グレた夜を忘れさせてくれるオオカミ警備員のところに遊びに行く話
◆◇◆
夜の外はひんやりしていて、とても静かで、誰もいなかった。
いまは夜の9時を過ぎたところだから、人通りどころか、明かりがついている建物も少ない。近くの線路を電車が通ったが、また静かになる。
その中で、黒い毛の犬獣人が、がさつに周囲を見渡して建物が密集している路地に入っていった。
シャツの上に厚手のパーカーを着て、シワシワのジーパンを履いた、少し若さのある黒い犬獣人だ。体格や目つきが不良っぽく、補導員の人が見たらすぐに声をかけそうである。しかし、全身真っ黒の彼はうまく闇夜に紛れて、誰にも見つかることなく、秘密の友だちがいるところに向かっていた。
こんな夜遅くに外出をするのは、家で両親が喧嘩を始めるからだった。遅く帰ってくる父のイラつき、更年期で夜勤の母のイラつきがぶつかる。母が夜勤で家を出るまで、家の空気はずっとピリ付いてて、そのイラつきは子供のこっちにも向けられる事があった。
それが嫌で、窓から抜け出して家を出ていくのだった。
秘密の友だちは、ビルが密集して入り組んだ道の先にいる。
ビルの間のためか、夜風は奇妙な匂いだった。通風孔のカビのにおい、何らかの食品の良い匂いもする。不快な匂いだけれど、喧嘩に比べれば我慢できるものだった。
ある角を曲がると、車一台なら通れそうな、やや広い路地になっている。
正面にはビルの非常階段があり、犬獣人の青年は、そこを登って行く。
一階と二階の間にある踊り場で止まって、階段の柵に足をかけた。
彼の目線の先にはビルの敷地を区切る塀。その向こうはある建物の裏手になっている。
「おい」
目指している建物の裏口に、一人のオオカミの警備員がいた。
裏口の蛍光灯に照らされた彼は、灰色の体毛に濃いネイビーの半袖を着ており、腕に『SECURITY』と書かれた腕輪がある。
狼獣人の警備員は、コッチへと歩み寄ってくる。
しかし、塀に阻まれて、それ以上来ることができない。
「来い」
その声を信じ、柵から塀の向こうへ飛び込んだ。
真下には、その狼獣人がいて、両腕を広げて受け止める体勢になっていた。
「よし」
その腕の中に体が収まった。
たくましく太い腕が全身を包んでくれる。
「風が良かったみたいで、ここまでお前の匂いが来たぜ」
「うん」
「俺の勧めた香水を付けてるな。いい子だ。似合ってる」
オオカミの鋭い嗅覚を持っていながらも、彼は首筋に鼻を押し付けて嗅いできた。
そのまま、抱きつかれて頭をガシガシと撫でられる。
彼が、秘密の友達。
とても男らしい獣人で、どこか頼もしく思えた。
頼もしさは、雰囲気だけではない。
そして彼の体は、警備員らしくとても逞しい。
逆三角の体で、筋肉が浮かび上がるほどシャツが張りつめている。
半袖から出ている腕はたくましく、犬獣人の青年の2倍ぐらいはあった。セキュリティーと書いている腕輪も、二の腕の筋肉で張り詰めている。
灰色の毛を晒しだし、手首にはごついブレスレットをしている。
道端であったら恐ろしさで気絶するだろう。
「まあ、コッチ来いよ」
オオカミ獣人の後ろをついていった。
といっても、ビルの中には通されない。あくまで裏口までだった。
その理由は単純である。
犬獣人が、わざわざ路地裏を通って、階段から大ジャンプをしてきた場所は、ゲイ向けの風俗店の裏口だったからだ。
窓のカーテンは締まりきっていて中は伺えないが、塀のそばの大型ゴミ箱にはその証拠がたっぷりとある。マッチョの雑誌、コンドーム、女性物ではない下着等々。
