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ハロウィン失踪事件 脱出編

  [chapter:捕食]

  シリウス一同が地下室に連行された頃、バルジは寝室にてメディアの猛攻を受けていた。

  「はぁ…はぁ…はぁ…」

  「ねぇ…あんたってこういう経験とかあるの?」

  「悪いが…答えるつもりはない」

  「へぇ…奴隷状態なのに強気ね」

  「強気でいなければ、あっという間に自我を持って行かれそうだからな」

  ベッドに押し倒され、胸元を開かれている状態に苦笑をしていた。

  「なら、ちょっと奴隷らしいことをさせてみましょうか?」

  「なに?」

  その言葉に不信感を抱くと、メディアはバルジから離れてキングベッドの中央に座り片足を出して命令をする。

  「さぁ、バルジ。足が疲れちゃったわ…舐めてマッサージしてちょうだい」

  命令を聞いた瞬間、体が勝手に動き出し、メディアの方へ向かっている。

  (なんて悪趣味な命令を下すのだ…くそ…体が…)

  必死に抵抗を試みるが効果はなく、あっさりと足に顔を近づけ舌で舐め始めた。

  「うふふ。思った以上に上手ね」

  「こんな…悪趣味なことをして…楽しいか」

  「えぇ。だってお友達とかいないもの。これくらいの楽しみがないとね」

  (それはそうだろ。そんなお前に友達など出来るはずがない)

  内心で文句をぼやくと、ふと脳裏にある事が過ぎると調子に乗っているメディアを不適な笑みで告げる。

  「ふっ…なんとも…能天気なお嬢さんだ。だがあまり…調子に乗らない方が…身のためだと思うぞ」

  「ん?それは何故かしら?」

  「怖い閻魔大王が…見ているかもしれん」

  「怖い閻魔大王って…なんの脅し?」

  「さぁ…な」

  「変なの……まぁいいわ。さて今度は服を脱いで貰おうかしら」

  (これは…最悪のケースになりそうだ…)

  メディアの命令に背く事ができずに、気乗りがしないまま全ての服を脱いだ。

  少し顔を赤くして裸の状態で待機をしていると、まじまじとメディアが見てきた。

  「それにしても綺麗な体ね……肌も白いし、本当に彼女とかいないの?」

  「独身で悪かったな」

  「そんなことないゎ。むしろ大当たりよ。知能も高くて、美形だし、何より特別な香りがするもの」

  「だからその特別な香りとはなんだ?」

  「それはね…これの事よ」

  メディアは言葉で伝えずにそっとバルジの肩に抱き付いた。不可解な行動に疑問を感じた直後。

  「一体……何をす」

  ガリっ!!!

  「ぐぁぁぁぁ!!!」

  メディアは大きく口を開いてバルジの肩に噛みついてきた。

  突然の激痛に悲鳴をあげるが、そんな事はお構いなしにメディアはバルジの血を摂取している。

  チュー、チュー、チュー

  「ぐっ…っ…あ“…や…めろ」

  (くっ…これはまさしく吸血鬼だな。まさか実在するとは想定外だ。しかしまずい…このままでは本当にいずれ食われてしまいそうだ)

  バルジはより身の危険を感じていると、程よく血を吸ったメディアは肩から口を離した。

  「はぁ~あ~~~やっぱり美味しいわ。ねぇ、あなた特別な人種だったりしない?」

  「何故…そう思う?」

  「普通の血と全然違うわ。普通の血が水なら、貴方のは上等のワインみたいだもの。ねぇ…これから長い付き合いになるんだから教えてよ」

  「悪いが…褒められても…答えるつもりはない」

  「そう、なら言いたくなるように躾をしていかないとね」

  「笑えない…冗談だぞ…」

  全身で嫌な汗をかいていると、魔女のような笑みを浮かべるメディアが羞恥的な命令を下した。

  「命令よ、バルジ。私の目の前で自慰行為を行いなさい」

  「じ、自慰行為だと…冗談じゃ…うわっ!!」

  抗議の声を漏らすより先に体は勝手に動き出し、メディアの目の前に腰を掛け、足を広げて自慰行為を開始した。

  「くっ…くっそ…頼む…命令を……んっ…取り消して…くっれ…あっ」

  (勘弁してくれ…これでは本当に心が折れそうだ…頼むから…急いでくれ)

  意志とは裏腹に勝手に動く体に思わず甘い吐息が漏れる。必死に耐えている状態を楽しそうにメディアが眺めていた。

  「へぇ~堅物でもちゃんとできるのね。それにしっかりと勃起もしているし…厭らしい…」

  「お前…まさか…毎度…生け贄達に…こんな…事を…させて…いたのか」

  「えぇ、精子もちゃんとした養分だもの。それにこうして摂取するのも面白いでしょ?」

  「本当に…狂って…いるな。普通なら…間違えなく…精神異常で…病院送りだ」

  「好きに言ってちょうだい?それよりそろそろ出そう?」

  「どう…だろうな…状況が…最悪…だからな」

  「そう、なら手伝ってあげるわ」

  (手伝う…だと?おい…まさか)

