狼男子高校生が不良の豚先輩にいじめられる話

  「お前ら! これ以上痛い目にあいたくなかったらさっさと出てけ!」

  変声期途中のやや高めのハスキーボイスで、狼獣人の少年が吠える。

  大神玉緒(おおがみ たまお)。十五歳。高校一年生。

  高校生とはいえ、一年坊主。つい数週間前まで中学生だったということもあって、顔つきに幼さが残る。四月一日が誕生日の早生まれとあって、高一とはいえ実年齢は同級生より若いのだ。その証拠に、目つきが鋭い狼獣人にしてはつぶらで大きな瞳。仔犬気分が抜けきらない風体だ。

  体つきはそれなりに引き締まっているとはいえ、まだまだ発展途上。

  身長はもうちょっと欲しい160cm。体重ももっと筋肉が欲しい49kg。

  一年生の間は先輩を立てて大人しくし、進級して体が大きくなったら自分を出していく……というのが一般的な男子高校生の生存戦略。

  だが、大神はそうはしなかった。

  「なんだよ! テニスコートなんて誰も使ってねえから良いじゃねえか!」

  「今からオレが使うようになんだよ!」

  ほっぺたに青あざが付いた虎獣人の文句に、牙を剥き出しにしながら言い返す。

  虎の方が身長が高く、一年先輩だというのに、大神は全くそういう序列を気にしていない。ラフに手入れされてややゴワついた灰色の体毛を詰め込んだ、真っ黒な学ランを第二ボタンまで外して、イキッている。若さゆえの無鉄砲。時にはそれが状況を打開するエネルギーとなることもあるが、“ここ“ではそうはいかない。

  「中学気分引きずってんじゃねえよ! アレ高じゃこんなん通用しねえぞ!」

  まぶたを赤く腫らした獅子獣人が負け惜しみを言う。

  威風堂々なたてがみを持つ彼だが、傷を負っているとその風格も台無しである。

  ちなみに彼は三年生。大神から見て二年先輩である。

  「アレ高がなんだってんだ! どこだろうとオレ流を貫いてやるぜ!」

  ビシッと獅子を指差して大神がそう宣言する。

  言いながら。

  (決まった! 今のオレ、かっこいいんじゃね!?)

  などと思ってるのだから男子高校生は始末に負えない。

  アレ高とはここ、私立荒田高等学校(しりつあれたこうとうがっこう)のこと。 略してアレ高。

  全寮制の男子校。偏差値は極めて低く、生徒の質もすこぶる悪い。

  親が手におえなくなった悪ガキたちのていの良い押し付け先となっており、校内では不良が闊歩している。

  ここのテニスコートも不良どものたまり場になっており、虎と獅子がうんこ座りしながらタバコをふかしてダベっていた。

  そこを大神が襲撃したのだ。

  「んだあ? おいこらガキ。俺の舎弟になにしてくれとんじゃ!!」

  テニスコートに突如響く怒号。

  濁った低い声が空気を震わす。

  声の発信源は。

  「いのこざさん!!」

  虎と獅子が目を輝かせてその獣人の名を呼ぶ。

  豚座太(いのこざふとし)。

  縦にも横にもでかい豚獣人の十八歳で三年生だ。

  学ランの前ボタンを全開放し、オラついた派手な赤色のシャツに包まれた豊満な上半身を外気に晒しながら、豚座はズボンのポケットに両手を突っ込む。そして、鋭い三白眼で大神を睨むのだ。足元に生地が余ったオーバーサイズなダボダボズボンを腰履きにして、彼は自らの立ち位置を雄弁に周囲に喧伝していた。

  かかとを履き潰した革靴。

  日常的に繰り返されたケンカ擦れて生地が薄くなって黒が薄くて灰色みのある学ラン。まごうことなき不良の装いである。

  ユーモラスな印象を持たれがちな豚獣人だが、豚座はいつもいかめしい表情をしているせいで、見ていても全く和まない。豚座の切れ長な目つきのから放たれるナイフのように鋭い視線は、一瞥されただけでそこいらの不良は恐怖で縮み上がってしまう程。身長182cm、体重112kgとまるで相撲取りのような恵体もあいまって迫力が物凄い。

  「はあ? いのこざあ? 変な名前ー」

  だが大神は完全に馬鹿にした調子だ。

  小柄といえど、その運動能力の高さから中学最強で負け無し。

  地元の中学校という極めて限定された時間と場所で育まれた幼い全能感を引きずってるせいで、やたらと強気で生意気だ。

  「こんのクソガキャア! 死んどけやあ!」

  瞬間湯沸かし器のような速さで豚座は悪口に素直に反応してキレる。

  恐ろしく器の小さい豚座は自分への侮辱を決して許さないのだ。

  巨体に似合わないスピードで、一気に大神との間の距離をぐんと詰める。

  「おっと! 俺は簡単には捕まらないぜ!」

  小柄な体躯を活かした敏捷性で、ぴょんと後ろに飛んで距離をとる。

  相手はデカブツ。至近距離一辺倒ではさすがに分が悪い。

  ゆえに

  「そーらっ!」

  大神の体が空中に躍動する。

  強靭な体のバネを利用した跳躍。

  飛びつく勢いを利用した飛び蹴り。大神の得意技だ。

  中学時代はこれでヤンチャな生徒たちをのしてテッペンを取った。

  いくら大神が小柄だとしても、この弾丸のような一撃を喰らったらひとたまりもない……はずだった。

  豚座の太鼓腹のど真ん中に足がめりこむ。肉が潰れるぶにんとした感触。

  普通なら、ボディーをやられて腹を押さえながらうずくまってダウン。

  だが、豚座は普通ではなかった。

  「ヘナチョコがあ……ンなもん効かんわあ!!」

  「なっ!?」

  膨大な贅肉と、その下に隠された獰猛な腹筋によって豚座は衝撃を吸収する。そして、懐に飛び込んできた大神の矮躯に太い腕を回していとも簡単に捕らえる。

  「ばっ! 放せ! キモいんだよ豚野郎!!」

  体をガッチリとホールドされ、ご自慢のスピードを封じられてもなおの減らず口。

  力量差を測れない愚かな言動だが、豚座にとってはそっちの方が都合が良い。

  「ガキ。まだ自分の立場が分かってねえようだなあ? ああ!? いっちょ、“わからせ“、行っとくかあ?」

  豚座はにたあっと醜く笑うと、大神の背中に回した腕にぐっと力を込める。

  この程度のガキ、ケンカにすらならない。

  殴る必要すらない。

  そんな相手にはこれで十分だ。

  圧倒的な力量差を誇示するプロレス技、その名をベアハッグ。

  はたから見れば、豚座が大神を抱きしめているかのよう。

  だが、実態は違う。

  「がっ……!! や、やめろクソ豚あ!」

  細身な胴回りを万力のようなパワーで抱き込まれた大神の背骨と肋骨が悲鳴をあげる。腹回りを強烈な膂力でもって圧迫されることによる激痛と息苦しさ。

  たまらず大神はデタラメにパンチやキックを豚座の巨体に乱れ打ちするのだが。

  「ぬるいのう。真面目にやっとんのかワレエ」

  豚座はバカにしたように笑うだけで全くのノーダメージ。

  渾身の飛び蹴りが通用しないのだから、この程度の悪あがきなぞ屁でもないのだ。

  悪趣味なことに豚座は、大神の苦しむ様を楽しむように徐々に徐々に抱き締める力を強めていく。

  「う……ご……」

  大神の体を軽々と持ち上げ、彼の体重も利用してきつくベアハッグしてやれば、憎まれ口を叩く余力もなくなる。

  さっきまでの決死の抵抗も途絶えて、空中にだらんと力なく両脚が垂れ下がる。

  「おうおう。だいぶしおらしくなったのう。おい、ガキ。何ぞワシに言いたいことあるかあ?」

  ヤニに黄ばんだ歯を見せながらニタニタする豚座。

  発言内容とは裏腹に、大神を締め付ける力は物凄く、気道を圧迫された彼がとても言葉を発せられる状況ではない。

  「や……め、て……し……」

  「ああん!? なにワシに命令しくさってんのじゃこのクソガキャア!!」

  怒髪天の豚座は一気に最大パワー。

  完全に締め落とす勢いで、大神をぎゅうぎゅうと絞りあげる。

  「ぎゃひい……! ご、ごめ……なさ……」

  ブクブクと口から泡を吹きながら大神が言葉らしきものを吐き出す。

  酸素を求める口元からは唾液が溢れ、犬科特有の平べったい舌ベロが外側にピンと突き出されていた。

  肉は潰され、骨は軋む。

  気道は詰まり、呼吸不全による意識レベルの低下により視界がぼやけて暗くなっていく。

  大神はもう限界であった。

  「ふん。おもろな」

  唐突に、大神を絞り上げる力が無くなる。

  豚座はおもちゃに飽きた子供のような、つまらなそうな表情のまま大神をテニスコートに放り投げる。

  大神の小さな体が土の地面の上を勢い良く回転しながら着地する。

  硬い地面に向けた投げであり、これだけでもだいぶ痛いはずだがさっきのベアハッグに比べたらだいぶマシ。

  制服と頭髪が砂まみれになる。

  口の中がジャリジャリする。

  テニスコートを背にして見上げるは春の空。

  全身が痛いが、これで勘弁してもらえるなら御の字。

  悔しさを感じるのも、リベンジを計画するのもとりあえず後で良い。

  今は苦難が過ぎ去ったのを喜ぼう。

  そう、大神は思っていたのだが……

  「ワシを退屈させた罰じゃ、クソガキ。これでも喰らっとけ」

  責め苦はまだ終わらなかった。

  テニスコートに仰向けに寝転がる大神の小さな頭を跨いだ豚座は、自分のベルトに手をかけてカチャカチャと冷たい金属音を響かせながら外しにかかる。

  何が起こっているのか、大神には理解できなかった。

  それほど時間を待たず、豚座のズボンが腿まで落ちる。

  黄ばんだ六尺褌が食い込んだ豚座のデカ尻が大神の頭上にて露出された。

  「な……!? や、やめ……」

  「仕置きじゃ。観念せい」

  涙目になって懇願する大神を一蹴して、豚座の尻が顔面に迫る。

  より精神的にいたぶるためにゆっくりと、双丘が降りていく。

  膨大な贅肉をがっしりとした大臀筋で支えた巨尻は物凄い質量で見るだけでどっしりとした重量感。

  豚獣人特有の桃色の肌はひどく荒れており、右の尻たぶには大きなおでき。

  さっきのケンカで豚座はほとんど運動してないはずだが、デブ特有の暑がりな体質から表皮はじっとりと汗で濡れており、しょっぱい臭いのする水滴を大神の顔面にポタポタと垂らす。

  顔に感じる嫌な水の感触。

  鼻に感じる嫌な豚座の臭い。

  目に感じる嫌な尻の像。

  その全ての不快な情報が大神を責め苛む。

  だが、こっぴどくベアハッグでやられた大神に抵抗する術もない。

  ゆっくりと迫る巨尻に鼻先が当たりそして。

  「よっこいせーと」

  おっさんくさいかけ声と共に、お尻丸出しな豚座が大神の顔の上に腰掛けた。

  「んんんー!!!!」

  臭い! ぬめぬめする! そして何より重い!

