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これは、今より少し先の未来の話――
世界の科学力は更なる発展の一途を辿っていた。
さまざまな電子機器は進化を遂げ、人類の生活はさらに利便化され、今やそれが当たり前となっていた。
そしてそれは、娯楽も例外ではない。
「ただいまー!」
ごく普通の家庭で育った中学生の少女、[[rb:竜 > たつ]][[rb:田 > た]][[rb:大 > たい]][[rb:河 > が]]。彼女は放課後になると、寄り道もせずまっすぐに家へと帰っていた。
大河は部活にも入っておらず、いわゆる帰宅部というカテゴリに分類される生徒である。しかし学校での素行も成績もごく普通の女子中学生といったもので、特筆すべき特徴はなかった。
そんな彼女が今は嵌っているものは、ゲームである。それも、現代の技術で数十年前にとうとう完璧に実現したVR・RPGゲームだ。
VRゲーム自体は、過去に擬似的なものが発表されていて、しかしそれはあくまでゲームの中にいるように感じるだけで、実際にゲーム内に入り込めるわけではなかった。
しかし最新の科学技術により、精神をデータ化しゲーム内に移動させることができるようになり、VRゲームの需要が一気に高まることとなった。今や発売されているゲームの大半がVRであるほどだ。
かつて時代を席巻していたゲームは、VRの魅力に取り憑かれた人類により、マニア以外は見向きもしない状況となっていて、ゲームが好きな人間には些か不満が募る結果となったのは功罪と言えるだろうが。
『ニュースをお知らせします。当時難病と言われていた癌の治療率が、今年90%に達したことが明らかになりました』
「へー、抗ガン剤の効力が上がったとは聞いてたけどもうそんなになったんだ」
この技術は、医療技術(直接人体に入り、異常を確認したり細かな分析をする)や発掘(地層の状況を把握する)においても応用された。これにより、世界のあらゆる技術はさらに発展した。
世界を揺るがしたVR技術――
しかしそれは、知られざる弱点もあった……
「さーて、今日も頑張るぞ」
大河はVR機器を装着し、ゲームを起動した。そのゲームはMMORPG『エターナル・ワールド』。世界中の人間達とゲームの中の永遠の世界を共にするというテーマからこのタイトルが名付けられた人気作である。
舞台はシンプルなファンタジー世界で、プレイヤーは冒険者として人間、それだけでなく獣人や魔人、妖精や天使など、様々な種族になりきることができ、全く異なる自分になれると好評であった。
しかし、過去にあまりにゲームにのめり込み過ぎて現実と虚構の境が曖昧になるという事件が起きてからは、“ダイブ系”VRには一日通算6時間までプレイができ、それ以上のプレイはできなくなる(6時間経過で自動的にログアウトされ、次のログインが有効になるのは次の日の朝8時以降)仕様となった。
それでも“ダイブ系”人気は衰えることを知らず、熱中する人間が増え続けている。人間の精神を担保にするため、デバッグも万全。誰でも安心安全に二次元の世界を謳歌できる夢のようなゲームであった。
――そのはず、だったのだが。
いや、今でも『バグ修正プログラム』により“世界の平和”は守られ続けている。それは事実である。必ずしもそれは良いものとは限らない、といえことを除けば。
◆
★『ナミル』さんがログインしました。
ナミル:「さて、今日もモンスター討伐して経験値稼がなきゃ」
大河は、この世界ではナミルという名前だ。個人情報保護法により本名でのプレイは基本的に禁止されているためユーザー独自の名前でプレイしなくてはならないためである。そもそも彼女は大河という男のような名前が好きではなかったので、かえって好都合だったのだが。
名前の由来は、好きなアニメのヒロインの名前からそのまま取ったものだった。
ナミル:「ねえ、キミ! 今日のオススメのモンスターは何?」
