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ロリポップ☆エヴォリューション【FANBOX試し読み】

  [chapter:サンプル]

  いつものよく晴れた青空。でも何だかやけに空虚に見える大空。そんな空の下俺は一人歩いていた。

  今日も俺はコンビニで買ったありきたりなおにぎりを食べながら今日のバイトの事を考える。与えられた業務をただこなし、生活のための金を稼ぐためのつまらない作業の繰り返し。でもそれが人生なんだと齢二十五にして俺は悟っていた。

  俺の名前は半田蓮佐(はんだ れんすけ)。大学を卒業してただ当てもなく毎日を過ごすだけのしがないフリーターだ。

  「はー……どうして生きてんだろ、俺……」

  ただ生きるために金を稼ぎ、生きるために食事を採り、生きるために眠る。そんな意味のない“生きる”事に俺は疑問を覚えていた。

  上を見上げると真っ白な太陽が燦々と光り輝いている。悩みなどまるでないようなピーカンな様子に嫉妬心すら覚えてくる。でも自然現象なんかにそんな感情をぶつけても奴らは応えてなんかはくれない。

  「……バイト行くか」

  俺はおにぎりのクズをゴミ箱に放り投げると、バイト先へ向かった。

  ◆

  「お疲れ様でしたー」

  いつものつまらない作業を終え、帰路へと帰る。特に遊びたい場所も、食べに行きたい場所もない。ただ疲れ果ててただ一人住む家へと帰るだけだ。たまに実家や学生時代が恋しくなる時もあるけれど、俺は今は社会人で、今俺がここにいるのは自分で決めた道なのだから、受け入れなくてはならないと、俺は必死に心の中で自分を納得させていた。

  頑張っていれば、きっといつか報われる。良い事に巡り合える。俺がこうして生きていられるのは、そういった当てのない希望のようなものなのだろう。

  「ははっ」

  一言、自嘲するかのように乾いた笑いが漏れる。そんな俺の前に声をかけた人がいた。どうやらそれは販売員のようで、新しく発売された商品の宣伝をしているようだ。

  「新発売の『ワンダー・ロリポップ』です! ぜひお買い求めくださーい!」

  販売員が手に持っているのは、白色の棒付きキャンディだった。綺麗な円形にグルグルのオレンジ色の渦巻きが描かれている、典型的な子供向けの菓子だ。

  太陽の光に照らされてテカテカの飴の表面がキラキラと光っている。子供にはこれがとても高価な宝石のように見えるのだろう。

  (そういえば、俺も小さい頃母さんに買ってもらった事、あったなあ……)

  俺がまだ幼い時の頃を思い出す。

  まだ穢れはなく純粋で無垢だったあの頃、物欲しそうな俺に母が買ってくれたグルグル渦巻きのカラフルなキャンディ。それがとても美味しかった覚えがある。幼い頃の思い出補正、というやつなのだろうが。

  俺の頭に過ぎる言い知れぬ懐かしさ。子供時代の残響を思い出した影響なのだろうか。

  「久々に食ってみるか……」

  ◆

  「ありがとうございましたー!」

  俺は年甲斐もなく買ってしまった渦巻きキャンディをカバンに入れる。さすがに人目につくのは恥ずかしいので、誰の目にも届かない奥の奥へとひっそり隠した。

  味気ない一日に少しだけ潤いができたようで、俺の心はほんのちょっと晴れやかな気がした。

  「ただいまー」

  誰もいない借家の一室に向かって俺はそう小さく独り言ちる。昔からのくせのようなものだが、そうだとしても『ただいま』『おかえり』は忘れずに言うようにしていた。

  一人暮らしの男にはやや広く感じる部屋に、俺は鞄を置くと部屋着に着替えて夕食の準備を始める。といっても、冷蔵庫の中にあるものを適当に調理したものであるのだが。

  「ごちそうさま……っと」

  水をためたシンクに食後の食器を入れると、俺は冷蔵庫の中で冷えていた缶ビールを同じく冷蔵庫で冷やしておいたガラスのコップに注ぎ一気に流し込む。

  アルコールと炭酸が俺の口内と胃と脳を刺激する。昔は酒などどこが良いのかと疑問だったが、今は大人達の気持ちが分かる気がする。

  二、三杯あおってほろ酔いになっていた俺は、ふと鞄の中に何かをしまっていた事を思い出す。

  「あ、そういえば今日買ったんだった」

  今日バイト帰りになんとなく買ってそのまま鞄にしまいっぱなしだった棒付きキャンディ。気温で溶けてしまっていないかと慌てて取り出したが、それは買った時同様綺麗な形を保っていた。俺は鞄の中が溶けた飴でベチャベチャになっているような悪い妄想が一瞬頭をよぎったが、どうやら杞憂で済んだようだ。

