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春先は眠たくなっちゃう。
一人ぼっちの教室でうとりうとり。遠くのブラバン演奏が眠気を加速。先輩達が来るまで起きないと怒られるから、起きなきゃヤバい。
ポニテをいじって、スマホは、学校内じゃいじれなかったね。
眠い、起きる、眠い、おき、ねむねむ。
目覚めたら、カメラのフラッシュに襲われる。うわぁ、やられてるぅ。誰に撮られたのかな?
目をこすったら、チェシャ猫顔の小野先輩がいた。ちゃっかりカメラ持ってるし。
「松ちゃんの寝顔、たくさんいただき~」
小野先輩は黙ってたら美人なのに。芸人みたいな変顔はやめた方がいいですよって言ったら怒られるから、ペコリする。
「ごめんなさい。居眠りしちゃって」
「いいのよ、いいのよ。ステキなものたくさん撮れたからさ」
とても嬉しそうに鼻歌なんか歌ってるし。そんなにあたしの寝顔が可愛かったのかな…、あるいは不細工だったか。
机の上によだれがこぼれてないかどうか、慌てて確かめる。良かったー。そこまで汚いことはしてなかったみたい。よだれをダラダラこぼす臭い寝顔を撮られていたなら、もう穴の中に入るわ。
「ところで松ちゃん、ポケモンパンのシールってまだ集めてたっけ?」
あたしはポケモンが大好きだ。特にグラエナやヘルガーのようなワンコっぽいポケモンが大のお気に入り。その子目当てでポケモンパンを買い続けているけど、中々当たらなくて泣ける。
いきなりどうして、そんなことを聞いたんだろう?
前に先輩にコンビニであたしがそれを買う所を目撃されて、密かな趣味がばれてしまった。その時は特に先輩からシールをねだられなかったのに、今になってほしくなったのかな?
「ええ、まだ集めてますよ。何か欲しいポケモンがあるんですか?」
「別に欲しくないの。貼るのが好きなだけ」
貼るのが好きって、要領を得ない答えね。確かにシールは貼るもの。
あっ、ひょっとして、先輩は変なところにポケモンシールを貼ったんじゃないだろうか? 机、筆箱、カバンをくまなく見ていく。どれにもシールは貼られていないし、教室中を見渡してもそれらしきものはないし。
イタズラをするなら、もっとわかりやすい所に貼るでしょう? 先輩はさっきからひじをつき両手にあごを乗せて、ニヤニヤしながらこっちを見ている。一体、何がおかしいの? 私の顔に変なものでもついてるのかな? 変なもの…、ハッ!
手鏡で自分の顔を見れば、魔女のおばさんっぽい狐・マフォクシーのシールが、おでこに貼られているし! せっかく集めたシールをファイルから抜き取って、持ち主の顔に貼りつけるなんて…、許せない!
いくら先輩と言っても、やっていいことと悪いことがある‼
「似合ってるよー、お狐ちゃん」
おもちゃで遊ぶ赤ちゃんみたいにキャッキャッと笑っている。それを見ていると、とっても腹が立ってくる。手鏡の柄をグッと握りしめて奥歯をかむ。イライラして体がだんだん熱くなってきた模様。体がまるで真夏の炎天下で立っているように熱い。あたし燃えているの?
急にえりもとから黄金の長い毛が飛び出してくる。こんなにあたしは毛深かったっけ? いや、そもそも何で黄色の毛なの?
手鏡を持った手に鋭い爪が生えている。しかも黒い毛がびっしり生えちゃっているし。左手を見たら、肉球がついてる。あまりにも驚いちゃって、声が出なかった。
あたしの体、一体どうなってるの?
「あああ、獣になってる……」
先輩が顔を真っ白にしている。自分の顔を手鏡でのぞきこんだら、ほっぺたに白い毛が生え出している。
「いや、いやっ……」
かすれがちな声で嫌がっても、変化は止まらない。
腕は炎みたいに鮮やかなオレンジ色の毛がもっさり生えていく。制服はあふれ出す体毛で破れちゃっているし。足元にもオレンジ色の毛が?