  嫌な仮説が脳裏に過ぎると、動揺しているバルジ手を退けて完全に勃起した陰茎を咥え始めた。

  「ぐぁぁぁ!お前…何をして…あっ…」

  逃げ出したい状況でも体が言うことをきかない為、そのままフェラを続行している。

  クチュ…クチュ…クチュ…クチュ

  「んん?んんん?(ねぇ気持ちいい?)」

  (冗談ではないぞ…こんな事でイカされてたまるか)

  「ぐぅ…うっ…」

  必死に耐えている姿を見て、メディアは悪魔的な笑みをしながら上下のスピードを上げた。

  クチュ!クチュ!クチュ!クチュ!

  「うっ…あっ…よせ…やめ…ろ…あっ…あ“あ”あ“!!!」

  抗議の声も虚しく、あっという間に射精をしてしまった。

  体が痙攣を起こしている最中も、メディアは出された精子を余すことなく吸い上げて飲み込んだ。

  ゴックン!

  「ふぁ~~~ご馳走様」

  「はぁ…はぁ…あ…まさか…飲んだのか…」

  「えぇ、やっぱり精子も絶品だったわ。これはこれで血よりも美味しいわ。またあとでもう一杯頂こうかしら」

  「はぁ…はぁ…勘弁…してくれ…」

  「Trick or Treat」

  「はぁ…はぁ…you’re…so scary」

  「あら、意外としぶといわね」

  「部下の命が…掛かっているからな」

  「隊長も大変ね」

  「そう…かもな」

  ぶっきらぼうに返答をするとメディアは再びバルジを押し倒した。

  「ぐっ…」

  「さて…次は何をしようかしら…これならもっと屈辱的な事をさせないと駄目ね」

  (くそ……もうこれ以上は限界だ)

  再び不適な笑みに恐怖を感じていると、いきなり扉が開いた。

  [newpage][chapter:魔女VS閻魔大王]

  ドン!!!