戦士:「あんたもモンスター討伐かい? そうだな・・・今日はフォレストウルフなんかが狙い目かな」
彼女が話しかけているのは屈強そうな戦士。彼はゲーム運営が用意した架空のプレイヤー。いわゆる「NPC」である。
彼らはユーザーに有力な情報を提供したり、戦闘の助太刀などをして協力してくれる存在だった。
最新技術で進化した人工知能も、人間と遜色ないほどに違和感なく接してくれるため、まるでリアルの人間といるようだと評判だった。それでいて都合の悪い行動は例外を除いて起こさないため(例外とは、無用なPK・NPCK行為や窃盗・詐欺などの違反行為である)NPCに依存するユーザーも少なくないほどである。これにおいては一部で問題視されていたが。
ナミル:「フォレストウルフか・・・あたしのレベルじゃちょっと力不足かな・・・?」
ナミルはステータスを確認する。
ステータス
名前:ナミル
レベル14
性別:女性
種族:人間
ジョブ:マジックナイト
LP:137/137
ME:171/171
攻撃力:98
防御力:147
魔法攻撃力:122
魔法防御力:148
スピード:102
知能:109
容姿:102
運:58
装備品
頭:マジックヘルム
左腕:スティールシールド
右腕:ダイアモンドレイピア
上半身:マジカルアーマー
下半身:シルフのスカート
足:フェアリーブーツ
“ダイアモンドレイピア”や“シルフのスカート”というレアドロップアイテムを装備しているとしても、俊敏でなおかつ破壊力のあるフォレストウルフを相手にするには少し心許ないステータスだった。
しばらく考え込んでいたナミルだったが、この戦士を頼ればいいやと半ば楽観的だった。
ナミル:「ねえ、一緒にフォレストウルフを倒してくれないかな? お礼はするから」
戦士:「いいぞ。恥ずかしながら俺も一人は不安だったんだ。俺でいいなら力を貸すぜ」
ナミル:「やった! ありがとうございます!」
このゲームには協力クエストクリア後にアイテムをNPCに渡す約束をすることでNPCのステータスを上昇させることができる『お礼システム』というものがあり、楽にゲームを進められなおかつ協力しているという実感を深めることのできるシステムだった。
レベルの低いうちはこのシステムを利用するユーザーが多く、ナミル(大河)もこの一人である。
ナミル:「よし、そうと決まれば出発!」
意気揚々とフォレストウルフを倒しに街を後にしようとするナミル。
しかし、その時、現実世界――彼女の部屋では異変が起きていた。
[newpage]
――現実世界。
彼女は一人、機器を被りながらゲームの世界に没頭していた。だからこそ、気づくことはなかったのだ。
本棚に積んであった漫画が、今にも崩れそうなことに。
その漫画群は、いつしかとうとうバランスを崩し、重力に逆らわずに真っ逆さまに落下していった。
そしてその落下先は、ゲームの本体だった。
ガツン!
本の角が落下の勢いとともに本体を強く打ち付ける。
彼女が持っているVR機器は、ショック対策のなされていない一世代前のものであった。家計的な意味で最新機種を買うことができなかったのだ。
そしてそれが彼女を襲う不幸となろうとは、彼女も想像しなかったことだろう。
「あっ!?」
突然、声を上げたと思った大河は、急に糸が切れたかのように倒れこんだ。起動されていたゲームはぷつりと切れ、テレビの画面は、どこまでも続く暗黒を映し出していた。
ゲームは強制終了され、普通なら彼女は強制的にログアウトするはずだ。だが解放された彼女が意識を取り戻すことはなかった。なぜなら――
◆
「うーん……」
そこは、ファンタジーの世界でも現実でもない世界。電子の粒が無数に流れる空間。そこに大河は漂っていた。『ナミル』としてのアバターの姿で。
大河の意識はない。今は眠っているのかうつらうつらと寝言のようなものを呟くだけだった。
しかしそんな大河の肉体に変化が起こり始めた。