  豚座の118kgの体重全てが顔への圧力になる。

  頭蓋がごりっと嫌な音を立て、圧迫された脳が発熱して大神の認知を狂わす。

  鼻先に、豚座の尻に食い込んだ後ろみつが当たってるのが繊維の感触でわかり、デブな男子高校生の汗臭さと雄臭さ、そして拭ききれなかった汚物の臭いが混じった強烈なスメルが狼獣人の鋭敏な嗅覚を犯す。

  そして大神に降りかかる更なる不幸。

  「ふー……」

  ぶぽっという盛大な爆発音と共に、なんと豚座は放屁をかましたのだ。

  大神の顔を尻の下に敷いたままで。

  六尺褌が吸収しきれなかった生温かい気体が大神の長いマズルの先の鼻にダイレクトに送風される。

  肥溜めの底のような、熱を伴ったアンモニア臭。

  狼獣人である大神の鋭い嗅覚にとって、それは致命傷となった。

  「きゅ……ン……」

  車に轢かれた子犬のような、か細い悲鳴をあげて大神は気絶した。

  「なんじゃ、K.Oかいな。屁で気い失うたあ情けないのう」

  ワハハと愉快そうに、本当に愉快そうに豚座は笑う。

  弱者を嬲って嘲る。それが本当に楽しくてしょうがない。

  テニスコートのど真ん中で、悪の笑い声がこだました。

  「豚座さん! あざっしたー!」

  「したー!」

  虎と獅子は九十度のお辞儀を豚座に送る。

  徹底した低姿勢。

  強者に対してはこうするしかない。

  「ん」

  対する豚座はそれに気を良くすることもなく、立ちあがってつまらなそうにズボンをあげていく。

  ベルトを一番外側の穴に引っ掛けて緩く留める、その時であった。

  なんとなく目線を下げて、大神の下半身をぼんやりと見る。

  そして気づく。

  「こいつ……ちんぽデカくねえか?」

  「ふー……これで良し、と」

  荒田高校の校舎裏。

  スパナを持った右手の甲で、茶色い肌の牛獣人がひたいの汗を拭う。

  なだらかにカーブしながら白いツノが天に向かって伸びる。

  頭の両側からツノを生やした彼の名は、牛頭踏悟(ごずとうご)。

  荒田高校二年生。十七歳。

  鈍重なイメージを持たれがちな牛獣人であるが、彼の面立ちは整っており涼しげな目元もあいまって外見だけなら爽やかスポーティなモデルのよう。

  豚座をはじめとした、上下に潰したアンパンみたいな顔面の不良が跋扈するアレ高にあって、掃き溜めにツルといった様態で整った容姿のおかげで彼の周囲だけ場が爽やかに澄み渡っている。

  だが、アレ高に居る生徒の例に漏れず、彼もまた不良。その証拠に学校指定の制服もまともに着ていない。

  学ランの上は袖で腰の周りをぐるっと回って前側で縛って止めてあり、上半身を覆う役割を果たさず、腰部にくくりつけられているだけ。春先の肌寒い空気にもめげずに晒された真っ黒なタンクトップは柔らかい茶色の肌色に漆黒の色合いを加えてキュッと印象を引き締めている。筋肉質な牛頭の肉体美を誇示するかのように襟ぐりが深く、牝牛の胸のように肥大化した大胸筋の深い谷間を上から晒している。背中側もバッテンを作るように狭い布地が走っており、鬼瓦のような凹凸をたたえた強靭な背筋を見せつけている。筋肉の凶悪な筋がびっしりと走り、血管が浮き出た丸太のように太い両腕にはひし形をチェーン状に繋げたようなデザインの黒いタトゥー。筋肉だけでも周囲を威嚇するのに十分なのに、茶色肌に張り付くその黒い模様は彼の攻撃性を強く演出していた。

  牛頭の目の前には、彼の手によって先ほどマフラーを外されたゴツいバイク。

  消音機能を失った牛頭のバイクは今夜も爆走し、善良な人々の安眠を不快な騒音で奪うことだろう。

  「おう、踏悟(とうご)。またここにおったか」

  「太(ふとし)先輩! こんちゃーっす!」

  牛頭は巨体に似合わない素早さでしゅっと立ち上がると九十度のお辞儀。

  不良の世界は自由なようでいて、その実上下関係が厳しい。

  人様に平気で迷惑をかけるくせに、内輪での礼儀作法にやたらとうるさいのだ。

  「あ、すいません。前言われた刺青(いれずみ)の良い店探すっての、もうちょい時間もらえますか?」

  許しを乞うような曖昧な笑顔。

  牛頭は徹底して低姿勢だ。

  牛頭は身長185cm体重92kgという立派な体格。横では豚座に負けるが縦は牛頭が勝る。体格的にはそこまで劣ってるわけではないのだが、それでも豚座の喧嘩の腕は凄まじい。

  上級生であっても格下と見なせば容赦なく舐めてかかる牛頭だが、相手との力の差を見極めて自らの振る舞いを決めているのだ。

  「ん。別に急いでおらんからゆっくりでええ」

  まっさらな桃色の肌を持つ豚座は、良い刺青師を牛頭に探してもらっていた。タトゥーに詳しい牛頭なら刺青のことにも明るいだろうという人選だったが、近いようで遠いタトゥーと刺青の世界。

  ツテを頼ってほうぼうを探しているが難航しているようだ。

  「そう言ってもらえると助かりますけど……組に入る頃には痛みが引いてないと困りますから……」

  豚座が刺青を入れたがっている理由はただ単にオラつきたいからではない。

  豚座は卒業後に地元の暴力団に入ることが決まっており、極道者として生きるための覚悟の印として刺青を入れようとしているのだ。現代の男子高校生として珍しくも六尺褌を締めているのも、ヤクザ映画で見た漢たちの装いを見習ってのこと。

  豚座には一生を悪と暴力に費やす覚悟があるのだ。

  豚座の強さの源泉は恵まれた体格でも規格外の体力でもなく、その揺るがぬ悪性。そこらの不良とは一線を画すマジモンの悪に喧嘩を売ってしまった大神は本当にアホタレである。

  「刺青なんざ、組入った後でもええ。それより、今はこれじゃ」

  言いながら豚座は、背中におぶっていた大神を乱暴に地面の上へ放り投げる。

  またしても地に転がる大神の体。

  地面に叩きつけられても、失神しているせいで痛みが伝導しないのがわずかな救いか。

  ボロ雑巾のように転がる大神の体。買ったばかりの学ランも、土埃に塗れて黒い布地が早くも色褪せていた。

  「ほとんど中坊じゃないっすか。新入生ボコんのはさすがに可哀想?」

  優しげな物言い。に、見せかけて牛頭の顔は醜く歪んで白い歯を見せてニタリと笑っている。

  言葉とは裏腹に、哀れな被害者への同情は皆無でその無惨を楽しんでさえいる。

  彼もまた、豚座と同類。決して他者の痛みに共感しない殺伐とした獣である。

  「アホ抜かせ。こいつ、ワシの舎弟どもに手え上げる跳ねっ返りじゃぞ」

  「舎弟?」

  「ほら、あの……虎と獅子の……」

  「舎弟の名前くらい覚えといてあげましょうよ……」

  豚座は、その絶大な暴力によって荒田高校を支配している。

  いわば、この学校における不良のリーダー。

  だが、彼にあるのは力だけ。

  舎弟たちをまとめあげる器も、彼らに向ける情もない。

  虎と獅子を助けたのも、舎弟をボコされたらメンツが傷つくという自分本位な理由だ。

  ゆえに、色々と便利に使いぱしりにしている虎と獅子の名前を覚える気は毛頭ない。

  「どうでもええわ、そんなん。それより、こいつのちんぽ見てみい」

  豚座はかかとを踏み潰した革靴の先で、大神の腰部をツンツンと蹴る。

  「えーいつからそんな趣味になったんすかあ、太せんぱ……」

  冗談めかして笑いながら、大神の股間部に目をやると牛頭の表情から笑みが消える。

  「な? デケえじゃろ?」

  「デカいっすね」

  大神の股間。真っ黒な制服ズボンの中心はもっこりと大きな膨らみをたたえていた。

  布地が外側に折れて、そういう風に見えてるのではない。

  明らかに、確かな質量を内部に抱えた結果としてのこの膨らみだ。

  豚座も牛頭も、神妙な面持ちで大神の股に視線を注いでいる。

  世の男の大部分がそうであるように、豚座と牛頭もまたちんこに対しては何よりも真剣なのだ。

  「で、どうするんすか?」

  「起こす。んで脱がす」

  豚座の答えは明快であった。

  ただ、大神のちんぽを見たいだけなら失神してる間にパンツを脱がせてしまえば良い。それが一番簡単だ。

  だが、それをしない。

  抵抗される煩わしさを知りながら、わざわざ起こす。

  それもこれも、大神に表層意識のレベルで強制露出の屈辱を味合わせるため。

  ここにいる不良二人は揃いも揃ってサディストなのだ。

  

  「じゃあ……いきますね」

  「おう、やれや」

  牛頭は、大神の開かせた両脚の間に自分の体を入れる。

  左右の脚をそれぞれ腰に抱えた牛頭は、自分の土足の右足を大神の股へ押し当てる。

  この体勢はそう。世の小学生男子の多くを苦しめたあの技。

  電気あんまである。

  「起きな! 一年坊主!」

  牛頭の筋肉質な足がグッと股間を踏み潰して、生のコンクリを締め固めるバイブレーターの如くブルブルと小刻みに振動する。

  「いぎゃあああああああ!!」

  男としては耐えられない急所に打ち込まれた致命的な衝撃に、気絶の安寧から勢い良く大神が飛び起きる。

  電気あんまの技名そのままに、大神の小さな体はまるで感電したかのように痙攣。竿と玉を足で繰り返し踏みしだかれて、体の中心に腹が痛くなるような鈍痛が居座り、単なる痛みだけでなく体調の悪さとなって大神の肉体のダメージとなる。男性機能へのダメージを警告する肉体から伝導する絶大な痛みに大神はもう涙目だ。

  「おおー、起きました起きました」

  「ブヘヘ! なんぞ生意気な一年坊主でも金的にはかなわんか!」

  起きた大神の目に飛び込んできたのは、股間を踏みつけながら意地悪く自分を見下ろす牛頭とブタ鼻からぶほおっと息を吐きながら汚く笑う豚座。最悪な目覚めである。

  喧嘩で気絶するまでボコッて終わりとはならず、仲間まで呼んできたという状況の悪化を瞬時に悟って大神の背中の毛が嫌な汗でじっとりと濡れる。

  震えそうな体を何とか抑えつけながら、固唾を飲んで相手の出方を見極めようと豚と牛の両方を視界におさめながら待っていると。

  「おいガキ。テメエ、チンポでかいじゃろ?」

  「は?」

  予想の遥か下を行く質問を豚座にぶつけられて思わず大神は呆気にとられる。

  いくらなんでもバカバカしすぎる。

  「はあ? んなの、どうでも良いだろ」

  舌打ちしてそっぽを向く大神。

  あれだけ豚座にこっぴどくやられたのに全く身の程というものをわきまえていない。

  「あららー。そんな言い方しちゃって良いのかなあ? 大神玉緒クン」

  「なっ!? なんで俺の名前を!?」

  犬歯の生えた大口を開けて固まる大神の前で、牛頭は生徒手帳と財布とスマホを落とす。どれも大神のものだ。

  「名前とご実家の住所。エッチな検索履歴まで全部見ちゃった。お姉さんに優しく筆下ろしされる系が好きなんだねー。良い趣味だなあ。でもダメだよー、暗証番号0000になんかしてちゃあ」

  にちゃあと歯茎を見せて牛頭は嗤う。

  「あ、あと財布からおこづかい貰っちゃったけど良いよね?」

  言葉だけなら許可を求めるような内容。

  だが実質は強要。

  慣れきった調子で大神の財布から抜き取った四千円を豚座に渡す。

  手間賃だとでも言うように豚座から分けられた千円をポケットに捩じ込む牛頭を睨みながら、大神は豚座に対してとは違う恐怖を覚えた。

  豚座はとにかくパワー。圧倒的な力でねじ伏せるわかりやすく暴力の権化だ。

  一方の牛頭は、ヘラヘラと対応する薄皮一枚の柔和さの内に悪辣さを秘めている。手の内がわからない不気味さという一点では豚座より牛頭の方が上を行く。

  「ま、そんなワケだからさ。おちんちん見せてよ玉緒クン。減るもんじゃないし、良いでしょ?」

  「どういうワケだよ!」

  牙を剥き出しにして吠える大神を前にしても牛頭は全く動じない。

  アレ高の不良どもに揉まれてきた牛頭にとっては、こんなの可愛い仔犬に吠えられてるようなものだ。

  「あららー、この状況でまだそんな態度? 玉緒クン、可愛い顔してガッツあるんだねえ」

  アハハと上を向いてイケメンタレントのように爽やかに笑うと、上体を起こした大神の背後に牛頭は回ってしゃがみこむ。

  太い腕を後ろから回して大神の上半身を固定して言う。

  「見せてくれないなら無理矢理しかないよね。太先輩! 下の方お願いします!」

  「おう! 任せろや!」

  「はあ? お前らふざけんなよ! ばっやめろ!!」

  陰気な校舎裏に大神の悲痛な叫びがこだまする。

  だが、誰の耳にも届かない。

  よしんば届いたとしても、助けに入る生徒も教師もここにはいないのだ。

  ここはアレ高。悪が支配する最低の学校なのだ。

  

