甥の里帰り

  いったいいつから、俺はあいつを性の対象として見るようになっちまったんだ。四十路を間近に控えた虎の男はコンビニで溜息を吐く。

  白のトレーナーは盛り上がった筋肉によって引き伸ばされている。上にも横にもデカい。顔付きもイケメンというよりは厳ついという印象が強く、悩むように眉を潜めれば近寄り難い程に不機嫌なように見える。

  そして纏う被毛は黒。鮮やかな黄色は鳴りを潜め、ボサボサな黒地に白の縞模様が稲妻のように走る。

  彼の名は猫目黒曜(ネコメコクヨウ)。名に恥じぬ見た目の彼は商品棚の前にしゃがみ込み、ほんのりと頬を染めた。コンビニの一角、コンドームコーナーだった。

  

  

  

  

  いったいいつから、俺はあいつを性の対象として見るようになっちまったんだ。

  その答えを探すのは難しい。

  初めて交わったあの日?

  初めて引き取ったあの日?

  それとも……

  

  コクヨウには歳の離れた姉がいた。

  黒毛差別意識が蔓延っていた最中、極々一般的な黄色の被毛の姉は、黒い被毛を持って産まれた弟をどう思っただろうか?きっと、愛おしく思ってくれたのだろう。

  姉の名は柘榴(ザクロ)といった。柘榴石、ガーネットのような濃いオレンジの瞳は、黒眼のコクヨウ少年には羨ましかった。

  ザクロはコクヨウをとても可愛がった。コクヨウが虐められた時は老若男女問わず戦い、護ってくれた。

  そしてザクロには幼馴染の小さな虎猫がいた。虎猫の名は金子虎徹(カネココテツ)といった。コテツは塞ぎ込みがちなコクヨウを弟のように可愛がり、様々な所へ連れ出してくれた。

  煌びやかな金の短髪を真似て染めたいとコクヨウは常々言ったが、元々ヤンキーみたいな見た目してるんだから止めろと、コテツの身長を悠々と越し筋肉達磨に成長したコクヨウを窘めた。

  きっとこの二人がいなければ今のコクヨウは居なかっただろう。そう断言出来る程にコクヨウの人生は姉と兄貴分に依存していた。だから二人が結婚すると聞いて、とても嬉しかった。そして同時にとても悲しくもあった。それは正しく、片思いしていた相手から恋人を紹介された時のようで……その時になって初めて、コクヨウが抱く二人への大好きの気持ちが限りなくLOVEに近かった事を知った。

  社会に揉まれながらも立派に成長し、独立したコクヨウは度々姉夫婦の家へ遊びに行った。その頃にはもうダブル失恋にも吹っ切れて、姉夫婦それぞれから相方に対する愚痴などを聞けるくらいには余裕も生まれていた。そして少しずつ膨らむ姉の腹を義理の兄となった兄貴分と共に微笑ましく見守っていた。

  やがて産まれた男の子は父親似の虎猫だった。一番目に産まれた子には琥珀(コハク)、二番目に産まれた子には黄金(コガネ)と名付けた。

  

  「ただいまー!」

  「あっおかえり兄貴!親父、ちょっとよろしく」

  「おう」

  玄関からの元気の良い声に、隣にいた虎猫が調理器具を置いて玄関へと走る。少し話し声が聞こえた後、帰って来た方が台所に顔だけ覗かせる。

  「たっだいまー親父」

  「おかえり、コハク」

  土鍋を掻き回しながら顔だけ動かす。橙色が強い被毛と短く揃えた金の短髪、そして黄緑色の瞳がコクヨウと鍋を見とめた。

  「おぉ、鍋じゃん!」

  「おう、鍋だ」

  コハクは目を輝かせる。確認するだけのような会話、しかし養父と養子はその会話を楽しんでいる。その後ろから、もう一回り小さい養子が顔を出す。

  「へへへ〜今日は久しぶりに三人で食べれるからね!外も寒いしちょうどいいでしょ?」

  もう一人の養子、コガネは得意げに言う。弟は兄に比べて黄色の強い被毛だ。そして黄橙色の瞳は右側だけ布で隠している。

  猫目家には特別料理が出来る者が居ない。食材を適当に切って突っ込んで煮込むだけの鍋は、良く食べる男三人の生活には何かと都合が良かった。

  

  お互いに離れていた間のことを話し合い、夕食の時間は和やかに過ぎ行く。

  殆どの会話はコハクとコガネの二人が中心となって、コクヨウはその場で相槌を打つばかり。それでも空気が重くなることはない。コクヨウが口下手で、聞いているだけでも楽しんでいるのだということを二人の子供は知っていたから。

  

