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犬の王子と虎の従者

  

  犬の王国ドーラン。

  その西部辺境に位置する名もない村が隣国の兵が密かに送り込まれていた。

  辺境が重要拠点になるからではない。ドーランの重要人物、ユーゴ王子の滞在を嗅ぎつけていた。数十年に一度の干ばつが続いていることも知っていて、雨あられの火矢を受ければ辺境の田舎はあっという間に火炎地獄。そのまま王子を焼死させるもよし、あぶり出し捕縛するもよし、辺境を滅ぼし兵の勢いをつけるもよし。

  後の歴史に、犬猫の和平を起こすきっかけになったと記される。

  もし奇襲をかけられれば、村の一帯が火の海になるのではないか。

  虎の女戦士ハンナは、虫の知らせから行動を早めるよう王子に進言。

  事なきを得て、ドーランの情勢は回復。安寧への足がかりをつくった。

  王子は自体の収拾を果たし、未来のことを国民たちに協力を呼びかけていた。

  王子ユーゴは呆けていた。

  白い毛並みを一瞬だけ逆立ててしまう。

  「ハァ」

  

  滞在地の書斎は、落ち着かないものだった。

  環境の変化と一口に語るのは難しいものだ。

  室内には、絶えず甘酸っぱい香りが漂っている。

  ずっと側で見守り、支え、手を引き上げてくれた戦士のもの。

  彼女がいなくて隣で囁きかけてくるような錯覚を持たせていた。

  この香りに頼もしさ、親しさを抱いて、嗅ぐだけで勇気が湧き出す。

  ふとした拍子に安らいだのを思い出したし、頬が緩んでしまった。

  しかし、近頃は、そればかりではいられなくなってしまっている。

  正直。ユーゴは女性にモテるタイプだと感じたことはなかった。

  未だにマズルは短い。子犬のよう。猫みたいだ。

  あの歳で、まだ成熟しきっていない。

  なんと破棄がない王族だ。

  あれが世継ぎなのは些か問題では。

  陰口を耳にしたが、自分自身も感じて、鏡の前に立ち溜め息をつく。

  このマズルがもっと長いものであればきっと流れる空気も違うのだろう。

  そんなふうに女々しい気持ちになり、しょげて尻尾を垂らしてしまった。

  恥ずかしいけど。定規を口の横に押し当てて、マズルを測定したものだ。

  他を従えたり魅了したりする、そんなカリスマを持っているわけでもない。

  自分がドーランの王子であるから、みんな従ってくれて、敬ってくれている。

  この立場をおわれたとき、自分には一体全体。何が残るのだろうと不安だった。

  取り立てて実力があるわけでも、ハンサムなわけでもない。どこにでもいそうな感じが拭えない。

  王家の義務を果たし、国の平和を保っていきたい。

  自分の理想を叶えたいと願い行動を起こしたつもりだ。

  職人が技法を凝らした衣装や装飾を身にまとわなければ、なんだというのか。

  ショーケースに飾られている見本品や展示品こそが、自分なのではないだろうか。

  こんなことばかりを考えてしまうのは、やはり、ハンナの香りに対しての気持ちによるところが大きかった。というより、それ以外には存在していなかった。

  虎の縞模様を目で追っていたとき、不意に胸を締めつけられた。

  視界は数秒だけ歪みすべての感覚を失い。血が巡るのを理解した。

  ハンナと顔をあわせ、同じ空気を吸っているとモヤモヤ感を覚えた。

  最初は何なのかわからなかった。それでも、フェロモン臭を浴び、つい勃起してしまったことを認めざるをえない。

  こんなの、最低じゃないか。

  邪な感情を彼女に向けている気がしてならなかった。

  純粋に親しんでくれている女性を、性欲の対象にしてしまっているのだから。

  勃起したのは一度や二度で終わってくれず、起こしては気まずい思いをした。

  それでもハンナは護衛をしてくれているため、この甘酸っぱさからは逃れようも無くなっていた。王宮の庭園を散歩し、春爛漫の花園を横切ったみたいな空気が部屋に流れてしまう。

  

  「王子。王子? ユーゴ王子?」

  

  肩をトントンと叩かれ、声の主を見上げた直後。

  ユーゴは喉を引きつらせる。咄嗟に身を丸め股間をおさえた。

  

  「ハ……ハンナ……ノックくらいしてよ…………」

  

  しっかりとした王子らしい装いの下。

  あさましく隆起した股間部を、両手で覆い身を丸めている。

  なんて情けないんだろう。カッコ悪いんだろうと自己嫌悪した。

  

  「ぼ、僕とハンナの仲だけど、警戒を強めようって言ってたのはハンナじゃないか、勝手に入ってこないでほしいよ」

  

  ふぅ、と右隣のハンナは両手を腰にやって、呆れたふうに見下ろす。

  異常はなかったのであると外に控えた兵士たちへ片手をあげ合図していた。

  余程にボーっとしていたのだと、今しがたに気がついて、バツが悪くなった。

  