  「や、やめろ! やめろってば、この変態豚野郎! 他人のチンポ見ようとするとかホモかよ!」

  「あれー? 太先輩、どっちもイケちゃうって知らなかったの玉緒クン」

  「え」

  大神は絶句する。

  単純に殴られたり蹴られたりする暴力に対するのとは違う恐怖に悪寒が走る。

  「アホ抜かせ踏悟。ワシは穴だったら何でもええだけじゃ。ホモちゃう」

  「だってさー。いやー多様性って素敵だよねー」

  「全然素敵じゃねえよ! くそー! お前ら放しやがれー!」

  身をよじり、両脚をバタつかせて抵抗するが牛と豚の腕力で簡単に抑えられてしまう。

  暴れる両脚を尻の下に敷いて動きを封じた豚座は、カチャカチャと金属音を鳴らしながらベルトを緩めていく。

  細身な体を締め付けるために一番内側の穴に引っ掛けられたピンを外し、余った長さをしゅるしゅるとほどいていく。

  「や、やめろ……やめてってば!」

  脱衣の工程が進むほどに、弱気になり涙目になっていく大神。

  だが、可哀想になったからやめてあげようなどという良心は豚座にも牛頭にも期待できない。むしろ、相手が弱まる事に愉悦して更に責め苦を強めるだけで逆効果なのである。

  「ほんじゃ行くでえ」

  豚座が左手を下に入れて大神の腰を浮かせて、右手でズボンの裾をグッと下げにかかる。

  いよいよもって脱衣の最終段階だ。

  「やめろおおおおお!」

  大神の悲痛な叫びも虚しく、勢い良くズボンがずり下げられて膝下に布を折り重ねて無惨に引っかかる。

  股間と太ももに感じる春先の冷気に大神は絶望した。

  「ブヒッ! なんじゃこりゃあ!?」

  「わー、玉緒ちゃんったらかーわいー!」

  「く……」

  完全にバカにした表情で嘲笑う豚と牛。屈辱のあまり狼は羞恥に熱くなる顔を伏せて下を向く。せめて視界だけはと現実逃避するが、不快な状況がそれで止まるわけではない。

  「まさか高坊になっても、まっちろブリーフたあなあ。ほんとガキじゃなお前え!」

  「うう……」

  豚座の指摘通り、大神は白ブリーフを穿いていた。

  こんなの今時の男子小学生でも穿いてるのは珍しい、子供っぽい下着だ。

  中学が終わる頃にはほとんどの男子が卒業しているというのに、大神はそれを穿き続けていた。

  高校進学に合わせて新調した白ブリーフは輝かんばかりの純白で、大神のフレッシュさを表現しているかのよう。

  野暮ったいフォルムの真ん中には男の仔の証がもっこりと、前閉じを内側から押し広げんとばかりにこんもりと盛り上がっていた。

  「いやー、でもこんなパンツじゃあ着替えの時恥ずかしいっしょ? 体育とかどうするつもりだったのキミ? こんなの見られたらクラスの笑われものだよねえ」

  「フン、どうせトランクス穿いてみたけどスースーするから戻してママーとか言ったんじゃろ。お? クソガキらしく小学生からやり直すか?」

  下着の幼児性をこれでもかとイジる豚座と牛頭。

  服装に振る舞い、喋り方。

  そのどれかが少しでも他と違ったら容赦なく嘲笑う。

  学生としての規範を外れているというのに、寛容性のかけらも無い彼らはそんな自省は皆無で他人のちょっとした違いを許さず徹底的に辱める。

  こんな目に遭うなら、下着を変えておけば良かった。

  せめて、穿き心地が似ているボクサーブリーフに。

  だが、それができない事情が大神にはあったのだ。

  「で、どうしてブリーフなんて穿いてるの玉緒クン? ぴっちりしてて太ももがあいてるのが良いならジブンみたいにビキニにすれば良いのに」

  「それかワシみたいに褌とかな! ワハハ!」

  口々に勝手な事を言う先輩方に、大神はぼつりと言い返す。

  「……ブルドン……」

  「ああ!? 聞こえん。男だったら腹から声出さんかい!」

  ひたいとコツンと小突かれて大神がきっと睨み返しながら決然と言い返す。

  「ウィンブルドンに出るためだって言ってんだよ! このクソ豚あ!!」

  精一杯イキがって語気を強めて言うが、涙を目の中いっぱいに溜めている状態ではまるで迫力がない。

  「はあ? ウィンブルドン?」

  予想外のカタカナ語が飛び出して、罵られた事を一瞬忘れてポカンとする豚座。

  そこに牛頭はすかさず補足説明を加える。

  「アレじゃないですかね? テニスの世界大会の。ほら、たまーに深夜にテレビでやってる」

  「そういやコイツ、テニスコートで喧嘩してたな。じゃが、それがブリーフと何の関係が……」

  「ウィンブルドンはパンツまで白って決まってんだよ! だから、しょうがないんだよ……」

  ウィンブルドンはテニスの世界的大会の開催地であり、トッププレイヤーが集まる聖地である。

  そこでは厳密なドレスコードがあり、選手は下着を含めて全身を白で統一しなければならない。そのための白ブリーフ。白でありさえすればトランクスやボクサー、何なら豚座みたいな褌でも良いのだが、テニスは繊細な肉体のコントロールが要。下着が変われば身体感覚も当然変わってしまう。それを忌避して、慣れた白ブリーフを大神は穿き続けているのだ。そういった事情があるにはあるのだが……

  「ブッヒヒヒャア!! ウィンブルドン!? このクソみてえなアレ高からウィンブルドンだってえ!? ブヒッ! ブヒヒヒイ! 笑える! 笑えすぎて死ぬる!!」

  「玉緒ちゃんって夢詰め込んでるんだねえ。頭カラッポなの?」

  そんなのこの先輩方の心に微塵も響きはしない。

  彼らにとっては全てが嘲笑の対象。

  大神の夢も例外ではない。

  「くっ……」

  わかってもらえるとは少しも思わなかったが、ここまで真正面から笑われるとさすがにこたえる。大神の胃に熱したコールタールを流し込んだようなドロドロとした絶望と不快感が満ちる。

  「大体さー、テニスで世界目指してるならアレ高なんかに来ちゃダメっしょ」

  悔しいが牛頭の指摘は的を射ている。

  強いテニス部がある高校。最低でも、まともにテニスができる普通の高校に入らないととても立ち行かない。

  「それは……仕方ないんだよ。中学でやれパンツだの体がどうだの言ってきた奴ボコッたら大事になっちまって……」

  大神はアホタレだが、テニスの才能だけは本物である。

  そして、そんな傑物を凡人はそのままにはしておけず、つまらない悪口や嫌がらせで腐らせてしまう。

  そんな良くある事例の一つがこの大神の末路である。

  「あちゃー。どんなにムカついても手え出しちゃダメっしょ。もうおしまいだねキミ?」

  「で、でも! 人生はいつでもやり直せるって!」

  「なになに? 自己啓発本でも読んじゃった系?」

  どんなに大神に罵られてもヘラヘラと受け流していた牛頭だが、今回だけは露骨に嫌な顔をする。大神の語る、やり直しという概念が本当に気に入らないようだ。

  「んなの嘘に決まってんでしょうが。世間は一度の間違いも許さない。やり直しはきかない」

  メディアは耳ざわりの良い言葉を撒き散らすが、現実はアレ高の現状が物語っている。

  一度悪に染まった生徒たちは、もう関わりたくないと親にも教師にも社会からも放っておかれて、そのまま変わらず悪のまま。

  更生だの改心だのは夢のまた夢である。

  「だから、アレ高に来ちゃったら最後までツッパッて不良を貫かないと。ね、豚座さん?」

  「お、おう」

  突然、牛頭に話を振られてびっくりしたのか豚座の返事はやや曖昧だ。

  

  「フン! そんなことよりちんぽじゃちんぽ。この世にちんぽより大事なことなんかあらん」

  いきなり声を荒げて話の流れを切ると、豚座は節くれ立った大きな手でむんずと白ブリーフの上を掴んで上に引っ張り上げた。

  「わわっ! やめ……やめろよー!」

  「あはは! ハミ玉しちゃってる。玉緒クンったらおっかしー」

  恥ずかしがって股間を隠そうとする手を後ろから牛頭が笑いながら止める。

  テントの如く上に引っ張り上げられた白い生地。

  肌との間に隙間が出来上がって足ぐりからぽろんと、双玉がブリーフから飛び出す。

  大神の体毛は灰色だが、顎の下から腹や内腿にかけては白い毛が生えており、睾丸も周囲の毛色に合わせた白色。

  大神の小柄な体躯に似合わずボリューミィな玉袋は、その色もあいまって野球ボールを想起させた。会陰を包む渡りの部分が左右の玉を割るように睾丸に食い込んで、それぞれの白球の丸さをむやみやたらと強調する。

  面白がってブリーフを繰り返し引っ張る動きに合わせて、双玉はバスケットボールの如く無様に何度もバウンドした。

  「い、痛……痛いって!」

  「ギャハハ。面白え!」

  ブリーフの綿生地に何度もがっぽりと絞り上げられると、金的にも似た鈍痛が股間の奥底に置かれてしまう。大神はその痛みに悶絶するが、豚座たちを喜ばせるだけ。むしろ行為のエスカレートを呼ぶ。

  「あれー? でもなーんか玉大き過ぎじゃないですかね? ていうかもっこりのほとんど金玉?」

  「なんじゃと! ワシをだましくさったんかいガキィ!!」

  「うぇ……うぇ……」

  勝手に勘違いしたのは豚座たちなのに、その理不尽な怒りを大神にぶつける。

  そんな事を言われても今の大神に返せる言葉など無い。

  局部を好き勝手に蹂躙される痛みに悶えるばかりだ。

  「フン! 答えんなら目で確認するまでじゃ! ほんじゃ、行くぞお!」

  豚座はブタ鼻から熱い息を吐きながら、大神の白ブリーフの腰回りに太い指をかけて中まで侵入する。

  最後の砦を崩しにかかられて大神はたまらず絶叫する。

  「や、やめろー!!」

  だが言葉で豚座が止められるわけもない。

  ずるりと勢い良く、白ブリーフはしわくちゃになりながら膝下のズボンまで一気に降ろされる。

  脱衣の衝撃で竿と玉と尻がぷるりと春の大気に揺れた。

  「ブッへへ!! なんじゃこの玉のデカさわあ!! 貴様、狸獣人じゃったんかあ!?」

  「ぷっ……体の事からかっちゃあ可哀相ですよー。自分じゃ変えられないんだし、ねえ金玉緒クン?」

  「ブァハッハ! キンタマオ! 傑作じゃあのう踏悟お」

  「くっ……」

  肉体的特徴をあげつらい、変なあだ名を勝手に付ける。

  子供じみたストレートな侮辱だが、直接的であるがゆえに大神の心を深く傷つけた。

  大神は生まれつき睾丸が大きい。

  それは彼の血筋に理由がある。

  狼獣人と狸獣人は犬科繋がりの近縁種。

  結婚すれば子供だってできる。

  大神の父は純粋な狼獣人なので、ぱっと見の外見は極めてノーマルな狼。

  しかし、母親の方は狸の祖父と狼の祖母から生まれた混血である。

  四分の一の狸の血が隔世遺伝によって発現し、ふぐりがでかくなってしまったのだ。

  狸獣人という豚座の指摘もそんなには的外れではないのがなんとももどかしい。

  それに反論しようにも、自身の家族のことをこの悪辣なる不良どもに話すのは気が咎める。結果、大神は屈辱を堪えて押し黙るしかない。だが、そんな沈黙は豚座たちを増長させるだけだ。

  「それにしても貧相なちんぽじゃのう! デカいかと思って損したわ!」

  「えー、玉がデカすぎるから小さく見えるだけじゃないっすか? おちんちんだけ見たら標準?ってとこじゃないですかね」

  ニヤニヤしながら大神の局部を品評する豚座たち。

  屈辱だ。別に豚座たちに見せるために存在してるわけではないのに、勝手にそこは良い、そこは悪いとあーだのこーだの評論家みたいに。

  だが、肉体的にも精神的にもやり込められた今の大神に抵抗する術はない。

  目をぎゅっとつぶり、少しでも現実感を和らげて心を必死に守っている。

  そんな儚い抵抗も、豚座たちによってあっけなく破られてしまう。

  ぎゅむっ。

  豚座が無遠慮に、大神の最も敏感な所を握る。

  これにはたまらず大神もかっと目を見開く。

  「先っちょまですっぽりと皮かむりかよ。本当にガキじゃのう」

  ニタニタ笑いながら豚座は大神の包皮をつまんで上に引っ張り上げる。

  桃色の中身をすっぽり先端まで覆っていたクリーム色の包皮が、ぐにょおんと伸長して豚座の太い指に操られるまま空中で口をぱくつかせるかのように閉じられたり広げられたりを繰り返される。

