特別編・史香のアブナすぎるレース

  某所に存在するコンテナルーム。

  そこはここの主が自身の「楽しみ」の為に設置し、その中には主が思う存分「楽しむ」為の様々な設備が存在している。

  それを知る者は主と主が認めた者のみ―。

  コンテナルームの一角、まだ「比較的浅いレベル」のエリアに新たに運び込まれていた機材。

  二台用意してある機材のうち一台は黒、もう一台は赤く塗られたバイクを模している。

  その先には半ドーム上のスクリーンがかぶさっており、まさにバイクゲームの筐体そのものと言えるその機材に歩み寄る者がいる。

  全身を愛用のオレンジ色のラバースーツに身を包み、満面に妖しい笑みを浮かべながら歩いてくるその人物―村中史香。

  様々なイベントや撮影会にモデルを派遣しているモデル会社の社長であり、規模はそこそこなれどもその手腕は確かで専属モデル達の人望は厚い。

  自身もショートカットを湛えた中性的な顔立ちと普段着ているビジネススーツ越しでもEサイズの胸元が強調される程のスタイルの良さも評判となっている。

  そしてそんな史香こそがこのコンテナルームの主であり、件の機材もまた史香の「楽しみ」の為に入手したものであった。

  そして史香と共に歩いてくる赤いラバースーツの女性。

  史香に負けず劣らずのボリュームとボディラインを持ち、軽いウェーブのかかった髪をなびかせた少しおっとりした顔立ちが印象的である。

  史香の会社に所属するモデルなのか、それともまた別の縁で知り合ったのか。

  ただ間違いないのは彼女はここに来る事を「許された」一人であり、少し顔を赤らめつつも史香と和やかにやり取りをしつつ歩いている。

  そうするうちに二手に分かれながら史香は黒、女性は赤のバイク型筐体に歩み寄る。

  その形はまぎれもなくバイクを模したものではあったが、形作るラインは無機質、機械的な中にどこか艶やかでなまめかしいものを感じさせる。

  上向きか、それとも下向きか。

  人間の女性の形をそのままバイクに落とし込んだ様にも見えるフレームを見ながら史香は軽く舌なめずりをするとおもむろに筐体にまたがる。

  女性も軽く顔を赤らめながら恐る恐る筐体にまたがった。

  バイクのシートを模した部分に腰を下ろし、下腹部を沿わせるとさらにその豊かな胸元を押し付ける様に燃料タンク部に沿わせ、両足をマフラーに重ねる様に沿えた。

  「ふぅ……」

  「はぁ……」

  ラバースーツ越しに感じるフレームとの密着感にしばし浸りながら二人は大きく息を吸い、その勢いでハンドルをぎゅっと握る。

  [newpage]

