わたし達、獣愛好会~目覚め

  その学園はごくありふれた学園の一つだった。

  名門校と言う程でもなく、さほど名のある人物を輩出しているわけでもない。

  ただそれなりに自由な校風から青春を謳歌する者が多い、ただそれだけである。

  その一つとして多彩なサークルの存在があり、大小さまざまなサークルが存在している。

  その中に「獣愛好会」というサークルがある。

  女子限定のくくりがありながらも卒業生さえ時々足を運ぶほどのサークルなのだが……その存在は「学園都市伝説」の一つとされるほど公にはされていない。

  大半の生徒はその存在に関わる事無く学園生活を謳歌し、巣立っていくのだが、そこから漏れた「選ばれた生徒」はそこでそれこそ学園を去ってもなお足を運ばざるを得ないほどの「かけがえのない体験」をするという……。

  [newpage]

  その日もまた、その日の講義の終わりを告げる鐘が鳴る。

  ある者は帰路につき、またある者はサークルに足を運ぶ。

  そんな中、幾人の女子学生たちは人知れずその流れから離れると静かに学園の奥へと進む。

  人知れず一人で歩く者もいれば、集まった数人で語らいながら歩く者もいる。

  中には……そっと手をつなぎながら歩いている二人連れもいたりするが。

  「ねえ……今日はどうする?」

  「うーん、どうしようかな……」

  「私は、もう……決めてるんだけど」

  「私も……」

  「あたしはいつも通り好きにするけど」

  「わたし、まだちょっと慣れない感じがする……」

  「新人ちゃん、無理しないでいいよって……いうのはちょっと無理な話か」

  「は、はい……」

  各々の衣服を翻しながらそんな会話を交わす女子学生たち。

  彼女達は皆一様に獣愛好会のメンバーであり、その活動場所である秘密の施設へと足を運ぶのだ。

  学園に数あるサークルの中でもこの獣愛好会はごく少数しかその存在を知らないという秘密めいたものであるが、故にメンバーもそう多くはない。

  いやむしろ少ないからこそこうして集っていられるのだが……。

  その秘密めいたサークルの拠点は学園の片隅にある森の奥とは言えども町からそこまで離れているわけでもないが、それでも一見すれば人が訪れるとはとても思えないような場所にある。

  だからこそこの秘密めいたサークルの拠点にはふさわしいといえるのだが。

  不意に風が吹き、森の木々を揺らす。

  彼女達はその風の中に獣の鳴き声が聞こえた……様な気がした。

  「ねえ、今の……」

  「え?何?」

  「なんか今……聞こえなかった?」

  「……聞こえた」

  彼女達はふと立ち止まるとあたりを見渡す。

  そんな彼女達の耳に今度ははっきりと獣の鳴き声が聞こえた。

  いやそれは鳴き声というにはいささか音程が高すぎる気がするし、人の声と言うより獣の吠える声に近かったかもしれない。

  その声を聴いた瞬間、彼女たちに笑みが浮かぶ。

  「あ、ほら……やっぱり!」

  「今日は早いね」

  「もう待ちきれないみたい」

  彼女達は獣の声を聴いてその声の主が誰かを即座に理解し、そしてそれが誰であるかも知っているようだった。

  ただ、笑みを浮かべる彼女達の顔がほんのり赤くなっていたり、顔がほんのり火照っていたり、胸の高鳴りや人によっては……。

  (ちょっと……濡れてる?)

  色々なものを感じながら学生達は小屋へと向かう。

  その小屋こそが彼女達「獣愛好会」の集いの場であり、秘密の場所でもある。

  玄関までたどり着いた所で学生の一人がドアホンを鳴らす。

  「こんにちはー」

  「はーい、いらっしゃい。鍵は開いてるから入ってね」

  学生の呼びかけに答えるように中から声がする。その声を聴いた瞬間、彼女達の顔に笑みが浮かぶ。

  そしてそのままドアを開けると中へと入っていく。

  そこはちょっとしたエントランス風になっており、何人かの女子学生達がくつろいでいる。

  「こんにちはー」

  「あ、来たわね。待ってたわよ」

  「先輩たちはもう始めてるみたいね」

  「うん、一足先に行っちゃってる」

  「そうか、それならわたし達も行かないとね」

  「行こう行こう」

  笑顔を交わしあいながら合流したサークルメンバー達はそのまましばし何気ないやり取りを交わしていた。

  そんな中で新人の少女は少し顔を赤くしてうつむきながら座っている。

  「新人ちゃん、どうしたの?」

  「え?あ……なんでも……」

  「そう?なんか顔が赤いけど」

  「いえ……その……」

  (言えないよぅ)

  心の中で思いながら彼女はそっと下腹部を押さえる。

  そんな仕草を目ざとく見つけたメンバーの一人が彼女の耳元に口を寄せると囁くように告げた。

  「……もしかしてまだ慣れてないのね?」

  その言葉に彼女はますます赤くなるがその様子を見たメンバーは小さく笑みを浮かべると彼女を優しく抱きしめる。

  「大丈夫、始めたころは皆そうよ」

  「う……うん……」

  抱きしめられた彼女はそのまま顔を胸にうずめる。

  その頭を優しく撫でながら他のメンバーの一人が口を開いた。

  「どうする?今日は止めておく?」

  そんな問いかけに彼女は首を横に振る。

  「ううん……大丈夫」

  「無理しなくてもいいのよ?」

  「……だって、もう我慢できないから……」

  彼女はそう答える。その答えに他のメンバーは笑みを浮かべると彼女をそっと立ち上がらせる。

  そしてそのまま手を引きながら奥へと案内したのだった。

  [newpage]

