんだアーキアに代わって、ポーカがアーキアの現状を応える。

  ポーカ 「アーキアさん何でも食べてますよ、でも甘いお菓子に偏っちゃてますね」

  そのポーカの言葉にリエルは驚いた顔をしている。

  リエル 「甘いお菓子なんて有るんですか、こっちで甘いものなんて果物以外食べてませんけど」

  ニア 「ニャア達は元の世界から砂糖を持ち込んで来てるし、ダイン様は砂糖を作る研究もしてるにゃ、だからお菓子なんて当たり前にゃ」

  リエル 「アキがリィに黙って甘いお菓子食べてたなんて、道理で帰って来ない訳ですよ」

  ニア 「ニャアの国には、男を落とすには胃袋からって言葉が有るけど、アーキアは正にその通りだったにゃ」

  アーキア 「食文化って重要だよね、食事は一日に三度も食べるし、美味しいお菓子が有れば間食も楽しいよ」

  リエル 「まぁ、アキが満足してればそれはそれで良いんだけど、でも、ちょっと酷いですよね、リィはずっと心配してたのに」

  ポーカ 「でもそれって多分レボトが情報止めてますよ、アーキアがいい思いしているってリエルが知れば逃げられると思ってますね、ポーカはクガトと繋がってる生徒を監視してましたけど、アーキアの状況は絶対にクガトに伝わってますから」

  リエル 「クガトがそういうところなのは解っているんだけど、やっぱり拾って貰った恩が有るから裏切れないよ」

  アーキア 「ああ、多分アキ達は勘違いしてると思うよ、確かにルーフィンの魔術は目標になったかも知れないけど、召喚したのはこっちの魔術、フェカトは其処を負い目に思ってるからダインさん達を凄く優遇してるんだよね」

  ポーカ 「そうでしね、アーキアかた聞いた情報だと間違い無いですね、実際に召喚を指揮したフェカトがそう言ってましたし、クガトが召喚の術式と魔術師を集めていたのは確かです、実際、フェカトはクガトの術式を入手して、ダインさん達を召喚してますから」

  リエル 「それってリィ達は騙されてって事なのかな?」

  アーキア 「かもしれないね、ルーフィンの性格だと本当に自分が転移術式使ったと思ってそうだけど、フェカトさんの話し聴く限りではかなり大掛かりな準備が必要みたいだからアレじゃ無理なんじゃない」

  リエル 「そうだよね、いくら何でもあの程度の魔力量の魔術で異世界転移なんかは不可能ですよね」

  アーキア 「でもさ、そうなると知ってって隠してたレボト・クガトもやっぱり信用出来ないよ、此処だと同じ年頃の子も沢山居て楽しいし」

  リエル 「楽しそうなのは見ていて解るよ、確かにアキが居着いちゃうのは仕方ないかも」

  アーキア 「だからさ、リィを昼食に招待するよ、丁度良い時間だし、ダインさん行っちゃったから、リィの分有るよね?」

  以前は食堂で学生と同じ食事を食べていたダイン達ではあったが、最近は国賓屋敷で愛耶の作る昼食を食べる様にしている。

  愛耶はこの世界の食材を使って食文化の向上に邁進しており、場数を稼ぐ為に昼食の調理も自ら行っているのだ、そして上手く調整された料理はメイド達の手によって学食にも応用されて、テガスの料理は王宮よりも美味だという話も出始めている。

  ポーカ 「アーキアが控えてくれれば十分有りますよ、けど、昼食はダイン様が居ないので愛耶が色々試すみたい何ですよね、ダイン様に変な物はお出し出来ませんから」

  リエル 「リィならいいんですか!」

  ポーカ 「異世界人の愛耶さんの作る料理はどれも美味しいんですけど、変わった調理したりするんですよ、魚を生で食べたりとか、馴れると美味しいんですけど、初めは抵抗有りますよね」