  「先程から呼びかけていました。それに、ノックも忘れてはいませんでした。ここ二週間ほど、王子はボーッとし過ぎなのではありませんか?」

  虎縞の模様のある顔。鍛え太い首筋にも目立ったストライプ。

  犬にはない、一点に研ぎ澄まされた鋭くも柔らかな虎の瞳。

  匂い。犬らしい嗅覚で、何度も絶えず拾い上げる女体の芳香。

  前かがみで、ずいっと接近される。半眼になって、訝しげだ。

  「体調不良であるならば、すぐに主治医を呼びますが?」

  「ち、違うよ別に、考え事をしていただけ。他国との戦争はさけたいし税金の取り立てに協力的でない領主もいる。内戦なんかもってのほかだから、どうにかして、穏便に済ませられたらなって……」

  嘘ではない。近頃に猫の王国キトワーが攻めてきているもので、こうなったのは王の威信が揺らいでいるせいであると、各所から反乱の芽が湧こうとしていた。

  ルティアを始め、優秀な配下たちは結構なスパイをひっ捕らえたとのこと。

  内側から王国を壊されかけていたとなれば、結局は民や領主に不信感を持たせてしまうのは無理もなかった。いまは誠心誠意を尽くして粘り強い交渉が必要とユーゴは信じており、以前に辺境へ赴いた理由のひとつでもあった。

  「穏便にばかりは済みません」

  ハンナは出来の悪い生徒に言い聞かせるみたいに、ぴしゃりと告げた。力強い両腕が組まれる。その右側に備わった王家直属の紋章を盛り上がらせるほどの乳房が、前と横に広がるみたいだった。くっきりとしたものだった。

  「あなたの理想を知っておりますし、私は常日頃から支持をしたいと願っております。しかし、それを成すためには」

  「わかってるよ、僕が甘すぎるって言いたいことくらい」

  ハンナの身につけた礼装は折り目がつくほどに、しゃんとしている。

  胸周りのボディラインや鍛えられた撫で肩に至るまで、ハッキリとした。

  今日の予定を告げ、ボケっとするのをやめるよう窘めた後。さっさと退出する。

  「…………アァァァ……ゥゥゥゥゥ」

  彼女が退室して、ちょうど一分。変な声をあげてしまった。

  退出する際に細い尻尾のストライプに目を吸い寄せられてしまう。

  縄を手繰るように目を移動させ、礼装がぴったりとした部分を凝視していた。

  丸くて、やわらかそうな。腰の位置を高く感じさせる虎の臀部を見つめていた。

  靴をつけた足首とズボンの隙間より覗く毛。上にゆくほど太くなる脚線を眺めて、鼻は残り香を惜しむように、スン、スン、と拾いあげてしまう。脚が動くにつれ布地を押し上げるヒップ。流れるような尻尾。

  どこもかしこも、魅力的でならなかった。

  [newpage]

  就寝の間際。

  王子の職務を果たし、つつがなく一日を終えようとしていた。

  まだ明かりを落としていない寝室にて、ユーゴは深々と溜め息をした。

  あのおっぱいに顔を埋めてみたい。そんな欲求に熱い血流が頭へ流れ込んだ。

  自分の両手を手で擦る。白くて滑らかな、汚れのないシーツみたいな毛並み。

  「ゥゥゥ……」

  鼻筋を悩ましげに際立たせる。

  パジャマの下が、こんもりと盛り上がりを観せていた。

  海綿体に血を溜め、テントのような三角形をつくっている。

  幸いにも、寝室にあるのは自分の体臭。彼女の残り香はない。

  ユーゴの心は雄の欲望に侵略されて劣勢。

  実に暗澹としたものであった。

  「………………」

  息を荒く、気がつけば気がつけば、その場で下をおろしていた。

  反り返った肉の棒。大きいとはいえないが、平均的な、年頃のもの。

  ぷんっとした男の臭い。自分が劣情を催して、その気になった合図。

  握りしめながら、吐息をついた。気持ちがよくて、皮から亀頭を出し入れする。

  ぬるりとした感触。皮が亀頭を滑っては戻り、滑っては戻り、先走りを垂らした。

  整えられたベッドを見つめながら、血潮を流す硬い肉を、乱暴に擦り上げていた。

  「ハンナ……」

  小声をあげ、何度も、彼女を思い浮かべながら堪えていたものを溢れさせる。

  「あの、王子?」

  幻聴がして、匂いを思い起こしたとき。

  とんっ、と肩に質量をあずけられ、握りしめられ毛穴を開かせた。

  「な、何でハンナ!? ハンナッ!?」

  「いったいなにを…………あ」

  

  丸出しの尻尾。いや、下半身を見られてしまっていて。

  自らの勃起を慰めている光景を、残らず知られてしまっていた。

  「言っておきますけれど、ノックなら何度もいたしましたからね」

  