  その先にあったのは一見殺風景な広い部屋でその中心には大きいLED式のランタンが置いてある。

  さすがにここで疑似キャンプファイアーをするとかいうわけではないようだが。

  「よし、着いた着いた」

  「早く始めないとね」

  「この瞬間を待っていた~なんてね」

  「いよいよだね……」

  「うん、そうだよね……」

  「さっさと始めよう」

  そんなやり取りをしながら女子学生たちは部屋の扉を閉め、明かりを消す。

  それと同時にLEDランタンが点灯していかにも本物の焚火のように暗がりの中に浮かび上がる。

  さらにどこからか激しいリズムの太鼓の音が聞こえだし、いやでも学生達の心を震わせる。

  「……」

  新人の少女も恥じらいと緊張の表情を浮かべて身体を震わせている。

  この「儀式」は既に何回か経験はしているがまだ慣れずにいるようだ。

  それを察したか、隣にいた学生がそっと声をかける。

  「大丈夫?」

  「う、うん……なんとか……」

  「そう、ならいいけど……無理はしないでね」

  「うん……」

  そのやり取りを聞いていた他のメンバーがそっと彼女の肩に手を置く。

  そしてそのままゆっくりと彼女を座らせると耳元で囁いた。

  「ほら、始まったわよ?」

  その言葉に彼女は小さく頷く。だがその顔はまだどこか不安そうだ。

  そんな様子を見たメンバーの一人が優しく微笑むと言った。

  「……大丈夫、すぐに慣れるから」

  その言葉に彼女もまた微笑み返すのだった。

  (そうだよね、もう何度もやっている事だし)

  そう思いながら少女は改めて顔を上げる。

  その視線の中で女子学生達はそれぞれのペースで着ていた衣服に手をかけ、脱いでいく。

  ある者はいそいそと、またある者は見せつける様にじっくりと。

  「ほら、新人ちゃんも」

  「あ……はい……」

  促されて彼女も自分の着ている衣服を脱いでいく。

  上着のボタンを外し、スカートを下ろす。

  そしてブラウスを脱ぐと下着姿になるが、そこで一瞬手を止めてしまう。

  (うう……やっぱり恥ずかしいよぉ)

  そんな気持ちを抱きながらも彼女は何とかブラを外し、ショーツを脱ぐと一糸まとわぬ姿になる。

  「よし、全員脱いだわね」

  「じゃあ始めようか」

  「そうね、やりましょう」

  そんなやり取りを交わしながら彼女達は裸のままで何かの支度を始める。

  新人も促される様に支度に加わる中、LEDランタンの灯りが裸の少女達を照らし、その影を床に映し出す。

  そして、LEDランタンと学生達の間に彼女たちの数だけの何かが置かれる形となった。

  ランタンの影に隠れたその形を見る学生達の顔はどこか期待と興奮に満ちているように見える。

  その何かとは―獣の顔だった。

  正確には獣の顔を模したマスクである。

  その形は狼、猫、鹿など様々でありどれもがリアルな造形をしている。

  そんな仮面をメンバー達は手に取ると自らの顔にあてがうと、そのまま一気に顔、頭全体にかぶせる。

  そしてそのまま両手を左右に広げ、背筋を伸ばして直立すると軽く首を回す。

  「ん……ふぅ」

  「ああ……」

  「んん……」

  「はぁ」

  そんな吐息が漏れる中、LEDランタンの灯りに照らし出された彼女達の姿はまるで獣そのもののようにも見えた。

  その姿はまさに獣の仮面をかぶっただけの人間ではなく本物の獣そのものだ。

  (ああ……やっぱりいいなぁ)

  その姿を見ながら心の中でそう呟く新人の少女もまた同じように全裸の獣の仮面の姿となっている。

  初日はさすがに抵抗を感じていたが、それなりに慣れてきたのかその雰囲気の中で裸になり、その雰囲気を飲み込むように獣の仮面をかぶっている。

  (いいな……いいなぁ……)

  いつも学園ですれ違いたまにあいさつを交わす先輩や他の生徒たちと裸になり、まして獣の仮面をかぶって過ごすひと時。

  そして自分もまた裸になり、獣になってこうしてみんなと一緒にいる。

  その興奮と快感がまだ消え切らない恥ずかしさと重なって彼女を高ぶらせていく。

  (ああ……もう我慢できないよぉ)

  彼女はそう思いながら暗がりの中で自分の下腹部、その先に手を這わせる。

  そこはすでに湿り気を帯びていて、軽く触れただけで甘い刺激が身体を貫く。

  (あ!んん……んっ!)