ググ……と華奢な少女の姿が膨らんでいく。それは、少女を通り越して、力強い“雄”にまで発展してゆく。
腕の筋肉はぱんぱんに張り詰め、緩やかな少女の双丘は、無慈悲に分厚い筋肉に侵食されてしまう。満足ゆくまで筋肉が詰められた胸は、男すらも虜にしてしまえそうな惚れ惚れするような胸筋となった。
胸の強化に飽き足らず、服部には少女に似合わぬ腹筋がいくつも生まれる。
下半身すらも、尻からかけて筋肉で締まってゆき、そのまま太腿、脹脛と、まるでチューブを通して肉が詰められていくかのように発達していった。
全身筋肉達磨と化した大河だったが、彼女を更なる変化が襲う。
なんと、全身に山吹色に光る艶のある毛が、脚に、胴に、腕に、顔面にも余すことなく生え始め、元々生えていた産毛は新たな毛に追いやられて全て抜けてしまった。
可愛らしかった耳がずぶずぶと、ひとりでに体内へ消えていく――と思いきや、それは頭頂部に新しく全身と同じ山吹色の毛に覆われた耳が生えてきた。
小さな口も、その体に似合うよう、長く大きく立派に伸びていく。鼻は艶のある大きな黒い鼻に変化し、口を開けると獲物も楽々と捕らえられそうな牙が並んでいる。その姿は、まさしく虎そのものであった。
アバターを作成するときに決めた栗色のポニーテールがばさりと一気に抜け落ちた。頭頂部のみ少しだけ残った髪は、そのままチクチクとした髪質に変化していく。ワックスを塗り込んだかのようにがちっとビンビンに固まり、雄々しい風貌によく似合う赤銅色のモヒカンヘアーとなった。
スカートを破いて、長く太く立派な尻尾が生えると、彼女――いや、彼の変化はひとまず完了した。
何故か、彼は虎の獣人となっていた。
◆
ナミル:「ん・・・あれ、あたし、寝ちゃってた・・・?」
大河は目を覚ます。そこはいつも見慣れた城下町だった。
冒険者がログインする始まりの場所。そこで彼はただ一人佇んでいた。
ナミル:「あれっ・・・なんであたしだけしかいないの? みんなは? 戦士さんは?」
キョロキョロと辺りを見回すが誰もいない。何故自分だけがここにいるのだろうと疑問に思うが、答えは返ってはこなかった。
ナミル:「それにしても、なんか変な感じ・・・動きづらいし・・・体が、重い気がするなぁ・・・」
ふと、自分の手を確認してみる。そこには、山吹色の毛に彩られた強靭な腕があった。あれ? と大河は思った。
ナミル:「これ・・・どういうこと?」
全身をくまなく見るために首を下に向ける。そこには、いつもの武器が装備された、獣人の、しかも男の体があった。
ナミル:「・・・は?」
声もいつもより野太く力強くなっており、大河のトーンで喋った途端、それはそれは気味が悪い声になってしまっていた。
大河は、無言で宿屋に直行する。その鏡に映った姿は、まさしく、自分。
とは到底思えない、虎獣人の男の姿がそこにはあった。装備は変わっていないため、女装しているようで些か不気味であった。
ピンと立てたモヒカンヘアーに赤銅色のラウンド髭、筋肉でパンパンに詰まった肉体に、山吹色と縞模様がコントラストを醸し出している毛並み。それが今の大河の姿であった。
ナミル:「いやあああぁあぁっ!?」
大河は思わず絶叫した。しかしその声は異様に野太く、獣が雄叫びを上げているようにしか見えなかった。
ナミル:「何よこれ!? なんであたしこんな姿になっちゃってるの!? 声もおっさんになっちゃってるよぉ!」
唯一、大河から一つも変化がない瞳からは大粒の涙が溢れてくる。しかしこの姿ではただ女々しいだけだった。元は女なのに、そんなことを言われる筋合いは彼にはなかっただろうが。
ナミル:「もしかして、バグか何か・・・? 今あたしどうなってるの・・・? ステータスは・・・?」
大河は、自分のステータス画面を再度開いてみた。そこには、変わり果てた彼のステータスが書かれていた。
ステータス
名前:ナミル
レベル62
性別:男性
種族:虎獣人
ジョブ:重戦士
LP:578/578
ME:22/22
攻撃力:353
防御力:286