  みっともなく陰茎を握りしめ、自慰を停止した哀れな雄にとって。

  発情を煽ってやまない愛おしい雌の芳香。汗の酸っぱさに大人の甘さ。

  短いマズルに備わる鼻腔に香辛料を塗り込まれたみたいに、粘膜と脳天を直撃してきた。

  普段のユーゴならば、性的興奮を知られてしまえばゾッとして、絶句してしまっていただろう。

  「…………ハン、ハンナァ~」

  情けなく吠えて、縋りついてしまう。

  突き飛ばされるのではないかと、密着しながらおもってしまった。

  「あの、いったいどうしたのですか?」

  ハンナは真顔。

  見上げたユーゴは心臓が止まりそうな思いであったが。

  「僕はハンナが好きなんだ……ずっとずっと好きで、純粋に愛して恋しているんだと思ってた」

  なのに、とユーゴは言葉を区切り。

  「においを嗅いで、悪い感情ばっかり芽生えて、ハンナに触りたい触ってもらいたい。まぐわいたいって気持ちが、おさまんなくなってしまって……」

  「そうなのですか」

  さらっと受け流されてしまった。

  「悪い気分ではありませんが…………そのように、ええと、い、陰茎を慰めていらっしゃるのは、さすがに、どうかと…………おも、います」

  最初はなんてことないふうに、途中から言葉に詰まって、最後は目を泳がせながら参ったふうに伝えられた。

  「それよりも……あたっております」

  「ご、ごめんなさい」

  しかし、ユーゴは離れようとは、しなかった。

  こんな自分をどうおもわれたのか想像するだけで恐ろしくなる。

  男だから仕方ないと許容されるか、それでいてバカにされるのか。

  おのれを制御できない駄目なやつと、嫌悪感を抱いてしまったのか。

  「私は、ユーゴ王子を男として好意を持っておりますが」

  ハンナは、ごにょりとした。

  「犬ではありませんし、身分も違いますし、それでも、気持ちに貴賤はないのではないかと普段からおもっております」

  ユーゴは肩を握りしめられる。距離を一歩おき、改めて見上げたところ。

  「私で、よろしいければ……ぜひ、夜のおあいてを、させていただけたらと」

  「……したい。僕は、ハンナと、させてもらいたい」

  「ありがとうございます。それでは申し訳ないのですが、服を脱ぎますので」

  言われ、あわてて両手を彼女の服から遠ざけていった。

  [newpage]

  

  

  ユーゴは先に服を脱ぎ、ベッドの上。

  先走りの粘りを感じ得ながら息を切らす。

  服を脱いだハンナは、股間部に片手を添え、もう片方で胸を隠す。

  長らく鍛えられた身体は、余計な肉が一切合切と見当たらなかった。

  どちらかといえば筋肉質で、虎縞模様とコントラストをつくる凹凸に目を奪われる。

  なんて、なんて美しいんだろう。とユーゴの目は止まらず、鼻は空気を荒々しく吸う。

  筋肉を締めたみたいに搾られたウエスト。腹筋の割れ具合に混ざり、黒い線が力強く上から三本横に走っていた。

  「あまり、じろじろと見ないでください」

  

  むっちりとした太腿。自分とは比べ物にならない二の腕。鎖骨や打たれ強く筋肉を添えた首筋に至るまでが、ユーゴは引き寄せてやまない。

  毛皮の下と筋肉の間には、薄皮程度の脂肪が層をつくっているのを直感。

  彼女が添えていた手を股間から退けられる。女戦士のぷっくり膨れた恥丘は白く、毛に覆われていた。上側は腹筋と同じく黒が駆け抜ける。

  「綺麗だよ……」

  自分よりも長身で、恰幅も恵まれた虎を見上げ素直に言った。

  「ありがとうございます……ユーゴ王子」

  ハンナは目を細め、はにかんでいる。ぴくりと、耳を動かしていたのが可愛らしくて堪らない。

  「ハンナ?」

  仰向けにされたユーゴに、ハンナは覆いかぶさる。

  毛並みが触れ合うよりも先に発情の体温をまじわらせ、口先同士が接触。

  鍛えているが、どうしても見劣りするユーゴの胸筋に大きな脂肪が密着。

  「んっ、んっ、ちゅっ」

  ハンナの口が短い犬マズルに重ねられたかとおもえば、キスをしていた。されていた。

  やわらかな口先。虎の、短めのマズルと相性がよいのだと気がつき、意を決して舌を前進させる。唾液とを掻き鳴らしあい、舌と舌が、じゃれあうみたいに触れあう。

  僕の口も捨てたものではないと、ユーゴは噛みしめる。

  頭が、ふわふわとして身体は重く熱されていった。

  「んっ、ちゅっ、はむっ、王子」

  一瞬だけ垣間見えた虎の両眼。

  雌の熱視線に瞳を焼かれてしまう。

  チュウ、チュウ、と音を立て、ユーゴのマズルをついばむ。

  幾度も舌をなすりつけるようにして、熱い吐息を喉へ送った。

  ユーゴの頭は割れそうだ。高揚のしすぎで勃起が痛苦しい。

  だが、次第にハンナは変わった。触れ合う程度の行為であるはずが。

  ユーゴの後頭部に両手の指が絡まり、手のひらで固定されてしまう。

  やがて、息継ぎも忘れたように啜り上げられ、息から唾液を注がれる。

  「むぅ、んぅう」

  彼女の乳房が押し寄せてきて、顔がマズルを潰すみたいに迫っていた。

  やわらかな脂肪。愛しい虎縞が白い毛並みをペイントするみたいに擦る。

  ハンナは体重をかける。ユーゴは酸素を求め後退。しかし虎は積極性を増す。

  「チュッ、チュウウウ、チュ、じゅる、おうじ……おうじ…………じゅぅぅ」

  舌が歯茎をなぞりあげ、口粘膜をざらつきのある舌が侵略するみたいに。唾液を飲みきれず口周りから、とろりとろり、と流れる。頬の内側をこねるように舌先を押しつけられていった。