  快感が身体を貫いた瞬間、少女はがくんと床に崩れ落ちてしまう。

  「あらら、大丈夫?」

  「あ……はい……」

  メンバーの一人が慌てて彼女を抱き起す。彼女は小さく首を振るとそのまま立ち上がった。

  それに対して他のメンバーは落ち着いた様子で見守っている。

  おそらく獣の仮面の下ではほほえましい顔を浮かべているだろう。

  いうまでもないが彼女たちも多かれ少なかれこういう体験は「履修済み」なのだろうから。

  だからこそ。

  「新人ちゃん、もうちょっとだけ頑張ろうね」

  と抱き起したメンバーも声をかける。

  「はい、頑張ります」

  その言葉に彼女は素直にうなずく。

  それを見届けながらほかのメンバーも、

  「それじゃあ、行きましょうか」

  という声に合わせて動き出す。

  支度をした時と同じように全裸に獣仮面姿の女性達が暗がりの中で動く。

  LEDランタンを消灯し、部屋の明かりをつける。

  そこには少し殺風景な部屋に立つ全裸の裸獣面姿の女性達という改めて一見異様な光景が現れる。

  メンバー達は互いに顔を見合わせると、静かに入ってきた時とは別の部屋に歩いていく。

  その流れに合わせるように新人もまた後を追うように歩いて行った。

  裸の獣少女たちが向かった先、そこは一つの扉だった。

  それはただの扉ではない。そう……。

  「さあ、獣になりましょうか」

  その声に対してメンバーたちは、

  「ええ」

  「うん、そうだね」

  「ええ、楽しみましょう」

  と答えながら扉をくぐる。そして……。

  「あ……」

  新人の少女もそれに続くように扉をくぐったのだった。

  (あぁ……)

  そこに広がっていたのは森林の光景であった。

  そう、ただ反対側から小屋に出ただけの話。

  しかし、今の彼女たちにとってはそれはまさに別世界だった。

  獣たちだけの楽園、それがそこにあった。

  その光景は常連ともいえるメンバー達の心と素肌を何度でも震わせる。

  「ああ……素敵」

  「やっぱり、この感覚はたまらないわ」

  「うん、そうだね」

  「ええ……」

  そんな会話を交わしながら彼女達は獣たちの楽園へと足を踏み入れる。

  その中を歩くたびに肌に触れる木々の感触や草花の香りに心が躍るのを感じるのだ。

  そしてそれが彼女達の獣を、そして自然の本能を解き放っていく。

  だから……。

  「~っ!」

  誰かが鳴いた。

  人とも、獣ともつかない声で鳴いた。

  それは彼女達が人と獣のはざまにある存在となっている事の証。

  だから、彼女達は駆け出す。歩き出す。飛び出す。

  それぞれの形で、それぞれのやり方で。

  今の姿を、今のひと時を楽しむために。

  獣になって、獣の姿で。

  そんな自分を、時に互いを愛おしむ。

  それがこのサークル―「獣愛好会」のあらましなのだから。

  [newpage]

  獣愛好会のメンバー達はそれぞれ思い思いに森の中を歩き回る。

  ある者は木々の間を駆け抜け、またある者は草むらをかき分けて進む。

  その姿はまさしく獣のそれであり、彼女達の心がそうさせているのだろうと感じさせるには十分な光景であった。

  あの新人の少女もまた彼女なりの足取りで森の中を散策している。

  近場で座り込むだけだった頃に比べればかなり歩いている感じだが、それでもまだ少しぎこちない。

  しかし、他のメンバーはあえて何も言わない。

  形はどうあれ自分達も通った道であり、大事なのは今彼女の中で目覚めつつある「獣」をどう感じ、どう愛でるか。

  それが大事なのだから。

  だから、彼女達はあえて何も言わない。ただ見守るだけだ。

  そして、少女もまた自分の中に目覚めつつあるものをおぼろげに感じていた。

  最初は恥ずかしさと戸惑いしかなかった。

  裸になるのも、獣の面を被るのも。

  森に出た時は何もできず木陰で座り込む事しかできなかった。

  でも、なぜかその次も来ていた。

  裸になって、獣の面をかぶって森の中、草むらの上であお向けになっていた。

  その時感じた感覚―それは……。

  (気持ちいい)

  だった。

  何かははっきりとはわからない。

  ただあの時も、そして今この時も。

  身体の内側、そして……。

  木々を風が吹き抜けている。

  近くからせせらぎが聞こえてくる。

  それに混じって何かの鳴き声が聞こえてくる。

  小さくか弱く、それでもいてどこか艶のあるあえぐ様な「鳴き声」が。

  「あ……あん……」

  その声の主は……新人の少女だった。

  獣の面をかぶった全裸のままで。

  せせらぎのほとりに腰をおろし。

  そっとその下腹部に手を添えている。

  その指先がゆっくりと動くたびに彼女の口から甘い吐息が漏れる。

  (あ……)

  その指先が彼女の敏感な部分に触れるたびに身体の奥から熱いものが溢れてくる。

  (あ……ああん)

  その指先が彼女の敏感な部分に触れるたびに身体が震えるような快感が走り抜ける。

  (ああ……いい……気持ちいい)