  「うう……そんなトコ、触んなよお……」

  皮を引っ張られる痛みと羞恥にたまらず大神は泣き言を漏らす。

  「うへえ……今回ばかりは金玉緒クンに同感。他人のちんぽなんて良く触れますねえ」

  牛頭は素手で大神の男性器を平然といじくり回せる豚座に若干引き気味である。

  嘲笑うためにパンツを下ろしたり、金的攻撃するのは良くてもソコに直接触れるのは抵抗あるようだ。

  「なんじゃい踏悟。貴様も同じモンぶら下げてるじゃろうが」

  「いや、ジブンのはもっとデカくて剥けてますしい?」

  アソコのサイズでつい張り合ってしまう。

  賢しい牛頭でも、男としてのサガには逆らえないのだ。

  「フン! ならそっちはガキをしっかり押さえとけや。チンポはワシがいじる」

  「あっ、そうしてもらえると助かりまーす」

  牛頭はほっと安堵の表情。

  いくらいたぶるためとはいえ、会って間もない男子のそんなとこを触るのは衛生的な忌避感がある。

  対する豚座は、衛生面のあれそれなど何ら気にすることなく堂々とした手つきで大神自身を弄ぶ。

  「高坊じゃっちゅうのにコレじゃあ格好つかんじゃろうが。よし! ワシが剥いちゃる!」

  「へえ、良かったじゃない金玉緒クン。おちんちんカッコよくなれるよ」

  「なあ?! そ、そんなん頼んでねえし! ってやめろー!!」

  ワーキャー騒いで止まる豚座でもない。

  他人を殴りすぎて硬くなった太い人差し指と親指が輪を作り、むんずと包皮を取り囲んだ後にちゅるんと下にずり下げる。

  無垢な桃色が、昼間の春のしんとした空気に晒される。

  「痛い! 痛い! 痛い!」

  足をバタつかせながら首を左右に激しく振る大神。

  「あれえ? もしかしてキミ、剥いたことなかった?」

  「ガッハハ! じゃったらワシに感謝せいよ! 男として一皮剥けたんじゃからなあ!」

  勝手に恩を着せる豚座に文句の一つでも言ってやりたいが、外の刺激を知らない箱入り息子が訴える激痛に大神は手一杯だ。

  豚座の指はもとより、吹き付けるそよ風に触れるだけでも激痛が走る。

  これが男の仔がオトナになる時に通る痛みなのだ。

  「うっわー。これはさすがに……エグい」

  「おいガキ。悪い事は言わん。風呂入る時、剥いて中も洗え。臭うぞ」

  それを見た瞬間、先輩方の嘲笑がぴたりと止まる。

  豚座も牛頭も神妙な面持ちだ。

  大神の剥きたてのソコは、冷蔵庫に忘れ去られたような乳白色のチンカスがびっしりとこびりついていた。

  小便と精液と、雫を拭き取るためのトイレットペーパーのカスが腐敗して混ざり合った白いカスは、牛乳を拭き取った後に数日間洗わずに放置したようなえぐみと酸っぱさが混ざった有機的な悪臭を放っている。

  「うう……だって、痛えんだよ」

  「そんくらい我慢せい! チンポ取れっぞ!」

  「はひぃっ!!」

  珍しく、というか初めて豚座は的確な助言を大神に与えた。

  豚座的に大神はどうでも良いのだが、ちんぽの事になると話は別。

  男というのは、ちんちんが常に思考の真ん中にある。

  ゆえに、ちんちんの事に対してだけは豚座は誠実になってしまうのだ。

  とはいえ、そんななけなしの誠実さが表れるのはこの時だけ。

  後はただひたすらに最低最悪な豚座の平常運転が続くのみだ。

  「はあーしっかし、くっさいのう。鼻が曲がりそうじゃあ……」

  豚座は臭い臭いと文句を言いながらも、ブタ鼻をチンカスまみれの大神の雄に押し付けてフゴフゴと鳴きながらそのスメルを吸っている。

  「うう……臭いなら嗅ぐなよお……」

  「えっと……すんません、ジブンもそれはちょっとどうかと……」

  「じゃかしいわ。おどれら黙っとけ。はあー、くっさ……」

  羞恥に顔をしかめる大神と、ドン引きしている牛頭には構わず豚座は未熟な男の仔の印が放つ小便臭いガキの臭いを思いっきりブタ鼻に吸い込む。

  嗅覚といえば犬獣人だと思われがちだが、豚獣人も負けず劣らず鼻がきく。

  高級キノコ探しや麻薬捜査の仕事に活かす豚獣人も多い。

  そのせっかくの鋭敏な嗅覚を、豚座はよりにもよって大神のガキチンポの決して芳醇とはいえないフレーバーを味わうために浪費している。

  小便の酸っぱさ、精液の青臭さ、チンカスの腐敗臭。

  それぞれが複雑に絡み合い、混ざり合ってマリアージュした唯一無二の男の仔の香りは豚座のブタ鼻を大いに満足させた。

  「はあ……くっせえ……くっせえ……ほんと、たまんね……」

  うっとりと目を蕩かせながら、フェチズム全開な心持ちでブタ鼻を押し付ける豚座。

  「うおお……先っちょ濡れてんな。んで酸っぱい臭いがする。ちゃんと雫振ってんのかあ? 皮にションベン残ってっぞ」

  フゴフゴと大きな鼻の穴を動かしながら、その強い嗅覚でもって豚座は大神の雄の香りをまるでソムリエのように品評する。

  「青臭え……春だってえのに栗の花の臭いみてえだ。朝から抜いてきたかあ? お盛んだなあ、オイ! エロガキよお!」

  「や、やあ! 言うな! そんなん聞きたくねえよお!!」

  言葉で自らの男の仔の印の芳醇な香りを丁寧に説明される羞恥が大神の心を切り裂く。言葉だけではない。

  湿った鼻先をあまりにもグイグイと押し付けるものだから、その触覚も大神を追い詰める。

  「あ……」

  「ブヒイ? もしかして、ワシの鼻に感じとんのか、エロガキ? 硬くなってんぞ」

  憎い相手からのものであっても、竿へ与えられる刺激に変わりはない。

  おちんちんに脳は無いのだ。

  外部からの刺激を何でも生殖の機会だと勝手に解釈して、ソコは大神の意に反して臨戦体制。

  恐怖に縮こまっていた男の仔の印に一本の芯が通って半勃起する。

  男として不可避な生理現象とはいえ、こんな汚らしいクソ豚の鼻に欲情していると思うと自己嫌悪に心が沈む。

  「ほおれ。ほおれ。ええか? ん? ここがええんかあ?」

  「あ……や、やめ……あ、あ」

  面白がって鼻攻めを強める豚座と、肉体にこもる熱に耐える大神。

  二匹の獣の奇妙なじゃれあいを、牛頭は死んだような目でじっと見つめていた。

  「鼻だけじゃ満足できんかあエロガキ? しゃあねえ、手も使ってやんよ」

  「そ、そんなの求めてな……ひゃうんっ!!」

  豚座の両手が、大神の局部全体を包み込む。

  ふっくらとした大きな手は、高い体温を纏っておりまるで焼きたてのコッペパンのよう。その確かなぬくもりでもって、竿を上下に扱き、大きなふぐりの皮を左右に引っ張る。憎い相手から与えられる性感にも見境なく悦び欲情した竿はビュルビュルと透明な我慢汁を撒き散らして豚座の手に酸っぱい臭いを擦り付けて汚す。そうして湿潤した局部に手を突っ込んでグジュグジュと濁った水音を立てながら弄べば、未熟な狼はいともたやすく快楽に陥落する。

  「あ……あん……ダ、ダメ……ダメだってばあ!」

  「ブヒヒ! だいぶかわいらしくなって来たじゃねえか。ええ、エロガキィ!」

  「へえ。アレ高一番の不良に手コキしてもらえるなんて玉緒クン、恵まれてるねえ。ある意味羨ましいカモ?」

  「ぜ、全然嬉しくねえよお……!」

  望まぬ快楽に心は嫌悪感、体は歓喜で応える。

  心と体が正反対の反応で引き裂かれ、大神の自己が大きく揺さぶられる。

  「ブヒャヒャア!! 面白え! 見ろよこれえ! グニャグニャ動きやがんぜえ?」

  大神の動揺をむしろ楽しむかのように、豚座は粘土遊びをする幼児のようにソコを好き勝手に弄り回す。

  狸の血を引いてるせいで肥大化した巨大な白大福のような睾丸の皮を両手で持って引っ張り、上下左右に気ままに動かして金玉の皮で奇妙な図形を何種類も作っては崩し、また作る。

  「あひっ!……玉、そんなに……触んなあ!!」

  睾丸への刺激は、竿とはまた違った趣き。

  勃起や射精からは遠く、それゆえにその内臓を転がされてるような疼痛と、子種を攪拌されるむずがゆさは独立して唯一無二である。

  自慰ではペニスしか触らない大神にとって、睾丸への攻めは酷なのだ。

  「んだあ? 玉が感じるんかあ? 良いぜえ……ならたっぷりサービスしてやらあ」

  豚座はそんな大神の反応から金玉を弱点と見定めて、そこに集中攻撃を加える。

  左手の親指と人差し指で睾丸を取り囲むように輪を作っり、がっぽりと絞り上げる。だらんと垂れているはずの陰嚢が、引き締められてぷりぷりとした球体状に。

  その様は縁日の水風船を想起させる。

  そうして浮き上がった左右の玉——シワを引き延ばされた皮の中に大事に保護されていた精巣を、余った右手でデコピンして何度も何度もピシピシと弾く。

  「どおだあ? どおだあ? 気持ちええだろお!?」

  「あががっ……!! や、やめ……ほんとに……いたっ!!」

  男性機能への直接攻撃。こんなものに快楽など伴うわけもなく、大神は睾丸に走る内臓の奥底まで届くような鋭い痛みに悶絶する。

  「そうかそうか! 貴様、痛いの好きだもんなあ! もっと痛めつけちゃるわ!!」

  調子づいた豚座は、右手でむんずとふぐりを掴む。

  そして、万力の如き凶悪な握力でもってぎゅうっと握り込む。

  「あ……やだ、やだ……! 潰れ……潰れちゃ……」

  「ようわかってんなあガキィ。大人しゅうしといと方が身のためじゃぞお? ワシ、片手でリンゴ握り潰せるからのお」

  ヤニで黄色く変色した歯を見せて醜く笑う豚座に、大神はなすすべもない。

  押さえ付けられながらも彼なりに体を突っ張って抵抗していたのだが、その力もくったりと抜けて恐怖でガタガタ震える振動だけが残るのみ。

  「あれえ? 玉緒クンってば、将来子供とか欲しいタイプだった? 女のコにモテそうにないからタマなんていらないっしょ」

  勝手に他人の肉体の価値を鑑定していらないと言う。

  あまりにも一方的な牛頭の論理に反論するだけの余裕は大神にはもう無い。

  言葉の暴力に、ただただ傷つけられて震えるだけだ。

  「踏悟お! くっちべっとらんで貴様も働かんかあ! スマホ出せ、スマホお! 撮影会じゃ!」

  「太先輩のケータイ使ってくださいよお。ジブン、玉緒クンのポルノ画像とかストレージに残したくないし」

  「アホ抜かせえ! 貴様の方が画素数多いんじゃ!」

  「もー、カツアゲでたっぷり稼いでんだから。機種変してくだいよー」

  牛頭は口では嫌がってるそぶりだがその実、豚座の命令に従順に従って行動をする。文字通り、タマを握られて抵抗意欲を奪われた大神から手を離して立ち上がると、ズボンのポケットから最新式のスマホを取り出す。

  「スマホ……? 撮影会って……」

  上級生たちの話す単語を拾い集めれば、そこには最悪の展開が容易に予想できる。嫌だ。自分の勘違いであってほしい。そんな淡い期待も、牛頭の言葉で砂の城の如く儚く崩れ去る。

  「記念撮影ってやつ? 玉緒クンの恥ずかしい所、たーっぷりと記録させてもらうよ」

  パシャ。パシャ。

  スマホの撮影音が、昼なお薄暗く陰気で湿った校舎裏に繰り返し繰り返し何度も鳴り響く。

  「うっ……嫌、やめて……撮らないで……」

  どんなに殴られても、どんなに辱められても最低な記憶が残るとはいえ一時のこと。だが、写真という具体的な記録として半永久的に残るというのは輪をかけて更に最低である。これが終わっても、忘れ去ることも許されず過去にあった酷い体験を延々と突きつけられるのだ。

  それを思うと、大神の大きな瞳からはぽろぽろと涙がこぼれて頬毛を湿らせ、力なく顔を伏せてしまう。

  「ちょっとうつむかないでよポルノスター。カワイイお顔、みんなに見せてあげないと」

  撮影係は牛頭。旬のグラビアアイドルを相手どるカメラマンのように軽快な語彙で大神を悪趣味に盛り立てる。

  「ほれ。男なら顔上げて、前見ろや」

  後ろから聞こえてくる豚座の胴間声。

  大神を押さえつける役は豚座に交代していた。

  節くれだった右手で顎の下を掴まれて、無理矢理顔を上げさせられる。

  左手は睾丸を握り込んだまま。

  少しでも抵抗したら、大神の男性能力は終わる。

  不本意ながらも、大神は自らの痴態を映すカメラレンズに視線を注ぐ。

  「おっいいねー。まずは顔だよねえ。玉緒クンだって“みんな“にもわかるし」

  ピントを合わせてパシャリパシャリ。

  「や! 顔だけは!」

  「ああん? ちんぽこ隠さんで顔は隠すんかあ? とんだエロガキじゃのう!」

  後ろから伸びた太い手が、顔を隠そうと前面でクロスした大神の両腕を掴んで無理やり開かせる。晒されるのは泣き腫らした大神の絶望した表情。レンズは大神の窮状を冷徹に撮影する。