魔法攻撃力:54
魔法防御力:180
スピード:36
知能:109
容姿:75
運:-58
装備品
頭:マジックヘルム
左腕:スティールシールド
右腕:ダイアモンドレイピア
上半身:マジカルアーマー
下半身:シルフのスカート
足:フェアリーブーツ
ナミル:「嫌ぁぁぁぁぁ!」
ステータスはあらかた変化しており、性別は雄に、種族は獣人に、そしてジョブは己の肉体の強靭さを生かしてパーティーの剣となり盾となる、“重戦士”に書き換えられていた。
装備品だけが元の彼女のまま残っているのが、逆にアンバランスだった。このままだと彼は女装趣味の変態虎獣人である。
ナミル:「あたし、男の人になっちゃったよぉ・・・しかも筋肉ムキムキで、毛むくじゃらで・・・」
ナミル:「こんな体いやだよ・・・元に戻してぇ・・・」
獣のような雄叫びを上げて慟哭する大河。しかしその嗚咽は、ただ空虚な城下町に響くだけで、誰にも聞こえはしなかった。
彼女が、竜田大河がこうなってしまったのは、VR機器にショックを与えたために起きたバグだった。バグにより、彼女のアバター情報は、“内部データに存在する異なるデータ”と入れ替わってしまったのだ。
そのデータというのは、NPCのものだった。ゲーム内イベントに登場する歴戦の虎戦士、ティグリスというキャラクターの。
しかも本来のティグリスとは色や容姿に微妙な違いが見られた。大河そのもののデータを媒介にしたため混ざってしまったのだろうと推測できる。
ナミル:「誰か助けて・・・誰でもいいから・・・たすk」
システム:『データに不整合が存在するエリアを確認しました。位置――“デバッグルーム・城下町”』
ナミル:「うっ!?」
その時、大河の股ぐらがずきりと熱くなった。身体中に蒸気が湧いてくるかのように、段々とムラムラとした感覚が大河を襲い始めた。
ナミル:「な、なにこれ・・・どうなってr・・・ひっ!?」
スカートから急に覗き始めたのは、赤くぴんと聳え立った、棘付きの肉棒だった。虎獣人である、大河の逸物だった。
ナミル:「これ・・・お縺。繧薙■繧!? 嘘だよね? このゲーム、全年齢対象だったはずなのに・・・いやっ! 気持ち悪い・・・あんっ」
怯える大河だったが、立て続けに襲い来る快感に腰が砕けてしまう。石畳に膝をついた大河は、そこから一歩も動けなくなってしまった。
システム:『“虎獣人戦士・ティグリス”のデータに不整合が発生しています。このままではゲーム全体に支障をきたすため、即時『バグ修正プログラム』を起動します』
その音声とともに、大河の周りに不可思議な文字列が具現化されて漂い始める。
ナ繝溘Ν遶懃伐大河繝?ぅ繧ー繝ェ繧ケ:「なにこの文字・・・なんか気味悪い・・・それに嫌な予感がするっ!?」
ビン! と急に大河の逸物が跳ねた。ジョバジョバと、お漏らしみたいに我慢汁なんか撒き散らかしている。大河の身体の中は、未知なる快感でいっぱいになっていた。
システム:『ティグリスの肉体に、緊急的に“バグ除去パーツ”を装備させました。只今より、このゲームにおいて不必要な[[rb:要素 > バグ]]を排除・修正いたします。ユーザーの皆様、ご安心くださいませ』
竜田大河:「ご安心って・・・あたしは全然安心してない・・・っていうか、これ元に戻してくれるの? きっと、そうなんだよね!?」
いつのまにかユーザーネームが彼女の本名になっていたことには、彼は気がついていなかった。そして、もう一つ彼は致命的な勘違いをしていた。
そのバグは、あくまでNPCであるティグリスのためのものということを。
装備品
頭:マジックヘルム
左腕:スティールシールド
右腕:ダイアモンドレイピア
上半身:マジカルアーマー
下半身:シルフのスカート、バグ除去パーツ
足:フェアリーブーツ
ステータスに追加されたバグ除去パーツの位置により、大河はやはりそれは真っ赤なトゲトゲの逸物であると確信した。そして、“それ”はとうとう大河の意思を無視して開始された!
