地固め編 第六話 育つ毒花

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  新しい料理の発想が芽生え、その調理に夢中になっていた愛耶は、地下室に居るダイン達が未だに姿を見せない事に気付いて焦りを覚える。

  ダイン様とニアが居る以上、ダインの身に危害が及ぶ事など考えられないが、幾ら何でも時間が掛かり過ぎている。

  それに気付くと愛耶は直ぐさま地下室へと向かい、二重の扉を抜けて中に至った。

  愛耶思考 『静かですね、四人の魔力は感じられますし、この馴染み無い魔力も遊魔のモノで有る事は間違いないのでツェリのモノでしょうか』

  愛耶は決まりに従って服を脱ぎ捨てて全裸になると、広いダインの寝所の奥に進んで行くと途中カプセルの中で気持ち良さそうに眠っているアーキアの姿が目に入る。

  愛耶思考 『アキが目覚めていないのが何も無い証拠ですけど』

  愛耶は先に進んで、安らかに眠る三人を見てホッとする。

  愛耶思考 『そもそもお休みして貰う為にシーベアーでの旅を計画したのに、こっちでは忙しい日々ばっかりでしたね、こうして安らいだダイン様の寝顔なんてこっちに来てから初めてです』

  そして、ダインが作り上げた新しい遊魔の姿を見つけて観察を始める。

  愛耶思考 『何だか優遇されてる見た目ですよね、アイヤも熊には満足してますけど、初めから天使型はチョット卑怯ですね』

  ほぼ完成状態のツェリの身体は確かに素晴らしいモノで有った、美しい白い羽は聖なる雰囲気を湛えて、その中心となる身体は活力の漲るモノで若々しく息吹に溢れている、見た目こそ高潔な雰囲気が漂っているが、遊魔で有る以上は淫らな本性を秘めている事は間違い無い。

  愛耶思考 『民衆に対する詐欺ですよね、聖女として支持させるつもりなのに、でも、ダイン様の好きそうなやり方です』

  ダイン 「おや、来ていましたか、どうです新しい遊魔はこれなら革命の先導者として申し分無いでしょう」

  眠りから覚醒したダインが愛耶に語り掛ける。

  愛耶 「はい、でも遊魔にはちょっと神々しく有りませんか」

  ダイン 「まぁ人は印象で騙されるので仕方有りませんよ、私達の姿はいかにも怪しいですから」

  愛耶 「でもそれがダイン様の好みでしたよね、先導役としての有効性は理解してますけど、やり過ぎの様な」

  ダイン 「それは私が堕天シュチュを堪能したいからです、ツェリにも当然淫魔形態を授けるんですが、堕天って良いですよね」

  愛耶 「なるほど、ダイン様の好みを反映する為ですか、無駄が無いですね」

  フェカト 「ふぇ、見た目以外にも意味が有ったんですか?」

  二人の会話に目を覚ましたフェカトがダインに問い掛ける。

  ダイン 「二次元でよく好まれるシュチュ何ですよ、神聖さが堕落する瞬間が特に良いんです」

  愛耶 「ダイン様って神聖さを否定してますけどね」

  ダイン 「アレこそ擦り込まれたイメージ何ですよ、だからこそ穢して堕とす必要が有りますね」

  愛耶 「ダイン様って理を自分で作っちゃってますからね、だからこそ禁忌も有りませんし、アイヤもその楽しさが解って来ました、なるほどこのツェリが淫魔に変化して行くのは実に楽しそうです」

  フェカト 「フェカトにはその感覚が解らないので残念です、聖人とかは堅いイメージですけど」

  愛耶 「神聖ってそれとはチョット違いますね、ですがツェリが聖女と呼ばれてる以上は近い感覚は有ると思いますよ、自身よりも他者を優先して利益を分け与える人が聖人とか聖女って呼ばれているみたいです」

  ダイン 「お人好しという事ですね」

  フェカト 「その言い方だと結構何処にでもいますが、前提として凄い技能を持ってるって事ですかね、人類法を管理してる元老なんかもそれぞれが優れた賢者で私欲が無いんですよ、だからこそ公正を求められる元老になれるんですが、フェカトには絶対無理ですね」