  「懐かしいな、なんだか」

  俺は過ぎ去りしノスタルジーに浸りながらキャンディの封を開ける。あいも変わらず綺麗な渦巻きだ、と心の中で一人感心してしまう。

  「それにしても、本当に綺麗に渦巻き模様だな……」

  俺はじっとキャンディの中のグルグルを見つめる。あまりにも芸術的に渦を巻いているので思わず見入ってしまうのだ。何だか、それをずっと見ていると、俺の目まで、まわってしまいそうで、ほんとに、ほんとにそれは、きれいなぐるぐる。ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる……?

  「あ、れ……?」

  何だか、本当に、目が、回ってきた……瞳が、巻いている渦の方向に向かって勝手に動いているみたい。あっ、頭がクラクラしてきた……

  「あれ……? 俺、何考えてんだったっけ」

  さっき飲んだビールのせいか? いや、俺はそこまでアルコールには弱くなかったはずだ。じゃあどうして? このキャンディのせいか? そんなわけない。こんな渦巻きなんかで、こんなグルグルなんかに、俺がおかしくなるはずなんてない。

  「あ、あ、あ……?」

  でも、俺は何故だか目の前のキャンディに目が離せない。オレンジに輝く渦巻きの回転を際限なく目で追ってしまう。その度に、俺の脳はグルグルグチャグチャにかき回されているような気味の悪い感覚を味わう。

  そして同時に、目の前にあるキャンディを口に頬張って舐め尽くしてしまいたい衝動に駆られる。

  余計な煩悩なんて捨て去って、今日や明日の事なんて全て忘れて、ただ一心不乱にこの宝石のような輝きを俺の体に取り込んでしまいたい。だって、言っているんだよ。このキャンディが、俺に食べてほしいって。俺の中に入りたいんだって。

  「あっ、あぅ……んっ!」

  気が付けば俺はキャンディにむしゃぶりついていた。ペロペロとお菓子に夢中になる子供のように、俺一人しかいない部屋でただキャンディを舐め続ける。

  「んっ、んっ……んぅっ……!」

  そうしていると、どうしてだろう。嫌な事を何もかも忘れられるような気がした。空虚な日々に対する不満も、これからの未来に対する不安も、口の中に広がるキャンディの甘さが全て溶かしてしまうようだ。

  気がつくとキャンディは半分ほどに小さくなっており、もうそんなに舐めてしまったのかと驚く。同じように中の渦巻きも相応に小さくなったが俺が相当舐めた今も綺麗なグルグルを保っている。キャンディの棒を握った俺の手も、渦巻きと同じオレンジ色の毛で覆われている――覆われて?

  「えっ!?」

  そこで俺は、自分の体にふさふさとした毛が生えている事に気がついた。キャンディの渦巻きと同じ色をした毛。俺は自分の腕を何度も見返してみたがやっぱり人間から生えてきたとは思えない毛が生えていた。間違いなくこれは俺のものだった。

  「どういう事だよ!?」

  突然起こった現象に俺は思わず叫ぶ。我ながらこれは仕方のない事だろう。だってどう考えたっておかしい。こんな……明らかに動物であろうこんなものが俺の体から生えてきているなど、現実に起きた事だとは思えないじゃないか。

  「でも……」

  でも、事実だ。どう見ても、どう考えても、これは曲げ様のない現実だった。どうしてこんな事に。俺は毛だらけの体のまま膝をつく。焦りからなのか俺の身体はかあっと急に熱くなる。そうこうしている間にも体の毛はどんどん俺の皮膚を侵食して全身に生え続けていっている。

  「あっ……暑いっ!」

  俺はあまりの暑さに着ていた服を脱ぐ。上着もシャツも、ズボンも――さすがに下着までは脱がなかったが、それ以外の衣服は全て脱ぎ去った。ほぼ裸の姿だったにも関わらず、俺の体の肌色の比率はほぼなかった。