  「あっ…」

  「うっ…」

  突然シートから走る感覚が女性を「内側から捻る様に」突き上げ、史香を「外側から捻る様に」引き込む。

  それはシートの中に組み込まれていた「プラグ」がそれぞれと「つながった」瞬間でもあった。

  「ああ……」

  「うあ……」

  その感触に二人は軽く吐息を漏らしつつ、ハンドルにそっと手を添えて軽くひねってみる。

  「ううっ……」

  「あぁ……」

  それに反応して「プラグ」が史香を「締め込み」、女性を「揺さぶる」。

  二人のスーツのその部分がさらに特殊な構造になっているせいか、「プラグ」とのフィット感はより確かなものになっているようだ。

  それを確かめる様に二人はさらにハンドルをひねる。

  「うっ、うっ、ううっ」

  「あっ、ああっ、あっ」

  身体の奥から来る振動と刺激に、史香は身体をそらし、女性は筐体に身体を押し付けながら、共に瞳を閉じて軽く声を上げる。

  しかしこれはまだ前戯でしかない。

  「はぁ……」

  「ああ……ああ……」

  だからこそ二人はあえてハンドルを緩め、余韻とさらなる欲求を抑えつつキーにあたる箇所を操作する。

  すると筐体の前にあるスクリーンに光が灯り、レース場を思わせる映像が浮かび上がる。

  始まりを告げるサイレンが響くと二人は改めて上半身をバイクと密着させコースの先に目を向けた。

  史香は軽く息を荒げつつハンドルをひねる。

  「あぁっ」

  史香のバイクから響くエンジン音と共に女性が腰を軽く震わせ、心地よさげに声を上げる。

  軽い恍惚を感じながら女性もハンドルをひねる。

  「おぅっ」

  史香もまた引き込まれるような刺激を受け止める様に声を上げる。

  どうやらこの時点で互いのハンドルが「プラグ」の操作をつかさどる様に設定された様だ。

  それを確かめ合う様にほんのり赤くなった顔を見合わせるのもつかの間、二人は画面の先に改めて目を向ける。

  「あ…ああ…ああっ…」

  「あ…あん…あぁん…」

  バイクが少しずつ熱を帯びる。それに合わせる様に二人の体も熱くなっていく。

  スーツの外から伝わるエンジンの振動と熱気がスーツごしに熱と振動を、そして「プラグ」ごしに内側から刺激と振動を。

  二人の肌を、神経を、闘争本能を―そして性感を刺激する。

  しかし今はその全てを自分達の中に取り込む時。解き放つ時ではない。

  ひたすら溜める。わき上がった熱も、高まる感情も。

  「はぁ…はぁ…あぁ…はぁ…」

  「あぁ…はぁ…はぁ…あぁ…」

  バイクのエンジンの回転は限界まで上がっている。二人もまた「プラグ」が回転氏ながら上下する中で限界ぎりぎりまで引き絞られている。

  いつ果てるともない引き絞りの時。

  そしていつの間にかシグナルが赤・黄・そして…青になった時―全ては解き放たれる。

  「うぁぁぁぁーっ!」

  「あぁぁぁーっ!」

  咆吼とも絶頂ともつかない声を上げつつ二人はバイクのスタンドを上げ、スロットルを絞る。

  同時にバイクは二台同時にスタートラインから解き放たれた。

  果てしないレースの先にあるゴールを目指して。

  [newpage]

  レースはまさに一進一退だった。

  直線コースではその勢いの限り疾走し、カーブでは巧みな動きで適度な減速とハンドリングによるコース取りをしながら切り抜ける。

  抜きつ抜かれつ・離しつつ迫りつつ。

  黒と赤のバイクはそれぞれに熱く激しく己の走りをしながら相手とも絡み合う様に走り続ける。

  それはバイクを操る史香と女性も同じだった。

  ただでさえ顔以外を覆い尽くすラバースーツでその震え火照る素肌をぴっちりと締め付けているのに、バイクのエンジンが吠えるたびに、カーブを曲がりバイクが揺れるたびにその鼓動がフレームを通して全身を振るわせ、「プラグ」を通じて内側を震わせる。

