008-010
リリルカは遊魔の性交という物を十分に堪能して眠りに付いていた、まだ魔進化して日の浅いリリルカは完全に遊魔細胞が融合しておらず、披露の蓄積と回復が通常の遊魔に比べて劣っているのだ。
そんなリリルカをベッドに残したダインは浴室に戻って、温くなったお湯に浸かって疲れを癒やしながら、変化するオハナIIIの様子を見守っていた。
ダイン思考 『まだ私を釣る餌の可能性は否定出来ませんが、私が染めた自らの生体端末をどう扱うか見ものですね、本当に友好的か自らの技術に自信があれば上手く受け入れてくれるでしょうね』
ダインは確かにオハナIIIを遊魔に魔進化させようとしているが、オハナIII自体が遊魔を増殖させる事は無い、ダイン的には先に花園が見せてくれた技術のお返し的に考えているが、相手を怒らせる可能性は十分に有り得る。
もっとも、オハナIIIの扱いから考えて使い捨ての可能性は高く、遊魔流の人材の有効利用の意義を花園が認めてくれれば、両者は共に発展する事も可能だろう。
ダイン思考 『自分よりも力を持つかもしれない存在は恐ろしいですよ、正直まだ地の王の方が気楽です、彼等の兵器技術が極端に向上していなければ、対処可能でしょうから』
情報こそ集める様に指示しているがダインは地の王より花園への対応を優先している、百五十年前の侵攻戦に参加した三天人達の経験から岩喰いの巨人魔導具の操縦者は処女だという事が判明しており、巨人魔導具をより有効的に機能させるなら当たり前と言える、だが、その条件はダインに対して好都合でもあるのだ。
この事実がダインが余り地の王に脅威を感じていない理由でも有り、岩喰いが保有する巨人魔導具ならば魔龍で十分に対応可能で、操縦者を生け取りに出来れば逆に戦力強化に繋がるのだ。
ダイン思考 『交渉が上手く行けば087シリーズの供給を打診してみましょうか、オハナIIIの身体能力は平均値を大きく越えてますし、品質が安定しているので同じ遊魔を生み出すのに最適ですからね、遊魔形態で高い戦闘力を持つ遊魔も魔龍の解析で可能になりましたから』
ダインは北部情勢の理解度からリリルカに参謀役を与えて、代わりの花園担当をオハナIIIに任せる事に決めていた、遊魔への魔進化が完了すれば信頼度が格段に向上して、遊魔の代弁者として相応しい存在となるだろう。
ダイン思考 『後は保険のクフィカールですか、飛行装備の破損は障壁防御の低下と同じですから、こちらは不確定要素が強いですね、ディセルト達に魔龍の身体に慣れて貰う方が建設的ですね、ですがクフィカール復活が与えるディーラルへの影響は小さくは無いでしょう』
遊魔の北部戦略はまだ未確定の要素が大き過ぎる、ダインも着実に事を進める様に思案しているが、何もかもまだ始まったばかりだ。
ダイン思考 『今は出来る事を着実に進めるだけですね、オハナIIIの魔進化を完了させてから、ペーテの動きも見極めないと行けませんね、他のディーラル王族の動きは解りませんが三天人の予言が進んでいるとなると動きがあるでしょう』
ダインがディーラル王族の動きに対して思案していると、一階の自室に居るディセルトから、緊急の念話が送られて来る。
ディセルト思念 『屋敷周辺に敵意の反応が有ります、数は数十人規模で人間の襲撃と思われます』
その報告をダインはある程度予測していた、そう今考えていた三天人予言を知った上での行動だろう。
ダイン思念 『こちらの予測よりも動きが速いですね、余程上の人間の決断が速い様です、ですが我々の力量を確かめ無いのは迂闊ですね、皆に通達します、私が防衛魔術を展開しますので屋敷の外には出ないで下さい』
レ・ミュウ思念 『幻惑魔術で同士討ちさせるんですね、自分で手を下さないのが主らしいです』
レ・ミュウはダインのやり方という物を理解している、自分の可愛い遊魔達を男となど戦わせたく無いのだ。
ダイン思念 『どうせ侵入者は男なんですよね、処女なら屋敷に招く事も考えますが』
ディセルト 『二名ほどからは純粋魔力を感じますが、その二人も始末しますか?』
その言葉でダインの気が変わる、実際に目で見て遊魔と成れるだけの美貌があるなら、取り込んだ方が都合がいい。
ダイン思念 『位置を教えて下さい、実際に見て判断します、私は窓から出て対応します』
