導かれし者達~ヘブンリー・スウィフトメア

  [chapter:序章]

  デスパレス。

  その地は地獄の帝王を奉じる魔物達の居城となっていた。

  そして、帝王に仇なすと言う「導かれし者達」の出現は魔物達の焦りと共に、一日も早い帝王の目覚めへの思いをつのらせていた。

  しかし、「導かれし者達」もまた帝王の手がかりを追って行動を開始していた……。

  デスパレスから少し離れた静かな森の中。

  穏やかに流れる川のせせらぎも加えるととてもではないがすぐ近くに魔物達の居城があるとは思えない。

  その中で四人の女性達が裸身をさらして立っていた。

  カールさせたオレンジ色の髪が特徴的な活発そうな女性。

  姉妹らしく共に腰まで伸びた紫の髪と褐色の肌が印象的な二人の女性。

  そしてふわりとした緑の髪が鮮やかに映える女性。

  サントハイムの王女アリーナ、モンバーバラのジプシー姉妹マーニャとミネア、そして天空の勇者の血を継ぐと言われるソフィア。

  それぞれの目的の為に旅を続けながら文字通り運命に「導かれて」集った者達。

  そんな彼女達は今なぜかこうして一糸まとわぬ姿で集っていた。

  もちろん他の仲間達はまた別の場所で待機している―彼女達の現状については知るよしもないが―。

  もともと肌を広く見せる衣装で艶やかに踊るのを得意とするせいかほぼ違和感なくその褐色の肌を惜しげもなくさらし、今にもその身をひるがえし紫の髪をなびかせて踊りたそうにしているマーニャ。

  姉に比べれば衣装も気質も控えめだが、それでも奔放に飛び回りそうな姉を抑える様に静かに肌を晒し、姉とは対を成す花二輪となって立つミネア。

  武闘家として鍛えているとは言え筋骨隆々と言うわけでも無く、「おてんば姫」の愛称にふさわしい闊達さと曲がりなりにも王族としての品を感じさせるしなやかで機能的な肢体を見せるアリーナ。