  「そこまでだ!!!魔女のメディア。殺人罪、監禁罪の容疑により逮捕する。大人しく投降しろ!」

  ドアの前に立っていたのは、険しい表情でコスモガンを構えているローレンスだった。

  突然の登場に押し倒していたメディアが驚いた顔で怒鳴った。

  「貴方…一体誰なのよ!」

  「SDFケフェウス小隊隊長のローレンスだ。お前が捕らえたシリウス小隊の救出にきた」

  「SDFですって?!でも…情報も無いのにどうやって館に入ってこられたのよ?!」

  「情報か?それならそこに寝そべっている男に聞いたらどうだ?」

  「寝そべっている…男?まさか…バルジ、あなた何かしたの?!」

  動揺しているメディアがバルジを見ると、怒りに満ちた顔で怒鳴り始める。

  「ローレンス……今頃になっての登場は遅すぎるぞ!!一体どれだけ時間をかけているのだ!!」

  「すまん。色々と邪魔が入って予定より大分と手間取った」

  謝罪の言葉を漏らすも、全く悪びれていない顔にバルジが切れた。

  「お前……いい加減にしろよ!!!」

  時は遡り……ハロウィン列車に乗車する前日の夜のこと。

  ローレンスの自室で二人はチェスをしながら、明日の件の対談を行っていた。

  チェスの駒を移動させながら、呆れ顔でバルジがぼやく。

  「全く……今回ばかりはお前の面倒くさがりには呆れたぞ」

  「なんとでもいえ。どんな理由であれ仮装など御免だ」

  「子供みたいな事をいうな」

  「ふん。ところで…お前は今回の奇怪な事件をどう思う?」

  「なんとも言えん。放置した期間が長すぎる。正直全員が生きているかも危ういな」

  「確かにな。だが毎年4人ずつ行方不明者が発生しているということは、犯人もなにかしら手段を講じているのだろう」

  「手段か…一番考えられるのは薬物か?」

  「かもな。それか何かしらの監禁用の機械を使っているか…」

  「監禁用の機械?手錠とかか?」

  「例えばな。だが一人も逃げ出していない事を考慮すると、相当厄介な機械かもしれんぞ」

  「まさか…首輪でも付けているとかか。笑えないハロウィンだな」

  「確かにな。それで館に侵入が出来たとして、それからはどうするつもりだ?」

  「それは…地道に捜索するしかないだろう?」

  「地道にって…だがもし、シリウス全員が行方不明者同様で監禁用の機械で捕獲されたらどうするつもりだ?」

  「その場合は…流石に万事休すだな」

  「はぁ…相変わらず計画性のない奴だな」

  「そうでもないさ。ちゃんと計画はしてある。その為にわざわざこんな夜更けに尋ねたのだからな」

  意外な台詞に少し不信感を抱いたローレンスはチェスの駒を動かすのを中断した。

  「何?それはどんな計画だ?」

  「それは……これだ」

  質問の回答としてバルジはポケットからある者を取り出しチェス盤に置いた。

  それを受け取ると疑問を投げかけた。

  「なんだ…これは?」

  「盗聴器の受信用のイヤホンだ。これは俺の腕時計の盗聴機能と繋がっている」

  「ほぅ……だがそれが俺となんの関係がある?」

  「藤堂指令に依頼をしておいた。明日、特別列車861号の護衛に飛龍を出場させてくれとな」

  「……は?そんな計画聞いてないぞ?」

  「明日伝えるように言ったからな」

  「また勝手なことを…それで?我々は何をすればいいのだ?」

  「なに、監視員になってもらうだけだ。我々が惑星メーデイアの館に侵入をして、状況が芳しくなくなれば、腕時計の盗聴機能をオンにする」

  「つまり…俺に盗聴屋になれと?」

  「そうだ。それでリアルタイムで情報を入手して我々のバックアップをしてほしい」

  「それまた…無茶ぶりだな」

  「仮装の件のお返しだ。それにお前ならいかなる事にも対処出来るだろ?」

  「まぁ…善処しよう」

  「頼んだぞ。それと……チェックメイト!」

  「あ!くそ…今日は勝てると思ったのだがな」

  「ははは、何事にも油断大敵だぞ」

  再び現状に戻ると、コスモガンを構えているローレンスは状況の悪さに呆れ果てていた。

  「全く……すっかり飼い慣らされおって…みっともない」

  「誰のせいだと思っているのだ!」

  「そんな事よりもバルジ!わたくしの質問に応えなさい!!」

  「質問?あ~先程の件か。情報を流していたのは俺だ」

  「なっ…なんですって?!一体どうやって」

  バルジは渋々と左腕の腕時計を掲げて応えた。

  「この腕時計には盗聴機能が付いている。つまり…我々の会話はすべてそこのローレンスに筒抜けだったということだ」

  「腕時計…まさかそんな物にも仕掛けをしていたなんて…一体いつから流していたのよ?!」

  「それについては今後の行動の為にも黙秘させてもらう」

  「くっ……勝手な事ばかりして……ん?そういえば…館の警備をしているわたくしのバトラーはどうしたのよ?!」

  メディアが鬼の形相で怒鳴りつけてきた質問に、警戒しているローレンスがしれっと答えた。

  「あ~あのアンドロイドか。あれなら遠慮なく破壊をさせて貰った」

  「は、破壊ですって?!う、嘘でしょ?!」

  「事実だ。我々の要求に拒否をしたからな。それに所詮アンドロイドだ。大した問題ではないだろ」

  「よくもわたくしの大事なバトラーを…なら…生け贄達で応戦させるまでよ!」

  「それも無理だな」

  「なんでよ!」

  「ここに来る前に、首輪に妨害装置を付けたからな」

  「妨害装置?」

  「あぁ、それがある限りお前とのリンクは絶たれている。すなわち言いなりにもならんし、お前が死んでも爆発もしない」

  「そんな…」

  「さぁ、状況が理解出来たのならば、素直にお縄を頂戴しようか」

  再びコスモガンの銃口を向けると、万策尽きたメディアはバルジに命令を下した。

  「ううう…バルジ!命令よ!この男を今すぐに殺して!!!」

  「ぐっ……」

  その命令を聞いた体はゆっくりとベッドから立ち上がった。

  正面に裸の状態で立っている姿をみて、ローレンスは見るに耐えない顔で呟いた。

  「はぁ……やはり部下達をつれて来なくて正解だった。お前…今、相当無様だぞ」

  「だから…誰のせいでこうなったと思っている!」

  顔を真っ赤にして抗議してくるバルジに苦笑しながら応えた。

  「俺のせいか?それは随分な言われようだな。シリウスがこの有り様では総司令も泣くぞ」

  「ほざけ!言っておくが、体が全く言うことを効かん。変に油断するなよ」

  「はぁ…あのな。すっぽんにやられるほど間抜けではない」

  二人が会話しているのが気に入らないのか、メディアが再度命令を出した。

  「なんでもいいから早く殺して!!!」

  そのかけ声と共にバルジはローレンスに襲いかかった。

  (なんとも無茶ぶりな命令を下すな。武器を持たない状態ではローレンスを殺すことはできんだろうに。まぁ…せめて悪あがきで抵抗をしてみる…か)