思念が飛び交っている事で眼を覚ましたリリルカは、直接ダインの居る浴室に来て対応を乞う。
リリルカ 「リリルカもお供します、ディーラルの人間ならリリルカが不始末を正さないと」
ダイン 「いや、狙いが私なのは解りきってますから、私がやりますよ既に幻惑魔術の為の霧が発生してますから味方が居ない方がやり易いんですよ、リリルカはオハナIIIを頼みますね、そろそろ魔進化の山場なのに誰にも見守って貰えないのは可哀想ですから、私もなるべく早く終わらせてきます」
ディセルト思念 『二人の位置が掴めました、位置は襲撃者達の外縁でほぼ同じところにいます』
ダイン思念 『なら手前が省けますね、尻尾を二股にしておきましょう』
レ・ミュウ思念 『さすが主、初めから捕獲前提で抜かりないです』
ダイン思念 『二本有れば左右に逃げられても追えますからね、もっとも逃げる隙など与えないつもりですが』
ディセルト思念 『ダイン様自ら行くならば勝利は当然ですよね、ルト達の初めての時もそうでした』
ダインは思念を発しながらも窓を乗り越えて外に出る、屋敷周辺を包む霧はせいぜい地上3メートルぐらいまでなので、ダインは木々を避けながら高速で移動して行く。
霧の中からは男の魔力が多数感じられるが、襲撃者達には戸惑った様子はない予めこういう事態も想定していて訓練された者達である様だ。
ダイン思念 『暗殺なども行う諜報組織でしょうか、装備が金属鎧じゃ有りませんね、正規の兵は王都警備隊でも金属鎧を着てましたからね』
リリルカ思念 『ディーラルでは金属鎧で所属を表す事が多いんですよ、アレはお金掛かるし手入も必要ですし、何より威圧感がありますよね』
ダイン思念 『なら金属鎧を纏って無い襲撃者達は、何らかの組織に属していても公にしたくないという事ですか・・・なら作戦を変更して昏倒させましょう、バラしたくないならばバラした方がダメージを与えるでしょうから』
ディセルト思念 『でも、処女の獲物はどうするんですか?』
ダイン思念 『勿論頂きますよ、この時間ならば十分に魔進化させて戻す事も可能でしょうから』
ダインは独特の魔術詠唱を唱えると屋敷の上に魔法陣が出現する、そして森の中の襲撃者達の気配が徐々に減って、直ぐに起きている者が一人も居なくなる。
そしてダインは目的地まで飛行で近付いてから着地すると、意識を失ったまま昏睡する二人の獲物を見つける、容姿は二人とも美形でダインが遊魔に加える基準を十分に上回っている様だ。
ダイン思念 『二人とも眠りに落ちてますね、茶色の動き易い衣装に纏められた髪、投げれる様に工夫した短刀を数本太腿の鞘に挿してます、クノイチみたいですね』
ディセルト思念 『何だか嬉しそうですね、そのクノイチとかいうモノがお好き何ですね』
ダイン思念 『影に生きる女って何だか惹かれるんですよ、遊魔の諜報は組織の中の使えそうな処女を遊魔にする事ですから、潜入調査する者は居ないんですよね』
ダインはもう一度目で二人を確認する、変な毒などを持ったまま呑み込んでしまうと、ダインは大丈夫でも中の二人が危険に晒される恐れが有る、そして案の定、毒を纏めた革袋を両名共所持しており、それだけ別に回収して呑み込む事にする。
ダイン思念 『捕らえた後は直ぐに戻ります、私の部屋で儀式を行います、この二人は尻尾融合で魔進化させ純潔は維持しますよ』
リリルカ 『ちゃんと意図の有る純潔の可能性が高いですからね、処女を売りに対象に接触させる暗殺者なんでしょうね』
ダイン思念 『そんなところでしょう、だからこそ処女を維持させておかないと疑いを持たれるでしょうね』
レ・ミュウ思念 『北部の魔術知識じゃ、純粋魔力を感知出来ないんじゃ?』
ダイン思念 『表に出せない知識を持つ者は居たりしますからね、現に遊魔がそうじゃないですか、そしてこの二人には仲間に言えない仕事をして貰いますしね』
ディセルト思念 『ルト達は三人一緒に遊魔にして貰えて幸せです、幾ら遊魔が絶対でも培った関係は失いたくは有りませんから・・・』
リリルカ思念 『羨ましいですね、私にとってメティは友達でしたけど、理解者では有りませんでしたから、でも、遊魔のメティはちゃんと理解者です』
リリルカにとって、理解者とは待ち望んでも得る事が出来なかった存在だ、だが、今や面識の有る遊魔の同胞全てが理解者となり、北部で魔進化した遊魔の中でリリルカが恩恵を一番受けているのかも知れない。