  あの時ほんのり感じていた感覚。

  獣になった顔以外は裸のままで感じてしまったあの感覚。

  あの時は何もできずただ横たわっていただけだった。

  そのあともああしている度に感じはしていたけどどこか怖かった。

  何か自分が自分でなくなってしまうような気がして。

  でも、違ってた。

  だから……受け入れた。

  だから……今日はいきなりしちゃった。

  あの時はいきなり達しちゃったけど―今なら。

  今なら……。

  そう思いながら少女はそっと手を動かす。そして、指先を自分の秘所へと近づけていく。

  指先が触れる直前、少女の身体がビクッと震えるがそのままゆっくりと指先は彼女の秘めたる部分に触れる。

  「ああんっ」

  その瞬間に彼女は思わず声を上げてしまった。

  その声の大きさに慌てて口を塞ぐがそれでもなお指の動きに合わせて声が漏れるのを抑えきれないようだ。

  でも構わない。

  自分の中から現れようとする獣をなだめ、奮い立たせ、そして―一つになる。

  それを導くように少女はさらに手を激しく動かす。

  その動きに合わせて彼女の身体も大きく震えるように動く。

  獣の顔の中で彼女もまた獣のようにあえぎ声を上げながら快楽に身を任せている。

  その声が段々と大きくなっていくのに合わせて彼女の手の動きも激しくなる。

  高まっていく。昂っていく。

  自分の中の獣が荒ぶっている。

  「ああ、いいっ!」

  思わず声が出る。

  でも、でもまだ足りない。

  獣が出たがっている。

  わたしも獣になりたがっている。

  こんなに熱いのに、こんなに気持ちいいのに。

  でも、でもまだ足りない。まだ何かが足りない。

  どうすれば、どうすれば……。

  「あ、ああん……あっ」

  その時。

  「がんばっているようね、新人ちゃん」

  「!」

  その声に少女は身体を震わせ、思わず振り向いた。

  そこには先輩にあたるメンバーが全裸で立っていた。

  先輩は全裸のままにっこりと笑うと彼女に近づいてきた。

  「せ、先輩、こ、これは……」

  慌てて言いつくろうとする少女だが、先輩は獣の顔の中でくすっと笑みを浮かべる。

  「いいのよ、別に。だってここはそういうサークルなんだから」

  そう言いながら先輩は少女の隣に腰を下ろすとそのまま手を伸ばして彼女の肩を軽く抱き寄せるようにする。

  「あ……」

  「ほら、続けて」

  耳元で囁くように言われて少女は思わず身体を震わせる。

  そんな少女をそっと抱き寄せながら先輩はもう一度言う。

  「大丈夫、怖くないから。自分を解き放っていいのよ」

  その言葉に背中を押されるように改めて少女はゆっくりと自分の手を股間へと伸ばす。

  指先が触れる瞬間、彼女の口から甘い吐息が漏れると同時に指先の動きに合わせて小さく声が漏れる。

  「あ……ああん……」

  そしてそのままゆっくりと指先を動かし始める。その動きに合わせて彼女の身体も小さく震えるように動く。

  獣の顔の中で彼女は目を閉じてその感覚に集中するかのようにじっとしている。

  そんな様子を見ながら先輩もまたそっと少女の秘所へと手を伸ばすと優しく撫で上げるような動きを始める。

  (あ、ああっ)

  その瞬間に少女は思わず声を上げてしまったがそれでもなおその手の動きは止まらない。

  むしろ激しさを増してさらに激しく動かしていくばかりだ。

  その動きに合わせるようにして少女もまた自分の手を動かす。

  二人の動きは次第に同調していき、やがて完全に一致した動きで互いを刺激し合うようになる。

  「ああ、いいっ!」

  その刺激に耐えきれず少女は思わず身体をのけぞらせてしまうがそれでもなお手は止まらない。

  いやむしろより激しく動いていくばかりだ。

  思わず声が出る。でも、それでもなおその手の動きは止まらない。

  獣の顔の中で彼女もまた獣のようにあえぎ声を上げながら快楽に身を任せている。

  その声がだんだんと大きくなっていくのに合わせて少女の手の動きも激しくなる。

  高まっていく。昂っていく。

  その中で彼女は感じていた。

  獣が高まっている。獣が昂っている。

  獣が荒ぶっている。

  そして……獣が歓んでいる。

  「大丈夫、あなたのやりたい様にやっていいのよ」

  先輩の言葉に導かれるように彼女はさらに激しく手を動かす。

  「は、はい……いいっ」

  声が上がり、身体をひねる。

  獣が飛び出そうとしている。

  獣が荒ぶっている。

  それに飛び込み、一つになる。

  そして……思うように感じて動く。

  そんな光景が浮かぶ中で、彼女はさらに激しく手を動かす。

  高ぶる感情と溢れようとしている獣の本能の流れに身を添わせるように。

  裸身をしならせ、震わせながら。

  作り物の獣の顔が本当に吠えているかのように顔を震わせながら。

  「あ、ああっ!」

  そしてついにその時が来る。

  湧き上がってくる獣と一つになって吠える瞬間か゚。

  「い……イクッ!イっちゃうっ!!」

  「イけっ!思いっきりイっちゃえ!」

  先輩の言葉と同時に彼女の身体の中で何かが弾けた。

  「うっ、うう、あうううう……」

  それと同時に獣の顔が激しく震え、その口からは獣の咆哮のような叫びが上がる。

  「うああああああああ……っ!」

  頭の中が弾け飛ぶ様な感覚と共に少女は吠えた。

  そして、身体がビクンっと大きく震えたかと思うとそのまま力なく倒れ込む。

  「ああ……あああ……」

  緩みきった声が獣の面の中から聞こえる。

  その身体も緩みながらぴくぴくと震えていた。

  [newpage]

  「はぁ……はぁ……」

  「お疲れ様、新人ちゃん」

  先輩はそっと少女に寄り添い、肌をなでる。軽いグルーミングである。

  その手の動きに少女は小さく身体を震わせるが抵抗する様子はない。

  「ちょっと刺激的過ぎたかな……でも新人ちゃんってちょっと恥ずかしがりだったからこれくらいしないとね」

  そう言いながら先輩は少女の身体を優しくなでる。

  「はぁ……あぁ……」

  絶頂の余韻でおぼろげな意識の中、少女は獣の面の下で軽く声を漏らす。

  (きもちいい……これがけものになるってことなんだ……けもの?わたし……けもの?けもの?けもの……?)

