変身怪獣・バグラ誕生!

  その日、夜空には無数の流れ星が降り注いだ。

  桜が各地で開花を迎えた三月某日に起きたそれは『桜吹雪流星群』と呼ばれ、ニュースでも取り上げられては大きな話題を呼んだ。

  数日で人々がそのことをすっかり忘れた頃。

  人知れず地球に落とされた流れ星達からひっそりと何者かが呻き声を上げるのだった。

  [newpage]

  「よーし!『テイオウゴン』出ろ出ろ〜‼︎」

  ところ変わって、夕方前の駄菓子屋。

  そこでは一人の男子中学生が、友人に見守られながらおまけカード付きのウエハースに祈りを込めていた。

  彼の名前は『大崎 竜牙(おおさき りゅうが)』。ドラゴンや怪獣が大好きな、ごく普通の男の子だ。

  今日も友人の『長谷川 羽流(はせがわ はる)』に見守られながら、今日発売の『怪獣大戦ウエハース』を開封している。

  恐る恐る中のカードを見るとそこには、パッケージにも描かれている黄金に輝く巨大な怪獣と『支配竜 テイオウゴン』と書かれた派手な文字が鎮座していた。

  「やったー!俺に会いたくて来てくれたんだな、テイオウゴン!!!」

  「いや、それもう13パック目だし。そのカード出すのにいくらかかったと思ってるんだよ。」

  喜ぶ竜牙に対して、羽流は大量のパッケージの残骸を横目に冷静にツッコんだ。

  「それにこのウエハースの山どうすんだよ。勿体ないから捨てるわけにもいかないし。」

  「そりゃもちろん全部食うに決まってるだろ!俺ウエハース好きだし!」

  「そんなんじゃそれこそ怪獣みたいに太るぞお前。」

  早速ウエハースを食べつつカードを眺める竜牙に、羽流は呆れて溜息をついた。

  「大体、なんでそんな怪獣好きなんだ。ボク達もう中学生だろ?子供じゃあるまいし…」

  「だって怪獣ってバカデカいだろ!?そんなのが街中で暴れたり戦ったりするんだよ!スケールバカデカくて超カッケーじゃん!!!」

  「ほんと子供みたいな理由だな。」

  駄菓子屋から離れ、喋りながら帰り道を歩く二人。

  大好きな怪獣について無い語彙力で熱く語る竜牙だったが、ふと道端に何か落ちていることに気がついた。

  「なんだこれ?ぬいぐるみ?」

  手に取ってみるとそれは、ゴツゴツとした真っ黒な体表に覆われた怪獣のぬいぐるみだった。

  ディフォルメされつつも凶暴そうな顔つきに鋭い歯をしており、更にはワニのような巨大な尻尾までついている。

  それを見た竜牙は、興奮で自分の胸がバクバクしているのを感じていた。

  「へぇ、これ怪獣のぬいぐるみか。よくできてるな。」

  「…俺、コイツ持って帰る。」

  「…は?」

  竜牙がぽつりと呟くと、羽流は怪訝そうな顔を浮かべた。

  「お前それ落ちてたもんだろ!?どっかの子供が落とした物かもしれないし、まずは交番に…」

  「お願いっ!今日だけ!明日返すから‼︎」

  「お願いってお前、ボクに言われてもなぁ…。」

  羽流は呆れたように頭を掻いたが、あまりの竜牙の必死さに諦めて呟いた。

  「…明日交番に届けてやれよ。」

  「やったー!んじゃ俺、今日はコイツと寝るから‼︎」

  「知らねえよ。好きにしろ。」

  そう言うと二人は再び帰路に向かって歩き出した。

  羽流の背後では、奇妙な蛾のような生き物が彼に卵を植え付けていることなど知るよしもなかった。

  [newpage]

  『ククク、小僧。貴様が我の新たな依代か。』

  夢の中で、竜牙は何者かに語りかけられていた。

  抵抗しようにも身体が上手く動かず、声も出せずにいる。

  『さあ。貴様の身体、頂いていくぞ!!!』

  そう言うと何者かはズズズッ…と彼の中に入ってくる。

  すると、彼の身体が急激に体温を増していき、その身体に変化が生じていく。

  ぐぐぐっ!!!

  まずは彼のお尻の上から、太く大きな尻尾が生えてくる。

  それは岩のようにゴツゴツで真っ黒の肌で覆われており、パンツやズボンをいとも容易く突き破っていく。

  バキバキッ!!!