  「ど、どうしてこんな……」

  何故なら俺の全身は余す事なくオレンジと黄色の体毛で覆われてしまっていたからだ。顔中にムズムズとした感覚が通ると顔にまで体と同じものが生え始める。

  「うっ……何だこれ、かゆいっ……」

  唐突に動物にむず痒さを感じて思わず頭を掻きむしると、ハラハラと黒い毛が落ちてきた。はっとして頭を掻いた両手を見ると、夥しい量の髪の毛が手のひらに付着していた。

  「うわああああっ!」

  俺は叫びながら体を大きく跳ねさせる。その拍子に髪がさらに抜けてしまい床にバサリと落ちる。これはまずいと思った。間違いなく、俺の 何かが変わろうとしている。耳を澄ますと、体の奥から細かな軋みのような音が聞こえる。これは俺の骨から聞こえている音だろうか? 嫌な予感がして立ち上がろうとすると、俺の脚がガクンと曲がる音がして、バランスを崩した俺は床に勢いよく倒れた。

  「うぎっ! ……うう」

  俺は呻き声をあげながら起き上がろうとする。しかしその間にも俺の体は変わり続けていて、俺の手にまで変化が及んでいる。長い指は手の中に沈みゆくように短くなってその幅が太くなっていくのを俺はその目で見た。

  「これって……」

  手のひらを見てみると真ん中に大きなぷにっとした物体がある事に気が付いた。指先にも同じような物が次々とできていく。どう見てもこれは肉球だ。俺の手に肉球ができていた。

  「俺、動物になっている……!?」

  全身に生える毛、指の短くなった手に、大きな肉球……明らかに動物の特徴であるそれらが俺の体から出ている。

  ゆっくりと慎重に起き上がってみると、脚の形も変わっていて、踵が地に着くことができず爪先立ちでしか立てなくなっていた。床を踏んだ時に感じたクッションのような感触から、足にも肉球ができているのだと思われた。

  「う、うそだ……俺は人間なんだ……そんな事……」

  俺はフラフラと脱衣所へと向かう。姿を確認するためだ。

  こんなのありえない。きっと気のせいだ。俺がそう思い込んでいるだけで、きっと俺の体は人間のままなんだ。

  頭の中ではしっかりと理解していたはずなのに、どうしてもその荒唐無稽な事実を受け入れられる事ができずにいた。俺は起きてしまった現実から逃避するように『それ』を虚実だと思い込み、普遍的な日常を幻想してしまう。

  そんな俺を嘲笑うかのように、脱衣所に向かう俺の体はさらに変化していった。

  「かっ、かゆい、痒いぃ……」

  顔が一瞬火がついたように熱くなると、今度はとてつもない痒みが襲ってきて俺は蹲り悶える。

  「が、あっ……グ、が、アァ……!」

  針を刺すようなピリピリとした痛みに声をあげた俺の顔はゆっくりと変形していった。

  耳がギュッと圧し潰されるような感覚がすると、一瞬真空の中に閉じ込められたかのように何も聞こえなくなった。と、次の瞬間に俺の頭上から何かが生えてくる感覚の後俺の耳はまた音を拾い始める。

  顔を引き裂くような痛みと共に俺の口は前へと突き出していった。鼻と一体化し口を横に裂きながら発達していく。体が獣になったのだから顔も獣になっていくのは当然だが当然だと思う。でも俺はその事実を信じたくなくてひたすら涙を流してそれを拒み続けた。

  しかし変化は止まってはくれず、俺の歯は牙に変わってしまう。それでも俺は覚束ない歩みで一心不乱に脱衣所へと向かう。

  そして、目的地もあと少しといった地点に差しかかった所で、俺は尻にむず痒さを感じて体をびくつかせていた。

  「な、なに、これ……何だこの感覚……」

  その感覚を俺は知っていた。これから動物となるにおいて俺にはまだ足りないものがあるのを俺は知っていた。でも俺は受け入れたくはなかった。だってこれは現実なんだ。人間が動物になるなんてあり得ないんだ。そう何度と真実を知る自分に言い聞かせて上書きしようとした。