  バルジは戦況からなるべく体に負荷を掛けて大ぶりに殴り掛かるように仕向ける。

  一方ローレンスはその見るに堪えない姿を見て、呆れ顔でコスモガンをホルスターへ戻した。

  殴り掛かった腕を交わしながら、背後に回り首に腕を回し絞め技を決めた。

  「ぐぁ…ぁ…ロー…レンス」

  「辛いが……少しだけ我慢しろ」

  ローレンスはバルジの体から力が抜けるまで、首を圧迫する絞め技を続けた。

  (おいおい…今日はこれで2度目だぞ。だが…流石ローレンスだ。全く緩くない。だがまずい。このまでは気絶してしまうぞ…)

  「ぐっ…ロー…レンス…もう…限…界」

  「もう少しだ……気をしっかり持てよ」

  無責任とも感じる台詞に内心怒りが満ちる最中、いよいよ思考が停止してきて自然と体から力が抜けてきた。そのタイミングでローレンスはポケットからあるものを取り出し、腕を外して首輪に装着させた。

  装着が完了すると、ゆっくりとバルジを解放した。

  「よし……これでもう大丈夫だ」

  「げほっ…げほっ…お前……危うく…窒息…しかけたぞ」

  「首輪を無効化してやったのだ。感謝されても恨まれる筋合いはない」

  「全く…恐ろしいやつだ。だが、感謝する」

  「ふん。あとはあの魔女だな」

  「あぁ」

  二人がメディアを眺めていると、絶望の顔をしていた。

  「そんな…バルジまで…私のものでなくなるなんて…」

  「別にお前のものになったつもりはない」

  「でも…こんなの…あんまりよ」

  武器も持たないメディアにはどうすることも出来ずその場に座り込んでしまった。

  戦意を消失したメディアにローレンスが電子手錠を取り出しながら向かい、バルジは服を着衣した。

  「メディア・テスタロッサ。殺人罪・監禁罪で現行犯逮捕する」

  カチャン…

  拘束が完了すると、着替えを済ませたバルジがメディアに語り掛けた。

  「メディア。悪いが君のやったことは歴とした犯罪だ。しっかりと罪を償って貰うぞ」

  「無駄よ…どうせ研究対象になって終わりだわ」

  「そうかもしれん。だがこれも全て君が蒔いた種だ。希少人種の君は無闇に表に出るべきではなかった。例え餓死しそうでも…影に隠れているべきだった」

  「あなたって…意外と非道なのね。あなたにはわたくしの苦しみは理解出来ないわ」

  「そうだろうな。だが多少は心得ているつもりだ」

  「そう…だったら…なぜわたくしの邪魔をしたの?」

  「それは…死んだ人達の無念を晴らす為だ。お前に食われてしまった銀河鉄道の乗客やこの星の人々のな」

  「そう……やっぱりバルジさんは優しいのね」

  「どうだろうな。まぁ…精々残された時間を懺悔に当ててくれ」

  「………」

  メディアとの会話を終えるとバルジから少し安堵の息が漏れた。

  「ふぅ…さて、これで事件は一件楽茶だな。後はこの首輪を外して帰還するだけか」

  「そうだな。それでその首輪の鍵はどこにあるのだ?」

  「なんだ?聞いておらんかったのか?」

  「あのな。こちらも色々と手配をしなければならんかったからな。全て聞いてはおれんだろ」

  「全く…所有者はメフィストというバトラーだ」

  「メフィスト?白髪のバトラーか?」

  「黒髪の短髪の方だ。お前、先程に破壊をしたのだろう?」

  バルジの問いかけにローレンスは顔色を悪くした。

  「いや…そんな男は何処にも居なかったぞ」

  「なに?!そんな馬鹿な…ちゃんと捜索したのだろうな!」

  「見くびるな!隅々まで捜索済だ」

  「なら…何故おらん?」

  「それがわからんのだろう!」

  二人が言い合っていると館が大きく揺れ始めた。

  「な…なんだ!この揺れは?!」

  「地震ではなさそうだが」

  あまりの揺れに驚いていると、扉のところに一人のバトラーが立っていた。

  「メディア様、お待たせいたしました」

  「メフィスト…来てくれたの?」

  突然の登場にローレンスがコスモガンを構えるが、もの凄いスピードで二人の間をすり抜けていった。

  ((速い!!!))