  次に彼の手足が丸太のように太く大きくなっていき、肌が尻尾同様黒く硬い皮膚に覆われていく。

  メキメキメキメキッ!!!

  そして胴体も真っ黒に染まったかと思うと、仕上げと言わんばかりに顔も変化が生じていく。

  歯は人間の平らなものからギラッとした鋭い牙が生えそろい、顔は幼さの残った男子中学生らしいものがいかつい怪獣のものへと変化していく。

  目もくりっとしたものから瞳孔が縦に伸びた鋭い目つきのものへと変わり、獲物を見定めるかのようにギラギラ光を放っている。

  全身を青白く光らせ口から粘度の高い唾液を垂らし、変化の終わった男子中学生だったモノは邪悪な笑みを浮かべた…。

  [newpage]

  バキバキバキバキッ!!!

  「いっ…たぁぁぁっ!?」

  何かが壊れるような大きな音と共に身体が下にずしんっ!!!と落ち、竜牙は目を覚ました。

  「あー…変な夢見た…なっ!?」

  まだ眠気の残る目を擦る竜牙だったが、自身に起きた変化に驚きの声を上げた。

  「なっ、なんだこれっ!?俺の身体、なんか変っ!?」

  なんと目を擦った自身の手が、夢で自分が変化した怪獣のものになっていたのだ。

  しかも彼の身体は元の何回りも大きくなっており、その姿は昨日拾ったぬいぐるみそっくりだった。

  「りゅーく〜ん?どうしたの〜?大きな音したけど大丈夫〜?」

  ベッドが壊れた時のものだったのだろう、大きな音を聞きつけた彼の母親が心配そうに部屋の扉を叩いた。

  竜牙は慌てて重くなった身体を動かし、扉を開かないよう押さえつけた。

  「だっ、大丈夫だから!お願いだからぜっっったいに入ってくるなよ!!!」

  「そお?大丈夫ならいいんだけど…。早く朝ご飯食べないと遅刻しちゃうわよ〜。」

  そうおっとりとした口調で続け、母親は戻って行った。

  「そもそもこんな姿じゃ学校行けないんだけどな…。俺いったいどうしちゃったんだろ…。」

  『ようやくお目覚めか、小僧。』

  不安そうにぽつりと呟いた竜牙の頭の中に、何やら声が響いた。

  昨日夢で語りかけてきたのと同じ声だ。

  「だっ、誰だ!?」

  『我か?我は昨晩、貴様が拾ったぬいぐるみだ。名を『バグラ』という。』

  その声、バグラは続けた。

  『我等は宇宙の生命体でな。今まで数多の星の生物に寄生し、その身体を乗っ取り支配してきた。しかし小僧、貴様を完全に乗っ取ることはできなかった。これは我も初めてのことだ。』

  「乗っ取る…!?どうしてそんな真似を!?」

  『理由は個体ごとに様々だ。ただ破壊を望む者、繁殖を望む者、他生物の支配を目論む者。我の場合は…星ごとの美味を求めることだ。』

  「要するに…お前は何か美味しい物が食べたいってことか?」

  『うむ。貴様ら人間は食材として悪くなさそうだ。特にお前の母親…あれはドア越しの匂いで最高の食材だと分かる。匂いだけで胸や尻、太腿の肉付きや程よく乗った脂肪が感じ取れる。それにまだ若々しくフレッシュな匂いだ。今すぐ口に運びたいものだ…。』