  その表情は恥ずかしさと何かうずうずとした感情が入り混じっているようにも見える。

  そしてこの中では一番恥じらいを隠しきれない雰囲気なのがソフィアだ。

  天空の血筋を引く存在であるかどうかは関係なくその肌と姿は剣を持ち先陣を切って戦うにしてはその肌は白く、それでいて凛としている。

  アリーナが野を駆ける美しき荒馬ならソフィアはさながら気品ある乗馬用の馬と言う所だろう。

  その肌を腕、そして手にしている何らかのアイテムで恥ずかしげに隠しつつも何かを決する様な顔で一同を見回す辺りはさすが勇者と言う所だろうか。

  せせらぎも聞こえる木々の中で裸でたたずみながら何らかのやりとりをしている四人の女性達。

  光景だけ見れば水浴びや木陰で休みながら世間話でもしているようにも見えるが、魔物達の居城を前にした勇者達の姿としては無防備すぎる。

  そんな中、ソフィアが顔を赤らめながら手にしていたアイテムー変わった形の杖を掲げる。

  それに合わせて他の三人も適度に距離を置きながらソフィアの近くに寄る。

  一瞬杖の先端が輝くと、彼女達は自分達の裸身が足元から何かに覆われていく様な錯覚を覚えた。

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  その途端、彼女たちの体はみるみる大きくなっていく。

  一回り、二回り背丈が大きくなるにつれ、その両腕や両足、何より全身の筋肉がより太く、強くなっていく。

  その姿はまさに筋骨隆々の女戦士と言える。

  だがただ逞しいだけではなく、その女性としての姿形の中で違和感なく収まる肉体はたくましさと共に艶や妖しささえ感じさせる。

  しかし、変化はこれだけでは終わらない。

  髪が頭の後ろに縦一直線になるように伸び変わり、両耳が頭頂に伸びていく。

  お尻から腰の間から生えた小さな塊がそれぞれの髪の色と同じ体毛に覆われながらみるみる長くなっていく。

  足先と両手の指が取捨選択を経て一本の蹄に変わっていく。

  そして、その顔立ちは顔全体を巻き込んで細く、長くせり出していく。

  視界が変わり、呼吸が変わる。

  彼女達が自分達の変化が終わった事を確認した時、そこには四頭の馬がいた。

  走る事に特化した蹄、風によくなびきそうな尾とたてがみ。

  そしてその長く伸びた顔。

  彼女達はまさに馬そのものだった。

  しかし、彼女達はしなやかな後ろ足だけで地面を踏みしめ、前足―両腕で変化した体に触れてその変化を確かめている。

  さらにその両腕の間には元のものより一回りは大きく膨らんだ一対の膨らみがあった。

  そう、彼女達は二本足で立つ馬、人間の体格を持った馬の姿となった。

  そしてそれは見方によってはこう呼べるだろうー魔物、と。

  せめてもの幸いは彼女たちの振る舞いが変化前とあまり変わっていない事だろう。

  むしろそうでなければ彼女達はみすみす魔物の本拠とも言える地で裸をさらす事、まして馬の魔物に変わる事などするはずはない。

  彼女達の目的、それは言うまでもなくデスパレスへの潜入であった。

  魔物達の動き、そして帝王復活の情報を追う流れでかの地に辿り着いた一行にとって敵の本拠に用意なく乗り込むのは得策とは言えなかった。

  その流れで潜入しての情報収集となったのだが、あれよあれよと言う流れで女性陣のみでの潜入行となり、魔物達に気取られない為に偶手に入れていた変化の杖で魔物に身をやつす事となった。

  ただ、なぜ全裸から変化したのか……。

  一応必要以上に気配を出さない為、相手の油断を誘う為とも言えるが詳しい理由は定かではない。

  もちろんこれは留守を守る男性陣の知る所ではない。

  もしそんな事が知れたら特にアリーナに仕える二人―宮廷魔道士のブライや神官剣士のクリフトの混乱は想像さえできない。

  それはともかく、馬人となった姿を慣らしながら彼女達は最後の打ち合わせをしている。

  変化の杖の効果時間は決して長くはなく、効果が消え変化が解ければ即座に杖を使い直して再変化しなければいけない。

  ましてもし魔物達の目の前で変化が解けようものなら……。

  幸いそれぞれ呪文やその身体能力を活かした体術等の心得はある。

  しかし、これが危険な潜入である事に変わりはない。

  もっとも、それに臨む四頭―四人は表向きは明るい。

  その褐色の体躯を踊らせたい気持ちを抑えつつまだ恥じらいと違和感を抑えきれないソフィアを軽くからかうマーニャ。

  そんなマーニャを諌めつたり全裸から馬人の姿となった事への恥ずかしさを感じつつもこれからの動きに思いをはせるミネア。

  より力強くなった体を馴染ませるように軽く身を動かし左右の蹄を突き出すアリーナ。

  からかわれ、恥じらいを強めながらも三人に指示と確認を行うソフィア。

  四人の潜入行はいよいよ始まろうとしていた。

  結果だけ言えばこの潜入作戦は成功し、四人は帝王復活に関わる重要な情報、そして魔物達にまつわる大きな情報とともに無事生還した。

  もちろん―魔物達の死角だったとは言えところどころで杖の効果が消え人としての裸身をさらしてしまい、慌てて半ばすし詰めでやり過ごしたり。

  さらにはそのままの姿で隠行を余儀なくされた事も幾度かあった。

  ぎりぎりの緊張感の果てか、馬人の姿でデスパレスをあとにするや否や全力で森を抜け、川に飛び込み人の姿に戻りながら心と体を鎮める事になったのは幸いであろう。

  かくて「導かれし者達」はその後帝王を、さらにより強い魔道の力を手に入れようとした者を討ち世界を、そして運命に翻弄された若き魔族と妖精の女王を救った。

  そして運命に導かれて一つの道を歩んでいた一同はそれぞれの歩む道へと別れていった。

  しかし一同―特に女性陣に互いの絆とはまた違う形で結びついてしまったものがあった事は基本的に本人達しか知らない。

  果たしてそれは天空を統べるマスタードラゴンの気まぐれか、はたまた預かり知らぬ出来事なのだろうか……。

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  [chapter:じゃじゃ馬姫の冒険]