  「風呂、上がったぞ」

  「はーい」

  夕食後、一番風呂から出たコクヨウはタオルで身体を拭きながらコガネに声をかける。三人のうち、長風呂であるコハクは一番最後に入るという流れが勝手に出来ていた。

  着替えの下着を持ったコガネがぱたぱたと脱衣所へ入っていく。コハクは居間でテレビを見ていた。

  「コハク」

  「ん、何?」

  テレビから目を離さないコハクの目の前に、一つの箱を突き出す。それは昼休憩、わざわざコンビニに寄ってコクヨウが買い求めたものだった。Xを何個も重ねたようなアーガイル・チェックの箱には「CATches」とロゴが描かれている。

  「……親父、マジで買ってきたの?」

  コハクはわかりやすいように顔をしかめた。でもその顔は少し赤く、そしてどこか照れているようで。

  「おっお前が……買ってこいっつったんじゃねぇかよ」

  対してコクヨウは少し声を荒げる。その顔がすこし赤くなってるのを見て、コハクはこっそり笑い、箱を剥ぎ取るように受け取った。

  「ウブだねぇ親父も」

  「うるせぇ、マセガキめ」

  「わかったわかった」

  コハクは立ち上がり、気まずそうに目を逸らしながらコクヨウの隣を横切る。その時、コハクの尻尾が揺れてペシっとコクヨウの腰を叩く。

  「ソレ、ちゃんとコガネ戻ってくるまでには納めとかねぇと驚かれるよ?」

  股間を隠していたタオルがはらりと床へ……落ちる前に、勃ち上がったコクヨウの逸物に引っかかる。全身の毛をぶわりと膨らませた巨漢は恥ずかしげに縮こまり、脱兎の如く自室へと戻る虎猫の楽しげな背中を睨み付けた。

  コハクは今日も長風呂だった。

  

  

  

  

  

  『シたいならコンドーム買って来てくれない?一箱全部俺の尻で使わせてやるからさ』

  異世界へ出張していたコハクからのメッセージに、コクヨウは朝食代わりに飲み込んでいた10秒メシを盛大に吹き出した。いまだ自立するには早い12歳のコガネに心配されたが、ケータイの内容を見られないようにするのに必死だった。

  最近流行りチャット機能を使った会話は気付けばそんな方向へ流れていた。息子が久々にこちらへ帰ってくる。コクヨウにとってもちろん嬉しいことなのだが、久々だからといって……どうせ溜まってるんだろうとか邪推されれば反発もしたくなるものだ。いや、実際溜まってはいるのだが。

  コクヨウは未婚だ。

  息子という名の養子……姉夫婦の甥っ子を二人、預かった。そしてその一人、17歳のコハクと肉体関係を持った。持ってしまっていた。ちなみに猫族は15歳で成人であるため犯罪ではない。断じて。(倫理の観点は無視する)

  

  異世界での戦利品の選別。夜中、そう言ってコハクとコクヨウは実家の隣に併設されたガレージに足を運んだ。ガレージには従業員用に作られた休憩スペースがある。畳が敷かれた六畳一間、机は壁際へ追い遣られ、代わりに厚手の布団が敷かれている。

  「またどうせ徹夜でしょ?ちゃんと明日の朝おきてよね」

  コガネはあくびをかみ殺しながら自室へ戻っていった。珍しいことではない。もうなんどもこんなやり取りをしている。今日だってどうせ誰にもばれやしない。真冬の夜中であっても、ストーブの熱で暖められた部屋は汗をかくくらいだ。

  

  コハクは大人に近づくにつれ、少しずつ父コテツに顔立ちが似始めた。ちなみにコガネはまだ幼いが、母ザクロに似始めている。将来的に虎か虎猫になるかはまだわからない。

  それはともかく、尊敬し、敬愛していた兄貴分と、信愛し、親愛していた姉の子供と、今まさにくちづけを交わしているという事実がコクヨウの脳を蕩けさせた。

  コクヨウはコハクの背中と後頭部を押さえ、抱き締めるように、貪るようにキスをする。舌を捻じ込めば相手の舌が絡みつき、送られた唾液をコハクはゴクリと飲み込む。伏せていた目を薄く開けば、気持ち良さそうに舌を蠢かせるコハクが映った。その黄緑色の瞳に美しかった姉の眼差しが重なって、ゾクリと、老いを感じ始めた身体が年甲斐もなく歓喜に震えた。

  いったいいつから……その原因に答えを求めるならば「産まれたときから」、そう答える以外はないだろう。

  

  「ふぐ」

  呻きを上げたのはコクヨウ。コハクはキスを受けながらもズボンを押し上げる大きなコクヨウのモノをなで上げる。

  「やっぱり溜まってたんじゃん」

  「お前もだろう」

  「いやいや、親父ほどじゃねぇって」

  