ダイン思念 『私と同じで皆んな変わり者で友人が少ない様ですね、まぁこの二人が同じ襲撃者達をどう思っているかは解りませんが、遊魔に迎え入れるのは確定ですね』
レ・ミュウ思念 『毎日仲間が増えてミュウも嬉しいです、遊魔が増える事は主の願いに近付く事ですから』
ディセルト思念 『ですが残りはどうします、ダイン様の魔術を疑う訳では有りませんが、魔術に耐性の高い者もいますからね』
ディーティル思念 『そこは屋敷の住人の仕事ですよね、ティル達三人で賊を縛り上げておきます、三天人が手を下したという事実が有れば、国王に対して強く出れますから』
ディーティエ思念 『異存は有りませんが、国王ヒーソフの差し金かも知れませんよ、表向きにはヒーソフしか私達がダイン様のモノにされた事を知りませんから』
ディセルト思念 『ルトはその可能性は無いと思いますけど、多分、王妹ラールカですね、私達を亡き者にする何て考えるのはラールカぐらいですよ、前に会った時の目は心底私達を嫌ってる者の目でしたね』
ダイン思念 『首謀者はこの二人から分かるかも知れません、ルト、ティー、ティルは他の襲撃者達の拘束をお願いします、確か耳長には捕縛に使える蔦の魔術が有りましたよね?』
ディーティル思念 『もちろんそれを使うつもりです、怪しい男達なんて触りたくも無いですから』
ディセルト思念 『一応非処女の女性も五名ほどいますけど、ダイン様には関係無い事ですよね』
ダイン思念 『どうでしょう、今後の展開では使えるかも知れません、花園の複製体は処女でしょうから』
レ・ミュウ思念 『さすがは主、今は使い道が無くても有効な利用法を模索している』
ダイン思念 『褒めても特別扱いはしませんよ、早急にやるべき事が出来ましたから、私が撤収した後に捕縛の蔦を使って下さい』
指示を下したダインは、自身の仕事を始める事にする、二股に別れた尻尾は良い感じに成長して大きくなっており、意識の無い女性を両方別々に呑み込む事など造作も無い。
そして、地に着き獲物に向かって這う尻尾達はそれぞれの獲物の前で先端の皮を剥くと、中から現れた触手が獲物に絡み付いて行く、その後大きく拡がった皮が触手に引き寄せられた獲物を丸ごと包み込むと、ダインの尻の後ろに戻って、まるで四つ脚になった様な姿へと変化する。
ダインはそのままふわりと浮き上がると高度を上げて耳長屋敷へと向かう、意識を保っている人間がいないので木々に隠れる手間を省いたのだ。
耳長屋敷のダインの部屋の窓際にはリリルカが待っており、窓からダインの手を取って迎え入れる。
リリルカ 「オハナIIIはまだ時間が掛かりそうです・・・というより意識的にダイン様の事を待ってると思います」
ダイン 「それを感じ取れるものなのですか、私には経験ありませんので・・・私は徐々に人間離れしていきましたから」
リリルカ 「リリルカはちゃんとダイン様の魔力が感じられましたよ、人で感じた事の無い感覚でしたから特に敏感になるんですよ」
ダイン 「なら、二人は尻尾に任せてオハナIIIの仕上げを見守りましょうか、尻尾の融合はそれ程変化が無くて面白味に欠けますからね」
部屋に入り込んだダインは、二つの尻尾を切除するとそれぞれが意識を持つかの様に形が変わって行く、ダインは切れた尻尾を一瞥してからオハナIIIが待っているであろう浴室へと向かうのであった。
おまけ
三天人の位置付け 三天人は崇拝されているが神格化はされていない、三天人自身も自分達は寿命の長い人間だと言っており、地の王との戦いの勝因はクフィカールだとも公言している。
その為かディーラル国内には三天人に否定的な考えを持つ者も存在しており、今回の襲撃はその様な考えを持つ者達によって実行されたと考えられる。
基本的に、王都ディグランに居住する者は三天人の崇拝者だと思われていたが、少なからずの例外がいた様だ。
実は三天人には王都内部の森の他に直轄領を所有している、これは領主同士の領土争いで係争地となった土地を三天人譲渡する事によって、中立地帯として争いを収めるというディーラル王家の調停策から生じた領地で、ディーラル各所に三天人直轄領が存在している、だが、この調停策で三天人を逆恨みしている領主も確かに存在する。