バイオレンス・ラブ・ビースト《サイドA》

  はじめまして。

  ワタシは・・・いや、まだ名乗らないでおこう。まずは登場人物を紹介しなければいけないね。

  最初は・・・33(サーティスリー)

  ウサギのメスであの子に1番執着する獣人の1匹。言うなれば【暴力変態ウサギ】だ。

  言葉が悪い?本当のことさ。

  33は情報屋で稼いだ金をあの子に貢ぐがそれ以外のヤツにはすぐ手が出る。

  次に行こう。

  ネコのメスであの子を助手として雇ってる獣人の1匹、28(トゥエンティエイト)。彼女はそうだな、【ヘビースモーカー】。タバコとコーヒーが手放せないようだし。理由は・・・まぁいいか。

  どんどん行こうか。

  イヌのオスであの子を妹みたいに可愛がってる獣人の1匹。16(シックスティーン)。彼は【オネェヤクザ】。彼は優しそうだが気をつけろ?裏社会のボスみたいだ。

  最後に、あの子だ。

  ・・・そうだな、女性らしいし、♡♡と呼んでおこう。彼女は急に現れた謎の存在。そう、謎なのさ。以上がこの登場人物だ。

  細かいことは気にするな。

  では、始めようか。

  ♡♡は突然現れた。まるでそう、空気のように違和感なく、誰もが受け入れることができた。

  最初に出会ったのは33(サーティスリー)。とても危険なウサギだが何故か彼女には心惹かれるものがあったようだ。

  彼女を褒め、従い、愛し、貢ぎ、

  ♡♡への愛は日に日に膨れて破裂しそうな程だ。

  次に出会ったのは28(トゥエンティエイト)。知的なネコだ。人手不足で助手を探す中♡♡を見つけ、テキパキとした♡♡を気に入り助手に採用。彼女に絶大なる信頼を置いる。

  最後に出会ったのは16(シックスティーン)。困っていた♡♡を助けたのがきっかけで、まるで妹のように可愛がる明るいイヌだ。

  ♡♡を守りたいと感じているようだね。

  以上が3匹と♡♡の出会いだ。

  ん?簡易すぎる?ははっ、それくらいがいい。次に向かおうか。

  君たちは33.28.16の出会い話を聞いて何を感じた?

  ・・・・・・・・・・・・・・そう、愛さ。

  33は鍾愛

  28は信愛

  16は守愛

  といったところだろうか。素晴らしいね。どれも深い愛だ。

  それがもし変わってしまうと・・・どうなるか気にならないかい?

  ・・・そうか、まだ気にならないようだね。では話を続けよう。

  ♡♡は彼女、彼らに信頼を示すためにあだ名を付けたようだ。

  33:ミミ

  28:ニャー

  16:イム

  実に子供らしいあだ名だ。

  ん?♡♡は子供かって?

  ・・・さぁ?分からないな。

  あだ名はあまり良くないが、3匹が認めているなら構わんだろう。

  愛が育むのであればね。

  ワタシかい?私は・・・あだ名であれば【ゴク】と呼ばれていたよ。

  もっと3匹を知りたい?

  ではディープな部分に触れようか。

  あまり触れられたくない部分、欠点だ。

  33は仕事で裏切られた過去があってね。周りを全く信頼してない、不信だ。

  28は少しのストレスで重度のパニックを起こす。そのためか、安定剤はタバコとコーヒー。

  16は醜いのをとても嫌う、美しくなければと思い込みが強いようだ。

  つまり、3匹はストレスにかなり弱い。ははは。いや、失敬。つい・・・ね、

  ♡♡と彼女、彼らは平々凡々な日々を送っていたよ。欠点を受け入れたりね。

  例えば33が♡♡の為にスイーツ選びに難儀になった時もあった。

  情報屋なのに♡♡のことはポンコツらしい。

  28がパニックを起こした時は♡♡が優しく宥めていたこともあったよ。

  16がよく絡まれる♡♡を助けたことも、16は裏社会のボスらしいから目を合わせただけで輩は逃げていってたな。

  つまり順調に友愛を育んでいったんだ。

  ん?♡♡についての話・・・か。

  容姿、年齢、それと・・・何者なのか?

  ほう、随分と熱心だ。

  では、答えようか、

  容姿は女性のようだね。年齢は・・・聞かないでおこうか。女性に失礼だよ?

  最後に何者なのか・・・

  うーん、♡♡はいつもぼやけた夢を見るみたいだ。同じ天井の景色の夢を。何故だろうね?

  ・・・満足かい?

  長々と話をしたが、私も飽きてきたよ。

  今度は少しワタシの実験話に付き合ってもらおうかな・・・・

  準備はいいかい?