  コクヨウの前に膝を立てるコハク。

  最近は如実に膨れ始めたビールっ腹から窮屈そうなベルトが外され、前を膨らませたボクサーパンツが現れる。白黒ツートン柄は黒毛に良く映えていて、これがコクヨウにとっての勝負パンツであることをコハクはコッソリ気付いている。思い切ってズルリとパンツを下ろせば、赤黒いコクヨウのモノがブルンと揺れて立ち上がった。

  ガチガチに勃起した逸物は獣独特の先細り、そして細かな肉棘が茎をビッシリと覆う凶悪な見た目だ。眼前の、片手では指が回らない大きさの剛直をきゅっと握れば、それだけでビクリと期待に汁を垂れ流す。

  コハクはコンドームの袋を牙で千切り開ける。ぬらついたゴムはキツめな赤色、コクヨウのモノの先端に当てると、グイグイと押し付けて被せていく。

  ピチピチに張り詰めたゴム。元々が黒ずんだ大人の逸物に生々しい赤色の膜が被さりさらにグロテスクに見える。猫科の肉棘にも耐える厚みと伸縮性のある専用コンドームは、茎全体を少し強めに締め付けて微弱な快感を与えてくれる。

  「まずは一回、このままイッとく?」

  そう言うと、コハクは躊躇いなく叔父であるコクヨウの逸物をコンドーム越しにくわえ込んだ。

  「……おぉ」

  吐息が漏れる。亀頭からカリ、幹の形さえも確かめるようにゆっくりと頭を上下して逸物をしゃぶるコハク。口内は暖かく、唾液がゴムを滑らせぬるぬると舌が動き回る。

  少しずつ、喉奥へと逸物を押し込めようとしているようで鼻面が股間の毛の濃い部分へ触れ始める。奥まで咥えて、止まる。息を吸う。脂肪で柔らかい腹の、ゴワついた陰毛に突っ込んだ鼻先から濃い雄の匂いが鼻を突き抜け、同時にくわえ込んだラテックスの匂いがコハクの脳髄をも痺れさせる。フェラはより激しいものとなる。尖った亀頭が喉奥にコツコツと当たり、締め付けられる。

  大好きな甥が己の息子に、まるで好物のようにしゃぶりついている。金の髪をクシャリと撫でれば、頭の動きは止めないままコハクは気持ち良さそうに目を細めた。ジュブジュブと響き渡る粘着質な音、唾液を滴らせながらのコハクの口技は絶妙で、硬く張り詰めた逸物はあっけなく上り詰め、弾けた。

  「……ぐ、ぅ!」

  コクヨウの逸物が膨れ、ドグンッと、白濁を噴き出した。

  コハクはそれに気付いても逸物を放さない。ゴム越しに吐き出される熱の塊の感触を舌の上で受け止め、舐め上げて楽しむ。やがて、脈動が終わるとようやくコハクは逸物を吐き出した。一回出してもなお硬くそそり勃つ逸物の先には、白く濁って垂れ下がる精液溜まり。そしてそこに入りきらなかった白濁が、カリの間や茎の血管の隙間にまで入り込んでいた。

  「一発目からすごいね」

  「スマン……」

  コンドームを先端から引っ張り、逸物から剥がしていく。殆どの精液は床に垂れることなくコンドームの中へ、そして残り、コクヨウの逸物にべったりと纏わり付いた精液を、コハクは当たり前のように舐め上げ、咥え、飲み込んでいく。

  逸物を綺麗に舐め上げるとコクヨウもしゃがみ込んでコハクにキスをする。青臭く、苦く、どこか甘い風味に、二人の性欲が再び沸き上がる。

  「さて、一個目、使っちゃったね」

  「ああ、あと五個だな」

  コハクと布団に押し倒し、服に手を入れて撫で摩りながら脱がしていく。コクヨウの羞恥心はすでに消え去っていた。タンクトップを捲りあげると乳首を押しつぶすと、くすぐったそうに身体を捻る。そしてズボンを脱がす。コハクの両脚は太股の途中から鉄へ変わっていた。鉄の義足、それが今のコハクの両脚だった。

  コクヨウはその義足の指先を舐め、愛撫する。コハクはそれに艶やかな声を漏らした。

  「あっ、ん……」

  それはだたの鉄で、鉄の味がするだけだったが、コクヨウにとってもコハクにとってももっと特別なものだ。コハクの義足はコクヨウが作ったもので、そしてコハクがもう一度、文字通り立ち上がるために作られた足だ。コクヨウの愛情の塊でもあり、もはやコハクの一部である。その証拠に、コハクの股間を覆うスパッツはみるみるうちにテントを張り、先走りで布をどんどん湿らせていた。

  