  慌てて後方を振り向くと、すでにメディアの元へ到着をしていた。

  「なんて…速さだ」

  「バルジ、感心している場合ではないぞ!」

  二人が動揺している中、メフィストはメディアの手錠を破壊し優しい口調で告げた。

  「メディア様、わたくしはいつでもあなた様の味方です。あなた様を銀河鉄道管理局などには渡しません」

  「メフィスト…でももう逃げられないわ」

  「ご安心してください。例えあの世でも必ずお側におります」

  「そう…ありがとう、メフィスト」

  二人の話を聞いて、ローレンスは危機感を感じた。

  「あいつら…まさかこのまま死ぬつもりか!」

  「どうやらそのようだな」

  「お二方、誠に申し訳ありませんが我々はこの館と共に全てを終わらせようと思います。あなた方の付き添いは不要です。すぐに退場してください」

  「なにを勝手な事を!!!」

  「待て!ローレンス」

  慌てて駆け寄ろうとしたが、バルジが制止した。

  「バルジ!なぜ止める?!」

  「二人の意志が固い。無理に連れだそうとすれば俺たちも道連れになるぞ」

  「だからって放置するというのか!!」

  バルジが再度メディアを見つめるとまるで何かに疲れて安らぎを求めるような顔をしていた。

  その脱力した雰囲気にある思いを察したバルジは苦渋の決断をした。

  「そうだ……それが一番いい」

  「なっ…お前っ?!」

  抗議をしようと振り向いたが、どこか悲しそうな顔をしている姿にそれ以上言葉が出なかった。

  バルジの決断を聞いたメディアは抱きかかえているメフィストに命令をする。

  「メフィスト…バルジさんに首輪の鍵を」

  「畏まりました」

  メディアの指示通りにメフィストは首輪の鍵取り出しバルジに投げた。

  バルジが鍵を受け取ると、最後にメディアは悲痛な思いを叫んだ。

  「バルジさん、色々と酷いことをしてしまってごめんなさい。そして…わたくしの愚かな所業を…止めてくれて…ありがとうっ」

  涙を流しながら告げた言葉に二人は返す言葉がなかった。

  次第に揺れが酷くなり部屋が崩れ始めると、メディア達の姿が見えなくなった。

  「………ローレンス。一先ず避難だ」

  「了解」

  ローレンスは隊員達にも連絡をして館から避難をした。

  [newpage][chapter:生き物の法則]

  避難後あっという間に館は崩れ去り跡形もなくなった。

  「終わったな、バルジ」

  「あぁ…意外に呆気なかったな」

  崩れた館を見ていると、背後からシリウス一同が声を掛けた。

  「「「バルジ隊長!!!」」」

  「ん?お前たち…無事だったか。有紀、負傷者はいるか?」

  「全員無傷です。バルジ隊長は?」

  「俺も無傷だ。とりあえず全員無事のようで良かった」

  「はい。あっ!そういえばさっきピンツくんを保護しました」

  「そうか、彼は無事か?」

  「はい。外傷もなく無傷で解放されていたようです」

  「そうか、本当に興味がなかったのだな。まぁ何がともあれ、怪我が無くて良かった」

  「はい…」

  有紀と二人で安堵していると、デイビットが尋ねてきた。

  「ところで、なんでケフェウス小隊が状況を把握して突入出来たんですか?」

  「あぁ、それは事前にローレンスと打ち合わせをして、盗聴機を付けていたからな」

  「え?!そんなのしていたんですか?」

  「あぁ、万が一我々が罠に嵌まって全滅した時の為にな。用意して置いて正解だった」

  「へぇ……てか、そうなら先に言ってくださいよ!」

  「なにを言っている、いざという時の切り札を口の軽いお前らに教えられる訳がないだろ」

  「あ…確かにそうっすね」

  頭をかいて納得をしているデイビット。

  すると今度はルイがずっと気になっていた事を質問してきた。

  「あの、隊長。メディアさんが人食い人種っていうのは本当だったのですか?」

  「あぁ…本当だ」

  「じゃあ…私たちが食べていたあのお食事ってまさか…」

  ルイが顔色を悪くして静かに尋ねたことに間髪入れて答えた。

  「安心しろ。あれはこの星特有の動物の肉だ。貴重な血肉をお前らに振る舞うわけがないだろう」

  「そうですか!はぁ~~~良かった。もし、あれがそうなら私絶対におかしくなっていたもの」

  (こいつらが騙されやすくて助かった。これは墓まで持っていく極秘だな)

  渾身の嘘に騙されてくれたルイを見て心の中で安堵していると、再度有紀が尋ねてきた。

  「あの…バルジ隊長、俺たちはこれからどうするのですか?」

  「行方不明者は容疑者メディアにより全員殺害。容疑者も死亡を確認。任務はこれで完了だ。この星に待機する理由はないし、飛龍でディスティニーに帰還させて貰おう。別に構わんよな、ローレンス」

