リザードマンに噛まれて同族化TSFして産卵しちゃうやつ(サンプル)

  「ク、ソ……、しくじったな」

  左腕についた噛み跡を、布で軽く押さえつける。薄くにじむ血が腕を伝って落ちていくのを眺めながら、俺は舌打ちをする。

  目の前には大きな爬虫類のような見た目をした、二足歩行の魔物。通称リザードマンの――力尽きた体が床に倒れていた。

  ここは一面石造りの床や壁に覆われた、ある古い迷宮の奥深く。財宝を見つけては持ち帰る、この世界では一般的なトレジャーハントを生業とする人間の間ではかなり有名なダンジョンだ。

  有名な理由もシンプルで、発見から十年経った今も攻略が完了していないためだ。地下深くまで伸びているこの迷宮はどれほどの規模のものなのかすら判明しておらず、含有魔力からの概算では半分も進んでいないとさえ言われている。そのため現在も攻略を試みる人間は後を絶たず、俺も例にもれずその一員だったということだ

  「ぐ、身体が……重い」

  こいつに噛まれた傷が熱を持ったみたいにジンジンと疼く。俺は壁に背中をつき、その場に座り込んだ。

  不意打ちは警戒しているはずだった。廊下の角を曲がった先、小部屋の入り口の左右、柱の裏。常に死角に意識を巡らせ、魔物の気配を感じ取る。だからこそ、一発目を躱すことは難しくなかった。

  問題は、回避した方向だった。咄嗟のステップで距離をとった俺の足元で、淡い不穏な光が放たれたのだ。右足が踏み抜いていたのは、束縛の魔法陣。数秒の間その場から動けなくなる単純な効果だが、戦闘においては致命的なデバフ。足首を縛る枷のような魔力の輝きが消える前に、その魔物は動いた。

  俺の身体より一回り以上大きな体躯に長い尻尾を器用に使って勢いをつけ、鋭い爪を剥き出しにして飛び掛かってくる。右足は地面に吸いついたみたいに動かず、上半身を捻りながらなんとか剣の腹で衝撃を受け流すものの、体勢を大きく崩された俺は追撃への対処が間に合わない。

  振り返る間もなく、奴は俺の左腕に防具ごと噛みついた。耐久性より可動性を優先した革製の装備は、その牙を完全には防げない。鋭い痛みに顔をゆがめながら、俺は動きを止めた喉元へ剣を突き立て決着となったのだった。

  「こんな、罠さえなければ……」

  悪態をつき、とうに効力の失われた魔法陣の跡をにらみつける。平時ならいなしきれる速さだっただけに、不用意に罠を踏んだ自分に苛立ちも感じる。

  だがとにかく、今はここを出ることを考えなければ。このままでは治療もままならない。金持ち連中にはいわゆる"回復薬"なんていう高価なアイテムも存在するが、あいにく俺は持ち合わせていない。

  「早く、上に……戻らないと……」

  意に反し、倦怠感が身体にまとわりついて足に力が入らない。左腕の感覚はいつの間にか痛みよりも痒みのように変化して、傷口を押さえる右手に思わず力が入る。

  「あああっ!!ぅぐ、ぁ……!」

  突然、心臓が跳ねたかのような強い衝動が、身体の内側から沸き起こった。血が沸騰するみたいな熱が全身を襲い、耐えるように胸を強く押さえつける。荒く息を吸って吐くたび、肺が、肩が、膨らんでいくような違和感。そして、それに伴って防具が窮屈になっていく圧迫感。苦しくなって、俺は左手を床についた。

  「が……っ、ぅ!?」

  俯いた目線の先、。地面に触れたはずの俺の手は、深い緑色の鱗に覆われていた。指の間にあるのは小さな水かき。力んだ拍子についたのか、地面には鋭利な爪跡が残っている。

  「なんだ、これ……!」

  滲む視界の中、震える手を持ち上げる。思い通りに動くそれは、本来見慣れたはずの自分の腕よりずっと大きい。握りしめればごつごつとしていて、鱗の薄い部分も硬い皮膚で覆われているのがわかる。

  「うそ、だ……ぅ、ぐっ!」

  頭が割れるような痛みと耳鳴りが響く。食いしばった歯は鋭く尖り、隙間からは荒い息遣いが溢れ出て、メキメキと骨が軋むような音をたてながら骨格が変化していく。鼻先は前に突き出して、耳は小さくなり存在感を失った。鱗が頭部にも広がって、人間の面影はもはやない。

  「は、ぐっ、ぅ……がぁっ」

  頭痛だけではない。腹部が溶けるように熱い。骨格や皮膚だけでなく、まるで臓器ごと作り変えるような、熱。不快感が全身を脈打って、必死に大きく息を吸う。

  腰を背中側へ押し広げられる感覚が襲う。背骨を延長するみたいに太く肉が伸びている。足ががに股になるように骨盤が変形し、膝から下が逆関節に適応していく。

  「っぁ、ぅ、ぐぁ……」

  半開きのまま口を閉じる余裕もなくなって、だらりと垂れ下がる舌先を伝って唾液が地面へ糸を引く。呼吸を落ち着けようとゆっくり肩で息をするたび、身体の変化で内側から裂けてしまった衣服の切れ端がずり落ちる。

  鏡のように剣に自分を映してみれば、そこにいるのはどこをどう見ても一匹のリザードマン。全身を覆う深緑の鱗に身長ほどある大きな尻尾。水棲生物特有の水かきと縦長の瞳孔を持った金色の瞳。所々に纏ったままの防具の断片が、かえって自分がもう人間ではないことを強調しているように感じる。

  「ぐるぁ……」

  声帯が変化した影響なのか、言葉を話すことも出来なくなっていた。こんな状態では、人里に戻る事すらできない。地上に戻るまでの間に他の探索者に見つかって狩られるのが関の山。かといって、他にどうすればいいのかなんて一つも思いつかない。思考が堂々巡りを繰り返し、絶望感だけが募っていく。

  ふと、近くに転がるリザードマンの亡骸が目に入った。今となっては彼女とほとんど同じ姿になってしまったからか、少しだけ同情の気持ちが芽生えてしまう。彼女に噛まれさえしなければ、こうはなっていなかったのに。噛まれた左腕の傷は、いつの間にか無くなっていたが。――あれ、どうして俺はこいつが雌だってわかったんだ。

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