体内で炎が作り出されている奇妙な感じ。今すぐに吐き出したい。急に手鏡が燃え出す。木の柄がついているから、たいまつに見える。
靴がキツイ。足が太くなっているに違いない。足元を見たら、すでに鋭い爪がこんにちはしている。もうこの靴はダメだ。
鼻がとんがり、耳が横に引っ張られていく。耳は何かつまっていて気持ち悪い。触ってみたら、モップが飛び出ているの? 口元だけだったチクチク官は顔の上部にも広がり、自分の顔が毛むくじゃらになっているとわかる。
やがて全ての変化が止まったから、自分の姿を見たくなってしまう、怖いけど。手鏡はたいまつになってしまったから、確かめられない。あと、この手じゃスマホやカメラの操作は難しそう。とがった爪で機会を壊しそうだし。
となると、確かめる手段は――
「小野先輩!」
「フエ?」と、先輩は上の空。まだ目の前で起こった出来事を、上手く処理できていないみたい。
「今のあたしを撮って下さい!」
あたしがお願いしても、いつものように機敏にカメラを構えてくれない。目をパチクリさせて、押し黙っている。
もう、こうなったら脅してやるんだから。
「早く撮ってくれないと、これで燃やしますよ」
先輩愛用のニノンのカメラにたいまつの炎を近づけると、先輩の顔に生気が戻る。
カメラをささっと構えてあたしをパチリ。
あたしが要求する前に、撮れた映像を見せてくれた。
そこには、炎のごとくもっさりした耳毛が出ているサファイヤブルーの瞳の狐、マフォクシーが写っていた。
「これがあたし……」
人間のなごりは黒のポニーテールだけ。こんな姿じゃ家に帰れないし。ってか、普通に暮らしていけないじゃんか、もう! 全部、先輩のせいだ。仕返ししてやりたい。
[newpage]
あたしはマフォクシーのシールをおでこに貼られたら、マフォクシーに変身した。ということは、他のポケモンシールを先輩に貼れば、同じことが起きるのかしら??
目には目を歯には歯を、だ。
ファイルを取り出して、先輩にふさわしいポケモンシールを探す。あたしの企みに気づいた先輩はこっそり逃げようとしているが、そうはいかない。
炎の杖をドアに向かって振ると、ドアが燃え出した。
「ヒエッ!?」
外に出られなくなってうろたえる先輩。ちょこまかと逃げられないよう、さらに念を押す。先輩の足元にも炎を放つ。それも円を描くように。炎の円陣に囲まれた先輩は、顔をくちゃくちゃにして何か言っている。
「わりゅかったから、わりゅから、ゆるじで、ああ」
「今度という今度は許さないんだから!」
容赦なくポケモンシールを額に貼りつけてやる。
貼りつけた瞬間から、先輩はうめき始める。
「グルルルルルル……」
黒い瞳が妖しい光を放つ。すると、彼女の胸の所から鈍色の角が飛び出てきた。角の周りはクリーム色の産毛が覆っている。方周りの方は黒い毛がドバっと生えて、リストバンドをしているようになった。手も真黒な手袋みたいで、手の甲から胸と同じ突起がニョキッと出てきた。
彼女はあたしと違って、毛がフワフワしていない。短毛がびっしり生えている感じだ。腕の方も人肌が青い毛に覆われちゃってるし。
「グアー、熱い!」
変化熱に耐えられなかったのか、制服とスカートを豪快に脱ぎ捨てた。脱いだものはあたしが出した炎によって、灰と化す。
あらわになった彼女のパンティーは、黒縁の青いボクサーパンツによってちぎれていった。
腰はモデルが真っ青になるぐらい、細く細くくびれを作って美しいね。いや、お尻が大きくなってるのかな? その尻からは黒い尻尾がピョコンと出ている。
彼女の顔はとんがって狐みたいに。目元から耳に、額から鼻にかけて黒い毛が生えだす。目を隠した泥棒よね、これ。彼女の紫がかかったロングの黒髪はヘチマ型に束ねられて、左右に2本ずつぶら下がっている。最後に、耳がとがって頭上に移って、彼女の変身は終了した。