  「は、はん、な」

  発音がおぼつかなくなるほど、口を塞がれていた。鼻で息を吸いあげれば、心臓が跳ねてしまう。勃起にまで伝導し根本から先端が、硬直の度合いを強めていた。

  にじゅり、ぐじゅり、愛と呼ぶには卑猥な音色が、異種の鼓膜を震わした。

  口内の舐めあいは、ハンナの一方的な捕食となって、唾液を奪うように啜る。

  舌を牙に挟まれてしまい、ぞくりとした。尻尾がビンっとシーツを撫でた。

  頭蓋の裏に血が集まったのか、じんじんとした痛み。熱感が押し寄せる。

  「んぅ!」

  ハンナの片手が首筋を愛おしげに撫で、小指から人差し指の肉球が毛を這う。

  胸筋を通り過ぎれば、自然と過敏なへそをなぞりあげ、やがて太腿。勃起へ続き。

  ガシッと握りしめられてしまう。ハンナの指に、先走りがついたのを感じ取った。

  「んぅう!!」

  ユーゴは、小さな呻きをあげた。

  指がちょっとまとわりついているだけ。

  口が大好きな芳香に包まれながら、口を蹂躙されていた。

  全身が湯船に放り投げられたみたいに、ぎゅっと硬直した。

  びゅうう、びゅくびゅく、と勃起が次々に絶頂を打ち出した。

  肉球と毛並み。指に包まれながら精液を、どっぷりと放出する。

  じゅるじゅると溢れた唾液を、ハンナに呑まれ嗅ぎあいながらの果て。

  体温異常の熱を持ち、ヌルっとした体液が、痙攣をしながら放たれる。

  子犬さながらに鼻をならし、恍惚の表情をつくり、舌をこぼしてしまう。

  すかさず、ハンナのマズルがとらえていき、甘く噛み締めてしまうのだ。

  当然。至近距離であるから臭うだろう。奇妙な甘さと男臭さが鼻をつく。

  「んむっ、じゅるり」

  「ふあっ………………ハァ」

  やがて、口が離されていった。

  じゅるりと唾液の線が、互いの口と鼻先。果ては頬からも伸びていった。

  勃起を掴む手は離れてくれない。いまも彼女の手を押すように蠢いている。

  こらえきれずに暴発させてしまった雄の汁が、彼女まで染めてしまっていた。

  これをハンナに嗅がれているのだと気づいたら、余韻も忘れるほど恥じらう。

  自分の体毛にべっとりとさせて熱を感じているのも、なんだか、言い知れない。

  べたべたになっている。意識すると、ユーゴは顔を顰め、股間に目をやってみた。

  想像以上だった。

  水に粉を溶かしたみたいな粘度をした白濁が、べったりと臍周り、太腿を汚した。

  自慰はあまりしないせいだろうか。鼻孔を満たすような青臭さがツーンとしていた。

  鈴口から精液を溢れさせて、裏筋の側へ滴らせてなお、睾丸の境目に落とすように付着させていた。

  [newpage]

  「ハンナ?」

  彼女は陰茎から手を離してしまう。つい、続きをねだろうとした。

  虎の瞳が指に絡む白濁をとらえたかとおもうと、自分と同じように嗅ぐ。

  それを目にユーゴは胸が灼かれる思いだ。いきなり、ハンナは舐めあげる。

  具合や感触を確かめるみたいに、舌触りや風味を得るみたいに、強く這わす。

  「王子……」

  小声をあげられるが、呼ばれたわけではない。

  「王子」

  また、呼ばれたわけではなかった。

  「わっ!?」

  急に太腿を右、左の順でつかまれた。広げられ持ちあげられてしまった。

  尻尾の裏側まで彼女に知られてしまった。臀部の境目まで、覗かれてそう。

  何をするのかと聞く前に、ハンナの口がひらき、すぐそこに差し迫っていた。

  「っきゃんっ」

  

  全身が開く。

  総毛立ち。

  ユーゴの白い表面が一斉に――ぞわっとした。

  甘美なる刺激がそわりそわりと身体の芯から神経を伝った。

  下腹部にハンナの息が触れ熱く。股間は口に包まれてしまう。

  「ハンナっ、なにしてっ!? どうして、そんなことっ!?」

  立場上。そうした話をすることはない。調べる経験もなかった。

  なんとなく、ああ、そういうことなのかと自慰も感覚以外に知らず。

  触れる、挿入以上に意識が向いたことはない。しかしハンナは違った。

  武勲をあげるためにも戦いに身を置き、そうした冗談を耳にしてきた。

  男女で、どういう行為があるのか、ときに目の当たりにしてしまった。

  フェラチオ。性行為ではオーソドックスで、なんてことのないもの。

  不意打ちを食らったユーゴからすれば、目を白黒とさせるに十二分。

  ハンナが長い睫を伏せ目がちに、世間知らずの王子を口愛撫。

  「ハ」

  