  おぼろげな意識が急速にまとまっていく。

  (けもの……わたし……けモノ……ワタシ……ケモノ……ケモノ……)

  「あああ……あああ……アアア……」

  先輩が異変に気づいたのはその声を聞いた時だった。

  「新人ちゃん?どうしたの?」

  「ア……アア……」

  「ねえ、大丈夫!?」

  先輩が慌てて声をかけるが返事はない。

  ただ獣の面の下からは荒い吐息だけが聞こえてくるだけだ。

  (おかしいわ)

  そんな様子を見て先輩は何かを感じ取ったのかそっと少女の身体から手を離すと立ち上がり距離を取る。

  少女は身体を起こすとゆっくりと立ち上がる。

  しかし、それは先ほどまでの恥じらいの混じった小動物的なものではない。

  「ウウウ……アアア……」

  その声も、その動きも、獣のそれとなっている。

  「ウ……ア……」

  少女はゆっくりと先輩に近づいていく。その足取りはおぼつかないもののしっかりとしたものだった。

  「新人ちゃん、ちょっと落ち着いて」先輩は慌てて後ずさる。

  「ウ……ア……」

  しかし、少女はそんな先輩の反応に構うことなく獣の動きでさらに近づいてくる。

  (間違いない……これって完璧に……)

  後ずさりながら先輩はじわじわと距離を取る。

  そして、ある程度離れたところで先輩は一気に少女に距離を詰めると、その面前で両手を打つ。

  「ウアッ」

  いわゆる猫だましで少女が一瞬ひるんだ隙を突くように先輩は踵を返して走り出した。

  「ウウウウ……ウオッ!」

  少女が体勢を立て直して後を追ったのはそれからすぐのことである。

  森の中を、木々を駆け抜けながら裸身に獣面の女性二人が追いつ追われつを繰り広げている。

  それはまさに獣の狩りの光景の再現でもある。

  幸い追われる側である先輩は相応に体力もあるが、獣の本能を暴走させているかのような少女の勢いに追いつかれる可能性は否定できない。

  「はあっ、はあっ、はあっ」

  「ウウッ……アアッ!」

  (まずいわね)

  そんな思いを抱きながらも先輩は走り続けるしかなかった。

  幸いこういう事態は何度も目にしているし―彼女自身「経験」もある。

  しかし、だからこそ対処を間違えると色々大変なことになるのも十分理解している。

  だからこそ何とか距離を取りつつも先輩は逃げている。

  一方少女はというと。

  「ウウウウ……アアアア……」

  (キモチイイ……キモチイイ……)

  獣としての本能が暴走し、それを抑えきれずにただ獲物を追いかけている状態だった。

  そんな状態であっても少女の身体と心は裸の獣面を通じて感じ取っている快楽をしっかりと受け止めていた。

  だからこそ彼女は止まらない。止まることができないのだ。

  (もっと……モット!)