  「おっ。いいねーその表情。カワイイ、カワイイ」

  二度三度とシャッターを繰り返し切るうち、こんな非効率なこともないと気づいた牛頭は連続機能を使った十連写で大神の顔写真を乱造する。

  「うおい! 全身じゃ! 頭とちんぽこが入った全身を撮れい!」

  「はいはい。言われなくても撮りますよっと」

  ピントを合わせて連続撮影。

  鳴り響く多重撮影音。

  極めて機械的に行われる陵辱は、確実に大神の未来を削り取っていく。

  「いやー。ほんと、玉緒クンってばカワイイよねえ。童顔だし華奢だし、なんだか子役タレントっぽい」

  「うっ……うっ……」

  牛頭の言葉は豚座のようなストレートな罵倒とは違って変化球で精神力を削ってくる。褒めたような言い回しで気持ちを安心させてから。

  「ジブン、パパ活の仲介とかやってんだよねえ。なんつーの? ショタコン趣味のオジサンっているじゃん? 玉緒クン、ソッチ方面に超モテんと思うんだよねえ」

  「ひいっ!」

  一気に突き落とす。

  単純な暴力の豚座も恐ろしいが、悪知恵で堕としにかかる牛頭は底が知れない不気味さがある。

  「ジューゼロで取引しない? もちジブンが10で玉緒クンが0ね。玉緒クンがおっさんのくっさいちんぽしゃぶってケツもほじられてさ、ジブンがお金だけもらうの。ね、良い商売っしょ?」

  爽やか系若手俳優のような、透き通った笑顔で語られるその内容は邪悪である。

  金銭が絡む搾取はこの資本主義社会において致命的である。

  「うおい! 女衒(ぜげん)の話なんざしとんじゃねえ! とっととちんぽこ撮らんか! ちんぽこ!」

  “商談“を唐突に打ち切る豚座の発言に、牛頭はちょっとした違和感を覚えた。

  まるで、大神が売られるのを嫌がっているような……

  「踏悟お!」

  豚座の一喝で、牛頭は疑念の闇から立ち直る。

  妙なことを考えていないで、豚座の命令に素直に従わなくては。

  「はいはい。もう、せっかちなんだから……」

  豚座の怒号を飄々とかわしながら、牛頭は再び撮影作業に戻る。

  尊敬する不良の先輩の指示通り、大神の陰部のドアップだ。

  「ほらほら。股おっぴろげて玉緒クン。見えないでしょうが」

  「うう……やあ……」

  拒否しても意味はない。

  豚座が後ろから太ももを持って、グイっとまるでセクシーピンナップの如く開脚させるからだ。

  テニスのために培った柔軟性で苦もなく広い角度での開脚ができ、努力の結果をポルノ写真という下卑た行為を助けるために使われる無惨さに大神の心はズタズタになった。

  「うんうん。良く写ってるよお」

  「うう……」

  ナニに触れる直前まで近づけられたスマホから冷たいシャッター音が鳴る。

  まずは竿と玉が入った全体像。

  普通サイズのペニスに比べて大きすぎるボール。その男性器を構成する二大要素のアンバランスさを詳細に記録する。弱者から搾取した金で買った最新式スマホは、一億八千万画素という夜景が綺麗に撮れる最先端の性能を駆使して局部を映し取った。でぷんと狸の如く丸々と肥え太った丸い双玉が圧倒的な存在感で鎮座する睾丸の異様さと、立派すぎる睾丸のせいで相対的に粗末に見えてしまう皮が剥かれつつも余った皮が亀頭の下でマフラーのように巻きつく未成熟なペニスのコントラストも、豊富な記憶容量にバックアップ付きでまとめて納められる。

  「うーん。やっぱり最新モデルはキレイに撮れるねえ。ほら、玉緒クンのくさーいチンカスまでくっきり」

  爽やかに笑いながら、スマホの液晶を大神に向ける。

  牛頭の言う通り、そこには美麗な画質で像を切り取られた白いカスにまみれた汚らしい雄肉が。

  「け、消せ! いや、消して……消してください……」

  始めは勢い良く。だが、徐々にトーンダウン。

  大神の愚かな反抗心は、今や風前の灯火だ。

  もちろん、どんなにキャンキャン吠えてもこの悪辣な先輩方は一向に耳を傾けやしないだろうが。

  「ちょーっとアングル変えますか」

  一通りの角度から余さず大神自身を写し終えた牛頭は、ミニスカートを穿いたコスプレイヤーに群がるカメラ小僧の如く地に伏せてスマホを見上げるような角度で向けてローアングルを狙う。

  「おう。なら、これで……どうじゃあ?」

  牛頭の意図を察した豚座は、大神のワキに手を入れて軽々と持ち上げる。

  そして、あぐらをかいた豚座自身の脚の上に大神の体を下ろして座らせる。

  大神が剥かれてるという事実を抜かせば、体格差も相まって仲の良い父子のよう。だが、仲良くするつもりは豚座には毛頭なく、狙いは大神の体を浮かせるため。豚座の脚の分だけ地面から離された大神の股間の下部にスマホカメラが入り込むだけのスペースが生まれる。

  「あっ。バッチリでーす。太先輩、気が効いてますね」

  再び響くシャッター音。

  「裏タマ頂きましたー! シワまでバッチリ」

  「おう! でかしたでえ、踏悟お! もっともっと撮ったれえ!」

  「もう……やめてくれよお……」

  執拗に続く撮影会にぐったりする大神と有頂天な先輩方。

  地獄と天国が同居する奇妙な校舎裏の光景はまだまだ続く。

  「ほたら、こんなんどうじゃあ?」

  ゲヘゲヘと下品に笑いながら、豚座はしおしおに萎えた陰茎をちょんとつまみ上げて大神の玉を露わにする。

  「あざーす。ナイスタマタマ」

  そこを見逃さず、牛頭はシャッターを切る。

  睾丸を大きくフィーチャーした一枚が見事に撮影された。

  「ブヘヘ。そうやろお? そしたら今度はこうで……こうじゃ!」

  陰部を好き勝手される屈辱と羞恥にさめざめと泣く大神を無視して豚座は皮をもみくちゃにする。

  ビヨンビヨンと面白半分に敏感な陰嚢の皮を引っ張ってその形を好き勝手に歪めた。

  「あっ。いいっすねー。それ、いただきっす」

  快活な牛頭の声に続いて、冷徹なシャッター音が響く。

  「うう……こんなのの何が楽しいんだよお……」

  大神の泣き言を無視して、一年坊主の尊厳を削る写真撮影はしばらく続いた。

  「ふー……こんなもんでええじゃろ」

  「っすねー」

  局部への撮影を一通り終えて飽きた両先輩方。

  豚座は、壊れたおもちゃを放り投げるような乱雑さで大神の小さな体を地面に放り投げ、牛頭は撮影の成果物をスマホに映してニヤニヤと笑っている。

  終わった。

  色んな物を失ったが、とにかく終わりだ。

  心配事は尽きないが、この苦行がひとまず終了したことを喜ぼう。

  苔が所々に生える冷たく湿った陰気な地面の不快な感触を全身で感じながら、大神は思う。

  だが

  「ほたら次な。おい、ガキ。寝てんな。起きろ」

  「あぐぅ! 次い……?」

  豚座はガスッと脇腹を蹴り上げる。

  だいぶ手加減した威力で。

  どうせなら意識を刈り取ってくれた方が楽なのにと、卑屈な思いに囚われながら大神が痛みの患部を押さえながらのったりと立ち上がる。

  そして告げられる、残酷な命令。

  「脱げ」

  簡潔だが恐ろしい言葉である。

  「えっと……もう、パンツは脱いで……」

  「だあかあらあ。 上も含めて全部脱げって太先輩は言ってんの。ワンコちゃんなのに耳が悪いのかなあ?」

  大神のなけなしの反論も、牛頭の補足説明で簡単にブチ折られる。

  「え……でも……」

  「もたもたすんなガキィ……ワシだけでも刃あが立たんのに、ここには踏悟もおるねんぞ?」

  「うっ……」

  力の序列を持ち出されると大神にはどうしようもなく、言葉を失う。

  「そそっ。男らしく、パーッと脱いじゃってよ」

  「うう……うう……」

  牛頭は柔らかく笑うが、目は笑っていない。

  牛も豚も拒絶は絶対に許さない。

  抵抗しても、メチャクチャに殴られて服を無理矢理脱がされるだけ。

  どうせ同じ結果ならばと

  「はい……」

  大神は上着の第三ボタンに手をかけてポチリと外す。

  第四、第五と一つずつ下のボタンも結束を失っていく。

  パサリと肩から落ちる学ラン。

  学ランを脱ぐ際の衣擦れの音がやけに耳に響いた。

  汗を良く吸う気に入りのスポーツブランドのランニングシャツの裾に指を入れてぐっと持ち上げる。

  風呂の脱衣場でそうするように顔の上まで引っ張ると、頭から抜けた白い布地が力なく地面に落ちる。

  こんなことなら先にこっちを脱げば良かったと後悔しながら、春なお肌寒い空気をむき出しの毛皮に感じながら学校指定の革靴を脱ぎ、白いスポーツソックスに足を引っ掛けてずり下ろす。

  後に残るは生まれたままの大神玉緒の姿。

  素裸に剥かれた哀れな一年坊主だけだ。

  「いーい格好じゃのう、ガキ。どうじゃ? 外で脱ぐんは気持ちええじゃろ?」

  「えー? 玉緒クン、露出趣味なんてあったのお?」

  腕組みしながらの豚座と、口元に手を当ててクスクスと笑う牛頭。

  彼らが命令したというのに、相変わらず理不尽な言いがかりである。

  だが、もう大神に言い返す気力は無い。

  もうできることは従順に従って一刻も早くこの苦行を終わらせることだけだ。

  「……どうすれば良い?」

  今や豚たちに命令を乞うまでに大神のプライドは堕ちていた。

  「ふむ……ちんぽこはもう撮ったしなあ。おい踏悟。なんぞ知恵出せえ」

  「無茶振りっすね、太先輩。うーん……玉緒クン、運動部やりたいみたいだし裸んぼうのままで運動でもしちゃう? とか?」

  「それじゃ!」

  ポンと手を叩いて喜ぶ豚座。

  先輩方の発想はいつも最低である。

  「はーい、じゃあ逆立ちしてえ」

  「うう……」

  苦虫を噛み潰したような顔をしても状況は好転しない。

  グズグズして怒りを買えば更なる追撃が来る。

  大神は素直に従って、湿った地面に手をついて足を蹴り上げる。

  ぐらんと世界が半回転。頭に血が上り、腕に体重がかかり、脚は支えを失って空中に頼りなく伸ばされる。

  テニスで鍛えた身体能力のおかげで、ピンと天に向かって足先が立つ美しい倒立が完成する。大神が全裸でなければ、体操競技でも満点が取れそうな出来だ。白ブリーフによって固定されない大神の陰部。

  重力の加わる方向が逆になったことにより並レベルの竿と大玉ふぐりとがお腹側にだらんと垂れ下がる。

  その奇異な様相を先輩方が見逃すはずはない。

  「うっはー。アヴァンギャルド! いいねー玉緒クン。キミ、最高だよお!」

  有頂天で牛頭はシャッターを切る。

  逆立ち状態で垂れ下がり、露わになった玉の裏側をしっかりとピントを合わせて像を映し取る。奇妙に変形した大玉ふぐりは、平常時とはまた違った威容だ。

  「スンスン……玉ァの裏側もよう蒸されとるわ。くう……汗臭さだけでのうてなんぞ腐ったような臭いもするのう……洗い切れてないんじゃねえか? 持ち上げて洗えよクソガキ」

  「あう……」

  豚座は豚座で、撮影が終わった玉裏や会陰にブタ鼻を押し付けてその香りを猛烈な肺活量でもって吸い込む。

  彼の言葉通り、ブリーフの中でむわっと蒸された玉裏はシワの一つ一つに汗が染み込んでおり運動部の男子高校生特有の酸っぱい臭い。それだけでなく、風呂嫌いで適当に体を洗ってるせいで取り切れなかった垢が蓄積して無自覚なまま体臭が熟成されて暖かさを伴った腐敗臭も添えられている。臭い臭いと言いつつ、妙なフェチに囚われた豚座はその奇妙なスメルを鼻腔で吸い取り腹の中に送って楽しんでいる。

  「あー……太先輩、さすがにそれは……」

  臭いを嗅いで、臭い臭いと悪口を言う。

  そのためだと思っていたが、今の豚座は明らかに異常だ。

  牛頭の疑念はこうだ。

  いじめていたぶるためとはいえ、他人の金玉に自分の鼻をくっつけるか?