  「うっ、うあっ、あっ、うあっ……」

  「あっ、あぁっ、あっ、あぁっ……」

  フレームが震えながら身体を押し上げ、押し込んでいく。

  そしてその度に対戦相手から注ぎこまれる「鼓動」が「プラグ」を捻る様に震わせては全身を激しく揺さぶらせる。

  その震えはスーツに締め付けられる中でより激しさを増す。

  しかしそれに負けてはいられない。

  荒ぶるエンジンと「プラグ」の勢いを押し返す様にスロットルをつかみ、ステップを踏みつける足にも力が入る。

  あふれるバイクの力や内側から来る刺激と快感に振り落とされまい、流されまいとその全身でカウル、そしてバイクを押さえにかかる。

  素肌の動きを伝える様にラバースーツはしなりながら、体の動きをバイクに伝えていく。

  時に力尽くで押さえつける様に、時にはしなやかに流す様にバイクを操り、昂ぶりながらコースを駆け抜ける。

  露骨な事を言えば今彼女達はバイク、そしてバイクを通じてお互いと文字通り「交わって」いる。

  史香と女性はラバースーツ越しにそのしなやかな腕や脚を、その豊かな胸元や腹部のラインをバイクに挟み込ませるように添わせ、ぐいぐいと押し込ませる。

  さらに「プラグ」とつながり捻る様に突き上げられ、引き込まれながら熱を帯び震え続けるその部分をよりバイクに押し込んでいく。

  スロットルを握る手が、ギアを操る脚がそのたびに勢いを増してエンジンを震わせ、相手の「プラグ」を捻らせる。

  その度に史香も女性もその身に注ぎ込まれる熱量と刺激に震えつつも相手に同様の、それ以上のものを与えながら疾走する。

  直線コースではただひたすらに自らを押し込み押し込まれながら突き進む。

  「うっ、うんっ、ううっ、うふぅ……」

  「あんっ、あうっ、あんっ、あうぅ……」

  バイクが走り抜けるたびに加速と圧力に貫かれ、オレンジと赤のラバースーツが震える。

  カーブでは軽く力を抜く事で少しだけ体も緩む。

  「あんっ…」

  「はぁん…」

  一瞬甘い息が漏れるがそれに浸る間もなくスロットルを握り、全てを引き締める。

  「うっ」

  「くっ」

  全身、特に「つながっている」場所がより強く引き締まるのを感じながら、二台のバイクはより先に出ようとする。

  そしてカーブを抜けると同時に再びバイクと自らにスロットルをかける。

  「うあっ!」

  「おぉっ!」

  バイクは再び全力で突き進む。

  互いに抜きつ抜かれつを繰り返しながらレースは進む。

  見た目は距離を取りつつもバイクを通じて二人はぶつかり合い―そして交わり合いながら昂ぶっていく。

  ラバースーツを跳ね飛ばすほどの勢いをラバースーツとカウルに締め付けられながら。

  この相反するエネルギーの中で彼女達はバイクと同化している様な錯覚さえ感じつつ二人の女性はコースを駆け抜ける。

  しかし、そんなレースにも終わりの時が来る。

  何度目かのグリッド通過の際ファイナルラップを告げるサインが二人の目に入る。

  もう終わり―そんな思いが二人をよぎる。

  もっと走りたい。

  もっと昂りたい、昂らせたい。

  もっと……昂らせてほしい……。

  しかし、時は来てしまったのだ。

  だからこそ二人は全身に力を込めスロットルを上げる。

  その度に「プラグ」が震えながら突き上がり、引き絞り、二人の「エンジン」を熱く燃えたぎらせる。

  「おうっ!」

  「ああっ!」

  大きく身体を反らしながら二人の上げた声は最後の周回・最後の瞬間まで走り抜く宣言のようであった。

  「あぁっ、おうっ、ううっ、おおぉ……っ!」

  「あぁっ、あぅっ、あうっ、うぅぅぅぅ……っ!」

  スーツやバイクのカウルだけではなくコースを駆け抜けるほどその身をより強く締め付けようとする向かい風と空気。

  レースゲームでありながら本当にそれらを感じ、全身を締め付けられる感覚に酔いながらも二人はそれを強く、しなやかに切り込みながら最後のスパートを駆け抜けていく。

  ただひたすらにカウルに身をあずけ、ただ無心でスロットルを握る。

  ただひたすらにラバースーツの締め付けと「プラグ」からもたらされる感覚だけを感じながら二人は走る。

  そして―。

  「おおおおおぉぉぉぉっ!」

  「あああああぁぁぁぁっ!」

  二人の「爆音」が響く中チェッカーフラッグが振られた……。

  [newpage]

  勝敗が決し、しばしの時間が過ぎたコンテナルーム。

  熱気と余韻が今も残る中、史香は先ほどの部屋からさらにその奥―「より深く」楽しむためのエリアに進む。

  その肌はやはりオレンジ色のラバースーツに包まれつつもその豊かでかつ「特徴的な」姿形はスーツ越しにくっきりと浮かび上がらせている。

  更にレースの余韻に上気し震えているであろうその顔はオレンジ色のラバーマスクにぴっちりと包まれていた。

  そこからわずかにのぞく目元と口元、そしてラバーマスクのちょっとした動きが見せる「表情」は紛れもなく余韻―いや、期待を見せている。

  これから始まる「次のレース」は先程のレースとは比べ物にならないほど激しく、熱く、刺激的で―より強い快感をもたらす事に。

  それを思うたびラバースーツ越しに顔は緩み、目元や口元は艶を見せる。

  全身を覆い締め付けつつも大きく揺れる豊かな胸、そして熱く高ぶる「一点」を隠しきれないほど示すラバースーツを光らせて史香は向かう先。

  そこにはまたバイクゲームの筐体があった。

  ただ先程と少し違うのはバイクは一台だけ、そしてバイクの本体にあたる場所に人一人が収まるスペースがある事。

  そしてその横には顔まで赤いラバーマスクに包まれた女性の姿があった。

  彼女もまたこのあと始まる「レース」に心身を昂ぶらせていることは間違いない。

  マスク越しに浮かぶ表情、身をしならせる仕草はそれを浮き彫りにさせている。

  マスクからのぞく瞳を交わし、口元に笑みを浮かべる二人。

  さて、このあとどちらが「バイク」となり「レーサー」となるのか。

  ただ間違いない事はまもなく史香と女性はより強く、激しくそのラバースーツ越しに身体を重ね……「繋がった」。

  そして―。

  「おおうっ!」

  「あああっ!」

  いつ終わるとも知れぬ「耐久レース」が始まった―。

  了