  ダイン 「フェカトには余り私欲は有りませんが、ポロルグに対する献身が凄いですよね、その愛国心が人類圏に置き換わったのが元老ですね」

  フェカト 「はい、そういう認識で正しいと思います、まぁ愛国心が人類愛に変わって元老になった王も歴史上存在してますから、俗人でも聖人へと昇華出来ますよ、多分」

  ダイン 「確かに地球の古代の思想家も歳を取ってから、頭角を表す者が多いと思います、そう考えるとツェリは驚異的なぐらい若いですね」

  フェカト 「はい、民衆の先導者としてうってつけの人物です、フェカトは以前から動向に注目してたんですが、現状で納得しちゃってる人だったので、担ぐ事も無理だと判断してました」

  ダイン 「そこは美しい処女で助かりましたね、私が遊魔に魔進化させるのは若い娘ばかりだったので、若返りを試す事が出来なかったんですよ」

  愛耶 「アーグル世界の貞操感がダイン様とマッチしてますからね、でも、この世界の常識から見るとダイン様の処女好きも重要な意味が有ったって解りますよね」

  ダイン 「私の場合は極度の男嫌いから来ているかも知れませんけどね、男自体が穢れの塊の様なモノなので、自分以外の男と交わった女は穢れているんですよ、だから愛する事など不可能ですね」

  愛耶 「腐った食材では料理出来ませんからね、遊魔がダイン様の作品である以上、素材への拘りが強いのは当然です」

  ダイン 「ちゃんと理解してくれて有り難いですね」

  フェカト 「ダイン様以外の男が穢れの塊というのは、遊魔の共通認識ですよね、フェカトも父や兄弟を疎ましく思ってますし、遊魔という家族が有る以上もはや必要も無いですから」

  ダイン 「まぁ私達が楽しく生きていければ、他人なんてどうでもいいんだですよ、ただ害になる可能性が有る物は十分な注意が必要です、例え遊魔が人間より優れているとは言っても、多勢に無勢ですので」