  「なんじゃい、ワシに逆らうんか踏悟?」

  大神の玉裏を嗅ぎながら、鋭く牛頭を睨む豚座。

  場の空気が一気に緊迫する。

  アレ高ナンバーワンの不良は豚座。

  そして、ナンバーツーは牛頭。

  二年生とはいえ、牛頭は喧嘩の腕前や悪知恵からトップを張れるだけの器がある。そう、豚座さえいなければ。

  腹筋が六つに割れたアメコミヒーローのような体型の牛頭でも豚座には敵わない。それほどまでに豚座の暴力性は完成されているのだ。

  そこで牛頭が取った戦略は争わないこと。

  従順な腹心として尽くしているだけで、一年後には豚座は卒業してアレ高トップの座は自然と自分に転がり込んでくる。

  ゆえに

  「いいえ……」

  豚座への感情を押し殺して黙る。

  「フン……」

  そんな牛頭をつまらなそうに一瞥すると大神の玉裏をスンスン嗅ぐ作業に豚座は戻る。牛頭の心に、じくじくとした漆黒の感情が滞留するが、そんなこと豚座には興味のないことだった。

  「……じゃあ、バランスはこんなもんでいっか。お次は、腹筋行っとくう?」

  「はい」

  「ワハハ! 踏悟は知恵が回るのう! 最高じゃ!」

  疑念を押し殺した牛頭、死んだ目で命令のままに動く大神、弱者をいたぶる歓喜に湧く豚座。三人の男子高校生の感情を複雑に混ぜて陵辱の宴はなおも続く。

  「よっし! ワシが足持っちゃる! 気張れよ、ガキィ!」

  「はい」

  地面に裸の尻をついて、ゆるく脚を曲げながら伸ばされた大神の足首を豚座がしゃがんで手で持って押さえる。運動部の後輩を手伝ってあげる先輩の図……だったら良いのだが、大神が全裸のせいでただのいじめの現場だ。

  「ほれい! イチ! ニイ!」

  豚座の掛け声に合わせて、両手を頭の横に当てた大神が死んだ目をしながら上体を繰り返し起こして腹筋運動する。

  もちろん、その間も牛頭による撮影は続いている。

  グッグッと、体を持ち上げるたびに白い腹毛の下で負荷がかかって膨張する引き締まった腹筋も、力がこもって角ばるお尻の横側も、汗でじっとりと毛を濡らしながら乳酸と屈辱に耐えながら腹筋する顔も余さずスマホに収められる。静画に限らず、動画でも。

  「五十! 五十一! 五十二ィ! そらそらあ! 頑張れ! 頑張れ! ワハハハ!! 楽しいのう!!」

  屈辱的な全裸腹筋運動をブタ鼻から荒く息を吐きながら豚座は大いに楽しんだ。

  「ぜえ……ぜえ……」

  結局、百回も腹筋をやらされて大神は青色吐息だ。

  筋繊維が切れた腹が痛い。明日は絶対筋肉痛だ。

  「筋トレはこんなもんでいいっしょ。じゃあ、玉緒クン。立って、後ろ向いて。そんでお尻出して」

  「え……それって……」

  指定された体勢のあまりのアレさに大神の顔がひきつる。

  「そ。変態オジサン用の見本写真ー。男同士のアレってさ、結局はお尻だから」

  牛頭の笑顔は相変わらず爽やかだが、目には深い闇が落ちている。

  冗談で言ってるのではないことは確かだ。

  「そ、それだけは勘弁してください! お願い……お願いします!!」

  恥も外聞もなく、大神は硬い地面に額を擦り付けて全裸土下座した。

  この世で最も屈辱的な体勢。

  だが、牛頭の構築した性的搾取のシステムに巻き込まれたらテニスどころではなくなってしまう。大神はまともな市民生活が続けられるかどうかの瀬戸際にあった。

  「もーメンドクサイなあ。そういうのいいから、さっさとポーズ取ってよ。今まで撮った写真、バラまかれたいの?」

  「うっ……それは……」

  大神が言葉に詰まる。

  誠心誠意の土下座のつもりだったが、そんなもの牛頭には一切通用しない。

  他人に対する情というのが著しく欠如しているのだ。

  「安心せい。女衒には使わせん」

  膠着した状況に豚座が横槍を入れる。

  「ほ、本当ですかあ!?」

  ほっとした表情を浮かべる大神を見て、なるほどと牛頭は思う。

  パパ活に売られないという甘言を与えて譲歩したと誤認させ、こちらの要求をまずは通してしまう。そうして撮った写真を約束を破って“使って“しまえば良い。

  暴力一辺倒だと思っていたが、豚座もなかなかに悪知恵が働く。

  牛頭は内心見直す気持ちだった。

  「さっさとやれや」

  「はいい!」

  豚座のドスの効いた声にビクつきながら大神はうつ伏せになる。

  尻を出すのに踏ん切りがつかず、もじもじしている時間を使って豚座が牛頭に自らの意図を伝える。

  「おい踏悟」

  低く抑えた音程。

  聴覚が良い大神にも聞こえないような声量で牛頭に耳打ちする。

  「わかってます……約束が嘘だってこと」

  「いや。本当に女衒には使うな」

  「!? 太先輩、それって……」

  驚きに声が漏れそうになって、慌てて口元を手で押さえる。

  「ワシに二度言わすな。言う通りにせい」

  有無を言わせない迫力。

  トップを張る不良だけが纏える威風に、牛頭はこくりとうなずくしかない。

  その間も牛頭の明晰な頭脳はフル回転で、豚座の変調の正体を探っていく。

  それは極めて単純な予想。だからこそ受け入れ難い。

  豚座は大神を……

  そこまで考えたところで

  「ど、どうぞ……」

  大神のポージングが完成した。

  大臀筋が切れ上がった可愛くて小さなお尻の割れ目に、ふさふさの尻尾を褌の如く挟み込んでいる。せめて尻穴は見えないようにというささやかな抵抗だろう。

  だが、そんな甘えを許す先輩方ではない。

  「尻尾立てい! ケツ穴見せろお!」

  「はいい!」

  怯えて毛を逆立たせながら、大神は尻尾をピンと立てて割れ目を露出すると自ら左右の尻肉を割り開いてピンク色のウブな肛門を冷たい空気に晒す。

  「…………」

  パシャ、パシャ。

  軽薄な言葉を吐き、囃し立てながら写真を撮る牛頭はもういない。

  豚座の命令通りに機械的に写真を撮る。

  それでも、豚座を満足させるだけの写真の品質には十分。

  「おうおう……ケツ穴のシワまでバーッチリ撮れとるぞお。ふー……うまそうじゃなあ……」

  豚座はうっとりと目を細めながら大神の尻を目で犯す。

  じゅるりと生唾が音を立て、汚れた舌が分厚い唇を舌舐めずる。

  大神の肢体に異様な執着を見せる豚座を横目で見て、牛頭は自らの予想に確信を深める。

  だが腹心の部下の内心など、豚座には全く興味がない。

  「次じゃ。立って、ガニ股になれい」

  新たなポーズを指定してどんどんとこの卑猥な撮影を進めていく。

  「は、はい……」

  へっぴり腰のまま立ち上がった大神は、言われた通りに両脚を割り開いてグッと腰を落とす。こんな太ももに負担がかかる体勢でも大して苦にならない自分の体力が恨めしかった。

  特に指定が無かったしせめてもと股間に手を置いて、竿を隠すが玉は大きすぎて手のひらから余ってその丸みを外に晒す。

  「ちんぽこ隠すんじゃねえ! 両手は頭の後ろ!」

  「はいい!!」

  そんなささやかな抵抗も許されない。

  結局、大神の手は陰部を隠すことも許されずに頭の後ろに付けられ、大事なところは丸出し。

  「ああ……良い。ワシも撮るぞお」

  豚座は嬉々として携帯電話をズボンから取り出す。

  折り畳まれた銀色の金属質な塊。

  今や珍しいガラケーだ。

  パチンとガラケーを広げて太い指で窮屈そうにボタンを押すとピロンという間抜けな電子音と共にシャッターが切られる。

  「ボヤボヤじゃねえか!」

  ガニ股の大神を写したはずだが、良い感じに全体がモザイクのようにぼやけて表現規制にバッチリ合致するようになってしまっている。

  「性能低すぎなんすよ。だからスマホに機種変しろって」

  「じゃかしいわボケえ! ワシはこれが慣れとるんじゃ!」

  言いながら、豚座は牛頭のスマホを奪い取る。

  「ああー! 壊さないでくださいよ?」

  「うっさいわ! 女売り飛ばした金がいくらでも余っとるじゃろうが!」

  「設定し直すのが面倒なんすよー」

  ぶちぶち文句を言う牛頭を無視して、ぎこちない手つきで豚座がスマホの画面上のボタンを押す。

  パシャリ。パシャリ。

  牛頭ほど上手ではないが、最新のカメラアプリの力を借りて大神の痴態が見事に写し取られた。

  「ブヘヘ……まだまだいくぞお……」

  だらしなくよだれを垂らしながら笑いながら、豚座はスマホを上側に構えたまま大神の足元に滑り込む。ちょうど、大神が仰向けに寝転がる豚座を跨ぐような体勢だ。

  「うう……」

  横に太い豚座が足元に入ったせいで大神はより広く開脚しなければならなくなった。腰がその分落ち、豚座のブタ鼻にチンカス塗れの未熟な竿とタプタプした玉袋がベチャアッと潰れたスライムのように着地する。

  「ブヘヘ……」

  それでも豚座は気にしない。むしろ嬉しそうに、下から見た股間のアップに向かってシャッターを切る。尻の下から金玉の裏まで入念にねっとりとファインダーが犯して像を切り取る。

  そうして、数えきれないほどのポルノ写真を手に入れた豚座はようやく大神の股下から巨体を抜いて立ち上がる。

  運動してるわけでもないのに、桃色の肌はじっとりと汗に濡れブタ鼻からは欲情した熱い吐息がブホオッと吐出される。

  熱に浮かされたような豚座の要求は更にエスカレートする。

  「よっしゃ! そんままのポーズで腰振れ! 女(スケ)を孕ますくらい本気でな!」

  「あう……わかりました」

  暴力と威圧で尊厳を刈り取られた大神は、もはや操り人形。

  屈辱的なガニ股ポーズに更に、動きを加える。

  腰を後ろに引き、前に突き出す。

  へっぴり腰でぎこちない。

  女を孕ますと注文があったが、そんなことやったことが無いからわからない。

  だが、そんな言い訳が通用する相手ではない。

  「気合い! 気合い! もっと腰入れろやあ! んなのに感じるスケはおらんぞ!」

  「は、はいっ!!」

  もう何が何やらわからない混乱した頭のまま、大神はデタラメに腰を突き出す。

  ビュンッ、ビュンッとテニスで培った敏捷性を悪用してキレのある腰振りを実行すると上下にビッタンビッタンと肌に打ち付けながら竿とふぐりが揺れに揺れる。

  「ギャハハハハ!! おもろいのう! 動画撮ったろ! おい、やり方教えろ踏悟」

  「はいはい。このビデオのアイコンを押してっと……もう撮れてますよ」

  牛頭が豚座から差し出されたスマホをチョチョイと操作するのを見届けると、再び豚はスマホを狼に向ける。

  「ブヘヘへへへ!! ちんぽことキンタマが無様に揺れとるのう! 裏側まできーっちり見えとる!! ブヒッ! ブヒャヒャヒャヒャ!!」

  「うう……うう……」

  豚座は思いっきり嘲笑いながら大声で大神を侮辱する。

  汚れた言葉で自らの痴態を表現され、突きつけられた大神は羞恥と屈辱で心がいっぱいだ。結局、心を最も傷つけるのは言葉なのだ。

  「ブヒャヒャ……おい、踏悟どうした? 貴様も笑え」

  「え」

  弱者をいたぶる愉悦より、豚座への疑念が勝る今の牛頭に笑顔は無い。

  事務的に命令に従ってるだけだと、豚に気付かれてしまった牛のこめかみに嫌な汗が伝う。

  「笑え」

  低くドスの効いた声。

  逆らうことを許さない迫力があり、実際牛頭は逆らわないことを選んだ。

  ゆえに

  「アハハハハ! ワーッハハハハ!!」

  大神に向かって乾いた笑い声を向ける。

  それが嘘笑いだとしても、それを大神が悟る術は無い。

  狼の心を傷つけるのには嘘笑いでも十分なのだ。

  「そうじゃそうじゃ! ブヒャヒャヒャヒャ!!」

  豚と牛。二匹の不良どもの笑い声は唱和し、響きあって大神の心をズタズタに引き裂く。屈辱と羞恥と嘲笑に塗れた腰振りショーは、大神にとっては長い永遠のような時間感覚で続けられるのであった。

  「ぜえ……ぜえ……」

  息切れするほど強く、長く腰振りを続けたせいで大神は素裸のまま両手を地面に付けて突っ伏す。もう体も心も限界だった。

  「おうおう。ようがんばったなあ」

  そんな大神の前にしゃがみ込んで、優しく微笑みながらポンポンと頭を撫でる豚座。常人がやれば優しい仕草だが、最低最悪の不良である豚座にそうされると恐怖しかない。これ以上、何をやらせる気だと大神は静かに身構える。