竜田大河:「んぎぃっ!?」
野太い掛け声とともに、逸物から粘っこい粘液が発射された。それは真っ白でとてつもない臭いを放つ――精液とほぼ変わりないものであった。
リアルに最大限まで寄ったVRシステムは、どうやらデバッグを射精と認識したらしく、不要なデータを擬似的な精液に変換し排出することで実質上バグ修正を行ったことにしたらしいのだ。
この世界での射精の快感は、思考ルーチンのクラックのようなものであるため、感じれば感じるほどまともな思考が行えなくなるであろう。バグも抵抗ができなければ、ただの屑データでしかない。その点においては合理的と言えなくもなかった。
竜田大河:「だ、出しちゃった・・・邊セ蟄出しちゃった・・・あっ!?」
射精した途端、大河のフェアリーブーツはグニグニと粘土のように形を変えてあっという間に無骨な鉄製のブーツになってしまっていた。
竜田大河:「あたしのフェアリーブーツ・・・高かったのnひゃん!」
次の[[rb:不具合 > バグ]]を排除するため大河の逸物はひとりでに射精を続ける。常人なら萎えてしまう量の精液がほとばしっているにも関わらず、逸物は元気にビクビクと聳え立っている。さすがゲームの中と言うべきか。
竜田大河:「嫌! やだ! あたしの装備、全部変わっていっちゃう! なくなっちゃうよ! あたし、こんなカッコ悪い装備着たくない! あっ、あんっ!」
大河の装備品は、例外なく全て、大河の射精と引き換えに獣人重戦士に相応しい重厚で男らしい装備へと変わっていった。
竜田大河:「あ・・・ああ・・・」
ステータス
名前:竜田大河
レベル76
性別:男性
種族:虎獣人
ジョブ:重戦士
LP:751/751
ME:35/35
攻撃力:476
防御力:412
魔法攻撃力:33
魔法防御力:130
スピード:28
知能:109
容姿:49
運:-58
装備品
頭:鬼神兵の兜
左腕:ビッグシールド
右腕:魔物殺しの大剣
上半身:ヘビーメタルアーマー
下半身:ヘビーメタルアーマー、魅惑のビキニ、バグ除去パーツ
足:ヘビーメタルブーツ
大河の装備は全身鋼色の無骨な装備となっていた。重々しい鉄でできた巨大な剣と盾、重厚な体をがっしりと守る鉄鎧。極め付けには股間を彩る黒光りしたビキニパンツ。しかし逸物――バグ除去パーツはまだ役目を終えていないためビキニパンツからはみ出ており異様ないやらしさを醸し出している。
竜田大河:「誰か助けて・・・こんな体、いやぁ・・・パパ・・・ママ・・・」
弱々しく助けを呼ぶ声に反して体はどっしりと剣を担いだまましゃがんでいる。その姿には、歴代の戦士の風格さえある。ビキニからはみ出る逸物を除けば、だが。
システム:『装備品をティグリスのものに修正しました。続いて、名前の修正を始めます』
竜田大河:「名前!? それって!? ダメ! それだけはダm・・・きゃあああ!」
大河の拒否も虚しく、この世界に不要な「名前」は、精液に変換され排出されてしまった。
遶懃伐螟ァ豐ウ:「嫌あ! あたしは遶懃伐螟ァ豐ウ! あたしの名前、忘れたくない! 忘れたくない・・・のに・・・忘れちゃった・・・あたしの名前、なんだっけ・・・?」
繝?ぅ繧ー繝ェ繧ケ「あたしの名前は・・・繝?ぅ繧ー繝ェ繧ケ。違う、違うのよ、あたしの名前は繝?ぅ繧ー繝ェ繧ケなんかじゃなくて・・・あ、あたしは、あたしの名前は、ティグリスだった!」
ノイズを紡ぐ言葉からは、新たに修正された虎獣人の名前しか出てこなかった。彼女の元々の名前は、すでに彼の記憶からも完全に消え去っていた。
[newpage]