  フェカト 「その為の合法的な国家建設ですね、ツェーリアは発展していませんのでダイン様の思う事がやり易いですよ」

  愛耶 「その為に重要なのがこのツェリですね、まだ掛かるんですか」

  ダイン 「はい、ですからアキを起こして夕食にしましょう、私も夜の方が安心何ですよ」

  愛耶 「準備は整ってます、今日はアーグル産の食材だけで作ってみました、思ったよりも上手く行きましたので早くダイン様の感想を伺いたいです」

  フェカト 「それは楽しみですね、アーグル食材だけで日本の食文化が再現出来れば持続可能ですから」

  ダイン 「調味料もですか、それなら凄いですね、ですが発酵調味料を作るだけの時間は無かった筈ですが」

  愛耶 「代用醤油さえ出来れば日本食の大半は可能だと思います、それぐらい醤油の比重が高いんですよ」

  ダイン 「タンパク質と塩ですか、あと麹は炭水化物を糖に換えるんでしたね」

  愛耶 「はい、遊魔由来じゃ無い砂糖も見つかりましたから、これからアーグル食材のレシピを作っていこうと思ってます」

  フェカト 「もちろんお菓子も作るんですよね、アレの美味しさを広めたくても、遊魔乳糖を使っているので無理なんですよ」

  ダイン 「女性は発情してしまいますからね、それに新しい味は良い稼ぎになってくれるでしょう」

  フェカト 「既にテガスの異世界料理は大人気ですから、皆んな追加でお金を払ってでも異世界料理を注文してます」

  ダイン 「無料食堂が定着しているこの世界で、お金を払ってくれれば大成功ですね、食事は絶対必要ですからもっと浸透させていきましょう」

  フェカト 「ククジアでは順次進める手筈です、なるべく味の出し方は秘密にするんですよね」

  愛耶 「調味料を押さるので大丈夫だと思います、特にこの世界の調味料ってシンプルですから新しい味を生み出すのは難しいと思います、発酵にも感ってあるじゃ無いですか」

  ダイン 「私には解りませんが、アイヤは発酵まで嗜んでいるとは」

  愛耶 「手作り味噌とか塩麹ですけどね、ぬか漬けも興味有りましたけど、ここじゃ無理ですよね」

  ダイン 「ぬか漬けはそもそも炊いたご飯が前提ですからね」

  愛耶 「ならピクルスですね、アレならコッチのパンにも合いそうです」

  ダイン 「私はピクルス苦手なんですよ、というより酢が苦手で」

  愛耶 「余りマヨネーズ好きじゃ無いですよね」

  ダイン 「カロリー高いですからね、野菜でも醤油掛けて食べてましたよ」

  愛耶 「ならおすすめのドレッシング作ります、ようやく生で食べられる野菜も解って来ましたから」

  フェカト 「サラダですね、野菜を生で食べるなんて斬新ですよね、スープに入れる物だと思っていましたが生でも十分食べられます」

  ダイン 「果物は生で食べているのに野菜は加熱してますよね」

  愛耶 「地球でもそうじゃ無いですか、江戸時代とか生野菜の料理が余り無いように思います」

  ダイン 「そういえばそうですね、失念していましたが寄生虫とかは大丈夫なんでしょうか遊魔には心配有りませんが」

  愛耶 「確かにそうですね、今気付いて良かったです、幸い食堂に教えたレシピには生野菜を使ってませんから、今後は注意してみます」

  ダイン 「こうなるとツェリの知識はかなり貴重ですね、虫除けとかも有るんでしょうか、遊魔の身体は病魔に対して強靭ですが、アーグル人が野菜の生食が大丈夫か試す必要も有りますからね」

  愛耶 「なら、今日の料理は先に尻尾で試してみましょう、何らかの不具合が有れば解る筈です」

  フェカト 「でも動物は食べてますんで大丈夫じゃ無いですか」

  ダイン 「解りませんね、私は向こうで嫌な動画見た事が有りますから、敢えてどういう物かは言いませんけど」

  愛耶 「でもダイン様なら、薬とかも作れますよね」

  ダイン 「多分可能ですよ、それどころか触手を使って内視鏡手術も可能ですね、男に行うのは嫌ですけど」

  愛耶 「男というより、好みの女性以外は無理ですよね」

  その時、カプセルが弾けると中のアーキアが身体を伸ばしながら声を上げる。

  アーキア 「あースッキリしたよ、身体が軽くなった感じ、けどお腹減っちゃてるなぁ」

  尻尾カプセルの機能は格段に進歩しており、溶液を抜いた後に身体の乾燥まで行ってくれている。

  ダイン 「それはちょうど良かったですね、今から夕食にするところです」

  アーキア 「中に女の娘入ってるけどこっちは良いの?」

  別の尻尾カプセルに入ったツェリの姿に気付いたアーキアが問い掛ける。

  ダイン 「まだ時間が掛かりますからこのままにしておきます、ニアも食事は食べますよね」

  既にニアが覚醒している事を感じていたダインが問い掛けると、ニアはむっくりと起きて答えた。

  ニア 「魅力的な提案だけどニャアはツェリの側にいるにゃ、お腹はまだ大丈夫だしダイン様もその方が安心なはずにゃ」

  ダイン 「確かにそうですね、ここはニアの言葉に甘えて私達は食事にしましょう、もうみんな戻る頃合いですね」

  愛耶 「はい、アイヤが抜けた分はプルルはやってくれてる筈です、でも、生の野菜の料理は解らないかもしれませんね」

  ダイン 「なら、急いで戻りましょうか、ツェリの事は頼みますね」

  ニア 「大丈夫にゃ」

  ダイン達は寝所から出ると手早く衣服を身に付けて地下室を後にする、ニアは再び身体を丸めて眠りに付き、地下には静かな時が流れて行く。

  そしてツェリとして生を積み重ねた女性はダインに相応しい牝へと魔進化を続けて遊魔達の仲間入りを果たすであろう。

  おまけ

  植物魔進化 ダインがツェリを重要視する背景の一つにリレッタから得られたクガトの魔術知識が有る。

  具体的には植物の種子に魔力を流す事で変異加速させる魔術ではあるが、アーグル人の魔力ではそれ程大きな変化はない。

  その点高い魔力を誇る遊魔が同様の魔術を行使すれば高い効果を得られる事が予想され、ダインも植物魔進化に大きな可能性を見出している。

  現在は既存の食用植物の種子の魔進化を行っているが、この短期間に効果を表し始めてもいる、具体的には成長速度の向上などが確認されており、今後も規模を拡大して継続していく計画である。