  「あぁ、我々も帰還するからな」

  「「「了解」」」

  「ところで隊長。そろそろこの首輪外したいんですが…」

  デイビットが首輪の取り外しを要望すると、バルジが答えた。

  「あ~すまん、すっかり忘れていた。よし!順番に外していくぞ」

  鍵を取り出してデイビットの首輪を外そうとすると、すかさずローレンスが鍵を奪った。

  「ローレンス?!」

  「それは却下だ」

  「「「「はぁ?!」」」」

  思いがけない発言にシリウス一同が抗議をした。

  「ちょ、なんでですか?ローレンス隊長!!」

  「いくらなんでもみっともないですって!」

  「理由を教えてください!」

  「何故だと?お前ら…今回どれだけバルジの足を引っ張ったと思っている?」

  「「「へ?」」」

  「イヤホンで大方聴いていたぞ。SDFともあろう者が女一人に眠らされてしまうとは情けないにも程がある!少しは反省しろ!!!」

  ローレンスの話を聞いて、バルジも少し納得してしまった。

  「確かに…それは一理あるな」

  「「「バルジ隊長まで?!」」」

  「ローレンスの指摘もご尤もだ。せめてディスティニーに到着するまでは我慢しておけ」

  「「「そんな…」」」

  トホホという表情をしている有紀・デイビット・ルイ。

  こうしてシリウス一同は飛龍にてディスティニーに帰還をすることになった。

  帰還途中、飛龍の隊長室にてローレンスはバルジの首輪を外していた。

  カチャ!

  「よし、これでいいだろ」

  「すまんな」

  首輪が外されて解放された首を撫でながら安堵の息を漏らす。

  「ふぅ…あ~すっきりした。やはり首輪をされるというのは不快なものだな」

  「それはそうだろ。好んでつけるのは変質者くらいだ」

  「確かにな。真面で良かったよ」

  「全く……呑気な奴だな。ほら、疲れただろ?俺のおごりだ」

  雑談をしながら、気を使って珈琲を用意して差し出した。

  「お!気が利くな、ありがとう」

  疲れ切った体で静かに啜っていると、カップを持ちながらずっと疑問に感じていた事に触れる。

  「それにしても、なぜあの二人の救出を断念したのだ?」

  「なに、二人を連れてでは避難が困難になると判断しただけだ」

  表情一つ変えずに返答すると、瞼を細めながら疑いの視線を向けた。

  「…違うな」

  「なに?」

  「お前は救える命が目の前にあるのに放置するような性格ではない。常時なら例え火の中でも救助したはずだ」

  間髪入れずに否定する様子に見抜かれたかという顔で苦笑した。

  「ふっ……やはりお前は勘が鋭いな」

  「無駄な嘘は不要だ。理由を聞こうか」

  「そうだな……理由をつけるとしたらメディアの気持ちに同情したのだろうな」

  「同情だと?あの人食い殺人鬼にか?」

  「確かに彼女のやったことは許されることではない。法に則り罪を償うべきだろう」

  「そう思うのだったら…」

  「だが、彼女の行動はある意味で生き物の法則でもある」

  「法則だと?」

  「あぁ、生物としての絶対的な法則…弱肉強食だ。俺たちも所詮生き物…動物の命を奪い、それを自身の糧にしている。彼女の人種はその糧が人間だったのにすぎない。もしも俺が同じ立場ならば、同様なことをしていたかもしれん」

  話を聞いて一定の理解はしたが、それを自身に当てはめることは間違っていると感じていた。

  「それは…半分は不正解だな」

  「なんだと?どこが不正解だ?」

  「お前が同じ立場ならばの下りだ。お前はあの女と同じ事はしない」

  「なぜそう言い切れる?」

  「お前は命の大切さを理解している。同じメンタリティの相手ならば考慮しないはずがない。必ず…傷つけずに生きる方法を模索するはずだ」

  「それでも方法が見つけられなかったとしたら?」

  「お前の事だ。誰にも知られないまま自決するだろうな」

  「なるほどな。確かにそうかもしれんな」

  「まぁ例え話は別にしても、あの女のやり方は間違っていると思うがな」

  「そうだな…だとするとあの決断は俺の我が儘だったのかもしれん」

  「我が儘?どういう意味だ?」

  再び不思議そうに尋ねると、バルジは上を向きながら言葉を詰まらせて告げた。

  「魔女のような所業をする血の呪いから……彼女を早く解放させてやりたかった」

  何処か悲しそうな言葉からバルジ自身の本音を理解した。

  たとえメディアが逮捕されていたとしても、人食い人種には変わりない。明るみにでた希少人種は研究施設に送られ非人道的な実験をされる可能性がある。それが犯罪者ならば尚のこと。その未来を先読みして本人達が命を絶つことを望んだ瞬間にそれを受け入れる判断をした。