  サントハイムの城。

  一連の動乱の際武闘大会に参加していたアリーナ主従を除き王をはじめ全員が姿を消すと言う一大事も無事収束し、今は平穏な日々の中にある。

  そして、これもまたこの城の「平和な風景」とも言える……。

  城のあちこちでアリーナを呼ぶ声が響く。

  今日もまたアリーナがお転婆のクセを抑えられずに城を抜け出したらしい。

  いい加減姫君、そして王族としての振る舞いも身に着ける頃合いなのだろうが当の本人はまだその気ではないらしい。

  むしろ彼女に影響され武道や鍛錬に関心を持つ女性達も王族・庶民を問わず増えていると言う噂もある。

  今日も先陣を切って探し回るブライと共にアリーナを探すクリフト。

  件の冒険の中で主従関係を越えた感情をいだきつつあるらしいクリフトだが、今の時点ではこの“じゃじゃ馬”を馴らす事、まして“じゃじゃ馬”が自ら背中を預ける事はまだ先の話らしい。

  その頃、サントハイム城を遠く離れた草原を駆ける一頭の「じゃじゃ馬」がいた。

  ややカールの利いたオレンジのたてがみと尾をなびかせて荒々しくも闊達に風を切りかけていく。

  その耳には変わった色のピアスが輝いている。

  それはサントハイムの王女―アリーナが好んで着けているものと同じだった。

  その馬は見た目こそやや小柄ではあるが力強い走りで駆ける。

  それこそ自分を縛ろうとする全てを軽やかに振り切らんばかりに。

  例えいつかはしかるべき厩舎に収まり馬場の中で日々を過ごすとしてもこの一時―たてがみをなびかせながら全身で風を切り、四肢で大地を蹴り上げるように駆け巡るこの感覚を邪魔する事はできない。

  その事をその肌いっぱいに感じながら馬は草原を駆け抜けていく。

  とある木々に囲まれた洞窟の入り口。

  深い迷宮とも、別の地に通じているとも言われるがさだかではない。

  その近くにあのオレンジ色のたてがみをした馬が訪れる。

  この地に来るまでの疾走の疲れを感じさせずむしろ余韻に浸りながらその馬は静かに歩いている。

  ふと、何かを察したのか馬はその体躯を少し大きな木陰と茂みの中に隠す。

  少しばかりそこが揺れたあと、そこをかき分け現れたのはカールのかかったオレンジ色の髪をした闊達な女性―アリーナの姿だった。

  アリーナは腰につけたベルト式のバッグ、そして耳に輝く変わった形のピアスを除けば何もまとわぬ裸のままであたりを見回す。

  どうやら他に気配はないらしい。

  ふうと一息つくとアリーナはその素足を踏みしめ、両手をその胸の前で合わせると改めて深呼吸をする。

  その裸の体全てを使い心を磨き高めようとするかの様に。

  サントハイムからだと本来ならアリーナと言えど人の足では相応に時間のかかるこの洞窟にアリーナは半ば遠乗り感覚で訪れる事ができた。

  これは言うまでもなく先程の「変身」の効果だろう。

  そのせいかアリーナのお忍び―かどうかはともかくの武者修行に色々な意味で広がりが出たのは間違いはない。

  こうしてさらに遠い場所に腕試しに行く事もできるし、何より城を抜け出したり戻ったりする難易度が多少は下がった事も大きい。

  もちろん「変身」しないで各地を飛び回って―もちろん肌はさらしてないが―もいるが、ほぼ全裸で広い地を駆ける行為自体が活動派を地で行くアリーナにはたまらない刺激となっている。

  それを示すかの様にアリーナは裸のままでウォーミングアップとばかりに身体を動かす。

  その光景は健康的な美しさを感じさせる。

  「変身」の影響かその体つきは見た目アリーナの持つ行動的な女性の姿を崩さない範囲で、むしろその魅力を引き立てる形でたくましくなっている。

  いわば「内側のたくましさ」だろうか。

  一通り呼吸を整えたアリーナは唯一身に着けている腰のバッグを確認する。

  薬草やキメラの翼など、さすがに最低限の道具は所持しなければならないのは難しいところだろう。

  そして裸のアリーナは洞窟に向かう。

  あの洞窟の中、先に何があるのか。

  どんな相手が潜むのか。

  全身に熱い武者震いを感じながらアリーナは暖かく明るい外気からやや薄暗くひんやりとした洞窟に降りていった。

  それから数刻ののち、サントハイム城下を走り回っていたブライやクリフトと何事もなく城内で再会する冒険者装束のアリーナの姿があった……。

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  [chapter:モンバーバラの馬旅姉妹]