犬獣人にとってここは、誰にも探しに来ないところで、一時間近くの暇をつぶせる話し相手もいる。
軽率に来てはいけないが、何もなく、そして特別な感じで、居心地がいい場所だった。
「またか?」
「そう」
犬獣人の事情は、オオカミの警備員も知っていた。
はじめは、あの階段で座っていただけだったが、声をかけられた。
会話しているうちに、カップ麺につられて塀を越えて会いに行き、それからこうして駄弁るようになった。
「マジでめんどくせえ」
するとオオカミ獣人が笑い、その口から舌が垂れた。
「じゃ、今日は楽しい思いして帰らねえとな……?」
「OK」
犬獣人はオオカミ警備員の正面でしゃがんだ。
「俺は警備で忙しいからな。代わりにやってくれ」
犬獣人は頷いた。
彼にとってオス同士での交尾は、漫画で見る程度の興味だった。
だが、オオカミ警備員から『お前には奉仕をする素質がある』と言われた。
そうだろうかと返答したら、彼は自信アリげに頷いたのを覚えている。
きっかけは駄弁る時の話題だという。
好きなBL漫画、よく見るAVからわかったらしい。
それが、仮に、ただ性処理したいだけの都合のいいお誘いだったとしても――彼なら別に良い気がした。
それ以来、この口は、食う飲む喋るの他に、できることが増えた。
彼のジーパンのベルトに手をかけて外す。
前のチャックを下ろし、ボタンも外した。
硬いジーパンは反抗的で、はじめはうまく扱えなかったが、今は手慣れている。
前をご開帳して、ちょっとだけ下にずらす。
「んん……っ、はあ……っ♡」
パンツのもっこりしたところが外に出てきて、強烈な雄の匂いに鼻が襲われた。
上向きに収納しているため、一本の太い竿で、パンツが盛り上がっている。
犬獣人は、匂いによってだらしなくなった顔で、そこに鼻をつけて嗅いでしまう。
下着越しに、尿と獣の混じった匂いがした。
上向きに収納しているから、竿の臭いだけではなく、付け根から玉まで嗅ぐことができる。
蒸れた空気の塊が、鼻の中を満たし、性的な満足感を刺激する。
その腰が前後に動いて、顔に押し付けられた。
見上げると、オオカミ警備員がニヤけながら舌なめずりをしたところだった。
「俺のパンツ蒸れてっからよお、顔で臭い取りしてくれるか?」
「うん」
犬獣人は、下着の上からマズルをこすりつける。
下着の上からでもわかるほどの太い陰茎は、顔を擦り付けるたびに硬さを増していった。
そこからは質量を感じさせるほど熱を発しており、彼が優れた雄である事を何度も自覚させられ、自分の頭から理性が落ちていくのがわかる。
「んは……あ♡」
彼が顎だけで指示してきたのが見えた。
手を伸ばし、下着も下ろす。
彼の陰茎があらわになり、鼻に彼の雄の匂いがたっぷりと入ってくる。
「んお……んはあっ♡」
現れた彼の陰茎は、マグナム級のでかさだった。
使い込んでいるのか先端にかけて黒ずんでいる。
丸く張り詰めている亀頭は、歴戦の黒さになっていた。
ずんぐりと太く、前腕と同じくらいの長さ。
雄でも見ただけで鳴くような、見事な雄だった。
すると、彼のおしりの方で、オオカミのしっぽが揺れているのが見えた。
「また奉仕してくれて嬉しいぜ?」
彼を見つめたまま、イチモツをしゃぶった。
汗が薄まったようなしょっぱさが口を支配していく。
「んふ……、んん……っ」
彼の剛毛から漂う雄の匂いが、鼻をさらに染め上げていく。
すると先端から先走りが溢れてきた。彼の濃い粘液で喉まで侵略されていく。
「ふっ、んんっ」