  そう思いながら少女は走る速度を上げる。

  それを感じてか先輩も勢いを上げ、ついにたどり着くべき所にたどり着いた。

  「たいへーんっ!新人ちゃんが、新人ちゃんが「ケダモノ」になったーっ!」

  声を限りに叫ぶ。

  周辺で獣としてのひと時を過ごしながらそれを聞いたメンバーたちは、

  「え、本当?」

  「これはちょっと見もの……大変ねっ」

  「急がないと」

  「急げ急げ」

  とあちこちから駆けつけてくる。

  そして、その中心で先輩が叫んでいるのを見るとすぐに状況を把握したようだ。

  そのまま彼女達は一斉に行動を開始した。

  「はあはあっ……おねがいっ」

  「まかせてっ」

  「よし来たっ」

  「あんたの分もとっておこうか?」

  「うう……おねがいっ」

  途中変なやり取りもあったが、先輩と入れ違いにメンバーたちは少女を取り囲むように散開する。

  一人が少女の進路上に先回りして立ちふさがるともう一人はその反対側から同じように立つと同時に両手を広げて通せんぼをする構えを見せる。

  さらに別のメンバーは背後から羽交い絞めにしてその動きを止めるべく動き、残りの者達もそれぞれ役割分担をしながら包囲網を形成していく。

  それはまさに統率された獣の仮の姿でもあった。

  「新人ちゃん、落ち着いて」

  「大丈夫。怖くないから」

  「ほら、深呼吸して……吸ってー……」

  包囲に感づき、動きを止めた少女に声をかけつつ包囲網を狭めていく。

  「ウウウッ、ウオッ」

  少女は周りの気配を感じながら威嚇の唸り声をあげる。

  「ウウッ、グアッ!」

  そして包囲網を突破すべく動こうとするがその動きはどこかぎこちない。

  「新人ちゃん、落ち着いて」

  「大丈夫、怖くないから」

  そんなメンバーたちの言葉にも耳を貸さず少女は再び獣の動きで逃げようとするが……。

  「捕まえたっ」

  間髪入れず飛びかかったのは逃げ切っていた先輩だった。

  「ちょっと、それ反則!」

  「わたしの分も取っといて!」

  そんな声が一部からかかるが、先輩はおもむろに少女を抑え込む。

  「ウウッ、アアッ!」

  「ごめんね……でも……」

  そう言いながら先輩は少女の身体をぎゅっと抱きしめる。

  そして耳元でささやくように告げる。

  「……大丈夫、怖くないから」

  「ウゥゥゥゥ……」

  それでもまたジタバタと身体を動かす少女に先輩は改めてグルーミングを始める。

  それは先ほどのような愛撫ではなく、獣を落ち着かせるためのものだ。

  しかし……。

  「ウッ、ウオッ」

  (アアン、ダメッ!)

  そんな先輩の手の動きに少女は敏感に反応してしまっていた。

  そしてそんな様子を感じ取っていた先輩もまた興奮を覚えてしまうのだ。

  だが今はそれどころではないと自分に言い聞かせながら彼女は少女へのグルーミングを続けるのだった。

  「ウウッ、アアッ」

  先輩のグルーミングに少女は身もだえる。

  その感覚はまさに獣のそれであると同時に少女の身体の内側から湧き上がる快楽でもあった。

  (キモチ……イイ)

  その感覚に少しずつ気持ちが静まり、蕩けていこうとしている。

  しかし、その感覚の主は一人だけではなかった。

  「ほらほら、気持ちいいでしょ~」

  「新人ちゃん、こっちはどうかな?」

  「ここもいいわよ~」

  いつの間にか他のメンバーも少女の各所を的確にグルーミングしていた。

  それはまさに獣を落ち着かせるための行為であり、同時に彼女達自身の欲望を満たすためのものでもあった。

  その快楽に少女は完全に身を委ねていた。

  「アアアッ、アアアア……」

  (キモチイイ……モット!)

  そんな少女の様子を感じ取ったのか先輩もまたグルーミングの速度を上げる。

  その動きに合わせて少女の身体も激しく反応するがそれでもなお彼女はそれを求め続ける。

  肉食獣の群れが獲物をむさぼる様にというには余りも甘美でかつ淫蕩な空気に満ちた光景がしばし続く。

  そして……。

  「アア……ああっ」

  一瞬声が上がると少女は力なく崩れ落ちる。

  「大丈夫、新人ちゃん」

  「おっと」

  「大丈夫?」

  先輩やほかのメンバーは優しくそれを受け止める。

  「はあ……ああ……はい……だいじょうぶ……です……」

  ようやく鎮まったか、ややか細いながらも人語で少女は答える。

  「でも、新人ちゃんもすごいね。いきなり「ケダモノ」になるなんて」

  先輩はそっと少女を抱き寄せながら言う。

  「は、はい……とってもきもちよくて、ばくはつしちゃって……でも、ちょっとつかれちゃいました……」

  その言葉に少女は恥ずかしそうに俯くが、それでもなお彼女は答える。

  「まあ、わたし達もちょくちょくやってるし慣れてけばいいよ」

  そう言いながら先輩はそっと少女の頭を撫でる。

  少女はくすぐったそうにしながらもそれを受け入れる。

  (うん、いい子だな)

  そんな様子を見ながら先輩もまた改めて実感する。

  そんな時。

  風に乗ってどこからか「ケダモノ」の唸り声が「「二匹分」聞こえる。

  「あーあ、あの二人またやってるみたい」

  「お盛んというかなんというか」

  「お熱いのはいいけどちょっとね」

  そんなやり取りを交わしながらメンバーはその声の先に歩いていく。

  「……先輩、どこに行くんですか?」

  やや疲れの残る口調で少女が訪ねる。

  「うん、さっきの新人ちゃんよりももっとすごい「ケダモノ」を取り押さえに行こうと思ってね。すごいものが見られるかもよ」

  とその身体によりそいながら先輩も答える。

  「はい、わかりました……」

  少女は素直に答えると先輩と共に歩き出す。

  (さっきのわたしよりもっとすごい「ケダモノ」……)

  そんな期待に胸を躍らせながら彼女は先輩の後をついていくのだった。

  その後、メンバーに囲まれていることに気づかず獣の本能を暴走させながら文字通りの「交尾」に浸っていた「ケダモノ」―獣になり切りすぎて発情してしまったサークルメンバー―達をむりやり「クールダウン」させ、そのまま小屋に戻ることになった顛末は話せば長くなる。

  [newpage]