  「褒美じゃ。ワシの手コキでイカせちゃる」

  「や……い、いらない……」

  「遠慮すんなて。ほれ……ほれえ」

  豚座は大神を座らせると、両手でむんずと陰部を掴んで“愛撫“する。

  そう、愛撫である。

  力任せに掴んで金的攻撃するでもなく、絞り上げて無理やり出させるでもない。

  優しくいたわるように、くすぐるように。

  大神の股間部をゴツい手でくにくにと揉みしだいて性感を導く。

  「あん……だ、だめ……」

  その感触の甘やかさに抵抗感すら蕩かせられて、大神は身を捩って熱い吐息を吐く。

  「ほおれ……ほおれ……可愛いのうガキィ」

  うっとりと目を細めながら大神の幼い童顔が快楽の熱に浮かされるのを視姦する豚座。

  そんなもの見てられないとばかりに牛頭が決然と割って入る。

  「太先輩! なんつーか……おかしいっすよそれは!」

  「踏悟。貴様は撮影係じゃ」

  が、豚座は取り付く島もない。

  ぽいと投げ付けられ、画面を下にして液晶を傷付けながら石だらけの地面に転がるスマホを拾い上げて渋々とカメラを向ける。

  そこには一年坊主にイカれ、手での“ご奉仕”を続ける不良のトップが。

  剥きたてで敏感な竿に痛みが走らぬように皮を被せながらクニクニと扱き、たわわなふぐりを絶妙な力加減でコロコロと双玉を転がす。

  感じさせるために使われる不良の先輩の熟達した手技にぶしゃぶしゃと我慢汁を漏らして、ふくよかな両手を透明な腺液で汚す。

  ぷうんと酸っぱい臭いが狼と豚を包む。

  大神には預かり知らぬことだろうが、豚座が他人を気持ち良くさせるために手を動かすなど前代未聞のことだ。

  豚座はいつだってワガママで自分の快楽しか考えていない。

  それは性においても同じであり、他人を欲望を満たすための穴としか見ておらず気持ち良くなってもらおうなどという真心は皆無だ。

  「や、やだあ……許し……許してえ……」

  「ブヘヘ……可愛ええなあエロガキィ。そんな可愛えこと言われたら止められんて」

  なのに、この現状。

  年下趣味にでも目覚めたのだろうか。

  豚座の変心は二年の付き合いの牛頭にも想像がつかないことだ。

  そんな牛頭の困惑をよそに、手コキプレイはいよいよ佳境を迎える。

  「あっ……あっ……でちゃ……出ちゃう……」

  涙を目にいっぱいにためて、掠れた声をあげる大神。

  体の奥底からこみ上げる衝動は、同じ男である豚座にもわかった。

  「踏悟お! スマホ!!」

  「はい!」

  豚座の命令の真意を即座に理解して、牛頭は大神の股間に目一杯スマホを寄せる。そして、動画モードへ。豚座への疑念はあれど、染みついた絶対服従の習慣から反射的に従ってしまう自分が恨めしい。

  暗澹たる気持ちに沈む牛頭を尻目に豚座と大神の熱はぐんぐん上がり、そして……

  「イケ! エロガキッ!! イキ狂え!!」

  我慢汁に濡れに濡れ、熱い血潮が通って最大限に高まった竿を握り潰すような力でむんずと掴んでとどめとばかりに力一杯扱き上げた。ついでにふぐりを強く揉み込むおまけ付き。これには童貞の大神には耐え切れるはずもなく。

  「あ……はああああんっ!!」

  女のように甲高い喘ぎ声を上げながら、ピンと四肢を突っ張りながらドピュンと初々しい精を吐いた。

  初めて他人の手によって導かれた絶頂は、不本意に行われたとしても甘やかで精管に残った種まで残らず絞り上げんとする豚座の手つきも相まってどこまでも長く、長く続く。若者らしい強い水圧で叩きつけられた青臭い精は、豚座のふっくらした両手と牛頭のスマホ。その両方を膨大な量の白濁で汚しに汚した。射精を終えてくったりするちんぽ。空しく外界に絞り出された子種。そのどれもがスマホにしっかりと写真を撮られたが、雄として最高の快楽の余韻に息を荒くする今の大神にはどうでも良いことであった。

  「大神いいいいいい!! スマホにきったねえザーメンかけやがってえええええ!!」

  「ごほ……ぐほぅっ!!」

  激怒したのは牛頭だ。

  いつもの余裕を滲ませた態度をかなぐり捨てて、牛獣人特有の太い足で役割を終えた大神の男性器を踏みにじる。

  「お、おい牛頭……どうした急に」

  腹心の部下のいきなりの豹変に、さすがの豚座も動揺する。

  「はあ? ジブン、どうもしてませんけどお? ってか、イジメこいてんですですよねジブンらあ。だったら、この狼野郎どんなに痛めつけてもお? オッケーっていうかあ」

  「む。まあ……そうじゃなあ……」

  「じゃあ見といて下さいよ太先輩! ジブンがキッチリとトドメくれてやりますから!!」

  そう言いながらドスドスと思い蹴撃を大神の股間に落とす。

  「あぐ……がはっ……!!」

  快楽から急転直下の痛撃に大神は目を白黒させる。

  「見ろお! 大神いいい! ジブンらが撮った写真だぞおおおお!?」

  半ば白目を剥いてる大神がちゃんと見ているかはわからないが、一方的に牛頭は話を続ける。

  「今後逆らったらこれバラまく! わかったかあ!? わかったよなあ、ええ!!」

  その間も執拗な蹴りは止まらない。

  ふぐりをぐりぐりと無惨に踏みにじり続ける。

  そして……

  「くきゃっ……はあっ!!」

  玉袋まで残っていた最後の一滴が絞り出されて牛頭の黒い革靴に白の色彩を一筋加えた。

  そしてそのまま大神はばたりと後ろに倒れる。

  牛頭の言う通りのトドメはここに完成した。

  「はあ……はあ……あはは……アハハハハ!! 情けねえ!! ジブンらにいじめ抜かれて! ザーメン飛ばしてやんの!! ギャハハハ! このマゾ犬がああ!!」

  狂ったように笑う牛頭と完全に伸びてる大神を目にして豚座の変調がすうっとおさまる。

  「ブヒ……ブヒャヒャヒャ!! 踏悟お、やっぱり貴様は最高じゃあ!! ワシの腹心と跡目は貴様しかおらん!!」

  いじめに耐える大神のいじらしさに一瞬イカれてしまったが、牛頭の見せた残虐性が豚座に悪としての正道に立ち戻す。

  抵抗できない弱い奴をいたぶる愉悦。やはりこれに勝るものはない。

  キンコンカンコーンと、アレ高の不良どもには時報くらいの価値しかないチャイムが高らかに鳴り響く。

  気付かぬうちに昼休みの時間が終わったようだ。

  ちょうどいい。腹も減ったし壊れかけのオモチャにも飽きた。今日はここで切り上げよう。

  「ブヒャヒャヒャヒャ!! じゃあなあエロガキィ!!」

  「せいぜい学園生活楽しめよキンタマオ!! アハハハハ!!」

  目一杯嘲笑いながら、豚と牛は狼に背を向けて歩き出す。

  絶対強者の風格を漂わせながら。

  彼らに逆らえるものなど、アレ高にいやしない。

  「お……覚えてろよ! お前らあ!!」

  いない……はずだった。

  その、変声期を追えてない高い掠れ声を聞くまでは。

  「む……」

  その瞬間、豚座は虚を突かれたように無表情になる。

  悪辣な笑顔も、燃え盛るような憤怒もそこには無い。

  完全な無。

  それが牛頭には何よりも恐ろしく思えた。

  「ただの捨て台詞です。無視しましょう」

  「じゃかしいわ踏悟」

  それだけ言い置いて、豚座はざっと後ろを振り向くとズボンのポッケに手を入れたままずんずんと大股で倒れながらもこちらを睨む大神に近づいていく。

  「ガキ……いや、大神。今、ワシに逆ろうたな? 写真、バラまかれてもええんか?」

  「んな約束、てめえらみてえなクズが守るわけねえだろ!!」

  大神の指摘は的を射ている。

  豚座にも牛頭にも、約束を守る誠実さなどかけらも無い。

  どう事態が転んでも、写真がバラまかれるのは確定事項なのだ。

  ならば恐れるものなど何も無い。

  ボコボコに殴られたって良い。ここで、一発かましておけば男として一番大事なトコは折れずに済む。

  勇気というよりは単なるやけっぱち。

  だが、そのやけを起こしたのはこの最低最悪のアレ高において大神ただひとり。

  地を這う弱者である大神の唯一性がここに確立された。

  「ブ……ブヒャヒャヒャヒャヒャ!! ワシに! ワシに逆ろうた!!」

  狂った笑いをあげながら、豚座は学ランをバサリと脱ぎ去る。

  乱雑に脱ぎ捨てられた制服が土埃をあげて地面に転がる。

  喧嘩をするため。大神をボコすため。

  動きやすい格好になるためだと大神は身構えたが……どうも様子がおかしい。

  「そんなん貴様が初めてじゃぞ、大神ィ……決めた! 貴様、ワシのスケになれ!!」

  豚座は赤シャツを勢い良く脱ぎ去る。

  大胸筋と脂肪がミックスされた乳がぶりぶりと野蛮に揺れる。

  「は?」

  「ナニ言ってるんですか太先輩!!」

  後輩たちの困惑など何のそので、豚座の脱衣は続く。

  「いやー。アレ高生ときたら、ツッパッテるようでどいつもこいつも根性無しばかり! ようやく骨のある漢に出会えたのう。ワシはなあ、そういう根性ある奴をスケにするって決めとんのじゃ」

  ベルトを外してズボンを足下に落として蹴飛ばして白の六尺褌一丁に。

  ぴょこんと豚のカールした尻尾が飛び出て、むっちりとした尻肉が外気に晒されてぷりぷりと波打つ。太い豚座の体に対して狭すぎる幅の前みつは、えげつなく盛り上がって頂点が濡れてシミを作っていた。

  「スケって……こいつ男ですよ!」

  「じゃかしいわガキィ! 根性に男も女もあるかい! 時代は多様性じゃ!!」

  牛頭の反論に時代を持ち出す豚座。

  無茶苦茶な奴だとわかっていたが、ここまでデタラメとは牛頭も理解してなかった。

  「貴様は撮影係じゃガキィ。後で使うからちゃあんと撮っとけ」

  鼻息荒くしながら豚座は褌の結び目に指を入れて緩める。

  締め付ける力を失った一本布は瓦解して、春風に乗って吹き飛んで大神の顔面に絡み付く。

  「ブヒ……ブヒ……抱く、抱く……」

  歩きながら靴と靴下まで残らず脱ぎ去りながら、大神に迫る豚座。

  ずるりと剥けて淫水焼けした真っ黒な亀頭は太々しく、若者らしい120度の上向きの角度で勃起した凶悪な砲身を狼に向けながらズンズンと豚が迫る。

  「や、やめろ……く、来るな!!」

  ボコボコに殴られることは覚悟していたが、犯されるとは思ってなかった大神は涙目になって後ずさる。だが、いじめの後遺症に痛む体と豚座の絶大な体力のせいで逃げることかなわず。

  「大神ィ……ワシのスケになれやあ……」

  重厚な体重と体格で持って、プレスするように大神を組み敷く。

  脂っこく汗臭い肉に押しかかられれば、大神の矮躯はみじろきすらかなわない。

  「だ、誰が!」

  「じゃじゃ馬は好みじゃあ。たまらんのう、おいー」

  反抗的な態度は豚座を燃え上がらせるだけ。

  脚で大神の股をぐいっと開かせると、性急に豚座は自身の凶悪な雄を大神の無垢な菊門に迫らせる。

  「お、おい……まさか……」

  「慣らしとる余裕もない。ワシはこん時をずうっと待ってたんじゃ。ぶっつけ本番でいくでえ?」

  豚座は重厚な体重を容赦なく乗せて、一息に大神を貫いた。

  ウブな桃色をした後孔に突き刺さる黒光りするえげつない太魔羅。

  「いだだだだ!! 痛い! 痛い! 痛いい!!」

  内部から食い破られるような激痛に大神は金切り声をあげる。

  大神の処女は豚座によって容赦なく食い散らされた。拡張の限界をいとも簡単に超えて肛門内が切れて鮮血を漏らす。

  「ブフゥー……締まりええのう。初釜掘りはやっぱり最高じゃあ……はああ、あったけえ……」

  痛い痛いと破瓜の痛みに泣く大神とは対照的に、豚座は大きな鼻の穴から生温かく湿った鼻息を激痛によってくしゃくしゃになった大神の小さな顔に吹きかける。うっとりと目を細める豚座。

  アナルが切れたことは豚座も重々承知の上で魔羅の暴虐を止めない。

  むしろ、血を使って潤滑しながら汚いデカ尻をぶりぶり揺らしながら手加減無しの強い腰をびったんびったん打ち付ける。

  「大神ィ……ワシのスケになれえ……なれえ!!」

  「ぎゃっ……ひィ……! いいぅ!!」

  脂肪と筋肉で丸々と膨張した桃色の巨体で押しつぶすように犯しながら、一方的な要求を突きつけ続ける。だが、陵辱される身を裂かれるような激痛と猛烈な異物感に翻弄される大神には返答する余裕がない。

  だからといって、淫らなピストン運動を中断して大神とコミュニケーションを取ろうなどとは豚座はつゆほども思わない。

  完全にサカリの付いた一匹の雄豚に堕ち、この仔犬のようにあどけない大神のわ幼くみずみずしい肉体を、自慢の太竿で貪り食う。

  「ブヒ……! ブヒヒ!!」

  へこへこと無様に腰を揺すりながら豚座は種豚の如く汚く鳴き続ける。

  乳輪の大きな茶色い乳首がボツンと中心で主張する脂肪と大胸筋で肥大化した胸と、見えない腹筋で支えられてるおかげで張りはあるが膨大な贅肉が三つ段を作っている太鼓腹をぶりんぶりん揺らしながら、汗腺から滲み出た男子高校生の男臭いエキス混じりの汗をだらだらと大神の小さな体に落とす。