  だって、それが起きてしまったら受け入れざるを得なくなる。

  俺が動物になってしまった事を受け入れなくてはいけなくなる。

  「それだけは嫌だ!」

  そう。嫌だったんだ。俺は動物なんかになりたくない。こんな突然、人間である事を終わらせられるなんて、嫌に決まっている。

  「違う違う違う……俺は人間……動物なんかじゃ……はうっ!?」

  その時、尻のむず痒さがピークに達し俺は思わず奇声をあげていた。何やら下着が膨らんで、今にもはち切れそうになっている。

  どうしてだ。分かっているくせに。そんな、ありえない。でも実際に起きている。嫌だ、嫌だ――そんな、俺に、しっ……

  「嫌だああああぁっ!」

  下着を突き破って、オレンジと黄色の縞模様の毛束が俺の臀部から飛び出してきた。その拍子に俺の下着は布切れに成り下がって床に落ちる。

  人としてはとうに退化してしまったはずの器官を生やしてしまった俺は、フラフラと脱衣所へと歩いていった……

  ◆

  「これが……俺……?」

  ようやく辿り着いた脱衣所。そこの鏡には二足で立つ可愛らしい動物が映っていた。そこには今までの冴えない人間の姿はなく、柔らかそうなオレンジと黄色の毛が生え揃った人間大のレッサーパンダがそこにいた。

  よりにもよってレッサーパンダみたいな可愛い動物になるなんて思いも寄らなかった。どうせなら狼とかライオンのようなカッコいい動物にして欲しかった……いや、どんな姿でも動物など嫌なのだが。

  「戻れないのか……?」

  俺はぽつりとそう呟く。『戻らない』、でなく、『戻れない』。俺は本能的にこれが不可逆のものであると悟ってしまった。その瞬間、俺の中のなにかがガラガラと崩れていくのを感じていた。

  「そんな……この体でどうやって生きていけば……」

  変わり果てた姿を眺めながら途方に暮れる。そんな俺の目の前に唐突に何かが飛び込んできた。それは俺が先程ずっと見つめていたものだった。

  「えっ?」

  突然現れたそれに俺はつい小さな声をあげる。ぽかんと開いた俺の小さな口へ、ふわふわと宙に浮いたそれが勢いよく突っ込まれた。

  「んぐっ!?」

  半分舐めて小さくなっていたあのキャンディだった。それが失った主人を求めるように俺の口に再び収まったのだ。俺は鳩が豆鉄砲を食らったような顔になり目をチカチカとオンオフさせる。口の中に広がるのは芳醇な甘さ。俺の思考を溶かしてしまいそうなとろける甘さ。

  「んん……んぅ……?」

  キャンディの味に、俺の頭の中はハチミツの深海に沈みゆくかのように甘く鈍重になっていく。全身が固まり、身動きが取れないのに甘やかで心地よい。このままずっと沈んでいたい。そんな気分に陥る。

  人から獣になってしまった絶望感すらもどうでもよくなってしまう程の残酷な幸福が、あのキャンディを舐め続けている間絶え間なく続いていた。

  「んん、んんー……?」

  俺の思考回路がどろどろに溶けて使い物にならなくなった頃、下腹部が熱くなっていく感覚がして俺は徐にキャンディを咥えたまま下を向く。

  (どうして……)

  そこには真っ赤でツルツルの突起があった。これは今の俺のチンポだろうか? それが大きくなってパンパンに張り詰めてしまっている。天高く上を向いたそれは先端から透明な汁を垂らしながらピクピクと小刻みに揺れている。

  俺は、興奮している? だから変わってしまったチンポが勃起している? 俺は一瞬疑問に思ったが、それもまた一瞬でどうでもよくなる。

  それよりも、早くこれを鎮めないと……

  そう思い俺は勃起した唐辛子のようなチンポを握り、欲望のまま上下に勢いよく扱きだす。

  「んっ、ふっ、うっ、ううぅ……」

  ヌチャヌチャと小気味よい音をたてて滑る俺のチンポ。トロトロの汁の感触が俺のチンポをさらに悦ばせ、俺もそれに善がって声を出してしまう。

  俺のキンタマがキュッと締まり、中の精液を作る袋に何かが作られるのを感じると、俺の快楽のボルテージは頂点に達し、俺は声をあげて真っ白い汁を鏡に映る俺に向かってかけてしまっていた。

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