  忌まわしい記憶だ。呪わしい傷跡だ。

  コハクが中学生の頃、事件は起きた。コテツが勤めていた機械工場で大火事が起きたのだ。金子家全員がその工場にいた。コハクはその事故で両脚を、そしてコガネも右腕と右目を失った。義兄コテツと姉ザクロは、骨すら見つからなかった。

  コクヨウは悪い夢だと思った。だが、病院で痛ましい姿で寝ている甥達を見たとき、そしてどれだけ探しても、人に聞いても、「虎徹」と「柘榴」の文字を見つけられなかったとき……世界が真っ黒になった。

  何もかもから色が抜け落ち、楽しくなかった。家に引きこもり、食っちゃ寝てを繰り返す。甥達の見舞いのためだけに外出し、病室の外から生きているのを確認して、顔も見せず何も話さず帰る毎日。誰かと話せば、二人が死んだことに向き合わなければならない。だから甥達であっても話そうとはしなかった。

  「俺に立つための足をくれ……!」

  だが、甥達は叔父に語りかけた。逃げることを許してはくれなかった。

  初めは断った。そもそもコクヨウが作る鉄の義肢は通常の物より運動性能は高いが扱いが難しい。当時13歳だったコハクには荷が重いと判断した。それでもコハクは引き下がらなかった。勿論、逃げたいという本心もあった。だがその本心は、毎日熱心にリハビリに励むコハクを見ているうちに消えていった。

  「ねぇ、おじさん……お願い、兄貴の夢を……叶えて欲しいんだ」

  そしてコガネ、右半身に重度のやけどを負い右目右腕を失ってもなお、ベッドの上で笑い、そう語りかけた姿がコクヨウを胸を打った。

  

  きっとこの甥達がいなかったら、俺は壊れたままひっそりと枯れ果てていただろうと、コクヨウは振り返る。コハクとコガネを養子として迎え入れたのも、彼が叔父だから、などという単純な理由だけでは到底説明できない。そしてそれが、愛情が肉欲に成り代わろうとも、いったい誰が止められるだろう?

  

  「取るぞ」

  「……うん」

  コクヨウは壊れ物を扱うようにコハクの太股に触れ、義足を両脚とも取り外す。毛の生えていない縫い痕だらけの地肌がその下から現れる。傷跡を癒すように、何度もそこに口づけを落とすと、直接的な刺激にコハクは身体を強張らせた。

  「お、親父……」

  もどかしそうにもぞもぞと動くコハクは、何かを求めているように視線を送る。コクヨウは口づけをやめると、期待に膨らんだスパッツを脱がした。

  立ち上がるコハクの逸物は体格に見合ったサイズで、まだ幼い色をしたそれはピクピクと動いている。しかしその下、尻尾の付け根にある肛門は既に赤黒く変色していて、物欲しげに蠢いていた。

  コクヨウは逸物には目もくれず、尻の間に顔を突っ込み、穴を嘗め回す。肛門は緩く、簡単にコクヨウの舌を受け入れる。風呂で洗浄したのであろう、肉壷の中は柔らかでコハクの持つ仄かな体臭しかしない。

  気の済むまで嘗め尽くしたころには、コハクはすっかり息を上げていて、目線を上げれば眼前にある逸物が期待に汁を垂れ流している。だがまだ早い。ただ舐めたくらいでは大きい虎の逸物は小さな虎猫の穴には入らない。

  コクヨウはコンドームと共に用意していたもの、使いかけのローションを手に取る。中身を手に出し肛門の表面にやさしく触れば、コハクはぬるりとした冷たさに身体を強張らせた。馴染ませるようにローションで肛門を擦って緩めていく。

  「ひゃっ」

  「なんて声だしてるんだ」

  「うるせ……うあぁっ!?」

  コハクの声は途中で悲鳴に変わる。ローションのチューブの先がコハクの肛門に突っ込まれ、肉壷に直接中身を流し込まれていた。ただの水とも違う、直腸の中に入り込むローションの感覚に尻尾がぶわりと逆立つ。

  入り口の開発が終われば、コクヨウは容赦なく最初から指を三本突っ込んで掻き回し始めた。コクヨウの整備士特有のゴツゴツした太い指であるにも関わらず、コハクの肛門は抵抗もなく指を飲み込んだ。

  コハクは恐らく、コクヨウ以外にも関係を持っている。一体どれだけの雄達にこの穴が使われたのか推測はできない。そもそもこの行為の始まりもコハクに誘いをコクヨウが断りきれなかったからで、そのときには既に経験もありそうだった。他の雄とも交わっていることは用意に想像できた。

  拡張されきった柔らかな肉壷……遠慮のない手淫に悲鳴を上げるどころか、あまつさえ前立腺を集中的に責められて甘い声を漏らす甥の姿はコクヨウに高ぶりを、そして誰とも知らぬ雄どもへの嫉妬をもたらす。俺だけのものにしたい。負の感情すらスパイスの一つとなってコクヨウを急かした。