  モンバーバラ。

  かの地に拠点を構える興行一座は世界にひとまずの平穏がもたらされた事もあってかさらなる賑わいを見せていた 。

  往時に比べると一座の状況もそれなりに変わってもいるが、それでも一時妹と共に旅に出ていたと言う踊り子・マーニャの復帰は一座にとって大きかった。

  旅の中で磨かれたらしき踊りの腕は美しさと官能、そして野生的な魅力に満ちている。

  また、その影で目立たぬものの妹のミネアの占いの腕もさらに磨きがかかったと言われ、より良き道筋の手がかりを求めて訪れる者は多いと言う。

  今では周辺の町や村にも巡業に行く程の人気を誇る二人だが、その巡業の道筋やときどき二人が取る「静養」については一座の者も知らされてはいない。

  ただ、今の二人にはそれが不可欠だと言う暗黙の了解があるゆえ不可侵とはなっている……。

  朝日の射し込むとある森の中。

  魔物達の動きも沈静化している事もあり他の動物やあえて野宿を選ぶ者達もある程度は安心して過ごせる環境になってはいる。

  そんな中、そこにはやや不似合いな二人の女性が何かを言い合う声が聞こえる。

  その声の主は二人の女性。

  同じような紫の髪と褐色の素肌をした全裸の女性達が何かをしようとしている。

  どうやら手の動きで勝敗を競うらしいがなかなか決着がつかず二人共かなりピリピリしているようだ。

  しかし、ようやく決まったのか二人は裸のまま何かの支度を始めている。

  そのあと、ようやく出発となったようだが、そこから現れたのは紫の髪と褐色の肌の女性と紫のたてがみと尾を揺らして歩く一頭の馬だった。

  その馬は最低限の荷物を背に乗せている以外は鞍も手綱も付けてはいない。

  ただ人間で言えば額にあたる場所にある飾りと耳に変わった形のピアスをしている以外は文字通りの裸馬である。

  そして、女性も額の飾りとピアス以外は何一つ身に着けずに馬と並んで歩いている。

  遠目から見るだけでは今歩いている女性があの二人のどちらかはわからない。

  まして、もう一人はどこに消えたのか。

  そんな疑問等感じる事なく裸の女性と馬は森の中を歩いている。

  そうしていると、馬と女性の姿が木立の影に隠れて見えなくなる。

  それが再び現れた時そこには裸の女性、そしていつの間にかもう一人の裸の女性が並んで歩きながら一息つこうと木陰に座り込んでいった。

  その耳にはお揃いの、そしてあの馬の耳にあったピアスが光っている。

  二人の女性―マーニャとミネアにとってこの一時―人知れず馬の姿となって旅をする事はちょっとした楽しみとなっていた。

  巡業の間に二人だけでの道行き、あるいは「静養」の時など。

  姉妹で交代しては馬の姿となって歩き変身が解ければまた交代する……。

  そんな道中を二人は楽しんでいる。

  生来楽天家で道楽好きな気質のマーニャはともかくまじめで露出を嫌う所があるミネアもこれを楽しんでいる節があると言うのはやはりそれぞれに思う所があるのだろう。

  こうしている間にもマーニャはその裸身を翻して新しい踊りの動きを試している。

  木々を巧みにすり抜け力強くも軽やかな動きで舞う姿は軽業にも負けてはいない。

  ミネアもまた、少し木々の密集した辺りで静かに座っている。

  木々のわずかなそよぎや幹の中の命の動き、そしてその周りの流れに素肌と心の全てを委ねつつそれを読み取ろうとするかの様にミネアは静かに座っている。

  気性の違いもあってか互いに疎う事も少なくはない二人だが、やはり異なる形で通じ合うものはあるのだろう。

  しばしの休息の後、二人は再び「馬」役を巡り勝負を始めていた。

  面白い事にこの勝負は「勝った方が」馬になるらしい。

  マーニャも、そしてミネアも妙に力を入れて臨んでいるのは気のせいだろうか。

  とりあえずこの勝負は二人が森を抜けるまでは続きそうである。

  それでもきちんとそれぞれの衣装を整えて一座と合流するのは見事とは言える……。

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  [chapter:導かれし駿女たち]