  呼びかけ。

  途切れてしまう。

  舐められていると理解。

  虎の口が愛おしげに頬張り、下腹を見つめていた。

  無垢なる王子の穢れへ目掛け、躊躇なく舌を使った。

  尿や精液の吹き口を、表面のざらつきを粘膜で味わう。

  ぞりっとしたものが神経を駆けていき、脚が浮き上がる。

  声にならない声をあげ、背筋をそらしながらの、よがり声。

  ハン、ナァ、と情けなく途切れ途切れに名を吐き出していた。

  ユーゴは臀部を締める。あたたかな舌の弾力は思いの外に力強い。

  「ア、ア、ア、ア……ォォォォォ」

  

  腰骨と尾てい骨が脱力して、手足は過度に力を込めてしまっていた。

  性的刺激を受けながら、ぞわぞわと這い上がってくる愉悦に悶える。

  これまでハンナへの劣情を溜め、溜め、堪えきれずの自慰をした今日。

  未経験の刺激が多すぎて、何が起きているのか理解が及びきっていない。

  コンプレックスのマズル。周辺からはハンナの匂い。唾液で汚れていた。

  ぐちゅっ! と下から上へとハンナのベロが持ち上げられる。勃起の血管を、磨くみたいな動作。

  「ハンナ……舐めたら、くすぐったいよ……!!」

  唾液に濡れた王子のイチモツが、虎によって照り光り、女体を知らぬ身にありあまる快感を学ばせていく。

  温かな唾液。ぷにゅりとしながら、細かい細かい絨毛があるみたいなザラザラ刺激。

  自分の股間部に息が吹きかけられるたび、彼女の味蕾が、そこを確かめているのだと実感してしまう。太腿で微動だにしない指や手のひらが、気になってしまう。

  「ハンナ……僕……出しちゃいそうだよ」

  ユーゴは筋肉が溶け流れ出てしまいそうだった。

  それが睾丸にて溜まって、尿道の根本に充填されていく。

  そりかえり、真上を目指しハンナの口蓋へ淫肉が擦れる。

  ハンナは口先で勃起を抑え、甘く噛んで鈴口へ舌をつけた。

  「ぼ、ぼく、ハンナっ」

  尖端に痺れが起き、許容できないくすぐったさが全身を襲う。

  むじゅう! じゅぅぅうぢゅぅぅ! ぢゅっ! ぢゅじゅじゅぢゅ!

  ハンナの頬が窄める。吸いあげられる。

  熱く沸き立つ血流が、血管を膨らませた。

  左右から覆いかぶさるように寄り添う頬。ヌルヌルと密着する。

  視界は稲光を直視したみたいに真っ白に青ざめ、唾液の海に沈む。

  「だ、め、きゅ、んっ」

  わずかな隙間もなく絡むばかりか、次々に唾液が込み上げては強く吸い立てる。

  しかも、唐突に、頭を前後されてしまう。前に突きあげられて、後ろに引きあげられるたび、密着した部分が唾液ですべりながら摩擦されていった。

  「どうぞ……王子……遠慮なさらず、出してください」

  口を離した拍子に汁が漏れる。

  先走りの混ざったそれが光った。

  このままでは口内に射精は免れない。

  ユーゴはシーツを両手でくしゃくしゃにさせる。

  なのに彼女は、あえぎ、よがった子犬を促してきた。

  尖らせたそれを丸みに沿わせ、口全体がしなりあげる。

  ユーゴは敏感な鈴口に集中攻撃され、頬を窄められた。

  じゅるぅぅう! じゅぢゅじゅじゅじゅぢゅぅ! ぢゅずぅ~~!!

  吸引。尿道攻め。首を前後に振るって竿の根本から亀頭手前まで快楽に浸す。

  「キュッ、キュ、アアアアッ……!」

  白い身体の表面が、うっすらと紅味がさしていた。

  花が色づき、朝露を浴びたかのように全身から汗が噴き出していく。

  魂を、尿道からすすられてしまうみたいに、思考が失われていった。

  股間をしゃぶる虎は、悩ましげに眉を寄せ口を献身的に捧げていった。

  「で、ちゃ……う…………!!」

  びゅううう! びゅっ、びゅる、びゅううっ!

  頬張られ幾度となく擦りあげられた肉は、血管を浮き立たせ白い液を出す。

  これだけでも、ユーゴは背筋で弧をつくり、意識が消えてしまいそうだった。

  じゅうぅう! じゅっ! じゅるっ! ごく、ごっくんっ!

  魅力的な面立ち。ストライプのある額にシワを寄せながら、喉を動かし呑む。

  滾った雄の熱を喉で受け取る。いやらしいほどの水音をあげ、ごくり、ごくりと。

  射精で震えあがり、射精をするたびに強烈で、思考や精神を塗りつぶす性の悦び。

  「キャ、きゃいんっ?!」

  耳が、勃起したようにピーンとして、大口を開けながら手足の指を丸めていく。

  尖端を包み込む口腔の内で、尿道から陰茎の全体が痛いほど膨らんでは縮みあがり、後にユーゴは火薬が爆ぜたみたいだと感じるほどの初体験。

  「キャァァンッ」

  ごくんっ、ごくんっ、と出しては喉へと落とされていった。

  性的刺激だけでは、これほどの快感は生まないのだと何となく理解した。

  ひとりで慰める以外をしらない肉棒が、憧れのハンナを相手にしている認識。

  さらに、考えたこともなかった行為を受け、想像を絶する快感を得ている事実。

  穢らわしいといった価値観を持つ、男の象徴を美女の口に突っ込んでいる背徳。

  じゅううぅうう!! ぢゅぢゅじゅじゅじゅぢゅじゅぅぅう――ごっくん!