  「なっ!?母さんを!?」

  そう言うと、バグラは竜牙の頭の中でジュルリと舌舐めずりをする。

  それを聞き、竜牙は焦りで声を上げた。

  『しかし貴様の乗っ取りには失敗し、身体もまだ小さすぎる。まずは我の完全な力を手にするために、ささやかながら腹ごしらえとするか。』

  そう言って、バグラは昨日残っていたウエハースにちらりと目をやる。

  一時的には乗っ取れるのだろうか、竜牙の抵抗虚しくバグラと化した竜牙の身体はずしん、とウエハース目掛けて向かっていき、そのうちの一つを口に運んだ…。

  『…美味い。』

  そう呟くと、何故かしゅるしゅる…と元の竜牙の姿に戻っていった。

  「もっ、戻った!?なんで!?もしかして…バグラとかいうの、意識を完全にウエハースに持ってかれてるのか!?」

  元に戻った竜牙が壊れたベッドや破けたパジャマが散らばる荒れた部屋で全裸で戸惑っていると、玄関からチャイムの音がする。

  いつもこの時間になると、親友の羽流が迎えに来てくれるのだ。

  竜牙は焦りつつも急いで制服に着替え、玄関へと向かった。

  「おっ、おはよう羽流!悪い、色々あって遅くなって…」

  「ああ、竜牙。悪いけどなんか食い物無いか?ボク、なんだか朝から腹減って…。」

  しかし玄関先の羽流は、何処か虚な目をしていた。

  「腹減った…?それじゃあ上がってけよ!俺も実は朝食まだで…」

  「いや、それがなんか普通の食べ物が受け付けないっていうか、もっと他の…。…いいもん見つけた。」

  すると羽流はポストの中のチラシや新聞紙を手に取り、なんと夢中でそれを頬張り始めた。

  「ちょっ!?お前、何やってんだよ!?そんなもん食って…」

  『オイ小僧。一つ忠告しておいてやるが、そいつは貴様と同じく《寄生》されているぞ。』

  「なっ!?」

  様子がおかしい羽流に狼狽えていると、脳内でバグラが声をかけた。

  確かに彼の言うとおり羽流は何者かに取り憑かれたようで、しかも身体中に変化も生じ始めている。

  ズズズッ!!!

  まず彼のお尻の上からは無数の節を持った柔らかい何かが生え、その腹部の色は肌色のままだが、背色は派手に染まっており目玉のような模様も付いている。

  ムチムチッ!!!

  彼の身体も肉や脂肪が段となって節を作り、ムチッ!としたものに変化していく。

  手足は縮んだ代わりに数を増やし、一節に一組生えていく。

  ぐぐぐっ!!!

  最後に彼の首は周辺の肉に埋もれて無くなり、顔も芋虫のようなものに変化していった。

  変化のたびに一回りずつ大きくなり、そして…

  「シュルシュルシュルシュルシュル!!!」

  彼の面影はもう無く、代わりに電車一両分ほどのサイズの芋虫がそこにいた。[uploadedimage:15135550]

  「そっ、そんなっ!?羽流が…芋虫の化け物に!?」

  『奴は《毒蛾怪獣モスガ》に寄生されたのだ。ガモスの女王は人間に卵と共に自身の精神を植え付け寄生し、成虫になると卵を産み散らかして他の生物を子供のモスガとする。繁殖しか頭の無い低脳な虫だが、この町一つ滅ぼすことなど容易いだろうな。』

  バグラがそう説明する中、モスガの幼虫と化した羽流は町中の植物やアスファルト、建造物に至るまでバリバリ食い散らかしながらどんどん巨大に成長していく。

  やがて竜牙の家から10キロほど離れた町のシンボルタワーの近くに来てもよく見えるほどの大きさとなり、今にタワーを食わんとしたその時だった。

  「シュルルルルルルルッ!?」

  突然羽流が、芋虫と化したその身をよじり苦しみ始めた。

  すると口やお尻からシュルルルッ!!!とネバネバした糸を吐き出して自身の身体を覆っていく。

  みるみるうちに芋虫は自らの糸に包まれ、やがてそれは一つの巨大な繭と化していた。

  『なるほど、あまりの食物の多さに急速に繭まで成長したか。あれが羽化してしまえば、最早この星は壊滅だ。この町の人間全員をモスガへと変え、世界中を舞い滅ぼして回るだろうな。』

  「そ…そんな…。」

  光を通して見える繭の中では、羽流らしき少年のシルエットが浮かんでいる。

  しかしドクン…ドクンと波打つその身体は徐々にメキメキと変わっているようで、どこか女性らしく変化している印象も受けた。

  そんな彼に、この星はあっさり滅ぼされてしまうのか。

  親友だった彼のことを思いショックを受ける竜牙に、バグラは口を開いた。

  『…ところで小僧。あの虫けらがこの星を滅ぼした暁には、あの美味な甘き板は食えなくなるのか?』

  「…ウエハースのこと?そりゃそうだろ。だって、アレ作ってるとこも売ってるとこもみんな滅んじまうんだもん。」

  『ふむ…。なるほど。』

  それを聞いたバグラは少し考え、決心したかのように再度口を開いた。

  『小僧、貴様の身体を一旦我によこせ。あの虫を駆除するぞ。』

  「えっ…?」

  バグラの提案に、竜牙は顔を上げた。

  『折角この星で久々に美味い物を食えたのに、あの虫けら如きに滅ぼされるのは気に食わん。この星の食料は、全てこの我が喰らい尽くす。貴様の母親もうえはーすとやらも、この虫には一切れたりとも与えるつもりはない。』