  ケダモノ状態から我に返ってもなお恋人つなぎで歩いている二人の獣面裸女二人を先頭に一同は小屋に、そして「儀式の部屋」に戻っていく。

  それを見て少女は「すごいなあ」とつぶやき、先輩も「まああれはいきすぎだけどね」と耳打ちした。

  「儀式の部屋」に戻ったところで彼女たちは再び部屋の明かりを消し、LEDランタンに灯りを灯す。

  再び太鼓の音色が響きだす中、彼女たちは再び軽く体を動かす。

  まるで整理体操のように、そして自らの「獣」を鎮めていくかのように。

  そのリズムに合わせて彼女達は体を動かす。

  そんな中で先ほどとはまた違う興奮に彼女たちは浸っていく。

  高ぶる感情が鎮まっていく、穏やかになっていくことが一つの快感であるかのように各々声を上げていく。

  「ああ……あん……」

  「ううっ、ああっ」

  「はあ……ああ……」

  「はあっ、ああっ」

  そんな声が室内に木霊する。

  そして、そのテンションが極まったとき、彼女たちは獣の面に手をかけ、一気に引き抜く。

  「ふうっ」

  「はあっ」

  「ひゃあっ」

  「ふぅ……」

  汗にまみれ、上気した素顔がLEDランタンの灯りに輝く。

  その素顔は人間の姿に戻ったが、その姿はなおも美しい獣を思わせる。

  身も心も解き放たれた感覚にしばしひたる女子学生達だったが。

  「大変、新人ちゃんが失神してるっ」

  の声に顔を向ける。

  そこには素顔に戻り、今度こそ色々気がほどけたのか。

  心地よい顔で気を失っている新人の少女の姿があった。

  「あーあ、でも無理ないか」

  「あれだけケダモノってたら仕方ないわね」

  「でもいい顔してる」

  「期待の大型新人あらわるってかな?」

  「それいいかも」

  そんな会話をしながら一同は少女を介抱する。

  「大丈夫、新人ちゃん?」

  「う……うーん」

  そんな声に目を覚ました少女に声をかけつつ一同はシャワー室に足を運ぶ。

  先輩のフォローもあり、温かくも勢いのあるシャワーにひたるうちに少女は落ち着きを取り戻す。

  本来ならもう少しまったりシャワータイムというところだが、「大事」に備える意味でもあえて早めに上がり、いつの間にか支度してあった衣服に肌を通してエントランスで休んでいる。

  エントランスでは支度を整えた学生達がしばしくつろいでいるがまだ何人かは長めのシャワー―中には「まだ楽しんでいる」ものもいるとか―にひたる者もいるようだ。

  「新人ちゃん、落ち着いた?」

  「はい……大丈夫です」

  そんな少女に先輩が声をかける。

  少女は少し恥ずかしそうに答えると先輩も微笑みながら言う。

  「そっか、よかったわ」

  「はい、ありがとうございます」

  「でもさ、新人ちゃんすごいよ。入ってまだ間もないのにケダモノになっちゃうなんて」

  そういわれて少女は思わず赤面する。

  「あ、あれは……その……」

  「別に責めてるわけじゃないのよ。むしろ感心しているというか」

  先輩は微笑みながら言う。

  「このサークルのメンバーはみんな多かれ少なかれああなる気持ちがあるわけだし、新人ちゃんはそれが早かったってだけ」

  「は、はあ……」

  考えると初めてサークルに入って裸獣面姿になってから今日までそんなに他のメンバーの行動を意識してなかった気はする。

  それだけ恥じらいと共に慣れるのが精一杯だったという事だったのだろう。

  「それにさ、新人ちゃんのケダモノ姿もなかなか良かったよ」

  「えっ?」

  思わず声が高くなる。

  「そうそう、あれがこの新人ちゃんだなんて信じられないくらいにね」

  「あなた、そうとう獣っぽい気持ちがたまってたみたいね」

  他のメンバーも声をかけてくるが、そのどれも否定ではなく感心と好意に満ちていた。

  「あ、ありがとうございます」

  少女は少し照れながらも礼を言う。

  「ただ、あんな風に発情するだけがケダモノになるってことじゃないわ。獣になるってことは色々奥の深いことなの」

  と、あるメンバーがクールに告げる。

  「は、はあ……」

  「あの人はここではいつも森の中を走り込んだり、崖を登ったりしてるからね。ケダモノになる時もそうするうちに、かな」

  「い、色々あるんですね」

  感心の声をあける少女にまた別のメンバーが声をかける。

  「まあ、さっき見たあの二人みたいにずーっと「あんな事」してケダモノ化してたりもあるし、ね」

  その言葉に少女は思わず赤面する。

  自分もかなり「盛っていた」自覚もあったが、それを上回る光景は確かに刺激が強かった様だ。

  「まあ、獣になりきるのも色々って事だし、月並みだけど新人ちゃんは新人ちゃんの中の獣になりきればいいって事」

  先輩の言葉に少女は少し考え。そして改めて思う。

  (わたしの中の獣、か……)

  それは一体どういうものなのだろうか。

  その答えは今はまだわからないが、いつかはわかる日が来る……はず。

  そんな事に思いをはせつつ少女はもうしばしくつろぎの一時を過ごしていた。

  [newpage]

  獣愛好会。

  自分の中の「獣」を解放しあい、実感しあい、そして愛であう女子学生達の秘密のサークル。

  大半の生徒はその存在に関わる事無く学園生活を謳歌し、巣立っていくほどである。

  ただ、そこから漏れた「選ばれた生徒」はそこで学園を去ってもなお足を運んでしまうほどの「かけがえのない体験」をするという。

  そして、少女は今日もまたここで「かけがえのない体験」を重ねていた。

  「う……んっ」

  草むらに横たわったまま大きく伸びをする。

  もちろんその姿は全裸、その顔は獣の面に隠されている。

  穏やかなひと時、森の中は静かな空気に包まれている。

  彼女が「新人ちゃん」と呼ばれなくなってしばらくたち、色々な日々を送る中でもこうして穏やかな気分に浸れているのは間違いなく「獣愛好会」のおかげであろう。

  自分の中にいる獣を受け入れ、獣としてふるまい、獣をめでるひと時が結果として人である自分をも保てている。

  そして、同じように「自分の中の獣」になりきる他の学生達と一緒に裸で戯れあいながら過ごすひと時は間違いなく彼女にとってかけがえのないものであり、この日々がずっと続いてくれればいいと心から願っていた。