  大神の速筋を鍛え、脂肪を絞った引き締まった肢体にぼたぼたと汚らしい汗が豪雨のような勢いで降り掛かり、グレーと白色の毛並みをびしょびしょに濡らす。

  淫猥な抽送の間も、がっしりと抱きしめられ桃色の肥えた体を擦り付けられるので、身長欲しさに飲んだミルクの甘い香りがする大神の体に、タバコと酒のせいで完全におっさんの臭いのする豚座の悪臭が塗り込められ、所有権を主張するかのようにくっさい体臭に上書きされてぷうんと臭う。

  鼻が良い大神にとっては地獄の悪臭。まさに豚小屋のような不潔な動物臭を豚座に喰らわせられる。

  豚座によってアナルだけでなく、嗅覚も犯された大神はこのとんでもなく酷い陵辱にただただ翻弄された。

  「ブヒ……ブヒ、ブヒ……! 痛がってる大神、かわええのう……かわええ……かわええ……」

  ブツブツと熱に浮かされたようにうわ言を繰り返しながら、豚座の醜い顔が大神に迫る。

  ブタ鼻を少し上に上げ、厚ぼったい唇を突き出す。

  「や、やめ……! まじで! 本当にそれだけはっ!!」

  陵辱による激痛の中でも“それ“に対する拒否感は明確に示すことができた。

  だが、今までずっとそうであったように大神のNOはいつも豚座に踏みにじられる。

  イヤだイヤだと首を左右に激しく振る大神の小さな顔を押し潰すようにして、豚座がぶちゅりと口付ける。

  「んんんんんっ!!」

  口元に感じるにゅるんという柔らかく湿った感覚。

  肉厚な豚タンが、唇の間をこじ開けて内頬に闖入して大神の小さな下をベロベロと絡め取って豚座のくっさい唾液を味蕾にぐにゅんぐにゅんと押し付ける。

  初めてのキスを奪われたという絶望感が大神にズドンとのしかかった。

  今まで豚座に様々ないたぶられ方をしたが、これが一番堪える。

  「う……うええっ!!」

  肛門と口を同時に犯されながら、大神はさめざめと泣く。

  大事にしておきたかった物の全ては豚座に滅茶苦茶にされた。

  取り返しのつかない喪失の悲しみは、性感に熱した桃色の巨体によって押し潰される。

  「ブヒャヒャ! もしかしてコッチも初めてだったかのう!?」

  大神の唇をさんざん貪った豚座はびっちゃびちゃに唾液に濡れた舌を引き抜きながら笑う。極太の唾液の筋が、大神の口内から豚座の分厚い唇を繋いでぶつりと切れて大神の鼻面にぴちゃりと落ちる。

  豚座のその問いに、悲しみの涙で答えてしまった大神。

  豚座はサディストだ。他人の痛み、悲しみ、怒りを受けても共感は無く、むしろそれを喜びに変換してしまう。

  大神が傷つけば傷つくほど、豚座の興奮は深まるのだ。

  「ブヒッ! ブヒヒイ! たまらん!! もよおしてきた!! 一発イカせてもらうぞ!!」

  鼻の穴を大きく開き、凶悪な狂い笑いを顔に張り付けた豚座は大神の細首を太い両手でぎゅうと締め始めた。

  「かっ……! はあっ!?」

  小さな喉仏を指で押しつぶされながらの絞首に気道を塞がれた大神は、ひしゃげた喉越しに声にならない悲鳴をあげる。

  「おおう……ナカがきゅうっと締まったでえ……首締めながらすんのはやっぱええなあ……」

  生命の危機にこわばった大神の身体反応を性感のエサにして、豚座はますます有頂天。

  大神の命になどこれっぽちも配慮せず、無遠慮に浅ましく恥知らずに腰をぐっちゃんぐっちゃん打ち付ける。

  豚座の巨根が、大神の肛門を腸を、その内壁を突っ張った亀頭でめりめりと捲りながら何度も何度も行き来する。

  犯し殺される。それが酸素不足で曖昧になった脳が行う現状認識。

  死に直面してるのに、恐怖が無くてただただ無慈悲な終わりを大神はそのまま冷静に受け止めている。

  それほどまでに抵抗の余地が無い。

  圧倒的な力量差でなぶられ、犯されるだけ。

  生きたいと願う余裕すら無く、視界と意識が白くぼやけ始める。

  「…………っ!!」

  前立腺を巨根に押し潰されたことによる物理的な反応で、種を撃ち尽くして空っぽになった大神の竿から透明な潮が噴き上がる。ぼやぼやした意識の中で行われる潮吹きは、夢うつつのままに寝小便するような心地良さにどこか似ていた。

  「ブヘヘ! こいつ潮吹きよったでえ! こんのエロガキがあ!!」

  醜い顔をこれまた醜く歪めて汚く笑う豚座。

  相手を気持ち良くする気持ちなど皆無なくせに、快楽のような反応を返した大神の様子に気を良くして、彼を罵倒しながら腰をぐりぐりと寄せる。

  ぞわぞわと込み上げてくる感覚。豚座の背中にブルリと悪寒が走り、そして。

  「ブヒェアッ……!!」

  豚鼻で汚くいななきながら、肥えた体を肉を揺らしながらブルリと振ると同時に豚座はえげつない中出し射精をキめた。

  黄味がかったドロッドロの、濃厚とんこつスープの如き豚精液を大神の幼い体にどっぷんどっぷんと巾着袋みたいなふぐりを脈動させながらなみなみと注いでいく。肛門と腸壁にべっとりと粘着した熱い精は内部からぷうんと豚座の青臭さを臭わせて大神本来の体臭を上書きする。

  「ブフゥ……」

  しつこく長く続く吐精に、大神の首を絞めながらうっとりと息を吐く豚座。

  幸運なことに、ようやく大神の意識が失われる。

  大神は白目をむき、現実の痛みの無い世界へ。

  それと同時にこわばっていた体はだらんと垂れて、まるで死体のように地面にただ転がる。

  「ああんっ!? おいこら寝てんじゃねえぞ大神ィ! もっともっと楽しもうやあっ!!」

  大神が失神しても豚座は許さない。

  意識の主を失った大神の体を、ズチュズチュと粘っこい水音をたてながら好き勝手に陵辱して己の欲望を晴らす。

  ダッチワイフを弄ぶかのような凄惨な陵辱をスマホで撮影しながら牛頭は……

  「太、先輩……」

  泣いていた。

  左手でスマホで淫行を撮影。右手は己の黒いビキニパンツからずり出した陰茎を、その綺麗に剥けた細長い雄を扱く。もう既に絶頂を一回迎えたのか、その雄は白濁に濡れていた。

  いつの間にかズボンを半脱ぎにした牛頭は、大神を犯す豚座をオカズに自慰をしていたのだ。

  牛頭は豚座のことが好きだった。

  暴虐と残酷を極めたこの豚こそ、自らが思い描く悪の理想像だと牛頭は見定めて豚座に仕えてきた。

  だが、当の豚座は無心に尽くしてきた牛頭よりも生意気な大神に夢中でちんぽをぶち込んでいる。

  忠実な腹心の部下が、一方通行の想いを己に向けていることなどまるで無視して、豚座の一方的な陵辱はずっとずっと、続くのであった。

  「ぶほぉっ!」

  クジラの潮吹きのように、白い精を口から吹き上げながら大神は目覚めた。

  「ウエッ! エッホ!! 俺、寝てる間にいったいナニされたんだあ?」

  痛む体をさすりながら、大神は自らの体を確認する。

  初めに感じたのは、味覚の異常。

  口の中が何やら苦く、喉もイガイガして焼けるように痛い。

  次に見つけたのは、外見の異常。

  お尻からぽたぽた垂れる白い液体。

  頭から胸、腹、背中、足先までべっとりとまんべんなく毛皮にこびりつく白濁。

  手で全身を撫でているうちに、耳の穴の中まで白液が残っていることに気づく。

  意識を失ってる間に豚座に何をヤられたのか……。知らない方がきっと幸せなのだろう。

  「くっそ……チクショウ……チクショウ……」

  この重たい気持ちを悲しみではなく、怒りにせめて変えて悪罵を外に向ける。

  少しでも哀れな自分を悲しんでしまったら、すぐに自殺してしまうような心地がして。

  地面に散乱した自分の服を集め、水道の冷たい水で体を洗って帰る頃には日はとうに暮れていた。

  「んー? なんだこれ? わっ! ちんぽだ! ちんぽ! おーい、ここにちんぽの写真あるぜー!」

  次の日、アレ高の掲示板に張り出された大神の股間の写真ピンナップにわらわらと不良生徒たちが集まる。

  「ギャハハハ! 金玉でけー! キンタマオだキンタマオ!!」

  掲示板に張り出された大神の睾丸の写真を見て虎が笑う。

  ご丁寧に局部だけでなく、大神の顔も含めた全身写真と彼の名前、出席番号、クラス、実家の住所といった個人情報が満載のメモ帳まで掲示板に添えられている。

  おかげで、このポルノ写真のモデルが大神玉緒であることが全校生徒に知れ渡る。

  「チンカスきったねえな! ぜってえクセえよ!」

  金玉の写真を見ながら獅子が笑う。

  「見ろよケツの穴までよーく撮られてる! 良くこんなの撮らせるよなあ。本当は見せたくてこうしてたり?」

  生徒たちはガヤガヤはやし立てながら、大神の陰部を思いっきり嘲笑しながら侮蔑的なコメントを並べる。

  「あ、大神だ!」

  「出たー! スターだー!」

  「ヒューヒュー!!」

  悪辣な生徒に掲示板の前に連れてこられた大神。

  予想していたこととはいえ、掲示板にずらりと並べられた裸体の写真に頭の血が引く。豚座のハメ撮りが無いのは不幸中の幸いか。

  「……くっ!!」

  慌てて掲示板の写真を外そうと手を伸ばす。

  が。

  「なんだよ、せっかくの写真だ残しとけよ記念に」

  「みんな楽しんでんだろー? 勝手に外すなよジコチューが」

  「おーい! まだ見てない奴いるかー? スマホで撮ってSNSで拡散しよ」

  たむろしてた不良たちに取り押さえられて、大神はボコボコにされる。

  男社会は、舐めちゃいけない奴と舐めて良い奴を厳密に分ける。その上で、それぞれの処遇を決めてそれがずっとずっと後まで続いていく。

  「写真と同じか脱がせてみようぜ! 白ブリまだ穿いてんのかな?」

  「パンツも脱がせろ! でかい金玉、俺も見てえ!」

  「勃たせてさ、イカせてみようぜ! どんくらい出んだろ!?」

  今、この恥辱の写真によって大神のアレ高での立場は決定した。

  全校生徒から舐めても良い奴と認定された大神玉緒の絶望の高校生活は、あとたっぷり三年残っている。

  「や、やめろっ! やめてくれえ!!」

  絶望する大神の叫びは、群がる不良たちの嘲笑にかき消されて聞こえない。

  アレ高のよくある一日の始まりだ。

  「大神の奴……良い気味だ。ね、太先輩」

  件の校舎裏で、バイクをいじりながら牛頭が言う。

  横の豚座に語りかけるが反応は無い。

  豚座は頭から血を流して倒れていた。

  「太先輩! 良い刺青師見つかりましたよ!」

  今日の朝、校舎裏にて笑顔でそう報告した時。

  「……やっぱいらんわ。ワシはカタギになる」

  「は?」

  唐突に豚座がそう言い出した。

  聞けば、不良をやめて中学までやっていた相撲部に復帰すること。

  そして、卒業後は相撲部屋のプロテストを受けるからヤクザにはならないと豚座から聞かされる。

  『なぜ』と問えばアレ高に飛ばされても人生をやり直そうとする大神の心意気に影響されたと言う。

  やり直し。やり直し。やり直し。

  都合の良い言葉だ。

  いったい、豚座はどれほどの数の獣人を殴り、タカり、犯してきたと思っているのか。それでも豚座は平然とやり直しを口にする。

  改心して善になったわけではない。

  豚座は自らの悪に対してすらも不誠実なのだ。

  「世話んなったな。じゃあ」

  今まで受け取った数々の奉仕と多額の上納金を『世話になった』の一言で済ませて豚座が背を向ける。その隙を牛頭は見逃さなかった。

  「太先輩、あんたは最高の不良なんだ。だから、ずっとずっとアレ高に……ジブンのそばに居てくださいね」

  血の滴るスパナを使ってバイクのボルトを締め込みながら、牛頭はほがらかに笑う。これまでの人生で、今が一番幸福だ。

  柔らかな春の陽射しが豚座の巨体と血溜まりに暖かく降り注いでいた。

  

  ここは荒田高校。数多の不良が集う最低最悪の学校。

  どんなワルガキも大歓迎。

  アレ高の門は、いつでも広く開かれている。