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[[rb:引 > ひき]][[rb:田 > た]][[rb:真 > しん]][[rb:二 > じ]]16歳。彼は今、本の迷宮にいた。
そこはその名の通り、本棚という本棚が目まぐるしく立ち並び、まるで迷路のようになっていた。彼は何故かその中にいたのだ。
自分でもどうやってこの場所に来たのかさっぱりわからない。いくら歩いても走っても本棚やその中にきっちりと整列されている本ばかり。
走っても走ってもその迷宮は終わらなかったので、業を煮やした真二はここから出る方法を探してみる。
もしかしたらこの中にある本の中にヒントがあるのではないかと考えた真二は、本棚の中の本を一冊取ってみる。それは革の表紙でできた真っ黒な本だった。
本を開くと、中には血のような真っ赤な字で理解不能の呪文のような文様がびっしりと書かれている。
これではヒントにすらならない。そう思いその本を本棚に戻そうとする真二。しかし、思いがけずパラリとめくったページの、とある一節に書いてある文字だけ、彼には解読できたのである。
『お前は悪魔に[[rb:呪わ > えらば]]れた。逃れたくば運命の日の中では陰茎を刺激してはならぬ。白き魂人の器から解き放たれし時、お前は悪魔へと転身するであろう』。
その瞬間、真二の体は闇へと吸い込まれていった――
[newpage]
「うああっ!」
朝7時25分。叫び声とともに引田真二は目を覚ました。彼は悪夢を見た。本の迷宮の、悪魔の書物の夢を。
「何だったんだ、あれは……」
真二は、その夢がどうしても夢だとは思えなかった。目が覚めて、布団から跳ね起きて、悪夢から解放されたはずなのに、その夢に妙にリアリティがある気がして。
その書に書かれていた文を、しっかりと記憶している。しまっている。悪魔に呪われたという文章、悪魔へと転身するという、得体の知れない恐怖を煽る文章を。
「7月21日……か」
ふと、なんとはなしにスマートフォンの画面を覗き込む。そこには7月21日、7時27分と書いてある。今日はとりあえず学校の日なので、この夢から逃れようと部屋を出て、朝食を採り、学校へと向かう。
嫌なことを忘れようと走る通学路の途中でも彼の脳にはあの夢の中の文字が焼き付いていた。今日はやけにパンツの中で擦れる逸物が感じる気がしたが、そんなことは関係ない、と、気にしないことにした。
(それにしても……あれは何だったんだ……?)
真二は授業中でもその事で頭がいっぱいで、先生の退屈な授業の言葉も耳に入らずにいた。ぼーっと教科書を眺めながら夢想に耽る。そこに書かれている文字が意味のないものの羅列に見える。しばらく虚空を見つめていると、チャイムの音で真二は覚醒させられる。
「……予習……」
「テスト……」
「勉強……」
先生やクラスメイトのまばらな声が真二の頭を流れる。どうでもいい、とばかりに受け流す真二は、ふと股間にムズムズとした感覚がするのに気がついた。
(そういえば今日トイレ行ってないな……済ましとくか)
きっと尿意だろう。そう済まし真二はそそくさと男子便所へと向かう。最寄りの男子便所は休み時間にも関わらず人っ子一人いない閑散としたものだった。
(……人がいないなんて珍しいな。この時間なら結構来るはずなのに。まあいいか)
「……ふぅー」
逸物からチョロチョロと出る放射線。しかし溜まっているだろうと思ったそれは予想よりは量が少なかった。おかしいな、と思いつつそれは個人差だろうと自分で自分を納得させる。
そこまではよかった。そこまでは普通だったのだから。
「んっ……?」
そこからは、普通じゃないことが真二の身に起きていた。
「勃起してる……?」
真二の逸物がやんわりと勃ち上がっていたのだ。完全に勃起したものではないが、やはり勃起には変わりない。うっかり触ると脳に快楽の信号が送られる。
「どうして……んっ……」