  とある山奥の村。

  人知れず存在していた小さな村がいつからあったのかはさだかはない。

  噂では魔物達に襲われ滅んだと言うがさらに別の噂では魔物達が沈静化した頃また動き出したとも言われる。

  どちらにしても大したもののない小さな村だがその村を、そしてその取り巻く世界を愛おしむ者もいる事はまぎれも無い事実である……。

  その村には小さな花園があった

  その中でひっそりと

  それでいて確かに咲く二輪の花があった

  赤茶色の花と青緑の花

  二輪は共にここで咲き続ける事を願った

  忌まわしき乱れにより赤茶色の花は散り

  青緑の花もまた長き旅に出る

  そして長い旅の果て

  再び二輪の花はかの花園で再び花を咲かせる

  そして花園を越え二輪の花は咲き広がる―。

  その日も爽やかな風に軽くなびかれながらその二輪の花は草むらの中に咲いていた。

  見上げれば突き抜ける様な青空とそれを彩る白い薄雲が流れている。

  風に優しく吹かれて周りの草が花を撫でるようになびき花達も軽くゆれる。

  その中で二輪の花は寄り添う様に並んでいる。

  鮮やかな青緑と赤茶色の髪と瞳。

  みずみずしい茎の様にしなやかな体付き。

  広がる青葉の様に鮮やかで優しげな素肌。

  二輪の花―の様に美しく二人の女性が

  花の様にほぼ何一つ身に着けない姿でひっそりと横になって休んでいる。

  花が人の姿になっているのか。

  それとも人が花の中に宿っているのか。

  二人の裸身はその風景の一つとして美しかった。

  ソフィアとシンシア―二人が再び出会う事ができたのはまさにマスタードラゴンの導きによる事は間違いない。

  再会を喜びつつも二人は故郷を立て直す為動き出していた。

  そのかいあって村も少しづつ命を取り戻し、二人の心にもようやく余裕が生まれていた。

  もともとシンシアは村の真ん中にある小さな花園が好きでそこで過ごす事が幸せな一時であり、ソフィアにとってもそこで共に過ごす事は憩いの時間だった。

  そして二人にとっての「花園」は村が蘇る中で静かに広がっていた。

  二人して静かに瞳を閉じていれば草花や土の鼓動が素肌に伝わる。

  目を開けて空を見れば身体が風と一つになって文字通り天空まで飛んで行きそうな錯覚を覚える。

  そんな気持ちに浸りながら生まれたままの二輪の花となって時を過ごす。

  かつてシンシアがソフィアに語ったように時が許す限りこうしていたいと思える一時。

  二人は心ゆくまでその草花と風と青空に体を預けていた。

  そんな中、どちらからとなく二人は体を起こす。

  長い旅路の中でソフィアは強く、美しく成長していた。

  シンシアもまた会う事のなかった日々のブランクを埋める様に一人の女性としての輝きを増していた。

  少なくとも二人は今の互いの姿にそれを感じている。

  その思い、そして今の二人の縁はそれぞれが自分達の子や孫の背を見る日々を送る時になっても変わらないだろう。

  そして、青緑と赤茶色の二輪の花が起き上がり花を開く。

  青緑の花―ソフィアは耳に付けていた変わった形のピアスに指をかける。

  赤茶色の花―シンシアもその可愛らしい唇を動かし、何かの呪文を唱える。

  一瞬大きな風が吹き抜けると二人の姿は草むらから消えていた。

  そして、その風に導かれる様に二頭の馬が駆け抜けていく。

  それぞれ赤茶色と青緑の鬣と尾を揺らし、大きくも爽やかな息を漏らしつつ時に競いながらも並走する二頭の馬。

  野を駆け、森を越えて天まで飛び上がりそうな勢いで走る。

  そして時には静かに休みつつも走る。

  それが今のソフィアとシンシアのありのままの姿と心だった―。

  [newpage]

  彼女達が得たもの、それはマスタードラゴンの気まぐれか知らざる話かはわからない。

  しかし、彼女達にとってかの姿もまた己自身を「導く」為に駆ける力なのは確かな話らしい……。

  一方、走り続けていた二頭の馬は山奥の村の外れの林に飛び込んだ辺りで姿を消す。

  入れ違いに現れた青緑と赤茶色の髪をした二人の女性が裸のまま走り続ける。

  その先にあるのは二人が服を脱ぎ隠した場所。

  そこで衣服を身に着け身支度した二人を

  村の真ん中の花園で待つのはかつての仲間達。

  そしてその中には「秘密」を共有する「導かれし駿女」達がいる―。

  了