あたしの目の前には、格闘タイプのルカリオがいた。マフォクシーのあたしより小っちゃくて可愛らしい。なでなでしてあげたい。
「あらあら、先輩たら可愛くなっちゃって?」
あたしが上から目線で頭をなでようとしたら、いきなり腹パン。このルカリオ、凶暴だわ。
「ふざけんじゃねぇぞ、キツネババァ!」
「ちょ、ふざけてるのはそっちじゃ……」
赤い不気味な瞳があたしを睨んでいる。
あたしの心が見透かされていそうで怖いな。ルカリオって、他人の心が読めたんだっけ? 先輩の撮る写真にはいつも驚いています。あたしもいつか、先輩みたいに大胆かつ華麗な写真を撮ってみたいです。
「ヤダ―。ちょっと照れるんですけど~」
こんな簡単に落とせるなんてチョロいな、小野先輩って。
「チョロいとは何だ!」
再び腹パン。他人(狐?)の気持ちを勝手に読まないで下さい……。
ちょっとしたケンカの後、イスに座って向かい合っていた。
しばらく経つと、やっと自分のマフォクシー体型に慣れてきた。
毛がもっふりして温かい。夏になったら暑そうだけど。ルカリオ先輩はさっきから自分の体の臭いを嗅いでいる。何かワンコみたい。
「ポケモンシールを顔に貼ると、ポケモンになれちゃうんですね。とてもステキだと思いません?」
あたしがルカ先に話しかけると、不機嫌そうな顔を見せてくる。
「男臭いルカリオじゃなくて、美女なサーナイトとか、ミミロップとかが良かったんですけどー」
「ルカリオは細身でくびれあるから、いいじゃないですか」
「まっ、おばさん狐よりはマシよね」
確かにマフォクシーはテールナーに比べたら年増なイメージだけど、おばさん扱いされたくな。あたしは怒りの表明として、ルカ先の顔にそっと炎を近づけた。
「松ちゃんはねぇ、気持ちが正直に出るから可愛いわ。好き」
ルカ先の左手があたしの肩にふれる。優しくふれてきたから、ちょっぴり嬉しい。
「ほとんどの人はいい子ちゃんぶってて嫌いなんだけど、松ちゃんは表も裏も同じいい子だから、むちゃ好きよ」
「先輩にそう言ってもらえると嬉しいです」
あたしがそう言うと、たいまつの炎が急に大きくなった。
「カワイイ、カワイイ!」
今度は下あごをなでてくる。手の甲の角がちょっと怖いな。あと胸にもついてるから、ギュッとハグは出来ないね。
小学生体型になったルカ先は本物の狐や犬より数百倍ぐらい可愛い。凛々しい赤い瞳と相手を寄せつけない角はあるけど、腰のくびれや細長い腕がか弱い女子っぽさを出しててグッドだ。
「あのぉ、先輩の写真撮っていいですか?」
「そうねー。どうせなら、2人一緒に撮ろうか」
ルカ先はロッカーから脚立を用意して、カメラを脚立の頂上に乗せる。タイマーを設定したら、慌てて棒立ちのあたしの所へ寄ってきた。
「じゃ、ポーズはテキトーで」
なら、あたしはルカ先を抱き上げる。
地に足が着かなくなったルカ先は、条件反射で尻尾をパタパタさせる。うーん可愛い❤
「1+1は?」
「「ニッ!」」
タイミングはばっちり。
艶(つや)のあるマフォクシーと[[rb:溌剌 > はつらつ]]としたルカリオが、歯をむき出して笑う写真が撮れた。あたしの顔は抱き上げた時に、胸の角が左手に刺さってやや涙が出ているけど、まぁ良しとしよう。
世界に1枚しかない自分達だけの写真だ。
「松ちゃんの体、やっぱ熱いわ。今はいいけど、夏はマヂ勘弁」
「先輩の角、やっぱ痛いわ。今はいいけど、ハグはマヂ勘弁」
「はい? 真似しないでよ?」
「ちょっ、あたしが先に言いましたから」
あたしとルカ先は口ゲンカをし始める。口だと一向に決着がつかないとわかるから、結局は殴り合いになる。
あたしは火消し済みの棒でルカ先の頭をたたき、ルカ先は素手であたしの腹や尻をパンチしてくる。
「えいっ、えいっ、そぉい!」
「コン、コン、コン!」
ケンカは実にリズミカル。本気でやり合っている訳じゃないから、愉快な感じだ。
本物のポケモンバトルは、もっと楽しいんだろなぁ、あ”っ!