  ニア 「ニャアの国じゃ生の魚は当たり前だったにゃ、それに愛耶も寄生虫心配してちゃんと氷結魔術で凍らせているから、食べても安心にゃ」

  リエル 「生の魚を凍らせるの、よく解んないね」

  アーキア 「うん、でもダインさんの世界って凄いよ、凍らせる事で海の魚とか新鮮なまま食卓に上がるし、普通魚って干物か燻製だったよね」

  ニア 「ここも二人の世界も食文化は遅れてるにゃ、だから愛耶が張り切ってダイン様に美味しい物を食べさせようとしてるにゃ」

  ポーカ 「そうなんですよ、本当に美味しい物ばかりで、ここの料理に生徒が馴れてしまうと軍で通用しなくなるんじゃないかと心配してます」

  アーキア 「いや、貴族のクガトの家の料理と比べても雲泥の差だよ、宴席の料理でも生焼けの丸焼きとかだし」

  リエル 「アレは驚きましたよ、自分の火炎魔術で仕上げして食べるなんて、アキなんてそのまま食べてお腹壊してたよね」

  ポーカ 「宴席の定番なんですけどね、貴族は皆高い魔力持ちなんでああいう事が行われているんですよ、炙るのが上手い人は重宝されてますよ」

  ニア 「凄い食文化なのにゃ、ニャアの世界の料理人は自分に料理にプライド持ってる人が多いのに」

  ポーカ 「愛耶さんの料理食べるとよく解ります、食材の火入れが絶妙ですから、生の魚も表面炙ってたりしますよね」

  ニア 「ニャアも詳しくは解らないけど、臭み消しや食感の演出だと思うにゃ」

  リエル 「そういう話聞くと食べたくなって来るね、解ったよリィも異世界料理食べてみるよ、当然、甘いお菓子も付くよね」

  ニア 「それは大丈夫にゃ、プリンは何時も切らさない様にしてるし、愛耶は新しいお菓子も挑戦してるにゃ、今日はニャアのリクエストのモンブラン作ってくれる筈にゃ」

  アーキア 「モンボランってなんか強そうな名前だよね、そういう名前の武器が有ったよね」

  リエル 「それザンボランだね、戦艦ザンボラン、前の戦争で活躍したヤツ」

  ニア 「なんか変な話になってるにゃ、モンブランはニャアの世界の山の名前で形が似てたからそういう名前になったにゃ、栗のクリームが美味しいけど、この世界の栗は渋いって言ってたから愛耶がどう作ってくれるのか楽しみにゃ」

  アーキア 「まぁ美味しければ名前なんてどうでもいいよね、愛耶さんの料理は絶品だから今ちょうどいい時間になってるから屋敷で昼食だよね、アキ降りてリィ迎えに行くから待っててよ」

  アーキアはそう言うとフーティアをさっさと降りてしまった様で、通信盤の映像から姿が消えてしまう。

  ポーカ 「アーキア飛び降りて闘技場に走ってますね、リエルさんも準備して下さいダイン様が居ないのでポーカじゃアーキアは制御出来ませんから」

  リエル 「色々迷惑掛けちゃってるみたいですみません、アキは変に行動力有りますから」

  ポーカ 「気にしないで下さい、アーキアはもう家族ですから」

  リエル 「確かにポーカさん、お姉ちゃんみたいな顔してます、リィのお姉ちゃんもリィにそういう顔してました」

  ニア 「ニャアもアーキアは妹だと思ってるにゃ、アーキアはよく動くからニャアには良い遊び相手にゃ」

  リエル 「アキ可愛がって貰ってるんですね、あんな性格の娘だから心配してたんだよ」

  ポーカ 「そうですか、結構皆んなと打ち解けてますけど、まぁ変わった娘だとは思いますけど」

  リエル 「正直、こっちの人の事も心配もしてましたけど、大丈夫そうで良かったです、クガトでは居心地悪そうにしてましたから」

  ポーカ 「美味しい物食べてるだけで心配事は減りますよ、それにダイン様がアーキアの支えになっていると思います、同性には埋められない事も有りますから」

  リエル 「アーキアがですか、男性になんて興味無いと思ってました」

  ニア 「ダイン様には妖しい魅力が有るからにゃ、ニャアも何だかよく解らないけど好きになってたにゃ」

  ポーカ 「いや、それは異性として優れてるからですよ、魔力が十二万も有る男性なんて過去に例が有りませんから、人間以外なら魔王が居ましたけど」

  リエル 「魔王ですか、昔のクガト城の主人ですよね、地下の広間に有る魔王の王座はリィも見た事有ります」

  ポーカ 「魔王は野戦で討伐されましたから、城はほぼ無傷なんですよね、長い年月で改修はされてますけど、あの城の威圧感って凄いですよね」

  リエル 「はい、上から見ると特に凄いですよ、建物の配置に何か呪術的な意味がある様にも思えます、正直言ってリィもあのお城は何だか落ち着かなくて」

  ポーカ 「感覚的に動いているアーキアは何か感じているのかも知れませんね、だからここに居座っているのかも、まぁ他の要因を多いとは思いますが」

  リエル 「あ、アキがこっちに来ました、リィがまだフーティアに乗ってる事を怒ってるので、リィ降りますね」

  ポーカ 「はい、久しぶりの対面を楽しんで下さい、ポーカも昼食をご一緒しますので後ほどお会い致しましょう」

  リエル 「はい、先にアキをなだめてますね」

  リエルはそう言葉を残して通信盤の画面から消える、どうやらフーティアを降りた事は確実な様で、一先ず当初の目的を達成出来た事にポーカとニアは安堵する。

  後はどうリエルに対処するか考える必要が有るが、ダインの意思を汲み取れない以上、このまま足止めしてダインの帰りを待つ事が最良の方法だろう、そしてその為の仕込みは既に終わったと言っていいだろう。

  おまけ

  好名(すきな) リエル、アーキアの世界の風習、女性が主に使用して自身の名前を省略して一人称として使う。

  リエルならリィ、リエ、エル、ルゥ、リルなど好名として考えられリエルはリィを使っている。

  好名同士で呼び合うのは交友の深い証で、親しく無い者同士が好名で呼び合う事は無い。

  リエル、アーキアがお互いに好名で呼び合っているのに対して、ルーフィンを名前で呼んでいるのはルーフィンが二人とそれほど仲が良く無い証拠でもある。