  「やっ親父、なぁ……」

  「……なんだ」

  「チンポ、イカせてくれよぉ……ケツじゃなくて」

  コハクはもう我慢できなくなっていた。コクヨウは既に一回出してしまっているのに、コハクに与えられるのは尻からの間接的な刺激ばかり。はやく発散させて欲しい。自らの手で自らをモノをグチャグチャと扱き始めたコハクの痴態が、目線を上げたコクヨウの眼前で行われていた。コクヨウの獣性を引き出すには十分、いや過剰だった。

  「だめだ」

  ただ一言言い切ると、コクヨウはコハクの手を掴んで組み敷く。コハクの逸物は射精の瞬間を待ちわびているように震えるが、コクヨウは両腕を片手でまとめてそれを許さない。

  コハクのナカから指を引き抜くと、ぽっかりと開いた穴が収縮して赤い肉を覗かせる。呼吸に合わせて広がるたび、どろりと透明な液が流れだし、薄い肌色の尻毛と尻尾の根元を濡らした。

  コクヨウの液塗れの手がコンドームを掴みとり、今度はコクヨウ自身で牙を使って切り空ける。自身の猛る逸物を覆えば、その上にローションを新たに撫で付けた。

  「ケツだけでイカせてやる」

  コクヨウの発言と、肛門に当たる熱い逸物の感触に、コハクは小さく悲鳴を漏らした。

  「ちょっと、まっあああああっ!!」

  抵抗感など気にせずぐいぐいと押し込んでいく。

  コンドームのお陰か、はたまたローションで入念に解したからか、結構乱暴なことをしてもコハクの尻は切れることなく、仕込まれたローションを噴き出しながらズブズブと飲み込んでいく。やがてコクヨウの長大な逸物は根元まで押し込まれる前に奥へと到達した。

  浅く呼吸し、涙を目じりににじませるコハク、コクヨウはその喘ぐ唇を奪う。深く、喉奥まで舌で掻き混ぜ唾液を交換すると、今度は人工呼吸でもするかのように深く、長く息を送り込む。吐いて、吸って、吐いて……その度にコハクの胸が無理矢理膨らみ身体はビクビクと振るえて……口を離すと、コハクはぐったりと身体から力を抜いた。

  「かふっ……けはっはぁ……」

  些か特殊なディープキスにコハクは咳き込む。コクヨウはコハクの両腕をガッチリと布団に縫いつけ、身体を折りたたむように下半身を押し付ける。膝から下のないコハクの太股はコクヨウの腰に持ち上げられ、尻が天井へと向く。

  「行くぞ」

  コハクの返事を待たず、押し込められた逸物がゆっくり、ズルズルと上へと引き出されていく。棘をコンドームでカバーされたそれはカリ首でようやく入り口に引っかかる。その様をまじまじと見せ付けられるしかないコハクは、しかし肉壷から感じる快感とは別の、被虐嗜好的な快楽にその身を震わせた。

  

  一息に、押し込む。

  「いっああぁッ!!」

  杭のようにコクヨウの逸物が肉壷を突き抜け、腸の奥深くに刺さる。

  仕事で鍛えた足腰でガツガツとコハクの尻を掘っていく。小さな肉壷は締まりが良く、それなのに高い潤滑で抵抗力もなく高速のピストンを可能にする。コハクもまた、内側から前立腺だけでなく膀胱や直腸全てを押しつぶされる感覚を、痛覚交じりの快感として受け止めていた。

  「どうだ?」

  息継ぎに、息を荒げながらコクヨウが動きを止めてコハクに問う。快楽が突然止んだコハクはそのぼんやりとした頭のまま問いに答える。より淫らに、より激しくしてもらうために。

  「……きもちいぃ……きもちいよ、おやじぃ!」

  ニヤリとコクヨウの口角が釣り上がる。

  「コハクは……エッチが大好きなんだな」

  「ぅっぁあっ……」

  「もうすぐ、根元まで入りそうじゃないか」

  直腸の更に奥まで押し込めようと、コクヨウは更に体重を掛ける。コハクは押し出されるように喉から息を吐き、耳を真っ赤に染め上げ、腕で目元を隠した。情交を繰り返す度、コハクの肉壷はより貪欲に逸物を深く飲み込むようになっていた。

  不思議なことに、コハクは自ら情交を求めることを嫌う。単純に恥ずかしいらしい。その癖エッチなことは大好きなのに。だから今回も「親父が求めるなら」という体裁を取って誘ったのだ。

  しかしだからこそ、コクヨウはコハク自身に求めさせたい。そうすれば、容赦も遠慮もいらない。例え家族だろうと、同意の上なら和姦なのだから。それに今日はゴムまで付けている。中出しのことを気にする必要もない。

  「……いやだったか?」

  コハクの耳元で囁く。それは悪魔の囁き。肯定すればコハクの浮かされた熱は消えないまま。コハクの腹の中を満たす熱の塊、それに血流を送り小刻みに揺らせばコハクの脳はさらに蕩けた。でも足りない。イキたい、イカせてほしい、足りない、足りない!