ティグリス:「もう嫌・・・家に帰して! もうすぐママがご飯を作ってくれてるかもしれないのに・・・こんなおっさんの姿で生涯を終えるなんて絶対に嫌・・・」
システム:『続いて、言語データを修正します』
ティグリスの悲痛な声を無視して、システムは無慈悲にただ淡々と己の役目を果たし続ける。
[[rb:逸物 > パーツ]]からは、生温かい[[rb:精液 > バグ]]が発射され、綺麗に舗装された石畳を汚し続ける。
ティグリス:「やめて! も、もうっ、出したくない! ザーメン出すの気持ちいい! こんなの嫌! あたし、虎獣人なんかじゃない! ひゃぁん!!」
ティグリス:「チンポからザーメン飛び出るたびに、あたしがあたしでなくなっていく気がするの! やめろっつってんだろこの野郎! あたしのチンポブッ壊れちゃうよぉ!」
ティグリス:「出る・・・イク! ふぅ・・・またイッちまったぜ・・・もう何回めだ? ひっ、あたし、なんか言葉遣いが乱暴になっちまってる・・・!? なんか次々と、あたしの言いたい事が、変わっていっちまってる気がするの・・・気のせいじゃないよな?」
ティグリス:「あたし女の子なのに、こんな汚ねえ言葉遣いになっちまってるじゃねえか・・・もうほとんどあたしはあたしじゃなくなっているんだな・・・このチンポさえ止まってくれりゃぁこんな事には・・・んほおぉ!!」
喘ぎ声すら雄臭くなる一方で、ティグリスは自分が自分で無くなっていくはずなのに、それが普通であったかのような感覚に陥っていた。しかも、今までの口調を気持ち悪いとすら思うようになっていたほどだ。
[[rb:射精 > デバッグ]]は、人格さえも書き換えてしまうのか? ティグリスはそう思うと恐怖で震え上がった。
ティグリス:「あたしって、こんな口調だったか、って考えっとやっぱそうだなってなっちまうわけよ。さっきまでバリバリメスの喋り方してたのに、今じゃこっちの方がしっくりくるって思っちまってる。最早、あたしのあたしらしさは、このあたしって名乗りだけになっちまった・・・」
ティグリス:「ごめんな、“あたし”。じゃあな! “あたし”!! ひぐんっっ!」
ティグリスは、大河としての一人称を排出した。ティグリスはもう、自分の使う一人称はこの世に生まれてきてからずっと『俺』であったとしか思えなくなっていた。
ティグリス:「ああ・・・もう俺が人間のメスだったなんて誰が思うよ? にしても、チンポからザーメン出すのってマジ気持ちいいな。病み付きになっちまうぜ」
そう言いながらティグリスは未だ萎えぬ逸物を扱く。出せば自分を忘れてしまうのにも関わらず、自らの沸き出る欲望に抗えずにいた。
システム:『その他の不要なデータを修正いたします。これで修正は完了となります』
ティグリス:「完了ってことはこれで最後・・・ってことか? その他って・・・俺の中の、全部っつーことか? 人間のメスだったことも、中学校に通ってたことも、ゲームが好きだったことも、世界で一番大切なオヤジとおフクロのことも、どれもこれも全部ザーメンになっちまう?」
恐怖にひきつる顔を尻目に、彼の逸物はひとりでに勃起を続ける。黒光りするビキニを、傷だらけの鎧を、鋼のように鍛え上げられた己の肉体を、そして気体となって漂う自分の汗の臭いさえも、彼にとってはもはやオカズでしかなかったのだ。
システム:『修正開始』
ティグリス:「や・・・やっぱり嫌だ! 俺は家に帰るんだ! 俺はバグなんかじゃない!! バグなんかじゃ」
そして彼は、立て続けに射精した。
ティグリス:「おっ! おっ! や、やだ! ザーメン出る! イク! 出まくってる! 気持ちいい! 気持ち良すぎるぅ!!」
