ディーラル侵蝕編 第二十五話 拡大するユーマ共栄国
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混沌大陸北部で遊魔の活動が活発化していた頃、人類大陸遊魔との接触を志願したメファティはようやくレブナン島を視界に捉え、その異様な状態に戸惑いを感じていた。
レブナン島上空には大きな飛行物体が四隻浮かんでおり、島周囲を警戒する様に巨人魔導具が警戒飛行を行っている、そしてその内の一機にメファティは見つかってしまった様で急速に接近して来たのだ。
だが、遊魔思念の範囲に入ると緊張は安心に変わる、巨人魔導具に乗っているのは遊魔でメファティは二日ぶりに遊魔の暖かい感覚を感じる事が出来たのだ。
リエル思念 『貴女は遊魔なんですね、仲間に感じる思念を感じます、貴女が存在するという事はダイン様はご無事なんですね』
メファティ思念 『はい、ダイン様は北部人類圏でご健在です、私は外の世界に興味を抱いてやって来ました、ダイン様からのお言葉もちゃんと託されて来ています』
リエル思念 『それは何よりの朗報です、旗艦フライ・ベアーへとご案内しますね』
リエルのフーティアはメファティに手を延ばすと、メファティにそれに招かれる様に手に乗ると、胸部の操宮への入り口が開きリエルが姿を現す、北部の衣服では見ない色合いの服にメファティは異なる文化の片鱗を感じ取ると、操宮の中に招かれてリエルとの対面を果たす。
メファティ 「異国の衣装とは華やかな物なのですね、国とは違って驚いてしまいました」
リエル 「ああ、これは私用の特別な衣装です、普通の人はもっとおとなしいですよ、私はユーマの広告塔でも有りますから」
メファティ 「リエル御姉様ですね、第四世界の出身と有りますけど・・・」
リエル 「私もダイン様と同じく、この世界アーグルとは違う世界からやって来たんですよ、そして魔力が高いので勇者の称号を与えられたんです、ダイン様には及びませんけどね」
メファティ 「ダイン様から色々伺いましたが、ダイン様の話が私の外への興味を加速させてくれました、実際飛ぶ巨人魔導具に乗れるなんて夢の様です」
リエル 「フーティア程度で驚かないで下さい、ダイン様がお作りになった浮遊母艦こそ遊魔技術の最先端なんですよ」
メファティ 「それって今から行く所ですよね」
リエル 「はい、島上空に浮遊している船です、ダイン様捜索の為にユーマはこのレブナン島を領土に加えて戦力を整えているんですよ、でも、メファティの来訪で捜索の必要も無くなりましたね」
メファティ 「確かに探す手間は無くなったと思いますが、ダイン様はユーマ本国からの来援をお望みです、私の産まれた国ディーラルは今、脅威に晒されてますから」
リエル 「魔龍ですか・・・確かにレブナン島には姿を現していませんが・・・」
メファティ 「いえ、地の王という岩喰いの軍勢です」
リエル 「ダイン様は魔龍以外にも、敵を作ってるんですか・・・」
メファティ 「魔龍って天人のレ・ミュウ姉様の事だと思います、ダイン様を食べて連れ去ったと聞いていますが、私が合った時には既に遊魔でしたよ、他に魔龍というのは聞いていませんね、三天人の妹達は魔龍化出来るという事を聞きましたけど」
リエル 「当然のように姉妹が増えてますね、魔龍化出来るという事はメファティの国には耳長が居たという事ですよね」
メファティ 「はい、私が知る時点でのディーラル王国、ここでいう北部人類圏の情報は共通知識に加えておきますね、ダイン様に指示されて私が辿った航路なら安全に北部人類圏まで辿り着けると思います」
リエル 「レブナン島ではダイン様捜索の為にかなりの戦力を集めてますからね、浮遊母艦だけでも三隻も捻出したんですよ」
メファティにはそれがどれ程の戦力になるかという認識は無いが、リエルの表情から見える自信から察するに、相当のモノだと予想出来る。
メファティ 「敵は地に潜っていますので、ダイン様も不安そうでした、皆さまの来援をきっと心強く思われるでしょう」
リエル 「一度戻って来てリレッタだけに会ったと聞いていますけど、やはりユーマの国の力が必要になったんですね」
メファティ 「ダイン様を庇うわけじゃ有りませんけど、自分の居ないユーマという国がちゃんと成り立つのかを試しかった様ですね、私達北部の遊魔達もダイン様頼りなのでダイン様がそこを心配する気持ちは少し解ります、でもユーマの姉様達は凄いですよ、教えて頂いたダイン様の予想を大きく上回っている様ですから」