  出し終わって、射精がおさまって、なおも、ハンナはむしゃぶりついていた。

  ぢゅうぅぅううぅううぅうう! ぢゅ! ぢゅうぅ! ぢゅうぅう!!

  「ハ、ハンナ……! や、やめて、とれちゃうっ! キャッ?!」

  ぢゅぢゅっ! ぢゅうぅう! ぢゅ……ぢゅ……じゅ…………ぅ…………ぷは。

  未練がましいまでに頬張っていた虎マズルが、強烈刺激に悶え充血していた股間から離れていく。品性ある女騎士とはおもえない、下品な仕草で陰茎についた残りを舐めあげてしまう。

  

  「な、なんで、く、口で、こんなこと、したのかな?」

  しばらくの間。声をあげられなかった。

  いまも悦びに浸り、呆けて期待しているくせに状況を確認しようとした。

  雄肉はぐちゃぐちゃと唾液を貼りつかせ、尿道からは精液が一滴も出ない。

  すべて、さきほどの行為の最中。ハンナの口から胃袋へと誘われてしまった。

  「……王子は、フェ…………口淫をご存知ありませんか?」

  意外そうにされたのは、すこしショックだった。

  自分がどういう男なのか。そう思われている気がして。

  しかし、みだらな想像に耽っていたのは否定できない。

  今日も二度。ドアのノックと呼びかけを聞かなかった。

  

  「ねえ、ハンナ……」

  そして鎌首をもたげたのは、性の好奇心。

  「ほかにも…………知っているかな?」

  [newpage]

  彼女は、また意外そうにした。目をパチパチとさせた。

  それから、ユーゴの脚を丁寧にシーツへ移動させ、首肯する。

  「はい。乳房による奉仕は、いかがでしょうか?」

  すこし羞恥を帯びた微笑み。

  乳首が毛皮から突き出していて、乳輪は微かに隠されている。

  谷間を自らの手で閉じるようにして、尖った乳突起を魅せてきた。

  どうするかもわからないのに、ユーゴは声を出すのも惜しみ首肯した。

  では、と大きくそそり立ったままの肉棒。一対の乳を寄せあげながら接近。

  ほとんど腹ばいの格好になって、瞳を向けてくる。彼女も酷く興奮しているのが、匂い以外でも察せられた。

  「それでは王子。失礼いたします」

  脂肪が、まんべんなくユーゴを包んでいった。

  

  あたたかい。

  やわらかい。

  左右から経験し得ない柔肉が挟み込み、ぷるりとした圧迫に王子は肩を震わす。

  谷間は体温で蒸して、勃起の唾液や精液の残りが、虎縞に吸収されてしまう。

  乳房の内にて、大きく脈を打ち、尖端から新たなる先走りを零していった。

  「ハ、ハンナのおっぱい……」

  