  SDFとしては失格とも思える決断でもローレンスは責める事は出来なかった。

  「はぁ……全く。お前はお人好しすぎだな」

  「そ、そうか?」

  「あぁ、手が焼くほどにな。だがその人間らしさは嫌いではない」

  少し呆れ顔の中にも判断を理解してくれたことに嬉しさを感じると頬が少し緩んだ。

  安堵の笑みを溢していたバルジだったが、次に放たれて一言で事態が一変する。

  「それはそうとお前……俺に何か言うことがあるのではないか?」

  「ん?なにかあったか?」

  疑問の表情をしている姿にローレンスは毒のある鋭い声で追及する。

  「随分と……あの女とお楽しみだったではないか?」

  「っ!!あれは…その…首輪の効果のせいであってだな…」

  「ほぅ~心は蚊帳の外と言いたいのか?それにしては射精までして随分と気持ちよさそうな声がイヤホンから聞こえたぞ。お陰で全く任務に集中が出来なかったではないか」

  「まさか…救援が遅延したのは、俺のせいだと言いたいのか?!」

  「あの女の台詞ではないが、もう少し自身のことを自覚した方がいいぞ」

  「自覚って…これでも十分に理解をしている!」

  動揺しながら言い換えしてみたが怒りに満ちた恋人は大きくため息をつきバルジの横に座った。

  「ろ……ローレンス?」

  「無自覚にも程がある…」

  手に持っていた珈琲を奪って机に置き、バルジの後頭部を押さえながら唇を奪った。

  「んっ?!…ん……んっ…」

  突然の接吻に対して、唇を離した瞬間にバルジは抗議した。

  「ぷはっ…お前…任務中だぞ!」

  「確かにな。だが怖い閻魔大王を怒らせたのは誰だ?」

  「だから…あれは俺のせいでは…」

  「言い訳は結構だ。安心しろ、流石に飛龍でキス以上の事はしない。ただしディスティニーに到着するまで自我を保てるかは保証できないがな」

  「お前…立ちが悪いぞ…んっ!」

  抗議も虚しく再び接吻をするローレンス。長い接吻を受けていると、次第に甘い吐息が漏れてきた。

  「ふっ、んんっ♡ちゅるっ、ん、ん♡」

  程よいところで離すと、目の前には瞳をうっとりとしたバルジがいた。

  あまりの蕩けた表情にローレンスは耳元で意地の悪い台詞を告げた。

  「Trick or Treat」

  「you’re…so scary」

  (これは…本当に恐ろしい)

  その後、ディスティニーに帰還するまで不滅のシリウスが自我を保てたかは定かではなかった。

  【完】

  [newpage][chapter:没エピソード]

  バルジがメディアに連れられていった後の事。

  シリウス一同が監禁されている地下室のドアが突然叩かれた。

  ドンドン!ドンドン!!ドンドン!!!

  「なん…だろ?」

  「ひょっとして…早くも隊長が心折れたんじゃ…」

  「嘘でしょ…」

  有紀・デイビット・ルイが謎の現象に恐怖を覚える中、今度は発砲音が聞こえる。

  バキューン!バキューン!  ドカン!

  発砲により脆くなったドアが勢いよく開くと、そこにはやれやれ、といわんばかりの露骨な表情したをキムがいた。

  「はぁ……いるならドアを開けたらどうだ?」

  「「き、キム?!」」「キムさん?!」

  顔を見るなりシリウス一同が驚いた表情で声をあげるとデイビットが尋ねた。

  「な、なんでおめぇがいるんだよ?!」

  「なんでって……バルジ隊長から聞いていないのか?」

  「へぇ???」

  未だに驚いているシリウス一同を見てキムはある程度で状況を察した。

  (この顔…恐らく伝えていないな。いや…わざと言わなかったって言う方が正解か。バルジ隊長らしい)

  「はぁ……たく、そういうところは相変わらずだな。ローレンス隊長、シリウス一同全員無事です」

  あまり間抜けぶりにため息をついたキムは後方にいたローレンスに状況報告をした。

  「うむ。とりあえずシリウスの馬鹿共は無事だな。さて、後はバルジの救出か」

  ケフェウス一同と相互確認をしていると、さらに後方から声が聞こえた。

  「あ、あなた方は一体何者ですか?!」

  そこには食事を持ったバトラーのフランツが立っていた。

  (この声……確かこいつらを騙していたバトラーのフランツとか言ったな)