自覚してしまうと、カラダの中のムラムラは止められなかった。段々、体内にいやらしい熱を帯びていき、その熱は快楽を求める獣的欲求となって真二を苛んでしまう。
「っ……! 誰もいない、今のうちに……!」
真二は個室に入り鍵を閉めると、便器に向かって勃起した逸物を突き出す。さっきよりも逸物は大きさも固さもその度合いを増していた。
「んっ……! あっ、やば! 気持ちいい……!」
真二は声を押し殺して喘ぐ。我慢汁に塗れた逸物を擦るとグチュグチュといやらしいを音をたてる。そして、絶頂が訪れる。
「ん、くぅっ……!」
ビュッ、と新鮮な精液が便器の中に迸る。その量はいつもよりやや多い気がした。
「こんな時間に体育とか憂鬱だよなー」
「まあな」
そんな事を言い合いながら体育の授業の準備をするクラス一同。当然真二も制服を脱ぎ体操服に着替えている。その時、クラスの生徒が声をあげた。
「うわっ! 引田、なんだそれ!」
「尻尾……?」
真二は目を疑った。自分の尻に尻尾が生えていたからだ。太く先の尖った紫色の尻尾が。
「なんで……」
[newpage]
真二は学校が終わると急いで家へと帰った。それはあり得ない現実から逃げるかのようだった。自分の部屋に入ると、制服を脱ぎ、自分の姿を確認する。
「本当に生えてる……」
確かに尻尾が生えていた。それは先程と同じ、太く、紫色をしており、先は矢尻のように尖っていた。これは本に書かれている悪魔のもののように思えた。
「ああっ……!」
そこで彼は思い出した。あの夢を。
あの書に書かれていた内容を。
(『お前は悪魔に[[rb:呪わ > えらば]]れた。逃れたくば運命の日の中では陰茎を刺激してはならぬ。白き魂人の器から解き放たれし時、お前は悪魔へと転身するであろう』……)
書に記されていた『運命の日』とは、今日。7月21日のことなのか。真二はそう思った。
『陰茎の刺激』とは自慰行為のことなのは直感的に理解できた。『白き魂人の器から解き放たれし時』とはどういうことなのだろう?
そんな事を考えていた真二の逸物が、また再び熱を帯び始める。そして再び勃起を始めた。
「ひぐっ……なんで、こんな時に……」
慌てて服を着ようと動いた途端、空気に逸物が擦れ、真二に快感が訪れる。
「うぐううぅっ……!」
あまりの刺激につい蹲って快感を抑えようとする。これでは迂闊に動くこともできない。服を着れば、布と擦れて大変なことになってしまうのは目に見えていた。
「やばい……耐えなきゃ……このままじゃ、俺は……!」
真二の尻尾は自分の意思に反してゆらゆらと楽しそうに揺れる。まるで早く真二に悪魔になってしまえと囁くように。
真二は、そのままの状態で夕方を、夜を過ごした。両親に心配されてもなお、悪魔の誘惑に耐え続けた。夢の中の予言通り悪魔になってしまわぬように。
他人から見れば夢の内容を信じる滑稽な男のようにも思えるが、彼の中に渦巻く異様な快感と臀部に鎮座するその尻尾がその予言が真実なのだと彼に確信させていた。
そして夜が更け、朝がやってくる……
「はぁ……はぁ……うっ……も、もう、21日は、終わった……のか……?」
真二はよろよろと朦朧とした意識のまま立ち上がる。真二の目的はスマートフォンだった。あれならば、今の日にちを確かめることが可能だ。早く快感という拷問から解放されたい一心で、よろよろと真二は部屋を歩く。その時間はとても長く感じられた。
「あっ! ダメだ! イク!」
そんな真二についに我慢の限界が訪れた。突然限界まで勃起した逸物から、大量の精液が発射され部屋の中を汚す。部屋からは強烈なイカ臭さが広がった。
「はぁ……はぁ……えっ?」
やっとの思いでスマートフォンを確認した真二は、自分の目を疑った。
「えっ、なんで……」
それは、夢だと思った。しかしそれは夢ではなかった。
スマートフォンの表示は、未だ7月21日を指していたからだ。しかも、奇しくも目覚めた時と同じ7時25分。
「あれ、確か今日は……えっ?」