  「イカせてっ犯してっぇあ……好き、だから、もっと……犯してぇっ……」

  コハクのタガは外れた。

  「……そうか」

  その後はもう止まらない。コクヨウはその身体でのしかかり、より激しくコハクを犯し始める。己の欲望のままに、求められるがままに、コハクを愛した。二人の身体が密着する。コハクの腹と胸はコクヨウの脂肪の乗り始めた腹に押しつぶされ、顔は胸毛に埋め込まれる。コハクは一生懸命に胸毛に込められたフェロモンを吸い込み、目を瞑る。ぼーっとした頭でも、グチャグチャ、パンパンと響き渡る粘着質な音を、肉壷を占領する逸物の感触をより強く感じた。やがて、コクヨウの腹肉に押しつぶされ、律動のたびに擦り付けられたコハクの逸物が限界を迎える。

  「あっぁ、いっイッちゃ……はぁっ!」

  ビュクビュクと噴き出した白濁は我慢した鬱憤を晴らすように激しく、大量にコクヨウの腹を汚した。快楽に歪み紅潮した顔、艶かしい声。そして射精により脈動する肉壷の感触にコクヨウが唸り、直後、二発目の種を噴き出した。

  「俺っも、イク……ガァッ!」

  奥深くへ、押し込んだコクヨウの逸物がビクリと跳ね、精を吐き出していく。その度に跳ねる逸物と、ゴム越しに感じる熱い種の感触に、コハクは小さく息を漏らす。その吐息は安らかだった。

  激しく呼吸を繰り返しながら、精液で白く濁ったコンドームを纏った逸物を引きずり出していく。亀頭が音を立てて抜けると、支えを失ったコハクの下半身が布団に落ち、逆にコクヨウの逸物は立ちあがった。コンドームは精液によって内側から引き伸ばされ、先端がだらりと垂れる。その様子を見てコハクはニヤリと笑った。

  「あと四つ、だな」

  コンドームを剥がしてもなお逸物の硬さが衰えないコクヨウを見て、コハクの逸物が先走りを垂らした。

  

  

  

  

  

  何回目だったろうか。

  布団の周りには五個のコンドームが転がっている。全てが引き伸ばされ、口も縛られなかったために白い精が流れ出して畳を汚している。

  「ぐるぅ……ぐっあぁぁッ!」

  「あっあ"ぁ……」

  黒虎が吼え、虎猫が鳴く。コクヨウのあぐらの上、対面座位で人形のように抱き締められたコハクは、腸内を駆け上るどろどろとした液体の感触をゴム越しに感じ取った。コクヨウの逸物には変わらずコンドームが付けられているが、その根元、コンドームの袋の口から射精の度に精液が噴き出して玉袋を白く汚している。

  「おや、じぃ……もう……」

  射精して冷めてきた思考にコハクの声が入ってくる。

  「ぁあ、すまねぇ。抜く」

  コハクの脇を持って持ち上げると、コクヨウの萎え始めた逸物が抜け、後に続くように白い液体の詰まったゴムがズルズルと引きずり出される。最後の一個、逸物に被せられたゴムは穴が開いていないことが奇跡であるように歪に伸びきり、大量の精液を溜め込んでいた。それが六回目、その一回分の射精量で出尽くした精液の量でないことは誰の眼にも明らかで。

  「……三回くらいなら、交換しなくてよかったか……」

  コクヨウは逸物に被ったゴムを乱雑に取り去りながら、そんなことを呟いた。

  「おやじ……」

  「なんだ」

  降ろされたコハクが気だるそうな声を出す。見てみると、汗と精液塗れの布団の上でうつ伏せになっていた。丁度失った足がコクヨウを向くようになっており、コハクはその背中越しに濡れた目を向ける。その視線はとても扇情的で。

  「もう、いいから……」

  そう言ってコハクは黙り込む。いったいなにがいいのか?コクヨウは頭の上にハテナを浮かべる。もうコンドームも使い切ってしまったために、コクヨウにはコハクの眼が未だ不満気であることに気付けないでいた。