  「それって俺を今朝みたいに怪獣にするってこと…?そんなこと言って俺の身体でアイツと暴れまわるつもりじゃ…」

  『あの低脳な虫と一緒にするな。それに安心しろ、今のところ身体の主導権は貴様にある。それとも、貴様はただ自分の星が滅ぼされるのを黙って見ていたいのか…?』

  ふと繭の方を見ると、ピキピキッ…と少しずつ音を立ててヒビが入っている。

  それを見て竜牙は、決心したように呟いた。

  「小僧…じゃなくて竜牙ね。大崎竜牙。わかった?バグラ。」

  『クククッ。案外話の分かる奴だ。膨大な我の力にせいぜい振り回されるなよ?竜牙。』

  二人がそう言うと、竜牙の身体は再び変わっていく。

  ゴツい肌の真っ黒な怪獣に、しかし先程とはその大きさは遥かに異なりどこまでも大きさを増していくのだった。

  [newpage]

  「えー、緊急速報です。今朝桜市に現れた巨大な芋虫ですが、現在繭となり動きを見せません。しかし繭にはヒビが入っており、警察は住民に避難を要請しており…」

  繭となった羽流の頭上では、ヘリコプターに乗ったニュースキャスターが少々興奮の混じった口調で現在の様子を報道している。

  しかしそんな時、ピキピキピキッ!と一際大きな音が鳴り響き、割れた繭の隙間から毒々しい模様の翅が姿を表す。

  その中から少し濡れた艶かしい女性のようなシルエットが、セクシーに服を脱ぐかのように姿を表す。

  だがそんな『彼女』の身体はフサフサの白い毛で覆われており、腕と脚は計6本存在し、頭頂部には蛾のような触覚が生え、顔も蛾そのもののようなものに変化していた。

  面影は全く無くなってしまったが、間違いなくあの男子中学生、羽流の変わり果てた姿であった。[uploadedimage:15135557]

  「シュシュシュシュシュシュシュシュ!!!」

  知性の無い鳴き声を上げて、毒の鱗粉でたっぷりと覆われた翅を羽ばたかせる。

  そしてヘリコプターを吹き飛ばそうとした…その時だった。

  ずしんっ…。ずしんっ…。

  まるで地響きかのような巨大な音が、地面を大きく揺らしながら近づいてきた。

  本能から危険を察知した羽流…いや、成虫となったモスガが振り向くと、そこにいたのは…

  「ギャアァァァァァァァァァスッッッ!!!」

  空間をビリビリひりつかせるような大きな雄叫びを上げる黒い怪獣。

  稲妻のように体内を青白く光らせたその怪獣は、『暴食怪獣 バグラ』と化した竜牙だった。

  [uploadedimage:15135560]

  「うぅ…やっぱし恥ずかしいなコレ…。デカいからさっきより恥ずかしさ増してるし…。」

  巨大なビルを鏡に改めて自分の身体をまじまじと眺め恥ずかしがる竜牙…もといバグラに、テレビ局のヘリコプターが近づいてきた。

  「大変です!なんと、もう一体巨大怪獣が現れました!!!この二体は果たしてどのような関係なのでしょうか!?果たして我々はどうなってしまうのでしょうか!?」

  そう報じるキャスターをよそに、バグラは顔を赤らめながらもズシンズシンッ!!!と勢いよく近づきその巨大な尻尾をブンッ!と大きく回す。

  「シュシュシュッ!?」

  それを避けきれず直撃してしまったモスガは、大きく吹っ飛んでビル群を壊しながら倒れ込んだ。

  「ギャアッ!!!」

  倒れ込んだモスガの腹を、バグラは巨大な足でズンッ!と踏み潰した。

  