リエル 「確かにかなり強引に事を進めましたから・・・魔龍からの防衛という理由でレブナン島をユーマに併合しましたし、同じ名目で軍備を増強してます、浮遊母艦などはダイン様の居た頃より四隻も増えましたからね、そしてようやく混沌大陸への偵察が可能となったんですよ」
メファティ 「それはちょうど良い時期に来たのかも知れませんね、混沌大陸の地下には空への攻撃が出来る地の王の勢力が潜んでますから」
リエル 「それは重要ですね、詳しい話は、フライ・ベアーで行いましょう、そろそろ到着しますから」
リエルのフーティアは一番大きな浮遊母艦の甲板へと降り立つと、そのまま歩いて中央へと進む、中央には構造物が有り巨大な扉が開いて行くと、リエルのフーティアはそのまま中へと侵入して奥へと進むと、入った扉が閉じて行く。
リエル 「到着です、このフライ・ベアーは従来の浮遊母艦の倍の長さを持つ、移動工房の機能を持つ七実の自信作です、混沌大陸での作戦行動を意図しており、ダイン様捜索の切り札ともいう船です」
メファティ 「凄いですね、ディーラルの王城より大きいかも知れません」
リエル 「これを早急に完成させる為に、ユーマの生産能力を殆ど全て投入しましたから、対魔龍という口実で各国から魔鋼を徴収出来たのが大きいですけど」
リエルがフーティアを壁側に向けると、ちょうどそこから操宮への出入りが容易になる足場が張り出している、この空間はマギガントの運用に適した構造に作られている様で、駐機場とも言える場所でもある。
そして、操宮を開けたリエルは足場へと移ると、メファティにも続く様に手を差し伸べる。
リエル 「行きましょうか、この船の艦長はレブナン島方面軍の司令官でもある真夏姉様ですから、真夏姉様はダイン様と共にこの世界に来た遊魔なんですよ」
メファティ 「この船に乗ってる人はみんな遊魔なのですか、沢山の意思を感じます」
リエル 「そうですね、でもルーフィンが生み出した遊魔も居ますから、ちょっと感じ方が違う娘もいます、今、遊魔全体でもルーフィン種の方が多いぐらいですから」
メファティ 「ルーフィン種ですか・・・」
リエル 「ダイン様の遊魔だけでは拡大した戦力を運用する事が無理なんですよ、出自は違っても遊魔としての目標は同じですので仲良くしてあげて下さい」
メファティ 「ダイン様より知識は与えられていましたが、少し違う遊魔の力も借りて予測を超える勢力拡大を行ったんですね」
リエル 「はい、ルーフィン種は私達と違って知識を共有しませんので殆どの者がマギガントには乗れません、ですが浮遊母艦の乗員としての能力は人間よりも優れてますし遊魔の秘密も護れますから・・・それに殆どがユーマと仲が悪いと思われているクガトの領民ですから、ユーマの独断行動を阻止するのに好都合と各国に思われているんですよ」
メファティ 「人間との共存は色々と難しいのですね」
リエル 「はい、人は自分よりも優れたモノは嫌いですからね、異世界人の私は魔力高くて持ち上げられましたけど、皆んなに警戒されてましたから・・・でも遊魔にして貰えてそんな事どうでもよくなりました、遊魔の絆は不滅ですから」
メファティ 「はい、メティも遊魔の意思を感じられただけで不安なんて消えてしまいましたから、人と違って遊魔は遊魔に危害なんて与えませんから」
リエル 「リィも新しい遊魔を感じて心躍りました、ダイン様が認めた娘は素晴らしいに決まってますから、この船は大きな浴場も完備してますから、存分に旅の疲れを癒して下さい」
リエルのこの言葉がお誘いである事はメファティにも十分理解は出来る、遊魔では同性の交わりは最も深いコミュニケーション手段でもある。
メファティ 「当然お受けしたいですが、立場的にどうなのかも気になります」
リエル 「皆んな新しい遊魔には興味有りますからね、他の娘に誘われたらメファティが決めて下さい、何なら複数でも問題有りませんし」
メファティ 「ここの遊魔は進んでますね、北部遊魔はまだ六人だけでしたから、この船だけでももっと多くの遊魔を感じます」
リエル 「さっきも言いましたが殆どルーフィン種ですからね、あの娘達は交わりも私達とは違います、この船全体で遊魔は今五人ぐらいですよ」
メファティ 「こんなに大きな船なのに凄いですね」
リエル 「魔動力を動かせる魔力さえあれば一人でも動かす事は可能です、メファティはマギガントを動かした事は無いんですか?」
メファティ 「北部人類圏には三天人のクフィカールぐらいしか有りませんから、それも飛べないって話ですし」
リエル 「なるほど、それでダイン様は援軍を欲しているんですね、飛べないクフィカールなんて戦力が無いのと同じですから」