ボゴッ! 自分のあごにルカ先の鉄拳がクリーンヒット!
あっ、あっ、アゴが……。油断大敵でした。
「ルカリオアッパー。略してルカッパーよ」
ルカ先は得意げな顔で、しゃがみこんだあたしを見ている。けど、そのネーミングセンスはダサすぎる……。
「負け狐は、勝った相手の言うこと聞いてね」
「何でもやるとは言ってませんよ!」
この姿を人前にさらす羞恥プレイとか、炎で自らの体を焼く自傷行為とかは、ゼッタイやりませんから!
「エプロン着るぐらいならいいでしょ。ほら、調理実習のエプロン着てよ」
ルカ先はさっとカバンの中からエプロンを取り出して、あたしの前に持ってくる。絵本のうさぎちゃんが描かれている、子供っぽいエプロン。ルカ先はこんなエプロンで授業を受けていたのね……。
早く着てと言わんばかりに、エプロンを顔に押しつけてくる。しかたなしに「着ればいいんでしょ、着れば!」とややキレ気味に言って、エプロンをつけてみた。
人間の時と体型があまり変わらないから、エプロンは楽に着用できた。出来たけど、これは恥ずかしい。白のエプロンが狐色のコントラストによって、かなり際立っている。
「はーい笑って、もっとニッコリー」
ルカ先が変態カメラマンと化している。しかも素早く前後左右に動いているから、影分身してるみたい。
「これがベストショットね」
ルカ先が見せてきた写真には、眉間にしわを寄せるあたしが斜めのアングルで写っていた。エプロンのせいで熟女狐に見える。うっ、やっぱりマフォクシーは狐BBA……。
「そうよ。ベテラン魔女風に似合ってるから、いいんじゃないの?」
あっ、またあたしの心を読み取ってきた。自分より小さい体型だからって、何でルカリオにしちゃったんだろう。肉体戦と心理戦両方に強いポケモンだし。
[newpage]
いつの間にか、教室は暗くなっている。太陽が沈んで今や6時10分。最終下校時刻から10分過ぎている。
「ヤバッ。先輩、早く帰らないと」
「この格好じゃ帰れないでしょ、松ちゃん」
ルカ先は肩をすくめてため息をつく。あたしも窓ガラスに映る自分を見て、消え入りそうな声で「ううむ」とつぶやく。
「人間に戻らないと、ポケモンマスターに捕まえられちゃうわ。ん? 100m先に杉森先生接近中!」
ルカ先は耳をピンと立てて言う。
ルカリオは[[rb:波動 > はどう]]で遠くにいる相手とその気持ちを読み取ることが出来る。
「どんな気持ちかわかる?」
「めっちゃ怒ってるよ。自分が男だったら殴ってやるわって」
「あああ、何とかしないと。えっと、えっと―」
慌てふためくと、机上にあるポケモンシールファイルが目についた。そうだ! これを使えば何とかなりそう。
あたしとルカ先は顔を見合わせて、「わるだくみ」の笑顔を見せた。
「こら、写真部! もう下校時刻過ぎてるよ!」
赤メガネの杉森先生が声を荒げて、部室に入ってきた。あたし達の姿が見当たらないので、彼女は首をかしげる。
「あら? 電気点けっぱなしで帰ったのかしら?」
ここで、あたしが彼女の動きを止める。足元に火を放つ。
「いやっ! 何なのよもう!」
先生が足元の炎をいぶかしげに見ているスキをついて、ルカ先が颯爽とシールを持って近づく。悲鳴を上げる時間を与えずに、シールをおでこにペタリ。流石です、先輩。
シールを貼られた先生は頭を抱えて、しゃがみこんだ。
「い、いだい”。頭があ”あ”……」
先生の髪の色が薄くなって真っ白になる。左の頭部からは刀のごとくとがった角がニョキニョキ伸びていく。その角が青に染まると、先生の顔も青く塗りつぶされていった。目が赤く光って、ケダモノっぽさが増す。