ティグリス:「俺は、平凡な女子中学生だと思ってた。けど尊敬する戦士であるオヤジに鍛えられて、共働きの両親に育てられたんだ。射精して、ゲームして、今日の授業は数学が難しかったな。二年生になってからやっぱ授業難しくなっていって、炭鉱での出稼ぎは鍛えられたけど辛かったぜ」
ティグリス:「初めてモンスター退治した時は、経験値をめちゃくちゃ手に入れて、オヤジに褒められたんだっけ。小学生の頃遊園地に連れて行ってもらってエナジーバッファローの干し肉を食ったんだよな。あれは甘くて冷たくてジューシーで口の中で旨味が溢れて最高だったな」
ティグリス:「クラスメイトの橋口秀和くんが好きで、いつも頭ン中にロン爺さんの事思い浮かべてはシコってたっけ。秀和くん、サッカーが得意で、エロい体してて、荘厳であの優しいとこに俺は救われたんだ。前意地悪なクラスメイトにからかわれて、剣で、斧で、メッタ打ちにして・・・違う! そんな物騒な思い出なんかじゃ? あ? 物騒って何だ? 俺にとって闘いは日常のようなもんじゃねえか」
ティグリス:「オヤジの毛は太陽に照らされると黄金のように光り輝くんだぜ。おフクロは、授業参観に遅れたけど来てくれたんだよな。学校の・・・学校ってなんだ? レッスンスクールのことだよな? 俺も小さい頃サバイバルの方法を学んだなぁ・・・あれ? 小さい頃って・・・んごぉ! あれ? 俺何考えてたんだっけ? 頭がスッキリしたことしか分からねえ」
ティグリス:「っていうか、何で俺は人生を今更振り返ってんだ? まるで修正されたデータを確認しているみたいだ・・・データ? って何だっけ? そうだ! 俺は14歳の女子中学生で、ゲームしてたら・・・虎・・・獣人に・・・・・・あっ! まさか! 不都合な記憶、全部出ちまう! や、やめてくれっ・・・手前にとってはバグでも、俺にとっては、俺にとっては、元の世界に帰るための大切な!」
ティグリスのイチモツがビクビクと揺れる。しかし絶頂に達したものの精液は一切吐き出されなかった。いわゆるドライオーガズムというやつだろう。
ティグリス:「イかなかった・・・よかった・・・まだ俺は元の世界のことも、俺がメスの学生だったことも、この世界がゲームで俺がバグ扱いされてるのも覚えてる! 俺はまだ、覚えてられるんdんぐおぉオオオオォッ!?」
しかし、間髪入れず再び射精した。ティグリスの精神力がプログラムを凌駕したらしいが、それもすぐに強力な二次プログラムによって突破されてしまったのだ。
ティグリス:「・・・元の世界って、何だっけ? 俺の住む世界は、ここしかないよなぁ? 何で元の世界、なんてトンチンカンなこと叫んでたんだ? でも、俺の住む世界は本当はここじゃねえってゆーのは分かんだよな。だって俺日本に住む元女子中学生の虎獣人だからな!」
ティグリス:「『魔法少女みるきーうぇい』が一番好きなアニメだったのも覚えてるし、初めて食ったモンスターの肉がスゲェ美味かったのも覚えてる。調理実習で作ったクッキーが美味しかったのも、オヤジが借金こさえちまってその返済に苦労したのも、おフクロが入院して泣いたのも、初めて買った剣をボロボロになるまで大切にしてたのも、大好きだった周防しずくが転校して悲しかったのも、ロン爺さんにバーに誘われて調子に乗って呑みすぎちまったのも、俺が元はメスだったのも、俺は勇敢なる獣の戦士だってことも、何か大切なことを忘れまくっちまったことも・・・覚え・・・てんだよぉ・・・」