メファティ 「メティは巨人魔導具の戦いを知りませんから解りませんけど、そんなに違うんですか?」
リエル 「マギガントは歩くだけでも壊れて行くモノですからね、飛んで移動するのが一番ダメージが少ないんですよ、このフライ・ベアーが着陸していないのも同じ様な理由です、まぁ着陸すると島民への対応が必要になって手が回らないという理由も有りますけどね」
リエルとメファティは会話しながらも艦内を進み、船の中枢とも言える艦橋へとやって来た、二重の扉を抜けた先には広い空間が有り、扉の上から声が掛けられる。
真夏 「貴女が混沌大陸で生まれた遊魔ですね、遠いところをお越し頂いてありがとうございます」
フライ・ベアーの環境は凹の字の形になっており、凹んだ部分に入り口が設けられて、入り口の上に艦長席が設置されている構造の為、上から真夏が声を掛けて来たのだ。
メファティ 「いえ、私自身の興味とダイン様の為ですから、ダイン様の喜びが遊魔の望みですよね」
真夏 「はい、ですがそのダイン様の望みを私達は知る事が出来ませんでした、貴女の来訪で道が示されれば全力でそれに応えます」
そして真夏はふらりと浮かび上がって、メファティの元に降り立つとメファティに握手を求めて、メファティもそれに応じる。
リエル 「でもメティは良い時期に来てくれました、私達は探索という不確定な行いから、ダイン様の手助けという重要な役目を与えられたんですよ」
メファティ 「敵が居る事に恐れは無いんですか?」
真夏 「むしろ魔龍が相手じゃなくて安心してますね、この島に来て岩喰いの事も色々調べましたけど、魔龍と戦うよりは心が軽いです」
リエル 「今、メファティからの情報を調べてみたんですが、そうとも言えないかも知れません、地の王というのは地下に潜んで、対空攻撃でクフィカールを落とした様ですから、それも百五十年前の話ですから現在はどれだけ進歩しているのか・・・」
メファティ 「その様ですね、メティは耳長が勝ったという話を知るだけで、古の戦いについて知りませんから」
真夏 「メティの移動経路が殆ど海上だったのは下からの攻撃を避ける為だったんですね」
真夏もメファティの知識を調べて、自分の推論が正しいのか尋ねてみる。
メファティ 「海の上を飛ぶ様に指示したのはダイン様です、既に岩喰いの侵入を危惧されていたのでしょう」
リエル 「出来る対策は出来るだけ行うのがダイン様ですからね、リィ達も少々強引だったですがやれる事をやってましたし」
真夏 「そうですね、出発は二日後の予定でしたが一日繰り上げましょう、北部への航路が確定した以上、多少遅れた戦力も合流可能ですからね」
メファティ 「そんなに早くですか、出来れば人類圏の街も見て見たかったです」
リエル 「なら、リィとメティは予定通り二日後に出発しましょう、足の速いビグ・ユーマを残しても良いですよね?」
真夏 「それで良いですよ、私はフライ・ベアーと他一隻で先行します、クフィカールはこちらに搭載しますよ」
リエル 「はい、ビグ・ユーマは簡易格納庫を設置して、フーティア二機とザガルバ二機を搭載します、人を運べるザガルバは多い方が良いでしょう」
真夏 「遊魔式に改造してますので、戦力も高いですからね、試作兵装も複座の方が扱い易いですし、あと、一時間後にレブナン島派遣戦力の遊魔を集めて会議を行いますから、二人はそれまで自由にして下さい」
真夏はそう言い残すとまたふわりと浮いて、艦長席へと戻って行く、会議の為の伝達やら、早まった出発の為にやる事が多い様だ。
リエルとメファティは顔を見合わせて、一時間の時間をどう使うのか考えるのであった。
おまけ
ダイン失踪後のユーマ共栄国 ダインの失踪は国内に大きな混乱をもたらすかに見えたが実際はそうはならなかった、これは名言こそされていないもののユーマのナンバー2が七実である事が定まっていた為である。
そして、七実はダインの意図すらも理解しており、ダイン不在のユーマ共栄国を上手く導いていた。
一例を上げるなら、対魔龍の防衛作戦をユーマ共栄国が一手に担う条約を締結させた事である。
魔龍レ・ミュウの襲来後、ユーマ共栄国は魔龍の襲来と撃退を自作自演で行い、魔龍に対抗出来るのはユーマ以外には存在しないという印象を人類大陸国家全体に与えた。
そして二大大国の全面的賛同を後ろ盾に対魔龍兵器として浮遊母艦の増産を推し進め、魔龍襲撃の矢面に立たされるであろうレブナン島の併合も認めさせた。
これはダインの思い描いていた混沌大陸への進行計画を魔龍を利用して前倒しで行ったもので、後にダインも自分の思った以上の成果として七実を褒めている。