  「はあ……」

  思わず息を漏らす。

  人と獣の間といえる姿を実感し、その素肌を思わず抱きしめると普段以上の暖かさと鼓動を感じる。

  そして、思わず下腹部に手が伸びてしまう。

  (また―ケダモノになっちゃおうかな)

  あれから彼女は何度かケダモノになっていた。

  荒ぶる獣の本能のまま、時にはほかのメンバーと激しくむさぼりあってしまったこともあったし、時には森を何度も走り回りはしたない姿で雄たけびを上げたこともあった。

  我に返れば思い切り恥ずかしいし、思い切り疲れる。

  色々調べてみると「本物の獣だってそこまでもしない」とわかり、軽い自己嫌悪になったこともあるが、それはそれで楽しいし気持ちいいのは間違いない。

  (だって、それもわたしだもの。獣ケダモノわたしだもの……なんてね)

  どう猛ささえ感じさせる精巧な獣の面の中で少女は軽く恥じらいながらも優しく笑みを浮かべてつぶやいた。

  そうしている間にも肌はほてり、形のいいふくらみの先端はツンと硬さを増す。

  下腹部の先もしっかり濡れているのが感じられる。

  「あ……んっ」

  思わず声を漏らすとそれらに触れたい気持ちをあえて抑えながら起き上がると、そのまま獣のように四肢を踏ん張り四つん這いになる。

  (ああん)

  そんな姿のまま少女は自分の中に眠る「ケダモノ」を呼び覚ましていく。

  それはまるで獣の本能に身を委ねるが如く、あるいは人の理性を保ちながらの行為であるかのように。

  「ううっ……」

  身体が震え、草むらを支える両手足にも力が入る。

  「ああっ、あああっ」

  獣の面の口からは声にならない声と獣の咆哮が混じり合ったものが漏れる。

  いうまでもなくその中の少女の顔はその感覚の中で歯を食いしばりながらも歓喜に震えている。

  (ケダモノだ……わたし、ケダモノになるんだ……)

  その姿は獣面をかぶり四つん這いとなった全裸の女性のまま。

  しかしその意識の中で彼女は人としての姿を解き放ち、一匹の獣に変わろうとしていた。

  「ウ……グゥ」

  (きてる、きてるっ)

  獣の面から洩れた声は人の声と獣の唸りが混じったもの。

  「グゥ……ウウッ」

  (いい、いいよっ、ケダモノになっていいよっ)

  全身を駆け巡る快感とも苦痛ともつかない感覚に耐えながら彼女は自分自身の中にある獣に身を委ねていく。

  「ガアアッ!」

  (ああっ)

  そんな声を心の中で漏らしつつ彼女は自分の中に眠っていた獣を露にする。

  そして、

  「ウォォォォォォォーンッ!」

  (あぁぁぁぁぁぁぁーんっ!)

  獣の姿勢のまま、少女は獣の雄たけびを上げた。

  その瞬間、下腹部から激しい飛沫が噴出したのはご愛敬だろう。

  「ウ……グゥ……」

  ひとしきり吠えた後、少女はゆっくりと身体を震わせると改めて自分の姿を見る。

  そこには一糸まとわぬ全裸で四つん這いになった獣面の女性が一人。

  「うふふっ」

  そんな自分の姿に思わず笑いがこみ上げ、人間の声で軽く笑ってしまう。

  (ああ、わたしケダモノになってる……)

  人間としての理性は消えていないまま満ち溢れる獣の本能の中にどっぷり浸っている感覚。

  (ああ……気持ちいいな)

  少女は改めて思うとそのまま四つん這いのまましばらく森の空気に浸っている。

  (さて、どうしようかな。せっかくケダモノになったんだし……)

  いろいろな思いに浸っている中、森の中から叫び声が聞こえる。

  「警報ーっ!新人がケダモノになって暴走してるよーっ!」

  他のメンバーの声だ。

  どうやらかつての自分と同じような事が起きているらしい。

  それを聞いた少女は「うふふっ」と獣の面の中で笑った。

  (今日はちょっと先輩風……じゃないけどね)

  実際はこのケダモノな自分のぶつけ所が見つかったという所なのだろうけど、それでも少女は少しもったいなさげに起き上がると、そのまま声がしたほうに走る。

  ケダモノ状態のせいかその途中で何度か軽く達してしまっていたが、それでも彼女は走る。

  (この気持ち、あの子にも教えたいよ……っ)

  「グオオオッ!」

  獣として、人としての感覚に身をゆだねながら。

  獣の顔をあらぶらせ、その中で人の笑顔を浮かべながら少女は走る。

  その後、森の中で二匹とも二人ともつかない獣のぶつかり合う声が聞こえた。

  「獣愛好会」―獣に身をやつし獣とともにある彼女たちの日々はこうして過ぎていくのだ……。

  了