  フランツを敵と認識したローレンスはコスモガンの銃口を向けて問い質した。

  「お前はメディアのバトラーだな。バルジは何処に連れて行かれた?」

  「バルジ様はメディア様のお部屋だ。それよりあなた方は何者ですか?」

  「我々はSDFケフェウス小隊だ。潜入任務についていたシリウス小隊を救出に来た」

  「SDFだと?!馬鹿な…我々のセキュリティは完璧だったはずなのに」

  「あの程度で完璧とは恐れ入る。そんな事よりそのメディアの部屋に案内して貰いたいのだが?」

  「ふん。バトラーの私がメディア様の楽しみを妨害するはずがなかろう!」

  「楽しみ……」

  (なんだ…なんだか嫌な予感がする)

  突然全身に冷気が漂ったローレンスは恐る恐る再び耳のイヤホンをオンにした。

  通信回線が開くとイヤホンからとんでもない会話が流れ始めた。

  『さぁ、バルジ。足が疲れちゃったわ…舐めてマッサージしてちょうだい』

  『うふふ。思った以上に上手ね』

  『こんな…悪趣味なことをして…楽しいか」

  『えぇ。だってお友達とかいないもの。これくらいの楽しみがないとね』

  『俺から…ひとつ忠告をしてもいいか?』

  『な~に?』

  『あまり…調子に乗らない方が…身のためだと思うぞ』

  『なんで?』

  『怖い閻魔大王が…見ているかもしれん』

  『怖い閻魔大王って…なんの脅しかしら?』

  『さぁ…な』

  『変なの。まぁいいわ。さて今度は服を脱いで貰おうかしら』

  メディアの寝室で行われている破廉恥な会話を聞いてローレンスは思わず硬直しまう。

  (な、なんだこれは?!一体あいつは何をしてるのだ!それに怖い閻魔大王って…まさか俺の事か?!)

  色々な感情が絡み合う中、徐々に不機嫌な表情に変わるローレンスを見て、フランツが叫んだ。

  「おい!聞いておるのか?人にコスモガンを構えておいて放置するとは無礼であろう!」

  「…………黙れ」

  「な、なんだと?!」

  怒りの感情が込み上げているローレンスが素っ気なく返答すると、フランツも怒りの声を上げる。

  フランツと会話している最中でも、バルジとメディアの会話がイヤホンに流れる。

  「そんな下らないことを言っていないで、先程の質問に答えろ」

  『そう、なら言いたくなるように躾をしていかないとね』

  「ふん…だから…言ったじゃろ!答えるつもりはない!」

  『笑えない…冗談だぞ…』

  「それでは、お前は邪魔なだけだ。ここで始末することになるぞ」

  

  『命令よ、私の目の前で自慰行為を行いなさい』

  「いくら脅されても答えるつもりはない!」

  『う…んん……くっ…あっ』

  会話途中に流れる喘ぎ声に怒りが耐えきれなくなり、眉をピクピクしながら冷徹な声で告げた。

  「そうか……ならば死ね」

  バキューン!

  「がっ…ぁぁ」

  バタン!

  ローレンスは無表情のまま容赦なく引き金を引き、フランツを破壊した。

  その様子を見ていたデイビットと有紀が思わず呟いた。

  「うわ……ローレンス隊長容赦ねぇな」

  「あぁ…全く躊躇なかったな」

  唖然としている二人に怒りの籠もった声でローレンスが怒鳴った。

  「おい!お前ら!いつまでも間抜けズラするな」

  「「「りょ、了解」」」

  突然の怒号で背筋を伸ばすデイビット、有紀、ルイ。

  完全にお怒りモードになっているローレンスにコーリーとピエールが少し怯えなら今後の確認をする。

  「あの…隊長。今バルジ隊長の腕時計の電波の逆探知に成功しました」

  「これからバルジ隊長の救出に向かいますか?」

  「そうか、了解した。だが、お前達は来るな」

  「「は?」」

  「バルジの救出には俺一人で向かう」

  「な、なぜですか?!」

  「複数で対応した方がよいのではありませんか?」

  コーリーとピエールが抗議の声を上げると、何処か不機嫌を凝縮した目で睨んだ。

  「あの…ローレンス隊長?」

  「ど…されましたか?」

  「命令だ。おまえらはこのまま館を脱出しておけ。バルジは俺一人で救出に行く」

  「だから…それは…」

  「五月蠅い!!黙って復唱しろ!!!!」

  「「は、はい!我々は館から脱出をしておきます!!」」

  二人が背筋を伸ばして復唱をしている姿を見て、シリウス一同は悟った。

  (ありゃ…ローレンス隊長不機嫌だな)

  (もしかして…メディアさんの言動を知っているのかしら…)

  (メディアさん…無事ではすまないかもな…)

  その後、一同と別れたローレンスは怒りの感情のままメディアの部屋に向かった。

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