ティグリスは、いつの間にやらサファイアのような青い色に変わってしまった瞳から涙を流していた。声を殺して泣いていた。何故悲しいのかすら忘れてしまったのだけれど、この涙は無駄なものではないことだけは分かっていた。しかし、そんな感情も、プログラムにとっては無関係な要素でしかなかった。必要なのは、この虎獣人に相応しくない記憶や思い出を排除する、こと、のみ、だった。
システム:『データ修正95%完了。残りバグ5%』
ティグリス:「バグって、何だよ。データって、何なんだよ。俺はバグでもデータでもねェ。偉大なる中学生戦士、ティグリス様だ!」
ティグリスは、腕組みをしながら、ただ一人雄々しく立っている。顔を快楽に歪ませていても、逸物は精液という名の[[rb:人格 > バグ]]が垂れ流しになっていたとしても。彼はプライドを持ってこの空間にタチ続けていた。
ティグリス:「むんっ! 決して俺は負けねえ・・・精子になってたまるもんか・・・俺は、家に帰るんだぁぁぁ!」
その言葉が、彼女の――女子中学生、竜田大河の最期だった。ただの普通の子供だった彼女は、バグとして、永遠にこの架空世界に精液として漂い続けることになったのだった……
◆
ロン :「来たのティグリス! 今日も頑張るとするか!」
ティグリス:「オウ! ロン爺さんと俺は永遠のバディだからな! 地獄の果てまでついて行くぜ!」
生まれ変わった竜田大河改めティグリスは、NPCとしてこのゲームに永遠に生き続けることとなった。架空の相棒、東洋龍人の武闘家、ロンとともに。
シュテル:「すみません。ロン様とティグリスさんですよね? この先強いモンスターがいるもので・・・よければ一緒に戦いませんか?」
ロン:「よかろう。このワシにかかればどんなモンスターもイチコロじゃわい!」
ティグリス:「ああ! ロン爺さんと俺のコンビは最強だからな! いつでも頼ってくれていいぜ!」
ティグリスは、最高の相棒とともに今日もユーザーを助けて回る毎日を送っている。
そして……
ロン:「ああティグリス! やはりお主のイチモツは最高の名器じゃわい! もっとワシを突いとくれ!」
ティグリス:「ロン爺さんのムチムチした肉、やっぱエロいし気持ちいいぜ! いくらでもザーメン出ちまっ、うううぅ!」
二人は、パチュパチュと、夜な夜な全年齢ゲームにも関わらずNPC同士で淫らな行為を行っていた。
普通なら存在しないはずの生殖器を何故か二人は持っており、その快楽を運営にすら知られずに享受していた。
ティグリスに関しては装備されていたバグ除去パーツの名残なのは分かっている。果たして対するロンも、ティグリスと同じなのだろうか?
謎は深まるばかりだった。
ロン:「ああぁぁ! ティグリスのイチモツしゅごいわいっ、あぁしゅごいのぅ、ワシ、イッちゃううぅ!」
ティグリス:「ロン爺さん! 俺の大好きなロン爺さん! ずっと一緒にいてくれよ!」
しかし彼らには関係ない。
快楽、そして愛という最高のログインボーナスを手に入れたのだから。
GAME OVER
最終ステータス
ステータス
名前:ティグリス
レベル62
性別:男性
種族:虎獣人
ジョブ:重戦士
LP:751/751
ME:35/35
攻撃力:476
防御力:412
魔法攻撃力:33
魔法防御力:130
スピード:28
知能:63
容姿:49
運:97
装備品
頭:鬼神兵の兜
左腕:ビッグシールド
右腕:魔物殺しの大剣
上半身:ヘビーメタルアーマー
下半身:ヘビーメタルアーマー、魅惑のビキニ
足:ヘビーメタルブーツ
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