  「ジュウゥゥゥッ!?」

  『お、おい竜牙、貴様なんか初めてにしてはやけに戦い上手くないか…?』

  「ああ、俺実は怪獣映画好きでさ〜。よく観てるから怪獣の真似とか得意なんだよね。」

  『この星の者は我等怪獣をエンタメとして楽しんでいるのか!?よく分からんものだ…。』

  「シュシュシュ!!!」

  脳内でそんなことを話していると、踏みつけられていたモスガが背中の翅を大きく羽ばたかせる始めた。

  すっかり油断していたバグラはそこから放たれた毒の鱗粉を大量に吸い込んでしまった。

  「ギャアスッッッ!?」

  するとバグラは身体が痺れて動けなくなってしまった。

  「なっ、なんだこれ!?身体が上手く動かせないっ!?」

  『まずいぞ…。コイツの麻痺毒の入った鱗粉を吸い込んだらいくら我の強靭な身体でも動けなくなってしまう!』

  バグラの言う通り、いくら竜牙が意識しようとも身体に力が入らない。

  それを良いことに、ビルだった瓦礫を散らしながら立ち上がったモスガはバグラに掴みかかり、思いっきり押し倒した。

  ずしぃぃぃぃぃぃんっ!!!

  「ギャアッ!?」

  巨大な道路だった場所に勢いよく倒れ込み、アスファルトを派手に崩壊させていくバグラ。

  そんな彼にモスガは、蛾の腹のような太い尻尾をバグラの尻尾の真下にあてがった。

  『まずい!この羽虫、我等に産卵する気だぞ!?』

  「さっ、産卵っ!?そしたら俺らも!?」

  『ああ。モスガになってしまう。』

  「そんな…!くそっ!動け!俺の身体!!!」

  しかしいくら竜牙が抵抗しても、バグラとなった身体は重く全く動かない。

  そんな彼の股下では、モスガが尻尾の先端からねとぉ…と妖しい粘液に包まれた卵をひり出し、今にもバグラに産卵しようとしている。

  そんな時、竜牙の脳裏を怪獣映画の映像が駆け抜けた。

  「なあ、バグラって口からビーム出せたりするのか?」

  『何…?まあ出せることには出せるが…コツがいるから難しいぞ?変身したばかりの貴様にはまず無理…』

  「よし!やってみる!」

  バグラがそう話終わる前に、竜牙が息を大きく吸い込む。

  そして…

  ビビビビビビビビッ!!!

  「シュシュウゥゥゥッ!?」

  口から青白いビームを放ち、モスガを退けた。

  ビームはガモスの触覚をジュッ!と焦がし、彼女の感覚器を麻痺させた。

  『なっ!?わ、我でも習得に苦戦したビームをこんな安安と…。』

  「昔一瞬だけ音楽の授業でフルート吹かされてさ〜。その時の感覚で息吹いたらできた!」

  『我のビームをそんな緩い感覚で使うな!!!』

  よろめくモスガの隙を見逃すはずもなく、竜牙はそうノリノリで脳内会話しつつ彼女の翅ををガシッ!と四つとも掴み…

  ブチィィィィィィッ!!!

  鱗粉を吸わないよう息を止めつつ、背中から思いっきり千切り取った。

  「ジュジュジュジュジュウゥゥゥッ!!??」

  自慢の毒翅をむしり取られたことで、明らかにモスガは困惑し戸惑いの声を上げている。

  「一つ聞くけど、コイツ倒したら羽流は元に戻るんだよな?」

  『ああ。案ずるな。遠慮せず倒すがよい。』

  「そんじゃ、今人間に戻してやるからな!羽流‼︎」

  「ギャアァァァァァァァァァァスッ!!!」

  そう確認を取ると、バグラは天を割くほどの大きな雄叫びを上げる。

  すると晴天だった空に雨雲が集まり、ゴロゴロッ!と無数の雷が彼の下に落ちてくる。

  その雷を浴びるたび、バグラの体内の光はより一層激しさを増していった。

  「充電完了!いっくぜーっ!!!」

  雷を大量に浴びると、これまで毒で上手く動けなかったのが嘘のようにバグラは巨体を素早く動かしモスガに向かって走り出す。

  そして自分の尻尾を股下から咥えこみ、走りながら丸まった姿勢になると勢いをつけて転がった。

  ボウリングの玉のように転がるバグラは雷を帯びて、次第に速度と勢いが増していく。

  「必殺!バグラ・ヘルサンダーローリング!!!」

  そう叫ぶと同時に大量の電撃と共にモスガに巨体が勢いよく激突し…

  「ジュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!???」

  モスガは断末魔の悲鳴を上げ、どっしぃぃぃぃぃぃんっ!!!と町のタワーを崩壊させながら倒れ込むのだった。

  「ギャアァァァァァァァァァッ!!!!!」

  その爆発をバックに、バグラは町中に響きわたるような声で勝利の雄叫びを上げるのだった。

  [newpage]