  どんな高級なクッションでも成し得ない鍛え抜かれた筋肉と脂肪の二重奏。

  想像していた乳房。頭の中の理想は、これっぽっちも現実に及ばなかった。

  額から股間まで、大量に汗を流し両手足の指を一斉に握り、心臓を高鳴らす。

  むっちり。

  もっちり。

  そんな表現がぴったり。

  乳肉のサンドは至福の味わい。

  ぼうっと、頭が緊張を失った。

  頬や肩の緊張も、同様だった。

  「王子。将来の国王が、そんな顔をしていては心配ですよ」

  ハンナが微笑んでくれる。でも、好色に舌なめずりをしてみせた。

  これまで我慢していたのがバカらしくなると同時に、開放感が清々しい。

  彼女を独り占めできる。太腿と勃起を甘やかし潰れる弾力が何より幸福だ。

  乳房が潰れる。ぐにゅりと丸いパン生地を上から押したみたいに広がっていた。

  食べてしまうような口奉仕とは異なり、労る感覚が強く、肩から腰の芯が抜ける。

  乳房に挟まれながら、舌を三角形に尖らせ、大胆に伸ばされる。舐めあげられた。

  「っ! きゃんっ」

  王子の肉茎に、虎の唾液が塗りつけられていく。

  ユーゴはぬちょっとした音を聞いた。

  赤い充血に仄かな黒が混ざった先端部が泡立つ。

  「ハンナ……好きだよ……」

  小刻みに震えてしまっていると、彼女の喉がゴロゴロと震えたのを耳にした。

  股間から湯気が立ち込めてしまいそうなほど、血が滾り毛皮の穴が開いていた。

  ハンナのしっとり汗ばむのは求め欲した虎縞模様。きめ細やかな毛筋に、欲望は臨界点を通り越し、これ以上ないくらいに膨らんでいくのだった。

  「王子。さらに大きくなられて……」

  ちょっとした驚きを込め、それ以上の悦びを感じさせる感嘆とした声色。

  胸が動く。やわい毛にブラッシングされ、勃起をグルーミングされる感覚。

  乳房が前後する。グニグニとユーゴが呑まれては雄の弱所が飛び出していた。

  ずっしりと、内容物が詰められた乳による圧。摩擦感は口淫と異なり、根本から先っぽまでが痺れていき、心地よいくすぐりに膝が浮きあがった。

  「キャッ! そ、それ、すごい……」

  たっぷりと唾液がついた虎舌が、谷間から突きあがった尿道に接触した。

  そそり立った犬の肉が、一気に走り抜ける熱い蒸気が血管を拡張させていく。

  射精の前兆。ヌメヌメっと滑り前後する虎の口。勃起が追うように跳ね上がる。

  唾液まみれの舌が押しつけられては、ヌチョっとした感触が亀頭周辺に襲った。

  舌の先と雄の先が密着しては糸が伸びて煌めき、ちぎれて泡立ち肌や毛に染みる。

  ざらついた虎の味蕾に味を知られ、瞳にみっともない喘ぎを見つめられてしまう。

  「王子。あまり吠えないでくださいね? だれかに聞こえてしまえば、よくない評判が流れてしまいますので」

  言いながらも、ハンナは胸使いを荒く素早く強める。虎の息はちぎれちぎれだ。

  乳に挟まれ柔らかな肉が変形しては、上目遣いで観察される。真っ赤になった粘膜をしきりに舐めあげ、鈴口を尖端で貫くように広げ、垂れていった先走りを唾液と一緒に粘らせていった。

  「…………………………!!!」

  乳房を両腕で寄せられて、さらなる圧をこめられ勃起の神経の隅々に響いた。

  労るような反発に甘やかされながら、搾りあげるような荒々しさが同時に生じた。

  びゅびゅっ、びゅ! びゅぅぅ! びゅる、びゅううう!!

  精液が飛び散っていった。谷間を勃起が突きあげた瞬間が、いっそうに激しい。

  片目を閉じたハンナの顔全体に、縦線や粘りが、びゅるりと塗布されてしまう。

  口や鼻筋。果ては額や頬のストライプに至るまでが、べっちょりと精液を浴びる。

  「は、はんな……ごめん……がまんしきれなくって、顔にそんな……でも、綺麗だよ」

  ハンナの息が、これまで聞いたことないほどに乱れていた。

  一秒に何度も呼吸をしているみたいに、浅すぎるし早すぎる。

  いきりたったままの股間。ハンナの唾液にふやけかけの部分は、まだ跳ねる。

  呼びかけようとしたが、これまでより濃い。ハンナが発する匂いが、きつい。

  異種だから? そんな考えが頭をよぎったが違う。

  「ハンナ? なに?」

  [newpage]

  虎は、いきなり跨ってきた。

  左手で肩を、ぎゅっと指が拘束。

  起き上がるのを拒絶しているふうだ。

  目つきが、知らないくらい切羽詰まっている。

  「私も、これ以上は我慢ができません」

  右手の肉球が粘膜を握り、ずるり、と根本へ滑っていった。

  ユーゴの腰はビクリと反応するものの、不思議と声は出ない。

  膣が視えた。ぱっくりとした、薄ピンク色の肉が香った。

  いやらしく潤まされた毛先は実った麦みたいに頭を下げる。

  王子の目には、ありえないほど、艶めかしいもの光景だった。

  ふやけてしまいそうな勃起は、びくり、と汁を吐き出した。

  夢想したハンナの花園。周辺の毛並みまで、鮮明に識る。

  肉の粒が毛並みから出て、皮の莢からも露出し際立つ。

  半透明に光り輝きながらも、淫猥に屹立している。

  恥丘を彩る白は濡れて濃い。

  

  匂いは煮詰めたように濃い。

  筒状の肉に目掛け、一気に降ろされてしまう。

  ハンナの体重が腰回り。下腹部にかかった。

  射精衝動。

  目を白黒とさせ震えあがる。

  あっというまにのぼりつめる。

  「だめですか? がまんしきれませんか?」

  彼女の声がスローに聞こえて、世界はぐにゃりと歪む。

  天井とハンナの虎縞。たぷんとした乳房が揺さぶられる。

  「おうじ。がまんしきれませんか? からだが、ほてっているのですか?」

  

  