まだ終わらないのだ。彼の中の7月21日は。これは彼の勘違いだったのか。それとも、悪魔の力で時が歪められているのか――だが、もう彼にとってそんなものは関係がなかった。
「ふああっ! ンオオオッ!!」
それは、絶望だったのか、悦楽だったのか――耳を塞ぎたくなるような奇妙な声とともに逸物から再び精液が迸る。それと同時に、尻尾と同じ色の一対の翼が彼の背中から勢いよく生えてきた。それは蝙蝠の翼のようで、それもよくイメージされる悪魔のものそっくりだった。
「あぁ……ナンダコレナンダコレ、何でオレに翼ガ、アッ、駄目なのにダメナノニ、やめろヤメロヤメテクレ、チンポ、ちんぽ、チンポォッ!」
そこから彼が堕ちるのに時間はかからなかった。
真二はその後、タガが切れたかのように涎を垂らし目を迸らせながら一心不乱に逸物を扱き続けた。
「アグッ、アガァ、ヤメテクレッ、オレのカラダ、イクッ、イクイクイクゥ!」
勃起を続ける逸物を握り上下するとそれだけで極上の快感が彼の脳髄を刺激する。その度に精液が何度も何度も発射され、彼の体や部屋を汚した。
真二の肉体もそれに応じて変わっていく。
角が生える。
歯が抜け、牙に生え変わる。
髪が抜けていく。
全身の毛も抜け落ちていく。
肌の色が変わり、翼や尻尾と同じ紫になる。
逸物を摩る手のひらも小さく柔らかい子供のようなものへと変わる。
身長が縮み、小さな幼児のような体へと変わっていく。
筋肉が失われてぷにぷにと柔らかい脂肪ができると体つきも幼児そのものになっていく。
「アレ? なんでオレはチンポさすってたんダッケ? マア、イイヤ」
どうやら射精と共に出されたのは精液だけではなかったようで、彼の人間としての知識や、引田真二としての16年間の記憶までもが、精液に溶けて消えてしまったようなのだ。もう今の彼は自分が何者だったのかも、覚えていないだろう。
それが、『白き魂』の正体だった。彼の魂を精液に混ぜ込み排出していたのだろう。彼は真実に気づく前に自分を失ってしまったから、もう二度とそれに気づくことはないが。
「でも、キモチイイから、いいよナ。アア、マダチンポがシゲキをもとめテル! モット、モット出す!」
身も心も悪魔になってしまった真二はそれでも自慰を続けた。
朝が過ぎ、昼になり、夕日が出て、夜になっても、彼はずっとずっと自慰に耽った。
無尽蔵に作られる悪魔の精液を搾り続け、部屋の中はいつしか精液の匂いが染み付いた異臭部屋と化していた。精液だらけのスマートフォンには、あいも変わらず「7月21日」の日付を指していた。
[newpage]
『我が眷属よ。我の声に応えよ』
「ン……? ダレだ? オイラをヨぶのは?」
三日三晩自慰を続けていた真二だった名も無き悪魔を呼ぶ声がした。悪魔はその声に反応する。知らない声だったが、それはやけに懐かしい気がした。まるで生まれ育った故郷で聞いた声のようだった。
『呪われし者よ、ここは悪魔の住む場所として相応しくない。今すぐ魔の世界へと帰還し、我が下へ傅け』
『声』は、そう言うと『魔の世界』に繋がるゲートを彼の前へ開く。そこに続く先は、深海のように深く、深淵のように底がない空間だった。
「アァ……わかる……ホンノウが、オシエてくれル……ココがオイラノカエるバショ……」
悪魔はゆらゆらと導かれるようにゲートへ向かう。足をゆっくりと動かしながら、ぷらぷらと勃起を続ける逸物を揺らして。
悪魔の足がゲートへと入り込んだ、その時――
「あっ! 嫌だ! 俺は悪魔になんて……ああっ!?」
一瞬、目に光を取り戻した[[rb:悪魔 > シンジ]]は、[[rb:叫び声 > だんまつま]]をあげて[[rb:精液 > たましい]]を出した。
「……オイラ、サッキなにかイッてたか? マア、イイカ。キモチヨけれバ、ナンデモかまわないさ……」
こうして[[rb:悪魔 > 真二]]は消えた。
悪臭に塗れた部屋の中で、スマートフォンの日付は『7月22日0時』を指していた。
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