  よろしい。

  では、お話しよう。

  まず、君にはこの全貌をお話しないといけないね。

  ワタシは【ゴク】とあだ名を呼ばれていたと言っていただろ?それは私が【59】という登場人物だからだ。

  ん?転生もの?異世界もの?ははは、ここは現実だよ。れきっとしたね。・・・・・・混乱しているね?何が言いたいんだって顔をしている。

  私は現実では【獄 英智】と名乗っている。プログラマーであり心理カウンセラーだった。

  君たちに話していた33.28.16は今発売中のゲーム「バイオレンス・ラブ・ビースト」という恋愛ゲームの異分子、つまり特定のエラーゲームの登場人物さ。

  私の実験はゲームに人間の意識を持ってきたらどうなるか・・・だ。

  さぁ、分かってきたかい?♡♡は何者なのか。

  そう、♡♡は私の患者。

  【藤城 愛】というまだ中学生の女の子だ。彼女はいじめのせいで精神を病んでしまい入院していた。彼女の親は私にまた彼女を元気にして欲しいと言われてね。そこで思いついたのさ、彼女に人為的な愛を与えようと。

  プログラマーだった私はあるソフトを手に入れた。それが恋愛ゲーム「バイオレンス・ラブ・ビースト」、彼女は動物が好きだと言っていたからピッタリだと感じた。

  だが、計算外だったのは私が手にしたゲームはエラーゲームだったことだ、従来の登場人物は居なく、代わりに33.28.16がすでに存在していたんだ。

  焦ったが、仕方なくプログラムでなんとか3匹が藤城さんに近づくよう、感情を向けるように仕向けた。

  そして藤城さんの頭に装置をつけ意識をゲームに持っていった。

  ・・・・・・・・・成功だった。

  プログラム通り3匹は藤城さんに近づき、交流を開始、愛を育んでいった。私も【59】としてゲームに入り様子を見ていたが、みるみる藤城さんは明るくなっていった。精神が安定したのだろう。

  実験は大成功。もう、装置から外そう・・・とはしなかった。

  心理カウンセラーでありながら私はある実験を試したくなった。

  愛情を全て憎悪に変換した時3匹は藤城さんにどのような行動を起こすのか、藤城さんは再び精神崩壊を起こすのかと。

  ひどいだろう?そう、私はひどい実験を起こそうと準備を整えた。

  ん?本当にやったのかって?

  ・・・ははは、やってやったよ。

  聞いてくれるかい?

  まず私は【59】として33.28.16と♡♡に接触をし、プログラムで作り出した部屋に誘い込むことに成功した。

  そこからは簡単、事前に組み込んだシステムを起動し、愛情を憎悪に変換したのさ。凄かったよ?あんなに藤城さんを愛していた奴らが一転して嫌いだしたんだから、

  暴力、嫌悪、否定、罵倒・・・

  全て精神に来るものだ。きっと奴らには藤城さんは恐怖の存在に見えたのだろう。藤城の顔は驚いていたよ?まるで裏切られたような顔をしていた。

  そう、例えるなら彼女が経験したいじめ・・・いやそれ以上のことが起こっているのだ。「やめて!」「ごめんなさい!」「許して!」とか叫んでたな。

  顔はアザや傷だらけ、顔は涙と鼻水でくしゃくしゃ・・・もう、酷いもんだよ。

  藤城さんの精神崩壊するのに時間はかからない、そう思っていた時、・・・画面が急に消えたんだ。

  何故かって?奴らが上手だったってことだよ。

  まさかの自我を持っていたんだ。

  私はすぐに電源をつけ直したが、画面は部屋に誘い込んだ場面まで戻っていた。つまり、ゲーム特有のセーブ機能を活用されたのさ。

  セーブデータは2つあった。1つは一部始終を記録されたもの、1つは誘い込んだところまでを保存されたものだった。

  そこからはまるでジェットコースターのようだったよ。

  奴らは一部始終を記録されたセーブデータを翻訳し、全世界に私の現実の顔つきで流しやがったんだ。

  【獄英智は悪徳カウンセラー】【史上最悪の実験を行った。】

  【獄英智を野放しにするな。】

  様々だ。・・・藤城さん?奴らは一切その情報だけは載せなかった。

  私は急いでデータを改ざんしようと動いたが、一部始終のデータはすでに消えていた。良かった?ははは、それも奴らの策だよ。SNS、君もしてるだろ?

  本データを消したところで誰かはデータをコピーし、別の誰かに渡る。つまり・・・・終わったんだよ。社会的にね。デジタルタトゥーをされたんだ。

  藤城さんは大丈夫なのかって?

  言っただろう?奴らが上手だって。奴らは一部始終のデータを抹消していた。つまり藤城さんの中ではなかったことになっていたのさ。無害だ。

  ははははは、所詮私は人間だ。電子の世界の存在には手足が出せないということだ。。

  その後は分かるだろ?そのまま警察に逮捕され心理カウンセラーの資格を剥奪。社会的、信頼も地に落ち、裁判でも有罪だ。

  救いようがないね。

  問題の「バイオレンス・ラブ・ビースト」は破棄・廃盤とされ、奴らも消滅した。私の作ったプログラム達もホワイトハッカーによって消されたよ。

  ん?おぉ、今気づいたかい?じゃあこれは一体、何なのかという疑問に。

  これはいままでの記録だよ。私のね。君はこの本を手に取った。きっと最初はただの興味本位だっただろう。

  これを読んでどう思った?

  何とも?それとも・・・

  まぁ、人それぞれだ。

  だが、思い出して欲しい。

  「バイオレンス・ラブ・ビースト」に【59】という登場人物を作ったということを・・・そして私はこんな大掛かりな実験を一人で出来たと思うかい?

  そう、「バイオレンス・ラブ・ビースト」はまだコピーであるが存在する。

  私の助手が持っているんだ。それさえあればまた実験が可能で・・・・・・・・

  グシャ・・・