  「あの黒い怪獣は蛾のような怪獣をまるで怪獣映画かのように見事倒しました!果たしてあの怪獣は私達を助けてくれたのでしょうか!?専門家によると、単なる縄張り争いの可能性という意見も…。」

  ニュースキャスターがヘリコプターから報じているのを尻目に、バグラは倒れてピクピク痙攣しているモスガを見下ろしていた。

  「ほ、ほんとに大丈夫なのか!?羽流、なんだかピクピクしてっけど…。」

  『案ずるな。そのうち…』

  そうバグラが言いかけると、モスガは突如目をカッ!と輝かせ起き上がる。

  竜牙は警戒し、身構えるが…

  「なっ!?なんだこれ!?ボク、でっかい虫の怪獣になってる!?胸もデカいし、気持ち悪いし恥ずっ…‼︎」

  [uploadedimage:15135568]

  目覚めたモスガは羽流の声でそう叫ぶと、すっかり変わってしまった自身の肉体に困惑を隠せずにいた。

  「よかった!正気に戻ったんだな!」

  「その声…まさか竜牙か!?お前までどうしちまったんだよ!?」

  「なんというか成り行きというか…まあ変な生き物に寄生されて怪獣にされて暴れてたお前を、怪獣に変身して助けてやったんだよ。」

  「あ…そう言われてみたら少しずつ思い出してきた…うわ、最悪…。」

  竜牙に言われて自分が怪獣モスガとして暴れていたことを思い出した羽流は、頭を抱えた。

  「で?ボク達どうやって人間に戻るんだよ。めっちゃ見られてて恥ずかしいし、早く元に戻りたいんだけど…」

  『戻りたいと意識すれば戻れる。いい加減我も疲れたし、早く二人とも元に戻れ。』

  「あー…なるほど。んじゃ、やってみるか。」

  バグラにそうアドバイスされ二人で人間に戻ることをイメージすると、二体の怪獣の身体はぐんぐん縮んで肌は怪獣のものから人間のものへと戻っていき、気づけば二人して全裸で崩壊した街に立っていた。

  「ふー…。なんとか戻れた。…ありがとな、竜牙。」

  「ん?お、おう!ま、俺も怪獣になれたの結構楽しかったしなー!」

  「ただボク、街をこんなに滅茶苦茶にしちゃったからな…。なんて詫びれば良いものか…。」

  「それは大丈夫じゃね?数年前他の町で似たような怪獣騒ぎが起こった時、餅みたいな変な生き物が町直してくれたみたいだし、きっとここにも来てくれるだろ!」

  「さ、流石怪獣マニア…。まあそれなら良いんだけど。」

  「そんなことより。無力化したモスガを回収したいのだが良いか?」

  二人が話しているところに、黒い怪獣のぬいぐるみがトコトコ歩き割って入ってくる。

  彼こそが、竜牙と融合する前の怪獣バグラなのだ。

  「昨日のぬいぐるみ…?えっと、モスガってボクに寄生してたやつか?そんなものどこに…」

  「シュシュシュー‼︎」

  「うわっ!?ボ、ボクの背中にっ!?」

  羽流の背中には、先程暴れていたモスガを小さくしたかのようなぬいぐるみが貼り付いていた。

  「そもそもそれどうするつもりなんだ?バグラ。」

  「決まっている。我が配下に加えるのだ。そうすれば、貴様もコイツの力でモスガに変身することができるし我の戦力も増えるというものだ。しかし…離れぬな。」

  「あ、もしかしてこのモスガ、羽流のこと気に入ったんじゃね?」

  バグラが必死に剥がそうとしても羽流にしがみつき離れないモスガを見て、竜牙は思いついたかのように呟いた。

  「はあっ!?そんなこと言ってないで早く剥がせよっ!?ボク、虫ダメなんだって!!!」

  「離れないんだからしょーがねーだろ。…それより、いい加減全裸が恥ずかしいんだけど…。」

  「それなら丁度いい。オイ貴様、モスガに変身しろ。貴様の糸で、変身時に破れた貴様らの服も縫い直すことができるぞ?ついでに貴様ごと我が配下に加わるのだ。」

  「アレにもう一回変身すんの!?ぜっっったいに嫌!!!虫になるのも女の身体になるのも怪獣になるのももうこりごりなんだよ!!!」

  二人と一匹が騒ぎ合う中、雨雲の去った青空の中では餅のような謎の生命体が元気よく飛び回るのだった。