  目を。ぐるぐるまわす。

  何が起きているのか、すぐにわからなかった。

  紅く火照った頬を見下され、朱色に火照りだした粘膜の花弁と繋がりあう。

  そう。割れ目を秒をかけずに押し分け、そのまま根本までを突き立てていた。

  ハンナが跨っている。彼女が勃起の先を調整。そのまま一息に落ちてきた。

  にちゅ。

  熱い。熱い。熱い粘膜が絡みつき、

  情熱的なキスをするみたいに襞の存在を主張し始めた。

  「わたしもです」

  照れたふうな微笑み。なんて可愛げのあるものではなかった。

  本当に、おさまりのつかない雌。発情しきって攻撃性を剥き出しの虎。

  僕の大好きなハンナだ。ユーゴは照れたふうにマズルを緩め横腹を掴む。

  ほんのりとした脂肪の感触。なのに、筋肉のしこりが、すぐ感じられた。

  「ユーゴッ!」

  彼女に名を呼ばれると、アァッと吠え、溜め息をついて息を詰まらせる。

  整って実りのよい乳房が、ぶるりぶるりと揺らされる。目を釘付けにした。

  あざやかな毛並みが腰の激しすぎる上下運動で風を受け、一瞬ばかり広がる。

  フェロモン臭が部屋を満たし、ユーゴの鼻腔を吹き抜けて身を緩ませていた。

  ぬらぬらと汁を込み上げてやまない膣肉。

  ぬちゃり、さしずめ虎蜜は涎。

  密着する肉襞は猛獣の牙だ。

  茂みに突き立てられた勃起は捕食される。

  ハンナは脂肪全体を艶やかに揺さぶって、匂いを撒く。

  ぷちゅ。ぶじゅ。と最奥に尿道でキスをしながら貪られる。

  煮えた鍋に落とされたみたいに、ユーゴの全身は茹だった。

  特に股間は、蠢く虎の穴へと引きずり込まれては再沸騰した。

  ぬっぶ! ぬっぎゅ! ぬぎゅ! ぬっじゅぶっ!

  空気が混ざる。

  体液が乱される。

  全神経が集中する。

  性に猛る虎のダンスが、摩擦を生んだ。

  竿の血管を圧搾し、噛みしめるように愛撫。

  膣粘膜からは雌粘液が絶えず、絶えず溢れる。

  虎の濡れた瞳。半泣きになりかけた犬を捉える。

  甘い声で唸りあう。嬌声をあげあい息でまぐわう。

  身分違いや種族違いの垣根を取り払い、甘えあった。

  互いの存在を感知しあって、握り合って、腰を触り合う。

  波打ちながら跳ねる虎縞。特に顕著な乳房と、シックスパック。

  ユーゴの伸びた股間は焼け木杭のよう。潤む膣穴は虎の胃のよう。

  力任せに、感情任せに、本能任せに、

  ぐちゅぶ! ぐっちゅぼ!

  水面にあがっては沈むような光景。

  外に出ては瞬く間に肉膜へ食われる。

  勃起が息継ぎでもしているのか。

  細かな泡が爆発してはユーゴは上ずった息。

  ハンナの眉は、ハをえがき、王子の胸筋に手を添えていた。

  太腿でハグする。膣肉でハグする。ユーゴは腰に握力をやる。

  頭はくらくらとして、目はいっそうに回りだしてしまっていた。

  ユーゴは弾む虎に意識を麻痺させながら、膣穴に腰を振っている。

  ぐちゅり、ぐちゅり、ぐっぽんぐっぽんぐっぽん! ぐっちゅんぽっ!

  ゼラチン質な体液がヌルヌルと、絶頂に緊張する膣から子宮口へと。

  小刻みに痙攣しながら、うちあげられる。快感の荒波にふたりは乗り出す。

  はしたなく、甘やかな陶酔に満ちたまま絶頂の吠えを、喉を唸らせ壁や天井へ跳ね返らせていた。

  びゅううう! びゅくびゅく! びゅ! びゅううう!!

  窓ガラスをガタガタとさせるほどの、虎の咆哮が部屋に劈いた。

  ユーゴの手足の両足はシーツに踵をつけ、ピーンッと伸び上がった。

  両腕はハンナの腰を握りしめ、背中と一緒に丸みを帯び縮まっていく。

  王子はしゃくりあげるみたいな面立ちで涙を零し、ありったけの精を注いだ。

  

  [newpage]

  射精を終え、気を失いかけた。

  いや、ほとんど気を失ってしまっていて、ハンナが頬を舐めているのに気づく。

  「あ……」

  彼女は一瞬ばかり目をそらし、ちょっと気まずいと瞳を泳がせてしまう。

  けれど、なんてことないように微笑みかけて、こう言ってくれるのだ。

  「おはようございます」

  「…………おはよう、いっしょにいるときくらい……わかるでしょう?」

  「嬉しいですし、栄誉なことではありますが、私にも立場がありますから」

  困ったふうに、でも嬉しそうに身を寄せてくれる。

  乳房があたっていて、すこし、ドキリとしてしまった。

  「ハンナ、僕はね」

  

  短いマズル、頼りなさそうな容姿。

  これからもきっと自分は気にするのだと、ユーゴはおもった。

  けれど、ハンナと一緒にいるときは、あまり考えないのだろう。

  「王子。今日はもう遅いので、明日に差し支えないよう願います」

  

  虎の手が言葉を、顔を視界を遮る。

  これ以上の夜ふかしは駄目だと、子供をあやすみたいでちょっとムスッとしたが、ハンナが言うのであれば従おうと瞼を落とした。

  「おやすみ、ハンナ」

  「おやすみなさいませ」

  同じベッドで身を寄せ合いながら、体温と匂いを交換しあう。

  互いに不慣れなことをやったせいか。

  就寝まで、ほんの数分もかからなかった。

  

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