自身の変化に気づいた先生は、ゴキブリでも見たぐらいすっとん狂な悲鳴を上げる。手はチョークばりに白い毛で覆われ始める。大量の白い胸毛が、先生の服を引き裂いていく。
「松ちゃんよりもふもふになりそう」
ルカ先の声はかなり弾んでいる。あたしも期待大だ。
先生は二本足で立つのが難しくなって、両手を床について四つんばいになった。その際に、足元の炎を消してあげた。手足の爪は青い[[rb:鉤爪 >かぎづめ ]]になって、物をつかむのに向かない形状だ。これでは、授業が出来ないね。
「ちょっと、私、どうな?」
先生の尻からは、頭の角と同じような鋭く青い尻尾がビュンと飛び出す。突起物はそれだけにとどまらず、ひざの後ろにも青いものが出てくる。
ポケモンシールが貼ってあった部分は白髪に覆われていたが、急に鮮やかなスカイブルーの宝石が出てきた。
これにて、先生の変身は完了した。
先生の額に貼ったのは、わざわいポケモン・アブソルのシールだ。
「ひゃあ、先生ってもふカワ―!」
ルカ先が目をキラキラさせて、アブ先生のたてがみをさわり出す。
「この声は小野さん? 一体どういうことなの?」
アブ先生は目をキョロキョロ動かしている。いくら博識の先生でも、ポケモンシールを体に貼るとポケモンになるなんて知らないよね。
「おめでとう! 杉森先生はアブソルに進化した」
あたしはニノンの一眼レフカメラで隠し撮りした画面を先生に見せる。四つんばいになって涙目になっている写真だ。
それを見た先生はポカン口で目をパチクリさせた。
「人類がこの姿に退化するなんて…、どんな化学式を当てはめたらこうなるのかしら?」
アブ先生はぎこちなく右の前足で眼鏡を押し上げて、知的好奇心を沸かせ始める。
「ねぇ、小野さんか松居さんのどちらか、ペンと紙を持ってきてくれる?」
その前足じゃ、物を書くどころか、物をつかむことも難しいのに。そんな初歩的なことにも気づかないぐらい、あたし達に起きた不可思議な現象を解明したいのかしら?
「これは退化じゃなくて進化ですよー先生。何せ、私は人の気持ちを読み取れるし、松ちゃんは炎を自由自在に操れる。で、先生は……」
その時、不幸にもアブ先生の角が、ルカ先の鼻にブスッと突き刺さる。ルカ先はたてがみを離して、言葉にならないうめき声を出して[[rb:悶絶 > もんぜつ]]した。
「私の能力は何かしら?」
「それはええと……」
正直に言っていいかどうか迷う。災いを呼ぶと知ったら、先生はとても落ちこみそうだし。
すると、また災いが起きた。急に部屋が真っ暗になる。停電だ。1人だと心細いから、先生に抱きつく。
「キャッ!」
あたしがギュッと抱きつくと、チクチクした毛にふれた感じだ。これはアブ先生じゃなくて、ルカ先か? しかも、右手には針が刺さったみたいにビリビリした痛みを感じているし。
電気が再びつくと、案の定、あたしとルカ先が抱き合っていることがわかった。あたしの右手はルカ先の胸の突起にふれていたのだ。
「災いがこんな立て続けに起こるって、さすがアブソル……」
「先輩、もうちょっといいポケモンにしとくべきでしたね」
眼鏡越しに無邪気な瞳をのぞかせるアブソルを見て、あたし達は苦笑いをするしかなかった。
けど、もう二度とポケモンに変身する以上の災いと興奮は怒らない。
それだけは確実な気がする。
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