  二人して黙りこくっていると、コハクの方が痺れを切らしたのか行動に出る。

  膝から下の無い足と腹筋を使って頑張って尻を持ち上げると、尻たぶを両手で掴んで開き、尾を持ち上げる。まじまじと見せ付けられるコハクの尻穴は肉壷の中まで覗けるほど完全に開ききっていて、それなのに一切汚れておらず綺麗で透明なまま。一瞬縮んで、ぐぱっと開く。ごぽり、と腸液が溢れ、蟻の門渡りを濡らすと、ビチョビチョの玉袋の間を通り抜け、未だ硬いコハクの竿を伝い、先走りに混じって布団へと落ちた。

  

  「ナマで、いいから……犯してよ」

  

  心臓が跳ねた。身体中の血液が下腹部に集まり、一瞬にして勃起するのを感じる。コクヨウは血眼になってコハクに襲い掛かる。体重を掛けられたコハクの身体はあっさりと潰れて、体勢は寝バックに。コハクの背中一杯に、コクヨウの体温を感じる。返事を待たず背中から覆いかぶさり、剛直で貫いた。

  「あっは、ぁぁああああ……っ!」

  散々ピストンされた中はコクヨウの逸物の形を覚えているようにピッタリと密着して吸い付く。だが今はゴムも付けていない。確かな熱と、脈打つ血管、そしてびっしりと幹を覆う棘一つ一つが肉壷を満たし、はっきりと感じ取れる。

  押し込むだけなら問題は少ない。だが、引き抜くとき……ごりごり、と音が聞こえた気がした。

  「あ"、あっあ"っ!」

  脳髄が焼き切れそうな快楽にコハクは涎を垂れ流す。

  コハクももう我慢できなかったのだ。ゴムとローションのつるりぬるりとした感覚でなんどもなんども十分に肉壷を蹂躙された。でも足りない。刺激が足りない。どれだけまぐわっても、ぽっかりと空いた肉壷を満たすものは何もない。猫科の陰茎の棘は、雌の排卵を促すためのもの。それが産み出す痛覚は、コハクに忘れられない雌の快楽を植えつけた。

  「……きもち、ん"っあ"っあぁぁっ」

  「がぁ、あぁあああッ!!」

  コハクを雌に変えたように、コクヨウも一人の雄へと変わる。押し込んで、引き抜いて、していることは変わらないはずなのに、肉壷は確かな抵抗力を持ってコクヨウの逸物を包み込む。ごりごりと削っていく感覚は極上だった。

  目の前にいるこの猫を、目の前に居る雌を、孕ませる。孕ませたい。子を成したい。その願いは、より本能的で。唸り、腰を獣のように振りながら、きつく小さな身体を抱きしめる。ごつんと骨盤にまで響くコクヨウの突き、内臓を抉られるような痛みでさえ今のコハクには快感でしかない。

  「お"っおや、じ……あぁ、うっ!」

  猫が何か言っている。そう、親父、そう言っている。彼は雄で、コクヨウの養子で、ましてや両足を失っているいたいけな青年で……でも関係ない。目の前にいるのは、今だけは、コハクと言う名の雌猫。

  「コハク……」

  その名を口の中で転がすと、愛おしさがこみ上げてきた。

  「あっ……へへっ、おやじぃ……」

  快楽に解け切ったように、コハクが呼び返してくれた。尾がぞわぞわと逆立って、腹の底からぐつぐつと煮えたぎるものを感じた。

  「コハクっコハク、ぐぅ……コ、ハクぅ!」

  「お"っおぁ"……おやじ、おやっじぃ……!」

  大きく身体を動かしながら、お互いに呼びあう。その度に腹の中の欲望が大きくなっていく。もう抑えきれない、でも終わらせたくない、そう願っても結合部から感じる快感はとてもじゃないが耐え切れなかった。

  細い腰をガッチリと固めて逸物を思いっきり奥へと埋め込む。硬い感触を抜けて、ぐちゅりと亀頭が更に奥まで入り込むのを感じた。コクヨウは雌の悦びに震えるコハクの耳元で囁く。

  「……コハク、孕ますぞ……」

  「おあ"っあは、はぁぁぁ……」

  もはや言葉すら紡げないコハクは、それでも確かに、その言葉に濁った瞳で笑顔を返した。

  途端、コハクの腸内が脈動した。ビクンッビクンッと身体全体を跳ねあげて、コハクの肉壷が急速に収縮を繰り返す。コハクの逸物から液が噴き出す。それは白濁液ではなく、透明でさらさらしたもの。お漏らしのように布団をグチョグチョに濡らしていく。

  「ぁあ"あ"あ"っうぅ、ん、いっい"ぃ……っ!?」

  それはもはや声というよりは吐息のようで。

  雌のように孕まされることに喜びを感じ、コハクはオルガズムに達した。キュンキュンと締め付ける脈動は雄から種を搾り取るようで。あえなく、コクヨウは本日2桁目に及ぶ射精へと至る。