「ああ……来てるぜ、気持ちいいの」
オオカミ警備員が吐息を何度も漏らし、快感に浸っている。
一方で犬獣人は鼻息が荒くなって、浸るどころか何も考えられなくなっていた。
頭を動かし、吸い付いて、しゃぶり尽くす。
手は使わずに、犬のお座りのような姿勢で奉仕する。彼がこの姿勢でされるのが好きだからだ。
硬いイチモツが口の中を何度も通る。
巨大なそれは、口の至る所に擦れ、青臭い先走りでマーキングをしていった
「んぐ、んふうっ、んんんッ」
「ああ……っ、くる……、はあ――」
見上げるとオオカミ警備員の狼の鋭い目がコッチを見つめていた。
顔を紅潮させて、潤んだ瞳で見つめてくる。
まるで獲物狙うような目は、とても雄々しかった。
「ああ、もう――無理だ」
彼のでかい手が、犬獣人の頭をつかんだ。
そのまま腰を振ってくる。
口の中でイチモツが暴れる。クチュクチュと、はしたない水音が響く。
「ふっ、ふぅッ、ふっ」
オオカミ警備員の息が早くなり、気が昂ぶってきて、盛り上がるような熱い呼吸を吐き始める。
「ぐっ、ああ……っ、まだ……ッ」
彼はもう限界なのか、腰を振り続けながら空を見上げる。
口の中はもう彼のものとして染まっていた。
ズコズコと挿れられるイチモツが奥まできてえづいた。
「ぐ、う“う“う”っ、イクぞ、イクぞ!」
犬獣人の頭が、前のめりになった彼の股関節に押し付けられる。
「ふっ――グるあぁァッ」
喉の奥に射精された精子があたった。それは口いっぱいに溢れて端っこから漏れてしまう。
二、三回出されたと思ったら、彼が頭を引っ張って口からイチモツを抜いてきた。
そして、一物を顔に向けたまま射精を続ける。
「ふぅッ、はあッ――4日貯めたんだぜ?」
彼はそれ以上言わなかったが、白い濃い精子が顔にぶちまけられる。
重たい粘液で顔が不快感で覆われ、惨めな気持ちが上がってくる。
濃くて重たい精子の青臭い匂いが、直接かけられた犬獣人の鼻を責め立てる。
「うっ、んがっ、はあっ」
頭が掴まれ、射精からは逃げられなかった。
「ああっ、はあ――我慢したかいが合ったぜ、ありがとな」
「うん……うん」
彼からもらったハンカチで顔を拭く。
正直、顔にこんなにかけられては不快だったが、段々と嫌な気分が薄まってくる。
彼のための奉仕ができたことで、心の波が、なんとなくそんな感じに落ち着いた。
「……じゃあ、また」
「そうか」
犬獣人が塀の方を向いた瞬間、オオカミ警備員がお尻をもんできた。
「いつかケツ使わせろよ?」
「……まあ、いつか」
「使ったことないだろ?」
「うん」
突然、後ろから抱きつかれた。
肩に乗せられた顔を見ると、その目はギラギラ光っていた。
「いま使っちゃうか?」
「――いや、大丈夫」
その言葉で、股間が急に張り詰める。
別にヤッてしまっても良かったが――
「また今度ね」
「……なあ」
抱きついてくる彼の腕が強くしまった。
「ここで押し倒しても良いんだぜ?」
「そんなことをする人じゃないでしょ?」
「……さあ? ヤッてみるか?」
その腕がどんどん強くなる。
彼の腕の心地よさと、未知の領域の不安と好奇心と恐怖で――、超えてはいけない線の上にいるようだった。
「――」
「――わかったよ、俺の負けだ」
腕が離された。
……ポケットになにか挿れられた気がしたが、ここで見るのは野暮だろう。
と思ったのに手が動いてしまった。
コンドームが入っていた。
「やるよ」
「あー……じゃあ、また」
「また来いよ」
塀のそばにある大型ゴミ箱の上に乗ると、塀をよじ登った。