  「コハク、う……ぅぐがぁぁあ"っあ"ッ!!」

  溜められた種汁が尿道を駆け巡り、雄膣にぶちまけられる。もはや塞き止めるものもない。どぐんどぐんと注がれる種汁は直腸を駆け巡り、奥深くまで種付けされる。脈動は簡単には止まらない。種は吐き出すたびに膨れ上がる逸物に肉壷を断続的に圧迫され、その度にコハクは肺から空気を漏らした。雌相手ならば本当にデキてしまうほどの量でコハクの腹を満たして、腹が薄っすらと膨らむほどであったが、それでも一滴も漏れることはなかった。

  やがて静寂が訪れる。聞こえるのはお互いの息遣いと心音だけ。冷静さを取り戻したコクヨウは身体を繋がったまま横に倒し、押しつぶしていたコハクを開放する。そのまま逸物を引き抜こうとして。

  「ぅあ、まって……」

  止められた。

  「まだ、このままが……良い……」

  「かわいいやつめ」

  「ありがと、親父……」

  コクヨウは望みどおりにコハクを後ろから抱き締めた。つむじに顔を埋めると、どうしようもない青臭さに混じって、青年特有のさわやかな汗の香りがした。そして、青年にあるまじき雌の匂いもした。

  「親父、大好き……」

  「それ、いろんなやつに言ってるな」

  「……」

  黙り込むコハクを、それでもコクヨウは手放さない。少し意地悪をしたくなっただけだったから。コハクが誰を愛していようと、養子に手を出すようなロクデナシの男に大好きを言ってくれるだけで、とても優しい子だと思った。

  「でも」

  コハクが言葉を漏らす。なにやら恥ずかしがってるようで、紛らわすようにコハクの尾がコクヨウの腰に撒きつく。

  「今だけは……親父だけのモンになりたい」

  だからコハクのこの言葉はコクヨウにとって予想外で、そしてコハクも、腹の中の逸物がググッと硬さを取り戻すのが予想外だったようで。

  「あっウソ、おやじ……そんな……」

  「言ったことは、取り消せんぞ」

  夜明けまで、あと3時間……

  

  

  

  

  

  「もおぉぉぉ!!ちゃんと起きてって言ったじゃん!!」

  「ごめんって……」

  「スマン……」

  現在朝9時。猫三人は墓参りにきていた。コハクが久しぶりに帰宅した理由の半分くらいはこのためだったりする。そのため、真面目に起きて準備をしていたコガネは、不真面目に惰眠を貪っていたコハクとコクヨウにカンカンだった。

  勿論怖いし頭の上がらないコハクとコクヨウは、しかし昨夜の情事のことは気付かれていなかったことに胸をなでおろす。

  夜明けぎりぎりで風呂に入り、自室で寝たふり……をする予定だったのが気付けば泥のように眠りこけ、コガネにたたき起こされたのだった。ぐちゃぐちゃになった布団はタライに水を張って外にほっぽっといてある。帰ったらすぐに洗おう。

  

  三人で手を合わせる。目の前には墓石。金子家の名前が刻まれているその石の下には、何も埋まっていない。それでも気持ちは、祈りは無駄ではないと信じている。

  コクヨウは手を合わせながら、亡き姉夫婦に言葉をかける。最近起きたこと、思ったこと、いろいろなこと。そしてふと、昨夜のことを思い出してしまってちょっと申し訳ない気持ちにもなる。果たして姉夫婦が今のコハクとコクヨウの関係を知ったらなんて言うのだろうか?

  「なぁ親父……」

  そんなことを考えていると、隣にいたコハクがヒソヒソ話をするように声をかけてきた。

  「俺と親父……ってかコクヨウ叔父さんがアレなことしてるって知ったら、お袋と親父、怒るかな……?」

  目を丸くする。叔父と甥とはいえ血なのだろうか、同じようなことを考えていたらしい。というよりも、そんなところまで継がなくても良かったのだが。

  すこし、真面目になって考えてみる。脳内にいまでもはっきりと思い出せる姉夫婦の姿……

  「……怒られるな」

  「だよなぁ……」

  「……ブン殴られた」

  「マジかよ……」

  脳内のバイオレンスな姉夫婦のシミュレート像を語りながら、コクヨウはコハクに目で促す。その先には、一人で供え花の用意をせっせとしているコガネの姿。

  例えば、純真無垢で何も知らないコガネが、今朝寝過ごした理由が戦利品管理ではなく溺れるようなセックスだったと知ったら……

  「……ブン殴るだろう?」

  「ブン殴られるよなぁ……」

  絶対にバレないようにしよう。そう心に決める二人には、そもそも肉体関係を絶つ、という選択肢は揃って持ち合わせていなかったのだった。